【0008】
筆記具本体は、先端にペン先を備え、内部にインキを収容する部材である。
ペン先としては、繊維収束体、ウレタンなどの多孔質体ペン先など柔軟な材質を用いたもので、軸筒内へ圧入固定した時に、外皮を変形させて固定されるペン先である。
また、筆記具本体内でのインキの収容方法は、繊維収束体などのインキ吸蔵体に含浸させたり、インキ吸蔵体を使用せずに、本体内に直接自由状態で収容してもよい。使用されるインキも、着色剤として染料及び/又は顔料が使用でき、媒体も水、有機溶剤が適宜使用できる。
また、ペン先の乾燥防止方法としては、ペン先を気密に保持するキャップを使用しても、又は、筆記具本体の前後動に連動して開閉する蓋体を設けたノック式の密閉構造を使用してもよい。ノック式の密閉構造を使用する事によって、筆記具使用時のキャップ紛失を防止したり、筆記時にキャップ開閉を両手で行わなければならないといった煩わしさを防止する事は出来る。
【0011】
インキ溜め部としては、インキ溜め部の周囲がペン先の側面とペン先を保持している部材の内面に囲まれた形状となっており、空気交換溝よりも毛管力の高い隙間となっている。
毛管力を高める例としては、インキ溜め部の後方をペン先、または、ペン先を保持している部材にて壁状に覆い、インキを後方より拡張濡れするようなしても良い。或いは、インキ溜め部の
ペン先の側面とペン先を保持している部材の内面の径方向の距離を空気交換溝の径方向の距離よりも狭く設定するようなしても良いし、ペン先を保持している部材のインキ溜め部の表面をインキに濡れやすい処理及び材質を用いても良い。
ちなみに、インキ溜め部の後方を壁状に覆う場合、そのインキ溜め部の具体的な形状として、インキ溜め部の後方に壁を設けた形状で、ペン先の先端側が広く、後方側がすぼんだ形状とすることによって、より後方側から奇麗にインキが溜まり、より多くのインキを貯めることが可能となる。
また、ペン先の側面とペン先を保持している部材の内面の径方向の距離を空気交換溝よりも狭くする為に、成形品の寸法をあらかじめ幅の
異なる寸法に設定して毛管力差を設けても良いが、成形品の幅はすべて同様で、ペン先の固定による、そのペン先の変形、及び、空間への膨出度合を変化させる事によって毛管差を設けても良い。尚、ペン先の変形度合を変化させる為には、インキ溜め部を形成するペン先周囲を空気交換溝部のペン先周囲より柔らかくすることよって膨出量を多くすることも出来るし、ペン先の固定部の位置を
空気交換溝よりもインキ溜め部に近い側に設けることによっても、インキ溜め部への膨出量を多くすることも出来る。
インキ溜め部の毛管力を上記の構成によって強くすることで、ペン先が飽和状態となった際に、
まず、インキ溜め部へとインキが溜まる。その飽和状態になったインキが溜まることにより一時的な洩れ防止となる。溜まったインキに関しては、インキ溜め部の一面をペン先が形成している為、筆記時及びペン先の飽和状態が解除された際に、ペン先内へと戻る。
また、ペン先を保持している部材のペン先内へ圧入される圧入代としては、一般的には円周に均一となっているが、インキ溜め部に近い保持部の圧入代を厚く、また、空気交換溝に近い保持部の圧入代を薄くすることで、固定力は均一な時と同等ながら、空気交換溝とインキ溜め部の毛管力の差を大きくすることが可能となる。
【実施例】
【0012】
図1〜
図5に一例を示す。ポリエステル繊維の収束体をペン先とし、水を媒体とした低粘度インキを繊維収束体であるインキ吸蔵体に含浸させ使用したものを想定している。
筆記具の最外形を形成し、手に把持する部材である外装体1の内部に、ペン先2を先端に備えた筆記具本体3を前後動自在に収容している。外装体1は、基本的には前後端に開口部を有する貫通穴を備えた筒状体であり、前端開口部1aがペン先吐出口であり、後端開口部1bが、操作部材の突出口となっている。前端開口部1aには、後述する蓋体4に対して摺接する環状弾性体5が嵌めこまれて固定されており、蓋体4が前端開口部1aを閉塞する状態において、蓋体4は環状弾性体5と周状当接し、外部における通気を遮断している。
【0013】
外装体1の側部には、筆記具本体3の突出係止機構のためのクリップ6が外装体1の後方に一体に固定され、クリップ6の先端内側にはギア部材7が回転可能に固定されている。
