【文献】
САВОСТИН Ю А, ЧЕНЕЦ В В, КОЖЕВНИКОВА Н Г, КОСЫГИНА К Ф, ЛИПОВИЧ В Г, ЗАЙДМАН Н М,О роли добавки олова к алюмо‐платиновым катализаторам.,Khim Tekhnol Topl Masel ,1979年,No.1 ,Page.18-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
背景
フェノールは化学工業で重要な製品であり、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び可塑剤の製造で有用である。
現在、最も一般的なフェノールの製造経路はホック(Hock)法である。これは三工程法であり、第1工程は、ベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンを生成した後、クメンを対応ヒドロペルオキシドに酸化してからヒドロペルオキシドを分解して等モル量のフェノールとアセトンを生成する工程を含む。しかしながら、フェノールに対する世界の需要はアセトンに対する需要より急速に増えている。さらに、高じる不足のため、プロピレンのコストが増加することが予想される。従って、供給原料としてプロピレンの代わりに高級アルカンを使用し、アセトンではなく高級ケトンを共生成する方法はフェノール製造の魅力的な代替経路であり得る。
1つの該方法は、シクロヘキシルベンゼンを生成するためのベンゼンのヒドロアルキル化後にシクロヘキシルベンゼンをシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドへの酸化(クメン酸化に類似)を含み、次にこれを分解してフェノールとシクロヘキサンを実質的に等モル量で生成する。該方法は、例えば、米国特許第6,037,513号に記載されている。
しかしながら、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの分解によるフェノール製造の1つの問題は、シクロヘキサノンとフェノールが28重量%のシクロヘキサノンと72重量%のフェノールで構成される共沸混合物を生成することである。従って分解流出物を単純な蒸留で分離するいずれの試みもこの共沸混合物をもたらす。この問題を取り除くためにシクロヘキシルベンゼン酸化及び分解プロセスを脱水素工程と統合することによって、シクロヘキサノンの少なくとも一部をさらなるフェノールに変換することが提案された(国際特許公開第WO2010/024975号参照)。該脱水素工程は一般的にシクロヘキサノンを担持貴金属触媒と約250℃〜約500℃の温度で接触させることによって達成される。
【0003】
例えば、米国特許第3,534,110号は、シリカ担体上に白金及び好ましくはイリジウムを含む触媒によるシクロヘキサノン及び/又はシクロヘキサノールのフェノールへの触媒脱水素方法を開示している。触媒は0.5重量%〜3重量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物をも含有し、3欄の43〜49行目によれば、この化合物は白金の添加後に組み入れるべきである。そうしないと結果として生じる触媒組成物の活性、選択性、及び寿命が劣るからである。
さらに、米国特許第3,580,970号は、VIII族金属、特にニッケル及びスズを、スズ1モル当たり約1.7〜約15モルのVIII族金属のモル量で含む触媒の存在下での脂環式アルコール及びケトンの対応ヒドロキシ芳香族アルコールへの脱水素方法を開示している。触媒はさらにシリカ担体及びアルカリ金属安定化剤を含み得る。実施例では、触媒は2.22重量%〜14.2重量%のスズを含有する。
米国特許第4,933,507号は、シリカ、シリカ-アルミナ又はアルミナ等の担体上に白金とアルカリ金属を支持させた固相触媒を用いて水素の存在下で気相反応を経てシクロヘキサノンを脱水素することよってフェノールを製造できる方法を開示している。触媒は、最初に担体をクロロ白金酸等の水溶液で処理して、担体に塩化白金を支持させてから担体を処理してその上にK
2CO
3等のアルカリ金属化合物を担持させ、そのように処理した担体を最後に還元することによって調製される。触媒中のアルカリ金属の含量は、Na
2Oに関しては担体の重量に基づいて0.5重量%〜2.0重量%の範囲及びK
2CO
3に関しては白金の重量に基づいて0.2重量%〜3.0重量%の範囲が好ましい。
米国特許第7,285,685号は、二酸化ジルコニウム及び/又は二酸化ケイ素(SiO
2)等の酸化物(oxidic)担体上に白金及び/又はパラジウムとスズを含む不均一系脱水素触媒によって気相内でシクロヘキサノン等の飽和カルボニル化合物を脱水素する方法を開示している。一般に、脱水素触媒は、脱水素触媒の総重量に基づいて、0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.1重量%〜1重量%、特に好ましくは0.2重量%〜0.6重量%の白金及び/又はパラジウムと、0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.2重量%〜2重量%、特に好ましくは0.4重量%〜1重量%のスズとを含有する。さらに、脱水素触媒はI族及び/又はII族の1種以上の元素、好ましくはカリウム及び/又はセシウムをさらに含みことができ、これらの元素はか焼によって対応する酸化物に変換され得る化合物の水溶液として触媒に添加される。唯一の触媒調製実施例では、エタノール中のSnCl
2.2H
2OとH
2PtCl
6.6H
2Oの溶液をシリカ/チタニア担体に含浸させた後にCsNO
3及びKNO
3を含む水溶液を該担体に添加してから15時間100℃で乾燥させ、560℃で3時間か焼した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
ここでは触媒組成物及びその合成方法を説明する。触媒組成物は、(i)担体;(ii)元素周期表の6族〜10族から選択される少なくとも1種の金属又はその化合物を含む脱水素成分;及び(iii)触媒組成物の総重量に基づいて約0.01重量%〜約0.25重量%のスズの量で存在するスズ又はスズ化合物を含む。触媒組成物は、脂環式アルコール及びケトンの対応ヒドロキシ芳香族アルコールへの脱水素、特にフェノールを製造するためのシクロヘキサノンの脱水素に有用である。
1つの好ましい実施形態では、シクロヘキシルベンゼン経由でフェノールを製造するための統合プロセスで副生物として生成されるシクロヘキサノンを脱水素するために本触媒を利用する。このプロセスでは、ベンゼンをヒドロアルキル化してシクロヘキシルベンゼンを生成し、次にこのシクロヘキシルベンゼンが酸化及び分解を受けてフェノールとシクロヘキサノンを生じさせる。次にシクロヘキサノンを脱水素して追加のフェノールを水素と共に生じさせる。この水素をベンゼンヒドロアルキル化工程に再循環させるのが望ましい。従って本触媒はこの好ましい実施形態に関連して特に詳しいが、当然のことながら、本触媒を利用して他の脂環式アルコール及びケトンをそれらの対応ヒドロキシ芳香族アルコールへ脱水素することができる。
