(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の歪みセンサの実施の形態を、第一、第二及び第三実施形態、並びにその他の実施形態として、適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0020】
<第一実施形態>
図1の歪みセンサ1は、基板2と、この基板2の表面側に設けられ、一方向に配向する複数のCNT繊維を有するCNT膜4と、このCNT膜4の前記CNT繊維の配向方向Aの両端に配設される一対の電極3とを主に備える。
【0021】
(基板)
基板2は柔軟性を有する板状体である。基板2のサイズとしては特に限定されず、例えば厚みが10μm以上5mm以下、幅が1mm以上5cm以下、長さが1cm以上20cm以下とすることができる。
【0022】
基板2の材質としては、柔軟性を有する限り特に限定されず、例えば合成樹脂、ゴム、不織布、変形可能な形状又は材質の金属や金属化合物等を挙げることができる。基板2は絶縁体又は抵抗値の高い材質であればよいが、金属等の抵抗値の低い材料を用いる場合はその表面に絶縁層又は抵抗値の高い材料をコーティングすればよい。これらの中でも、合成樹脂及びゴムが好ましく、ゴムがさらに好ましい。ゴムを用いることで、基板2の柔軟性をより高めることができる。
【0023】
前記合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等を挙げることができる。
【0024】
前記ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(U)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、フッ素ゴム(FKM)、PDMS等を挙げることができる。これらのゴムの中でも強度等の点から天然ゴムが好ましい。
【0025】
(電極及び導電層)
一対の電極3は、基板2の表面側の長手方向A(CNT繊維の配向方向)の両端部分に配設されている。具体的には、各電極3は、基板2の表面の長手方向Aの両端部分に離間して配設される一対の導電層5の表面にそれぞれ配設されている。
【0026】
各導電層5は、電極3とCNT膜4との電気的な接続性を高めている。導電層5を形成する材料としては、導電性を有する限り特に限定されず、例えば導電性ゴム系接着剤等を用いることができる。導電層5としてこのように接着剤を用いることで、基板2、電極3、及びCNT膜4の両端の固着性を高め、当該歪みセンサ1の持続性を高めることができる。
【0027】
電極3は、帯状形状を有している。一対の電極3は、基板2の幅方向に、互いに平行に配設されている。電極3を形成する材料としては、特に限定されず、例えば銅、銀、アルミニウム等の金属等を用いることができる。
【0028】
電極3の形状としては、特に限定されず、例えば膜状、板状、メッシュ状等とすることができるが、メッシュ状とすることが好ましい。このようにメッシュ状の電極3を用いることで、導電層5との密着性及び固着性を高めることができる。このようなメッシュ状の電極3としては、金属メッシュや、不織布に金属を蒸着又はスパッタさせたものを用いることができる。なお、電極3としては、導電性接着剤の塗布等によって形成したものであってもよい。
【0029】
(CNT膜)
CNT膜4は、一方向に配向する複数のCNT繊維からなる複数のCNT繊維束6及びこの複数のCNT繊維束6の周面を被覆する樹脂層7を有する。つまり、CNT繊維束6は複数のCNT繊維から構成され、このCNT繊維束6の周囲を樹脂層7が被覆している。また、CNT膜4は平面視矩形形状を有し、CNT膜4の長手方向Aの両端部分がそれぞれ導電層5を介して電極3と接続されている。
【0030】
