特許第6015039号(P6015039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015039
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】複合フィルタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20161013BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20161013BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20161013BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H01F15/00 D
   H01F17/04 Z
   H03H7/09 A
   H03H7/38 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-55745(P2012-55745)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-191671(P2013-191671A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康誌
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−142931(JP,A)
【文献】 特開2002−175919(JP,A)
【文献】 特開2005−020577(JP,A)
【文献】 特開2005−332962(JP,A)
【文献】 特開2000−151327(JP,A)
【文献】 特開平11−354325(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 17/04
H03H 7/09
H03H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対を成す第1コイル及び第2コイルを有するコモンモードチョークコイルと、
前記第1コイルの一端に一方の端部が接続された第1パターンと、
前記第2コイルの一端に一方の端部が接続された第2パターンと、を備え、
前記第1パターン及び前記第2パターンは、当該第1パターンが有する抵抗成分と第2パターンが有する抵抗成分の抵抗値の和が所定の抵抗値となるように形成され、かつ、当該第1パターンと第2パターンとの間で所定の容量が形成されるように近接して配置されており、
前記所定の抵抗値は、前記コモンモードチョークコイルの特性インピーダンスと、該コモンモードチョークコイルが実装される差動伝送線路の特性インピーダンスとが整合する値に設定され、
前記所定の容量は、前記差動伝送線路を介して伝送される信号の周波数に応じて、信号波形の歪みを抑制する値に設定される
ことを特徴とする複合フィルタ部品。
【請求項2】
前記第1パターン及び前記第2パターンそれぞれは、抵抗パターン及び/又は導体パターンを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合フィルタ部品。
【請求項3】
前記第1パターン及び前記第2パターンそれぞれは、櫛歯状に形成されており、双方の櫛歯状に形成されたパターンが互い違いに入り込むように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合フィルタ部品。
【請求項4】
前記第1パターン及び前記第2パターンそれぞれは、渦巻状に形成されており、双方の渦巻状に形成されたパターンが所定の間隔を空けて並んで配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合フィルタ部品。
【請求項5】
前記第1パターン及び前記第2パターンそれぞれは、前記コモンモードチョークコイルの表面に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合フィルタ部品。
【請求項6】
前記第1パターン及び第2パターンそれぞれは、前記コモンモードチョークコイルの内部に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合フィルタ部品。
【請求項7】
前記第1パターンは、前記第1コイルの一端が接続された前記コモンモードチョークコイルの第1外部電極を介して、前記第1コイルと接続され、
前記第2パターンは、前記第2コイルの一端が接続された前記コモンモードチョークコイルの第2外部電極を介して、前記第2コイルと接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合フィルタ部品。
