【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1を示すチルト装置部の接地時の側面図、
図2は同じくチルト装置部の平面図、
図3は同じくチルト装置部の正面図、
図4は同じくチルト装置部の上昇時の側面図、
図5は同じく無人フォークリフトの全体側面図である。
【0018】
図5に示すように、本実施例の無人フォークリフトにおいて、車体10の前部には図示しない駆動装置によって駆動される左右一対の駆動輪11が装着される一方、後部には左右一対の操舵輪12が装着されており、車体10はこの駆動輪11及び操舵輪12によって走行自在となっている。
【0019】
車体10の前部にはマスト13が立設され、このマスト13には昇降ベース(リフトブラケット)14が昇降自在に支持されている。昇降ベース14にはフォーク15がチルト動作が可能に枢支されて車体10の前方に延びている。
【0020】
前記昇降ベース14とフォーク15との間には可動アーム16が上下動可能に装備され、この可動アーム16がその所定の上昇位置で昇降ベース15を担持することで装置全体(昇降ベース14及びフォーク15)を昇降させられるようになっている。可動アーム16はリフトチェーン17を介して図示しないリフトシリンダにより上下動するようになっている。
【0021】
そして、前記可動アーム16と同可動アーム16を挟む昇降ベース14及びフォーク15との間にチルト駆動部18が設けられる。また、フォーク15の根元部に同フォーク15の枢支点Cの真下に位置してダブルローラからなる支持ローラ19が装着され、この支持ローラ19の地面等への接地時に、フォーク15の根元部が地面等から少し浮かされてフォーク15及び昇降ベース14の荷重を受けるようになっている。尚、図中20はバランスウェイトである。
【0022】
図1乃至
図4に示すように、方形枠状に形成された前記昇降ベース14は、矩形断面のマスト13に沿って昇降するように4方向からローラフォロア21により保持されている。ローラフォロアは内部に針状ころを組み込んだもので、特に、これに限定されるものではなく他の転動体を用いても良い。
【0023】
また、昇降ベース14の左,右両側面部には張出版22が固設され、この張出版22の前面中央からは支持ブラケット23が前方へ向けて突設される。一方、左右一対のフォーク15はフィンガープレート24で連結され、このフィンガープレート24の後面には左,右両部に位置して二股状の支持ブラケット25が固設される。そして、このフォーク側の支持ブラケット25の先端と昇降ベース側の支持ブラケット23の先端とが支軸26で連結されてフォーク15の枢支点Cを形成している。尚、昇降ベース側の支持ブラケット23における支軸挿通孔23aは上下方向に長い長穴に形成される(
図1の吹き出し参照)。また、前述した支持ローラ19はダブルローラで形成されると共に、左,右両枢支点Cの真下に位置してフィンガープレート24後面の左,右両部にブラケット27を介して取り付けられる。
【0024】
前記可動アーム16は門型アームで形成され、水平アーム部16aの中央二箇所にてリフトチェーン17により吊り下げられている。左,右両垂直アーム部16bは、それぞれ昇降ベース側の支持ブラケット23を跨ぐようにして、左右一対設けられると共に、それらの下部に3個のローラフォロア(転動体)28が並設されている。そして、可動アーム16の所定の上昇位置で真ん中のローラフォロア28が昇降ベース側の支持ブラケット23の水平な下面(上昇受け)23bに当接することで昇降ベース14を担持し、装置全体を昇降させられるようになっている。
【0025】
前記チルト駆動部18は、可動アーム16の前述した3個のローラフォロア28と、同ローラフォロア28が転動すべく昇降ベース側とフォーク側にそれぞれ設けられたローラ受け(転動体受け)29,30とを有すると共に、昇降ベース側とフォーク側のローラ受け(転動体受け)29,30の少なくともいずれか一方を下方下がりの傾斜面30aに形成してなる。図示例では、昇降ベース側のローラ受け29は左,右両張出版22の前面に、可動アーム16における真ん中のローラフォロア28の両側に位置するローラフォロア28に対応して2つ設けられる一方、フォーク側のローラ受け30はフィンガープレート24後面の左,右両部に中間部材31を介して、可動アーム16における真ん中のローラフォロア28に対応して1つ宛て設けられる。そして、昇降ベース側のローラ受け29は平面で形成される一方、フォーク側のローラ受け30が傾斜面30で形成される。
【0026】