【0010】
シクロヘキシルベンゼンの生成
ベンゼンからフェノール及びシクロヘキサノンを生成するための統合プロセスでは、最初に、ゼオライトベータ又はMCM-22ファミリーの分子ふるい等の酸触媒の存在下でシクロヘキセンを用いるベンゼンのアルキル化を含めたいずれかの従来の技術によって、或いはビフェニルを生じさせるベンゼンの酸化的カップリング後のビフェニルの水素化によってベンゼンをシクロヘキシルベンゼンに変換する。しかしながら、実際には、シクロヘキシルベンゼンは一般的に、ヒドロアルキル化条件下ヒドロアルキル化触媒の存在下でベンゼンを水素と接触させ、それによってベンゼンが下記反応(1)を受けてシクロヘキシルベンゼン(CHB)を生じさせることによって生成される。
【0012】
シクロヘキシルベンゼン生成のために水素の存在下でベンゼンをヒドロアルキル化する例については、参照によってその内容をここに援用する米国特許第6,730,625号及び第7,579,511号を参照されたい。また、シクロヘキシルベンゼン生成のための水素の存在下でのベンゼンの触媒的ヒドロアルキル化に関する国際出願WO2009131769又はWO2009128984を参照されたい。
いずれの市販のベンゼン供給原料をもヒドロアルキル化反応で使用できるが、ベンゼンが少なくとも99重量%の純度レベルを有するのが好ましい。同様に、水素源は重要でないが、一般的に水素が少なくとも99重量%の純度であるのが望ましい。
固定床、スラリー反応器、及び/又は接触蒸留塔を含め、広範な反応器構成でヒドロアルキル化反応を行なえる。さらに、ヒドロアルキル化反応を単一の反応ゾーン又は複数の反応ゾーンで行なうことができ、少なくとも水素は段階的に反応に導入される。適切な反応温度は約100℃〜約400℃、例えば約125℃〜約250℃であり、さらに適切な反応圧力は約100kPa〜約7,000kPa、例えば約500kPa〜約5,000kPaである。水素対ベンゼンのモル比の適切な値は、約0.15:1〜約15:1、例えば約0.4:1〜約4:1、例えば約0.4:1〜約0.9:1である。
【0013】
ヒドロアルキル化反応で用いる触媒は、MCM-22ファミリーの分子ふるいと水素化金属とを含む二機能性触媒である。用語「MCM-22ファミリー材料」(又は「MCM-22ファミリーの材料」又は「MCM-22ファミリーの分子ふるい」)には、本明細書では、MWWフレームワークトポロジーを有する分子ふるいが含まれる。(該結晶構造は、参照によって内容全体をここに援用する"Atlas of Zeolite Framework Types", Fifth edition, 2001に記載されている)。
MCM-22ファミリーの分子ふるいは一般的に12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07Åにd間隔最大値を含むX線回折パターンを有する。材料(b)を特徴づけるために使用するX線回折データは、入射放射線として銅のKα二重線を使用し、かつ収集システムとしてシンチレーションカウンター及び関連コンピューターを備えた回折計を用いる標準的な手法によって得られる。MCM-22ファミリーの分子ふるいとしては、MCM-22(米国特許第4,954,325号に記載)、PSH-3(米国特許第4,439,409号に記載)、SSZ-25(米国特許第4,826,667号に記載)、ERB-1(欧州特許第0293032号)、ITQ-1(米国特許第6,077,498号に記載)、ITQ-2(国際特許公開第WO97/17290号に記載)、MCM-36(米国特許第5,250,277号に記載)、MCM-49(米国特許第5,236,575号に記載)、MCM-56(米国特許第5,362,697号に記載)、UZM-8(米国特許第6,756,030号に記載)、及びその混合物が挙げられる。好ましくは、分子ふるいは、(a)MCM-49;(b)MCM-56;及び(c)MCM-49及びMCM-56のイソ型、例えばITQ-2から選択される。
【0014】
いずれの既知の水素化金属をもヒドロアルキル化触媒に利用できるが、適切な金属としては、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、及びコバルトが挙げられ、パラジウムが特に有利である。一般的に、触媒中に存在する水素化金属の量は、触媒の約0.05重量%〜約10重量%、例えば約0.1重量%〜約5重量%である。
適切なバインダー材料としては、合成又は天然に存在する物質及び無機材料、例えば粘土、シリカ、及び/又は金属酸化物が挙げられる。後者は天然に存在するもの又はシリカ及び金属酸化物の混合物を含むゼラチン状沈殿物又はゲルの形であってよい。バインダーとして使用できる天然に存在する粘土には、モンモリロナイト及びカオリンファミリーのものがあり、このファミリーには、主な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト(nacrite)及びアナウキサイト(anauxite)であるディキシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア及びフロリダ粘土又はその他として一般的に知られているスベントナイト(subbentonite)及びカオリンが含まれる。このような粘土は、元々採掘された未加工状態で、或いは最初にか焼、酸処理又は化学修飾に供した状態で使用できる。適切な金属酸化物バインダーとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア並びに三元組成物、例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、及びシリカ-マグネシア-ジルコニアが挙げられる。
【0015】
ヒドロアルキル化反応はシクロヘキシルベンゼンに向けて選択性が高いが、ヒドロアルキル化反応の流出物は一般的にいくらかのジアルキル化生成物、並びに未反応ベンゼン及び所望のモノアルキル化種を含有するであろう。未反応ベンゼンは一般的に蒸留で回収されてアルキル化反応器に再循環される。ベンゼン蒸留の最下層はさらに蒸留されて、いずれのジシクロヘキシルベンゼンその他の重質物からもモノシクロヘキシルベンゼン生成物が分離される。反応流出物中に存在するジシクロヘキシルベンゼンの量によっては、(a)追加のベンゼンでジシクロヘキシルベンゼンをアルキル交換するか又は(b)ジシクロヘキシルベンゼンを脱アルキルして、所望のモノアルキル化種の生成量を最大にするのが望ましい。
追加のベンゼンによるアルキル交換は典型的にヒドロアルキル化反応器とは別のアルキル交換反応器で、適切なアルキル交換触媒、例えばMCM-22ファミリーの分子ふるい、ゼオライトベータ、MCM-68(米国特許第6,014,018号参照)、ゼオライトY、ゼオライトUSY、及びモルデナイト上で達成される。アルキル交換反応は典型的に少なくとも一部が液相条件下で行なわれ、この条件には適宜約100℃〜約300℃の温度、約800kPa〜約3500kPaの圧力、総供給原料について約1時間
