(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動源(E)からの駆動力が入力される入力軸(13)と、第1プーリ(21)、第2プーリ(22)および無端ベルト(23)で構成されるベルト式無段変速機構(20)と、前記ベルト式無段変速機構(20)で変速された駆動力を出力する出力軸(15)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第1プーリ(21)に伝達する第1入力経路(IP1)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第1入力経路(IP1)側に切り換える第1入力切換機構(24A)と、前記第1入力経路(IP1)に配置されて前記第1プーリ(21)への入力を減速する減速機構(25,26)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第2プーリ(22)に伝達する第2入力経路(IP2)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第2入力経路(IP2)側に切り換える第2入力切換機構(24B)と、前記第2入力経路(IP2)に配置されて前記第2プーリ(22)への入力を増速する増速機構(27,28)と、前記第2プーリ(22)からの駆動力を出力する第1出力経路(OP1)と、前記第1プーリ(21)からの駆動力を出力する第2出力経路(OP2)と、前記第1出力経路(OP1)に配置されて前記第2プーリ(22)からの駆動力を前記出力軸(15)側に切り換える第1出力切換機構(37)と、前記第2出力経路(OP2)に配置されて前記第1プーリ(21)からの駆動力を前記出力軸(15)側に切り換える第2出力切換機構(38)とを備える無段変速機であって、
前記第1,第2入力切換機構(24A,24B)は、前記ベルト式無段変速機構(20)から見て前記駆動源(E)と同じ側に配置され、
前記入力軸(13)は、前記第1入力切換機構(24A)からの駆動力を前記第1入力経路(IP1)に伝達する第1入力軸(13A)と、前記第2入力切換機構(24B)からの駆動力を前記第2入力経路(IP2)に伝達する第2入力軸(13B)とを備え、前記第2入力軸(13B)は前記第1入力軸(13A)の外周に相対回転自在に配置されるとともに、ベアリング(17)を介してミッションケース(M)に支持され、前記第1出力切換機構(37)は前記第2入力軸(13B)上に配置され、前記第2出力切換機構(38)は前記第1プーリ(21)の回転軸上に配置され、
前記第1プーリ(21)は第1固定プーリ(21A)および第1可動プーリ(21B)からなり、前記第2プーリ(22)は第2固定プーリ(22A)および第2可動プーリ(22B)からなり、前記第1固定プーリ(21A)および前記第2固定プーリ(22A)は相互に対角位置に配置され、前記第1可動プーリ(21B)および前記第2可動プーリ(22B)は相互に対角位置に配置され、前記第2固定プーリ(22A)の背面側には前記増速機構(27,28)を構成するギヤの一つが配置され、前記第1固定プーリ(21A)の背面側には前記第2出力切換機構(38)および前記出力軸(15)が配置され、前記第1出力切換機構(37)と前記第2出力切換機構(38)とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されることを特徴とする無段変速機。
駆動源(E)からの駆動力が入力される入力軸(13)と、第1プーリ(21)、第2プーリ(22)および無端ベルト(23)で構成されるベルト式無段変速機構(20)と、前記ベルト式無段変速機構(20)で変速された駆動力を出力する出力軸(15)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第1プーリ(21)に伝達する第1入力経路(IP1)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第1入力経路(IP1)側に切り換える第1入力切換機構(24A)と、前記第1入力経路(IP1)に配置されて前記第1プーリ(21)への入力を減速する減速機構(25,26)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第2プーリ(22)に伝達する第2入力経路(IP2)と、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第2入力経路(IP2)側に切り換える第2入力切換機構(24B)と、前記第2入力経路(IP2)に配置されて前記第2プーリ(22)への入力を増速する増速機構(27,28)と、前記第2プーリ(22)からの駆動力を出力する第1出力経路(OP1)と、前記第1プーリ(21)からの駆動力を出力する第2出力経路(OP2)と、前記第1出力経路(OP1)に配置されて前記第2プーリ(22)からの駆動力を前記出力軸(15)側に切り換える第1出力切換機構(37)と、前記第2出力経路(OP2)に配置されて前記第1プーリ(21)からの駆動力を前記出力軸(15)側に切り換える第2出力切換機構(38)とを備える無段変速機であって、
前記第1,第2入力切換機構(24A,24B)は、前記ベルト式無段変速機構(20)から見て前記駆動源(E)と反対側に配置され、
前記入力軸(13)は、前記駆動源(E)からの駆動力を前記第1,第2入力切換機構(24A,24B)に伝達する第1入力軸(13A)と、前記第2入力切換機構(24B)からの駆動力を前記第2入力経路(IP2)に伝達する第2入力軸(13B)とを備え、前記第2入力軸(13B)は前記第1入力軸(13A)の外周に相対回転自在に配置されるとともに、ベアリング(17)を介してミッションケース(M)に支持され、前記第1出力切換機構(37)は前記第2入力軸(13B)上に配置され、前記第2出力切換機構(38)は前記第1プーリ(21)の回転軸上に配置されることを特徴とする無段変速機。
前記第1プーリ(21)は第1固定プーリ(21A)および第1可動プーリ(21B)からなり、前記第2プーリ(22)は第2固定プーリ(22A)および第2可動プーリ(22B)からなり、前記第1固定プーリ(21A)および前記第2固定プーリ(22A)は相互に対角位置に配置され、前記第1可動プーリ(21B)および前記第2可動プーリ(22B)は相互に対角位置に配置され、前記第2可動プーリ(22B)の背面側には前記増速機構(27,28)を構成するギヤの一つが配置され、前記第1固定プーリ(21A)の背面側には前記第2出力切換機構(38)および前記出力軸(15)が配置され、前記第1出力切換機構(37)と前記第2出力切換機構(38)とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の無段変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記PCT/JP2012/063029により提案された無段変速機のうち、