【請求項8】
前記コモンモードチョークコイルは、巻き線型のコモンモードチョークコイルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合フィルタ部品。
【請求項9】
前記コモンモードチョークコイルは、積層型のコモンモードチョークコイルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合フィルタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルタ部品に関し、特に、コモンモードチョークコイルを用いた複合フィルタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、信号を伝送する一対の差動伝送線路上のコモンモードノイズを除去するために、コモンモードチョークコイルが使用されている。ところで、コモンモードチョークコイルでは、コモンモードノイズを除去する一方、信号波形は劣化させずに通過させることが求められる。そこで、コモンモードチョークコイルを通過する信号波形の劣化を防止するために、コモンモードチョークコイルの特性インピーダンスが、差動伝送線路の特性インピーダンスと整合(マッチング)されていることが重要になる。すなわち、差動伝送線路の特性インピーダンスとコモンモードチョークコイルの特性インピーダンスとが整合されていない場合には、例えば差動伝送線路を流れる信号の一部がコモンモードチョークコイルとの接続部分で反射し、この反射信号に起因して信号の波形が乱れることとなる。
【0003】
ここで、特許文献1には、磁性又は非磁性のドラムコアの巻線部に巻線距離(a)の一対の線材を巻線間隔(b)を設けて巻線するとともに、該一対の線材の端部をそれぞれドラムコアの鍔部に設けられた電極部に接続して構成された巻線型のコモンモードチョークコイルが開示されている。このコモンモードチョークコイルでは、一対の線材の巻線距離(a)及び巻線間隔(b)を調節することにより、コモンモードチョークコイルの特性インピーダンスを差動伝送線路の特性インピーダンスと整合させ、信号波形の反射を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−146671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1記載のコモンモードチョークコイルによれば、特性インピーダンスの整合を取ることで信号波形への影響を抑制することができる。しかしながら、元の信号波形に歪み(ノーマルモードノイズ)が含まれている場合には、その歪みを含んだ信号波形を通過させてしまう。ここで、通過する信号波形の歪みを低減するために、例えば、コモンモードチョークコイルの入力側端子間、すなわち一対の差動伝送線路間にコンデンサを挿入することも考えられるが、コンデンサを挿入した場合には、特性インピーダンスの整合が崩れ、信号の反射による新たな歪みが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、コモンモードチョークコイルを用いた複合フィルタ部品において、特性インピーダンスを整合するとともに、通過する信号波形の歪みを低減することが可能な複合フィルタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る複合フィルタ部品は、対を成す第1コイル及び第2コイルを有するコモンモードチョークコイルと、第1コイルの一端に一方の端部が接続された第1パターンと、第2コイルの一端に一方の端部が接続された第2パターンとを備え、当該第1パターンが有する抵抗成分と第2パターンが有する抵抗成分の抵抗値の和が所定の抵抗値となるように形成され、かつ、当該第1パターンと第2パターンとの間で所定の容量が形成されるように、第1パターン及び第2パターンが近接して配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る複合フィルタ部品によれば、第1パターン及び第2パターンにより、所定の抵抗値(抵抗値の和)を持った抵抗、及び所定の容量を持ったコンデンサが形成される。よって、第1コイルの一端と第2コイルの一端との間、すなわちコモンモードチョークコイルの入力端間(又は出力端間)に、直列に接続された抵抗とコンデンサが挿入される。そのため、該コンデンサにより、高周波成分を持つ波形歪みが複合フィルタ部品を通過することが抑制されるとともに、インピーダンス整合された抵抗により信号の反射が抑制される。その結果、特性インピーダンスを整合するとともに、通過する信号波形の歪みを低減することが可能となる。
