特許第6014959号(P6014959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014959
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】表面被覆切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20161013BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20161013BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20161013BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B23B27/14 A
   B23C5/16
   B23B51/00 J
   C23C14/06 A
   C23C14/06 P
【請求項の数】19
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-501778(P2014-501778)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2013067248
(87)【国際公開番号】WO2014002948
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-147211(P2012-147211)
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 誠
(72)【発明者】
【氏名】柴田 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】肖 銀雪
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−071610(JP,A)
【文献】 特開2005−271133(JP,A)
【文献】 特開2009−078351(JP,A)
【文献】 特開2011−125984(JP,A)
【文献】 特表2011−506115(JP,A)
【文献】 特許第5008984(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 51/00
B23C 5/16
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材上に形成された被覆膜とを含む表面被覆切削工具であって、
前記被覆膜は、耐摩耗層と耐溶着層とを少なくとも含み、
前記耐摩耗層は、TiおよびAlを含む窒化物からなるA層とAlおよびCrを含む窒化物からなるB層とが交互に積層された多層構造を有し、かつその結晶構造が立方晶型であり、
前記耐溶着層は、前記被覆膜の最表面に位置し、(AlaCrbTi1-a-b)Nで表わされる窒化物(式中、a+b<0.99、b>0.01、0.2b+0.7<aである)で構成され、かつその結晶構造がウルツァイト型である、表面被覆切削工具。
【請求項2】
前記被覆膜は、その全体において、全金属原子に占めるAlの原子比が0.6を超え0.8以下であり、かつCrの原子比が0.15を超え0.3以下である、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
【請求項3】
前記被覆膜は、2〜30μmの厚みを有する、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
【請求項4】
前記耐溶着層は、0.5〜8μmの厚みを有する、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項5】
前記耐摩耗層の厚みをT1とし、前記耐溶着層の厚みをT2とする場合、厚み比T2/T1は、0.17≦T2/T1≦0.55という関係を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項6】
前記A層の平均厚みをTaとし、前記B層の平均厚みをTbとする場合、厚み比Tb/Taは、1.5≦Tb/Ta≦4という関係を満たす、請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項7】
前記Taは、1〜10nmであり、前記Tbは、1.5〜30nmである、請求項6に記載の表面被覆切削工具。
【請求項8】
前記A層は、(Ti1-cAlc)Nで表わされる窒化物(式中、0.3<c≦0.7である)で構成され、
前記B層は、(AleCr1-e)Nで表わされる窒化物(式中、0.6<e<0.75である)で構成される、請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項9】
前記被覆膜は、前記基材と前記耐摩耗層との間に中間層を有し、
前記中間層は、TiおよびAlを含む窒化物で構成され、かつその厚みが0.01〜0.5μmである、請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項10】
前記被覆膜は、前記耐摩耗層と前記耐溶着層との間に第1付着層および第2付着層を有し、
前記第1付着層は、前記耐摩耗層と前記第2付着層との間に位置し、TiおよびAlを含む窒化物で構成され、かつその厚みが30nm〜0.1μmであり、
前記第2付着層は、前記耐摩耗層と同じ結晶構造を有するTiおよびAlを含む窒化物からなるC層と前記耐溶着層と同じ組成を有するD層とが交互に積層された多層構造を有し、かつその厚みが10nm〜0.2μmである、請求項1〜9のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項11】
前記耐摩耗層の硬度をH1とし、前記耐溶着層の表面から測定した硬度をH2とする場合、硬度比H2/H1は、0.7<H2/H1<1.1という関係を満たす、請求項1〜10のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項12】
前記耐摩耗層の硬度をH1とし、前記耐溶着層の表面から測定した硬度をH2とする場合、硬度比H2/H1は、0.9<H2/H1<1.0という関係を満たす、請求項1〜10のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項13】
前記被覆膜は、−0.1GPa以下、−3.0GPa以上の圧縮応力を有する請求項1〜12のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項14】
前記被覆膜は、−1.0GPa以下、−2.5GPa以上の圧縮応力を有する請求項1〜12のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項15】
前記被覆膜は、2θ=36°付近のピーク強度をK1とし、2θ=37.4°付近のピーク強度をK2とする場合、強度比K2/K1が0.2<K2/K1<0.35という関係を満たすX線回折パターンを有する請求項1〜14のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項16】
前記被覆膜は、2θ=37.4°付近のピーク強度をK1とし、2θ=37.9°付近のピーク強度をK2とする場合、強度比K2/K1が0.4<K2/K1<0.6という関係を満たすX線回折パターンを有する請求項1〜14のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項17】
前記被覆膜は、2θ=37.4°付近のピーク強度をK1とし、2θ=43.2°付近の強度をK2とする場合、強度比K2/K1が0.6<K2/K1<0.75という関係を満たすX線回折パターンを有する請求項1〜14のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項18】
前記耐摩耗層は、柱状晶組織を有し、かつその柱状晶の平均粒径が150nmを超え、250nm以下である、請求項1〜17のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項19】
前記耐溶着層は、ナノ粒子の組織を有し、かつそのナノ粒子の平均粒径が40nm以下である、請求項1〜17のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に被覆膜を形成した表面被覆切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルをはじめとする切削工具は、耐摩耗性や耐欠損性を向上させることを目的として基材上に種々の被覆膜を形成した表面被覆切削工具として用いられてきた。近年の切削加工においては、高能率化が要求されるとともに、被削材の高強度化に伴う難削化が進行し、被覆膜の摩耗が従来に比し促進される傾向にある。
【0003】
このため、このような被覆膜の改良が求められており、たとえば国際公開第2006/070730号パンフレット(特許文献1)は、被覆膜として特定の組成を有する交互層を形成した表面被覆切削工具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/070730号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の表面被覆切削工具は、被覆膜の特性をある程度向上させることに成功したものであるが、昨今の切削加工環境下においては、更なる性能の向上、特に被覆膜への被削材の溶着の低減が求められている。
【0006】
これは、工具の先端部や刃先部に対して被削材が溶着すると、工具の欠損や折損の原因となるためである。工具の先端部等に一旦被削材が溶着すると、それが再度脱落する場合に被覆膜や基材の一部とともに脱落し、その脱落部分が摩耗の異常進行や亀裂発生の起点となり、工具の欠損や折損につながるものと推測される。
【0007】
また、このような表面被覆切削工具がドリルである場合、昨今のドリル加工においては、高能率化および被削材の難削化が更に進行しており、被覆膜の耐摩耗性が強く要求されている。
