【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、観察者に対向する上面を有する多層フィルム体の形態のセキュリティエレメントであって、セキュリティエレメントは、第一の光学可変情報を提供する体積ホログラムが記録される体積ホログラム層を有し、セキュリティエレメントは、表面に第二の光学可変情報を提供するレリーフ構造が成型され、体積ホログラム層の上に配置される、複製層を有し、体積ホログラム層と複製層との間に部分的な金属層が配置され、金属層は、セキュリティエレメントの一つまたは多数の第一のゾーンに備えられ、金属層は、セキュリティエレメントの一つまたは多数の第二のゾーンには備えられないセキュリティエレメントにより達成される。さらに、本目的は、観察者に対向する上面を有する多層フィルム体の形態のセキュリティエレメントの製造方法であって、部分的な金属層および複製層を含む多層体が備えられ、第二の光学可変情報を提供するレリーフ構造が複製層の表面に成型され、金属層がセキュリティエレメントの一つまたは多数の第一のゾーンに備えられ、金属層がセキュリティエレメントの一つまたは多数の第二のゾーンには備えられず、体積ホログラム層が多層フィルム体の複製層よりも金属層に近い表面に適用され、部分的な金属層が体積ホログラムと複製層との間に配置され、体積ホログラム層に体積ホログラムを記録するために、体積ホログラム層が、部分的な金属層を通して、多層体の体積ホログラム層から離れた側からコヒーレント光で露光されるセキュリティエレメントの製造方法により達成される。
【0008】
本発明は、偽造が非常に困難であり、しかしながら目的に適った方法で製造可能なセキュリティエレメントを提供する。レリーフ構造が成型される、体積ホログラム層と複製層との間の部分的な金属層の配置により、一方では、第一のゾーンにおいて金属層の下にある体積ホログラム層の領域の光学効果が抑制され、他方では、レリーフ構造の光学効果が、これらのゾーンで生じて示される。従って、体積ホログラム層とレリーフ構造とを互いに部分的に精確な配置状態で適用する必要なく、第一および第二のゾーンで生じる異なる光学効果のシームレスな遷移が実行される。その結果、第一および第二の情報が、精確な配置精度で互いに平行に存在する領域において、歪みのない状態および高光度で生じ、その結果、観察者に対して、鮮明で印象的な光学可変全体インプレッションを生じる。さらに、このインプレッションは、一方では、体積ホログラム層により生じる光学可変効果と、他方では、下方に金属層を備える複製層により生じる光学可変効果とが、各場合に、それぞれ他の技術によって模倣が困難であり、従って、第一および第二の光学可変情報を生じる構造が、偽造に対して互いに保護するため、光学的な複製では模倣することができない。さらに、第一および第二の情報を提供する構造の密接な関連性が、層の配列により得られ、一つの構造の模倣の試みが自動的に他の構造の光学的インプレッションに影響し、模倣の試みが直ちに分かる。さらに、本発明の方法によれば、体積ホログラムが、部分的な金属層を通じて、体積ホログラム層に書き込まれ、従って、部分的な金属層が、体積ホログラムを書き込むための露光マスクの機能を生じるという事実により、層の密接な関連性が得られる。従って、体積ホログラム層は、層に体積ホログラムが書き込まれていない領域を有するため、第一に、層の後分離がより困難となり、第二に、そのような模倣の試みは、直ちに分かる。
【0009】
本発明のさらなる好ましい実施形態が、従属項に示される。
【0010】
レリーフ構造が、複製層の下面に成型され、部分的な金属層が、複製層と体積ホログラム層との間に直接配置されること、が特に好ましい。第一のゾーンにおいて、金属層の第一の表面が、複製層に隣接し、第一の表面とは反対側にある金属層の第二の表面が、体積ホログラム層に隣接する。さらに、第二のゾーンにおいて、複製層が体積ホログラム層と隣接する。
【0011】
従って、体積ホログラム層は、第一のゾーンにおいて金属層と直接隣接し、第二のゾーンにおいて複製層と直接隣接し、第二のゾーンにおいて形成される接着ブリッジのために、体積ホログラム層の後分離が困難である。さらに、第一および第二のゾーンにおける異なる接着作用および接着力のために、分離の試みは、得られる表面パターンから直ちに分かる。
【0012】