図20に示される実施の形態は、第1クラッチを係合してLOWモードを確立したとき、エンジンEの駆動力が入力軸から第1クラッチ→第1プーリ→無端ベルト→第2プーリ→入力軸上に支持されたドグクラッチ(出力切換機構)→ディファレンシャルギヤの経路で伝達される。LOWモードではHIモードに比べて伝達されるトルクが大きくなるため、前記ドグクラッチは大きなトルクに耐え得るように強固に支持する必要がある。しかしながら、前記ドグクラッチは直接ミッションケースに支持されずに入力軸を介して支持されるため、強固に支持するには大きなトルクを伝達する必要のない入力軸を太くする必要があり、重量が増加してしまう問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、入力軸の外周に支持されてLOWモードで大きなトルクを伝達する出力切換機構を直接ミッションケースで支持して支持剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、駆動源からの駆動力が入力される入力軸と、第1プーリ、第2プーリおよび無端ベルトで構成されるベルト式無段変速機構と、前記ベルト式無段変速機構で変速された駆動力を出力する出力軸と、前記駆動源からの駆動力を前記第1プーリに伝達する第1入力経路と、前記駆動源からの駆動力を前記第1入力経路側に切り換える第1入力切換機構と、前記第1入力経路に配置されて前記第1プーリへの入力を減速する減速機構と、前記駆動源からの駆動力を前記第2プーリに伝達する第2入力経路と、前記駆動源からの駆動力を前記第2入力経路側に切り換える第2入力切換機構と、前記第2入力経路に配置されて前記第2プーリへの入力を増速する増速機構と、前記第2プーリからの駆動力を出力する第1出力経路と、前記第1プーリからの駆動力を出力する第2出力経路と、前記第1出力経路に配置されて第2プーリからの駆動力を前記出力軸側に切り換える第1出力切換機構と、前記第2出力経路に配置されて第1プーリからの駆動力を前記出力軸側に切り換える第2出力切換機構とを備える無段変速機であって、前記第1,第2入力切換機構は、前記ベルト式無段変速機構から見て前記駆動源と同じ側に配置され、前記入力軸は、前記第1入力切換機構からの駆動力を前記第1入力経路に伝達する第1入力軸と、前記第2入力切換機構からの駆動力を前記第2入力経路に伝達する第2入力軸とを備え、前記第2入力軸は前記第1入力軸の外周に相対回転自在に配置されるとともに、ベアリングを介してミッションケースに支持され、前記第1出力切換機構は前記第2入力軸上に配置され、前記第2出力切換機構は前記第1プーリの回転軸上に配置され
、前記第1プーリは第1固定プーリおよび第1可動プーリからなり、前記第2プーリは第2固定プーリおよび第2可動プーリからなり、前記第1固定プーリおよび前記第2固定プーリは相互に対角位置に配置され、前記第1可動プーリおよび前記第2可動プーリは相互に対角位置に配置され、前記第2固定プーリの背面側には前記増速機構を構成するギヤの一つが配置され、前記第1固定プーリの背面側には前記第2出力切換機構および前記出力軸が配置され、前記第1出力切換機構と前記第2出力切換機構とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されることを第1の特徴とする無段変速機が提案される。
【0008】
また本発明によれば、駆動源からの駆動力が入力される入力軸と、第1プーリ、第2プーリおよび無端ベルトで構成されるベルト式無段変速機構と、前記ベルト式無段変速機構で変速された駆動力を出力する出力軸と、前記駆動源からの駆動力を前記第1プーリに伝達する第1入力経路と、前記駆動源からの駆動力を前記第1入力経路側に切り換える第1入力切換機構と、前記第1入力経路に配置されて前記第1プーリへの入力を減速する減速機構と、前記駆動源からの駆動力を前記第2プーリに伝達する第2入力経路と、前記駆動源からの駆動力を前記第2入力経路側に切り換える第2入力切換機構と、前記第2入力経路に配置されて前記第2プーリへの入力を増速する増速機構と、前記第2プーリからの駆動力を出力する第1出力経路と、前記第1プーリからの駆動力を出力する第2出力経路と、前記第1出力経路に配置されて前記第2プーリからの駆動力を前記出力軸側に切り換える第1出力切換機構と、前記第2出力経路に配置されて前記第1プーリからの駆動力を前記出力軸側に切り換える第2出力切換機構とを備える無段変速機であって、前記第1,第2入力切換機構は、前記ベルト式無段変速機構から見て前記駆動源と反対側に配置され、前記入力軸は、前記駆動源からの駆動力を前記第1,第2入力切換機構に伝達する第1入力軸と、前記第2入力切換機構からの駆動力を前記第2入力経路に伝達する第2入力軸とを備え、前記第2入力軸は前記第1入力軸の外周に相対回転自在に配置されるとともに、ベアリングを介してミッションケースに支持され、前記第1出力切換機構は前記第2入力軸上に配置され、前記第2出力切換機構は前記第1プーリの回転軸上に配置されることを第2の特徴とする無段変速機が提案される
。
【0009】
また本発明によれば、前記第2の特徴に加えて、前記第1プーリは第1固定プーリおよび第1可動プーリからなり、前記第2プーリは第2固定プーリおよび第2可動プーリからなり、前記第1固定プーリおよび前記第2固定プーリは相互に対角位置に配置され、前記第1可動プーリおよび前記第2可動プーリは相互に対角位置に配置され、前記第2可動プーリの背面側には前記増速機構を構成するギヤの一つが配置され、前記第1固定プーリの背面側には前記第2出力切換機構および前記出力軸が配置され、前記第1出力切換機構と前記第2出力切換機構とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されることを第
3の特徴とする無段変速機が提案される。
【0010】
また本発明によれば、前記第1〜第
3の何れか1つの特徴に加えて、前記第1出力切換機構および前記第2出力切換機構の少なくとも一方が摩擦クラッチで構成されることを第
4の特徴とする無段変速機が提案される。
【0011】
また本発明によれば、前記第
4の特徴に加えて、前記第2出力切換機構が摩擦クラッチで構成されることを第
5の特徴とする無段変速機が提案される。
【0012】
また本発明によれば、
