特許第6015002号(P6015002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015002
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】窒素含有コバルト合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/02 20060101AFI20161013BHJP
   C22C 19/07 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   C22C1/02 503G
   !C22C19/07 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-282744(P2011-282744)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133481(P2013-133481A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂征
(72)【発明者】
【氏名】筑後 一義
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3010378(JP,B2)
【文献】 国際公開第2010/026996(WO,A1)
【文献】 特開平05−140670(JP,A)
【文献】 特開平03−294085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/02
C22C 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融温度を1480℃〜1540℃の範囲から選択した温度に保ち、溶融させたCoが63.65〜64.48%wt、Crが27.69〜28.16%wt、Moが5.91〜6.08%wt、その他C,Si,Mn,Ni,Alを含むコバルト合金を、2.5kPa〜62.5kPaの範囲で選択した圧力の窒素ガス雰囲気で、コバルト合金中の窒素濃度が、100ppm〜1200ppmの間で選択される目標値となる時間保持することを特徴とする窒素含有コバルト合金の製造方法。
【請求項2】
コバルト合金の溶融温度での、窒素ガス雰囲気の圧力、保持時間、窒素濃度のデータを予め取得し、該データを基に目標の窒素濃度に対する窒素ガス雰囲気の圧力、保持時間を求める請求項1の窒素含有コバルト合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素を溶解させ機械的強度を向上させる窒素含有コバルト合金の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コバルト合金では、窒素の含有量を変えると、機械的強度、例えば、引張り強度、耐力を向上させることができる。又、窒素の含有量によって機械的強度が変化するので、安定した品質のコバルト合金を製造するには、窒素の含有量(窒素濃度)を所定の値に制御する必要がある。
【0003】
尚、特許文献1には、アーク炉内の溶湯にN2 ガスを炉底より底吹きし、窒素を溶解させる高窒素高クロム鋼の溶製方法が示され、特許文献2には、炉内に窒素ガスを充填し、加圧窒素ガス雰囲気中で鋼の溶解および窒素添加を同時に行う高窒素鋼の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−90345号公報
【特許文献2】特開2003−221615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる実情に鑑み、コバルト合金に適正量の窒素を溶解させる窒素含有コバルト合金の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溶融させたコバルト合金を、2.5kPa〜62.5kPaの範囲で選択した圧力の窒素ガス雰囲気で、コバルト合金中の窒素濃度が目標値となる時間保持する窒素含有コバルト合金の製造方法に係るものである。
【0007】
又本発明は、コバルト合金の溶融温度での、窒素ガス雰囲気の圧力、保持時間、窒素濃度のデータを予め取得し、目標の窒素濃度に対する窒素ガス雰囲気の圧力、保持時間を求める窒素含有コバルト合金の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶融させたコバルト合金を、2.5kPa〜62.5kPaの範囲で選択した圧力の窒素ガス雰囲気で、コバルト合金中の窒素濃度が目標値となる時間保持するので、所望の窒素濃度を有する窒素含有コバルト合金を容易に製造することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に於けるコバルト合金の溶融温度での、窒素ガス雰囲気の圧力、保持時間、窒素濃度の関係を示すグラフである。