この場合、特に複製層に用いられる材料を選ぶことにより、複製層の材料と体積ホログラム層の上面に備えられる材料との間に、0.2未満の異なる屈折率を選択し、好ましくは、これらの材料の屈折率をほぼ同一であるように選択することが特に好ましい。これにより、体積ホログラム層の適用時に、第二のゾーンにおいて複製層の下面に成型される表面構造が、同じ屈折率を有する透明な材料、すなわち、体積ホログラム層の材料で充填され、従って、これらの構造の光学効果をキャンセルさせることができる。これは、第一に、レリーフ構造および複製層を成型するプロセスと、金属層を構築するプロセスの位置合わせが不要である、と言う利点を提供する。さらに、第二のゾーンの領域において複製層に成型される可能性のあるレリーフ構造が、体積ホログラムが体積ホログラム層に書き込まれる際に、記録結果の歪みまたは破損を導かない、という点が保証される。従って、例えば、表面レリーフは、全エリアにわたり複製層に成型可能であり、観察者に対して生じる光学可変情報は、例えば、レーザーによる金属層の個性化によって、第二のステップにおいてのみ規定することができる。この場合、体積ホログラムの記録後のレーザーによる金属層の後処理によるこの情報の後修正は、本発明の方法により記録された体積ホログラムの場合、この体積ホログラムが体積ホログラム層のある領域のみに存在するため、直ちに分かり、その結果、そのような模倣の試みは、直ちに分かる。
【0013】
互いに隣接する複製層および体積ホログラム層に用いられる材料に依り、場合によっては複製層と体積ホログラム層との間に接着促進層を配置してもよく、この接着促進層の役割は、2つの層の接着を互いに強め、または、複製層と接着促進層との間、および体積ホログラム層と接着促進層との間に、複製層と体積ホログラム層との間の直接接着より強い接着を行うことである。この場合、接着促進層は、複製層の屈折率および体積ホログラム層の上面に備えられた材料の屈折率と0.2未満異なる屈折率を有する。その結果、接着促進層は、セキュリティエレメントの製造中、または後使用時に、特に光学的な撹乱効果を生じない。
【0014】
さらに、セキュリティエレメントの多数の層の重ね刷りにより、または穿孔により、セキュリティエレメントの個性化を実施することもできる。従って、例えば、観察者に対向するセキュリティエレメントの上面に、一つまたは多数の第一のゾーンと一つまたは多数の第二のゾーンとの間のゾーン境界にわたって好ましくは延びる、個性化印を適用することができる。この場合、個性化情報の適用は、凹版印刷で実施することが、この方法によって、複製層に成型されたレリーフ構造および体積ホログラム層が、適用される圧力により変形され、光学特性に関して継続的に変化するため、特に好ましい。少なくとも複製層と体積ホログラム層とを通じて延びる微穿孔の形成も、光学効果を生じる層の継続的および不可逆変化を導く。その結果、例えば重ね刷りの剥離または除去による個性化情報の後変更は、もはや不可能であり、模倣の試みは、直ちに分かるようになる。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態によれば、第三の情報を形成するために、一つまたは多数の第一のゾーンまたは一つまたは多数の第二のゾーンは、パターン形態で形成されている。従って、例えば、第一または第二のゾーンは、第二および/または第一のゾーンにより形成された背景に対して、例えば、ポートレート、ロゴ、ギロシェ、または英数字情報を表す、パターン領域を形成する。この場合、第一および/または第二のゾーンを、300μm未満、好ましくは150μm未満のライン幅を有する細いラインの形態で形成し、このようなラインにより、例えばギロシェまたは観察者が知覚できる他の情報、例えばポートレートを形成することが特に好ましい。
【0016】
本発明のさらなる好ましい例示的一実施形態によれば、第一または第二のゾーンは、セキュリティエレメントの第一の領域において交互に備えられ、この場合、少なくとも一方向において互いに連なる第一のゾーンは、互いに300μm未満の間隔を空ける。これにより、第一の領域において、第一および第二の光学可変情報が、同一の領域において観察者に対して生じ、特に簡潔で偽造が困難な光学可変インプレッションが、第一の領域において観察者に対して生じる。従って、セキュリティ特性として、第一の領域において、観察者に対して、全体的に新しい色および動的効果を生じることが可能であり、この効果は、体積ホログラムまたは表面ホログラムそれ自体では提供することができない。
【0017】
第一の領域における第一のゾーンの平均幅の比率と第二のゾーンの平均幅の比率は、0.75:1から1:5であることが好ましい。従って、例えば、第一のゾーンの幅が120μm未満で選択され、第二のゾーンの幅が120μm以上で選択されることが好ましい。第一および第二のゾーンの幅がこのように選択される場合、第一の領域において観察者に対して生じる光学可変インプレッションが、特に鮮明で高光度であることが、研究で分かっている。
