特許第6014878号(P6014878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014878
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】強化繊維/樹脂繊維複合体
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20161013BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20161013BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20161013BHJP
   D04C 1/06 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B29B11/16
   C08J5/04CFD
   C08J5/04CEZ
   C08J5/04CES
   D04C1/02
   D04C1/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-534765(P2013-534765)
(86)(22)【出願日】2012年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2012074200
(87)【国際公開番号】WO2013042763
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-207258(P2011-207258)
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】仲井 朝美
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−046197(JP,A)
【文献】 特開2001−073241(JP,A)
【文献】 特開2005−052987(JP,A)
【文献】 特開2008−240170(JP,A)
【文献】 特開2006−123417(JP,A)
【文献】 繊維学会誌,,Vol.66,No.11,,P.267-271,
【文献】 材料,,Vol.60,No.5,,P.408-412,,(2011.05.15)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00〜C08J5/24
B29B11/16
B29B15/08〜B29B15/14
E04C1/00〜E04C7/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体であって、
前記強化繊維は長手方向に延在する長繊維であり、
前記樹脂繊維は、ポリプロピレン(PP)繊維、及び酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維であり、
前記強化繊維を包囲するように、前記ポリプロピレン(PP)繊維、及び前記酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を前記強化繊維の周囲に配置してあり、
前記樹脂繊維を、前記長繊維の長手方向に対して所定角度で相互に組み合わした組紐の状態で、前記強化繊維の周囲に配置してある強化繊維/樹脂繊維複合体。
【請求項2】
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体であって、
前記強化繊維は長手方向に延在する長繊維であり、
前記樹脂繊維は、ポリ乳酸(PLA)繊維、及びポリオキシメチレン(POM)繊維であり、
前記強化繊維を包囲するように、前記ポリ乳酸(PLA)繊維、及びポリオキシメチレン(POM)繊維を前記強化繊維の周囲に配置してあり、
前記樹脂繊維を、前記長繊維の長手方向に対して所定角度で相互に組み合わした組紐の状態で、前記強化繊維の周囲に配置してある強化繊維/樹脂繊維複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と繊維とを組み合わせた繊維強化熱可塑性樹脂は、軽量且つ高強度であるという優れた特性を生かして、様々な分野で利用されている。例えば、自動車、船舶、航空機等の輸送用機械においては、繊維強化熱可塑性樹脂の成形品を部品の一部として使用することにより、燃費や安全性の向上が図られている。
【0003】
このような繊維強化熱可塑性樹脂として、これまで熱可塑性樹脂に短繊維を添加して成形した繊維強化プラスチック(FRP)が良く知られていたが、近年、熱可塑性樹脂と長繊維(例えば、炭素繊維等の強化繊維)とを組み合わせた長繊維強化熱可塑性樹脂が注目されている。ここで、本明細書における「長繊維」とは、長手方向に延在する繊維(いわゆる「糸条」)を意味する。長繊維強化熱可塑性樹脂は、(1)耐衝撃性に非常に優れている、(2)熱溶融可能なためリサイクル性に優れている、(3)成形時に化学変化を伴わないため短時間での成形が可能となる、(4)化学反応がすでに終了しているため成形前の中間材料(プリプレグ)の保管が容易である、(5)熱溶融により形状の変更や融着を容易に行い得る、等の数々の利点を有している。このため、長繊維強化熱可塑性樹脂は、今後、非常に有用な材料として期待されている。
【0004】