【0008】
本発明は、このような状況下に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被覆膜の耐摩耗性を向上させるとともに、被削材の溶着を低減させることにより、工具の欠損や折損を防止した表面被覆切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、被覆膜の内層に耐摩耗性に優れる層を形成し、表面層に耐溶着性に優れる層を形成することが最も有効であるとの知見を得、この知見に基づき各層の構造をさらに検討することにより、本発明を完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含むものであって、該被覆膜は、耐摩耗層と耐溶着層とを少なくとも含み、該耐摩耗層は、TiおよびAlを含む窒化物からなるA層とAlおよびCrを含む窒化物からなるB層とが交互に積層された多層構造を有し、かつその結晶構造が立方晶型であり、該耐溶着層は、該被覆膜の最表面に位置し、(AlaCrbTi1-a-b)Nで表わされる窒化物(式中、a+b<0.99、b>0.01、0.2b+0.7<aである)で構成され、かつその結晶構造がウルツァイト型であることを特徴とする。
【0011】
ここで、該被覆膜は、その全体において、全金属原子に占めるAlの原子比が0.6を超え0.8以下であり、かつCrの原子比が0.15を超え0.3以下であることが好ましい。
【0012】
また、該被覆膜は、2〜30μmの厚みを有することが好ましく、該耐溶着層は、0.5〜8μmの厚みを有することが好ましい。
【0013】
また、該耐摩耗層の厚みをT1とし、該耐溶着層の厚みをT2とする場合、厚み比T2/T1は、0.25≦T2/T1≦0.55という関係を満たすことが好ましい。また、上記A層の平均厚みをTaとし、上記B層の平均厚みをTbとする場合、厚み比Tb/Taは、1.5≦Tb/Ta≦4という関係を満たすことが好ましい。また、上記Taは、1〜10nmであり、上記Tbは、1.5〜30nmであることが好ましい。
【0014】
また、上記A層は、(Ti1-cAlc)Nで表わされる窒化物(式中、0.3<c≦0.7である)で構成され、上記B層は、(AleCr1-e)Nで表わされる窒化物(式中、0.6<e<0.75である)で構成されることが好ましい。
【0015】
また、該被覆膜は、該基材と該耐摩耗層との間に中間層を有し、該中間層は、TiおよびAlを含む窒化物で構成され、かつその厚みが0.01〜0.5μmであることが好ましい。
【0016】
また、該被覆膜は、該耐摩耗層と該耐溶着層との間に第1付着層および第2付着層を有し、該第1付着層は、該耐摩耗層と該第2付着層との間に位置し、TiおよびAlを含む窒化物で構成され、かつその厚みが30nm〜0.1μmであり、該第2付着層は、該耐摩耗層と同じ結晶構造を有するTiおよびAlを含む窒化物からなるC層と該耐溶着層と同じ組成を有するD層とが交互に積層された多層構造を有し、かつその厚みが10nm〜0.2μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の表面被覆切削工具は、上記の構成を有することにより優れた耐摩耗性と優れた耐溶着性を示し、以って欠損や折損を極めて有効に防止することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被覆膜とを含む構成を有する。このような被覆膜は、基材の全面を被覆することが好ましいが、基材の一部がこの被覆膜で被覆されていなかったり、被覆膜の構成が部分的に異なっていたとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0019】
このような本発明の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具として好適に使用することができる。中でも、被覆膜の耐摩耗性および被削材に対する耐溶着性が高度に向上したことにより、特にドリルとしての用途に優れる。
【0020】
<基材>
本発明の表面被覆切削工具に用いられる基材は、この種の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等を挙げることができる。
【0021】
<被覆膜>
本発明の被覆膜は、複数の層により構成され、耐摩耗層と耐溶着層とを少なくとも含む。本発明の被覆膜は、後述する各層の作用が相乗的に発揮されることにより、優れた耐摩耗性と優れた耐溶着性を示し、以って工具の欠損や折損を極めて有効に防止することができるという極めて優れた効果を有する。
【0022】
このような被覆膜は、2〜30μm(2μm以上30μm以下。なお、本発明において2つの数値をこのように符合「〜」で結んで範囲を示す場合は、その下限値および上限値の両者をその範囲に含めるものとする)の厚みを有することが好ましく、3〜12μmの厚みを有することがより好ましい。
【0023】
被覆膜の厚みが2μm未満であると、耐摩耗性および耐溶着性等の向上効果が十分に発揮されない場合があり、30μmを超えると被覆膜自体が剥離しやすくなる傾向を示す。
【0024】
以下、被覆膜を構成する各層について詳述する。
<耐溶着層>
本発明の耐溶着層は、被覆膜の最表面に位置し、被削材が工具の先端部や刃先部に溶着することを極めて有効に防止するという、優れた耐溶着性を示す。
【0025】
このような耐溶着層は、(AlaCrbTi1-a-b)Nで表わされる窒化物(式中、a+b<0.99、b>0.01、0.2b+0.7<aである)で構成され、かつその結晶構造がウルツァイト型(ウルツ鉱型)であることを要する。
【0026】
このような耐溶着層を、六方晶型の結晶構造のAlNで形成すると、耐溶着性および高温における摺動性には優れるものの、低硬度であることから切削加工の初期段階で摩耗により消失してしまい持続性に問題があることが判明した。そこで、本発明においては、このAlNに対し特定量のCrとTiとを添加することにより硬度を向上させ、耐溶着性の持続性を飛躍的に向上させたものである。Crのみを添加させた場合は、十分な硬度の向上を得ることができず、Tiのみを添加させた場合は、高温での安定性に欠けたものとなる。したがって、CrおよびTiの両者をAlNに対して添加させることが重要である。
【0027】
ここで、上記式中、aおよびbは原子比を表わすが、a+bが0.99以上になるとTiの量が相対的に少なくなることから十分な硬度の向上が得られなくなる。またbが0.01以下になると、高温での安定性に欠けることになる。一方、0.2b+0.7≧aとなると、高温時に耐溶着層の一部または全部の結晶構造が立方晶型に変化してしまい、耐溶着性が喪失する。
【0028】
すなわち、本発明の耐溶着層は、結晶構造がウルツァイト型であることが重要であり、立方晶型等の他の結晶構造では優れた耐溶着性を得ることができなくなる。また、本発明の耐溶着層は、ナノ粒子の組織を有し、かつ該ナノ粒子の平均粒径が40nm以下であることが好ましい。結晶粒を微細化することにより硬度、靱性が向上し、耐溶着層の持続性を向上させるものである。
【0029】
なお、本明細書において「ナノ粒子の平均粒径」は次のようにして測定するものとする。まず被覆膜を切断し、断面をTEMを用いて20000倍〜1000000倍の倍率で観察する。この際、観察視野中に少なくとも20個の結晶粒が含まれるように倍率を調整することが好ましい。次に、観察視野中、無作為に選んだ10個の結晶粒について、1つの結晶粒の最大径を該結晶粒の粒径とする。そして、このように得られた各結晶粒の粒径のうち、最大値と最小値を除いた粒径の算術平均値を「ナノ粒子の平均粒径」とする。
【0030】
なお、上記式において、(AlaCrbTi1-a-b)とNとの比は、特に限定されず任意の比をとることができる。たとえば、前者を1とする場合、後者(すなわちN)を0.8〜1.1とすることができる。
【0031】
このように本発明の耐溶着層は、極めて優れた耐溶着性を示すものであり本発明の特徴の一つとなるものである。
【0032】
このような耐溶着層は、0.5〜8μmの厚みを有することが好ましく、0.8〜5μmの厚みを有することがより好ましい。耐溶着層の厚みが0.5μm未満であると、十分な耐溶着性を示さない場合があり、8μmを超えると耐摩耗性が低下する場合がある。
【0033】
<耐摩耗層>
本発明の耐摩耗層は、基材と上記耐溶着層との間に位置し、耐摩耗性を向上させる作用を有するものである。
【0034】
このような耐摩耗層は、TiおよびAlを含む窒化物からなるA層とAlおよびCrを含む窒化物からなるB層とが交互に積層された多層構造を有し、かつその結晶構造が立方晶型であることを要する。
【0035】
AlおよびCrを含む窒化物からなる層は、耐摩耗性および耐熱性に優れるという特性を有することから耐摩耗層として用いることが考えられる。しかしながらこの層は、硬くて脆いというデメリットを有している。そこで、本発明は、靭性に優れることが知られるTiおよびAlを含む窒化物からなる層とAlおよびCrを含む窒化物からなる層とを交互に積層させることにより、耐摩耗性を向上させただけではなく、耐熱性および靭性をも兼ね備えたものとすることに成功したものである。
【0036】
また、本発明の耐摩耗層は、結果的にTiを含んだものとなることから、高速加工における逃げ面の化学的な摩耗を抑制することにも貢献したものとなる。
【0037】
さらに、本発明の耐摩耗層は、結晶構造を立方晶型としたことにより、硬度が向上し、上記の組成と相俟って極めて優れた耐摩耗性を示すものとなる。そして、本発明の耐摩耗層は、柱状晶組織を有し、かつ該柱状晶の平均粒径が150nmを超え、250nm以下であることが好ましい。粒界の強化により、硬度が向上し、耐摩耗性を向上させるものである。
【0038】
なお、本明細書において「柱状晶の平均粒径」は次のようにして測定するものとする。まず被覆膜を切断し、断面をTEMを用いて20000倍〜1000000倍の倍率で観察する。この際、観察視野中に少なくとも20個の結晶粒(柱状晶)が含まれるように倍率を調整することが好ましい。次に、観察視野中、無作為に選んだ10個の柱状晶について、柱状晶の伸長する方向に対して垂直な幅(直径)のうち、最大幅(最大径)を計測する。そして、このように得られた計測値のうち、最大値と最小値を除いた計測値の算術平均値を「柱状晶の平均粒径」とする。
