特許第6015030号(P6015030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015030
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】航空路管理装置および航空路管理方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20161013BHJP
   G01S 19/08 20100101ALI20161013BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20161013BHJP
【FI】
   B64D45/00 A
   G01S19/08
   G01S19/14
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-46606(P2012-46606)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-180685(P2013-180685A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】井部 孝
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 希望
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0332122(US,A1)
【文献】 特開平11−257983(JP,A)
【文献】 特表2004−522947(JP,A)
【文献】 特開2001−110000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
G01S 19/08
G01S 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を測位する信号であり、GPS衛星の軌道情報およびステータス情報を含む測位信号を受信する第1の受信部と、
航空機の航空路における複数のフィックスポイントのそれぞれの位置を示す複数の第1位置情報を格納する格納部と、
前記航空機が通過する所定のポイントの位置を示す第2位置情報と、前記航空機の巡航速度を示す巡航速度情報とを受信する第2の受信部と、
前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記航空機が前記フィックスポイントを通過する順番を求め、当該順番前記巡航速度情報に基づいて、前記航空機が各フィックスポイントを通過する予定時刻を算出し、各フィックスポイントの通過予定時刻と前記測位信号に基づいて、前記航空機が安全に通過することができないフィックスポイントを特定し、該フィックスポイントを示すアラート発生情報を生成する演算部と、を有する航空路管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航空路管理装置において、
前記格納部は、前記航空機がフィックスポイントを通過する順番および前記順番と逆の順番のいずれか一方の順番で各第1位置情報が並べられた航空路情報として、各第1位置情報を格納し、
前記ポイントは、前記航空機が前記航空路に入る前のポイントであり、
前記演算部は、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記ポイントと前記航空路情報内の最初の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離と、前記ポイントと前記航空路情報の最後の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離とを比較し、当該比較結果に基づいて、前記ポイントとの距離が短いフィックスポイントを前記航空機が前記航空路内で最初に通過するフィックスポイントとして求め、当該フィックスポイントおよび前記航空路情報に基づいて、前記航空機が前記フィックスポイントを通過する順番を求める航空路管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の航空路管理装置において、
前記格納部は、前記航空機がフィックスポイントを通過する順番および前記順番と逆の順番のいずれか一方の順番で各第1位置情報が並べられた航空路情報として、各第1位置情報を格納し、
前記ポイントは、前記航空機が前記航空路を離れた後のポイントであり、