【0018】
第一および第二のゾーンは、規則的な、一または二次元のグリッド、例えば、ライングリッドまたはエリアグリッドに従って配置されることが好ましい。この場合、第一および第二のゾーンの形態は、例えば、さらに、英数字またはシンボルの形態を有し、補助器具によってのみ知覚可能となるセキュリティ特性を提供するように構築してもよい。エリアグリッドが選択された場合、第一のゾーンおよび/または第二のゾーンは、点状または多角形の形態で形成されることが好ましい。さらに、一または二次元のグリッドは、幾何学的な変換グリッド、例えば環状または波状の一次元変換グリッドであり、例えば、第一のゾーンが、第一の領域において、同心環の形態、または波状のラインの形態で備えられてもよい。
【0019】
本発明のさらなる好ましい一実施形態によれば、第一の領域は、300μm以上の最小寸法を有し、第四の情報を形成するために、パターン形態で形成される。従って、第一の領域において生じる、上述した、重ね合わされた光学可変インプレッションは、例えば十字領域、またはポートレートの形成領域において提供され、その結果、さらに興味深く人目を引く可変効果が得られる。
【0020】
複製層に形成されるレリーフ構造は、50μm未満の寸法のレリ−フ構造、例えば、100から3500ライン/mmの空間周波数を有する回折格子、ホログラム、0次回折構造、ブレーズ格子、キノフォルム、好ましくは異方性のマット構造または等方性のマット構造、屈折構造、例えばレンズ構造、例えばマイクロレンズ構造、ブレーズ格子またはプリズム構造、または上述したレリーフ構造の一つ以上の組み合わせであることが好ましい。さらに、レリーフ構造は、複製層の全エリアにわたり、または複製層の部分的領域にのみ成型されてもよく、第一のゾーンの領域のみにおける複製層に成型されることが好ましい。
【0021】
金属層は、アルミニウム、銀、金、銅、クロム、SiOx、またはこれらの材料の合金からなることが好ましい。金属層の層厚は、0.1から100nmであることが好ましく、金属層の層厚は、金属層の不透明度が40%から50%以上、好ましくは80%以上であるように選択されることが好ましい。
【0022】
本発明のさらなる好ましい例示的一実施形態によれば、第一、第二、第三および第四の情報のグループからの2つ以上の情報が、全体としてさらなる情報を表す。従って、例えば、モチーフ全体の部分的なモチーフが、第一および第二の光学可変情報により、それぞれ形成される。例えば、第二の情報が、第一の情報が表す樹木の葉を形成する。その結果、セキュリティエレメントの一つの層の操作は、ごく軽度の操作であっても、直ちに、直感的に観察者に知覚される。
【0023】
さらに、第一、第二、第三、および第四の情報は、セキュリティエレメントにおいて、互いに平行な、または互いに重なった状態で備えられてもよい。従って、例えば、第一の領域において、第一のゾーンをあるイメージの形態、例えば花のパターンで形成し(第三の情報)、第二の領域において、第一および第二のゾーンをグリッドに従ってパターン形態で配置し(第四の情報)、第三の領域において、第一のゾーンを、画像を形成し、好ましくは120μm未満のライン幅を有する、細いラインの形態で形成してもよい。これらの領域は、部分的に互いに重なっていてもよい。さらに、例えば第一のゾーンを微小文字の形態で形成するため、さらなる領域において、50μm未満のライン幅を有する第一の領域を備えてもよい。
【0024】
本発明のさらなる好ましい例示的一実施形態によれば、体積ホログラムマスターは、体積ホログラム層と直接接触して、または光学媒体により体積ホログラム層と分離した状態で、体積ホログラム層の下方に配置される。この場合、用いられる体積ホログラムマスターは、光学可変表面レリーフを有し、反射層が備えられた体積ホログラムマスターであることが好ましい。しかしながら、また、体積ホログラムの記録に体積ホログラムマスターが用いられる、体積ホログラムに対する従来の記録技術の場合のように、体積ホログラムマスターとして、表面レリーフの代わりに、体積ホログラムを用いてもよい。体積ホログラムの記録では、表面レリーフマスターと体積ホログラムマスターとの組み合わせも用いることができる。さらに、体積ホログラムマスターは、体積ホログラム層から離れた側に配置され、体積ホログラムの記録に用いられるコヒーレント光は、体積ホログラム層を露光するために、このように配置された体積ホログラムマスターを通過し、または、複製層および部分的な金属層を通過する前に、このように配置された体積ホログラムマスターに反射されてもよい。この場合、干渉パターンを形成するために、参照光が、反対側、すなわち、体積ホログラム層に面した側から、体積ホログラム層に照射されることが好ましい。