一方、長繊維強化熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂の溶融粘度が非常に高いため、長繊維に対して熱可塑性樹脂が含浸し難いという問題がある。樹脂の含浸特性が悪化すると、成形品において十分な強度を発現することができなくなる。また、長繊維強化熱可塑性樹脂においては、長繊維と熱可塑性樹脂との界面特性を向上させることも重要である。界面特性が不十分であると、両者の接着面が剥離して成形品が破損するおそれがある。ここで、長繊維に対する熱可塑性樹脂の含浸特性と、長繊維と熱可塑性樹脂との界面特性とは、一般に相反する特性である。例えば、界面特性を向上させるべく、長繊維に対して酸変性等の表面改質を行うと、長繊維に対する熱可塑性樹脂の接触角が増大し(すなわち、長繊維表面の濡れ性が悪化し)、結果として含浸性が低下する。このように、含浸特性と界面特性とはトレードオフの関係にあるが、長繊維強化熱可塑性樹脂を用いて長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を製造する場合においては、含浸特性と界面特性とを出来る限り両立させることが望まれている。
【0005】
長繊維に対する熱可塑性樹脂の含浸特性を向上させつつ、長繊維と熱可塑性樹脂との界面特性を良好に維持するためには、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を製造するために使用する中間材料の形態を工夫することが有効と考えられる。中間材料の段階では、長繊維と熱可塑性樹脂との配置や配合を熱成形前に調整できるので、完成品である長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の特性を制御し易い。ここで、「中間材料」とは、長繊維と熱可塑性樹脂との複合体や混合物を意味する。
【0006】
従来、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料として、例えば、長繊維である炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させたものをテープ状に成形した「炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープ」が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、解繊させた炭素繊維ストランドを溶融状態にある熱可塑性樹脂浴に潜らせることにより炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させ、次いで、樹脂含浸後の炭素繊維を成形用のノズルに通すことにより、細長の炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープを形成している。この炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープの使用方法は、例えば、適用対象となる構造物の表面に巻き付けて溶融させ、その後、冷却し、固化させるというものである。その結果、構造物が補強される。
【0007】
また、別の長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料として、長繊維である連続強化繊維束と連続熱可塑性樹脂繊維束とを混繊した「複合材料用混繊糸」も知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2では、無撚りの連続強化繊維束、及び無撚りの連続熱可塑性樹脂繊維束に対して夫々解繊処理を施した後、両者を混繊することにより、複合材料用混繊糸を得ている。この複合材料用混繊糸は、例えば、織物や編物の形態に加工したものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−118216号公報
【特許文献2】特開平9−324331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1の炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープ、及び特許文献2の複合材料用混繊糸においては、技術的及び経済的な点で以下のような問題が存在する。
【0010】
特許文献1の炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープは、熱可塑性樹脂を含浸させた長繊維が長手方向に沿って略平行に延在することになる。このため、長繊維と熱可塑性樹脂との配合割合は、テープの任意の位置において略一定となる。このような配合割合が略固定された中間材料では、完成品となる長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の組成を、場所に応じて精密に制御することができない。また、組成制御が困難なため、長繊維の含浸特性と、長繊維と熱可塑性樹脂との界面特性とを両立させることも難しいと考えられる。さらに、この炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープを適用することができるのは、対象となる構造物が平面や単純な曲面を有するものに限定される。複雑な面を有する構造物に対しては、炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープを表面に密着させることが困難となるからである。しかも、炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープは、その構造上、剛性が過剰になり易く、タック性にも乏しいため、取り扱いが容易ではない。なお、炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープを製造するためには、熱可塑性樹脂浴や成形用のノズル等の専用設備が必要となるため、コスト増大を招くことになる。