【0009】
本発明に係る複合フィルタ部品では、第1パターン及び第2パターンそれぞれが、抵抗パターン及び/又は導体パターンを含むことが好ましい。
【0010】
このようにすれば、双方のパターン間の容量を所定(目標)の容量に合わせるとともに、双方のパターンの抵抗値の和を所定(目標)の抵抗値に合わせ込むことができる。なお、抵抗及びコンデンサそれぞれの値を適切に調整することで、信号波形に含まれる波形の通過を抑制しつつ信号の反射を効果的に防止することができる。
【0011】
本発明に係る複合フィルタ部品では、第1パターン及び第2パターンそれぞれが、櫛歯状に形成されており、双方の櫛歯状に形成されたパターンが互い違いに入り込むように配置されていることが好ましい。このようにすれば、櫛歯状に形成された双方のパターンの間で効率よく容量を形成することができる。
【0012】
本発明に係る複合フィルタ部品では、第1パターン及び第2パターンそれぞれが、渦巻状に形成されており、双方の渦巻状に形成されたパターンが所定の間隔を空けて並んで配置されていることが好ましい。このようにすれば、渦巻状に形成された双方のパターンの間で効率よく容量を形成することができる。
【0013】
本発明に係る複合フィルタ部品では、第1パターン及び第2パターンそれぞれが、コモンモードチョークコイルの表面に形成されていることが好ましい。このようにすれば、パターンや配線の形成等を比較的容易に行うことができる。なお、第1パターン及び第2パターンそれぞれは、コモンモードチョークコイルの内部に形成されていてもよい。
【0014】
本発明に係る複合フィルタ部品では、第1パターンが、第1コイルの一端が接続されたコモンモードチョークコイルの第1外部電極を介して、第1コイルと接続され、第2パターンが、第2コイルの一端が接続されたコモンモードチョークコイルの第2外部電極を介して、第2コイルと接続されていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、第1コイルの一端が接続された第1外部電極を介することにより、第1パターンと第1コイルとを比較的容易に接続することができる。同様に、第2コイルの一端が接続された第2外部電極を介することにより、第2パターンと第2コイルとを比較的容易に接続することができる。
【0016】
なお、本発明に係る複合フィルタ部品では、該複合フィルタ部品を構成するコモンモードチョークコイルとして、巻線型のコモンモードチョークコイル、又は、積層型のコモンモードチョークコイルを好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コモンモードチョークコイルを用いた複合フィルタ部品において、特性インピーダンスを整合するとともに、通過する信号波形の歪みを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る複合フィルタ部品の全体構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る複合フィルタ部品の等価回路を示す図である。
図3】第2実施形態に係る複合フィルタ部品の全体構成を示す斜視図である。
図4】第2実施形態に係る複合フィルタ部品の等価回路を示す図である。
図5】信号波形の測定システム(信号波形評価系)の構成を示す図である。
図6】第1比較例に係るフィルタ部品の回路図である。
図7】第2比較例に係るフィルタ部品の回路図である。
図8】第2実施形態に係る複合フィルタ部品、第1比較例、及び第2比較例それぞれを用いた場合の信号波形の測定結果を示すグラフである。
図9】第3実施形態に係る複合フィルタ部品の全体構成を示す斜視図である。
図10】第4実施形態に係る複合フィルタ部品の全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係る複合フィルタ部品1の構成について説明する。図1は、複合フィルタ部品1の全体構成(外観)を示す斜視図である。また、図2は、複合フィルタ部品1の等価回路を示す図である。
【0021】
複合フィルタ部品1は、コモンモードチョークコイル10、及び、該コモンモードチョークコイル10の上面に形成された一対の第1パターン11並びに第2パターン12を備えている。
【0022】
コモンモードチョークコイル10は、表面実装タイプの巻線型コモンモードチョークコイルであり、磁性コア13と、4つの外部電極141,142,143,144と、一対の巻線15,16と、天板17とを有している。
【0023】
磁性コア13は、例えばMn−Zn系フェライトやNi−Zn系フェライト等のフェライトで形成されており、中央の巻芯部131と、その両端に形成された一対の鍔部132,133とを含んで構成されている。
