特許第6014900号(P6014900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014900
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】プレス機のアタッチメント
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/06 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B30B15/06 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-238478(P2009-238478)
(22)【出願日】2009年10月15日
(65)【公開番号】特開2011-83796(P2011-83796A)
(43)【公開日】2011年4月28日
【審査請求日】2012年10月15日
【審判番号】不服2014-21397(P2014-21397/J1)
【審判請求日】2014年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】500113280
【氏名又は名称】有限会社 マツヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100078097
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 岳雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
【合議体】
【審判長】 西村 泰英
【審判官】 平岩 正一
【審判官】 渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−323500(JP,A)
【文献】 実開昭55−23272(JP,U)
【文献】 特開平10−216996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に平行な第1及び第2基板を備え、第1基板の第2基板に対向する面の所定の個所に、内周面に台形雌ねじ孔を形成したねじ筒とこのねじ筒の外側に嵌合するウォーム歯車とを同軸かつ一体的に結合した駆動リングを、第1基板に垂直な中心軸の周りを回動可能に支承すると共に、上記中心軸の長さ方向の移動を拘束し、また、台形ねじ杆を上記ねじ筒に螺合させると共に、この台形ねじ杆の第2基板側の端部に第1及び第2基板と平行な取付板を一体的に結合し、一方、第1及び第2基板に平行なシャフトを上記駆動リングの近傍に配設し、そのシャフトの中央部に形成したウォームねじを上記ウォーム歯車に噛み合わせ、更に、ウォームねじをその回動軸線方向に移動できないように拘束し、他方、上記第1基板をプレス機のスライダの下面又はボルスタプレートの一方に、第2基板を他方にそれぞれ止着し、上記第1及び第2基板の間に1個目の金型を、取付板及び第2基板の間に2個目以下の金型を取り付け、以て、1台のプレス機に複数の金型を装着することにより塑性加工の複数の行程をプレス機の1回の作動で同時に行えるようにしたことを特徴とするプレス機のアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレス機のアタッチメント(以下単にアタッチメントという)に係り、特に、1台のプレス機に複数の金型を装着して、塑性加工の複数の工程をプレス機の1回の作動で同時に行えるようにしたアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
図1において符号1はクランクプレスを示し、このクランクプレス1のボルスタプレート2に金型の下型を、スライド3に上型を夫々装着し、モータ又はフライホイール4によってクランク軸5を上下方向に往復動させることにより、金型の間に置かれた材料を塑性加工する。
【0003】
なお、通常のクランクプレスにおいては、スライド3とクランク軸5とはスライド調節ねじ6によって相互に連結されており、このスライド調節ねじ6を伸縮させることにより、スライド3の行程を調節できるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】プレス金型設計 日刊工業新聞社刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のプレス機は、金型が小さくても1個の金型のみを装着するように構成されている。
【0006】
それは、スライド3の下死点位置とボルスタプレート2の表面との間の間隔、すなわち、プレス機のダイハイトと、プレス機に取り付けられる金型の高さである金型のダイハイトとをほぼ同じになるように作るからである。
【0007】