【0011】
特許文献2の複合材料用混繊糸においても、連続強化繊維束と連続熱可塑性樹脂繊維束とを単純に混繊しているだけなので、両者の配合割合を長手方向に沿って精密に制御することは困難である。従って、特許文献2においても、長繊維の含浸特性と、長繊維と熱可塑性樹脂との界面特性とを両立させることはできない。また、連続強化繊維束の解繊処理中や、連続強化繊維束と連続熱可塑性樹脂繊維束との混繊作業中において、強化繊維が摩擦により傷付くおそれがある。複合材料用混繊糸を織物や編物に加工する際にも、各繊維が損傷を受けるおそれがある。さらに、複合材料用混繊糸を製造する場合、解繊作業及び混繊作業の際に繊維の一部が切断及び脱落するなどして失われることがあり、このような場合、最終製品の歩留まりが低下する。
【0012】
このように、現状では、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を得るに際し、強化繊維と樹脂繊維とから構成される最適な中間材料としての強化繊維/樹脂繊維複合体は未だ開発されていない。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、繊維や樹脂が有する異なる物性(例えば、含浸特性と界面特性等)を両立させるべく、中間材料中の長繊維と熱可塑性樹脂繊維との割合、及び両者の配置が精密に制御された強化繊維/樹脂繊維複合体を提供することを目的とする。また、そのような強化繊維/樹脂繊維複合体を効率的、確実、且つ低コストで製造する製造方法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係る強化繊維/樹脂繊維複合体の特徴構成は、
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体であって、
前記強化繊維は長手方向に延在する長繊維であり、
前記樹脂繊維は、ポリプロピレン(PP)繊維、及び酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維であり、
前記強化繊維を包囲するように、前記ポリプロピレン(PP)繊維、及び前記酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を前記強化繊維の周囲に配置してあることにある。
【0014】
背景技術の項目で説明したように、高性能な長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を得るためには、長繊維の含浸特性を向上させつつ、長繊維と熱可塑性樹脂との界面特性を良好に維持することが重要となる。このためには、中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体の形態を工夫することが有効と考えられる。
【0015】
この点、本構成の強化繊維/樹脂繊維複合体によれば、強化繊維として長手方向に延在する長繊維を使用するとともに、熱可塑性樹脂繊維としてポリプロピレン(PP)繊維、及び酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を使用する場合において、強化繊維を包囲するように、ポリプロピレン(PP)繊維、及び酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を強化繊維の周囲に配置した形態としている。つまり、長繊維の周囲に、ポリプロピレン(PP)繊維、及び酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を含むハイブリッド化された樹脂繊維が存在している。このような形態の強化繊維/樹脂繊維複合体を用いて熱成形を行う場合、ポリプロピレン(PP)繊維、及び酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を使用すれば、強化繊維を包囲する熱可塑性樹脂繊維が溶融したときに強化繊維の内部まで熱可塑性樹脂を確実に含浸させつつ、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面特性を向上させることができる。その結果、両者の界面剥離を防止することができる。なお、この熱成形時における熱可塑性樹脂繊維の溶融は、いわゆるIn−situポリマーブレンドの一種であり、簡単に行うことができる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明に係る強化繊維/樹脂繊維複合体の特徴構成は、
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体であって、
前記強化繊維は長手方向に延在する長繊維であり、
前記樹脂繊維は、ポリ乳酸(PLA)繊維、及びポリオキシメチレン(POM)繊維であり、
前記強化繊維を包囲するように、前記ポリ乳酸(PLA)繊維、及び前記ポリオキシメチレン(POM)繊維を前記強化繊維の周囲に配置してあることにある。
【0017】
