特許第6014955号(P6014955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014955
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】内接式歯車ポンプのインナーロータ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   F04C2/10 341H
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-174699(P2012-174699)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-34880(P2014-34880A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有永 真也
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−028276(JP,A)
【文献】 特開平10−196559(JP,A)
【文献】 特開2004−150386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に所定数の歯が形成されており、中央にブッシュ圧入用の孔を有する、内接式歯車ポンプのインナーロータであって、
前記孔の周縁に沿って、前記歯の数と同数の溝が、当該歯の位置に対応して等間隔に形成されており、
それぞれの溝の幅および奥行きは、互いに同一の値にされていることを特徴とする、内接式歯車ポンプのインナーロータ。
【請求項2】
前記インナーロータが、鉄系金属粉末の成形体を燒結した燒結体からなっており、前記溝が、前記歯の歯先位置に対応して形成されている、請求項1に記載の内接式歯車ポンプのインナーロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内接式歯車ポンプのインナーロータに関する。さらに詳しくは、インナーロータの中央孔の周縁に駆動シャフト嵌合用の溝が形成されている、内接式歯車ポンプのインナーロータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃機関におけるエンジンや変速機に潤滑油を循環供給するために内接式の歯車ポンプが使用されている。かかる歯車ポンプでは、ポンプケーシング内に回転自在の状態でアウターロータが配設されるとともに、このアウターロータの中心から偏心した回転中心を有するインナーロータが当該アウターロータの内径側に配設されている。そして、インナーロータが回転駆動されることで、当該インナーロータの外歯とアウターロータの内歯との噛合わせにより潤滑油の吸入および吐出が行われる。
【0003】
このような歯車ポンプのインナーロータを回転駆動させる方法として、当該インナーロータの中心孔の周縁に等間隔に2箇所又は4箇所の溝ないし切り欠きを形成し、これらの溝に駆動軸から延設されたシャフトを嵌合させ、当該駆動軸を回転させることで前記インナーロータを回転駆動させる方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した溝を利用する駆動方式では、図7〜8に示されるように、溝20、30が形成されたインナーロータ21、31の内径側に当該インナーロータ21、31の中心を保持するシャフトとのはめ合いのためにリング状のブッシュ22、32が圧入される。このブッシュ22、32の圧入により、インナーロータ21、31には径外方向の力が作用し、その外形(歯23、33の形状)が変形するが、従来のインナーロータ21、31では、通常6〜15枚である歯の数と溝の数(2又は4)とが一致していないため、前記インナーロータ21、31の外形の変形は一様な変形量とはならず、溝20、30のある箇所では変形量が小さく、溝20、30のない箇所では変形量が大きくなる。その結果、本来、真円であるべきインナーロータ21、31の歯先23a、33aおよび歯底23b、33bの真円度が劣化し、アウターロータの内歯との噛合わせ時に異音が発生するなどの不具合が生じることがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ブッシュ圧入による真円度の劣化を防止することができる内接式歯車ポンプのインナーロータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の内接式歯車ポンプのインナーロータ(以下、単に「インナーロータ」ともいう)は、外周に所定数の歯が形成されており、中央にブッシュ圧入用の孔を有する、内接式歯車ポンプのインナーロータであって、
前記孔の周縁に沿って、前記歯の数と同数の溝が、当該歯の位置に対応して等間隔に形成されており、
それぞれの溝の幅および奥行きは、互いに同一の値にされていることを特徴としている。



【0007】
本発明のインナーロータでは、中央の孔の周縁に沿って、当該インナーロータの歯の数と同数の溝が等間隔に形成されているので、インナーロータの外形(歯の形状)の変形量を周方向において均一にすることができる。その結果、アウターロータの内歯との噛み合わせを滑らかにすることができ、噛合わせ時における異音の発生などの不具合を防止することができる。