図2】一定窒素ガス圧力での温度、保持時間、窒素濃度の関係を示すグラフである。
図3】本発明が実施されるメルティングストック溶製炉の概略構成図である。
図4】本発明が実施される溶解鋳造炉の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0011】
本発明者は、組成として、Coが63.65〜64.48%wt、Crが27.69〜28.16%wt、Moが5.91〜6.08%wt、その他C,Si,Mn,Ni,Al等を含む種々のコバルト合金について、温度、窒素ガス(N2 )環境、時間をパラメータとしてコバルト合金に溶解する窒素濃度の関係を調べた。
【0012】
図1は、真空容器中でコバルト合金を溶融し、1480℃に保持し、更にコバルト合金の雰囲気を窒素ガスとし、窒素ガスの圧力を常圧から90kPa迄変更させた場合のコバルト合金に溶解した窒素(N)の濃度の変化を示すものである。又、図1に於いて、横軸は√Paであり、縦軸は窒素濃度(wtppm)を示している。
【0013】
例えば、曲線Aは1480℃で10分間保持した場合で、試験雰囲気の窒素ガスの圧力を増加させた場合にコバルト合金に溶解した窒素濃度を示している。
【0014】
又、同様に複数の曲線B〜Fは、それぞれ溶融コバルト合金の試験雰囲気での保持時間を、それぞれ30分、60分、120分、180分、240分とし、窒素ガスの圧力を増加させた場合にコバルト合金に溶解した窒素濃度を示している。
【0015】
尚、コバルト合金に溶解する窒素濃度は、凝固したコバルト合金をLECO社製窒素分析装置を用いて燃焼分析法により測定した。
【0016】
図1に示される様に、保持時間を一定とした場合は、窒素ガス圧力を増大させることで、コバルト合金中の窒素濃度が増大し、又窒素ガス圧力を一定とした場合は、保持時間を増大させることで、コバルト合金中の窒素濃度が増大する。
【0017】
又、図2は、窒素ガス圧力20kPaでの、窒素濃度と温度、保持時間との関係を示すグラフであり、図2中、曲線Aは保持時間10分、曲線Bは保持時間30分、曲線Cは保持時間60分、曲線Dは保持時間120分を示す。
【0018】
図2では、保持温度を1480℃〜1540℃迄変化させているが、窒素濃度は大きく変化していないことが分る。従って、窒素濃度を制御するパラメータとしては、窒素ガス圧力と保持時間を用いることが好ましいことが分る。
【0019】
上記した様に、コバルト合金の溶融状態で、即ち、1480℃〜1540℃の間で選択した温度で、窒素ガス圧力と保持時間と窒素濃度との関係を予め取得しておくことで、所望の窒素濃度とする窒素溶解処理の条件を容易に設定することが可能となる(図1中、Xゾーン、Yゾーン、Zゾーン参照)。
【0020】
窒素濃度は100ppm〜1600ppmの間で選択される。又、窒素濃度は100ppm〜1600ppmに対応して、選択される窒素ガスの圧力は、実用上2.5kPa〜62.5kPaの間となる。
【0021】
例えば、又、図1に於いて、窒素濃度を1000ppmとする場合は、窒素溶解処理の条件はYゾーンで得られる。例えば、保持時間を60分と設定すると、窒素濃度を1000ppmとなる点は曲線C上のα点であり、窒素ガス圧力は160×160Pa=25.6kPaとなる。或は、窒素ガス圧力を40kPaと設定すると、窒素濃度を1000ppmとする場合は、保持時間は30分と60分の間のβ点となる。β点の位置で30分と60分との間を案分すれば、保持時間は約40分となる。
【0022】
更に、各ゾーンの幅(上下方向の大きさ)は、設定する窒素濃度の許容誤差によって決定され、窒素濃度の許容誤差を厳しく設定すれば、ゾーンの幅は狭く設定される。例えば、図1に於いて、窒素濃度を1000ppmとする場合に誤差を含みYゾーンと設定すれば、保持時間を60分(曲線C)とすれば、窒素ガスの圧力は、19.6kPa〜28.9kPaの間に制御される。
【0023】
而して、所定のコバルト合金の溶融温度で、窒素ガス圧力と保持時間と窒素濃度との関係を予め取得しておくことで、目標の窒素濃度とする窒素溶解処理の条件を簡単に求めることができると共に目標の窒素濃度に制御する為の制御条件を簡単に求めることができる。
【0024】
次に、図3を参照して、窒素含有コバルト合金のメルティングストックを製造する場合について説明する。
【0025】
図3は、本実施例を実施する為のメルティングストック溶製炉1を示しており、図中、2は溶製炉チャンバを示し、該溶製炉チャンバ2は真空容器となっている。前記溶製炉チャンバ2の内部には所要数のインゴットケース3が所定の位置に収納され、該インゴットケース3の上方には溶解炉4が配設される。
【0026】
該溶解炉4は、溶解炉体5及び高周波加熱器6、傾動機構部(図示せず)等から構成され、前記溶解炉体5は前記傾動機構部によって傾動可能に支持されている。