【0039】
ここで、上記A層の平均厚みをTaとし、上記B層の平均厚みをTbとする場合、厚み比Tb/Taは、1.5≦Tb/Ta≦4という関係を満たすことが好ましく、2≦Tb/Ta≦3という関係を満たすことがより好ましい。厚み比をこのような範囲に設定することにより、B層による耐摩耗性および耐熱性が十分に発揮されるとともに、A層による靭性向上効果も十分に発揮されることになる。
【0040】
上記厚み比が1.5未満になると耐摩耗性が低下する場合があり、4を超えると靭性が悪化する場合があるとともに高硬度な被削材の高速加工時に逃げ面の耐摩耗性が低下する場合がある。
【0041】
なお、上記平均厚みとは、各層毎の総厚みを積層数で除したものをいう。
また、上記A層の平均厚みTaは、1〜10nmとすることが好ましく、2〜6nmとすることがより好ましい。また、上記B層の平均厚みTbは、1.5〜30nmとすることが好ましく、7〜20nmとすることがより好ましい。このような厚みとすることで、特に優れた靭性および耐摩耗性を得ることができる。各層の厚みが上記の下限値未満になると、多層積層による効果が得られなくなり、また上限値を超えても多層積層による効果が得られなくなる。
【0042】
なお、このような耐摩耗層の厚みは、上記のA層およびB層をそれぞれ100〜10000層交互に積層させることが好ましい。これにより靭性が特に高くなるからである。
【0043】
一方、上記A層は、(Ti1-cAlc)Nで表わされる窒化物(式中、0.3<c≦0.7である)で構成され、上記B層は、(AleCr1-e)Nで表わされる窒化物(式中、0.6<e<0.75である)で構成されることが好ましい。A層およびB層をこのような組成とすることにより、A層を特に靭性に優れ高硬度なものとし、B層を特に耐熱性に優れたものとすることができ、これらを交互積層させることにより、特に耐摩耗性に優れたものとすることができる。
【0044】
なお、上記(Ti1-cAlc)Nにおいて、(Ti1-cAlc)とNとの比は、特に限定されず任意の比をとることができる。たとえば、前者を1とする場合、後者(すなわちN)を0.8〜1.1とすることができる。同様に、上記(AleCr1-e)Nにおいて、(AleCr1-e)とNとの比も、特に限定されず任意の比をとることができる。たとえば、前者を1とする場合、後者(すなわちN)を0.8〜1.1とすることができる。
【0045】
なお、上記A層とB層とは、これらが交互に積層されている限り、その積層の順序は特に限定されない。すなわち、基材側(積層の開始側)はA層であってもよいし、B層であってもよく、また耐溶着層側(積層の終了側)もA層であってもよいし、B層であってもよい。特に断りのない限り、積層の開始はA層とし、積層の終了はB層とする。
【0046】
<硬度比>
被覆膜の硬度は、耐摩耗層の硬度をH1とし、耐溶着層の表面から測定した硬度をH2とする場合、硬度比H2/H1が0.7<H2/H1<1.1という関係を満たすことが好ましく、0.9<H2/H1<1.0という関係を満たすことがより好ましい。
【0047】
上述の通り、本発明の耐溶着層は、六方晶型の結晶構造のAlNに比し硬度を向上させたことを特徴とするが、その一方で耐摩耗層よりも硬度を低くすることにより、摩耗が進行する部分では滑らかに摩耗し切り屑の排出性がよくなり、結果的に切削抵抗が低下し工具の欠損や折損を抑制することができる。また、本発明の耐溶着層は耐摩耗層より硬度が高い場合、耐溶着層の持続性を向上させるため、優れた耐溶着性が得られる。
【0048】
すなわち、本発明の耐溶着層と耐摩耗層は、結晶構造が異なるため硬度、耐熱性、摺動性等の特性が大きく異なるが、比較的化学組成が類似するため、化学的な反応性が類似し、以って化学的な摩耗の傾向が類似したものとなる。このため、上記のような硬度比とすることにより、両層間の硬度のバランスが最適化され、安定した摩耗性が得られることにより、工具の欠損や折損が抑制されるものと推測される。
【0049】
<厚み比T2/T1>
上記耐摩耗層の厚みをT1とし、上記耐溶着層の厚みをT2とする場合、厚み比T2/T1は、0.17≦T2/T1≦0.55という関係を満たすことが好ましい。すなわち、このように耐溶着層の厚みを耐摩耗層の厚みよりも薄くすることが好ましい。
【0050】
厚み比T2/T1が0.17未満の場合、十分な耐溶着性が得られない場合があり、0.55を超えると十分な耐摩耗性が得られない場合がある。厚み比T2/T1を上記範囲とすることにより、耐溶着層の滑らかな摩耗と耐摩耗層の高度な耐摩耗性とのバランスが最適化され、工具の欠損や折損を高度に抑制することができる。
【0051】
<中間層>
本発明の被覆膜は、上記の耐摩耗層および耐溶着層以外にも任意の層を含むことができる。
【0052】
たとえば本発明の被覆膜は、基材と耐摩耗層との間に中間層を有することができ、該中間層は、TiおよびAlを含む窒化物で構成され、かつその厚みが0.01〜0.5μmとすることが好ましい。
【0053】
このような中間層を形成することにより、基材と被覆膜との密着性が向上し、切削加工時に被覆膜が基材から剥離することを効果的に防止することができる。中間層の厚みが0.01μm未満の場合、十分な密着性が得られない場合があり、0.5μmを超えると靭性が耐摩耗層に比し劣るため密着層自体が破壊し被覆層の剥離につながる場合がある。このような中間層のより好ましい厚みは、0.05〜0.3μmである。
【0054】
なお、中間層を構成するTiおよびAlを含む窒化物の具体的組成は特に限定されず、従来公知の組成を任意に選択することができる。
【0055】
<付着層>
本発明の被覆膜は、耐摩耗層と耐溶着層との間にさらに第1付着層および第2付着層を有することができる。
【0056】
該第1付着層は、耐摩耗層と第2付着層との間に位置し、TiおよびAlを含む窒化物で構成され、かつその厚みが30nm〜0.1μmとすることができる。また、該第2付着層は、耐摩耗層と同じ結晶構造を有するTiおよびAlを含む窒化物からなるC層と耐溶着層と同じ組成を有するD層とが交互に積層された多層構造を有し、かつその厚みが10nm〜0.2μmとすることができる。
【0057】
本発明の耐摩耗層と耐溶着層は、互いに結晶構造が異なるため密着性に劣る場合があり、耐溶着層が容易に剥離するなどして十分な耐溶着性を得ることができない場合がある。そこで、耐摩耗層と同じ結晶構造を有するTiおよびAlを含む窒化物からなるC層と耐溶着層と同じ組成を有することから耐溶着層と同じ結晶構造を有するD層とを交互に積層させた第2付着層を耐摩耗層と耐溶着層との間に形成することが好ましく、これにより耐摩耗層と耐溶着層との密着性を飛躍的に向上させることができる。
【0058】
このような第2付着層は、C層とD層とを交互に2〜10回繰り返して積層させ、かつその厚みを10nm〜0.2μmとすることが好ましい。2回以上積層させることにより、機械的な性質が向上し、密着性が向上する。また、厚みは0.2μm以下とすることが好ましく、これは0.2μmを超える厚みとすると機械的性質が低下し、容易に自己破壊を生じるためである。このため、厚みを考慮すると、積層の繰り返し数の上限は10回程度とすることが好ましい。
【0059】
なお、上記C層とD層とは、これらが交互に積層されている限り、その積層の順序は特に限定されない。すなわち、耐摩耗層側(積層の開始側)はC層であってもよいし、D層であってもよく、また耐溶着層側(積層の終了側)もC層であってもよいし、D層であってもよい。しかしながら、耐摩耗層との密着性を考慮するとC層から開始することが好ましく、このため特に断りのない限り、積層の開始はC層とし、積層の終了はD層とする。
【0060】
さらに、この第2付着層と耐摩耗層との間に第1付着層を形成することにより、耐摩耗層と耐溶着層との密着性をより一層向上させることができる。耐摩耗層は、上述の通り高硬度であることから、他の層との密着性に劣る傾向を示すため、特に他の層との密着性に優れるTiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層を介在させることにより、耐摩耗層と第2付着層との密着性が向上し、その結果として耐摩耗層と耐溶着層との密着性がより一層向上することとなる。ここで、第1付着層を構成するTiおよびAlを含む窒化物の結晶構造は、耐摩耗層と同じ立方晶型とすることが好ましい。
【0061】
このような第1付着層は、その厚みを30nm〜0.1μmとすることが好ましい。0.1μmを超えると機械的強度が劣り、30nm未満では十分な密着性を示さなくなるためである。なお、第1付着層を構成するTiおよびAlを含む窒化物の具体的組成は特に限定されず、従来公知の組成を任意に選択することができる。
【0062】
<原子比>
本発明の被覆膜は、その全体において、全金属原子に占めるAlの原子比(すなわち全金属原子の数を1とした場合のAlの原子比)が0.6を超え0.8以下であり、かつCrの原子比が0.15を超え0.3以下であることが好ましい。
【0063】
被覆膜全体の平均組成としてAlの原子比を上記の範囲とすることにより、耐溶着性に優れるとともに耐熱性に優れた被覆膜とすることができる。Alの原子比のより好ましい範囲は、0.65を超え0.72以下である。
【0064】
一方、被覆膜全体の平均組成としてCrの原子比を上記の範囲とすることにより、耐摩耗性に優れた被覆膜とすることができる。Crの原子比のより好ましい範囲は、0.17を超え0.23以下である。
【0065】
このように被覆膜全体の平均組成として、AlとCrの原子比を上記範囲に設定することにより、被覆膜の耐摩耗性と耐溶着性を高度に向上させることができる。
【0066】
なお、本発明において「金属原子」とは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよび炭素以外の元素の原子のことをいう。
【0067】
<応力>