【0025】
体積ホログラム層に記録される体積ホログラムの色は、露光に用いられる光の波長、露光に用いられる光の入射角度、体積ホログラムマスターの回折作用、特に、その表面レリーフ、格子周期またはアジマス角度、およびフォトポリマー、フォトポリマーの硬化プロセス、および体積ホログラム層の収縮または膨張に対するフォトポリマーの光学的処理により、決定されることが好ましい。
【0026】
従って、多色体積ホログラムの製造のために、例えば、ある領域における異なる硬化プロセスまたは異なる後処理で、ある領域の体積ホログラム層を収縮または膨張させ、これにより、体積ホログラム層の体積ホログラムが複数の色を示す領域を生じることができる。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態によれば、多色体積ホログラムの製造のために、以下の方法が実施される。
【0028】
2つ以上のレーザーが、体積ホログラム層の露光に用いられる。この場合、まず、体積ホログラム層は、各レーザーにより生じる光ビームにより異なる入射角度で露光可能であり、各レーザーは、異なる色値を有する体積ホログラムのイメージ領域を作り出す。さらに、レーザーが、異なる波長を有する光を照射し、異なる色値を有するイメージ領域が、各レーザーにより、体積ホログラムに記録されてもよい。この場合、2つ以上のレーザーにより生じる光は、カプラーにより、体積ホログラム層において体積ホログラムを記録するために用いられる光ビームに結合されることが、特に好ましい。上述した方法は、互いに組み合わせ可能である。
【0029】
異なる色値を有するイメージ領域を備えた多色体積ホログラムを生じるために、この場合に採用される工程は、好ましくは以下の通りである。
【0030】
レーザー、各レーザーと体積ホログラム層との間のビーム経路に配置された変調器、および/または露光ビームの入射角度を決定する偏向エレメントは、所定の色値を有するべき各イメージ領域が、露光波長を有する光、および/または、ある角度で作用し、所定の色値を備えた体積ホログラムイメージ領域の記録をもたらす光で露光されるように、相応に駆動される。さらに、この場合、2つ以上のレーザーと体積ホログラム層との間のビーム経路に、各レーザーにより記録されるイメージ領域の位置および形状を決定する露光マスクを配置してもよい。
【0031】
この場合、2つ以上のレーザー、変調器、および/または、偏向エレメントは、コントロールユニットにより駆動されることが好ましく、それは、多色体積ホログラムを生じるため、例えば、位置センサーによりレーザーに対する体積ホログラムマスターの位置を測定し、2つ以上のレーザーによる体積ホログラムマスターの精確な配置精度の露光を制御する。その結果、それぞれが異なる回折構造(例えば、構造プロファイル、アジマス、またはライン間隔が異なる)を有する体積ホログラムマスターの異なる領域が、異なるパラメータ(例えば、入射角度、波長、または偏光)を有するレーザー光で露光可能となる。
【0032】
本発明の目的は、観察者に対向する上面を有するともに体積ホログラムを有する多層フィルム体の形態のセキュリティエレメントであって、セキュリティエレメントは複製層を有し、その表面にはレリーフ構造が成型され、10μm以上、好ましくは15μm以上のレリーフ構造のレリーフ深度を有する一つまたは多数の第一の領域を有するとともに、2μm未満、特に1μm未満のレリーフ構造のレリーフ深度を有する一つまたは多数の第二の領域を有し、複製層の第一の領域が、体積ホログラム材料で充填され、そこに第一の光学可変情報を提供する体積ホログラムが記録されるセキュリティエレメントにより、さらに達成される。さらに、本目的は、観察者に対向する上面を有する多層フィルム体の形態のセキュリティエレメントの製造方法であって、複製層を含む多層体が備えられ、その表面にはレリーフ構造が成型され、10μm以上のレリーフ構造のレリーフ深度を有する一つまたは多数の第一の領域と、2μm未満、特に1μm未満のレリーフ構造のレリーフ深度を有する一つまたは多数の第二の領域とを有し、複製層の第一の領域が、体積ホログラム材料で充填され、体積ホログラムを記録するために、体積ホログラム材料が第一の領域において露光されるセキュリティエレメントの製造方法により、達成される。
【0033】