CNT膜4は、一方向(一対の電極3の対向方向A)に配向する複数のCNT繊維束6を有する。CNT繊維束6がこのように配向していることにより一対の電極3が離れる方向(前記方向A)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維束6を構成するCNT繊維の切断、離間、CNT繊維束6の切断空間(ギャップ)の伸縮等によって当該歪みセンサ1をして抵抗変化を得ることができる。より具体的には、CNT繊維束6は、CNT繊維からなるバンドル構造となっており、CNT繊維束6の任意の横断面においては、切断されないCNT繊維と、CNT繊維が切断、離間したギャップの両方が存在することになる。またこのギャップ内の圧力は大気圧よりも低い(負圧である)と考えられ、当該歪みセンサ1の収縮時(歪の解放時)にはこのギャップの収縮力によって歪みセンサの収縮が付勢される。さらに、このギャップ内ではCNT繊維同士やCNT繊維と周囲の樹脂との摩擦が低減されるため、樹脂の残留応力等によってCNT繊維の動きが制限され難い。
【0031】
各CNT繊維束6は、複数のCNT繊維からなる。ここで、CNT繊維とは、1本の長尺のCNTをいう。また、CNT繊維束6は、CNT繊維の端部同士が連結する連結部を有する。CNT繊維同士は、これらのCNT繊維の長手方向に連結している。このようにCNT膜4において、CNT繊維同士がその長手方向に連結してなるCNT繊維束6を用いることで、CNT繊維束6の配向方向長さの大きいCNT膜4を形成することができ、当該歪みセンサ1の長手方向長さを大きくし、感度を向上させることができる。
【0032】
また、複数のCNT繊維束6は、
図2に示すように長手方向Aに切断個所Pを有するとよい。この切断個所Pは、例えばCNT膜4を基板2に積層後、長手方向Aに伸張することで形成することができる。この切断個所Pは各CNT繊維束6のランダムな個所に形成されていることが好ましい。切断個所Pがランダムに形成されることで、切断個所Pの間隔(ギャップ)が複数同じタイミングで変化(伸縮)することが防止されるため、抵抗変化の急激な変動を防止しリニアリティを向上させることができる。なお、この切断個所PにはCNT繊維が断片的に存在していることが好ましい。また、1つのCNT繊維束6に複数の切断個所Pが形成されていてもよい。
【0033】
静置時における前記切断個所Pの間隔の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。切断個所Pの間隔が前記下限未満の場合、CNT膜4の伸縮時の抵抗変化のリニアリティが十分得られないおそれがある。一方、静置時における前記切断個所Pの間隔の上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。切断個所Pの間隔が前記上限を超える場合、当該歪みセンサ1の抵抗が必要以上に高くなるおそれがある。
【0034】
また、複数のCNT繊維束6は前記連結部等により網目状に連結又は接触しているとよい。この際、連結部において、3つ以上のCNT繊維の端部が結合していてもよいし、2つのCNT繊維の端部と他のCNT繊維の中間部とが結合していてもよい。複数のCNT繊維束6がこのような網目構造を形成することで、CNT繊維束6同士が密接し、CNT膜4の抵抗を下げることができる。さらに、当該CNT繊維束6の連結部が主な基点となって、隣り合うCNT繊維束6間に限らず、何本か飛び越えた場所のCNT繊維束6と連結又は接触してもよい。このように、複雑な網目状のCNT繊維束6からなるCNT膜4であれば、より抵抗値が低くなり、CNT繊維束6と垂直な方向に剛性の強い歪みセンサとすることができる。なお、CNT繊維束6同士の連結とは前記連結部等とCNT繊維束6が電気的に繋がることであり、CNT繊維束6の連結部ではない部分同士が電気的に繋がった場合も連結に含まれる。CNT繊維束6同士の接触とは前記連結部等とCNT繊維束6が触れているが電気的に繋がっていないことであり、CNT繊維束6の連結部ではない部分同士が触れているが電気的に繋がっていない場合も接触に含まれる。
【0035】