駆動源からの駆動力が入力される入力軸と、第1プーリ、第2プーリおよび無端ベルトで構成されるベルト式無段変速機構と、前記ベルト式無段変速機構で変速された駆動力を出力する出力軸と、前記駆動源からの駆動力を前記第1プーリに伝達する第1入力経路と、前記駆動源からの駆動力を前記第1入力経路側に切り換える第1入力切換機構と、前記第1入力経路に配置されて前記第1プーリへの入力を減速する減速機構と、前記駆動源からの駆動力を前記第2プーリに伝達する第2入力経路と、前記駆動源からの駆動力を前記第2入力経路側に切り換える第2入力切換機構と、前記第2入力経路に配置されて前記第2プーリへの入力を増速する増速機構と、前記第2プーリからの駆動力を出力する第1出力経路と、前記第1プーリからの駆動力を出力する第2出力経路と、前記第1出力経路に配置されて前記第2プーリからの駆動力を前記出力軸側に切り換える第1出力切換機構と、前記第2出力経路に配置されて前記第1プーリからの駆動力を前記出力軸側に切り換える第2出力切換機構とを備える無段変速機であって、前記第1,第2入力切換機構は、前記ベルト式無段変速機構から見て前記駆動源と同じ側に配置され、前記入力軸は、前記第1入力切換機構からの駆動力を前記第1入力経路に伝達する第1入力軸と、前記第2入力切換機構からの駆動力を前記第2入力経路に伝達する第2入力軸とを備え、前記第2入力軸は前記第1入力軸の外周に相対回転自在に配置されるとともに、ベアリングを介してミッションケースに支持され、前記第1出力切換機構は前記第2入力軸上に配置され、前記第2出力切換機構は前記第1プーリの回転軸上に配置され、前記第1出力切換機構は、前記第2入力軸に相対回転自在に支持した第1ドライブギヤおよび第2ドライブギヤを該第2入力軸に選択的に結合可能なドグクラッチで構成され、前記第1ドライブギヤは前記出力軸に設けたドリブンギヤに接続され、前記第2ドライブギヤはアイドル軸を経由して前記ドリブンギヤ、又は前記第1ドライブギヤに接続されることを第
6の特徴とする無段変速機が提案される。
【0013】
また本発明によれば、前記第1〜第5の何れか1つの特徴に加えて、前記第1出力切換機構は、前記第2入力軸に相対回転自在に支持した第1ドライブギヤおよび第2ドライブギヤを該第2入力軸に選択的に結合可能なドグクラッチで構成され、前記第1ドライブギヤは前記出力軸に設けたドリブンギヤに接続され、前記第2ドライブギヤはアイドル軸を経由して前記ドリブンギヤ、又は前記第1ドライブギヤに接続されることを第7の特徴とする無段変速機が提案される。
【0014】
また本発明によれば、前記第1〜第7の何れか1つの特徴に加えて、前記第1入力切換機構および前記第2入力切換機構を一体化したことを第8の特徴とする無段変速機が提案される。
【0015】
また本発明によれば、前記第1〜第8の何れか1つの特徴に加えて、前記第2入力経路は前記第1出力経路を兼ねることを第9の特徴とする無段変速機が提案される。
【0016】
また本発明によれば、前記第
6または第7の特徴に加えて、前記減速機構のギヤ比をi
red とし、前記増速機構のギヤ比をi
ind とし、前記第1プーリおよび前記第2プーリ間の最小レシオをi
min とし、前記第1ドライブギヤおよび前記ドリブンギヤ間のギヤ比をi
sec としたとき、i
red ×i
min =i
ind の関係と、i
sec =i
red の関係とが成立することを第10の特徴とする無段変速機が提案される。
【0017】
尚、実施の形態のLOW摩擦クラッチ24Aは本発明の第1入力切換機構に対応し、実施の形態のHI摩擦クラッチ24Bは本発明の第2入力切換機構に対応し、実施の形態の第1リダクションギヤ25および第2リダクションギヤ26は本発明の減速機構に対応し、実施の形態の第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28は本発明の増速機構に対応し、実施の形態の第3リダクションギヤ29は本発明の第1ドライブギヤに対応し、実施の形態の第4リダクションギヤ30は本発明のドリブンギヤに対応し、実施の形態のリバースドライブギヤ34は本発明の第2ドライブギヤに対応する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の特徴によれば、駆動源からの駆動力は、第1入力切換機構→第1入力軸→第1入力経路→第1プーリ→無端ベルト→第2プーリ→第1出力経路→第2入力軸→第1出力切換機構→出力軸の経路で伝達されてLOWモードが確立し、また駆動源からの駆動力は、第2入力切換機構→第2入力軸→第2入力経路→第2プーリ→無端ベルト→第1プーリ→第2出力切換機構→出力軸の経路で伝達されてHIモードが確立する。LOWモードにおいて伝達される大きいトルクは第1出力切換機構を通過するが、第2入力軸は第1入力軸の外周に相対回転自在に配置され、かつ第1出力切換機構は第2入力軸上に配置されるので、第1入力軸および第2入力軸よりなる二重管構造により大きいトルクを伝達する第2入力軸を二重管の外周側に配置して直接ミッションケースに支持することで、特別の補強を施すことなく第1出力切換機構を高剛性で支持することが可能となる。
【0019】
また、第1固定プーリおよび第2固定プーリは相互に対角位置に配置され、第1可動プーリおよび第2可動プーリは相互に対角位置に配置され、第2固定プーリの背面側には増速機構を構成するギヤの一つが配置され、第1固定プーリの背面側には第2出力切換機構および出力軸が配置され、第1出力切換機構と第2出力切換機構とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されるので、第1、第2固定プーリの背面側に形成されるデッドスペースを有効利用して増速機構を構成するギヤの一つ、第1出力切換機構および第2出力切換機構を配置することで、無段変速機の小型化を図ることができる。
【0020】
また本発明の第2の特徴によれば、駆動源からの駆動力は、第1入力軸→第1入力切換機構→第1入力経路→第1プーリ→無端ベルト→第2プーリ→第1出力経路→第2入力軸→第1出力切換機構→出力軸の経路で伝達されてLOWモードが確立し、また駆動源からの駆動力は、第1入力軸→第2入力切換機構→第2入力軸→第2入力経路→第2プーリ→無端ベルト→第1プーリ→第2出力切換機構→出力軸の経路で伝達されてHIモードが確立する。LOWモードにおいて伝達される大きいトルクは第1出力切換機構を通過するが、第2入力軸は第1入力軸の外周に相対回転自在に配置され、かつ第1出力切換機構は第2入力軸上に配置されるので、第1入力軸および第2入力軸よりなる二重管構造により大きいトルクを伝達する第2入力軸を二重管の外周側に配置して直接ミッションケースに支持することで、特別の補強を施すことなく第1出力切換機構を高剛性で支持することが可能となる
。
【0021】
また本発明の第
3の特徴によれば、第1固定プーリおよび第2固定プーリは相互に対角位置に配置され、第1可動プーリおよび第2可動プーリは相互に対角位置に配置され、第2可動プーリの背面側には増速機構を構成するギヤの一つが配置され、第1固定プーリの背面側には第2出力切換機構および出力軸が配置され、第1出力切換機構と第2出力切換機構とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されるので、第2可動プーリおよび第1固定プーリの背面側に形成されるデッドスペースを有効利用して増速機構を構成するギヤの一つ、第1出力切換機構および第2出力切換機構を配置することで、無段変速機の小型化を図ることができる。
【0022】
また本発明の第
