(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着樹脂層を形成するカルボン酸変性ポリオレフィンが、カルボン酸変性ポリエチレン又はカルボン酸変性ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の電池用包装材料。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、金属層、接着樹脂層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、前記接着樹脂層がカルボン酸変性ポリオレフィンを含み、且つ前記シーラント層がエチレンとノルボルネンの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーを含むことを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
【0016】
1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、
図1に示すように、少なくとも、基材層1、金属層2、接着樹脂層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
【0017】
また、本発明の電池用包装材料には、基材層1と金属層2との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着樹脂層が設けられていてもよい。以下、金属層とシーラント層との間に設けられる接着樹脂層3を「接着樹脂層A」と表記し、基材層と金属層との間に必要に応じて設けられる接着樹脂層を「接着樹脂層B」と表記することもある。
【0018】
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層]
本発明の電池用包装材料において、基材層は最外層を形成する層である。基材層を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10等のナイロン、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ポリエステルが挙げられる。
【0019】
基材層は、1層の樹脂層から形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂層で形成されていてもよい。基材層を2層以上の樹脂層で形成する場合、当該基材層の具体例として、ポリエステルからなる樹脂層とナイロンからなる樹脂層を積層させた多層構造、好ましくは、2軸延伸ポリエステルからなる樹脂層と2軸延伸ナイロンからなる樹脂層を積層させた多層構造が挙げられる。基材層を多層構造にする場合、2以上の樹脂層は、接着剤を介して積層させればよく、使用される接着剤の種類や量等については、後述する接着樹脂層Bの場合と同様である。
【0020】
基材層の厚さについては、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
【0021】
[接着樹脂層B]
本発明の電池用包装材料において、接着樹脂層Bは、基材層と金属層との間に、必要に応じて設けられる樹脂層である。
【0022】
接着樹脂層Bは、基材層と金属層とを接着可能である接着剤によって形成される。接着樹脂層Bの形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着樹脂層Bの形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0023】
接着樹脂層Bの形成に使用できる接着剤成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドとカルボン酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルとカルボン酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらとカルボン酸変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0024】
接着樹脂層Bの厚さについては、例えば、2〜10μm、好ましくは3〜6μmが挙げられる。
【0025】
[金属層]
本発明の電池用包装材料において、金属層は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
【0026】
金属層の厚さについては、例えば、10〜100μm、好ましくは20〜50μmが挙げられる。
【0027】
また、金属層は、接着の安定化、溶解の防止、耐食性の付与等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくとも接着樹脂層Aと接する面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。
【0028】
ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。
【0033】
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R
1及びR
2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R
1、R
2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R
1、R
2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。ことができる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
【0034】
また、金属層に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、前記耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
【0036】
化成処理において金属層の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層の表面1m
2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及び前記アミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
【0037】
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層に化成処理を施す前に、予め金属層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