-1〜約10時間
-1の重量毎時空間速度、及び約1:1〜約5:1のベンゼン/ジシクロヘキシルベンゼンの重量比が含まれる。
【0016】
ヒドロアルキル化反応の1つの副生物はシクロヘキサンである。ベンゼンとシクロヘキサンの沸点が類似するため、ヒドロアルキル化反応流出物からシクロヘキサンと未反応ベンゼンを含むC
6リッチストリームを蒸留で簡単に除去できるが、C
6リッチストリームを単純な蒸留でさらに分離するのは難しい。しかしながら、C
6リッチストリームの一部又は全てをヒドロアルキル化反応器に再循環させて、ベンゼン供給原料の一部を提供するのみならず、上記希釈物の一部をも提供することができる。
場合によっては、C
6リッチストリームの一部を脱水素反応ゾーンに供給するのが望ましく、このゾーンでC
6リッチストリームはC
6リッチストリーム部内のシクロヘキサンの少なくとも一部をベンゼンに変換するのに十分な脱水素条件下で脱水素触媒と接触し、この場合もやはり該ベンゼンをヒドロアルキル化反応に再循環させ得る。脱水素触媒は一般的に(a)担体;(b)水素化-脱水素成分;及び(c)無機プロモーターを含む。好都合には、担体(a)はシリカ、シリケート、アルミノシリケート、ジルコニア、及びカーボンナノチューブから成る群より選択され、好ましくはシリカを含む。好適な水素化-脱水素成分(b)は、元素周期表の6族〜10族から選択される少なくとも1種の金属、例えば白金、パラジウム並びにその化合物及び混合物を含む。典型的に、水素化-脱水素成分は触媒の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する。好適な無機プロモーター(c)は、元素周期表の1族から選択される少なくとも1種の金属又はその化合物、例えばスズ化合物を含む。典型的に、プロモーターは触媒の約0.1重量%〜約5重量%の量で存在する。好適な脱水素条件には、約250℃〜約500℃の温度、ほぼ大気圧〜約500psig(100kPa〜3550kPa)の圧力、約0.2時間
-1〜50時間
-1の重量毎時空間速度、及び約0〜約20の水素対炭化水素供給原料のモル比が含まれる。本明細書では、周期表の族の番号付けスキームはChemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に開示されているとおりである。
ヒドロアルキル化反応からのシクロヘキシルベンゼン生成物を以下にさらに詳述する酸化反応に供給することができる。
【0017】
シクロヘキシルベンゼン酸化
シクロヘキシルベンゼンをフェノールとシクロヘキサノンに変換するため、最初にシクロヘキシルベンゼンを対応ヒドロペルオキシドに酸化する。これは、シクロヘキシルベンゼンを酸素含有ガス、例えば空気及び空気の種々の誘導体と接触させることによって達成される。例えば、圧縮かつろ過して微粒子を除去した空気、圧縮かつ冷却して濃縮かつ水を除去した空気、又は空気の膜富化、空気の深冷分離その他の通常の手段によって空気中の天然の約21モル%を超えて酸素を富化した空気を使用することができる。
酸化は触媒の存在下で行なわれる。好適な酸化触媒としては、この目的で参照によってここに援用する米国特許第6,720,462号に記載のN-ヒドロキシ置換環状イミンが挙げられる。例えば、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)、4-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、3-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラブロモ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラクロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘチミド(N-hydroxyhetimide)、N-ヒドロキシヒミミド(N-hydroxyhimimide)、N-ヒドロキシトリメリトイミド、N-ヒドロキシベンゼン-1,2,4-トリカルボキシミド、N,N'-ジヒドロキシ(ピロメリト酸ジイミド)、N,N'-ジヒドロキシ(ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸ジイミド)、N-ヒドロキシマレイミド、ピリジン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシ(酒石酸イミド)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド、エキソ-N-ヒドロキシ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシナフタルイミドナトリウム塩又はN-ヒドロキシ-o-ベンゼンジスルホンイミドを使用できる。好ましくは、触媒はN-ヒドロキシフタルイミドである。別の好適な触媒はN,N',N''-トリヒドロキシイソシアヌル酸である。
これらの酸化触媒は単独で又は遊離基開始剤と共に使用可能であり、さらに液相、均一系触媒として使用可能であり、或いは固体担体に担持させて不均一系触媒を形成することができる。典型的に、N-ヒドロキシ置換環状イミド又はN,N',N''-トリヒドロキシイソシアヌル酸は、シクロヘキシルベンゼンの0.0001重量%〜15重量%、例えば0.001重量%〜5重量%の量で用いられる。
【0018】
酸化工程に適した条件には、約70℃〜約200℃、例えば約90℃〜約130℃の温度、及び約50kPa〜10,000kPaの圧力が含まれる。塩基性緩衝剤を添加して、酸化中に生じ得る酸性副生物と反応させてよい。さらに、水相を導入してよい。バッチ又は連続流様式で反応を行なうことができる。
酸化反応に使用する反応器は、酸素をシクロヘキシルベンゼンに導入することができ、かつ酸素とシクロヘキシルベンゼンのさらに効率的な接触を可能にして酸化反応を達成できるいずれのタイプの反応器であってもよい。例えば、酸化反応器は、酸素含有ストリーム用の分配入口を備えた単純な大開口容器を含み得る。種々の実施形態では、酸化反応器は、その中身の一部を適切な冷却装置を通して引き出し、ポンプでくみ上げてその冷却された部分を反応器に戻すことによって酸化反応の発熱性(exothermicity)を管理する手段を有し得る。或いは、例えば冷却水によって間接的な冷却を可能にする冷却コイルを酸化反応器内で操作して、発生した熱を取り除くことができる。他の実施形態では、酸化反応器は直列の複数の反応器を含んでよく、それぞれ酸化反応の一部を行ない、必要に応じてシクロヘキシルベンゼン若しくは酸素、又は両者それぞれの妥当な変換範囲で酸化反応を増強するように選択した異なる条件で操作する。バッチ、半バッチ又は連続流様式で酸化反応器を操作してよい。
【0019】