なお、CNT繊維束6は、各CNT繊維が実質的にCNT繊維束6の長手方向Aに配向され、撚糸されていない状態のものである。このようなCNT繊維束6を用いることで、CNT膜4の均一性を高め、歪みセンサとしてのリニアリティを高めることができる。
【0036】
なお、前記連結部において、各CNT繊維同士は分子間力により結合している。このため、複数のCNT繊維束6が連結部により網目状に連結した場合においても、連結部の存在による抵抗の上昇が抑えられる。
【0037】
なお、CNT膜4は、CNT繊維束6を平面状に略平行に配置した単層構造からなってもよいし、多層構造からなってもよい。ただし、ある程度の導電性を確保するためには、多層構造とすることが好ましい。なお、「略平行」とは、複数のCNT繊維束6の配向方向の成す角度が±5°以内であることを意味する。
【0038】
CNT繊維(CNT)としては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができるが、導電性及び熱容量等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがさらに好ましい。
【0039】
前記CNT繊維(CNT)は、公知の方法で製造することができ、例えばCVD法、アーク法、レーザーアブレーション法、DIPS法、CoMoCAT法等により製造することができる。これらの中でも、所望するサイズのCNT(MWNT)を効率的に得ることができる点から、鉄を触媒とし、エチレンガスを用いたCVD法により製造することが好ましい。この場合、石英ガラス基板や酸化膜付きシリコン基板等の基板に、触媒となる鉄あるいはニッケル薄膜を成膜した上に、垂直配向成長した所望する長さのCNTの結晶を得ることができる。
【0040】
樹脂層7は樹脂を主成分とし、複数のCNT繊維束6の少なくとも周面を被覆する層である。樹脂層7の主成分としては、基板2の材料として例示した合成樹脂やゴム等を挙げることができ、これらの中でもゴムが好ましい。ゴムを用いることで、大きな歪みに対してもCNT繊維の十分な保護機能を発揮することができる。
【0041】
樹脂層7は、水性エマルジョンから形成されていることが好ましい。水性エマルジョンとは、分散媒の主成分が水であるエマルジョンをいう。CNTは疎水性が高い。そのため、前記樹脂層7を水性エマルジョンから形成すると、例えば塗工や浸漬によりこの樹脂層7を設けることで、樹脂層7がCNT繊維束6の内部全体に含浸せずにCNT繊維束6の周囲又は表層の一部に充填された状態とすることができる。このようにすることで、樹脂層7を形成する樹脂がCNT繊維束6内部全体にしみ込んで、CNT膜4の抵抗変化に影響を及ぼすことを抑制できる。なお、水性エマルジョンは乾燥工程を経ることによって、より安定した樹脂層7とすることができる。
【0042】
当該歪みセンサ1は、樹脂層7がCNT繊維束6の表層の少なくとも一部に含浸していてもよい。つまり、CNT繊維束6の表層の少なくとも一部に樹脂層7が含浸することによって、CNT膜4と基板2との結合性及びCNT膜4の強度が向上し、CNT繊維束6が樹脂層7と共に伸縮し易くなる。一方で、CNT繊維束6の内部に樹脂層7の含浸部により径方向に囲繞される非含浸部を有することで、CNT繊維束6の配向方向に対する変形が樹脂によって阻害されることを防止できる。これらの結果、当該歪みセンサ1の感度及び抵抗変化のリニアリティをさらに高めることができる。さらに、CNT繊維束6の表層への樹脂層7の含浸程度により、CNT繊維束6の断裂を誘導でき、その面でも当該歪みセンサ1の応答性をさらに高めることができる。これらの作用によってCNT繊維束6の長手方向にCNT繊維の分布(濃淡)が発生し、この分布は光学式顕微鏡で確認することもできる。
【0043】