前記演算部は、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記ポイントと前記航空路情報内の最初の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離と、前記ポイントと前記航空路情報の最後の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離とを比較し、当該比較結果に基づいて、前記ポイントとの距離が長いフィックスポイントを前記航空機が前記航空路内で最初に通過するフィックスポイントとして求め、当該フィックスポイントおよび前記航空路情報に基づいて、前記航空機が前記フィックスポイントを通過する順番を求める航空路管理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の航空路管理装置において、
前記アラート発生情報を表示する表示部をさらに有する航空路管理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の航空路管理装置において、
前記アラート発生情報を配信する配信部をさらに有する航空路管理装置。
【請求項6】
航空機の航空路における複数のフィックスポイントのそれぞれの位置を示す複数の第1位置情報を格納する格納部を有する航空路管理装置で行われる航空路管理方法であって、
位置を測位する信号であり、GPS衛星の軌道情報およびステータス情報を含む測位信号を受信する第1の受信ステップと、
前記航空機が通過する所定のポイントの位置を示す第2位置情報と、前記航空機の巡航速度を示す巡航速度情報とを受信する第2の受信ステップと、
前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記航空機が前記フィックスポイントを通過する順番を求め、当該順番前記巡航速度情報に基づいて、前記航空機が各フィックスポイントを通過する予定時刻を算出し、各フィックスポイントの通過予定時刻と前記測位信号に基づいて、前記航空機が安全に通過することができないフィックスポイントを特定し、該フィックスポイントを示すアラート発生情報を生成する演算ステップと、を有する航空路管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の位置情報の正確さに関する情報を配信する航空路管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の航空路は、VOR(VHF(Very High Frequency:超短波) Omnidirectional Range:超短波全方向無線標識施設)やDME(Distance Measuring Equipment:距離測定装置)などの地上航法援助装置の設置地点をつなぐ折れ線の上空にある。そして、航空機は、地上航法援助装置の設置地点からの電波を参照して、その航空路を飛行してきた。
【0003】
しかしながら、近年では、航空機に搭載される航法装置の性能が向上したため、航空機が自らの位置を、航法装置を用いて算出することができるようになった。これにより、航空機が地上航法援助装置の設置地点の上空を通過するとは限らないRNAV(Area Navigation:広域航法)と呼ばれる航法が一部で採用されるようになった。
【0004】
RNAVでは、航空機は、折れ線の上空を飛行する場合と比べて、より直線的なコースを飛行できるようになるため、航空機の運航効率を向上させることができる。
【0005】
なお、航空機が2つの地点の間を飛行する場合に、従来の航法では、往路および復路として、それぞれ別の航空路が使用されるが、RNAVでは、航空路を自由に選定することが可能であるため、往路および復路として同じ航空路が使用されることがある。
【0006】
RNAVで使用される代表的な航法装置としては、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機がある。
【0007】
GPSは米国によって運用される複数のGPS衛星からのGPS信号をGPS受信機で受け取り、自らの位置を高い精度で特定することが可能である測位のシステムである。
【0008】
なお、GPS受信機は、現在では車両に搭載され、車両の位置を特定するために利用されており、この測位のシステムは運転手をサポートするカーナビゲーションシステムで活用されていることは広く知られている。
【0009】
GPS衛星は、軌道情報およびステータス情報がエンコードされたGPS信号を連続的に放送する。軌道情報は、GPS衛星の現在の位置情報および速度情報と、運航する予定の軌道を示す運航軌道情報と、を含む。ステータス情報は、GPS衛星がGPS信号を送信した時刻を示す時刻情報等を含む。
【0010】
GPS受信機は、GPS衛星と同程度の精度を有する時計を備え、4つのGPS衛星からのGPS信号を同時に受信する。
【0011】