典型的に、シクロヘキシルベンゼン酸化反応の生成物は、酸化反応流出物の総重量に基づいて少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%のシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドを含む。一般に、酸化反応流出物は、酸化反応流出物の総重量に基づいて80重量%以下、又は60重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下のシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドを含む。酸化反応流出物はさらにイミド触媒及び未反応シクロヘキシルベンゼンを含み得る。例えば、酸化反応流出物は、未反応シクロヘキシルベンゼンを酸化反応流出物の総重量に基づいて少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の量で含み得る。
酸化反応流出物の少なくとも一部は、シクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドをフェノールとシクロヘキサノンに変換するための分解反応に供される。分解は酸化反応流出物に対して行なわれ、該流出物は何らかの前分離又は前処理を受けることも受けないこともある。例えば、酸化反応流出物の全て又はほんの一部を高真空蒸留に供して未反応シクロヘキシルベンゼンに富む生成物を作り出だすことができ、残った残渣は所望のシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドに濃縮され、かつ分解反応に供される。しかしながら、一般に、シクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドの該濃度は必要でなく、好ましくもない。さらに或いはこれとは別に、酸化流出物の全て若しくはほんの一部、又は真空蒸留残渣の全て又はほんの一部を冷却して未反応イミド酸化触媒の結晶化を引き起こしてよく、これを次にろ過によるか又は結晶化を果たすために用いた熱交換器表面からこすり取ることによって分離することができる。結果として減少したか又はイミド酸化触媒を含まない酸化組成物の少なくとも一部を分解反応に供し得る。
別の例として、酸化流出物の全て又はほんの一部を水洗に供してから3A分子ふるい等の吸着剤を通過させて水その他の吸着性化合物を分離し、水又はイミド含量が減じた酸化組成物をあたえることができ、これを分解反応に供し得る。同様に、酸化流出物の全て又はほんの一部が、炭酸ナトリウム床上の通過のような化学又は物理学に基づいた吸着を経てイミド酸化触媒(例えば、NHPI)又は他の吸着性成分を除去し、酸化触媒又は他の吸着性成分含量が減少した酸化組成物をもたらし得る。これを分解反応に供し得る。別の可能な分離は、酸化流出物の全て又はほんの一部をアルカリ金属の炭酸塩又は炭酸水素塩の水溶液等の塩基を含有する液体と接触させて、イミド酸化触媒の塩を含む水相と、イミド酸化触媒が減じた有機相とを形成することを含む。塩基性材料処理による分離の例は、国際出願第WO 2009/025939号に開示されている。
【0020】
ヒドロペルオキシド分解
シクロヘキシルベンゼンのフェノールとシクロヘキサノンへの変換の最終反応工程は、酸化工程で生じたシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドの酸触媒分解を含む。
一般的に、分解反応で用いる酸触媒は、分解反応混合物に少なくとも部分的に可溶性であり、少なくとも185℃の温度で安定であり、かつシクロヘキシルベンゼンより揮発性が低い(より高い標準沸点)。典型的に、酸化触媒は分解反応生成物にも少なくとも部分的に可溶性である。好適な酸化触媒としては、限定するものではないが、ブレンステッド酸、ルイス酸、スルホン酸、過塩素酸、リン酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、塩化アルミニウム、発煙硫酸、三酸化イオウ、塩化第二鉄、三臭化ホウ素、二酸化イオウ、及び三酸化イオウが挙げられる。硫酸が好ましい酸触媒である。
種々の実施形態では、分解反応混合物は、分解反応混合物の総重量に基づいて少なくとも50重量百万分率(weight-parts-per-million)(wppm)かつ5000wppm以下の酸触媒、又は少なくとも100wppm〜3000wppm以下、又は少なくとも150wppm〜2000wppmの酸触媒、又は少なくとも300wppmかつ1500wppm以下の酸触媒を含む。
一実施形態では、分解反応混合物は、極性溶媒、例えば6個未満の炭素を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はエチレングリコール;ニトリル、例えばアセトニトリル及び/又はプロピオニトリル;ニトロメタン;及び6個以下の炭素を含むケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン又は3-ペンタノン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロペンタノンを含む。好ましい極性溶媒はアセトンである。一般的に、極性溶媒は分解反応混合物に、該混合物中の極性溶媒とシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの重量比が約1:100〜約100:1、例えば約1:20〜約10:1であり、かつ該混合物が約10重量%〜約40重量%のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含むように添加される。極性溶媒の添加は、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの変換度を高めるのみならず、フェノールとシクロヘキサノンへの変換の選択性をも高める。機構は完全には分かっていないが、極性溶媒はシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの望ましくない生成物、例えばヘキサノフェノン及びフェニルシクロヘキサノールへのラジカル誘導変換を減じると考えられる。
【0021】
種々の実施形態では、分解反応混合物は、分解反応混合物の総重量に基づいて少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の量でシクロヘキシルベンゼンを含む。
適切な分解条件は、分解反応中に分解反応混合物が完全に又は主に液相内に存在するように、50℃より高く、かつ200℃以下、又は少なくとも55℃かつ120℃以下の温度、及び少なくとも1psigかつ370psig以下(少なくとも7kPaゲージかつ2,550kPaゲージ以下)、又は少なくとも14.5psigかつ145psig以下(少なくとも100kPaゲージかつ1,000kPaゲージ以下)の圧力を含む。
