(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のポリイミド前駆体と、前記第2のポリイミド前駆体が、同一のポリアミド酸で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。
【0003】
上記のハードディスクドライブ(HDD)は、データが記憶されるディスクに対してデータの書き込み、および読み取りを行う磁気ヘッドスライダが実装されるサスペンション用基板を備えている。
そして、このサスペンション用基板は、一般に、ばね性を有する金属支持基板と、前記金属支持基板の上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成された複数の配線と、を有している。
【0004】
ここで、上述の各配線においては、例えば、差動伝送により電気信号の伝送が行われ、一対の配線間には、分布定数回路としての差動伝送路の特性インピーダンスである差動インピーダンスが存在する。この差動インピーダンスは、磁気ヘッドやプリアンプの低インピーダンス化に伴い、インピーダンスマッチングの観点から、低インピーダンス化することが要求されている。
【0005】
上記の差動インピーダンスを低減することが可能な配線構成として、第1の電気信号を伝送する配線と、前記第1の電気信号とは逆位相となる第2の電気信号を伝送する配線からなる一対の差動配線を、1または2以上の配線に分岐させ、第1の電気信号を伝送する分岐配線と、前記第1の電気信号とは逆位相となる第2の電気信号を伝送する分岐配線を、それぞれ交互配列させた配線構成(インターリーブ配線構造)が提案されている(特許文献1)。
【0006】
図9は、上述のインターリーブ配線構造の基本構成の例を示す説明図である。
図9に示すように、インターリーブ配線構造100は、第1の電気信号を伝送する配線101と、前記第1の電気信号とは逆位相となる第2の電気信号を伝送する配線102で構成される一対の差動配線からなり、前記第1信号伝送配線101は、配線104A、104Cに分岐し、前記第2信号伝送配線102は、配線104B、104Dに分岐し、互いに逆位相となる配線が隣になるように、交互に並列配設されている。
そして、同位相の配線104A、104Cは、ジャンパー線105で接続されており、同様に、配線104B、104Dは、ジャンパー線106で接続されており、各々、同じ位相同士の配線で閉じた回路を形成している。
【0007】
このような構成とすることにより、インターリーブ配線構造においては、通常の差動配線のような一対の配線2本を配置した構成に比べ、差動インピーダンスを低減することができる。
【0008】
上述のようなインターリーブ配線構造をサスペンション用基板に形成する方法として、例えば、金属支持基板の上に形成されたベース絶縁層の上に一対の差動配線を交互配置し、これらの配線の上にカバー絶縁層を形成し、前記カバー絶縁層の上に形成する接続線と、前記カバー絶縁層に設けた接続ビアとでジャンパー線を構成して同位相の配線同士を電気的に接続する方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
ここで、従来の方法(例えば、特許文献2)では、
図10(a)に示すように、インターリーブ配線構造を構成する配線104A、104B、104C、104Dは、ベース絶縁層112を介して、ステンレス鋼からなる金属支持基板111の上に形成されているため、前記ステンレス鋼からなる金属支持基板111との距離が近く、高周波特性に悪影響を受けやすい。
より具体的に説明すると、配線104A、104B、104C、104Dと配線下の金属支持基板111とは、誘導もしくは容量性結合を形成するため、配線104A、104B、104C、104Dに電気信号(特に高周波信号)が伝送されると、導電性の低いステンレス鋼からなる金属支持基板111にも電流が発生して、伝送ロスが大きくなるという問題がある。
そのため、
図10(b)に示すように、配線104A、104B、104C、104Dの下の金属支持基板111を除去して開口部116を設け、上記の誘導性の結合を低減させる方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、および、サスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0031】
[サスペンション用基板]