4の特徴によれば、第1出力切換機構および第2出力切換機構の少なくとも一方が摩擦クラッチで構成されるので、LOWモードおよびHIモード間の移行モード時で第1出力切換機構および第2出力切換機構が同時に出力軸側に切り換えられているときに、油圧変化等によりプーリのレシオが変化して第1、第2出力切換機構の下流側に差回転が生じたとしても、摩擦クラッチを滑らせることでそのような差回転を吸収することができる。
【0023】
また本発明の第
5の特徴によれば、第2出力切換機構を摩擦クラッチで構成しているので、前記第
4の特徴の効果が得られるのみならず、該摩擦クラッチが、LOWモード時の高トルクが通過する第1出力切換機構でなく、HIモード時の低トルクが通過する第2出力切換機構を構成しているので、該摩擦クラッチを低トルク対応の小型のものとすることができて無段変速機の軽量化が図れる。
【0024】
また本発明の第
6,第7の特徴によれば、第1出力切換機構は、第2入力軸に相対回転自在に支持した第1ドライブギヤおよび第2ドライブギヤを該第2入力軸に選択的に結合可能なドグクラッチで構成され、第1ドライブギヤは出力軸に設けたドリブンギヤに接続され、第2ドライブギヤはアイドル軸を経由して出力軸に設けたドリブンギヤ、又は第1ドライブギヤに接続されるので、第1出力切換機構によりLOWモードおよびRVSモードを選択的に確立することができる。
【0025】
また本発明の第8の特徴によれば、第1入力切換機構および第2入力切換機構を一体化したので、第1、第2入力切換機構を分離してベルト式無段変速機構の軸方向両側に配置する場合に比べて、第1、第2入力切換機構の支持構造および動力伝達経路を簡略化して無段変速機を小型化することができる。
【0026】
また本発明の第9の特徴によれば、第2入力経路は第1出力経路を兼ねるので、駆動力の伝達経路を集約して無段変速機構を小型化できるだけでなく、第2入力経路の増速機構を減速機構として機能させてLOWモードにおける減速比を稼ぐことができる。
【0027】
また本発明の第10の特徴によれば、減速機構のギヤ比をi
red とし、増速機構のギヤ比をi
ind とし、第1プーリおよび第2プーリ間の最小レシオをi
min とし、第1ドライブギヤおよびドリブンギヤ間のギヤ比をi
sec としたとき、i
red ×i
min =i
ind の関係と、i
sec =i
red の関係とが成立するので、LOWモードおよびHIモード間の移行時に第1出力切換機構および第2出力切換機構を差回転のない状態でスムーズに作動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、
図1〜
図11に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0031】
図1に示すように、車両に搭載される無段変速機TはエンジンEのクランクシャフト11にフライホイール12を介して接続された入力軸13と、入力軸13に対して平行に配置された第1副軸14A、第2副軸14B、出力軸15およびアイドル軸16とを備える。入力軸13は第1入力軸13Aと、第1入力軸13Aの外周に相対回転自在に嵌合する筒状の第2入力軸13Bと、第1入力軸13Aの同軸上に配置されたフライホイール12の出力軸である第3入力軸13Cとで構成される。第3入力軸13Cと第1入力軸13Aとの間にはLOW摩擦クラッチ24Aが配置され、第3入力軸13Cと第2入力軸13Bとの間にはHI摩擦クラッチ24Bが配置される。LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bは一体化され、無段変速機構Tから見てエンジンEと同じ側で、第1入力軸13Aおよび第2入力軸13Bの端部に配置される。第1入力軸13Aの外周に配置される第2入力軸13Bは、ベアリング17,17を介してミッションケースMに支持される。LOW摩擦クラッチ24Aは、車両の発進クラッチを兼用する。
【0032】
第1副軸14Aおよび第2副軸14B間に配置されたベルト式無段変速機構20は、第1副軸14Aに設けられた第1プーリ21と、第2副軸14Bに設けられた第2プーリ22と、第1、第2プーリ21,22に巻き掛けられた無端ベルト23とを備える。第1、第2プーリ21,22の溝幅は油圧によって相互に逆方向に増減し、第1副軸14Aおよび第2副軸14B間の変速比を連続的に変化させることができる。第1プーリ21は、第1副軸14Aに固定された第1固定プーリ21Aと、第1固定プーリ21Aに対して接近・離反可能な第1可動プーリ21Bとで構成される。また第2プーリ22は、第2副軸14Bに固定された第2固定プーリ22Aと、第2固定プーリ22Aに対して接近・離反可能な第2可動プーリ22Bとで構成される。また第1プーリ21の第1固定プーリ21Aおよび第2プーリ22の第2固定プーリ22Aは相互に対角位置に配置され、第1プーリ21の第1可動プーリ21Bおよび第2プーリ22の第2可動プーリ22Bは相互に対角位置に配置される。
【0033】
第1入力軸13Aに固設した第1リダクションギヤ25と第1副軸14Aに固設した第2リダクションギヤ26とが噛合し、第2入力軸13Bに固設した第1インダクションギヤ27と第2副軸14Bに固設した第2インダクションギヤ28とが噛合して、第2固定プーリ22Aの背面側に第2インダクションギヤ28が配置される。第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28は後述するHIモードではインダクションギヤとして機能するが、後述するLOWモードでは駆動力の伝達方向が逆になるためにリダクションギヤとして機能する。
【0034】
また第2入力軸13Bに相対回転自在に支持した第3リダクションギヤ29と第1副軸14Aに相対回転自在に支持した出力軸15外周の第4リダクションギヤ30とが噛合し、出力軸15を介して第4リダクションギヤ30と一体のファイナルドライブギヤ31がディファレンシャルギヤ33に設けたファイナルドリブンギヤ32に噛合する。また第2入力軸13Bに相対回転自在に支持したリバースドライブギヤ34とアイドル軸16に固設したリバースアイドルギヤ35とが噛合し、アイドル軸16に固設したリバースドリブンギヤ36が第4リダクションギヤ30に噛合する。
【0035】
第2入力軸13Bの外周にドグクラッチよりなる第1出力切換機構37が設けられる。第1出力切換機構37は中立位置、右動位置および左動位置を切り換え可能であり、中立位置から右動すると第3リダクションギヤ29が第2入力軸13Bに結合され、中立位置から左動するとファイナルドライブギヤ31が第2入力軸13Bに結合される。第1固定プーリ21Aの背面側で第1副軸14Aの外周にドグクラッチよりなる第2出力切換機構38が設けられる。第2出力切換機構38は中立位置および右動位置を切り換え可能であり、中立位置から右動すると第4リダクションギヤ30およびファイナルドライブギヤ31が第1副軸14Aに結合される。第1出力切換機構37と第2出力切換機構38とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置される。
【0036】