分解反応の達成に用いる反応器は、当業者に既知のいずれのタイプの反応器であってもよい。例えば、分解反応器は、ほぼ連続的な撹拌タンク反応器モードで作動する単純な大開口容器、又はほぼ栓流反応器モードで作動する単純な開口長の管であってよい。他の実施形態では、分解反応器は直列の複数の反応器を含み、それぞれ変換反応の一部を行ない、必要に応じて妥当な変換範囲で分解反応を増強するように選択された異なるモード及び異なる条件で作動する。一実施形態では、分解反応器は触媒蒸留ユニットである。
種々の実施形態では、分解反応器は中身の一部を冷却装置を通して輸送し、この冷却部分を分解反応器に戻すことによって、分解反応の発熱性を管理する働きをする。或いは、反応器は断熱状態で作動し得る。一実施形態では、分解反応器内で作動する冷却コイルが、発生したいずれの熱をも除去する。
シクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドの分解反応の主生成物はフェノール及びシクロヘキサノンであり、それぞれ一般的に分解反応生成物の約40重量%〜約60重量%、又は約45重量%〜約55重量%を構成し、該重量%は、未反応シクロヘキシルベンゼン及び酸触媒を除いた分解反応生成物の重量に基づいている。
【0022】
分解反応生成物は、典型的に未反応酸触媒をも含有するので、分解反応生成物の少なくとも一部は一般的に塩基性材料で中和されて酸を除去するか又は生成物中の酸のレベルを減少させる。
好適な塩基性材料には、アルカリ金属の水酸化物及び酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、及び水酸化バリウムがある。炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムも必要に応じて高温で使用してもよい。
種々の実施形態では、塩基性材料は下記の1種以上を含む:苛性交換樹脂(例えば、スルホン酸イオン交換樹脂);アンモニア又は水酸化アンモニウム;塩基性粘土、例えば石灰石、ドロマイト、マグネサイト、セピオライト、及びかんらん石;活性炭及び/又は含浸活性炭;アニオン交換樹脂、例えばスチレン-ジビニルベンゼンポリマー骨格と、-N(CH
3)
2、-NRH又は-NR
2(Rは水素又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基である)から選択されるアミン官能構造とを有する弱塩基性イオン交換樹脂;エチレンジアミンで官能化されたアミンポリシロキサン;微孔性又はメソ多孔性金属酸化物にグラフトされた有機塩基材料;他の有機-無機固体、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、及びラジウムの群から選択される金属で交換されたゼオライト;リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、及びセシウムから選択される金属で処理された元素周期表のIII族の酸化物;担持されたか又は固体アルカリ金属、アルカリ土類金属又は有機金属;一般的にマグネシウム塩と可溶性シリケートの相互作用から誘導されるケイ酸マグネシウム;塩基性加水分解を伴う塩、例えば酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムフェナート、及び炭酸ナトリウム;並びにアミン、例えば一級、二級、若しくは三級脂肪族アミン又は芳香族アミン、例えばアニリン、n-ブチルアミン、ヘテロ環式アミン、例えばピリジン、ピペリジン、ピペラジン、トリ-エチルアミン、脂肪族又は芳香族ジアミン及びアルカノールアミン。特に、弱有機酸との塩の形のアミンを使用し得る。好都合には、塩基性材料はジアミン、例えば2-メチルペンタメチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンであり、商標名DYTEK
TMA及びDYTEK
TMHMDでInvista S.a r.l. Corporationから商業的に入手可能である。
好適な固体塩基性材料には下記のものがある:塩基性金属酸化物ファミリー;金属酸化物上アルカリ;金属酸化物上アルカリ土類;アルカリ及びアルカリ土類ゼオライト;遷移金属、希土類及び高原子価酸化物;ヒドロタルサイト、か焼ヒドロタルサイト及びスピネル、特にリチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、及びその組合せから選択されるアルカリ金属で処理されたヒドロタルサイト;ペロブスカイト;及びβアルミナ。
【0023】
一実施形態では、塩基性材料は米国特許第6,201,157号に記載されている1種以上のヒンダードアミンである。当然のことながら、この塩基性材料は無水状態で添加可能であり、或いは上記塩基性材料、特に金属水酸化物及び塩基性加水分解を伴う塩のいずれかの水溶液であってよい。
好都合には、本発明の中和反応で用いる液体塩基性材料、例えば上述したアミン又はジアミンは、比較的低い揮発性を有し、シクロヘキシルベンゼンより標準沸点が高いので、該液体塩基性材料を含有し得る、処理された分解反応生成物の少なくとも一部に対して行い得るその後の分画操作で底部生成物に残る傾向がある。
中和反応が達成される条件は、利用する酸触媒及び塩基性材料によって異なる。好適な中和条件には、少なくとも30℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも60℃、又は少なくとも70℃、又は少なくとも80℃、又は少なくとも90℃の温度が含まれる。他の好適な中和条件には、200℃以下、又は190℃以下、又は180℃以下、又は170℃以下、又は160℃以下、又は150℃以下、又は140℃以下、又は130℃以下、又は120℃以下、又は110℃以下、又は100℃以下の温度が含まれる。種々の実施形態では、中和条件には、分解反応条件から下がった温度が含まれ、例えば、該温度は分解反応の温度より1℃、又は5℃、又は10℃、又は15℃、又は20℃、又は30℃、又は40℃低くてよい。
好適な中和条件は、処理された分解反応混合物が中和反応中に完全に又は主に液相内に存在するように、約1psig〜約500psig(5kPaゲージ〜3450kPaゲージ)、又は約10psig〜200psig(70kPaゲージ〜1380kPaゲージ)の圧力を包含し得る。
中和後、中和された酸生成物を分解生成物から除去してフェノールとシクロヘキサノンの粗製混合物を残すことができ、次にこれを処理してシクロヘキサノンの少なくとも一部が追加のフェノールに変換される。
【0024】
シクロヘキサノン脱水素
ベンゼン出発原料からのフェノールの生成量を最大にするため、分解流出物中のシクロヘキサノンの少なくとも一部を下記反応に従う脱水素に供する。
【0026】