筆記具本体3の後方側壁には前突起3aと同一軸線位置に後突起3bが形成されており、外装体1の側部に設けられたスリット孔1cを通じて外装体1の外に突出している。
筆記具本体3を前進させる事によって、蓋体4が回転開口し、ペン先2が突出した位置で、前突起3aがクリップ6の先端内側に配置されたギア部材7に係止され、ペン先突出状態を維持する。そして、更に筆記具本体3を前進させると、後突起3bがギア部材7を回転させ、前突起3aとギア部材7との係止が解除され、筆記具本体3は後退可能となる。筆記具本体3は、肩部3cに当接するコイルスプリング8により後方付勢力を受けており、前突起3aとギア部材7との係止が解除されると、ペン先2を外装体1内に没入状態とする位置にまで筆記具本体3が後退し、筆記具本体に連動して蓋体4が回転閉口し、ペン先2を密閉状態とする。
【0014】
筆記具本体3の内部には、インキを含浸させたインキ吸蔵体9が収納され、ペン先2の後端がインキ吸蔵体9の先端に埋没状に接続され、インキが連通するようなしてある。筆記具本体3は気体透過が少なく、成形性の良いポリプロピレンを使用している。また、筆記具本体3の後部には、螺合により着脱自在とし、気密に装着された、尾栓10があり、尾栓10の内部空間にまでインキ吸蔵体9が介在するようになしてある。この尾栓10の内壁には、複数のリブ10aが長手方向に延在して、尾栓10及び筆記具本体3の内壁とインキ吸蔵体9との間及び後端に通気路を形成していると共に、リブ10aによってインキ吸蔵体9が挟持される形となっており、尾栓10を取り外す時にインキ吸蔵体9が尾栓10と共に取り外されるようなしてある。このようにすることによって、インキ吸蔵体9中に含浸するインキが消費されて少なくなったりインキがなくなったりした際に、尾栓10と共にインキ吸蔵体9を抜き出し、再度インキを含浸させたり、インキ吸蔵体9ごとインキが含浸したインキ吸蔵体と交換するなどとすることができるものである。また、インキ吸蔵体9には外皮が付いており、交換時にさわっても手を汚さないようになっている。
【0015】
また、筆記具本体3の外形は、主にペン先2を収容している細径部3dと、主にインキ吸蔵体9を収容する太径部3eとからなっており、その間に肩部3cが形成されている。前述した通り、この肩部3cが、コイルスプリング8によって、筆記具本体3がペン先没入移動の際の付勢力を受ける部分となる。肩部3cと細径部3dとの間には複数のリブが形成されており、細径部3dの撓みを抑制する。そして、外装体1の内壁と、筆記具本体3の細径部3dと間には、環状の弾性体11が両者と気密当接した状態で嵌められている。その弾性体11は後方よりコイルスプリング8の前方付勢力を受け、前方の環状部材12を介して蓋体4へ前方付勢力を伝えている。これによって、前述の外装体1の前端開口部1aに嵌めこまれて固定された環状弾性体5と蓋体4との気密当接と共に、ペン先2を気密に収容するキャップ内空間を形成する。
【0016】
ペン先2の外周は、筆記具本体3の内面に4箇所設けたペン先保持部3f(図中、破線記載)によってペン先2の最大外径部2aを保持し固定されている。前記ペン先保持部3fはペン先2の中間部に形成されている段部2bまで軸方向に連続して設けられており、ペン先2の軸方向の位置決めは、筆記具本体3の内部に設けた内段部3g(図中、破線記載)とペン先2の段部2bが当接する事によってなされる。
また、筆記具本体3には、空気交換可能な空気交換溝3hが1箇所設けられ、その空気交換溝3hは内段部3gよりも軸方向後方側まで伸びていると共に、ペン先2の段部2b後方の縮径部2cと筆記具本体3の細径部3d内面との空間を介して、筆記具本体3内に挿入されたインキ吸蔵体9の空間まで空気交換可能に連通している。
ペン先2はラインマーカー用に先端をナタ形に加工したペン先形状となっており、その天面を筆記面2dとしている。そのナタ形に加工されたペン先2の先端両面2eと同方向の面には、サイド面2fが延設されているが、そのサイド面2fはペン先2の中間部に形成されている段部2bまで伸びている。そのサイド面2fは断面Dカット形状となっており、ペン先形状をナタ形に加工する際に、先端両面2eとサイド面2fは同時に芯擦り加工される。また、ペン先2の最大外径部2aに設けられたサイド面2fは、ペン先2が筆記具本体3内に挿入された際に、筆記具本体3とペン先2の間に空間が出来る程度に加工されており、ペン先が飽和になった際にインキが溜まる、インキ溜め部13を作りだしている。