まず、本発明のサスペンション用基板の平面構成について説明する。
図1は、本発明に係るサスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
図1に示すように、本発明に係るサスペンション用基板1は、先端部分に、磁気ヘッドスライダを実装するためのタング部2を有し、テール側端部に、読取回路または書込回路と接続するための接続端子部3を有し、タング部2と接続端子部3との間に、前記磁気ヘッドと書込回路とを電気的に接続するための書込配線4と、前記磁気ヘッドと読取回路とを電気的に接続する読取配線5を有するものである。
【0032】
ここで、書込配線4と読取配線5は、相互の電気的な影響を極力避けるため、および、サスペンション用基板の力学的平衡を保つため、各々、サスペンション用基板の長手方向の両外縁に沿うように配設されている。
【0033】
なお、
図1における書込配線4と読取配線5の配置関係は、一例であって、他の配置関係であっても構わない。例えば、
図1における書込配線4の位置に、読取配線5が配設され、読取配線5の位置に、書込配線4が配設されていても良い。
【0034】
次に、本発明に係るサスペンション用基板の断面構成について説明する。
本発明に係るサスペンション用基板は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された複数の配線と、を備えたサスペンション用基板であって、前記ベース絶縁層、および、前記配線の上に、前記配線間の中央における厚みが前記配線の厚みよりも小さい第1のカバー絶縁層を有し、前記配線間における前記ベース絶縁層の上の前記第1のカバー絶縁層の上に、第2のカバー絶縁層を有するものである。
【0035】
図2は、本発明に係るサスペンション用基板の構成例を示す断面図であり、
図1における領域RのA−A断面図である。
【0036】
例えば、
図2に示すように、本発明のサスペンション用基板1は、金属支持基板11と、前記金属支持基板11上に形成されたベース絶縁層12と、前記ベース絶縁層12上に形成された4本の配線4A〜4Dと、を備えている。なお、煩雑となるのを避けるため図示はしていないが、配線4A〜4Dとベース絶縁層12の間には、前記配線を電解めっき形成するためのシード層が、設けられていても良い。
【0037】
そして、前記ベース絶縁層12、および、配線4A〜4Dの上には、前記配線間の中央における厚み(T1)が前記配線の厚み(H1)よりも小さい第1のカバー絶縁層14が形成されており、前記第1のカバー絶縁層14の上には、第2のカバー絶縁層15が形成されている。
ここで、前記第1のカバー絶縁層14は、主に、配線4A〜4Dの腐食等による劣化を防止するために、配線4A〜4Dを被覆する目的で形成されるものであり、前記第2のカバー絶縁層15は、主に、配線間の結合容量を高めるために配線4A〜4Dの各配線間の隙間を埋める目的で形成されるものである。
したがって、本発明において、前記第2のカバー絶縁層15は、少なくとも、前記配線4A〜4D間における前記ベース絶縁層12の上の前記第1のカバー絶縁層14の上に形成されていればよい。
また、本発明において、前記第2のカバー絶縁層15は、感光性材料を使って、フォトリソ工程により、前記配線4A〜4D間における前記ベース絶縁層12の上の前記第1のカバー絶縁層14の上にのみ形成されていてもよい。
【0038】
上述のように、本発明のサスペンション用基板1においては、複数の配線4A〜4Dの間に、第1のカバー絶縁層14と第2のカバー絶縁層15が形成されていることから、従来よりも、配線間の隙間を、空気よりも比誘電率の高い誘電体で埋めることが可能となり、配線間の結合容量がより高まることから、前記配線の差動インピーダンスをより低減化することができるという効果を奏する。
【0039】
ここで、本発明においては、例えば、
図2に示すように、前記複数の配線4A〜4Dの各配線間の隙間における、前記第1のカバー絶縁層14と前記第2のカバー絶縁層15を合わせた厚み(H2)が、前記配線4A〜4Dの厚み(H1)よりも大きいことが、好ましい。
【0040】
上述のような構成にすることで、前記配線間の結合容量増加の効果を最大限引き出すことができ、また、各配線間の隙間を全て前記誘電体で埋めることができるため、各配線間の結合容量のばらつきを抑制することができるからである。
すなわち、上述のような構成にすることで、本発明に係るサスペンション用基板の差動インピーダンスをさらに低減化でき、安定化できる。