このように構成されるため、本実施例の無人フォークリフトは、無人搬送システムにより車体10の走行やフォーク15の昇降が遠隔操作により駆動制御されて、所要の荷役作業が行われる。
【0027】
そして、フォーク15の昇降動作においては、
図1に示す状態からリフトチェーン17により可動アーム16を引き上げると、昇降ベース側のローラ受け29とフォーク側のローラ受け30に挟まれたローラフォロア28も一体に上昇する。この際、片側3個のローラフォロア28のうちのそれぞれ真ん中のローラフォロア28がフォーク側のローラ受け30における下方下がりの傾斜面30aを上方へと転動するため、フォーク15は枢支点Cを中心に反時計方向に回動(傾動)する。
【0028】
これにより、フォーク15の先端部が持ち上がり(チルトし)、フォーク15上にすくい上げられた荷物の搬送下における落下が未然に防止される。この時のフォーク15のチルト量は、昇降ベース側のローラ受け29とフォーク側のローラ受け30の少なくとも何れか一方に装着される図示しないシムの量で調整可能である。
【0029】
やがて、片側3個のローラフォロア28のうちのそれぞれ真ん中のローラフォロア28が左,右両支持ブラケット23における上昇受け23bまでそれぞれ上昇すると(
図4に示す状態参照)、上記真ん中のローラフォロア28における傾斜面30aの転動が無くなりフォーク15のチルト動作が停止されると共に、上記真ん中のローラフォロア28を介して昇降ベース14が可動アーム16に担持され、以後装置全体(昇降ベース14及びフォーク15)が持ち上げられて荷役作業が行われる。
【0030】
一方、
図4に示す状態から、リフトチェーン17により可動アーム16を下げていくと、まずフォーク15の根元部に付設した支持ローラ19が地面等に接地する(
図1に示す状態参照)。この時、地面等が左右方向に傾いていても、左右一対のフォーク15の各支軸(枢支点C)26が挿通される左,右両支持ブラケット23の各支軸挿通孔23aは上下方向に長い長穴になっているため(
図1に示す吹き出し参照)、左,右両側の支持ローラ19を地面に合わせて接地させることができ、フォーク15上の荷物を左右方向に傾けることが防止される。
【0031】
尚、可動アーム16をさらに下げていくと、昇降ベース側のローラ受け29とフォーク側のローラ受け30との間をローラフォロア28が下降する。この際、片側3個のローラフォロア28のうちのそれぞれ真ん中のローラフォロア28がフォーク側のローラ受け30における下方下がりの傾斜面30aを下方へと転動するため、フォーク15は枢支点Cを中心に時計方向への回動(傾動)が許容され、その先端部が地面等に接地される。
【0032】
このように、支持ローラ19を支点にした重量のアンバランスによりフォーク15の先端部が下がるが、昇降ベース14の荷重は、支持ローラ19の真上に設けられたフォーク15の各支軸(枢支点C)26に作用するため、支持ローラ19を中心としたアンバランスに影響を受けず、フォーク15の先端部に大きな力が作用しない。
【0033】
そのため、ほとんどの荷重は、ダブルローラからなる支持ローラ19にかかるためフォーク14をパレットの下に滑り込ませる時の抵抗が小さくてすむ。このようにして、フォーク15の先端部を地面等に接地させられるので、地面等に置かれてフォーク15の挿し込み隙間の小さい荷物(アップライトピアノ等)でも容易にすくい上げることができる。
【0034】
また、フォーク15の根元部は、支持ローラ19により少し地面等より浮かされている。これは、フォーク15の下面全部を地面等に接地させておくと、地面等の凸部がフォーク15の根元部付近に接触しフォーク15の先端部が地面等より浮き上がることにより、パレット等のフォーク穴の上面と接触するのを防止するためである。即ち、フォーク15の根元部に隙間が少しあることにより、地面等の多少の凸凹では、いつも支持ローラ19とフォーク15の先端部のみが地面等に接地するようにできるのである。
【0035】
このように本実施例によれば、チルト動作専用のアクチュエータを用いずに、通常設けられるリフトシリンダ等を効果的に利用して、フォーク15の上下位置とチルト量を無人のフォークリフトにおいても調整可能となるので、装置の簡略・汎用化と共にコストダウンが図れる。
【0036】
また、昇降ベース14は、矩形断面のマスト13の4方向からローラフォロア21により保持されるので、昇降動作が円滑に行なわれ装置の信頼性が高まる。また、可動アーム16は、そのローラフォロア28が昇降ベース14に付設された支持ブラケット23の下面を上昇受け23aとして昇降ベース14を担持することができるので、専用の上昇受け23aを設ける必要はなく、装置の簡略化がより一層図れる。