なお、CNT繊維束6は複数のCNT繊維からなるバンドル構造を有する。具体的には、CNT繊維束6の中に複数のCNT繊維がお互いにオーバーラップしながら、長いCNT繊維束6を形成する。この場合、複数のCNT繊維が繋がっていくことによって、電流パスを備える長いCNT繊維束6を形成することになる。これはCNT繊維が長手方向に切断されても電流パスを失わない理由でもある。樹脂層7は最低限バンドル構造体を形成している複数のCNT繊維中まで含浸しなければ、CNT繊維束6の中へ含浸しても問題ない。CNT繊維束6を構成する小さな径のバンドル構造体は、CNT繊維束6の中の小さな径の束と考えられる。
【0044】
CNT繊維束6を構成するCNT繊維には、一対の電極3が離れる方向(方向A)へ歪みが加わることによって切断、離間されてギャップが形成されるが、その横断面においては、CNT繊維が減ることによって前記A方向に部分的に伸縮し易くなる。この部分では前記樹脂層7も伸縮し易くなるため、CNT膜4が前記A方向に剛性の変化を発生させながら伸縮できるようになる。その剛性の変化具合をより細かくすることで当該歪みセンサ1のリニアリティをより高めることができる。
【0045】
前記水性エマルジョンの分散媒の主成分は、水であるが、その他の例えばアルコール等の親水性分散媒が含有されていてもよい。前記エマルジョンの分散質としては、通常樹脂であり、前述したゴム、特には天然ゴムが好ましい。また、分散質としてポリウレタンを用いてもよい。この好ましいエマルジョンは、分散媒を水とし、ゴムを分散質とするするいわゆるラテックスが挙げられ、天然ゴムラテックスが好ましい。天然ゴムラテックスを用いることで、薄くかつ強度のある保護膜を形成することができる。
【0046】
また、樹脂層7はカップリング剤を含有しているとよい。樹脂層7がカップリング剤を含有することで、樹脂層7とCNT繊維束6とを架橋し、樹脂層7とCNT繊維束6との接合力を向上させることができる。
【0047】
前記カップリング剤としては、例えばアミノシランカップリング剤、アミノチタンカップリング剤、アミノアルミニウムカップリング剤等のアミノカップリング剤やシランカップリング剤などを用いることができる。
【0048】
カップリング剤の樹脂層7のマトリックス樹脂100質量部に対する含有量の下限としては、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましい。一方、カップリング剤の樹脂層7のマトリックス樹脂100質量部に対する含有量の上限としては、10質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。カップリング剤の含有量が前記下限未満の場合、CNT繊維束6と樹脂層7との架橋構造の形成が不十分となるおそれがある。逆に、カップリング剤の含有量が前記上限を超える場合、架橋構造を形成しない残留アミン等が増加し、当該歪みセンサ1の品質が低下するおそれがある。
【0049】
また、樹脂層7はCNT繊維束6に対する吸着性を有する分散剤を含有することが好ましい。このような吸着性を有する分散剤としては、吸着基部分が塩構造になっているもの(例えばアルキルアンモニウム塩等)や、CNT繊維束6の疎水性の基(例えばアルキル鎖や芳香族リング等)と相互作用できる親水性の基(例えばポリエーテル等)を分子中に有するもの等を用いることができる。
【0050】
前記分散剤の樹脂層7のマトリックス樹脂100質量部に対する含有量の下限としては、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。一方、分散剤の樹脂層7のマトリックス樹脂100質量部に対する含有量の上限としては、5質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。分散剤の含有量が前記下限未満の場合、CNT繊維束6と樹脂層7との接合力が不十分となるおそれがある。逆に、分散剤の含有量が前記上限を超える場合、CNT繊維束6との接合に寄与しない分散剤が増加し、当該歪みセンサ1の品質が低下するおそれがある。
【0051】
CNT膜4の幅の下限としては、1mmが好ましく、1cmがより好ましい。一方、CNT膜4の幅の上限としては、10cmが好ましく、5cmがより好ましい。このようにCNT膜4の幅を比較的大きくすることで、前述のようにCNT膜4の抵抗値を下げ、かつ、この抵抗値のバラツキも低減することができる。