【0024】
外部電極141,142(143,144)それぞれは、鍔部132(133)の両側の下端部(脚部)から両側の側面部にかけて形成されている。なお、外部電極141,142(143,144)は、例えば、金属メッキや、金属ペーストの焼付け等により形成される。
【0025】
一対の巻線15,16は、それぞれ銅線を絶縁膜で被覆して成るラインであり、磁性コア13の巻芯部131に巻回されている。巻線15,16の一方の端部15a,16aそれぞれは、外部電極141,142側に引き出されて、該外部電極141,142にそれぞれ接続されている。また、巻線15,16の他方の端部15b,16bは、外部電極143,144側に引き出されて、該外部電極143,144にそれぞれ接続されている。ここで、巻線15は特許請求の範囲に記載の第1コイルに相当し、巻線16は、特許請求の範囲に記載の第2コイルに相当する。よって、以下、巻線15を第1コイル15といい、巻線16を第2コイル16ということもある。
【0026】
天板17は、例えばMn−Zn系フェライトやNi−Mn系フェライト等のフェライトで矩形の板状に形成され、一対の鍔部132,133に接着剤等で接合されている。
【0027】
天板17の上面には、互いに対向する一対の第1パターン11及び第2パターン12が形成されている。第1パターン11の一方の端部は、外部電極141(特許請求の範囲に記載の第1外部電極に相当)に接続されている。すなわち、第1パターン11の一方の端部は、該外部電極141を介して、第1コイル15の一端15aと接続されている。一方、第2パターン12の一方の端部は、外部電極142(特許請求の範囲に記載の第2外部電極に相当)に接続されている。すなわち、第2パターン12の一方の端部は、該外部電極142を介して、第2コイルの一端16aと接続されている。
【0028】
第1パターン11及び第2パターン12それぞれは、櫛歯状に形成された配線パターンであり、双方の櫛歯状に形成されたパターンが互い違いに入り込むように配置されている。第1パターン11及び第2パターン12それぞれは、抵抗成分を含有する抵抗ペーストからなり、該第1パターン11が有する抵抗成分と第2パターン12が有する抵抗成分の抵抗値の和が所定の抵抗値(例えば100Ω)となるように形成されている。ここで、上記所定の抵抗値(抵抗値の和)は、コモンモードチョークコイル10の特性インピーダンスと差動伝送線路の特性インピーダンスとが整合する値に設定される。
【0029】
なお、第1パターン11及び第2パターン12は、抵抗値の和が所定値(例えば100Ω)となるように形成されていればよく、各パターンそれぞれは、抵抗パターンであっても、導体パターンであってもよく、また抵抗パターンと導体パターンとが混在していてもよい。
【0030】
また、第1パターン11及び第2パターン12は、該第1パターン11と第2パターン12との間で所定の容量(例えば0.5pF)が形成されるように、近接して配置されている。ここで、上記所定の容量は、信号の周波数等に応じて、信号波形の歪み(ノーマルモードノイズ)を抑制するために適した値に設定される。
【0031】
ここで、第1パターン11及び第2パターン12は、例えば、抵抗成分を含有する抵抗ペースト(抵抗材)を塗布して焼き付けることにより、若しくは、乾式めっき等により形成することができる。なお、抵抗成分としては、例えば、In−Sn複合酸化物(ITO)、La−Cu複合酸化物、Sr−Fe複合酸化物、Ca−Sr−Ru複合酸化物などの複合酸化物が用いられる。また、Ni,Cu、Mo、Cr、Nbなどの金属や、Al2O3、TiO2、ZrO2、ZnO2などの金属酸化物を添加することにより、比抵抗等を調整することができる。すなわち、第1パターン11及び第2パターン12の抵抗値を調節することができる。
【0032】
上述したように第1パターン11及び第2パターン12が形成されることにより、該第1パターン11及び第2パターン12によって、所定の抵抗値(抵抗値の和)を持った抵抗112R、及び所定の容量を持ったコンデンサ112Cが形成される。よって、図2の等価回路に示されるように、第1コイル15の一端15aと第2コイル16の一端16aとの間、すなわちコモンモードチョークコイル10の入力ライン間(又は出力ライン間)に、直列に接続された抵抗112Rとコンデンサ112Cが挿入されることとなる。
【0033】
このような構成を有することにより、本実施形態によれば、高周波成分を持つ波形歪み(ノーマルモードノイズ)がコンデンサ112Cによって複合フィルタ部品1を通過することが抑制されるとともに、インピーダンス整合された抵抗112Rにより信号の反射が抑制される。