本構成の強化繊維/樹脂繊維複合体によれば、熱可塑性樹脂繊維として、ポリ乳酸(PLA)繊維、及びポリオキシメチレン(POM)繊維を採用している。この組み合わせから得られた長繊維強化熱可塑性樹脂構造物では、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面特性を向上させつつ、構造物の靭性を強化することができる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明に係る強化繊維/樹脂繊維複合体の特徴構成は、
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体であって、
前記強化繊維は長手方向に延在する長繊維であり、
前記樹脂繊維は、ポリ乳酸(PLA)繊維、ポリオキシメチレン(POM)繊維、酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、及びポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)繊維からなる群から選択される少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維であり、
前記強化繊維を包囲するように、前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を前記強化繊維の周囲に配置してあることにある。
【0019】
本構成の強化繊維/樹脂繊維複合体によれば、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維は、ポリ乳酸(PLA)繊維、ポリオキシメチレン(POM)繊維、酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、及びポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)繊維からなる群から選択されるので、選択された2種の熱可塑性樹脂繊維を使用して熱成形を行うと、各繊維の長所を兼ね備えた高性能な長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を得ることが可能となる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る強化繊維/樹脂繊維複合体の特徴構成は、
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体であって、
前記強化繊維は長手方向に延在する長繊維であり、
前記樹脂繊維は少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を有しており、
前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維は、熱成形後に各繊維の物性が相互に補完されるように選択され、
前記強化繊維を包囲するように、前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を前記強化繊維の周囲に配置してあることにある。
【0021】
本構成の強化繊維/樹脂繊維複合体によれば、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を使用して熱成形を行うと、各繊維の物性が相互に補完されるので、各繊維の物性をバランスよく兼ね備えた高性能な長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を得ることが可能となる。
【0022】
本発明に係る強化繊維/樹脂繊維複合体において、
前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を、前記長繊維の長手方向に対して所定角度で相互に組み合わした組紐の状態で、前記強化繊維の周囲に配置してあることが好ましい。
【0023】
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物のさらなる高性能化を達成するためには、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の組成を精密に制御することが有効と考えられる。例えば、強化繊維の長手方向に沿って、強化繊維と熱可塑性樹脂との配合割合や、少なくとも2種の熱可塑性樹脂の組成比を自在にコントロールすることができれば、完成品である長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を使用目的に応じた形態に(オーダーメイドで)製造することが可能となる。
【0024】
この点、本構成の強化繊維/樹脂繊維複合体によれば、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を、長繊維(強化繊維)の長手方向に対して所定角度で相互に組み合わした組紐の状態で、強化繊維の周囲に配置した形態としている。すなわち、伝統工芸として知られている「組紐技術」を利用して、強化繊維の周囲に少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を組んだものとしている。組紐技術においては、紐(繊維)の組み方を工夫することにより、紐(繊維)の配置形態を様々なパターンで実現することができる。
【0025】
従って、組紐技術を強化繊維/樹脂繊維複合体に適用すれば、強化繊維と熱可塑性樹脂との配合割合や、少なくとも2種の熱可塑性樹脂の組成比を、糸の組み方によって自在にコントロールすることが可能となる。しかも、組紐技術を利用すれば、紐(繊維)を解繊することがないので、繊維が損傷を受けるおそれもない。
