特許第6014970号(P6014970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6014970
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】低吸着性包材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B65D65/40 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-175196(P2010-175196)
(22)【出願日】2010年8月4日
(65)【公開番号】特開2012-35849(P2012-35849A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真枝 俊之
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−137343(JP,A)
【文献】 特開2008−127042(JP,A)
【文献】 特開平08−143452(JP,A)
【文献】 特開2002−110112(JP,A)
【文献】 特開2002−343314(JP,A)
【文献】 特開2002−352779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルルビプロフェンを含む経皮吸収剤を収納し、該フルルビプロフェンの初期値からの吸着量が40℃、75%RHで3ヶ月後の継時で5%以下である低吸着性包材の製造方法であって、
前記低吸着性包材が、基材層(1)、第1の接着層(2)、ポリエチレン層(3)、アルミ箔層(4)、第2の接着層(5)、ポリオレフィン系シーラント層(6)の順に積層されている構成で、しかも、前記第2の接着層(5)が、0.1μmから0.5μmの厚みであって、かつ、一液性の芳香族型トリレンジイソシアネートであり、
前記アルミ箔層(4)と前記シーラント層(6)とを、前記第2の接着層(5)を介して押し出しラミネート法によって貼り合わせることを特徴とする低吸着性包材の製造方法。
【請求項2】
リクローズ機能を付設したことを特徴とする請求項1記載の低吸着性包材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品などの揮発成分を含む内容物を包装する為の包装材に用いられるものであり、特に消炎鎮痛剤を薬効成分とする貼付剤、パップ剤などを包装する包装材で、且つポリエチレン製のチャックが付設され、何回も出し入れ可能な包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品の包装材において、内容物成分中の薬効成分が、包装材の最内層であるシーラント層(ポリエチレン層)に吸着、又は収着される現象が従来から問題となっている。その為、吸着、収着される量も見越して過剰に内容物成分を含有させ、吸着、収着後でも安定的に効果、効能を発現するように作られている。しかし、吸着、収着する成分がかなり高価な医薬品の場合、過剰に加える事はコストアップに繋がるなどの問題がある。
【0003】
貼付剤、パップ剤などに用いられる薬効成分としては、サリチル酸メチルやサリチル酸グリコールなどが使用されていた。近年、副作用が少なく高い薬効を示すインドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、クロタミトンなどを含む薬剤が使用されている。これら薬剤成分が、包装材の最内層であるシーラント層に吸着、又は収着されるのである。
【0004】
近年、シーラント層に非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリアクリロニトリル樹脂などを用いる提案がある(特許文献1)。ポリアクリロニトリル樹脂は、狭い分子間距離に起因して吸着性という観点からは、あらゆる成分に対して大きな効果がみられ、実際に医薬品包装袋に用いられている。
【0005】
しかし、非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリアクリロニトリル樹脂などは非常に高価であり、またポリエチレン系熱融着層に比べてヒートシール強度が小さく、更にはポリエチレン系チャックとは熱融着できないなどの問題点も多い。
【0006】
また、ポリアクリロニトリル樹脂のコロナ処理面と直鎖状低密度ポリエチレンからなるチャック体のコロナ処理面同士は、熱融着が可能であるとの提案がある(特許文献2)。しかし、その強度は30N/15mm程度であり、内容物保存後の強度低下などは不明である為、現在実用化されていない。