【0041】
また、本発明においては、前記第1のカバー絶縁層と、前記第2のカバー絶縁層が、同一材料で形成されていることが好ましい。前記第1のカバー絶縁層と前記第2のカバー絶縁層が同一材料で形成されていれば、前記第1のカバー絶縁層14と前記第2のカバー絶縁層15との密着性を高めることができ、前記第2のカバー絶縁層15が前記第1のカバー絶縁層14から剥離してしまうことを防止できるからである。
【0042】
前記第1のカバー絶縁層14、および、前記第2のカバー絶縁層15を形成する材料としては、空気よりも比誘電率の高い誘電体であれば用いることができ、例えば、ポリイミド樹脂を用いることができる。
なお、比誘電率とは、物質(誘電体)の誘電率と真空の誘電率の比のことであり、空気の比誘電率が、概ね1であるのに対し、ポリイミド樹脂の比誘電率は3〜4程度である。
そして、ポリイミド樹脂は、配線の腐食等による劣化を防止するためのカバー絶縁層の材料として実績がある。
【0043】
ここで、上述のように、カバー絶縁層をポリイミド樹脂で形成する場合、従来は、ポリアミド酸からなるポリイミド前駆体を溶剤に溶解させた塗液を配線の上から塗布し、乾燥やパターニング等の処理を施した後に、前記ポリイミド前駆体をイミド化することにより、単層のカバー絶縁層を形成していた。
そして、従来においては、主にイミド化工程における樹脂の収縮により、配線間のカバー絶縁層の厚みが薄くなってしまい、配線の高さ(厚み)まで前記カバー絶縁層を形成することができず、それゆえ、配線間の結合容量も大きくできないという問題があった。
【0044】
そこで、本発明においては、まず、前記ベース絶縁層および前記配線の上に、主に、配線の腐食等による劣化を防止する目的で、前記配線を被覆する第1のカバー絶縁層を形成し、その後、前記第1のカバー絶縁層の上に、主に、前記配線間の隙間を埋める目的で、第2のカバー絶縁層を形成する。
より具体的に述べれば、前記第1のカバー絶縁層を形成する第1のポリイミド前駆体をイミド化した後に、前記第2のカバー絶縁層を形成する第2のポリイミド前駆体を含む塗液を、前記第1のカバー絶縁層の上に塗布して、イミド化等の処理を施して第2のカバー絶縁層を形成する。
【0045】
上述のように、本発明においては、第1のカバー絶縁層を形成する第1のポリイミド前駆体をイミド化させた後に、第2のカバー絶縁層を形成するため、例え、第1のカバー絶縁層が乾燥工程やイミド化工程により収縮しても、第2のカバー絶縁層と合わせた厚みによって、前記配線間の隙間をポリイミド樹脂で埋めていくことができる。
【0046】
上述のような方法で各カバー絶縁層を積層形成する場合、各カバー絶縁層間には積層の跡が残る。それゆえ、本発明においては、前記第1のカバー絶縁層と前記第2のカバー絶縁層が同一材料からなる場合であっても、例えば、断面観察することにより、前記第1のカバー絶縁層の存在と前記第2のカバー絶縁層の存在を認識することができる。
【0047】
また、本発明においては、第1のカバー絶縁層を構成する第1のポリイミド前駆体と、第2のカバー絶縁層を構成する第2のポリイミド前駆体を、同一材料にする場合であっても、前記ポリイミド前駆体を溶解する溶剤の量を変えることによって、各ポリイミド前駆体が溶解した塗液の粘度を変えることができる。
それゆえ、本発明においては、第2のカバー絶縁層を形成する際の塗液(第2の塗液)の粘度を、第1のカバー絶縁層を形成する際の塗液(第2の塗液)の粘度よりも小さくなるように調整して、第2のカバー絶縁層による配線間の充填性を、より高めることもできる。
詳しくは、後述するサスペンション用基板の製造方法で説明する。
【0048】
次に、本発明に係るサスペンション用基板の配線構成について説明する。
本発明において、上記の配線4A〜4Dは、一対の差動配線をそれぞれ分岐して交互に並列配設したインターリーブ配線構造を構成するものである。
ここで、前記インターリーブ配線構造を構成する配線は、上述の書込配線であっても良く、読取配線であっても良いが、中でも書込配線であることが好ましい。書込配線において、特に低インピーダンス化が求められているからである。
【0049】
図3は、本発明におけるインターリーブ配線構造の例を説明する概略平面図である。なお、煩雑となるのを避けるため、
図3においては、インターリーブ配線構造を説明するための導体以外の構成要素(例えば、分岐した配線と接続線との間に設けられる絶縁層)の記載は省略している。
【0050】