GPS受信機は、GPS信号がGPS衛星からGPS受信機に伝播する時間と、GPS信号の伝播速度との積である擬似距離を算出する。GPS受信機は、4つのGPS衛星からの擬似距離と、4つのGPS衛星の位置情報と、に基づいて、三次元空間(緯度、経度、高度)内のGPS受信機の位置情報を確定する。
【0012】
また、航空機が飛行を行うためのシステムとして、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)が知られている。GNSSは、航空機が、GPSを活用して、その位置情報を特定して飛行を行うシステムである。GNSSでは、カーナビゲーションシステムに比べて、高い安全性が要求されるため、位置情報の正確さを表す完全性(以下、インテグリティと呼ぶ)を確保することが要求される。
【0013】
このため、GNSSを用いて航空機が飛行を行う場合には、航空機に搭載される特定の規格のGPS受信機、地上の基地局、静止衛星などを含む補強システムを構築することによって、航空機の位置情報のインテグリティを確保する必要がある。
【0014】
現在、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)はSBAS(Satellite-Based Augmentation System:衛星航法補強システム)、GBAS(Ground-Based Augmentation System:地上型衛星補強システム)、およびABAS(Airborne-Based Augmentation System:機上装置による衛星補強システム)の3種類に分類されている。
【0015】
SBASおよびGBASは、複数の地上の基地局を含む、航空機の位置情報のインテグリティを確保するシステムである。複数の地上の基地局は、GPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて補強情報を生成する。補強情報は、航空機が位置情報のインテグリティを確保するための補正情報であり、正常なGPS信号を送信しない異常なGPS衛星を示す情報や、航空機の位置情報を補正する補正データなどを含む。SBASでは、地上の基地局が、静止衛星を介して、補強情報を航空機に配信する。GBASでは、地上の基地局が、超短波VHF(Very High Frequency)データリンクを介して、補強情報を航空機に配信する。
【0016】
ABASは、航空機に搭載されたGPS受信機のみで、航空機の位置情報のインテグリティを確保するシステムである。ABASの一種であるRAIM(Receiver Autonomous Integrity Monitor:受信機自律型完全性監視技術)では、冗長なGPS衛星を含む5機以上のGPS衛星から4機のGPS衛星が選定され、選定されたGPS衛星からのGPS信号に基づいて位置情報が算出される。そして、4機のGPS衛星の選定の仕方を変えて得られた位置情報の整合性に基づいて、異常なGPS衛星が検出される。RAIMでは、異常なGPS衛星を除いたGPS衛星からのGPS信号に基づいて、位置情報を特定することにより位置情報のインテグリティが確保される(特許文献1参照)。
【0017】
また、GNSSにおいて、位置情報のインテグリティが低くなる原因には、GPS衛星の故障などによる機能不全、およびGPS衛星の配置がある。
【0018】
複数のGPS衛星のうち、基地局で受信することが可能なGPS信号を送信するGPS衛星が地平線近くにある場合、そのGPS衛星が天空上にある場合と比べて、位置情報のインテグリティが低くなる。
【0019】
SBASやGBASでは、地上の基地局は、GPS衛星の配置によってGNSSの測位の精度が低下することを考慮して、航空機に補強データを配信している。
【0020】
RAIMなどのABASでは、基地局から補強データが配信されないので、GPS衛星の配置による位置情報のインテグリティの低下を認識することができない。このため、航空機が飛行する前に、航空機の位置情報のインテグリティが低下して、航空機が安全に飛行できない空域および時間帯を示すアラート発生情報が、NOTAM(Notice To Airmen:ノータム)として、関係者に予め配信されている。NOTAMとは、航空機の運航を管理する航法サービスプロバイダなどが、航空機の安全運航のために、航空会社などに配信する情報のことである。
【0021】
航空会社等は、NOTAMであるアラート発生情報に基づいて、航空機が安全に飛行できない空域および時間帯を避けたフライトプランを作成し、航空機が安全に飛行できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2004−522947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