【0007】
最内層部分に無機酸化物を蒸着し、当該部分にはヒートシール剤を塗工する事で袋形状する提案がある(特許文献3)。しかし、ポリエチレン系チャックは熱融着することはできない。
【0008】
またシーラント層に環状オレフィンを用いることで低吸着性、低溶出性をクリアできる提案がある(特許文献4)。環状オレフィンでは50μm未満の薄い熱融着層の提供は難しく、且つ樹脂のコストが高いことから、環状オレフィン層を設計することが大きなコストアップの要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−143453号公報
【特許文献2】特許第3594678号公報
【特許文献3】特許第3813278号公報
【特許文献4】特開2005−254508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、貼付剤、パップ剤などに用いられる薬効成分の低吸着性と、更にリクローズ機能を付設した低吸着性包材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、フルルビプロフェンを含む経皮吸収剤を収納し、該フルルビプロフェンの初期値からの吸着量が40℃、75%RHで3ヶ月後の継時で5%以下である低吸着性包材の製造方法であって、
前記低吸着性包材が、基材層(1)、第1の接着層(2)、ポリエチレン層(3)、アルミ箔層(4)、第2の接着層(5)、ポリオレフィン系シーラント層(6)の順に積層されている構成で、しかも、前記第2の接着層(5)が、0.1μmから0.5μmの厚みであって、かつ、一液性の芳香族型トリレンジイソシアネートであり、
前記アルミ箔層(4)と前記シーラント層(6)とを、前記第2の接着層(5)を介して押し出しラミネート法によって貼り合わせることを特徴とする低吸着性包材の製造方法である。
【0012】
削除
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、リクローズ機能を付設したことを特徴とする請求項1記載の低吸着性包材の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
アルミ箔層(4)とシーラント層(6)とを、接着剤として芳香族型トリレンジイソシアネートを用いて、押し出しラミネート法により貼り合せる。この方法によりラミネート強度を維持し、且つ内容物の薬効成分による強度劣化することもなく、接着層を薄くすることが可能となる。接着層を薄くすることにより、シーラント層(6)を透して接着層へ吸着する量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の低吸着性包材の一例を示す説明図である。
図2】本発明の低吸着性包材の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明の低吸着性包材の一例を示す説明図である。本発明の低吸着性包材の一例を示す断面図である。
【0018】
基材層(1)は、印刷基材に使用できるフィルムであれば制限はなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルムなど延伸フィルム、及びアルミナやシリカなど透明蒸着された延伸フィルムが使用可能であり、各種フィルムの厚みに関しては特に制限はないが、PETフィルムであれば30μm以下、OPPフィルムであれば20μm〜40μm程度、ONyフィルムであれば10μm〜30μm程度が適当である。
【0019】
基材層(1)ポリエチレン層(3)とは、第1の接着層(2)を介して、ポリエチレン層(3)を押し出しラミネートして、貼り合わせする。第1の接着層(2)に用いる接着剤は、押し出しラミネート用接着剤であれば特に制限はなく、2液硬化型ウレタン系コート剤、又はポリイミン系、ブタジエン系1液型硬化剤が有用であり、乾燥時の塗布量が0.5g/m〜1g/m程度が望ましい。
【0020】
ポリエチレン層(3)は、ポリオレフィンを主成分とした押し出し用ポリオレフィン系樹脂であれば特に制限はなく、取り分け低密度ポリエチレン(LDPE)が好適である。
【0021】
アルミ箔層(4)は、ラミネート包装用に使用される軟質アルミ箔であれば特に制限はなく、1N30、8021などが好適であり、厚みは6μm以上20μm以下が最適である。
【0022】