第1、第2リダクションギヤ25,26により、第1入力軸13Aの回転は減速して第1副軸14Aに伝達される。一方、第1、第2インダクションギヤ27,28により、第2入力軸13Bの回転は増速して第2副軸14Bに伝達される。第1リダクションギヤ25および第2リダクションギヤ26は本発明の第1の実施の形態の第1入力経路IP1を構成し、第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28は本発明の第1の実施の形態の第2入力経路IP2を構成する。また第2インダクションギヤ28、第1インダクションギヤ27、第3リダクションギヤ29および第4リダクションギヤ30は本発明の第1の実施の形態の第1出力経路OP1を構成し、第1プーリ21および第2出力切換機構38間の第1副軸14Aは本発明の第1の実施の形態の第2出力経路OP2を構成する。
【0037】
第1リダクションギヤ25から第2リダクションギヤ26へのギヤ比をi
red とし、第1インダクションギヤ27から第2インダクションギヤ28へのギヤ比をi
ind とし、ベルト式無段変速機構20の第1プーリ21から第2プーリ22への最小変速比をi
min とすると、i
red ×i
min =i
ind となるように各ギヤ比が設定される。また第3リダクションギヤ29から第4リダクションギヤ30へのギヤ比をi
sec としたとき、i
sec =i
red となるように各ギヤ比が設定される。
【0038】
図2には、第1の実施の形態の無段変速機TのLOWモードが示される。LOWモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が中立位置に操作される。
【0039】
その結果、エンジンEの駆動力はクランクシャフト11→フライホイール12→第3入力軸13C→LOW摩擦クラッチ24A→第1入力軸13A→第1リダクションギヤ25→第2リダクションギヤ26→第1副軸14A→第1プーリ21→無端ベルト23→第2プーリ22→第2副軸14B→第2インダクションギヤ28→第1インダクションギヤ27→第2入力軸13B→第1出力切換機構37→第3リダクションギヤ29→第4リダクションギヤ30→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0040】
LOWモードにおいて、ベルト式無段変速機構20は第1副軸14A側から第2副軸14B側に駆動力を伝達し、その変速比の変更に応じて無段変速機Tのオーバーオール変速比が変更される。
【0041】
図3には、前記LOWモードから後記HIモードに移行する前半の移行モード1が示される。移行モード1では、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が右動位置(HI位置)に操作され、前述したLOWモードと後述する直結LOWモード(
図7参照)とが同時に確立する。
【0042】
図4には、前記LOWモードから後記HIモードに移行する後半の移行モード2が示される。移行モード2では、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が右動位置(HI位置)に操作され、後述するHIモード(
図5参照)と後述する直結HIモード(
図8参照)とが同時に確立する。
【0043】
移行モード1および移行モード2はLOWモードからHIモードへの移行をスムーズに行うためのものであり、その詳細は後述する。
【0044】
図5には、第1の実施の形態の無段変速機TのHIモードが示される。HIモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が中立位置に操作され、第2出力切換機構38が右動位置(HI位置)に操作される。
【0045】
その結果、エンジンEの駆動力はクランクシャフト11→フライホイール12→第3入力軸13C→HI摩擦クラッチ24B→第2入力軸13B→第1インダクションギヤ27→第2インダクションギヤ28→第2副軸14B→第2プーリ22→無端ベルト23→第1プーリ21→第1副軸14A→第2出力切換機構38→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0046】
HIモードにおいて、ベルト式無段変速機構20は第2副軸14B側から第1副軸14A側に駆動力を伝達し、その変速比の変更に応じて無段変速機Tのオーバーオール変速比が変更される。
【0047】
図6には、第1の実施の形態の無段変速機Tの後進モードが示される。後進モードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が左動位置(RVS位置)に操作され、第2出力切換機構38が中立位置に操作される。
【0048】
その結果、エンジンEの駆動力はクランクシャフト11→フライホイール12→第3入力軸13C→LOW摩擦クラッチ24A→第1入力軸13A→第1リダクションギヤ25→第2リダクションギヤ26→第1副軸14A→第1プーリ21→無端ベルト23→第2プーリ22→第2副軸14B→第2インダクションギヤ28→第1インダクションギヤ27→第2入力軸13B→第1出力切換機構37→リバースドライブギヤ34→リバースアイドルギヤ35→アイドル軸16→リバースドリブンギヤ36→第4リダクションギヤ30→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に逆回転で伝達される。
【0049】
後進モードにおいて、ベルト式無段変速機構20は第1副軸14A側から第2副軸14B側に駆動力を伝達し、その変速比の変更に応じて無段変速機Tのオーバーオール変速比が変更される。
【0050】
図7には、第1の実施の形態の無段変速機Tの直結LOWモードが示される。直結LOWモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が中立位置に操作され、第2出力切換機構38が右動位置(HI位置)に操作される。
【0051】
その結果、エンジンEの駆動力はクランクシャフト11→フライホイール12→第3入力軸13C→LOW摩擦クラッチ24A→第1入力軸13A→第1リダクションギヤ25→第2リダクションギヤ26→第1副軸14A→第2出力切換機構38→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0052】
直結LOWモードにおいて、ベルト式無段変速機構20は作動せず、無段変速機Tのオーバーオール変速比は一定である。
【0053】
図8には、第1の実施の形態の無段変速機Tの直結HIモードが示される。直結HIモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が中立位置に操作される。
【0054】
その結果、エンジンEの駆動力はクランクシャフト11→フライホイール12→第3入力軸13C→HI摩擦クラッチ24B→第2入力軸13B→第1出力切換機構37→第3リダクションギヤ29→第4リダクションギヤ30→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0055】