本発明の被覆膜は、次のようにして応力を計測する。まず、超硬合金製板(20mm×10mm×1mm)の成膜前後の反り量を面粗さ計を用いて測定する。次に、被覆膜の膜厚をカロテストを用いて測定する。そして、得られた反り量と膜厚を用いて被覆膜の応力を計算する。
【0068】
本発明の被覆膜は、−0.1GPa以下、−3.0GPa以上の圧縮応力を有することが好ましく、−1.0GPa以下、−2.5GPa以上の圧縮応力を有することがより好ましい。
【0069】
本発明の被覆膜は、上記のような圧縮応力を有することにより、欠損の原因と思われるクラックの進行を抑制することができる。すなわち、本発明の被覆膜は優れた耐欠損性を有する。
【0070】
<X線パターン>
本明細書に記載するX線回折パターンは次のような条件で計測する。
【0071】
測定部位:ドリルの逃げ面
使用X線:Cu−Kα
励起条件:45kV 200mA
使用コリメーター:φ0.3mm
測定法:θ−2θ法。
【0072】
また、本明細書においては、次のようにしてピーク強度を測定する。まず、得られたX線回折パターンに対して、2θ=36°、37.4°、37.9°、43.2°にピーク位置を指定する。次に、ソフトウエアを用いて自動的にピーク分離を行なう。そして、このようにして分離されたピークの強度が得られる。
【0073】
本発明の被覆膜は、次のようなX線回折パターンを有することができる。すなわち、2θ=36°付近のピーク強度をK1とし、2θ=37.4°付近のピーク強度をK2とする場合、強度比K2/K1は0.2<K2/K1<0.35という関係を満たす。2θ=36°付近のピークは耐溶着層の六方晶(002)と対応し、2θ=37.4°付近のピークは耐摩耗層の立方晶(111)と対応する。すなわち、この場合、耐溶着層は(002)配向であり、耐摩耗層は(111)配向である。六方晶の(002)面と立方晶の(111)面は、それぞれの層において、最密面であり、強度が最も高い面でもある。従って、このようなX線回折パターンを有することにより、耐溶着層の持続性と耐摩耗層の耐摩耗性が優れる。
【0074】
また、本発明の被覆膜は、次のようなX線回折パターンを有することもできる。すなわち、2θ=37.4°付近のピーク強度をK1とし、2θ=37.9°付近のピーク強度をK2とする場合、強度比K2/K1は0.4<K2/K1<0.6という関係を満たす。2θ=37.4°付近のピークは耐摩耗層の立方晶(111)と対応し、2θ=37.9°付近のピークは耐溶着層の六方晶(101)と対応する。すなわち、この場合、耐溶着層は(101)配向であり、耐摩耗層は(111)配向である。立方晶の(111)面は最密面であり、強度が最も高い面である。六方晶の(101)面は強度が最密面より低いと思われる。このようなX線回折パターンを有することにより、耐摩耗層の耐摩耗性が優れており、耐溶着層の摩耗が進行する部分では滑らかに摩耗し切り屑の排出性が良くなり、結果的に切削抵抗が低下し工具の欠損や折損を抑制することができる。
【0075】
また、本発明の被覆膜は、次のようなX線回折パターンを有することもできる。すなわち、2θ=37.4°付近のピーク強度をK1とし、2θ=43.2°付近のピーク強度をK2とする場合、強度比K2/K1は0.6<K2/K1<0.75という関係を満たす。2θ=37.4°付近のピークは耐摩耗層の立方晶(111)と対応し、2θ=43.2°付近のピークは耐溶着層の立方晶(200)と対応する。この場合、耐摩耗層は弱(111)配向である。立方晶の(111)面は最密面であり、強度が最も高い面である。従って、このようなX線回折パターンを有することにより、耐摩耗層の耐摩耗性が優れる。
【0076】
<製造方法>
本発明の表面被覆切削工具は、たとえば物理的蒸着法を用いて基材上に被覆膜を形成することにより製造することができる。ここで、物理的蒸着法としては、従来公知の方法を特に限定することなく用いることができ、たとえばアーク式イオンプレーティング法、バランスドマグネトロンスパッタリング法およびアンバランスドマグネトロンスパッタリング法からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の各実施例の被覆膜各層の組成は、透過電子顕微鏡付属のEDS分析(エネルギー分散型X線分析)により特定することができる。
【0078】
<実施例1〜12および比較例1〜5>
以下のようにして、実施例1〜12および比較例1〜5の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、第2付着層および耐溶着層を除く他の構成は共通である。
【0079】
基材は、超硬合金製ドリル(刃径:直径8.0mm、全長:115mm、溝長:65mm、油孔付き)を用いた。
【0080】
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、真空引きし、基材を500℃に加熱した後、Arイオンエッチングを行ない、その後N2ガス雰囲気でアーク蒸着により、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.2μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は以下の通りである。
ターゲット:Ti0.5Al0.5
圧力:6Pa
アーク電流:120A
バイアス電圧:50V
なお、アーク式イオンプレーティング法で各層を形成する場合、ターゲットは、各層の組成となるように組成を調整したものを用いた。
【0081】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層(厚み3.9μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるA層は、厚み(Ta)が4nmのTi0.5Al0.5Nとした。AlおよびCrを含む窒化物からなるB層は、厚み(Tb)が10nmのAl0.65Cr0.35Nとした。A層およびB層それぞれの積層数は、280層であり、Tb/Ta=2.5である。この耐摩耗層の形成条件は以下の通りである。
ターゲット:Ti0.5Al0.5(A層)、Al0.65Cr0.35(B層)
圧力:5Pa
放電電流:100A(A層)、180A(B層)
バイアス電圧:40V
アーク式イオンプレーティング装置の炉内の所定の位置に上記のターゲットをセットし、各ターゲットに対し基材が対向するようにして基材を回転させた。そしてその回転速度を調整しながら、A層とB層とが交互に積層された多層構造を有する耐摩耗層を形成した。
【0082】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0083】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み30nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は以下の通りである。
ターゲット:Ti0.5Al0.5
放電電流:100A
バイアス電圧:100V
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み60nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが6nmのTi0.5Al0.5Nとした。D層は、厚み6nmであり、組成は以下の表1に記載の耐溶着層と同じ組成とした。C層およびD層それぞれの積層数は5層である。この第2付着層の形成条件は以下の通りである。
ターゲット:Ti0.5Al0.5(C層)、表1記載の耐溶着層と同じターゲット(D層)
放電電流:100A(C層)、100A(D層)
バイアス電圧:100V
上記の耐摩耗層を形成したのと同様に、各ターゲットに対し基材が対向するようにして基材を回転させ、そしてその回転速度を調整しながら、上記のような構成の第2付着層を形成した。
【0084】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)により測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0085】
次いで、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は1.5μmで共通)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、以下の表1に記載の組成を有していた。形成条件は以下の通りである。
ターゲット:表1に記載の組成となるように組成を調整したもの
放電電流:150A
バイアス電圧:100V
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、比較例2〜3を除きウルツァイト型であることが確認できた。比較例2〜3の結晶構造は、立方晶型であった。
【0086】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1をそれぞれ表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例1〜12および比較例1〜5の表面被覆切削工具を得た。
【0089】
<比較例6〜10>
耐摩耗層の構成を以下の表2の構成とすることを除き、他は全て上記の実施例6と同様にして表面被覆切削工具を作製した(ただし比較例10の耐溶着層は実施例6の耐溶着層の構成に代えてその組成をTi0.5Al0.5N(厚み2μm)とした)。なお、これらの比較例の耐摩耗層の結晶構造は、いずれも立方晶型であった。
【0090】
【表2】
【0091】
<実施例13〜16>
以下のようにして、実施例13〜16の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、耐摩耗層を除く他の構成は共通である。
【0092】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層を形成した。耐摩耗層の具体的な構成は以下の表3の通りであり、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0093】
【表3】