【0034】
その結果、本実施形態によれば、特性インピーダンスを整合するとともに、通過する信号波形の歪みを低減することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、第1パターン11及び第2パターン12それぞれが、櫛歯状に形成されており、双方の櫛歯状に形成されたパターンが互い違いに入り込むように配置されているため、櫛歯状に形成された双方のパターンの間で効率よく(例えばより狭い面積で)容量を形成することができる。
【0036】
本実施形態によれば、第1パターン11及び第2パターン12それぞれが、コモンモードチョークコイル10の表面に形成されているため、パターンや配線の形成等を比較的容易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、第1パターン11が、外部電極141を介して第1コイル15と接続されるため、第1パターン11と第1コイル15とを比較的容易に接続することができる。同様に、第2パターン12が、外部電極142を介して第2コイル16と接続されるため、第2パターン12と第2コイル16とを比較的容易に接続することができる。
【0038】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、複合フィルタ部品1を構成するコモンモードチョークコイル10として、巻線型のコモンモードチョークコイルを用いたが、積層型(薄膜型)のコモンモードチョークコイルを用いてもよい。そこで、次に、図3及び図4を併せて用いて、積層型のコモンモードチョークコイル20を用いた第2実施形態に係る複合フィルタ部品2の構成について説明する。図3は、複合フィルタ部品2の全体構成(外観)を示す斜視図である。また、図4は、複合フィルタ部品2の等価回路を示す図である。
【0039】
複合フィルタ部品2は、積層型のコモンモードチョークコイル20、及び、該コモンモードチョークコイル20の上面に形成された一対の第1パターン21並びに第2パターン22を備えている。
【0040】
コモンモードチョークコイル20は、例えば、第1コイル25を構成するコイルパターンが形成された絶縁層(絶縁シート)、及び、第2コイル26を構成するコイルパターンが形成された絶縁層(絶縁シート)を含む複数の絶縁層の積層体23が磁性層(磁性基板)27,28によって挟み込まれた構成を有している。
【0041】
コモンモードチョークコイル20の側面には、第1コイル25の端部25a,25bに接続される外部電極(側面電極)241,243、及び、第2コイル26の端部26a,26bに接続される外部電極(側面電極)242,244が形成されている。これら外部電極241〜244の各下端部はそれぞれコモンモードチョークコイル20の底面に回り込み形成されている。
【0042】
コモンモードチョークコイル20(磁性層27)の上面には、互いに対向する一対の第1パターン21及び第2パターン22が形成されている。第1パターン21の一方の端部は、外部電極241(特許請求の範囲に記載の第1外部電極に相当)に接続されている。すなわち、第1パターン21一方の端部は、該外部電極241を介して、第1コイル25の一端25aと接続されている。一方、第2パターン22の一方の端部は、外部電極242(特許請求の範囲に記載の第2外部電極に相当)に接続されている。すなわち、第2パターン22一方の端部は、該外部電極242を介して、第2コイルの一端26aと接続されている。
【0043】
ここで、第1パターン21及び第2パターン22それぞれは、上述した、コモンモードチョークコイル10を構成する天板17の上面に形成された第1パターン11及び第2パターン12と同一又は同様であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施形態においても、第1パターン21及び第2パターン22によって、所定の抵抗値(抵抗値の和、例えば100Ω)を持った抵抗212R、及び所定の容量(例えば0.5pF)を持ったコンデンサ212Cが形成される。よって、図4の等価回路に示されるように、第1コイル25の一端25aと第2コイル26の一端26aとの間、すなわちコモンモードチョークコイル20の入力ライン間(又は出力ライン間)に、直列に接続された抵抗212Rとコンデンサ212Cが挿入されることとなる。
【0045】
続いて、図5〜8を用いて、本実施形態に係る複合フィルタ部品2及び比較用のフィルタ部品91,92(第1比較例、第2比較例)それぞれのノイズ低減効果について、測定結果を示して説明する。ここでは、比較用のフィルタ部品91(第1比較例)として、図6に示される、コモンモードチョークコイル20のみからなるもの、すなわち、入力ライン間に抵抗もコンデンサも挿入されていないものを用いた。また、比較用のフィルタ部品92(第2比較例)として、図7に示される、コモンモードチョークコイル20の入力ライン間に容量が0.5pFのコンデンサCのみが挿入されたものを用いた。