そのため、金型のダイハイトに合わせてスライド調節ねじを調整し、1個の金型の高さに対応してスライドのストロークを調整することは可能であっても、ダイハイトの異なる複数の金型に対応することが不可能である。
【0008】
そこで、この発明は、スライドのダイハイトに対応して、2個目以下の金型の夫々のダイハイトをスライドのダイハイトと同じにするアタッチメントを提供し、以て、プレス機に複数の金型を装着(セット)できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、相互に平行な第1及び第2基板を備え、第1基板の第2基板に対向する面の所定の個所に、内周面に台形雌ねじ孔を形成したねじ筒とこのねじ筒の外側に嵌合するウォーム歯車とを同軸かつ一体的に結合した駆動リングを、第1基板に垂直な中心軸の周りを回動可能に支承すると共に、上記中心軸の長さ方向の移動を拘束し、また、台形ねじ杆を上記ねじ筒に螺合させると共に、この台形ねじ杆の第2基板側の端部に第1及び第2基板と平行な取付板を一体的に結合し、一方、第1及び第2基板に平行なシャフトを上記駆動リングの近傍に配設し、そのシャフトの中央部に形成したウォームねじを上記ウォーム歯車に噛み合わせ、更に、ウォームねじをその回動軸線方向に移動できないように拘束し、他方、上記第1基板をプレス機のスライダの下面又はボルスタプレートの一方に、第2基板を他方にそれぞれ止着し、上記第1及び第2基板の間に1個目の金型を、取付板及び第2基板の間に2個目以下の金型を取り付け、以て、1台のプレス機に複数の金型を装着することにより塑性加工の複数の行程をプレス機の1回の作動で同時に行えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるアタッチメントは、1台のプレス機に複数の金型をセットするにあたり、1個目の金型のダイハイトを設定した後、2個目以降の金型のダイハイトとアタッチメントの高さとの和を1個目の金型のダイハイトと同じに設定できる。
【0011】
これをプレス機側から見ると、複数の金型のダイハイトが全部同じになることから、プレス機の1回の作動により複数の塑性加工を同時に実行できる。
【0012】
そのため、作業能率が格段に向上するばかりでなく、工場内におけるプレス機の設置台数を少なくすることができ、加えて工場の敷地面積も少なくすることができることから、製品のコストも減少させることができる、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】プレス機の標準の構造を示すための線図。
図2】この発明の一実施例によるアタッチメントの線図的一部断面側面図。
図3】駆動リングとウォームねじの保持盤の平面図。
図4】駆動リングとウォームねじの拡大平面図。
図5】駆動リングとウォームねじの拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
2個目以降の金型に高さ方向において重合するように、内周面に台形雌ねじ孔を形成したねじ筒とこのねじ筒の外側に嵌合するウォーム歯車とを同軸かつ一体的に結合した駆動リング、及びこの駆動リングと噛み合うウォームねじとを有する高さが低いアタッチメントを設け、このアタッチメントの上記ねじ筒と螺合する台形ねじの上下方向の移動により、プレス機側から見た2個目以降の金型のダイハイトを調節できるようにした。
【実施例1】
【0015】
図2において符号7は第1基板を、符号8は第2基板を夫々示し、第1基板7の第2基板に対向する面(図2で下面)の所定の個所、すなわち、第1基板7の図2で左側には、厚い保持盤9が例えばボルト止め(図示せず)されている。
【0016】
この保持盤9(図3参照)の中央には、内周面に台形雌ねじを形成したねじ筒11(図2図4及び図5参照)とこのねじ筒11の外側に嵌合するウォーム歯車12とを同軸かつ一体的に結合した駆動リング13(図4及び図5参照)が第1基板7に垂直な中心軸の周りを回動可能に支承されている。
【0017】
図示の実施例おける駆動リング13は、図2に示すように、保持盤9の中央に開口した段付の支持孔14(図3参照)に回動可能に嵌合しており、この駆動リング13の段付の下面は、蛇の目状の厚板の上面に同軸の環堤部を一体に結合したカバーリング15により閉塞されている。
【0018】
なお、上記カバーリング15は図示しない止めボルトにより保持盤9に固着されており、その結果、駆動リング13は基板7に垂直な中心軸(ねじ筒11の中心軸)方向の移動を拘束された状態で、基板7に回動可能に支承されることになる。
【0019】
また、保持盤9の下面のねじ筒11と整合する部分は肉が盗まれてねじ筒とほぼ同径の凹陥部が形成され、その結果ねじ筒11の上端部はその凹陥部と遊嵌している。
【0020】
これは、この発明によるアタッチメントを低くし、2個目以降の金型のダイハイトの調整量を大きくするためである。