【0094】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0095】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み50nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.3Al0.7Nとし、形成条件はターゲットの組成を除き上記の実施例1〜12と同様である。
【0096】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み60nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが6nmのTi0.3Al0.7Nとした。D層は、厚み6nmであり、組成は下記の耐溶着層と同じ組成とした。C層およびD層それぞれの積層数は5層である。この第2付着層の形成条件はターゲットの組成を除き上記の実施例1〜12と同様である。
【0097】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)により測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0098】
次いで、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は1.5μmで共通)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.84Cr0.1Ti0.06Nとした。形成条件はターゲットの組成を除き上記の実施例1〜12と同様である。
【0099】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0100】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1をそれぞれ表3に示す。
【0101】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例13〜16の表面被覆切削工具を得た。
【0102】
<実施例17〜24>
以下のようにして、実施例17〜24の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、耐摩耗層の厚みおよび耐溶着層の厚みを除く他の構成は共通である。
【0103】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.3μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0104】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層(厚みは以下の表4の通り)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるA層は、厚み(Ta)が4nmのTi0.5Al0.5Nとした。AlおよびCrを含む窒化物からなるB層は、厚み(Tb)が10nmのAl0.7Cr0.3Nとした。A層およびB層それぞれの積層数は、以下の表4の通りであり、Tb/Ta=2.5である。この耐摩耗層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0105】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0106】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み30nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0107】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み30nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが6nmのTi0.5Al0.5Nとした。D層は、厚み9nmであり、組成は以下の耐溶着層と同じ組成とした。C層およびD層それぞれの積層数は2層である。この第2付着層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0108】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)により測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0109】
次いで、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は以下の表4の通り)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.85Cr0.1Ti0.05Nとした。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0110】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0111】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例17〜24の表面被覆切削工具を得た。
【0114】
<実施例25〜30>
以下のようにして、実施例25〜30の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、耐摩耗層の厚みおよび耐溶着層の厚みを除く他の構成は共通である。
【0115】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.1μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.7Al0.3Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0116】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層(厚みは以下の表5の通り)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるA層は、厚み(Ta)が5nmのTi0.7Al0.3Nとした。AlおよびCrを含む窒化物からなるB層は、厚み(Tb)が19nmのAl0.67Cr0.33Nとした。A層およびB層それぞれの積層数は、以下の表5の通りであり、Tb/Ta=3.8である。この耐摩耗層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0117】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0118】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み70nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.33Al0.67Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0119】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み70nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが5nmのTi0.33Al0.67Nとした。D層は、厚み5nmであり、組成は以下の耐溶着層と同じ組成とした。C層およびD層それぞれの積層数は7層である。この第2付着層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0120】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)により測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0121】
次いで、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は以下の表5の通り)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.85Cr0.1Ti0.05Nとした。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0122】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0123】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1を表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例25〜30の表面被覆切削工具を得た。
【0126】
<実施例31〜37>
以下のようにして、実施例31〜37の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、耐摩耗層の構成を除く他の構成は共通である。
【0127】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.07μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.45Al0.55Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0128】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層を形成した。耐摩耗層の構成は以下の表6の通りであり、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0129】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0130】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に耐溶着層(厚み(T2)は1.5μm)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.85Cr0.1Ti0.05Nとした。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0131】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0132】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1を表6に示す。