上述したように、シクロヘキサノンとフェノールは、28重量%のシクロヘキサノンのと72重量%のフェノールで構成される共沸混合物を生成するので、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド分解工程からの流出物を単純な蒸留で分離するいずれの試みもこの共沸混合物をもたらす。さらに、少なくとも部分的な真空下で蒸留を行なうことによって分離効率を高め得るが、フェノール/シクロヘキサノン分離は依然として費用のかかるプロセスのままである。従って、一実施形態では、脱水素工程への供給原料が分解流出物と同一組成を有し、それによって最初の高価な分離工程の必要性を回避する。シクロヘキサノン脱水素の効率によっては、最終性生成物が実質的に全てのフェノールを含むことがあり、それによって分解流出物からフェノールを分離するという問題を少なくとも減らす。
別の実施形態では、脱水素前に分解流出物を1以上の分離プロセスに供して流出物の1種以上の成分を回収又は除去する。特に、分解流出物を少なくとも第1分離工程に供して流出物からフェノールの一部又は全てを回収するのが都合よく、その結果、典型的に前記脱水素反応に供給される流出物ストリームは50重量%未満、例えば30重量%未満、例えば1重量%未満のフェノールを含む。フェノールの分離は真空蒸留及び/又は抽出蒸留で達成するのが都合よい。脱水素反応に流出物ストリームを供給する前に、追加の蒸留工程を利用して、155℃(101kPaで測定)未満で沸騰する成分、例えばベンゼン及びシクロヘキサノン、並びに/或いは185℃(101kPaで測定)超えで沸騰する成分、例えば2-フェニルフェノール及びジフェニルエーテルを除去することができる。
【0027】
シクロヘキサノン脱水素反応で用いる触媒は、(i)担体;(ii)元素周期表の6族〜10族から選択される少なくとも1種の金属又はその化合物を含む脱水素成分;及び(iii)スズ又はスズ化合物を含む。
スズ又はスズ化合物は、触媒組成物の総重量に基づいて約0.01重量%〜約0.25重量%、又は約0.02重量%〜約0.25重量%、又は約0.03重量%〜約0.25重量%、又は約0.04重量%〜約0.20重量%、又は約0.05重量%〜約0.20重量%、又は約0.05重量%〜約0.15重量%、0.07重量%〜約0.1重量%のスズの量で存在し得る。この量は、いずれの下限からいずれの上限に及ぶ範囲も企図される。他の実施形態では、スズ又はスズ化合物を元素周期表の14族から選択される別の金属成分と交換することができる。
種々の実施形態では、触媒組成物は、2重量%未満のニッケル、又は<1重量%のニッケル、又は<0.5重量%のニッケル、又は0.1重量%未満のニッケルを含むか、或いはニッケルを含まない。種々の実施形態では、触媒組成物は、2重量%未満のコバルト、又は<1重量%のコバルト、又は<0.5重量%のコバルト、又は0.1重量%未満のコバルトを含むか、或いはコバルトを含まない。種々の実施形態では、触媒組成物は、ルテニウム、ロジウム、鉛及び/又はゲルマニウム、及び/又はいずれの他の活性元素成分をも含まないか又は実質的に含まない。
種々の実施形態では、触媒中の脱水素成分とスズ成分の比(例えば、Pt/Sn比)は0.5より大きいか、又は1より大きいか、又は1.5より大きいか、又は2.5より大きいか、又は2.7より大きいか、又は3より大きく、2.5超え〜400、又は2.7〜200、又は3〜100の比が好ましい。
当然のことながら、触媒組成物中のスズは純粋に元素金属でなくてよいが、例えば、少なくとも部分的に、別の形態、例えば塩、酸化物、塩化物、水素化物、硫化物、炭酸塩等であり得る。この出願の目的では、触媒組成物中のスズ又はスズ化合物の重量%は、触媒組成物を形成するために用いたスズの量に基づいて計算される。例示目的では、1.9gの塩化スズ塩(1gのスズ)と22.29gのテトラアミン(tetraammine)白金ヒドロキシド溶液(4.486重量%のPt)で作製され、98gの二酸化ケイ素上に担持されている触媒組成物は、触媒組成物の総重量に基づいて、1重量%のスズと1重量%のPtを含む。
【0028】
さらに、種々の成分の重量%を決定する目的では、脱水素成分及び/又はスズ若しくはスズ化合物を担持する担体の当該部分のみを考慮すべきである。
触媒担体は、典型的にシリカ、シリケート、アルミノシリケート、カーボン(例えばカーボンナノチューブ)で形成される。一実施形態では、担体は、MCM-41、MCM-48及びMCM-50から選択される結晶性メソ多孔性シリケート材料を含む。他の実施形態では、シリカ担体は、約10m
2/g〜1000m
2/g、例えば約20m
2/g〜約500m
2/gの範囲のASTM D3663により測定した表面積、約0.2cc/g〜約3.0cc/gの範囲の細孔容積及び約10Å〜約2000Å、例えば約20Å〜約500Åの範囲のメジアン細孔径を有する。このような細孔容積及びメジアン細孔径は、ASTM D4284に記載されている水銀圧入ポロシメトリー(mercury intrusion porosimetry)で測定される。担体はバインダーを含んでも含まなくてもよい。好適なシリカ担体は、例えば、この目的で参照によってここに援用するPCT公開第WO/2007084440号、2007年1月27日出願、表題「シリカ担体」に記載されている。
一般的に、脱水素成分は、元素周期表の6族〜10族から選択される少なくとも1種の金属成分、例えば白金(Pt)及び/又はパラジウム(Pd)を含む。典型的に、脱水素成分は、触媒の約0.1重量%〜約10重量%の量で存在する。一実施形態では、脱水素成分は、触媒の約0.1重量%〜約5重量%又は触媒の約0.2重量%〜約4重量%又は触媒の約0.3重量%〜約3重量%又は触媒の約0.4重量%〜2重量%の量で存在する。
一実施形態では、触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、特にカリウム又はカリウム化合物から選択される金属成分を含む無機塩基成分をさらに含有する。典型的に、無機塩基成分は、触媒の約0.1重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約3重量%、例えば約0.1重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0029】
脱水素触媒は、典型的に担体を逐次又は同時処理すること、例えば水等の液体キャリア中に脱水素成分若しくはその前駆体、スズ成分若しくはその前駆体及び/又は任意の無機塩基成分若しくはその前駆体を含む1種以上の液体組成物に含浸させることによって調製される。各液体キャリアに有機分散剤を添加して、金属成分の担体への均一な適用を補助することができる。適切な有機分散剤としては、アミノアルコール及びアミノ酸、例えばアルギニンが挙げられる。一般的に、有機分散剤は、液体組成物の約1重量%〜約20重量%の量で液体組成物中に存在する。
好ましい一実施形態では、触媒は、脱水素成分の前に担体にスズ成分を適用する逐次含浸によって調製される。
液体組成物による処理後、担体は1以上の段階で、一般的に約100℃〜約700℃の温度で約0.5〜約50時間加熱されて、(a)液体キャリアの除去;(b)金属成分の触媒活性形への変換;及び(c)有機分散剤の分解の1つ以上を達成する。加熱は酸化雰囲気、例えば空気中、又は還元雰囲気条件、例えば水素下で行ない得る。脱水素成分を含有する液体組成物による処理後、担体は一般的に約200℃〜約500℃、例えば約300℃〜約450℃の温度で約1〜約10時間加熱される。