【0021】
一方、図2及び図5に示すように、ねじ筒11の内側には台形ねじ杆16が螺合しており、この台形ねじ杆16の第2基板側の端部に第1及び第2基板7、8と並行な取付板17が一体的に結合されている。
【0022】
図示の実施例における取付板17は、図5に示すように、台形ねじ杆16の下端に一体に形成されたフランジを貫通する付番しない止めボルトにより台形ねじ杆16に結合されている。
【0023】
他方、上記駆動リング13の近傍には、図2図4及び図5に示すように、第1及び第2基板7、8に平行なシャフト18が配設されている。
【0024】
そして、このシャフト18の中央部に形成されたウォームねじ19がウォーム歯車12と噛み合っている。
【0025】
ちなみに、ウォーム歯車12の近傍にウォームねじ19を配設するには、例えば図3に示すように、保持盤9の上面に支持孔14と干渉する水平投影形状が略矩形の凹陥部21を形成する。
【0026】
そして、この凹陥部21中にキー22(図5参照)によってシャフト18に結合されたウォームねじ19をシャフトから抜き外し、ウォームねじ19のみを縦にして凹陥部に落とし込み、このときウォームねじ19とウォーム歯車12とを噛み合わせる。
【0027】
次いで、シャフト18のキー溝23(図4参照)にキー22を嵌め込んだ状態で、シャフト18の図4における上端部から保持盤9を水平方向に貫通するキー溝23付のシャフト孔24(図3参照)に差し込む。
【0028】
このときシャフト18のキー溝23に嵌め込んだキー22をシャフト孔24及びウォームねじ19のキー溝と整合させてシャフト孔に差し込むことが肝要で、このようにすることにより、ウォームねじ19を凹陥部に差し込んだ状態でシャフト18とウォームねじ19とを一体的に結合することができる。
【0029】
なお、凹陥部21(図3参照)の図2における縦方向の寸法をウォームねじ19の長さより少し大きく設定することにより、ウォームねじ19を回動可能に支持案内するとともに、長さ方向に移動することを拘束できる。
【0030】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるアタッチメントは、図2に示すように、取付板17の下面にクランプ25を介して2個目以降の金型の上板をボルト止めする。
【0031】
また、上記金型の下板27を、クランプ25を介して前記第2基板8の上面にボルト止めする。
【0032】
なお、図2において右側における符号27は1個目の金型の上板を、同じく符号28は1個目の金型の下板を夫々示す。
【0033】
そして、1個目の金型の上板は、前記保持盤9と同じ厚さのスぺーサー28を介して第1基板7に、1個目の金型の下板27は直接に第2基板8にボルト止めされている。
【0034】
そして、シャフト18の外端に形成された異形断面部に係合させたボックスレンチによりウォームねじ19を回せば、これと噛み合うウォーム歯車12及びこれと一体のねじ筒が回動し、結果台形ねじ杆16が上下する。
【0035】
したがって、1個目及び2個目以降の金型のダイハイト、すなわち、それぞれの金型の上板27の上面と下板28の下面との間隔が異なっていても、第1基板7の上面と第2基板の下面との間隔、すなわちプレス機から見た両金型のダイハイトを同一にすることができ、両金型による塑性加工をプレス機の1回の作動により同時にできる。
【0036】
このとき、金型に印加される力はアタッチメントにも印加されるが、その力は台形ねじ杆16と台形雌ねじ孔との螺合部によって担持されるので、プレス機の加工力によりアタッチメントが壊れてしまうことは無い。
【実施例2】
【0037】
なお、図2から明らかなように、第1及び第2基板7、8間の機構を上下逆にしてプレス機にセットしても良いことは明らかである。
【0038】
但し、この場合取付板17及び第2基板8との間の2個目以降の金型、或いはスぺーサー28と第2基板8との間の1個目の金型は、上下を逆にして、すなわち、図2に示す関係位置でセットする必要がある。
【実施例3】
【0039】
また、1個目の金型のダイハイトが高い場合は、図2におけるスぺーサー28を薄くする、あるいはスぺーサーを省略することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 クランクプレス
2 ボルスタプレート
3 スライド
4 フライホイール
5 クランク軸
6 スライド調節ねじ
7 第1基板
8 第2基板
9 保持盤
11 ねじ筒
12 ウォーム歯車
13 駆動リング
14 支持孔
15 カバーリング
16 台形ねじ杆
17 取付板
18 シャフト
19 ウォームねじ
21 凹陥部
22 キー
23 キー溝
24 シャフト孔
25 クランプ
26 上板
27 下板
28 スぺーサー
図1
図2
図3
図4
図5