【0052】
CNT膜4の平均厚みは0.1μm以上50μm以下が好ましい。すなわち、CNT膜4の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましく、3μmがさらに好ましい。一方、CNT膜4の平均厚みの上限としては、50μmが好ましく、10μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。CNT膜4の平均厚みが前記下限未満の場合、このような薄膜の形成が困難になるおそれや、CNT膜4の抵抗が上昇しすぎるおそれがある。逆に、CNT膜4の平均厚みが前記上限を超える場合、樹脂層7が基板2の表面まで到達して接合されないので、CNT膜4が樹脂層7と共に剥がれるおそれがある。すなわち、CNT膜4の平均膜厚が50μm以下の場合には、基板2の表面に樹脂層7が到達して、基板2の表面と樹脂層7とが接合するので、樹脂層7の接合によってCNT膜4が基板2から剥がれるのを防止できる。
【0053】
また、樹脂層7が基板2の表面に接合していることが好ましい。CNT膜4の平均厚みを50μm以下とすることで、樹脂層7を基板2の表面に到達させて容易かつ確実に樹脂層7を基板2に接合することができる。これにより、CNT膜4と基板2との接合強度を高め、CNT膜4の剥離を防止できる。なお、CNT膜4の膜厚をより大きくしたい場合は、予め基板2の表面に塗布等により樹脂層を形成しておき、その上にCNT膜4を配置した後にさらにその上から塗布等により樹脂層を形成してもよい。このように樹脂層7を基板2の表面に到達させることも可能である。
【0054】
CNT膜4におけるCNT繊維束6の密度の下限としては、1.0g/cm
3が好ましく、0.8g/cm
3がより好ましい。一方、CNT膜4におけるCNT繊維束6の密度の上限としては、1.8g/cm
3が好ましく、1.5g/cm
3がより好ましい。CNT膜4におけるCNT繊維束6の密度が前記下限未満の場合、CNT膜4の抵抗値が高くなるおそれがある。逆に、CNT膜4におけるCNT繊維束6の密度が前記上限を超える場合、十分な抵抗変化が得られないおそれがある。
【0055】
(利点)
当該歪みセンサ1によれば、CNT膜4が前述のように設けられていることで、基板2の歪みに応じて、CNT膜4においてCNT繊維束6を構成するCNT繊維の切断、離間、切断個所Pの歪み(伸縮)等によって、CNT膜4の抵抗が変化するため、抵抗変化のリニアリティが高い歪み検知センサとして機能することができる。つまり、当該歪みセンサ1は、CNT繊維同士の接続状況や距離等の変化が部分的かつ段階的に生じるため、CNT膜4の電気抵抗が
図3に示すようにリニアに変化する。
【0056】
さらに、CNT繊維束6内でCNT繊維の切断端部間に外部と隔離された空間が形成され、この空間が収縮力を有すると共に、この空間内でCNT繊維が動くことで当該歪みセンサ1の収縮時にCNT繊維の切断端部間が素早く再接触するため、当該歪みセンサ1は高い応答性を得ることができる。
【0057】
また、当該歪みセンサ1は、長手方向Aに配向された複数のCNT繊維束6及びこれを被覆する樹脂層7によって抵抗変化のリニアリティ及び応答性を高めつつ、CNT膜4内への異物混入等の発生を抑え、センサ機能の持続性を高めることができる。
【0058】
なお、基板2の歪みは、長手方向Aの伸縮のみではなく、基板2の法線方向の変形や、長手方向を軸としたねじれ等も含む。当該歪みセンサ1によれば、このような基板2の歪みも検知することができる。
【0059】
(製造方法)
当該歪みセンサ1の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下の製造工程で製造することができる。
【0060】
(1−1)