【0008】
(2)前記(1)のインナーロータにおいて、前記インナーロータが、鉄系金属粉末の成形体を燒結した燒結体からなっており、前記溝が、前記歯の歯先位置に対応して形成されていてもよい。この場合、歯底に対応して溝を形成するときに比べ、インナーロータの内縁から外縁までの径方向の距離(肉厚)の最小値を大きくすることができ、前記成形体を作製するときに金型内への鉄系金属粉末の給粉をムラなく行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインナーロータによれば、ブッシュ圧入による真円度の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明のインナーロータの一実施の形態の平面図であり、(b)は同平面図のA−A線断面図である。
図2】(a)は図1に示されるインナーロータの厚入されるブッシュの平面図であり、(b)は同B−B線断面図である。
図3図1に示されるインナーロータに図2に示されるブッシュを圧入した状態の平面図である。
図4】(a)は本発明のインナーロータの他の実施の形態の平面図であり、(b)は同平面図のC−C線断面図である。
図5】(a)は図4に示されるインナーロータの厚入されるブッシュの平面図であり、(b)は同D−D線断面図である。
図6図4に示されるインナーロータに図5に示されるブッシュを圧入した状態の平面図である。
図7】ブッシュが圧入された比較例1に係るインナーロータの平面図である。
図8】ブッシュが圧入された比較例2に係るインナーロータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のインナーロータの実施の形態を詳細に説明する。図1の(a)は、本発明の一実施の形態に係るインナーロータ1の平面図であり、(b)は同平面図のA−A線断面図である。
【0012】
インナーロータ1は、中央に孔2を有するほぼ円盤状の部材であり、その外周に8枚の歯3が周方向において等間隔に形成されている。また、前記中央の孔2の周縁には、前記歯3の位置に対応して当該歯3の数と同数、すなわち8つの溝4が周方向において等間隔に形成されている。より詳細には、溝4の周方向における中心線が、歯3の周方向における中心線と一致するように当該溝4が形成されている。
【0013】
インナーロータ1は、鉄を主成分とする金属材料で作製することができるが、本実施の形態におけるインナーロータ1は、鉄を主成分とする金属粉末、具体的には、例えば重量比で銅を1.5〜6.0%、炭素を0.2〜1.0%含み、残部が鉄である金属粉末を加圧成形して粉末成形体を作製し、この粉末成形体を所定の雰囲気ガスおよび焼成温度にて燒結し、得られた燒結体に高周波焼入れ・焼き戻しなどの熱処理を施すことで作製されている。
【0014】
前記溝4は、インナーロータ1を回転駆動させる駆動軸(図示せず)から延設されたシャフトが嵌入される部分であり、その幅wおよび奥行きdは、前記シャフトのサイズに応じて適宜選定すればよいが、例えば、幅wを2〜20mmとし、奥行きdを2〜10mmとすることができる。本実施の形態では、8つの溝4の断面形状はいずれもほぼ矩形状にされており、それぞれの幅wおよび奥行きdは、互いに同一の値にされている。
【0015】
溝4が形成されたインナーロータ1の内径側には、当該インナーロータ1の中心を保持するシャフトとのはめ合いのために、例えば図2に示されるようなリング状のブッシュ5が圧入される。ブッシュ5は、例えばSPCC(冷間圧延鋼板)からなる帯状の板材をリング状に巻いて、その接合部を溶着することで作製することができる。
【0016】
ブッシュ5をインナーロータ1の中央の孔2に圧入するときの圧入代は、本発明において特に限定されるものではないが、例えば0.04〜0.11mm程度とすることができる。図3はブッシュ圧入後のインナーロータ1を示している。ブッシュ5の圧入により、インナーロータ1には径外方向の力が作用し、その外形(歯3の形状)が変形するが、本実施の形態では、中央の孔2の周縁に沿って、インナーロータ1の歯の数と同数の溝4が等間隔に形成されているので、当該インナーロータ1の外形(歯3の形状)の変形量を周方向において均一にすることができる。その結果、図示しないアウターロータの内歯との噛み合わせを滑らかにすることができ、噛合わせ時における異音の発生などの不具合を防止することができる。
【0017】
また、本実施の形態では、溝4が、インナーロータ1の歯3の歯先位置に対応して形成されているので、歯底6に対応して溝4を形成するときに比べ、インナーロータ1の内縁から外縁までの径方向の距離(肉厚)の最小値を大きくすることができる。インナーロータ1を作製する際の中間品である粉末成形体を作製する際には、金型内へ鉄系金属粉末が給粉されるが、狭いスペースをなくすことで当該給粉をムラなく行うことができる。
【0018】