直結HIモードにおいて、ベルト式無段変速機構20は作動せず、無段変速機Tのオーバーオール変速比は一定である。
【0056】
次に、第1の実施の形態におけるLOWモードからHIモードへの移行時の作用を説明する。
【0057】
図9に示すように、
図2に示すLOWモードでベルト式無段変速機構20の第1プーリ21から第2プーリ22への変速比が次第に減少して最小変速比iminに達したときに、それまで中立位置にあった第2出力切換機構38を右動位置(HI位置)に操作し、
図3に示す移行モード1とする。続いて、LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bの係合関係を入れ換えて
図4に示す移行モード2とした後、右動位置(LOW位置)にあった第1出力切換機構37を中立位置に操作し、
図5に示すHIモードとする。
【0058】
LOWモードの最後およびHIモードの最初において、無段変速機Tのオーバーオール変速比は一致しており、これによりLOWモードからHIモードに切り換わるときの変速ショックの発生が防止される。LOWモードから移行モード1への移行時に第2出力切換機構38がHI位置に右動するとき、移行モード1から移行モード2への移行時にLOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bが入れ代わって係合するとき、移行モード2からHIモードへの移行時に第1出力切換機構37が中立位置に左動するとき、差回転が発生しないようにして第1出力切換機構37、第2出力切換機構38、LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bのスムーズな作動を可能にしている。
【0059】
これを詳しく説明するために、仮に、第1リダクションギヤ25から第2リダクションギヤ26へのギヤ比i
red を1.5とし、第1インダクションギヤ27から第2インダクションギヤ28へのギヤ比i
ind を0.75とし、ベルト式無段変速機構20の第1プーリ21から第2プーリ22への最小変速比i
min を0.5とし、第3リダクションギヤ29から第4リダクションギヤ30へのギヤ比i
sec を1.5とし、入力軸13の回転数を1500rpmとする。
【0060】
移行モード1の動力伝達経路には、LOWモードの動力伝達経路と直結LOWモードの動力伝達路とが併存するが、LOWモードの動力伝達経路では、第1入力軸13Aが1500rpmで回転すると、第1副軸14Aは第1、第2リダクションギヤ25,26によりi
red =1.5で減速されて1000rpmとなり、第2副軸14Bはベルト式無段変速機構20によりi
min =0.5で増速されて2000rpmとなり、第2入力軸13Bは第2インダクションギヤ28および第1インダクションギヤ27によりi
ind =0.75の逆数で減速されて1500rpmとなり、出力軸15は第3リダクションギヤ29および第4リダクションギヤ30によりi
sec =1.5で減速されて1000rpmで回転する。一方、直結LOWモードの動力伝達経路では、第1入力軸13Aが1500rpmで回転すると、第1副軸14Aは第1、第2リダクションギヤ25,26によりi
RED =1.5で減速されて1000rpmとなり、第1副軸14Aに直結された出力軸15は1000rpmで回転する。
【0061】
移行モード2の動力伝達経路には、HIモードの動力伝達経路と直結HIの動力伝達経路とが併存するが、HIモードの動力伝達経路では、第2入力軸13Bが1500rpmで回転すると、第2副軸14Bは第1、第2インダクションギヤ27,28によりi
ind=0.75で増速されて2000rpmとなり、第1副軸14Aはベルト式無段変速機構20により1/i
min =2.0で減速されて1000rpmとなり、第1副軸14Aに直結された出力軸15は1000rpmで回転する。一方、直結HIモードの動力伝達経路では、第2入力軸13Bが1500rpmで回転すると、出力軸15は第3リダクションギヤ29および第4リダクションギヤ30によりi
sec =1.5で減速されて1000rpmで回転する。
【0062】
以上のように、LOWモード、移行モード1、移行モード2およびHIモードの間で変速するとき、第1入力軸13A、第2入力軸13B、第1副軸14A、第2副軸14Bおよび出力軸15の回転数は全く変化せず、またベルト式無段変速機構20の変速比もi
min に維持されるため、第1出力切換機構37、第2出力切換機構38、LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bの作動を差回転なしでスムーズに行うことができる。
【0063】
また移行モード1から移行モード2への移行時に、ベルト式無段変速機構20は第1プーリ21→第2プーリ22への動力伝達状態から、第2プーリ22→第1プーリ21への動力伝達状態へと切り換わるため、一時的にトルク伝達が途切れる瞬間がある。しかしながら、その瞬間には直結LOWモードおよび直結HIモードが成立してトルクを伝達するため、トルク伝達の途切れによるショックの発生を防止することができる。
【0064】
以上のように、本第1の実施の形態によれば、ベルト式無段変速機構20に第1リダクションギヤ25、第2リダクションギヤ26、第1インダクションギヤ27、第2インダクションギヤ28、第3リダクションギヤ29および第4リダクションギヤ30よりなる減速機構と、第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28よりなる増速機構とを組み合わせたことにより、
図10に示すように、単独のベルト式無段変速機構(オーバーオール変速比=6〜7程度)に比べて、LOW側の変速比およびOD側の変速比を共に拡大し、10以上の大きなオーバーオール変速比を実現することができる(
図11参照)。また本実施の形態の無段変速機Tでは、ベルト式無段変速機構20の変速比が1.0のときのオーバーオール変速比が、単独のベルト式無段変速機構のOD端のオーバーオール変速比に近い値になっており、特にOD側の変速比拡大効果が著しいことが分かる。
【0065】
またLOWモードでは、エンジンEの回転が大きな変速比で減速されてディファレンシャルギヤ33に伝達されるため、その動力伝達経路に配置された第1出力切換機構37に大きなトルクが作用する。しかしながら、第1出力切換機構37を支持する入力軸13は、内側の第1入力軸13Aの外周に筒状の第2入力軸13Bを嵌合させた二重管構造であるために剛性が高められ、しかも第2入力軸13Bをベアリング17,17を介してミッションケースに支持することで、第1出力切換機構37を高剛性で支持することが可能となる(
図1参照)。
【0066】