アラート発生情報を配信するRAIM情報配信装置は、航空機が飛行する飛行空域および飛行時間帯を示すフライトプラン情報に基づいて、飛行空域および飛行時間帯の中に、航空機の位置情報のインテグリティが低下する空域および時間帯が存在するか否かを判断している。なお、航空機の位置情報のインテグリティが低下する空域および時間帯が存在する場合、その空域および時間帯を避けたフライトプラン情報が新たに作成される。
【0024】
より具体的には、フライトプラン情報は、航空機が通過する複数の予め定められたポイントであるフィックスポイントのそれぞれの位置情報が所定の順番で並べられている。RAIM情報配信装置は、航空機が位置情報の並び順に従ってフィックスポイントを通過するものとして、航空機がフィックスポイントを通過する予定時刻を算出し、その予定時刻に応じて、アラート発生情報を配信している。
【0025】
しかしながら、RNAVでは、航空機が往路と復路とで同じ航空路を通過する場合がある。この場合、往路と復路では、航空機は、同じ航空路を通過しても、フィックスポイントを通過する順番は異なるので、往路と復路とで同じフライトプラン情報が使用されると、RAIM情報配信装置は、往路と復路の一方で、フィックスポイントを通過する予定時刻を正確に算出することができない。このため、RAIM情報配信装置は、正確なアラート発生情報を配信することができないという問題がある。
【0026】
本発明の目的は、正確なアラート発生情報を配信することが可能な航空路管理装置および航空路管理方法を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の航空路管理装置は、位置を測位する信号であり、GPS衛星の軌道情報およびステータス情報を含む測位信号を受信する第1の受信部と、航空機の航空路における複数のフィックスポイントのそれぞれの位置を示す複数の第1位置情報を格納する格納部と、前記航空機が通過する所定のポイントの位置を示す第2位置情報と、前記航空機の巡航速度を示す巡航速度情報とを受信する第2の受信部と、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記航空機が前記フィックスポイントを通過する順番を求め、当該順番、前記巡航速度情報および前記測位信号に基づいて、前記航空機が安全に通過することができないフィックスポイントを示すアラート発生情報を生成する演算部と、を有する。
【0028】
本発明の航空路管理方法は、航空機の航空路における複数のフィックスポイントのそれぞれの位置を示す複数の第1位置情報を格納する格納部を有する航空路管理装置で行われる航空路管理方法であって、位置を測位する信号であり、GPS衛星の軌道情報およびステータス情報を含む測位信号を受信する第1の受信ステップと、前記航空機が通過する所定のポイントの位置を示す第2位置情報と、前記航空機の巡航速度を示す巡航速度情報とを受信する第2の受信ステップと、前記第1位置情報および前記第2位置情報に基づいて、前記航空機が前記フィックスポイントを通過する順番を求め、当該順番、前記巡航速度情報および前記測位信号に基づいて、前記航空機が安全に通過することができないフィックスポイントを示すアラート発生情報を生成する演算ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、正確なアラート発生情報を配信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態のRAIM情報配信装置の構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態のRAIM情報配信装置の格納部の構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態のRAIM情報配信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態のRAIM情報配信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態のRAIM情報配信装置の構成を示す図である。
【0033】
図1に示されるRAIM情報配信装置1は、第1の受信部11と、格納部12と、演算部13と、運用モニタ表示部14と、第2の受信部20と、を有する。第1の受信部11は、GPSアンテナ15と、GPS受信機16と、を有する。なお、RAIM情報配信装置1は、航空路管理装置と呼ばれることもある。
【0034】
第1の受信部11は、現在位置を測位するための測位信号を受信する。測位信号は、本実施形態では、複数のGPS衛星のそれぞれから放送されるRF信号(Radio Frequency)であるGPS信号であるとする。
【0035】