【0030】
一実施形態では、脱水素触媒は、約30%超え、例えば約40%超え、例えば約50%超え、さらに約60%超え、約70%超え、又はさらに約80%超えの酸素化学吸着値を有する。本明細書では、特定触媒の酸素化学吸着値は、該触媒についての金属分散の尺度であり、[触媒により吸着された原子酸素のモル数対触媒に含まれる脱水素金属のモル数に対する比]
*100%として定義される。本明細書で言及する酸素化学吸着値は下記技術を利用して測定される。酸素化学吸着測定値は、Micromeritics ASAP 2010を用いて得られる。約0.3〜0.5gの触媒をMicrometrics装置に入れる。ヘリウムを流しながら、触媒を周囲温度(すなわち、18℃)から250℃まで10℃/分の速度で昇温して5分間保持する。5分後、サンプルを真空下250℃に30分間置く。30分の真空後、サンプルを35℃まで20℃/分で冷却して5分間保持する。0.50〜760mmHgの間、酸素と水素の等温線を35℃の増分で収集する。この曲線の直線部をゼロ圧力へ外挿して総(すなわち、合計)吸着取込みを得る。
脱水素工程に適した条件は、約250℃〜約500℃の温度及び/又は約0.01atm〜約20atm(1kPa〜2000kPa)の圧力、例えば約300℃〜約450℃の温度及び約1atm〜約3atm(100kPa〜300kPa)の圧力を含む。触媒の安定性を改善し、かつ脱水素反応で発生した水素の抽出を補助するため、典型的に脱水素供給原料中の水素対シクロヘキサノンのモル比が約0:1〜約4:1になるように、脱水素反応に水素を共供給することができる。
【0031】
脱水素プロセスで用いる反応器構成は一般的に脱水素触媒を含有する1つ以上の固定床反応器を含む。好ましくは中間熱交換器を有する複数の断熱床によって、反応の吸熱に備えることができる。反応ストリームの温度は各触媒床で降下するので、熱交換器で上昇させる。好ましくは、3〜5の床を使用し、各床を横断して温度が約30℃〜約100℃下がる。好ましくは系列の最後の床は、同系列の最初の床より高い出口温度で動作する。
シクロヘキサノン脱水素反応からの流出物は主にフェノールと水素で構成される。所望フェノールは反応流出物から分画により容易に取り出されて水素ストリームを残し、この水素ストリームは、適切な精製後に、ベンゼンヒドロアルキル化工程に再循環され得る。
本脱水素プロセスを利用することで、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド分解流出物中の実質的に全てのシクロヘキサノンをフェノールに変換することができる。しかしながら、実際には、市場条件によっては、シクロヘキサノン生成物に相当な需要が予想される。これは、反応(2)の可逆性に頼ることによって、すなわち、フェノールの少なくとも一部を水素化してシクロヘキサノンに戻すことによって容易に満たせる。これは、例えば、フェノールを水素化触媒、例えば白金又はパラジウムの存在下、約20℃〜約250℃の温度、約101kPa〜約10000kPaの圧力及び約1:1〜約100:1の水素対フェノールのモルを含めた条件下で水素と接触させることによって容易に達成可能である。
【0032】
シクロヘキサノン及びフェノールの使用
本明細書で開示するプロセスにより製造されたシクロヘキサノンは、例えば、工業用溶媒として、酸化反応並びにアジピン酸、シクロヘキサノン樹脂、シクロヘキサノンオキシム、カプロラクタム及びナイロン、例えばナイロン6及びナイロン6,6の製造の活性剤として使用し得る。
本明細書で開示するプロセスにより製造されたフェノールを用いて、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸及び/又は可塑剤を製造することができる。
ここで、下記非限定例及び添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0033】
実施例1(比較):シリカ担体上に1%のPt、0.50%のKを含む触媒の生成
初期湿潤含浸(incipient wetness impregnation)を利用して1/20インチ(0.13cm)のシリカ押出物に炭酸カリウムとして0.50重量%のKを含浸させて121℃で乾燥させた。乾燥後、0.50重量%カリウム含有シリカ押出物を空気中で538℃にてか焼した。か焼された0.50%K含有シリカ押出物に初期湿潤含浸を利用してテトラアミン白金ヒドロキシドとして1%Ptを含浸させて121℃で乾燥させた。乾燥後、1%Pt、0.50%K含有シリカ押出物を空気中で350℃にてか焼した。
【0034】
実施例2:0.1%Sn/1%Pt//SiO
2触媒の生成
最初にシリカ押出物にテトラアミンPtニトラートの水溶液を含浸させることによって触媒を調製した。空気中で121℃にて乾燥させた後、結果として生じた白金含有押出物に塩化スズの水溶液を含浸させてから空気中で121℃にて乾燥させた。結果としての生成物の一部はそのままにし(非か焼触媒2A)、一部を空気中で350℃にて3時間か焼した後に引き続く触媒試験で使用した(か焼触媒2B)。触媒の組成を表1に要約する。
【0035】
実施例3〜8:1%Pt/x%Sn/SiO
2触媒の生成
1重量%の白金と、可変量、すなわち0.05重量%(実施例3)、0.1重量%(実施例4)、0.15重量%(実施例5)、0.25重量%(実施例6)、0.5重量%(実施例7)、及び1重量%(実施例8)のスズとを含有するさらに5種の触媒を初期湿潤含浸により調製した。いずれの場合も、最初に1/20インチ(0.13cm)の四葉状(quadrulobe)シリカ押出物に塩化スズの水溶液を含浸させてから空気中で121℃にて乾燥させた。結果として生じたスズ含有押出物に次にテトラアミンPtニトラートの水溶液を含浸させて再び空気中で121℃にて乾燥させた。結果としての各生成物を空気中で350℃にて3時間か焼した後に引き続く触媒試験で使用した。触媒の組成を表1に要約する。
【0036】
実施例9:1%Pt/1%Sn/0.5%K/SiO
2触媒の生成
カリウム、スズ及び白金含有1/20インチ(0.13cm)の四葉状シリカ押出物を初期湿潤含浸により調製した。最初に、シリカ押出物に炭酸カリウム水溶液を含浸させてから空気中で121℃にて乾燥させ、再び空気中で538℃にて3時間か焼した。カリウム含有押出物に次に塩化スズ水溶液を含浸させてから空気中で121℃にて乾燥させた。結果として生じたカリウム及びスズ含有押出物に次にテトラアミンPtニトラート水溶液を含浸させて、再び空気中で121℃にて乾燥させた。結果としての各生成物を2つの部分に分割し;第1部分(Aと命名)はか焼せずに引き続く触媒試験で使用し、第2部分(Bと命名)は空気中で350℃にて3時間か焼した後に引き続く触媒試験で使用した。触媒の組成を表1に要約する。
【0037】
実施例10:化学吸着試験