アルミ箔層(4)シーラント層(6)とは、第2の接着層(5)を介して、シーラント層(6)を押し出しラミネートして、貼り合わせする。第2の接着層(5)に用いる接着剤は、芳香族型トリレンジイソシアネートを使用する。大気中の水分と反応しウレタン結合により重合するため、接着層の厚みが0.5μm以下(乾燥時)でもラミネート強度を維持し、薬効成分による強度劣化もない包装材を作成することができる。接着層の厚みとして0.1μm〜0.5μm(乾燥時)が好ましい。従来では、2液硬化型ウレタン接着剤を使用して、接着層の厚みが0.5μm以上であったが、本発明では、厚みを薄くすることが可能になり、薬効成分の接着層への吸着量も低減することができる。
【0023】
また接着剤の芳香族型トリレンジイソシアネート固形分を10%未満にすることで、押し出しラミネート加工時において、接着剤のグラビア塗布を均一にすることができ、且つ乾燥も安定して行うことができる。グラビア版の版深との関係もあるが、固形分を3%〜9%が好ましい。接着層の厚みを0.5μm以下にするためには、接着剤の固形分とグラビア版の版深とから設定することができる。
【0024】
また芳香族型トリレンジイソシアネートは、通常、二液硬化型のウレタン系接着剤の硬化剤として用いられている。硬化剤の使用する量としては、主剤のウレタン樹脂の1〜2%である。本発明では、芳香族型トリレンジイソシアネートを単独、即ち一液で使用し、接着層の厚みが薄くてもアルミに対する接着強度が十分に発現することができる。
【0025】
シーラント層(6)は、袋状にするための熱融着層であり、ポリオレフィンを主成分とした押し出し用ポリオレフィン樹脂であれば特に制限はなく、特に低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンであればよい。厚みは20μm〜35μm程度が好適である。
【0026】
本発明の低吸着性包材は、以下の製造プロセスにより作成することができる。第一給紙側から基材層(1)を送り出し、その基材層(1)第1の接着層(2)を形成する接着剤をグラビア塗布しながら、ポリエチレン樹脂を押し出しラミネートする。その際に第二給紙側からアルミ箔を送り出し、押し出されたポリエチレン樹脂と同時にラミネートされる。基材層(1)/第1の接着層(2)ポリエチレン層(3)アルミ箔層(4)の積層構成ができる。
【0027】
上記まで作成した積層構成のアルミ箔面に、第2の接着層(5)、即ち芳香族型トリレンジイソシアネートからなる接着剤をグラビア塗布しながら、ポリエチレン樹脂を押し出しラミネートしてシーラント層を積層する。基材層(1)第1の接着層(2)ポリエチレン層(3)アルミ箔層(4)第2の接着層(5)シーラント層(6)の積層構成を作成することができる。
【0028】
図2は、本発明の低吸着性包材の一例を示す説明図である。本発明の低吸着性包材の一例を示す外観図である。
【0029】
低吸着性包材(8)には、リクローズ部(7)を付設し、複数回の使用に対し密封性を高めたものである。このリクローズ部(7)は、ポリエチレンのチャック部であり、低吸着性包材のシーラント層と熱融着し取り付けられる。内容物(9)は貼付剤、パップ剤などが剥離シートを介して複数枚積層されており、皮膚に貼って経皮吸収により薬効成分を吸収させるものである。
【0030】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
基材層(1)、第1の接着層(2)、ポリエチレン層(3)、アルミ箔層(4)、第2の接着層(5)、シーラント層(6)の順に積層されてなる低吸着性包材)を作成するために、以下の材料を用いて作製した。
基材層(1):PETフィルム12μ、東洋紡績(株)、E5100
第1の接着層(2):三井化学ポリウレタン(株)、A−3210(ウレタン樹脂)/A−3075(芳香族型トリレンジイソシアネート/ヘキサメチレンジイソシアネート=1/1)、(固形分:5%)、ドライ塗布量0.5g/m
ポリエチレン層(3):日本ポリエチレン(株)、LC600A、厚み15μm
アルミ箔層(4):9μm、東洋アルミ(株)、8021
第2の接着層(5):東洋インキ製造(株)、CAT−10(芳香族型トリレンジイソシアネート)
(固形分:5%)、 ドライ塗布量0.3g/m、厚み0.2μm
シーラント層(6):日本ポリエチレン(株)、LC600A、密度0.918g/cm、厚み30μm
尚、貼り合わせは、押し出しラミネートにて行った。
【0032】
以下に本発明の比較例について説明する。
【0033】
<比較例1>
(基材層(1)、第1の接着層(2)、ポリエチレン層(3)、アルミ箔層(4)、第2の接着層(5)、シーラント層(6)の順に積層されてなる低吸着性包材)を作成するために、以下の材料を用い,実施例1と同様に行った。