図3に示すように、本発明におけるインターリーブ配線20は、基本構成として、まず、第1の電気信号を伝送する配線21と、前記第1の電気信号とは逆位相となる第2の電気信号を伝送する配線22で構成される一対の差動配線を有しており、前記第1信号伝送配線21は、配線4A、4Cに分岐し、前記第2信号伝送配線22は、配線4B、4Dに分岐し、互いに逆位相となる配線が隣り合うように、交互に並列配設されている。
【0051】
そして、同位相の配線4A、4Cは、接続ビア23A、23Cを経由して接続線24で接続されており、同様に、配線4B、4Dは、接続ビア23B、23Dを経由して接続線25で接続されており、各々、同じ位相同士の配線で閉じた回路を形成している。
【0052】
なお、本発明において、上記の接続ビア23A、23B、23C、23D、および、接続線24、25の材料や形成方法については、特に限定されず、従来のインターリーブ配線構造で用いられる材料や形成方法を用いることができる。
【0053】
また、本発明においては、インターリーブ配線構造を構成する配線の数は、4本よりも多い数であってもよい。4本よりも多い数の配線で、インターリーブ配線構造を構成する場合も、上述と同様に一対の差動配線から分岐した4本より多い数の配線を、交互に並列配設してインターリーブ配線構造を構成することで、さらに差動インピーダンスを低減することが可能になる。
【0054】
本発明によれば、上記のようなインターリーブ配線構造の配線間に、第1のカバー絶縁層と第2のカバー絶縁層が形成されていることから、従来よりも、配線間の隙間を、空気よりも比誘電率の高い誘電体で埋めることができ、配線間の結合容量がより高まることから、前記配線の差動インピーダンスをより低減化することができるという効果を奏する。
【0055】
そして、前記配線間の前記第1のカバー絶縁層と前記第2のカバー絶縁層を合わせた厚みを、前記配線の厚みよりも大きくすることにより、前記配線間の結合容量増加の効果を最大限引き出すことができ、また、各配線間の空間を全て前記誘電体で埋めることができるため、各配線間の結合容量のばらつきを抑制することができる。すなわち、前記差動インピーダンスをさらに低減化でき、安定化できる。
【0056】
以下、本発明のサスペンション用基板を構成するその他の部材について説明する。
【0057】
[金属支持基板]
金属支持基板の材料としては、サスペンション用基板の支持体として機能し、所望のばね性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼を挙げることができる。
金属支持基板の厚さは、例えば、10μm〜30μmの範囲内、中でも15μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
【0058】
[ベース絶縁層]
ベース絶縁層は、金属支持基板の表面上に形成されるものであり、ベース絶縁層の上に形成される配線と金属支持基板とを電気的に絶縁するものである。
ベース絶縁層の材料としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド等を挙げることができる。また、ベース絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。ベース絶縁層の厚さは、例えば、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0059】
[配線]
配線の材料としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅(Cu)等を挙げることができる。各配線は、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)による保護めっき層が形成されていても良い。
【0060】
配線の厚さとしては、例えば、4μm〜18μmの範囲内、中でも5μm〜15μmの範囲内であることが好ましい。配線の厚さが小さすぎると、充分な低インピーダンス化を図ることができない可能性があり、配線の厚さが大きすぎると、サスペンション用基板の剛性が高くなり過ぎる可能性があるからである。
【0061】
配線の線幅としては、例えば、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。配線の線幅が小さすぎると、所望の導電性を得ることができない可能性があり、配線の線幅が大きすぎると、サスペンション用基板の充分な高密度化を図ることができない可能性があるからである。