図4は、本発明の他の実施の形態に係るインナーロータ11の平面図および断面図である。このインナーロータ11は、図1または図3に示されるインナーロータ1と異なり、外周に9枚の歯13が周方向において等間隔に形成されている。また、中央の孔12の周縁には、前記歯13の数と同数の溝14が周方向おいて等間隔に形成されている。そして、本実施の形態においても、溝14は歯13の歯先位置に対応して形成されている。
【0019】
前記インナーロータ11の中央の孔2にも、図5に示されるようなブッシュ15が圧入される。図6はブッシュ圧入後のインナーロータ11を示している。この図4または図6に示されるインナーロータ11においても、中央の孔12の周縁に沿って、インナーロータ11の歯の数と同数の溝14が等間隔に形成されているので、当該インナーロータ11の外形(歯13の形状)の変形量を周方向において均一にすることができる。
【0020】
〔実施例および比較例〕
つぎに実施例に基づいて本発明のインナーロータを説明するが、本発明はもとよりかかる実施例にのみ限定されるものではない。
<実施例1>
図1に示される8枚歯のインナーロータ(鉄系金属粉末の燒結品)に図2に示されるブッシュ(冷間圧延鋼板製)を圧入した。インナーロータおよびブッシュの仕様は以下のとおりであった。また、圧入代は0.07mmであった。
インナーロータ
歯先径Dt:48.5mm
歯底径Db:37.0mm
厚さt :10mm
溝幅w :4mm
溝奥行きd:5mm
ブッシュ
外径 :18mm
内径 :13mm
高さ :10mm
【0021】
ブッシュ圧入後を示す図3において最も上部の位置の歯の先端(歯先)をNo.1とし、時計回りにNo.8まで番号付けするとともに、前記No.1の歯先の時計回りすぐ隣の歯底を同じくNo.1とし、時計回りにNo.8まで番号付けをし、各No.の歯先および歯底の変形量(mm)をFEM解析を用いて調査した。変化量とは、ブッシュ圧入に伴う径外方向へのサイズ(インナーロータ中心から歯先または歯底までの距離)の変化量のことである。結果を表1に示す。なお、表1および後出する表2〜4において、「R」は、最大変位量と最小変位量との差を表している。
【0022】
【表1】
【0023】
<比較例1>
図7に示されるように、溝の数を4つとし、各溝の幅を4mmの倍の8mmにした以外は実施例1と同様にして歯先および歯底の変形量(mm)をFEM解析を用いて調査した。結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
<実施例2>
図4に示される9枚歯のインナーロータ(鉄系金属粉末の燒結品)に図5に示されるブッシュ(冷間圧延鋼板製)を圧入した。インナーロータおよびブッシュの仕様は以下のとおりであった。また、圧入代は0.07mmであった。
インナーロータ
歯先径Dt:73mm
歯底径Db:59mm
厚さt :10mm
溝幅w :5mm
溝奥行きd:5mm
ブッシュ
外径 :36mm
内径 :31mm
高さ :10mm
【0026】
ブッシュ圧入後を示す図6において最も上部の位置の歯の先端(歯先)をNo.1とし、時計回りにNo.9まで番号付けするとともに、前記No.1の歯先の時計回りすぐ隣の歯底を同じくNo.1とし、時計回りにNo.9まで番号付けをし、各No.の歯先および歯底の変形量(mm)をFEM解析を用いて調査した。変化量とは、ブッシュ圧入に伴う径外方向へのサイズの変化量のことである。結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
<比較例2>
図8に示されるように、溝の数を4つとし、各溝の幅を11.25mm(5mm×9/4)にした以外は実施例2と同様にして歯先および歯底の変形量(mm)をFEM解析を用いて調査した。結果を表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
表1〜4より分かるように、歯の数と溝の数を同数にすることにより、ブッシュ圧入後におけるインナーロータの外形の変形量を周方向において均一にすることができ、これにより歯先および歯底の真円度の劣化を防止することができる。歯の数に拘らず溝の数を4とする比較例のうち、歯数が8である比較例1では、歯底の変形量は均一であり真円度の劣化がなかったが、歯先は、溝がない歯先は溝がある歯先の約2倍の変形量であった。また、歯数が9の比較例2では、歯先および歯底ともに変形量が周方向において均一ではなかった。このため、歯先および歯底の両方において真円度が劣化した。
【0031】
〔その他の変形例〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
例えば、前述した実施の形態では、歯の数を8枚または9枚としているが、歯数は7以下であってもよいし、10以上であってもよい。
【0033】
また、前述した実施の形態では、溝の断面形状はほぼ矩形であるが、半円形状や放物線形状など他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 インナーロータ
2 孔
3 歯
4 溝
5 ブッシュ
11 インナーロータ
12 孔
13 歯
14 溝
15 ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8