【0026】
また、組紐技術においては、複数の紐(繊維)を組み上げる際に、紐(繊維)の配置や紐(繊維)に作用するテンションを一本ずつコントロールすることが可能となる。このため、本構成の強化繊維/樹脂繊維複合体は、完成品である長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の構造及び組成を精密に制御する必要がある場合において、特に有効である。従って、組紐技術を用いれば、夫々の樹脂繊維が有する物性を熱成形後の長繊維強化熱可塑性樹脂構造物に所望の状態で付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、(a)本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体を製造するための組物作製機の一例を示した模式図、及び(b)強化繊維/樹脂繊維複合体の外観図である。
図2図2は、炭素繊維(中央糸)に対するPP繊維及びMAPP繊維(組糸)の組み方を説明するための強化繊維/樹脂繊維複合体の断面模式図であり、(a)二層配置、及び(b)交互配置を示す図である。
図3図3は、炭素繊維に対して2種の熱可塑性樹脂繊維が組み上げられた実施例の炭素繊維/樹脂繊維複合体の外観写真、及び構造図である。
図4図4は、二層配置及び交互配置について、成形時間による含浸状態の変化を表した試験片断面写真である。
図5図5は、炭素繊維における未含浸率を求めるための画像データの一例であり、(a)試験片の画像処理前の断面、及び(b)画像処理後の断面を示す。
図6図6は、二層配置及び交互配置における各試験片の未含浸率を成形時間に対してプロットしたグラフである。
図7図7は、各試験片の三点曲げ試験による測定データ(荷重−撓み曲線)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体、及びその製造方法に関する実施形態を図1図6に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0029】
<強化繊維/樹脂繊維複合体>
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体は、長繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む複合物又は混合物として構成される。長繊維は、モノフィラメントの集合体であるマルチフィラメントで構成され、細長のマルチフィラメントが長手方向に延在して糸条をなしている。長繊維には、強化繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等)を用いることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂繊維には、少なくとも2種の繊維が使用される。熱可塑性樹脂繊維の組み合わせは、熱成形後に各繊維の物性が相互に補完されるようなものを選択することが望ましい。例えば、熱成形により含浸性及び界面特性が両立するように選択される。例えば、代表的な熱可塑性樹脂繊維であるポリプロピレン(PP)繊維は、樹脂の含浸性に優れているが、界面特性(例えば、界面せん断強度)がやや劣っている。一方、PP繊維を酸変性して酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維とすると、界面特性は向上するが、同時に濡れ性が悪化するため、熱可塑性樹脂の含浸性が低下することになる。そこで、PP繊維とMAPP繊維とを組み合わせてハイブリッド化し、両者の特性を兼ね備えた新たな樹脂繊維を構成する。このハイブリッド化繊維であれば、各繊維の物性の不足部分が互いに補完されているので、含浸性及び界面特性が両立し、双方の特性が優れた材料を実現することが可能となる。
【0031】
本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体では、ハイブリッド化のため、長繊維(強化繊維)を包囲するように、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を長繊維の周囲に配置してある。ここで、「長繊維を包囲する」とは、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維が長繊維の表面に重なり合うように存在し、当該長繊維の表面の一部又は全部を外方から見えない状態にすることをいう。また、「長繊維の周囲に配置」とは、繊維の断面視において、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維の輪郭が長繊維の輪郭に当接している状態、又は近傍に存在している状態をいう。長繊維に対する少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維の配置形態は、長手方向において互いに略平行に延在しているに限らず、例えば、長繊維に対して少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維が所定の角度で延在していたり、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維が湾曲して徐々に位置を変えながら延在していたり、あるいは、両者が全くランダムに配置していたりしても構わない。つまり、長繊維の周囲に、少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を含むハイブリッド化された樹脂繊維が存在していればよい。これらの長繊維に対する少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維の配置形態は、様々な手法により実現することが考えられるが、次に説明する「組紐技術」を利用してハイブリッド化することが有効である。