【0046】
そして、抵抗212R(100Ω)及びコンデンサ212C(0.5pF)の有無による信号波形の改善度合い、すなわちノイズ低減効果を評価した。なお、図5は、信号波形の測定システム(信号波形評価系)90を示す図である。また、図8は、複合フィルタ部品2及び比較用のフィルタ部品91,92それぞれを用いた場合の信号波形の測定結果を示すグラフである。まず、図5を参照しつつ、信号波形の測定システム90について説明する。
【0047】
同図に示されるように、信号波形の測定システム90は、一対の差動伝送線路D+,D−間に速度1Gbpsの差動信号を発生させる信号源93を備えている。この一対の差動伝送線路D+,D−それぞれには、長さ1mの同軸ケーブル96,97の一端が接続されている。一方、該同軸ケーブル96,97の他端は、複合フィルタ部品2(又は比較例のフィルタ部品91,92)の入力端子241,242に接続されている。また、複合フィルタ部品2(又は比較例のフィルタ部品91,92)の出力端子243,244それぞれには、50Ωの終端抵抗98,99が接続されている。
【0048】
そして、複合フィルタ部品2(又は比較例のフィルタ部品91,92)と終端抵抗98,99との間(図5中の波形測定位置)において、差動伝送線路D+,D−間の差動信号の信号波形を測定し、その測定結果から、複合フィルタ部品2及び比較用のフィルタ部品91,92(第1比較例、第2比較例)それぞれのノイズ低減効果を評価した。
【0049】
上述した測定システム90を用いて測定した、複合フィルタ部品2及び比較用のフィルタ部品91,92(第1比較例、第2比較例)それぞれを用いた場合の信号波形の測定結果を図8に示す。図8に示されたグラフの横軸は時間(nsec)であり、縦軸は電圧(V)である。
また、図8のグラフでは、複合フィルタ部品2を用いた場合の測定結果を実線で、フィルタ部品91(第1比較例)を用いた場合の測定結果を破線で示した。また、フィルタ部品92(第2比較例)を用いたときの測定結果を一点鎖線で示した。
【0050】
図8に破線で示されるように、フィルタ部品91(第1比較例)を使用した場合には、信号の立ち上がり直後及び立下り直後に波形歪みの発生が確認された(図8中の破線の円内参照)。また、図8に一点鎖線で示されるように、フィルタ部品92(第2比較例)を用いたときには、立ち上がり直後及び立下り直後の歪みは低減されたが、信号の反射によって新たな歪みが発生することが確認された(図8中の一点鎖線の円内参照)。一方、本実施形態に係る複合フィルタ部品2を用いた場合には、立ち上がり、立下り時の歪みが抑制され、かつ、反射による新たなひずみも発生しないことが確認できた。
【0051】
以上、本実施形態によれば、上述した複合フィルタ部品1と同様に、第1パターン21及び第2パターン22により形成されたコンデンサ212Cによって高周波成分を持つ波形歪みが通過することを抑制しつつ、インピーダンス整合された抵抗212Rによって信号の反射を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、積層型のコモンモードチョークコイル20を用いることにより、部品をより小型化、低背化することができる。
【0053】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、第1パターン21及び第2パターン22それぞれを櫛歯状に形成したが、該第1パターン21及び第2パターン22の形状は櫛歯状以外の形状であってもよい。そこで、次に、図9を参照しつつ、第3実施形態に係る複合フィルタ部品3の構成について説明する。図9は、複合フィルタ部品3の全体構成(外観)を示す斜視図である。なお、図9において第2実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0054】
複合フィルタ部品3は、図9に示されるように、第1パターン31及び第2パターン32それぞれが、渦巻状に形成されており、双方の渦巻状に形成されたパターンが所定の間隔を空けて並んで配置されている点で上述した複合フィルタ部品2と異なっている。その他の構成は上述した複合フィルタ部品2と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。なお、本明細書中において「渦巻状」という文言は、完全な渦巻き形状のみならず、図9に示された第1パターン31及び第2パターン32のような、逆C字状、すなわち不完全な渦巻き形状をも含むものとする。