図4(a)に示すように、スライドガラス等の離型板上に基板2を形成する。具体的には、スライドガラスXをラテックスや樹脂溶液に浸漬し、その後乾燥させる。これにより、スライドガラスXの表面に樹脂製の平面視矩形状の基板2を形成することができる。なお、離形板としては、スライドガラス以外の他の板材を用いてもよい。
【0061】
(1−2)
図4(b)に示すように、基板2の表面に複数のCNT繊維束6を配置する。具体的には、一方向に配向する複数のCNT繊維束6からなるCNTシート(フィルム)を基板2の表面に配置する。このとき、後工程で積層される一対の電極3の対向方向(長手方向)にCNT繊維束6が配向するようにCNTシートの向きを調節する。
【0062】
なお、前記CNTシートは、成長用基材上に触媒層を形成し、CVD法により一定の方向に配向した複数のCNT繊維を成長させ、
図5のように撚糸せずにそのまま引き出し、他の板材又は筒材等に巻き付けた後に、必要な分のシート状のCNT繊維を取り出すことで得ることができる。このようにして得られたCNT繊維束6は、複数のCNT繊維からなり、このCNT繊維同士が長手方向に連結する連結部を有する構造となっている。
【0063】
(1−3)
図4(c)に示すように、複数のCNT繊維束6の少なくとも周面に樹脂層7を被覆する。具体的には、スライドガラスXも含めた全体をラテックスに浸漬するか、あるいは複数のCNT繊維束6(CNTシート)の表面にラテックスを塗布することで樹脂層7を形成し、CNT膜4を完成させる。このラテックスは前述のとおり、親水性を有する水性エマルジョンを用いることが好ましい。
【0064】
(1−4)
図4(d)に示すように、この基板2の長手方向両端部分に導電性ゴム系接着剤を塗布し、導電層5を形成する。この際、CNT膜4の一部を導電層5が被覆するように導電層5を形成してもよい。
【0065】
(1−5)
図4(e)に示すように、各導電層5の表面に電極3を積層する。
【0066】
(1−6)電極3の積層後、スライドガラスの表面からこれらの積層体を切り出すことで、少なくとも1対の歪みセンサ1を得ることができる。スライドガラスにおける幅方向両端部分は切り落としてもよい。また、長手方向に分断することで、1つの積層体から複数の歪みセンサ1を製造することもできる。なお、スライドガラスから切り出した後、歪みセンサ1を電極3の対向方向に伸張させて、CNT繊維束6に切断個所Pを形成することができる。
【0067】
なお、CNT膜4の積層手順である前記(1−2)は以下のような手順とすることも可能である。
【0068】
(1−2’)
図6に示すように、CNT繊維束6をスライドガラス(基板2)上に巻き付ける。このようにすることで、一方向(一対の電極3の対向方向)に配向する複数のCNT繊維束6を得ることができる。この際、スライドガラス(基板2)の両端を一対の支持具13で挟持し、スライドガラス(基板2)の長手方向を軸に回転させることで、CNT繊維束6を巻き付けることができる。なお、スライドガラスの幅方向両端部分をマスキングテープ12等によりマスクしておいてもよい。
【0069】
また、硬化前の樹脂層7を基材2の表面に積層してから、CNT繊維束6を樹脂層7の内部に配設してもよい。CNT膜4の厚さが小さい場合は、このような手順でもCNT繊維束6の周面を被覆する樹脂層7を形成することができる。
【0070】
<第二実施形態>
図7の歪みセンサ11は、基板2、一対の電極3、CNT膜4及び基板2の裏面に積層されるアシスト層8を主に備える。基板2、電極3及びCNT膜4は、
図1の歪みセンサ1と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
アシスト層8は、基板2とヤング率が異なる部材である。このアシスト層8を基板2よりもヤング率が低い部材とすることで、当該歪みセンサ11を皮膚等に直接張り付けた場合の追従性を高めることができる。また、アシスト層8を基板2よりもヤング率が高い部材とすることで、当該歪みセンサ11の伸縮率をコントロールして歪み検出のディレイを防止することができる。
【0072】