測位信号には、GPS衛星の軌道情報およびステータス情報がエンコードされた情報が含まれる。軌道情報は、GPS衛星の現在の位置情報および速度情報と、GPS衛星が運航する軌道を示す運航軌道情報とを含む。ステータス情報は、GPS衛星がGPS信号を送信した時刻を示す時刻情報等を含む。
【0036】
より具体的には、第1の受信部11は、GPSアンテナ15と、GPS受信機16とを有する。
【0037】
GPSアンテナ15は、複数のGPS衛星から放送されたGPS信号を受信し、それをGPS受信機16に送信する。
【0038】
GPS受信機16は、GPSアンテナ15からGPS信号を受信し、そのGPS信号を復調し、さらにデコードする。GPS受信機16は、復調およびデコードされたGPS信号を、測位に用いるためにコード化することで、デジタルデータに変換して、変換されたデジタルデータを演算部13に送信する。
【0039】
図2は、本実施形態のRAIM情報配信装置の格納部の構成を示す図である。
【0040】
格納部12は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体であり、図2に示されるように、演算部13の動作を規定する運用プログラム18と、航空路に関する航空路情報データベース19を格納する。
【0041】
航空路は、航空機が通過する予め定められた複数のポイントである複数のフィックスポイントを結ぶ経路である。
【0042】
航空路情報データベース19では、航空路を示す航空路情報と、その航空路を特定する識別情報である航空路記号とが航空路記号ごとに対応付けられている。
【0043】
航空路記号は、航空路内の複数のフィックスポイントのそれぞれを特定する複数の識別情報の列で表される。
【0044】
なお、航空路記号における識別記号の並び順は、航空機が識別記号にて示されるフィックスポイントを通過する順番およびその順番と逆の順番のいずれか一方の順番である。
【0045】
航空路記号は、例えば(f1、f2、・・・・、fn)と記される。fiはフィックスポイントPiを示す識別記号である。nは2以上の整数であり、iは1以上n以下の整数である。このとき、航空機は航空路において、フィックスポイントP1〜Pnの順番あるいはフィックスポイントPn〜P1の順番に飛行する。
【0046】
航空路情報は、航空路内の複数のフィックスポイントのそれぞれの位置を示す複数の第1位置情報の列で表される。
【0047】
なお、航空路情報における第1位置情報の並び順は、その第1位置情報の位置にあるフィックスポイントの並び順が、航空路記号における識別記号にて示されるフィックスポイントの並び順と同じになるように設定されている。
【0048】
第2の受信部20は、外部装置17から、フライトプランを示すフライトプラン情報を受信する。
【0049】
フライトプランは、航空会社による航空機の飛行計画である。フライトプラン情報は、航空機の飛行ルート情報および巡航速度情報を含む。飛行ルート情報は、航空機の出発空港から航空路の始点までの経路、航空路、および、航空路の終点から到着空港までの経路である飛行ルートを示す。
【0050】
飛行ルート情報は、具体的には、(1)出発空港、(2)出発時のSID(Standard Instrumental Departure route:標準計器出発経路)、およびSIDの終点位置と航空路が離れている場合の出発時のトランジット航路、(3)航空路に入る直前に通過する通過フィックスポイント、(4)航空路記号、(5)航空路から離れて最初に通過する通過フィックスポイント、(6)到着時のSTAR(Standard Terminal Arrival Route:標準到着経路)およびSTARの出発位置と航空路が離れている場合の到着時のトランジット航路、(7)到着空港を含むとする。
【0051】
なお、SIDは、空港を離陸した航空機が航空路に合流するために設定された経路のことである。STARは、航空機が航空路から空港へ着陸するために設定された経路である。出発時のトランジット航路は、SIDの終点位置と航空路が離れている場合に、SIDの終点位置と航空路を結ぶ経路である。また、到着時のトランジット航路は、STARの出発位置と航空路が離れている場合に、STARの出発位置と航空路を結ぶ経路である。
【0052】
演算部13は、コンピュータであり、格納部12に格納されている運用プログラム18を読み取り、読み取った運用プログラム18を実行して、以下の動作を実現する。
【0053】
演算部13は、第2の受信部20が受信したフライトプラン情報、および、格納部12が格納した航空路情報データベース19に基づいて、航空機がフィックスポイントを通過する順番を求める。
【0054】
なお、日本において、RNAVが運用される前は、航空路記号は航空機がフィックスポイントを通過する順番も規定していた。例えば、航空機が2つの地点を往復する場合、往路および復路は互いに異なるため、フライトプラン情報では、航空機は次のように飛行することが確定していた。