【0062】
また配線間の距離は、例えば8μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。この距離が小さすぎると、高い加工精度を要求し、コストアップ等を招くことになるため好ましくなく、一方、この距離が大きすぎると、サスペンション用基板の充分な高密度化を図ることができない可能性があるからである。
【0063】
[サスペンション用基板の製造方法]
次に、本発明に係るサスペンション用基板の製造方法について説明する。
本発明に係るサスペンション用基板の製造方法は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された複数の配線と、を備えたサスペンション用基板の製造方法であって、前記ベース絶縁層の上に、前記配線を形成する工程と、前記ベース絶縁層、および、前記配線の上に、第1のカバー絶縁層を形成する工程と、前記第1のカバー絶縁層の上に、第2のカバー絶縁層を形成する工程と、を順に有するものである。
【0064】
以下、本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例について、
図4および
図5を用いて説明する。
本発明に係るサスペンション用基板1を製造するには、まず、
図4(a)に示すように、金属支持基板11(例えば、ステンレス鋼)、ベース絶縁層12(例えば、ポリイミド)、および配線材層13(例えば、銅)が、順次形成された積層体を用意する。ベース絶縁層12と配線材層13の間には、シード層が設けられていても良い(図示せず)。
【0065】
次に、ドライフィルムレジストを用いたフォト製版により、レジストパターン41を形成し(
図4(b))、前記レジストパターン41をエッチングマスクに用いて配線材層13をエッチングし(
図4(c))、その後、前記レジストパターン41を剥離除去して、配線4A、4B、4C、4Dを形成する(
図4(d))。
【0066】
次に、ベース絶縁層12、および、配線4A、4B、4C、4Dの上に、前記配線4A、4B、4C、4Dを被覆するように、第1のカバー絶縁層14を形成し(
図5(e))、その後、前記第1のカバー絶縁層14の上に、配線4A、4B、4C、4Dの配線間の隙間を埋めるように第2のカバー絶縁層15を形成する(
図5(f))。
なお、本発明においては、前記第2のカバー絶縁層15は、少なくとも、前記配線4A〜4D間における前記ベース絶縁層12の上の前記第1のカバー絶縁層14の上に形成されていればよい。
また、本発明において、前記第2のカバー絶縁層15は、感光性材料を使って、フォトリソ工程により、前記配線4A〜4D間における前記ベース絶縁層12の上の前記第1のカバー絶縁層14の上にのみ形成されていてもよい。
【0067】
最後に、配線4A、4B、4C、4Dの下に位置する金属支持基板11を部分的に除去して開口部16を形成し、本発明に係るサスペンション用基板1を得る(
図5(g))。
なお、上記の開口部16の形成は、配線材層13をエッチングする工程(
図4(c))と同一工程において、金属支持基板11をエッチングすることにより形成してもよい。
【0068】
また、上述の製造方法においては、配線4A、4B、4C、4Dをエッチングにより形成する方法(サブトラクティブ法)について述べたが、本発明においては、従前公知の方法(アディティブ法)により配線4A、4B、4C、4Dをめっき法で形成しても良い。
【0069】
このような製造方法を用いることにより、ベース絶縁層12、および、配線4A〜4Dの上に、第1のカバー絶縁層14を有し、前記第1のカバー絶縁層14の上に、第2のカバー絶縁層15を有する本発明に係るサスペンション用基板1を得ることができる。
【0070】
そして、本発明のサスペンション用基板1においては、上述のように、複数の配線4A〜4Dの間に、第1のカバー絶縁層14と第2のカバー絶縁層15が形成されていることから、従来よりも、配線間の空間を、空気よりも比誘電率の高い誘電体で埋めることができ、配線間の結合容量(電気容量的な結合性)がより高まることから、差動インピーダンスをさらに低減することができるという効果を奏する。
【0071】
さらに、上述の