実施例1〜9のそれぞれか焼及び非か焼サンプルの水素及び酸素の化学吸着をMicromeritics ASAP2010機器で下記化学吸着手順を利用して測定した。
【0038】
【0039】
化学吸着結果を表1に要約する。
実施例11:ベンゼン水素化試験
下記手順を利用して実施例1〜9の触媒のいくらかをそれらのベンゼン水素化活性(100℃での1次速度定数)を測定することによってさらに特徴づけた。
1. パージ−200sccmでヘリウム流動開始、パージ時間5分。
2. 乾燥−5℃/分で110℃まで昇温、保持時間60分。
3. 還元−350℃(Pdについて)、250℃(Ptについて)で還元、200sccmでH
2流動、1時間の保持時間。
4. 反応温度範囲は、50℃、75℃、100℃、125℃であり、100℃での1次速度定数を表1にBHA No.として報告する。
【0040】
表1
【0041】
実施例12:シクロヘキサノン(CHO)脱水素試験
これらの試験で用いた反応器は、寸法が22インチ(56cm)の長さ、0.5インチ(1.3cm)の外径及び0.035インチ(0.09cm)の壁厚の316ステンレススチール管から成っていた。8.75インチ(22cm)の長さ及び0.375インチ(0.95cm)の外径の1片の316ステンレススチール管材及び同長の一片の0.25インチ(0.64cm)管材を反応器の底部にスペーサーとして用いて(一方の内側にもう一方)、炉の等温ゾーン内に触媒を位置づけて支持した。0.25インチ(0.64cm)のグラスウール栓をスペーサーの上部に置いて触媒を適所に維持した。0.125インチ(0.32cm)のステンレススチールサーモウェルを触媒床に置いた。サーモウェルは、可動熱電対を用いて触媒床全体にわたって温度をモニターするのに十分長い。
各触媒サンプルを加圧してペレットにしてから粉砕して20〜40USメッシュに寸法を合わせた(sized)。典型的に5.0g、体積12.5ccの触媒を20〜40メッシュに予め寸法を合わせて標準充填物として使用した。次に触媒を反応器に上部から充填した。触媒床は典型的に長さが15cmであった。0.25インチ(0.64cm)のグラスウール栓を触媒上部に置いて触媒から石英チップを分離した。反応器上部の残存空きスペースを石英チップで満たした。炉の中央に予め印のついた等温ゾーンに触媒床を備えた炉内に反応器を設置した。次に反応器を加圧して典型的に300psig(2170kPa)で漏れ試験した。
【0042】
各触媒サンプルを100cc/分でH
2を流しながら375℃〜460℃に加熱して2時間保持することによって現場で前調整した。500ccのISCOシリンジポンプを用いてシクロヘキサノンを反応器に導入した。加熱ラインを通って反応器に流れる前に気化器を通して供給原料をポンプで注入した。Brooksマスフローコントローラーを用いて水素流速を設定した。Grove「Mity Mite」背圧コントローラーを用いて反応器圧を典型的には100psig(790kPa)で制御した。GC分析を行なって供給原料組成を検証した。次に375℃〜460℃、好ましくは460℃の反応温度、2〜15のWHSV及び100psig(790kPa)の圧力で保持した触媒床を通して供給原料をポンプで注入した。反応器を出る生成物は、2つの直列の収集ポットに送られる加熱ラインを通って流れた。不凝縮ガス生成物はオンラインHP 5890 GCに送られた。第1ポットを60℃に加熱し、第2ポットをチルドクーラントで約10℃に冷却した。物質収支を12〜24時間間隔でとった。サンプルを取り、分析のため50%エタノールで希釈した。FID検出器及び30m×0.32mm×0.25μm膜厚のAgilent technologies GCカラムを備えたHewlett Packard 6890ガスクロマトグラフを炭化水素生成物の分析に用いた。不凝縮ガス生成物分析は60m×0.25mm ID×1.0μm膜のJ & W Scientificカラムを備えたHP 5980ガスクロマトグラフを用いてオンラインで行なった。HP 6890GC分析のランププログラムは以下のように設定した:40℃で0分;150℃まで5℃/分、0分保持;260℃まで10℃/分、28分保持;総分析時間は60分であった;及びHP 5890 GCランプは以下のように設定した:-30℃で5分、80℃まで5℃/分、2分保持、200℃まで5℃/分、0分保持、240℃まで15℃/分、総分析時間60分の最後まで240℃で保持した。
実施例1〜9の触媒のシクロヘキサノン試験の結果を添付図面に要約する。
【0043】
図1は、0.5重量%Kが存在する場合及び存在しない場合(それぞれ、実施例9B及び8)の両方でか焼1重量%Pt/SiO
2触媒中に1重量%でSnが存在すると、Snを含まない比較例1の触媒に比べて、より低い触媒活性及びより高い触媒失活をもたらしたことを示す。これは、シクロヘキサノン(CHO)の転化率を参照して例証される。しかしながら、ペンタン形成の劇的な減少が観察された(
図2)。0.10重量%のSnをPt/担体に添加した場合、か焼の有無にかかわらず(実施例2A及び2B)、データはこの手法が触媒活性を改善することを示し、より高いシクロヘキサノン転化率が得られた。実施例2Bのか焼サンプルは、実施例2Aの非か焼サンプル及び比較例1のK/Pt触媒より良い安定性を示す(
図3)。実施例2Bのか焼サンプルは、実施例2Aの非か焼サンプルより良いフェノールへの選択性を示すが、そのペンタン選択性は比較例1のPt/K触媒より高い。
データは、PtとSnの添加順序は触媒の活性と安定性に影響を及ぼさないことを示し、両触媒は同様のシクロヘキサノン転化率及び同様の触媒失活を示す。従って、実施例2Bのか焼0.1%Sn/1%Pt/SiO
2触媒及び実施例8のか焼1%Pt/0.1%Sn/SiO
2触媒は比較例1のPt/K触媒に比べて触媒の活性と安定性の同様の改善を示す(
図6)。しかしながら、予想外に、Sn添加順序はペンタン形成に劇的な影響を与える。従って、
図7に示すように、実施例8のように最初にSnを添加してからPtを添加すると、まずPtを担体に添加してからSnを添加した実施例2Bの触媒に比べて減少したペンテン生成を示し、ペンチルベンゼンはGC検出限界未満であった。同様に、
図8は、実施例8の触媒(Snを最初に添加)を用いて実施例2Bの触媒(Ptを最初に添加)に比べてフェノールへの良い選択性が観察されたことを示す。
図9は、0.15重量%過剰量のSnの添加が触媒の安定性と活性に悪影響を及ぼすことを実証する。0.05重量%及び0.1重量%のSn触媒は両方とも同様の触媒失活を示した。
図10は、<0.25重量%のSnを含有する触媒は同様のフェノール選択性を示すことを実証し、
図11は、Sn含量を増やすと触媒のペンタン形成への選択性を下げることを実証する。ペンチルベンゼン選択性は一貫してGC検出限界未満であった。
【0044】
本発明を特定の実施形態を参照して説明かつ例示したが、当業者は、本発明は本明細書で必ずしも例示していない変形形態に役立つことを認めるであろう。従って、こういう訳で、本発明の真の範囲を決める目的では添付の特許請求の範囲のみを参照すべきである。