また第1プーリ21の第1固定プーリ21Aおよび第2プーリ22の第2固定プーリ22Aは相互に対角位置に配置され、第1プーリ21の第1可動プーリ21Bおよび第2プーリ22の第2可動プーリ22Bは相互に対角位置に配置され、第2固定プーリ22Aの背面側に第2インダクションギヤ28が配置され、第1固定プーリ21Aの背面側に第2出力切換機構38および出力軸15が配置され、第1出力切換機構37と第2出力切換機構38とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されるので、第1、第2固定プーリ21A,22Aの背面側に形成されるデッドスペースを有効利用して無段変速機Tの小型化を図ることができる。
【0067】
また第1出力切換機構37は、第2入力軸13Bに相対回転自在に支持した第3リダクションギヤ29およびリバースドライブギヤ34を該第2入力軸13Bに選択的に結合可能なドグクラッチで構成されるので、摩擦クラッチを用いる場合に比べて引きずり抵抗を低減することができるだけでなく、単一のアクチュエータで第1出力切換機構37を操作するだけでLOWモードおよびRVSモードを選択的に確立することが可能となり、その構造を簡素化することができる。
【0068】
またLOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bを一体化してエンジンEおよびベルト式無段変速機構20の間に配置したので、LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bを分離して入力軸13の両端に配置する場合に比べて、それらの支持構造および動力伝達経路を簡略化して無段変速機Tを小型化することができる。
【0069】
また第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28よりなる第2入力経路IO2は第1出力経路OP1を兼ねるので、即ち、HIモードにおいて増速機構を構成する第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28は、LOWモードにおいて減速機構を構成するので、駆動力の伝達経路を集約して無段変速機Tを小型化できるだけでなく、LOWモードにおける減速比を稼ぐことができる。
【0070】
次に、
図12に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0071】
図12に示すように、第2の実施の形態では、入力軸13がフライホイール12の出力軸である第1入力軸13Aと、第1入力軸13Aの外周に相対回転自在に嵌合する筒状の第2入力軸13Bと、第2入力軸13Bの外周に相対回転自在に嵌合する筒状の第3入力軸13Cとで構成されて、一体化されたLOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bが、無段変速機構Tから見てエンジンEと反対側に位置するようにして第1入力軸13Aの後端に配置されており、第1入力軸13Aと第3入力軸13Cとの間にはLOW摩擦クラッチ24Aが配置されるとともに、第1入力軸13Aと第2入力軸13Bとの間にはHI摩擦クラッチ24Bが配置される。
【0072】
また、第2入力経路IP2を構成する第1、第2インダクションギヤ27,28が、ベルト式無段変速機構20から見てエンジンEと同じ側に配置されて、第2副軸14Bに固設した第2インダクションギヤ28が第2可動プーリ22Bの背面側に配置されるとともに、ベルト式無段変速機構20から見てエンジンEと反対側に配置された第1入力経路IP1の第1リダクションギヤ25が、第3入力軸13Cを介してLOW摩擦クラッチ24Aに接続する。このとき、第1リダクションギヤ25をLOW摩擦クラッチ24Aの出力側に直接接続して第3入力軸13Cを省いても良い。また、第2の実施の形態では、LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bを内外周配置として軸方向の長さの増加を抑えているが、第1の実施の形態と同様に、同直径のLOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bを並べて配置しても良い。
【0073】
また、第2の実施の形態では第2出力切換機構38が摩擦クラッチで構成されるが、第1出力切換機構37を摩擦クラッチで構成しても良く、第1,第2の出力切換機構37,38を共に摩擦クラッチで構成しても良い。
【0074】
また更に、第2の実施の形態では、第2入力軸13Bに相対回転自在に支持したリバースドライブギヤ34とアイドル軸16に固設したリバースアイドルギヤ35とを、第2のアイドル軸16′に固設した第2のリバースアイドルギヤ35′を介して噛合させ、リバースドリブンギヤ36を第4リダクションギヤ30に噛合させているが、リバースドライブギヤ34とリバースアイドルギヤ35とを第1の実施の形態のように直接噛合させて、リバースドリブンギヤ36を第4リダクションギヤ30に噛合させても良い。
【0075】
第2の実施の形態は、以上述べた点で第1の実施の形態と相違するのみであって、その余の点では第1の実施の形態と何ら異なるものでない。即ち、何れの実施の形態においても第1出力切換機構27を外周に配置した第2入力軸13Bは、ベアリング17を介してミッションケースMに支持される。
【0076】
このような第2の実施の形態においては、無段変速機TのLOWモードで、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が係合解除されて、エンジンEの駆動力が、クランクシャフト11→フライホイール12→第1入力軸13A→LOW摩擦クラッチ24A→第3入力軸13C→第1リダクションギヤ25→第2リダクションギヤ26→第1副軸14A→第1プーリ21→無端ベルト23→第2プーリ22→第2副軸14B→第2インダクションギヤ28→第1インダクションギヤ27→第2入力軸13B→第1出力切換機構37→第3リダクションギヤ29→第4リダクションギヤ30→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0077】
また、無段変速機TのHIモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が中立位置に操作され、第2出力切換機構38が係合して、エンジンEの駆動力が、クランクシャフト11→フライホイール12→第1入力軸13A→HI摩擦クラッチ24B→第2入力軸13B→第1インダクションギヤ27→第2インダクションギヤ28→第2副軸14B→第2プーリ22→無端ベルト23→第1プーリ21→第2出力切換機構38→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0078】