さらに、ペン先2のサイド面2fはペン先2の最大外径部2aの外皮を芯擦り工程にて加工している為、サイド面2fは加工されていない最大外径部2aよりもやわらかくなっている。つまり、空気交換溝3hの部位に該当する最大外形部2aよりもインキ溜め部13に該当するサイド面2fがやわらかい為、ペン先2の筆記具本体3への圧入による変形が、ペン先2のサイド面2f側に大きく膨出して、空気交換溝3hに該当する最大外径部2aの変形を小さくしている。よって、空気交換溝3h内へのペン先2の膨出は抑制され、良好な空気交換が可能となる。また、ペン先2の膨出によって空間が狭くなり、かつ、後方が筆記具本体3の内段部3gによって塞がれているインキ溜め部13は、空気交換溝3hよりも毛管力が高く、ペン先2が飽和状態になった際にインキを積極的に貯める事が出来、一時的なインキ溜め部となってインキ洩れを防止する。
【0017】
図6に他の一例のペン先が圧入された状態の筆記具本体先端の投影図を示す。
図2に相当する図として示してある。
ペン先2はラインマーカー用に先端をナタ形に加工したペン先形状となっており、その天面を筆記面2dとしている。外形は円筒形となっており、前述の一例同様、中間に段部2bが設けられている。
また、ペン先2の筆記具本体3への固定は前述の一例と同様、筆記具本体3の内面に4カ所設けたペン先保持部3f(図中、破線記載)によるものであり、前後方向位置も前述同様内段部3g(図中、破線記載)によるものである。
さらに、筆記具本体3には、空気交換可能な空気交換溝が、空気交換溝大3iが一カ所、空気交換溝小3jが2箇所、合計3カ所に設けられている。それらの空気交換溝は全て内段部3gよりも軸方向において後方側まで伸びていると共に、前記ペン先2の段部2bの後方の縮径部2cと筆記具本体3の細径部3d内面との空間を介して、筆記具本体3内に挿入されたインキ吸蔵体9の空間まで空気交換可能に連通している。前記空気交換溝小3jの径方向の距離は空気交換溝大3iの径方向の距離よりも小さく成形されており、ペン先2が圧入された状態で、空気交換溝小3j側に出来る空間の方が空気交換溝大3i側に出来る空間よりも小さくなり、毛管力は高くなる。よって、ペン先2が飽和状態になった際に、空気交換溝小3j側に出来る空間へとインキが積極的に貯まる。つまり、空気交換溝小3jがインキ溜め部13と同様の役割を果たす。また、空気交換溝小3j内へインキが溜まる間、空気交換溝大3iへはインキが溜まる事は無く、良好な空気交換を行うことが出来る為、インキ洩れを防止することが可能である。
【0018】
図7〜8に、さらに他の一例を示す。本実施例はペン先2として、細字用のアクリル製のペン先(ペン先直径2mm)を使用しており、インキとしては有機溶剤を主溶剤としたインキを使用している。
本実施例ではペン先2はペン先ホルダー14に圧入固定され、ペン先ホルダー14は筆記具本体3内部に圧入固定されている。そのペン先ホルダー14は成形部品であり、材質としてポリプロピレンを使用している為、筆記具本体3内部にペン先ホルダー14を圧入固定しようとすると筆記具本体3の細径部3dが拡径する。その為、ペン先ホルダー14の外径と筆記具本体3の保持部3fの内接径はゆるい圧入関係となっている。しかし、ペン先ホルダー14の筆記具本体3からの抜け強度を保つ為に、ペン先ホルダー14の中間部には、段部14aが設けられており、その段部14aに、前記筆記具本体3の段部3gに形成した凸部3kが引っかかっている。これにより、ペン先ホルダー14の筆記具本体3からの脱落が防止されている。
前記ペン先ホルダー14の内部には、ペン先保持部14b(図中、破線記載)が設けられ、保持部の間には空気交換溝大14cが一カ所、空気交換溝小14dが3カ所設けられている。本実施例も前実施例同様、ペン先2が圧入された状態で、空気交換溝小14d側に出来る空間の方が空気交換溝大14c側に出来る空間よりも小さくなり、毛管力は高くなる。よって、ペン先2が飽和状態になった際に、空気交換溝小14d側に出来る空間へとインキが積極的に貯まる。つまり、空気交換溝小14dがインキ溜め部13と同様の役割を果たす。また、空気交換溝小14d内へインキが溜まる間、空気交換溝大14cへはインキが溜まる事は無く、良好な空気交換を行うことが出来る為、インキ洩れを防止することが可能である。