【0133】
【表6】
【0134】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例31〜37の表面被覆切削工具を得た。
【0135】
<実施例38〜43および比較例11〜12>
以下のようにして、実施例38〜43および比較例11〜12の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、耐摩耗層を除く他の構成は共通である。
【0136】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.1μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0137】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層を形成した。耐摩耗層の構成は以下の表7の通りであり、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0138】
【表7】
【0139】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、実施例のものは立方晶型であることが確認できたが、比較例のものは立方晶型と六方晶型が混在していた。
【0140】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み40nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0141】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み90nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが5.5nmのTi0.5Al0.5Nとした。D層は、厚み9.5nmであり、組成は以下の耐溶着層と同じ組成とした。C層およびD層それぞれの積層数は6層である。この第2付着層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0142】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)により測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0143】
続いて、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は1μm)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.82Cr0.14Ti0.04Nとした。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0144】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0145】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1は各共通で0.5であった。
【0146】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例38〜43および比較例11〜12の表面被覆切削工具を得た。
【0147】
<実施例44〜48>
以下のようにして、実施例44〜48の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、中間層の厚みおよび耐摩耗層の構成が異なることを除き他の構成は共通である。
【0148】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は厚みを調整することを除き上記の実施例1〜12と同様である。この中間層の厚みは、実施例44は0.005μm、実施例45は0.04μm、実施例46は0.15μm、実施例47は0.4μm、実施例48は1μmであった。
【0149】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層を形成した。耐摩耗層の構成は以下の表8の通りであり、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0150】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0151】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に耐溶着層(厚み(T2)は0.9μm)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.88Cr0.1Ti0.02Nとした。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0152】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0153】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1を表8に示す。
【0154】
【表8】
【0155】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例44〜48の表面被覆切削工具を得た。
【0156】
<実施例49〜55>
以下のようにして、実施例49〜55の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、第1付着層および第2付着層の厚みが異なることを除き、他の構成は共通である。
【0157】
基材は、上記の実施例1〜12と同様である。
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.3μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0158】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層(厚み2.8μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるA層は、厚み(Ta)が4nmのTi0.5Al0.5Nとした。AlおよびCrを含む窒化物からなるB層は、厚み(Tb)が10nmのAl0.7Cr0.3Nとした。A層およびB層それぞれの積層数は、200層であり、Tb/Ta=2.5である。この耐摩耗層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0159】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0160】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚みは表9の通り)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.5Al0.5Nとし、形成条件は厚みを調整することを除き上記の実施例1〜12と同様である。
【0161】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚みおよび積層数は表9の通り)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが9nmのTi0.5Al0.5Nとした。D層は、厚み11nmであり、組成は以下の耐溶着層と同じ組成とした。この第2付着層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0162】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)により測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0163】
【表9】
【0164】
続いて、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は1μm)を形成した。この耐溶着層は、被覆層の最表面に位置するものであり、組成はAl0.82Cr0.14Ti0.04Nとした。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0165】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0166】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1は0.36であった。
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例49〜55の表面被覆切削工具を得た。
【0167】
<評価>
以下の切削試験1〜5を行なうことによって、実施例/比較例の表面被覆切削工具を評価した。
【0168】
<切削試験1>
実施例1〜12、25〜30、比較例1〜5、10の各表面被覆切削工具を用いて、以下の条件で被削材に対して穴開け加工を行ない、折損するまでの穴数を計測した。ドリルの折損は、刃先に被削材が溶着し、その溶着を起点として発生するため、穴数が多いものほど耐溶着性に優れており、工具寿命に優れていることを示す。結果を表10に示す。
【0169】
(加工条件)
被削材:SCM415生材
切削速度:V=80m/分
1回転当りの送り量:f=0.2mm/rev.