図2に示すように、前記複数の配線4A〜4Dの各配線間における、前記第1のカバー絶縁層14と前記第2のカバー絶縁層15を合わせた厚み(H2)が、前記複数の配線4A〜4Dの厚み(H1)よりも大きくなるように、前記第1のカバー絶縁層14と前記第2のカバー絶縁層15を形成することにより、前記配線間の結合容量増加の効果を最大限引き出すことができ、また、各配線間の隙間を全て前記誘電体で埋めることができるため、各配線間の結合容量のばらつきを抑制することができる。
すなわち、本発明の製造方法により得られたサスペンション用基板の差動インピーダンスを、さらに低減化することができ、かつ、安定化することができる。
【0072】
ここで、本発明においては、前記第1のカバー絶縁層14が、第1のポリイミド前駆体をイミド化した第1のポリイミド樹脂からなり、前記第2のカバー絶縁層15が、第2のポリイミド前駆体をイミド化した第2のポリイミド樹脂からなり、前記第1のポリイミド前駆体を溶剤に溶解させた第1の塗液を、前記ベース絶縁層12、および、前記配線4A〜4Dの上に塗布し、前記第1のポリイミド前駆体をイミド化して前記第1のカバー絶縁層14を形成した後に、前記第2のポリイミド前駆体を溶剤に溶解させた第2の塗液を、前記第1のカバー絶縁層14の上に塗布し、前記第2のポリイミド前駆体をイミド化して前記第2のカバー絶縁層15を形成することが好ましい。
【0073】
従来の方法においては、カバー絶縁層をポリイミド樹脂で形成する場合、ポリイミド前駆体を溶剤に溶解させた塗液を、配線の上から塗布し、乾燥やパターニング等の処理を施した後に、前記ポリイミド前駆体をイミド化することにより、単層のカバー絶縁層を形成していた。
そして、従来の方法においては、主にイミド化工程における樹脂の収縮により、配線間のカバー絶縁層の厚みは薄くなってしまい、配線の高さ(厚み)まで前記カバー絶縁層を形成することはできず、それゆえ、配線間の結合容量も大きくできないという問題があった。
【0074】
一方、本発明においては、上述のように、前記第1のポリイミド前駆体をイミド化して第1のカバー絶縁層14を形成した後に、第2のカバー絶縁層15を形成するため、例え、第1のカバー絶縁層14が乾燥工程やイミド化工程によって収縮しても、第2のカバー絶縁層15と合わせた厚みによって、前記複数の配線4A〜4Dの配線間の空間をポリイミド樹脂で埋めていくことができる。
【0075】
また、本発明においては、前記第1のカバー絶縁層を形成する工程は、従来のサスペンション用基板の製造方法における単層のカバー絶縁層を形成する工程と同じ工程とすることができる。すなわち、前記第1のカバー絶縁層おいては、用いる材料や、塗布、乾燥、パターニング、イミド化等の各処理条件を、実績のある従来方法と同じにすることができる。
それゆえ、本発明においては、第1のカバー絶縁層による配線の被覆を、従来どおりの信頼性で達成することができ、この効果に加えて、主に第2のカバー絶縁層による配線間の充填によって、配線の結合容量を増加することができ、差動インピーダンスを低減することができる。
【0076】
なお、上述のように、前記第1のカバー絶縁層14、および、前記第2のカバー絶縁層15を構成する材料としては、空気よりも比誘電率の高い誘電体であれば用いることができ、空気の比誘電率が概ね1であるのに対し、ポリイミド樹脂の比誘電率は3〜4程度であることから、前記第1のカバー絶縁層14、および、前記第2のカバー絶縁層15を構成する材料としてポリイミド樹脂を好適に用いることができる。
【0077】
また、本発明においては、前記第2の塗液の粘度が、前記第1の塗液の粘度よりも小さいことが好ましい。
各塗液の粘度を上記のように調整することにより、前記第2の塗液の流動性を、前記第1の塗液の流動性よりも高めることができ、第2のカバー絶縁層による配線間の隙間の充填性を、より高めることができるからである。
【0078】
上記のような粘度の調整は、各塗液におけるポリイミド前駆体に対する溶剤の量を変えることで調整できる。溶剤としては、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)を用いることができる。
【0079】
また、本発明においては、前記第1のポリイミド前駆体と、前記第2のポリイミド前駆体が、同一のポリアミド酸で構成されていることが好ましい。
前記第1のポリイミド前駆体と、前記第2のポリイミド前駆体が、同一のポリアミド酸で構成されていれば、第1のカバー絶縁層を形成する工程と、第2のカバー絶縁層を形成する工程とで、イミド化等の条件を同じにすることで、前記第1のカバー絶縁層と前記第2のカバー絶縁層を同質のものにすることができ、前記第1のカバー絶縁層と前記第2のカバー絶縁層との密着性を高めることができるからである。