【0055】
航空機は出発空港を出発する。航空機は、SIDと、航空路に入る直前に通過する通過フィックスポイントと、を介して航空路に入る。なお、SIDの終点位置と航空路が離れている場合、航空機は、SIDと通過フィックスポイントの間に、出発時のトランジット航路をさらに経由する。
【0056】
航空機は、航空路内では航空路記号(f1、f2、・・・・、fn)の識別情報の並び順に従って、フィックスポイントP1〜Pnの順に飛行する。
【0057】
航空機は、航空路を離れたあとは、航空路から離れて最初に通過する通過フィックスポイントを介して、STARを経て、到着空港に到着する。なお、STARの出発位置と航空路が離れている場合、航空機は、STARの経路と通過フィックスポイントの間に、到着時のトランジット航路をさらに経由する。
【0058】
しかしながら、RNAVが運用されている場合、航空路記号は、必ずしも航空機がフィックスポイントを通過する順番を規定していない。
【0059】
より具体的には、航空機は、航空路において、フィックスポイントP1〜Pnの順に飛行する場合と、フィックスポイントPn〜P1の順に飛行する場合とがある。
【0060】
このため、航空機がフィックスポイントを通過する順番を求めるために、先ず、演算部13は、以下のように、航空路内の複数のフィックスポイントのうち、航空機が最初に通過するフィックスポイントを求める。
【0061】
演算部13は、フライトプラン情報に含まれる飛行ルート内の第1の所定のポイントの位置を示す第2位置情報およびフィックスポイントの第1位置情報に基づいて、第1の所定のポイントと最初のフィックスポイントP1との間の距離と、第1の所定のポイントと最後のフィックスポイントPnとの間の距離を比較する。演算部13は、第1の所定のポイントとの距離が短いフィックスポイントを、航空機が最初に通過するフィックスポイントとして求める。
【0062】
第1の所定のポイントは、航空機が航空路に入る前のポイントであり、例えば、出発空港、航空路に入る直前に通過する通過フィックスポイント、SIDの終点位置と航空路が離れていない場合のSIDの終点位置、および、SIDの終点位置と航空路が離れている場合の出発時のトランジット航路のトランジットフィックスポイントのいずれかとする。
【0063】
また、第1の所定のポイントを用いる代わりに、演算部13は、フライトプラン情報に含まれる飛行ルート内の第2の所定のポイントの位置を示す第2位置情報およびフィックスポイントの第1位置情報に基づいて、航空路内の第2の所定のポイントと最初のフィックスポイントP1との間の距離と、第2の所定のポイントと最後のフィックスポイントPnとの間の距離を比較してもよい。この場合、演算部13は、第2の所定のポイントとの距離が長いフィックスポイントを、航空機が最初に通過するフィックスポイントとして求める。
【0064】
第2の所定のポイントは、航空機が航空路を離れた後のポイントであり、例えば、到着空港、航空路から離れて最初に通過する通過フィックスポイント、STARの出発位置と航空路が離れていない場合のSTARの出発位置、および、STARの出発位置と航空路が離れている場合の到着時のトランジット航路のトランジットフィックスポイントのいずれかとする。
【0065】
航空機が最初に通過するフィックスポイントを求めると、演算部13は、航空機が最初に通過するフィックスポイントに応じて、航空機がフィックスポイントを通過する順番を求める。
【0066】
例えば、演算部13は、航空機が最初に通過するフィックスポイントが、フィックスポイントP1の場合、航空機は、航空路内では、フィックスポイントP1〜Pnの順番に通るとして、フィックスポイントを通過する順番を求める。
【0067】
また、演算部13は、航空機が最初に通過するフィックスポイントが、フィックスポイントPnの場合、航空機は、航空路内では、フィックスポイントPn〜P1の順番に通るとして、フィックスポイントを通過する順番を求める。
【0068】
航空機がフィックスポイントを通過する順番を求めると、演算部13は、航空機がフィックスポイントを通過する順番およびフライトプラン情報に含まれる巡航速度情報に基づいて、航空機がフィックスポイント間を飛行する時間を求め、フィックスポイントを通過する予定時刻を算出する。
【0069】
演算部13は、第1の受信部11からのデジタルデータから、全てのGPS衛星の軌道情報と、ステータス情報とを抽出する。
【0070】
演算部13は、抽出した軌道情報およびステータス情報に基づいて、RAIMを運用する航空機が飛行する予定である空域および時間帯の中で、航空機の位置情報のインテグリティが確保され安全に飛行を行うことが可能である安全空域および安全時間帯を示すサービスボリュームを算出する。