体積ホログラムの記録は、体積ホログラムマスターにより行われる。その後に、体積ホログラム材料は硬化され、体積ホログラムが固定される。これらのプロセスステップに関しては、本例示的実施形態に相応に適用可能であり、好ましくは本例示的実施形態に相応に組み合わせ可能な、上記説明を参照されたい。
【0034】
上述した工程は、光学的複製方法による体積ホログラムの模倣が困難であり、偽造が困難であるとともに新しい光学可変効果により識別されるセキュリティエレメントが提供されるように、体積ホログラムの光学的外観に影響を与えることができる。第一の領域において、10μm以上、好ましくは15μm以上のレリーフ深度を備えたレリーフ構造が、複製ラッカー層に成型されるという事実により、体積ホログラム材料が第一および第二の領域双方において全エリアにわたり適用され、その後に体積ホログラムが体積ホログラム層に記録された場合でも、第一および第二の領域において明らかに異なる光学的インプレッションが生じる。特に、体積ホログラム材料の適用重量を適切に選択することで(全エリア適用の場合でも)、露光および硬化後に、体積ホログラムが第一の領域で生じ、第二の領域では生じなくすることができる。これは、例えば、観察者に見える体積ホログラムの輝度を付加的に調整するために用いることができ、従って、観察者に対して示される光学可変外観に付加的なグレースケール情報を導入するために用いることができる。しかしながら、さらに、体積ホログラムより生じる光学可変効果および表面レリーフ構造によりもたらされる光学可変効果は、セキュリティエレメントにおいて、互いに関して精確な配置精度の配向状態で実現可能である。
【0035】
この場合、レリーフ構造のレリーフ深度は、最も厚い位置での複製層の層厚と、対象としている各局所的位置での複製層の層厚との差を意味するものと理解されたい。
【0036】
第一の領域において体積ホログラム材料が備えられる層厚は、第二の領域において体積ホログラム材料が備えられる層厚と、少なくとも8μm、より好ましくは少なくとも15μm異なることが好ましい。第二の領域における体積ホログラム材料の層厚は、好ましくは5μm未満であり、第一の領域における体積ホログラム材料の層厚は、10μm以上、好ましくは15μm以上である。
【0037】
この場合、複製層は、キャリアフィルムから成り、または多数の層を含む。
【0038】
本発明の好ましい例示的一実施形態によれば、液体体積ホログラム材料が、注入、噴霧、または印刷により、複製層を含む多層体に適用される。
【0039】
この場合、体積ホログラム材料は、好ましくは液体の形態で、すなわち、約0.001N*s/m
2と約50N*s/m
2との間の動的粘性を備えて適用されることが好ましい。水の濃度にほぼ一致し、レリーフ構造をよく充填する、例えば約0.001N*s/m
2の低粘性を有する低粘性体積ホログラム材料が好適である。
【0040】
液体の形態で適用された体積ホログラム材料は、ドクターブレードにより取り除かれ、第一の領域において体積ホログラム材料はレリーフ構造を完全に充填し、第二の領域において体積ホログラム材料は存在しないか、薄い層厚、好ましくは5μm未満の層厚で存在する。体積ホログラム材料が相応に低い粘性で多層体に適用され、第一の領域における層厚と第二の領域における層厚とが少なくとも10μm異なるように適用重量が選択される場合、ドクターブレードの利用は省略も可能である。しかしながら、体積ホログラム材料は、高い粘性を有してもよく、すなわち、例えば蜂蜜状またはペースト状で存在してもよく、この場合、第一の領域において、体積ホログラム材料がレリーフ構造を完全に充填し、第二の領域においては、体積ホログラム材料は存在しないか、薄い層厚、好ましくは5μm未満の層厚で存在するように、ドクターブレードによる処理が必要となる。
【0041】
本発明の好ましい例示的一実施形態によれば、レリーフ構造は、第二の領域または第二の領域の部分的領域において、第二の光学可変情報を提供する構造エレメントを有する。従って、レリーフ構造は、第二の領域または第二の領域の部分的領域において1μm未満のレリーフ深度を有する微細構造と、第一の領域において10μm以上のレリーフ深度を有する粗構造の凹部とを有し、微細構造は第二の光学可変情報の情報内容を決定し、粗構造は体積ホログラムが最終的に光学効果を示す領域を規定する。微細構造および粗構造は、単一の複製ステップで成型されるので、第一および第二の光学可変情報が生じる領域は、互いに完全な配置精度で、すなわち、共通の体積ホログラムマスター上で互いに領域の配置または位置決めの偏差なく、配置される。さらに、これにより、第一および第二の情報を提供する構造の密結合が得られ、上述したように、ある構造に手を加えようとすれば、自動的に他の構造の光学的インプレッションに影響し、どのような操作試行も、直ちに分かってしまう。