【0032】
<組紐技術>
組紐技術は、日本の伝統工芸として知られており、複数の細い糸(組糸)を相互に編んで織り上げることにより、強靭で且つ美しい編模様を備えた紐を作り上げる技術である。本発明では、中央糸となる強化繊維の周囲に、組糸となる少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を配置した組物を形成する。具体的には、強化繊維の長手方向に対して少なくとも2種の熱可塑性樹脂繊維を所定角度で相互に編み上げることより、強化繊維の周囲に少なくとも2種の樹脂繊維が組まれた組紐が形成される。
【0033】
図1は、(a)本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体50を製造するための組物作製機100の一例を示した模式図、及び(b)強化繊維/樹脂繊維複合体50の外観図である。図1(a)に示すように、組物作製機100は、組物(強化繊維/樹脂繊維複合体50)のコアとなる中心糸(強化繊維)40に対して、中央糸(強化繊維)15を供給する中央糸供給部10と、組糸(樹脂繊維)25を供給する組糸供給部20とを備えている。組物の形成に先立ち、準備のため、組糸供給部20は中央糸供給部10の周囲にスタンバイされている。中央糸供給部10と組糸供給部20とはセットで設けられる。図1(a)では、一つの中央糸供給部10と一つの組糸供給部20とがセットにされているが、一つの中央糸供給部10に対して組糸供給部20を複数設けたセットとすることも可能である。組糸供給部20の数は、設計する強化繊維/樹脂繊維複合体50の構造に応じて適宜設定することが可能である。中央糸供給部10は、強化繊維が巻回されたロービング(図示せず)につながっており、ロービングから巻き戻された強化繊維を先端部11から中央糸15として排出する。組糸供給部20は、組糸25が巻回されたスピンドル21と、スピンドル21から引き出された組糸25が経由される巻戻しバー22とを備えている。組糸供給部20は、セットをなす中央糸供給部10の周囲を公転する。このとき、上方視で、スピンドル21と巻戻しバー22との相対位置が変化する。これにより、スピンドル21に巻回された組糸25は、巻戻しバー22を通じてスピンドル21から連続的に解離される。解離された組糸25は、中央糸15の周囲を取り囲むように集められ、中央糸供給部10及び組糸供給部20が組機軌道30を移動することにより中央糸15の長手方向に対して組角度θで相互に組み上げられ、組紐が形成される。中央糸15及び組糸25によって形成された組紐は、中心糸40の周囲を取り囲むように配置される。このようにして、中心糸40の周囲に、中央糸15に対して組糸25が組角度θで組まれた図1(b)に示す組物としての強化繊維/樹脂繊維複合体50(これを「ハイブリッド化繊維複合体」と称する場合がある)が連続的に形成される。出来上がった強化繊維/樹脂繊維複合体50は、そのまま又は所望の形状に整えて熱成形することにより、目的の長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を得る。熱成形時における樹脂繊維の溶融は、いわゆるIn−situポリマーブレンドの一種であり、簡単に行うことができる。
【0034】
組紐技術においては、中央糸15に対する組糸25の組み方を工夫することにより、組糸(熱可塑性樹脂繊維)25の配置形態を様々なパターンで実現することができる。従って、組紐技術を本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体50に適用すれば、強化繊維と熱可塑性樹脂との配合割合や、熱溶融後の熱可塑性樹脂の組成比を、糸の組み方によって自在にコントロールすることができる。その結果、完成品である長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を使用目的に応じた形態に(オーダーメイドで)製造することが可能となる。また、組紐技術を利用すれば、繊維を解繊することがないので、繊維が損傷を受けるおそれもない。さらに、組紐技術においては、複数の組糸を組み上げる際に、組糸の配置や組糸に作用するテンションを一本ずつコントロールすることが可能となる。このため、完成品である長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の構造及び組成を精密に制御する必要がある場合において、組紐技術を利用することは特に有効である。従って、組紐技術を用いれば、夫々の樹脂繊維が有する物性を熱成形後の長繊維強化熱可塑性樹脂構造物に所望の状態で付与することが可能となる。
【実施例】
【0035】