基材層(1):PETフィルム12μ、東洋紡績(株)、E5100
第1の接着層(2):三井化学ポリウレタン(株)、A−3210/A−3075、(固形分:5%)、ドライ塗布量0.5g/m
ポリエチレン層(3):日本ポリエチレン(株)、LC600A、厚み15μm
アルミ箔層(4):9μm、東洋アルミ(株)、8021
第2の接着層(5):三井化学ポリウレタン(株)、A−3210/A−3075、(固形分:5%)、
ドライ塗布量0.5g/m、厚み0.35μm
シーラント層(6):日本ポリエチレン(株)、LC600A、密度0.918g/cm、厚み30μm
貼り合わせは、押し出しラミネートにて行った。
【0034】
<比較例2>
比較例1と同様な構成を、以下の材料を用いて作成した。
基材層(1):PETフィルム12μ、東洋紡績(株)、E5100
第1の接着層(2):三井化学ポリウレタン(株)、A−3210/A−3075、(固形分:5%)、
ドライ塗布量0.5g/m
ポリエチレン層(3):日本ポリエチレン(株)、LC600A、厚み15μm
アルミ箔層(4):9μm、東洋アルミ(株)、8021
第2の接着層(5):東洋インキ製造(株)、AD−502(ウレタン樹脂)/CAT−10(芳香族型トリレンジイソシアネート)、(固形分:5%)、ドライ塗布量0.8g/m、厚み0.7μm
シーラント層(6):日本ポリエチレン(株)、LC600A、密度0.918g/cm、厚み30μm
貼り合わせは、押し出しラミネートにて行った。
【0035】
<比較例3>
比較例1と同様な構成を、以下の材料を用いて作成した。
基材層(1):PETフィルム12μ、東洋紡績(株)、E5100
第1の接着層(2):三井化学ポリウレタン(株)、A−3210/A−3075、(固形分:5%)、
ドライ塗布量0.5g/m
ポリエチレン層(3):日本ポリエチレン(株)、LC600A、厚み15μm
アルミ箔層(4):9μm、東洋アルミ(株)、8021
第2の接着層(5):東洋インキ製造(株)、AD−502/CAT−10、(固形分:5%)、
ドライ塗布量0.8g/m、厚み0.7μm
シーラント層(6):日本ポリエチレン(株)、LC600A、密度0.918g/cm、厚み20μm
貼り合わせは、押し出しラミネートにて行った。
【0036】
<比較例4>
比較例1と同様な構成を、以下の材料を用いて作成した。
基材層(1):PETフィルム12μ、東洋紡績(株)、E5100
第1の接着層(2):三井化学ポリウレタン(株)、A−3210/A−3075、(固形分:5%)、
ドライ塗布量0.5g/m
ポリエチレン層(3):日本ポリエチレン(株)、LC600A、厚み15μm
アルミ箔層(4):9μm、東洋アルミ(株)、8021
第2の接着層(5):東洋インキ製造(株)、AD−502/CAT−10、(固形分:5%)、
ドライ塗布量0.8g/m、厚み0.7μm
シーラント層(6):住友化学(株)、L405、密度0.924g/cm、厚み30μm貼り合わせは、押し出しラミネートにて行った。
【0037】
上記実施例1、比較例1〜4で作成した包装材を用いて、110mm×155mmの三方製袋を作成し、三笠製薬(株)より販売されているゼポラステープ20mgを7枚充填し、ヒートシールにより密封包装した。当該充填品を40℃、75%RH環境下に3ヶ月保存し、フルルビプロフェンの包材への吸着量をメタノール抽出後、ガスクロマトグラフにて検量し、当該成分の初期値からの吸着量を測定した。
【0038】
規格値は、40℃、75%RHで6ヶ月後の継時で10%以下(日本薬局法)であることから、目標値を40℃、75%RHで3ヶ月後の継時で5%以下にした。
【0039】
<比較結果>
【表1】
実施例1の構成、即ち第2の接着層(5)として、芳香族型トリレンジイソシアネート一液で使用した構成が、フルルビプロフェンの吸着量が低い結果になった。日本薬局方において40℃、75%RH環境下、6ヶ月保存時に薬効成分の吸着量が10%以下である基準あることから、比較例2、3、4は当該規格を外れているため使用できない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、経皮吸収剤などの外包装袋に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:基材層
2:第1の接着層
3:ポリエチレン層
4:アルミ箔層
5:第2の接着層
6:シーラント層(ポリエチレン層)
7:リクローズ部(ポリエチレンチャック)
8:低吸着性包材
9:内容物(貼付剤)
図1
図2