【0042】
第二の領域または第二の領域の部分的領域に備えられる構造エレメントは、回折構造、例えばホログラムまたはキネグラム(登録商標)、マット構造、線形または交差回折格子、等方性または異方性マット構造、ブレーズ格子、0次回折格子、またはこれらの回折構造の組み合わせ、または屈折構造、または微細構造を形成することが好ましく、上述した方法で形成されることが好ましい。さらに、第二の領域または第二の領域の部分的領域は、反射層、特に不透明金属層が備えられることが好ましく、例えば、セキュリティエレメントは、第二の領域または第二の領域の部分的領域に備えられ、第一の領域には備えられない金属層を有する。第二の領域における金属層は、全エリアにわたり、または部分的に備えられてもよい。また、金属層は、規則的または不規則的な、部分的または全エリアのグリッドとして備えられてもよい。金属層は、第二の領域において、部分的に、および、回折構造のデザインに対して精確な配置精度で、配置されることが好ましい。
【0043】
金属層に代わって、非金属反射層、例えば、構造エレメントの材料に対して好ましくは大きく異なる屈折率を有する不透明ラッカーが備えられてもよい。高い屈折率(HRI)を有するHRI材料から成る非金属透明反射層が備えられてもよい。
【0044】
複製層および体積ホログラム材料の光学屈折率を適切に選択することで(屈折率の差が約0.2より大きく、好ましくは0.5より大きい)、および/または、体積ホログラム材料の適用後に(全エリアの)反射層を多層体に適切に適用することで、前記反射層は省略することもできる。
【0045】
この場合、複製層の第二の領域において、以下に述べる方法により、反射層を適用することが、実質的に好ましいことが分かっている。
【0046】
従って、例えば、体積ホログラム材料の適用前に、薄い金属層を備えたレリーフ構造を有する多層体の表面を提供し、第一の領域における前記金属層の精確な配置精度の金属除去のために、第一および第二の領域において異なるレリーフ深度のレリーフ構造を用いることが可能である。従って、例えば、印刷により、エッチングレジストを適用してもよく、この場合、印刷ローラーによるインク塗布は、隆起した第二の領域のみで行われ、明瞭に凹んだ第一の領域では行われない。この後に、エッチングプロセスにおいて、エッチングレジスト層でカバーされない領域、すなわち、凹んだ第一の領域において、金属層が除去される。さらに、ドクターブレードにより、凹部、すなわち第一の領域に、エッチャントを導入し、この部分で金属層を除去してもよい。
【0047】
本発明の好ましい例示的一実施形態によれば、セキュリティエレメントの少なくとも一つの第一の領域のエリアにおいて第一の領域により占められる面積の比率は、セキュリティエレメントの少なくとも一つの第二の領域のエリアにおいて第一の領域により占められる面積の比率と異なる。これは、体積ホログラムの光度が、第一の領域と第二の領域とで異なる、という効果を有する。第一の領域により占められる面積の比率を適切に選択することで、体積ホログラムのピクセルの輝度を設定し、体積ホログラムに付加的な“グレースケール情報”を調整することができる。
【0048】
この目的のため、第一の領域は、400μm未満、好ましくは200μm未満の最小寸法を有することが好ましい。これは、第一および第二の領域への分割は、もはや観察者には見えず、連続するイメージインプレッションが生じる、という効果を有する。第一の領域の最小寸法は、体積ホログラム材料を第一の領域へ信頼性高く充填することを保証するために、20μm以上の最小寸法を有することが好ましい。
【0049】
さらに、第一の領域の間隔を変化させることにより、および/または各第一の領域により占有されるエリアを変化させることにより、体積ホログラムの輝度を増すことができる。第一の領域を、一または二次元グリッドに配置し、グリッド幅および/または各第一の領域に占有される面積を、第一/第二の領域において相応に異なるように選択してもよい。第一および第二の領域は、上述した第一および第二のゾーンに一致して構成されてもよい。
【0050】
さらに、第二の領域の部分的領域または第二の領域は、上述した第一のゾーンに一致して形成されてもよく、上述した第二のゾーンに割り当てられる領域が、第一および第二の領域を有してもよい。
【0051】
本発明は、添付図面を用いた多数の例示的な実施形態に基づいて、以下に例として説明される。