上記の組紐技術を利用して製造した本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体(ハイブリッド化繊維複合体)に関する実施例について説明する。本実施例では、強化繊維である長繊維として炭素繊維を使用し、熱可塑性樹脂繊維としてポリプロピレン(PP)繊維、及びPP繊維をマレイン酸を用いて酸変性した酸変性ポリプロピレン(MAPP)繊維を使用した。先に説明したように、PP繊維は、樹脂の含浸性に優れているが、界面特性(例えば、界面せん断強度)がやや劣っている。一方、MAPP繊維は、樹脂の含浸性がやや劣っているが、界面特性には優れている。そこで、組紐技術を利用して、PP繊維及びMAPP繊維を炭素繊維の表面に組み上げてハイブリッド化することにより、炭素繊維への熱可塑性樹脂の含浸特性と、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面特性とを両立させることを試みた。
【0036】
〔強化繊維/樹脂繊維複合体の組み方〕
図2は、炭素繊維15a(中央糸15)に対するPP繊維25a及びMAPP繊維25b(組糸25)の組み方を説明するための強化繊維/樹脂繊維複合体50の断面模式図である。本実施例では、1本の炭素繊維15aに対して、16本のPP繊維25a、及び16本のMAPP繊維25bを組み上げることにより、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となる炭素繊維/PP繊維/MAPP繊維複合体(ハイブリッド化繊維複合体)を得た。樹脂繊維の組み方は、図2(a)及び(b)に示す2通りを実行した。(a)は、一段目として炭素繊維15aの表面を包囲するようにPP繊維25aのみを組み上げ、次いで、二段目として一段目の上にMAPP繊維25bのみを組み上げたものである。(a)の組み方を「二層配置」と称する。(b)は、一段目として炭素繊維15aの表面を包囲するようにPP繊維25aとMAPP繊維25bとを交互に組み上げ、次いで、二段目として一段目と同様にPP繊維25aとMAPP繊維25bとを交互に組み上げたものである。(b)の組み方を「交互配置」と称する。図3に、炭素繊維に対して2種の熱可塑性樹脂繊維が組み上げられた本実施例の炭素繊維/樹脂繊維複合体の外観写真、及び構造図を示す。
【0037】
〔含浸特性評価〕
炭素繊維/樹脂繊維複合体(ハイブリッド化繊維複合体)を熱成形して得られる長繊維強化熱可塑性樹脂構造物(これを「ハイブリッド化構造物」と称する場合がある)の含浸特性について、顕微鏡による断面観察から評価した。
【0038】
先ず、二層配置及び交互配置の各構造を有する炭素繊維/樹脂繊維複合体を用いて熱形成を行い、長繊維(炭素繊維)強化熱可塑性樹脂構造物(ハイブリッド化構造物)の試験片を得た。各試験片の熱成形条件は、成形温度200℃、成形圧力10MPa、成形時間5分、10分、20分、40分とした。次に、各試験片の断面を観察し、炭素繊維に対する熱可塑性樹脂の含浸状態(未含浸率)を評価した。図4は、二層配置及び交互配置について、成形時間による含浸状態の変化を表した試験片断面写真である。各写真の右隅に記載されている数値は、炭素繊維における未含浸率である。未含浸率は、以下の手順で求められる。
【0039】
図5は、炭素繊維における未含浸率を求めるための画像データの一例であり、(a)試験片の画像処理前の断面、及び(b)画像処理後の断面を示してある。炭素繊維(繊維束)の断面画像(a)を画像処理により、所定の閾値で二値化し、白色領域を含浸領域S1、黒色領域を未含浸領域S2とする断面画像(b)を得る。断面画像(b)から得られたS1及びS2の値を用いて、未含浸率(%)を、以下の式(1)から求める。
未含浸率(%) = S2/(S1+S2) ・・・ (1)
【0040】
図6は、二層配置及び交互配置における各試験片の未含浸率を成形時間に対してプロットしたグラフである。図6より、二層配置及び交互配置のいずれにおいても、成形時間の経過とともに、炭素繊維に対する熱可塑性樹脂の未含浸率が徐々に低下した。すなわち、成形時間の経過とともに、炭素繊維に熱可塑性樹脂が十分に含浸することが確認された。また、二層配置と交互配置との比較では、二層配置の方が交互配置よりも含浸特性に優れた材料が得られることが判明した。特に、二層配置で組み上げた炭素繊維/樹脂繊維複合体を用いて20分以上、好ましくは40分以上熱成形を行うと、炭素繊維の略中心まで熱可塑性樹脂を含浸させることが可能となることが判明した。
【0041】
〔界面特性評価〕
炭素繊維/樹脂繊維複合体(ハイブリッド化繊維複合体)を熱成形して得られる長繊維強化熱可塑性樹脂構造物(ハイブリッド化構造物)について、曲げ試験機を用いた三点曲げ試験を実施し、界面特性を評価した。三点曲げ試験により長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の長手方向における力学的特性を測定し、弾性率及び強度の値が大きいほど、界面特性が良好であることが間接的に推定できる。
【0042】
長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の試験片として、長さ50mm、幅20mm、厚み2mmの板状体を熱成形により作製した。試験片には、図2に示した二層配置の炭素繊維/樹脂繊維複合体、及び交互配置の炭素繊維/樹脂繊維複合体から得られた成形体を用意した。また、参考として、炭素繊維/PP繊維複合体、及び炭素繊維/MAPP繊維複合体から得られた成形体も合わせて用意した。各試験片の熱成形条件は、成形温度200℃、成形圧力10MPa、成形時間5分、10分、20分、40分とした。次に、各試験片において、スパン間距離32mmの中央にクロスヘッドスピード1mm/分で負荷を印加し、試験片が破壊されるまで三点曲げ試験を継続した。図7は、各試験片の三点曲げ試験による測定データ(荷重−撓み曲線)のグラフである。この測定データに基づき、以下の式(2)及び式(3)を用いて、各試験片の曲げ弾性率E(MPa)、及び曲げ応力σ(MPa)を見積もった。曲げ応力σの最大値を曲げ強度とする。なお、これらの計算は、JIS K7017に準拠した方法で行った。