アシスト層8の材質としては、ヤング率の設計条件に合わせて適宜選択することが可能であり、前述の基板2の材料として例示した合成樹脂やゴム等の他、織布、不織布、ニット等を用いることができる。特にアシスト層8としてニットを用いた場合、基板2をニットの繊維層に全体的又は部分的に含浸させることができる。そうすることによって、ニットと基板2との接合強度が高まり、さらにニットが歪みセンサ11の伸び切りを抑制する役目も果たす。このようにニットを最裏面側に配設することで、衣服等への貼り付けに適し、かつ検出感度も良好な歪みセンサとすることができる。
【0073】
アシスト層8のヤング率を基板2よりも低くする場合、基板2のヤング率に対するアシスト層8のヤング率の比の上限としては、0.9が好ましく、0.7がより好ましい。前記ヤング率の比が前記上限を超える場合、アシスト層8による歪みセンサ貼付体の動きに対する追従性上昇効果が十分得られないおそれがある。一方、基板2のヤング率に対するアシスト層8のヤング率の比の下限としては、0.4が好ましく、0.5がより好ましい。前記ヤング率の比が前記下限未満の場合、アシスト層8と基板2とが伸縮によって剥離し易くなるおそれがある。
【0074】
アシスト層8のヤング率を基板2よりも高くする場合、基板2のヤング率に対するアシスト層8のヤング率の比の上限としては、2.5が好ましく、2.0がより好ましい。前記ヤング率の比が前記上限を超える場合、当該歪みセンサ11が変形しにくくなって、センサ感度が低下するおそれがある。一方、基板2のヤング率に対するアシスト層8のヤング率の比の下限としては、1.1が好ましく、1.5がより好ましい。前記ヤング率の比が前記下限未満の場合、アシスト層8による歪みセンサの伸縮率調整効果が十分得られないおそれがある。
【0075】
アシスト層8の平均厚みとしては特に限定されないが、例えば10μm以上1000μm以下とすることができる。
【0076】
当該歪みセンサ11は、前記第一実施形態の歪みセンサ1と同様に、抵抗変化のリニアリティ及び応答性を高めつつ、CNT膜4への異物混入等の発生を抑え、センサ機能の持続性を高めることができる。また、アシスト層8によって、歪みセンサ貼付体の動きに対する追従性や、検出感度の向上を図ることができる。
【0077】
<第三実施形態>
図8の歪みセンサ21は、基板2、一対の電極3、CNT膜4及びCNT膜4の表面に積層されるアシスト層9を主に備える。基板2、電極3及びCNT膜4は、
図1の歪みセンサ1と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。また、アシスト層9は
図7の歪みセンサ11と同様のものとすることができる。なお、このアシスト層9は、
図8に示すように導電層5も被覆することが好ましい。
【0078】
当該歪みセンサ21は、前記第二実施形態の歪みセンサ21と同様に、CNT膜4の表面に積層されたアシスト層9によって、歪みセンサ貼付体の動きに対する追従性や、検出感度の向上を図ることができる。また、CNT膜4内に異物が混入することをより確実に防止することができる。なお、第二実施形態と第三実施形態とを合わせて、アシスト層を両面に形成した歪みセンサとしてもよい。
【0079】
<歪みセンサの使用方法>
当該歪みセンサは、例えば人体の胸部に装着することで、装着者の呼吸を検出することができる。前述のように、当該歪みセンサは、高いリニアリティと応答性とを有するため、装着者が運動をしていても胸部の動きに追従して呼吸を精度よく検出できる。なお、このように呼吸の検出を目的として当該歪みセンサを胸部に装着する場合、みぞおち付近にCNT繊維の配向方向が装着者の胸囲方向(左右方向)と一致するように装着することが好ましい。
【0080】
さらに、当該歪みセンサは、人体の指に装着することで指の動きを検出することができる。例えば当該歪みセンサを指の付け根部分にCNT繊維の配向方向が指の曲がる方向と垂直となるように装着することで、指の周径変化を感知することができ、指の状態や力の入り具合等を検出することができる。