【0071】
なお、サービスボリュームを算出する算出方法は、例えば、文献( GPS RAIM:Calculation of Threshold and Protection Radius Using ChiSquare Method−A Geometric Approach、 R. Grover Brown、Gerald Y Chin、 Global Positioning System、Papers published in Navigation Volume V)に開示されている。
【0072】
演算部13は、各フィックスポイントの第1位置情報と、航空機が各フィックスポイントを通過する予定時刻と、算出されたサービスボリュームとに基づいて、航空路内のアラート発生情報を生成する。アラート発生情報とは、航空機の位置情報のインテグリティが低下して、航空機が安全に飛行できない空域および時間帯を示す情報である。
【0073】
例えば、演算部13は、サービスボリュームに含まれない空域および時間帯を航空機がRAIMにより安全に飛行できない空域および時間帯と判断する。演算部13は、フィックスポイントが上記の空域に含まれるか否かを判断する。フィックスポイントが上記の空域に含まれる場合、演算部13は、航空機がそのフィックスポイントを通過する予定時刻が上記の時間帯に含まれるか否かを判断する。航空機がそのフィックスポイントを通過する予定時刻が上記の時間帯に含まれる場合、演算部13は、フィックスポイントおよび航空機がそのフィックスポイントを通過する予定時刻が、上記の空域および時間帯に含まれると判断する。演算部13は、上記の空域および時間帯に含まれるフィックスポイントおよびそのフィックスポイントを通過する予定時刻を示すアラート発生情報を生成する。
【0074】
演算部13は、アラート発生情報を運用モニタ表示部14に送信する。
【0075】
運用モニタ表示部14は、演算部13から受信したアラート発生情報を表示する。
【0076】
なお、RAIM情報配信装置1は、利用者がアラート発生情報を印刷できる構成を有していてもよい。
【0077】
図3は、本実施形態のRAIM情報配信装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0078】
第2の受信部20は、RAIM情報配信装置1の外部装置17から航空機のフライトプラン情報を受信し、そのフライトプラン情報を演算部13へ送信する(S101)。
【0079】
演算部13は、フライトプラン情報を受信すると、格納部12から、航空路情報データベース19において、フライトプラン情報に含まれる航空路記号に対応付けられている航空路情報を取得する(S102)。
【0080】
演算部13は、フライトプラン情報に含まれる所定のポイントの第2位置情報および取得した航空路情報に含まれるフィックスポイントP1〜Pnの第1位置情報に基づいて、所定のポイントと最初のフィックスポイントP1との間の距離、および、その所定のポイントと最後のフィックスポイントPnとの間の距離を算出する。演算部13は、それらの距離を比較し、その比較結果に応じて、航空機がフィックスポイントP1〜Pnを通過する順番を定める(S103)。
【0081】
演算部13は、航空機がフィックスポイントP1〜Pnを通過する順番およびフライトプラン情報に含まれる巡航速度情報に基づいて、航空機がフィックスポイント間を飛行する時間を求め、その時間に基づいて、フィックスポイントP1〜Pnを通過する予定時刻を算出する(S104)。
【0082】
演算部13は、第1の受信部11からのデジタルデータから、全GPS衛星の軌道情報およびステータス情報を抽出し、その軌道情報およびステータス情報に基づいて、航空機が航空路を通過する予定の位置および時刻を含む空域および時間帯の中で、サービスボリュームを算出する(S105)。
【0083】
演算部13は、フィックスポイントの第1位置情報、ステップS105にて算出された航空機がフィックスポイントを通過する予定時刻およびステップS106にて算出されたサービスボリュームに基づいて、航空路内のアラート発生情報を生成する(S106)。
【0084】
演算部13は、アラート発生情報を運用モニタ表示部14に送信する。運用モニタ表示部14は、アラート発生情報を受信して、そのアラート発生情報を表示する(S107)。
【0085】
航空機関や航法サービスプロバイダは、運用モニタ表示部14にて表示されたアラート発生情報を確認し、そのアラート発生情報をNOTAMとして、運行関係者や航空管制機関の担当者などの関係者に通知する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、演算部13は、第1位置情報および第2位置情報に基づいて、航空機がフィックスポイントを通過する順番を求め、その順番、巡航速度情報および測位信号に基づいて、航空機が安全に通過することができないフィックスポイントを示すアラート発生情報を生成する。