E=L/(4bh)・(ΔF/ΔS) ・・・ (2)
σ=3FL/(2bh) ・・・ (3)
L :支点間距離(mm)
b :試験片の幅(mm)
h :試験片の厚さ(mm)
F :荷重(N)
ΔS:曲げ歪みε’=0.0005及びε”=0.0025に対応する曲げ撓みS’及びS”間の撓みの差(mm)
ΔF:S’及びS”における夫々の荷重F’とF”との差(N)
試験結果を以下の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
上記結果より、二層配置の炭素繊維/樹脂繊維複合体(試験No.1)、及び交互配置の炭素繊維/樹脂繊維複合体(試験No.2)から成形した長繊維強化熱可塑性樹脂構造物(ハイブリッド化構造物)は、炭素繊維/PP繊維複合体(試験No.3)から成形した長繊維強化熱可塑性樹脂構造物(非ハイブリッド化構造物)よりも弾性率及び強度が大きく向上することが確認された。特に、二層配置の炭素繊維/樹脂繊維複合体(試験No.1)は、炭素繊維/MAPP繊維複合体(試験No.4)に対しても同等の弾性率及び強度を示した。従って、炭素繊維/樹脂繊維複合体において、樹脂繊維としてPP繊維とMAPP繊糸とをハイブリッド化したものを使用して熱成形すれば、MAPP繊維による含浸特性の低下を抑制しながら、炭素繊維/MAPP繊維複合体並みの高い界面特性を実現しつつ、長繊維方向(長手方向)において十分な強度を有する高性能な長繊維強化熱可塑性樹脂構造物を得ることができる。
【0045】
〔別実施形態〕
(1)炭素繊維/樹脂繊維複合体(ハイブリッド化繊維複合体)を構成する少なくとも2種の樹脂繊維は、上記実施形態で説明したPP繊維、及びMAPP繊維の他にも種々の組み合わせの材料を選択することが可能である。例えば、樹脂繊維複合体として、以下の樹脂繊維の組合せが挙げられ、各組合せを選択した場合の補完可能(両立可能)な物性について列挙する。
〔1〕ポリ乳酸(PLA)繊維/ポリオキシメチレン(POM)繊維:界面特性及び含浸性/靭性
〔2〕ポリプロピレン(PP)繊維/ポリアミド(PA)繊維(ナイロン繊維):含浸性/界面接着性、低コスト/界面接着性
〔3〕ポリアミド(PA)繊維/ポリオキシメチレン(POM)繊維:界面接着性/耐摩耗性及び摺動性
〔4〕ポリプロピレン(PP)繊維/ポリオキシメチレン(POM)繊維:含浸性/耐摩耗性及び摺動性
〔5〕ポリアミド(PA)繊維/ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維:界面接着性/耐熱性、界面接着性/含浸性
〔6〕ポリプロピレン(PP)繊維/ポリカーボネート(PC)繊維:含浸性/耐衝撃性
〔7〕ポリアミド(PA)繊維/ポリカーボネート(PC)繊維:界面接着性/耐衝撃性
その他にも樹脂繊維複合体を構成する少なくとも2種の樹脂繊維として、例えば、ポリエチレン(PE)繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)繊維、ポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)繊維等の熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。また、補完可能な熱可塑性樹脂繊維の物性としては、上述した物性の他に、吸水性、耐疲労性、耐薬品性、耐溶剤性、難燃性、電気的特性、耐寒性、耐候性等が挙げられる。
【0046】
(2)組紐技術によって作製されるハイブリッド化繊維複合体は、目的の長繊維強化熱可塑性樹脂構造物に応じて、種々の構造物とすることができる。組紐には伝統的な組み方の角打紐、平打紐、丸打紐等が知られているが、これらの組紐をベースとしてハイブリッド化繊維複合体を構成することができる。例えば、自動車のボディの一部であるピラーを製造する場合、中間材料となる強化繊維/樹脂繊維複合体をリボン状の平打紐として作製し、これを環状に巻き上げて成形する。これにより、軽量且つ高強度の中空ピラーを製造することができる。
【0047】
(3)組物(強化繊維/樹脂繊維複合体)の作製に際し、上記実施形態では、中心糸40及び中央糸15に強化繊維を使用し、組糸25に樹脂繊維を使用しているが、中心糸40、中央糸15、組糸25に対して、どの種の繊維を組み合わせるかは特に限定されず、作製する強化繊維/樹脂繊維複合体に応じて、適宜決定することができる。例えば、中央糸15に強化繊維を使用し、中心糸40及び組糸25に樹脂繊維を使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の強化繊維/樹脂繊維複合体は、長繊維強化熱可塑性樹脂構造物の中間材料となるものであり、自動車、船舶、航空機等の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 中央糸供給部
11 先端部
15 中央糸(強化繊維)
15a 炭素繊維
20 組糸供給部
21 スピンドル
22 巻戻しバー
25 組糸(樹脂繊維)
25a PP繊維
25b MAPP繊維
40 中心糸(強化繊維)
50 強化繊維/樹脂繊維複合体
100 組物作製機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7