【0081】
<その他の実施形態>
本発明の歪みセンサは前記実施形態に限定されるものではない。例えば、当該歪みセンサは、基板の裏面及びCNT膜の表面にそれぞれアシスト層を設けてもよい。このように歪みセンサの両面側にアシスト層を設けることで、計測対象物への貼付性、検出感度等をバランスよく高めることができる。
【0082】
さらに、当該歪みセンサにおいて、CNT膜がCNT繊維束の配向方向と垂直な方向に沿って開裂可能な部分を有していてもよい。このように、CNT膜にCNT繊維束の配向方向と垂直な方向に沿って開裂可能な部分を形成することで、抵抗変化の過渡応答性が高まり、より大きな歪み(伸縮)に対しても優れたセンサ機能を発揮することができる。この場合、この開裂可能な部分にCNT繊維束の切断個所が形成され易くなる。
【0083】
また、
図9に示す歪みセンサ31のように、2つのCNT膜4を長手方向(CNT繊維配向方向)に平行となるように並置し、これらのCNT膜4の一端を導電層5で長手方向と垂直な方向に接続してもよい。この歪みセンサ31は、このCNT膜4同士の接続側には電極3は配設されず、この接続側と反対側に各CNT膜4と接続する電極3が1つずつ配設されている。この歪みセンサ31においては、CNT繊維の配向方向が導電層5において180°変化しているが、CNT繊維の配向方向の両端に一対の電極3が配設されている。この歪みセンサ31は、長手方向の長さを維持したまま、CNT膜4が有するCNT繊維の配向長さを2倍とすることができる。なお、導電層5によって長手方向と垂直な方向に3以上のCNT膜4を接続することもできる。
【0084】
さらに、当該歪みセンサの基板は完全な直方体からなる板状体に限定されるものではなく、変形させて用いることもできる。例えば基板を筒状や波状とすることで、当該歪みセンサの用途を広げることができる。CNT繊維束としても、CNTを紡いで得られたCNTファイバー等を用いてもよい。さらには、CNT膜において、一対の電極の対向方向と垂直方向に対向するさらにもう一対の電極を設けてもよい。このように直交する2対の電極を設けることで、当該歪みセンサを二次元センサとして用いることもできる。また、当該歪みセンサの表面又は裏面を粘着性を有する樹脂で被覆することによって、人体、構造物等の歪みを検出したい場所へ簡易に貼り付けて用いることもできる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
図1に示す歪みセンサにCNT繊維の配向方向Aの引張力を加え、3Hzの周期で歪み量(歪みセンサのA方向長さに対する伸び)を25%から80%の間で周期的に変化させ、このときの歪みセンサの抵抗値の変化を計測した。その結果を
図10に示す。
図10(a)は、1秒間の歪み量と抵抗値との変化をプロットした応答反応性を示すグラフであり、
図10(b)は、
図10(a)における歪み量と抵抗値との関係をプロットしたグラフである。
【0087】
(実施例2)
前記実施例1と同様に、
図1に示す歪みセンサにCNT繊維の配向方向Aの引張力を加え、3Hzの周期で歪み量を40%から90%の間で周期的に変化させ、このときの歪みセンサの抵抗値の変化を計測した。その結果を
図11に示す。
図11(a)は、1秒間の歪み量と抵抗値との変化をプロットした応答反応性を示すグラフであり、
図11(b)は、
図11(a)における歪み量と抵抗値との関係をプロットしたグラフである。
【0088】
図10(a)及び
図11(a)に示すように、本発明の歪みセンサは、歪み量の変化に対し抵抗値の変化の応答のディレイが非常に小さく、応答性に優れることがわかる。さらに、
図10(b)及び
図11(b)に示すように、伸縮を繰り返しても歪み量と抵抗値との関係が略線形を維持し、抵抗変化のリニアリティと持続性とに優れることがわかる。また、本発明の歪みセンサは、前述のようにプリストレスとして予め印加される歪み量を変化させた場合においても、抵抗値がリニアに変化すると共に、応答性に優れることが確認できる。