【0080】
なお、前記第1のカバー絶縁層、または、前記第2のカバー絶縁層を形成するポリイミド樹脂は、感光性であっても良く、非感光性であっても良い。
感光性ポリイミド樹脂は、例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸に、ジヒドロピリジン誘導体等の感光剤を結合させることにより、得ることができる。
【0081】
[サスペンション]
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板と、ロードビームとを含むことを特徴とするものである。
【0082】
図6は、本発明に係るサスペンションの一例を示す概略平面図である。
図6に示されるサスペンション50は、上述したサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1の裏面側(金属支持基板11側)に備え付けられたロードビーム51、及びベースプレート(図示せず)とを有するものである。ロードビーム、及びベースプレートは、一般的なサスペンションに用いられるロードビーム、ベースプレートと同様のものを用いることができる。
【0083】
本発明においては、上述したサスペンション用基板を用いることで、差動インピーダンスが低減されたサスペンションとすることができる。
【0084】
[ヘッド付サスペンション]
次に、本発明のヘッド付サスペンションについて説明する。本発明のヘッド付サスペンションは、上述したサスペンションと、該サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダとを有するものである。
【0085】
図7は、本発明に係るヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
図7に示されるヘッド付サスペンション60は、上述したサスペンション50と、サスペンション50のタング部2に実装された磁気ヘッドスライダ61とを有するものである。
【0086】
なお、サスペンション50については、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、磁気ヘッドスライダ61は、一般的なヘッド付サスペンションに用いられる磁気ヘッドスライダと同様のものを用いることができる。
【0087】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、差動インピーダンスが低減されたヘッド付サスペンションとすることができる。
【0088】
[ハードディスクドライブ]
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述したヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0089】
図8は、本発明に係るハードディスクドライブの一例を示す概略斜視図である。
図8に示されるハードディスクドライブ70は、ケース71と、このケース71に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク72と、このディスク72を回転させるスピンドルモータ73と、ディスク72に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク72に対してデータの書き込みおよび読み込みを行うスライダを含むヘッド付サスペンション60とを有している。このうちヘッド付サスペンション60は、ケース71に対して移動自在に取り付けられ、ケース71にはヘッド付サスペンション60のスライダをディスク72上に沿って移動させるボイスコイルモータ74が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション60は、ボイスコイルモータ74にアーム75を介して取り付けられている。
【0090】
なお、ヘッド付サスペンションについては、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0091】
本発明によれば、上述したヘッド付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0092】
以上、本発明に係るサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。