【0027】
前記溶製炉チャンバ2には真空ポンプ7が接続され、該真空ポンプ7によって内部が所定の真空圧となる様真空引きされる様になっている。又、前記溶製炉チャンバ2には窒素ガス供給源8が接続され、該窒素ガス供給源8により前記溶製炉チャンバ2に所要圧の窒素ガスを供給可能となっている。前記高周波加熱器6には加熱電源9が接続され、該加熱電源9は前記高周波加熱器6に高周波電力を供給可能となっている。
【0028】
又、前記溶製炉チャンバ2内の圧力を検出する圧力検出器11が設けられ、又前記溶製炉チャンバ2内又は前記溶解炉体5の溶融コバルト合金13の温度を検出する温度検出器12が設けられている。尚、溶融コバルト合金13の温度を検出する方法としては、例えばセラミクス等の保護管に収納された熱電対を溶融コバルト合金中に挿入して検出する等がある。
【0029】
又、前記メルティングストック溶製炉1は、制御装置15を具備しており、該制御装置15には前記圧力検出器11、前記温度検出器12からの検出信号が入力され、前記制御装置15は前記圧力検出器11、前記温度検出器12からの検出信号に基づき、前記窒素ガス供給源8、前記加熱電源9、移動機構(図示せず)を所要のタイミングで所要の状態に制御する。
【0030】
以下、前記メルティングストック溶製炉1の作動について説明する。
【0031】
前記溶解炉体5にインゴット(窒素が溶解される前のコバルト合金の塊)を装入する。前記溶製炉チャンバ2が真空引きされ、前記圧力検出器11により内部の圧力が検出される。前記溶製炉チャンバ2が所定の真空圧(第1の真空圧)に達すると、前記高周波加熱器6に高周波電力を供給し、インゴットを高周波加熱する。
【0032】
前記インゴットが溶解したら溶解温度を前記温度検出器12で検出し、所定の温度で溶湯を保持する様、前記高周波加熱器6への供給電力を制御する。
【0033】
更に、前記溶製炉チャンバ2が所定の真空圧(第2の真空圧)に達すると、真空引きを停止し、前記窒素ガス供給源8を制御して、前記溶製炉チャンバ2に窒素ガスを導入する。導入した窒素ガス圧力は前記圧力検出器11で検出され、目標圧力に達すると窒素ガスの供給が停止され、所定の時間、同温度、同窒素ガス圧力に保持する。所定の時間、所定の温度、所定の窒素ガス圧力に保持することで、目的の濃度で窒素が溶解したコバルト合金が得られる。尚、所定の時間、所定の温度、所定の窒素ガス圧力は、目的の窒素濃度に対応して、予め取得したデータに基づき、例えば図1に基づき、設定する。又、設定した温度、窒素ガス圧力となる様に前記制御装置15により、前記窒素ガス供給源8、前記加熱電源9を制御する。
【0034】
所定の時間が経過したら、前記溶解炉4を図示しない傾動機構部により傾動させ、溶融コバルト合金13を前記インゴットケース3に注湯する。コバルト合金が注湯された前記インゴットケース3を前記溶製炉チャンバ2内で冷却し、凝固させる。所定の温度迄冷却されたら、前記溶製炉チャンバ2を大気圧迄復帰させ、前記インゴットケース3を前記溶製炉チャンバ2から取出し、凝固したメルティングストックを前記インゴットケース3から取出す。
【0035】
窒素が溶解したコバルト合金を用いて鋳造品を製作する場合は、前記メルティングストックを再度溶解し、鋳型に注湯して所望の部品を製作する。
【0036】
上記メルティングストック溶製炉1では、窒素が溶解されたメルティングストックを製造し、更にメルティングストックにより部品を鋳造したが、部品を鋳造する過程で本発明を実施してもよい。
【0037】
図4は、本発明が実施される溶解鋳造炉16を示している。図4中、図3中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
溶解鋳造炉16では、インゴットケース3の代りに鋳型17が設けられる。
【0039】
インゴットが溶解炉体5に装入され、真空容器である鋳造炉チャンバ18が真空引きされる。前記溶解炉体5でインゴットが溶解され、所定圧で窒素ガスが供給されると共に所定の圧力、温度、所定時間で保持され、溶融したコバルト合金に窒素が溶解される。
【0040】
所定濃度に窒素が溶解された溶融コバルト合金13は、前記鋳型17に湯口19より注湯される。
【0041】
前記溶解鋳造炉16に於いても、目的の窒素濃度とする為、予め取得したデータに基づき、所定の時間、所定の温度、所定の窒素ガス圧力に設定し、制御装置15によって制御する。
【符号の説明】
【0042】
1 メルティングストック溶製炉
2 溶製炉チャンバ
3 インゴットケース
4 溶解炉
5 溶解炉体
6 高周波加熱器
7 真空ポンプ
8 窒素ガス供給源
9 加熱電源
11 圧力検出器
12 温度検出器
13 溶融コバルト合金
15 制御装置
16 溶解鋳造炉
17 鋳型
18 鋳造炉チャンバ
19 湯口
図1
図2
図3
図4