1穴の深さ:H=40mm
給油方式:外部給油方式(切削液=エマルジョン)
【0170】
【表10】
【0171】
<切削試験2>
実施例44〜55の各表面被覆切削工具を用いて、切削試験1と同じ条件で被削材に対して穴開け加工を行ない、穴数が50毎に刃先の状態を観察した。そして、耐溶着層または被覆膜全体の剥離が初めて観察された穴数を確認した。穴数が多いものほど、被覆膜の耐剥離性に優れていることを示す。結果を表11に示す。
【0172】
【表11】
【0173】
<切削試験3>
実施例4、6、17〜43、比較例6〜9、11、12の各表面被覆切削工具を用いて、以下の条件で被削材に対して穴開け加工を行ない、シンニング部または刃先が欠損するまでの穴数を計測した。これらの欠損は、被削材が溶着し、その溶着を起点として発生するため、穴数が多いものほど耐溶着性に優れており、工具寿命に優れていることを示す。結果を表12に示す。
【0174】
(加工条件)
被削材:S50C(HB230)
切削速度:V=80m/分
1回転当りの送り量:f=0.25mm/rev.
1穴の深さ:H=40mm
給油方式:内部給油方式(切削液=エマルジョン)
【0175】
【表12】
【0176】
<切削試験4>
実施例13〜24の各表面被覆切削工具を用いて、切削試験3と同じ条件で被削材に対して穴数が200となる穴開け加工を行なった後、マージン損傷を顕微鏡で観察した。そして、マージン部に送りマークや被覆膜の剥離が発生している範囲の、先端からの長さ(mm)を測定した。該長さが短いものほど、耐溶着性、耐摩耗性、靭性等の切削特性に優れていることを示す。結果を表13に示す。
【0177】
【表13】
【0178】
<切削試験5>
実施例31〜37の各表面被覆切削工具を用いて、以下の条件で被削材に対して穴数が1000となる穴開け加工を行なった後、ドリルの顕微鏡観察により逃げ面外周側の摩耗幅(mm)を測定した。摩耗幅が小さいものほど耐摩耗性に優れていることを示す。結果を表14に示す。
【0179】
(加工条件)
被削材:S50C(HB230)
切削速度:V=130m/分
1回転当りの送り量:f=0.25mm/rev.
1穴の深さ:H=40mm
給油方式:内部給油方式(切削液=エマルジョン)
【0180】
【表14】
【0181】
表10〜表14より明らかなように、本発明の表面被覆切削工具が、優れた耐摩耗性と優れた耐溶着性を示し、以って欠損や折損を極めて有効に防止することができるという優れた効果を示すことが確認できた。
【0182】
<実施例56〜58および比較例13〜14>
以下のようにして、実施例56〜58および比較例13〜14の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、耐溶着層を除く他の構成は共通である。
【0183】
基材は、超硬合金製ドリル(刃径:直径6.0mm、全長:100mm、溝長:48mm、油孔付き)、および超硬合金製板(20mm×10mm×1mm)を用いた。
【0184】
そして、この各基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.4μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.6Al0.4Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0185】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層(厚み(T1)4.5μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるA層は、厚み(Ta)が8nmのTi0.6Al0.4Nとした。AlおよびCrを含む窒化物からなるB層は、厚み(Tb)が15nmのAl0.7Cr0.3Nとした。A層およびB層それぞれの積層数は196層であり、厚み比Tb/Ta=1.9である。この耐摩耗層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0186】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0187】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み60nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.6Al0.4Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0188】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み40nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが5nmのTi0.6Al0.4Nとした。D層は、厚み5nmであり、組成は以下の耐溶着層と同じ組成とした。C層およびD層それぞれの積層数は4層である。この第2付着層の形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0189】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)を用いて測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0190】
次いで、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は1.5μmで共通)を形成した。この耐溶着層は、被覆膜の最表面に位置するものであり、以下の表15に記載の組成を有していた。形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0191】
【表15】
【0192】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0193】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1は0.33である。
基材としての超硬合金製板の上に形成された被覆膜をナノインデンターを用いて耐摩耗層と耐溶着層の表面付近の硬度測定を実施した。耐摩耗層の硬度H1と耐溶着層の硬度H2(表面から測定したもの)との比である硬度比H2/H1をそれぞれ表15に示す。
【0194】
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例56〜58および比較例13〜14の表面被覆切削工具を得た。
【0195】
<実施例59〜63>
成膜時のバイアス電圧を以下の表16の通りとすることを除き、他は全て上記の実施例57と同様にして表面被覆切削工具を作製した。なお、これらの実施例の耐摩耗層の結晶構造は、いずれも立方晶であった。これらの実施例の第2付着層および耐溶着層の構造は、いずれもウルツァイト型であった。
【0196】
超硬合金製板(基材)の成膜前後の反り量を測定し、形成された被覆膜の膜厚をカロテストを用いて測定し、被覆膜の応力を計算した。その結果を表16に示す。
【0197】
【表16】
【0198】
<実施例64〜78>
以下のようにして、実施例64〜78の表面被覆切削工具を作製した。これらの表面被覆切削工具はいずれも、基材上に被覆膜として中間層、耐摩耗層、第1付着層、第2付着層、および耐溶着層をこの順でアーク式イオンプレーティング法により形成した構成を有し、構成は共通である。
【0199】
基材は、超硬合金製ドリル(刃径:直径6.0mm、全長:100mm、溝長:48mm、油孔付き)を用いた。
【0200】