【0055】
本実施形態によっても、上述した複合フィルタ部品1,2と同等の効果を奏することができる。すなわち、特性インピーダンスを整合するとともに、通過する信号波形の歪みを低減することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態によれば、渦巻状に形成された双方のパターンの間で効率よく(例えばより狭い面積で)容量を形成することができる。
【0057】
(第4実施形態)
上記第2実施形態では、第1パターン21及び第2パターン22それぞれが、抵抗成分を含有する抵抗ペーストからなる抵抗パターンであったが、該第1パターン21及び第2パターン22それぞれは、例えば導電性ペーストからなる導体パターンを含んでいてもよい。そこで、次に、図10を参照しつつ、第4実施形態に係る複合フィルタ部品4の構成について説明する。図10は、複合フィルタ部品4の全体構成(外観)を示す斜視図である。なお、図10において第2実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0058】
複合フィルタ部品4は、図10に示されるように、第1パターン41が、抵抗ペーストからなる根本部41aと導電性ペーストからなる櫛歯部41bを有して構成されている点で上述した複合フィルタ部品2と異なっている。同様に、第2パターン42が、抵抗ペーストからなる根本部42aと導電性ペーストからなる櫛歯部42bを有して構成されている点で上述した複合フィルタ部品2と異なっている。その他の構成は上述した複合フィルタ部品2と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
なお、ここで、第1パターン41及び第2パターン42は、抵抗値の和が所定値(例えば100Ω)となるように形成されていればよく、例えば、根本部41a(42a)が導電性ペーストにより形成され、櫛歯部41b(42b)が抵抗ペーストにより形成されていてもよい。また、第1パターン41(又は第2パターン42)全体が導電性ペーストによって形成され、第2パターン42(又は第1パターン41)全体が抵抗ペーストによって形成されていてもよい。さらに、これらのパターンが組み合わされて構成されていてもよい。
【0060】
本実施形態によっても、上述した複合フィルタ部品1,2と同等の効果を奏することができる。すなわち、特性インピーダンスを整合するとともに、通過する信号波形の歪みを低減することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、双方のパターン41,42間の容量を所定(目標)の容量に合わせるとともに、双方のパターン41,42の抵抗値の和を所定(目標)の抵抗値に合わせ込むことができる。なお、抵抗及びコンデンサそれぞれの値を適切に調整することで、信号波形に含まれる波形歪みの通過を抑制しつつ信号の反射を効果的に防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、第1パターン11〜41、第2パターン12〜42の形状を櫛歯状又は渦巻状に形成したが、これらのパターンの形状は、櫛歯状や渦巻状には限られない。また、櫛歯状パターンの櫛歯の数や各櫛歯状パターンの間隔、及び、渦巻状パターンの長さや各渦巻状パターンの間隔等は、例えば仕様などにより要求される抵抗値・静電容量に応じて任意に決定することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、第1パターン11〜41及び第2パターン12〜42を、巻線型のコモンモードチョークコイル10を構成する天板17の上面又は積層型のコモンモードチョークコイル20を構成する磁性層27の上面(すなわち部品の表面)に形成したが、第1パターン11〜41及び第2パターン12〜42は、天板17の裏面、磁性層27の裏面、又は積層体23の内層等(すなわち部品の内部)に形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3,4 複合フィルタ部品
10,20 コモンモードチョークコイル
11,21,31,41 第1パターン
12,22,32,42 第2パターン
41a,42a 根本部
41b,42b 櫛歯部
112R,212R 抵抗
112C,212C コンデンサ
141,142,143,144,241,242,243,244 外部電極
15,16 巻線(第1コイル,第2コイル)
17 天板
23 積層体
25 第1コイル
26 第2コイル
27,28 磁性層
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10