【0087】
このため、フィックスポイントを通過する順番に基づいて、アラート発生情報が生成されるため、正確なアラート発生情報を生成することが可能になる。
【0088】
また、本実施形態では、格納部12は、航空機がフィックスポイントを通過する順番およびその順番と逆の順番のいずれか一方の順番で各第1位置情報が並べられた航空路情報として、各第1位置情報を格納する。第1の所定のポイントは、航空機が航空路に入る前のポイントである。演算部13は、第1位置情報および第2位置情報に基づいて、第1の所定のポイントと航空路情報内の最初の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離と、第1の所定のポイントと航空路情報の最後の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離とを比較する。そして、演算部13は、その比較結果に基づいて、第1の所定のポイントとの距離が短いフィックスポイントを航空機が航空路内で最初に通過するフィックスポイントとして求め、そのフィックスポイントおよび航空路情報に基づいて、航空機がフィックスポイントを通過する順番を求める。
【0089】
このため、航空機がフィックスポイントを通過する順番およびその順番と逆の順番のいずれか一方の順番で並べられた第1位置情報と、最初に通過するフィックスポイントとに基づいて、航空機がフィックスポイントを通過する順番が求められるので、航空機がフィックスポイントを通過する順番をより正確に求めることが可能になる。
【0090】
また、本実施形態では、格納部12は、航空機がフィックスポイントを通過する順番およびその順番と逆の順番のいずれか一方の順番で各第1位置情報が並べられた航空路情報として、各第1位置情報を格納し、第2の所定のポイントは、航空機が航空路を離れた後のポイントであり、演算部13は、第1位置情報および第2位置情報に基づいて、第2の所定のポイントと航空路情報内の最初の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離と、第2の所定のポイントと航空路情報の最後の第1位置情報が示す位置にあるフィックスポイントとの間の距離とを比較し、その比較結果に基づいて、第2の所定のポイントとの距離が長いフィックスポイントを航空機が航空路内で最初に通過するフィックスポイントとして求め、そのフィックスポイントおよび航空路情報に基づいて、航空機がフィックスポイントを通過する順番を求める。
【0091】
このため、航空機がフィックスポイントを通過する順番およびその順番と逆の順番のいずれか一方の順番で並べられた第1位置情報と、最初に通過するフィックスポイントとに基づいて、航空機がフィックスポイントを通過する順番が求められるので、航空機がフィックスポイントを通過する順番をより正確に求めることが可能になる。
【0092】
また、本実施形態では、運用モニタ表示部14がアラート発生情報を表示する。
【0093】
このため、航空機関や航法サービスプロバイダは、その場でアラート発生情報を確認することができる。
【0094】
(第2の実施の形態)
図4は本実施形態のRAIM情報配信装置の構成を示す図である。
【0095】
図4において、図1と同じ構成については、同じ符号を付し、説明を省略することもある。
【0096】
図4に示されるRAIM情報配信装置2は、第1の受信部11と、格納部12と、運用モニタ表示部14と、第2の受信部20と、演算部23と、配信部24と、を有する。
【0097】
演算部23は、演算部13と同じ機能を有し、さらに、サービスボリュームをグラフィカルに表す画像データを生成する。
【0098】
配信部24は、演算部23が生成したアラート発生情報および画像データを予め登録された端末に配信する。例えば、配信部24は、WEBサーバの機能を有し、アラート発生情報および画像データをWEB情報として配信してもよいし、アラート発生情報および画像データを、電子メールなどを用いて配信してもよい。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、正確なアラート発生情報を配信することが可能になる。
【0100】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0101】
1、2 RAIM情報配信装置
11 第1の受信部
12 格納部
13、23 演算部
14 運用モニタ表示部
15 GPSアンテナ
16 GPS受信機
17 外部装置
18 運用プログラム
19 航空路情報データベース
20 第2の受信部
24 配信部
図1
図2
図3
図4