そして、この基材をアーク式イオンプレーティング装置にセットし、まず基材上にTiおよびAlを含む窒化物で構成される中間層(厚み0.3μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.55Al0.45Nとし、形成条件は上記の実施例1〜12と同様である。
【0201】
次いで、上記で形成した中間層上に、A層とB層とを交互に積層させた多層構造を有する耐摩耗層(厚み(T1)4.5μm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるA層は、厚み(Ta)が8nmのTi0.55Al0.45Nとした。AlおよびCrを含む窒化物からなるB層は、厚み(Tb)が15nmのAl0.7Cr0.3Nとした。A層およびB層それぞれの積層数は196層であり、厚み比Tb/Ta=1.9である。この耐摩耗層の形成条件は以下の通りである。
ターゲット:Ti0.55Al0.45(A層)、Al0.7Cr0.3(B層)
圧力:5Pa、N2にArを10%入れて成膜。
放電電流:100A(A層)、180A(B層)
バイアス電圧:表17、表18、表19の通り
成膜温度:表17、表18、表19の通り。
【0202】
アーク式イオンプレーティング装置の炉内の所定の位置に上記のターゲットをセットし、各ターゲットに対し基材が対向するようにして基材を回転させた。そしてその回転速度を調整しながら、A層とB層とが交互に積層された多層構造を有する耐摩耗層を形成した。
【0203】
この耐摩耗層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、立方晶型であることが確認できた。
【0204】
続いて、上記で形成した耐摩耗層上に、TiおよびAlを含む窒化物で構成される第1付着層(厚み30nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物の組成はTi0.55Al0.45Nとし、形成条件は上記の耐摩耗層と同様である。
【0205】
引続き、上記で形成した第1付着層上に、C層とD層とを交互に積層させた多層構造を有する第2付着層(厚み60nm)を形成した。TiおよびAlを含む窒化物からなるC層は、厚みが6nmのTi0.55Al0.45Nとした。D層は、厚み6nmであり、組成は以下の耐溶着層と同じ組成とした。
【0206】
C層およびD層それぞれの積層数は5層である。この第2付着層の形成条件は上記の耐摩耗層(C層)および下記の耐溶着層(D層)と同様である。
【0207】
この第2付着層の結晶構造を透過電子顕微鏡付属の透過電子回折(TED)を用いて測定したところ、C層は立方晶型であり、D層はウルツァイト型であることが確認できた。
【0208】
次いで、上記で形成した第2付着層上に耐溶着層(厚み(T2)は1.5μmで共通)を形成した。この耐溶着層は、被覆膜の最表面に位置するものであり、組成はAl0.85Cr0.11Ti0.04Nとした。形成条件は以下の通りである。
ターゲット:Al0.85Cr0.11Ti0.04
放電電流:150A
バイアス電圧:表17、表18、表19の通り
成膜温度:表17、表18、表19の通り。
【0209】
このようにして形成された耐溶着層の結晶構造をX線回折装置を用いて測定したところ、ウルツァイト型であることが確認できた。
【0210】
なお、耐摩耗層の厚みT1と耐溶着層の厚みT2の比T2/T1は0.33である。
このようにして、基材上に被覆層を形成した表面被覆切削工具を冷却後アーク式イオンプレーティング装置から取り出した後、砥粒を含有したブラシにより被覆膜の表面を平滑化処理することにより、実施例64〜78の表面被覆切削工具を得た。
【0211】
このようにして形成された被覆膜のX線回折パターンの測定条件は以下の通りである。
測定部位:ドリルの逃げ面
使用X線:Cu−Kα
励起条件:45kV 200mA
使用コリメーター:φ0.3mm
測定法:θ−2θ法。
【0212】
実施例64〜68において、2θ=36°付近のピーク強度をK1とし、2θ=37.4°付近のピーク強度をK2とする場合の強度比K2/K1をそれぞれ表17に示す。なお、K1は耐溶着層の六方晶(002)のピーク強度を表わし、K2は耐摩耗層の立方晶(111)のピーク強度を表わしていると考えられる。
【0213】
実施例69〜73において、2θ=37.4°付近のピーク強度をK1とし、2θ=37.9°付近のピーク強度をK2とする場合の強度比K2/K1をそれぞれ表18に示す。なお、K1は耐摩耗層の立方晶(111)のピーク強度を表わし、K2は耐溶着層の六方晶(101)のピーク強度を表わしていると考えられる。
【0214】
実施例74〜78において、2θ=37.4°付近のピーク強度をK1とし、2θ=43.2°付近のピーク強度をK2とする場合の強度比K2/K1をそれぞれ表19に示す。なお、K1は耐摩耗層の立方晶(111)のピーク強度を表わし、K2は耐溶着層の立方晶(200)のピーク強度を表わしていると考えられる。
【0215】
【表17】
【0216】
【表18】
【0217】
【表19】
【0218】
<実施例79〜83>
耐摩耗層の成膜温度を以下の表20の通りとすることを除き、他は全て上記の実施例57と同様にして表面被覆切削工具を作製した。なお、これらの実施例の耐摩耗層の結晶構造は、いずれも立方晶であった。これらの実施例の第2付着層および耐溶着層の構造は、いずれもウルツァイト型であった。
【0219】
このようにして形成された耐摩耗層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)も用いて観察したところ、柱状晶を形成したことを確認した。なお、実施例79〜83の耐摩耗層の柱状晶の平均粒径を表20(「耐摩耗層の平均粒径」の項)に示す。
【0220】
【表20】
【0221】
<実施例84〜87>
耐溶着層の組成と成膜温度を以下の表21の通りとすることを除き、他は全て上記の実施例57と同様にして表面被覆切削工具を作製した。なお、これらの実施例の耐摩耗層の結晶構造は、いずれも立方晶であった。これらの実施例の第2付着層および耐溶着層の構造は、いずれもウルツァイト型であった。
【0222】
このようにして形成された耐溶着層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)も用いて観察したところ、ナノ粒子を形成したことを確認した。なお、実施例84〜87の耐溶着層のナノ粒子の平均粒径を表21(「耐溶着層の平均粒径」の項)に示す。
【0223】
【表21】
【0224】
<切削試験6>
実施例56〜87、比較例13〜14の各表面被覆切削工具(基材を超硬合金製ドリルとするもの)を用いて、以下の条件で被削材に対して穴開け加工を行ない、刃先が欠損するかまたはドリルが折損するまでの穴数を計測した。これらの欠損は、膜のハクリまたは耐溶着層の消耗により被削材が溶着し、その溶着を起点として発生するため、穴数が多いものほど耐溶着性に優れており、工具寿命に優れていることを示す。また、これらの折損は、耐溶着層がなくなり切り屑の排出性が悪くなることから発生するため、穴数が多いものほど耐溶着性に優れており、工具寿命に優れていることを示す。結果を表22に示す。
【0225】
<加工条件>
被削材:S50C(HB230)
切削速度:V=130m/分
1回転当りの送り量:f=0.25mm/rev.
1穴の深さ:H=40mm
給油方式:内部給油方式(切削液=エマルジョン)。
【0226】
ただし、実施例79〜83については、切削試験5の条件で評価を行ない、その結果を表23に示す。
【0227】
【表22】
【0228】
【表23】
【0229】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0230】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。