また、直結LOWモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が中立位置に操作され、第2出力切換機構38が係合して、エンジンEの駆動力が、クランクシャフト11→フライホイール12→第1入力軸13A→LOW摩擦クラッチ24A→第3入力軸13C→第1リダクションギヤ25→第2リダクションギヤ26→第1副軸14A→第2出力切換機構38→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達され、直結HIモードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が係合解除して、エンジンEの駆動力が、クランクシャフト11→フライホイール12→第1入力軸13A→HI摩擦クラッチ24B→第2入力軸13B→第1出力切換機構37→第3リダクションギヤ29→第4リダクションギヤ30→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に伝達される。
【0079】
また、LOWモードからHIモードに移行する移行モード1では、前半の移行モード1で、LOW摩擦クラッチ24Aが係合し、HI摩擦クラッチ24Bが係合解除し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が係合してLOWモードと直結LOWモードとが同時に確立し、後半の移行モード2で、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が右動位置(LOW位置)に操作され、第2出力切換機構38が係合して、HIモードと直結HIモードとが同時に確立する。尚、これらのモードを同時に確立させるとき、各ギヤ間のギヤ比と無段変速機Tの変速比とを、第1,第2出力経路における出力軸15の回転数に差が生じないような値に固定しておくことは当然である。
【0080】
また、後進モードでは、LOW摩擦クラッチ24Aが係合解除し、HI摩擦クラッチ24Bが係合し、第1出力切換機構37が左動位置(RVS位置)に操作され、第2出力切換機構38が係合解除して、エンジンEの駆動力が、クランクシャフト11→フライホイール12→第1入力軸13A→HI摩擦クラッチ24B→第2入力軸13B→第1出力切換機構37→リバースドライブギヤ34→第2のリバースアイドルギヤ35′→リバースアイドルギヤ35→アイドル軸16→リバースドリブンギヤ36→第3リダクションギヤ29→第4リダクションギヤ30→出力軸15→ファイナルドライブギヤ31→ファイナルドリブンギヤ32の経路でディファレンシャルギヤ33に逆回転で伝達される。
【0081】
以上のように、本第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、LOW側の変速比およびOD側の変速比を共に拡大し、10以上の大きなオーバーオール変速比を実現することができるばかりでなく、第1出力切換機構37を支持する入力軸13が、内側の第1入力軸13Aの外周に筒状の第2入力軸13Bを嵌合させた二重管構造であるために剛性が高められ、しかも第2入力軸13Bをベアリング17,17を介してミッションケースに支持することで、第1出力切換機構37を高剛性で支持することが可能となる。
【0082】
また第1プーリ21の第1固定プーリ21Aおよび第2プーリ22の第2固定プーリ22Aは相互に対角位置に配置され、第1プーリ21の第1可動プーリ21Bおよび第2プーリ22の第2可動プーリ22Bは相互に対角位置に配置され、第2可動プーリ22Bの背面側に第2インダクションギヤ28が配置され、第1固定プーリ21Aの背面側に第2出力切換機構38および出力軸15が配置され、第1出力切換機構37と第2出力切換機構38とは、軸方向で少なくとも一部が相互に重なる位置に配置されるので、第2可動プーリ22Bおよび第1固定プーリ21Aの背面側に形成されるデッドスペースを有効利用して無段変速機Tの小型化を図ることができる。
【0083】
また第1出力切換機構37および第2出力切換機構38の少なくとも一方が摩擦クラッチで構成されるので、LOWモードおよびHIモード間の移行モード時で第1出力切換機構37および第2出力切換機構38が同時に出力軸側に切り換えられているときに、油圧変化等によりプーリ21,22のレシオが変化して第1、第2出力切換機構37,38の下流側に差回転が生じたとしても、摩擦クラッチを滑らせることでそのような差回転を吸収することができる。しかも本実施の形態では、LOWモード時の高トルクが通過する第1出力切換機構でなく、HIモード時の低トルクが通過する第2出力切換機構を特に摩擦クラッチで構成しているので、該摩擦クラッチを低トルク対応の小型のものとすることができて無段変速機の軽量化が図れる。
【0084】
また第1出力切換機構37を、第2入力軸13Bに相対回転自在に支持した第3リダクションギヤ29およびリバースドライブギヤ34を該第2入力軸13Bに選択的に結合可能なドグクラッチで構成することで、該第1出力切換機構37を摩擦クラッチで構成する場合に比べて引きずり抵抗を低減することができるだけでなく、単一のアクチュエータで第1出力切換機構37を操作するだけでLOWモードおよびRVSモードを選択的に確立することが可能となり、その構造を簡素化することができる。
【0085】
またLOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bを一体化してエンジンEおよびベルト式無段変速機構20の間に配置したので、LOW摩擦クラッチ24AおよびHI摩擦クラッチ24Bを分離して入力軸13の両端に配置する場合に比べて、それらの支持構造および動力伝達経路を簡略化して無段変速機Tを小型化することができる。
【0086】
また第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28よりなる第2入力経路IO2は第1出力経路OP1を兼ねるので、即ち、HIモードにおいて増速機構を構成する第1インダクションギヤ27および第2インダクションギヤ28は、LOWモードにおいて減速機構を構成するので、駆動力の伝達経路を集約して無段変速機Tを小型化できるだけでなく、LOWモードにおける減速比を稼ぐことができる。
また、前進LOWモードのインギヤをLOW摩擦クラッチ24A、後進モードのインギヤをHI摩擦クラッチ24Bと別々のクラッチで行うことで、短時間での前進・後進切換において同一クラッチでインギヤする場合に比べてクラッチ残圧の影響を受けにくく商品性を高めることが可能となる。
以上、本発明の第1,第2の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で更に種々の設計変更を行うことが可能である。
【0087】
例えば、第1,第2の実施の形態ではエンジンEおよび入力軸13間にフライホイール12を配置しているが、フライホイール12を廃止してトルクコンバータで置き換えることができる。このようにすれば、発進機構が発進クラッチを兼用するLOW摩擦クラッチ24Aからトルクコンバータに移るため、LOW摩擦クラッチ24Aの外径を小型化することができる。
【0088】
また本発明の駆動源はエンジンEに限定されず、モータ・ジェネレータ等の他種の駆動源であっても良い。