【0038】
[接着樹脂層A]
本発明の電池用包装材料において、接着樹脂層Aは、前記金属層と後述するシーラント層を強固に接着させる層である。
【0039】
本発明において、接着樹脂層Aは、カルボン酸変性ポリオレフィンを含む樹脂層により構成される。このように接着樹脂層Aに、カルボン酸変性ポリオレフィンを使用することにより、前記金属層と後述するシーラント層との強固な接着に加えて、電池素子を密封する際のヒートシールによって電池の電極と包装材料の金属層が短絡するのを防止し、更にクラックの発生を抑制することが可能になる。
【0040】
カルボン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いはポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
カルボン酸変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が挙げられ、より具体的には、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸による変性は、長期間安定した金属層との接着性を確保でき、また量産性にも適しているので、好適である。
【0041】
カルボン酸変性されるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−αオレフィン共重合体;プロピレン−αオレフィン共重合体;トリメチルペンテン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0042】
接着樹脂層Aで使用されるカルボン酸変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)については、特に制限されないが、例えば、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRとして、0.5〜50g/10分、好ましくは1.0〜20g/10分が挙げられる。
【0043】
接着樹脂層Aにおいて、カルボン酸変性ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
接着樹脂層Aに使用されるカルボン酸変性ポリオレフィンとして、ヒートシールによって電池内部で生じる短絡を防止する作用、及びクラックの発生を抑制する作用を一層有効に発揮させるという観点から、好ましくはカルボン酸変性ポリエチレン及びカルボン酸変性ポリプロピレン、更に好ましくは無水マレイン酸変性ポリエチレン及び無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0045】
接着樹脂層Aは、カルボン酸変性ポリオレフィンから構成される樹脂層であることが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ブテン、ポリメチルペンテン等の他の樹脂成分が含まれていてもよい。
【0046】
接着樹脂層Aの厚さについては、例えば、3〜50μm、好ましくは10〜30μmが挙げられる。
【0047】
[シーラント層]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
【0048】
本発明において、シーラント層は、エチレンとノルボルネンの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーを含む樹脂層により構成される。
【0049】
前記シクロオレフィンコポリマーを構成するエチレンとノルボルネンの割合としては、例えば、エチレン/ノルボルネン(モル比)が、70/30〜20/80程度、好ましくは65/35〜25/75程度、更に好ましくは60/40〜30/70程度が挙げられる。
【0050】
また、前記シクロオレフィンコポリマーの好適な一例は、ガラス転移温度が65〜210℃、好ましくは75〜190℃を満たすものが挙げられる。このようなガラス転移温度を備えるシクロオレフィンコポリマーを使用することにより、ヒートシールの加熱圧着処理でのシーラント層の過度なつぶれを一層効果的に防止でき、短絡の防止効果を一層有効に奏させることが可能になる。また、ノルボルネンにより、シーラント層は非晶性になり且つ強靭性を発現できるので、延伸でのクラック、ヒートシールでのクラック、シール部分の折り曲げ加工でのクラック等を一層効果的に防止できるようになる。また、前記ガラス転移温度を備えるシクロオレフィンコポリマーを使用すると、耐熱性と強靭性が向上し、密封後の熱膨張による破裂温度(耐熱破裂温度)が上昇し、シーラント層の特性をより一層向上させることができる。
【0051】
また、前記シクロオレフィンコポリマーのMFR(メルトフローレート)については、特に制限されないが、例えば、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRとして、0.01〜20g/10分、好ましくは1.5〜10g/10分が挙げられる。
【0052】
また、前記シクロオレフィンコポリマーの数平均分子量については、特に制限されないが、例えば15000〜200000、好ましくは20000〜100000が挙げられる。ここで、平均分子量とは、GPCにより測定される数平均分子量を示す。また、重量分子量としては、例えば20000〜400000、好ましくは30000〜200000が挙げられる。更に、分子量分布(重量分子量/数平均分子量)としては、例えば1.0〜5.0、好ましくは1.0〜3.0が挙げられる。ここで示す平均分子量、重量分子量、及び分子量分布は、GPCにより測定される値である。
【0053】
また、前記シクロオレフィンコポリマーは、メタロセン触媒を用いて共重合されたものが好適に使用される。メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーは、分子量分布が均一で側鎖の分岐が少なく、強靭で安定したガラス転移温度を有し、ヒートシールを良好に行うことが可能になり、更に熱膨張で破裂する耐熱破裂温度も上昇するという利点がある。また、シーラント層を、前記シクロオレフィンコポリマーと、ポリエチレンやポリプロピレンとのブレンドポリマーにより形成する場合、メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーは、ポリエチレンやポリプロピレンとの相溶性も良好で、均一なブレンド樹脂を形成することができる。ブレンドする樹脂の相溶性が悪いと、延伸加工されたときに界面でのクラックが発生しやすくなり、シール時の熱により界面での剥離が発生し易くなって、ヒートシールや冷却後の折り加工でクラックが入り易くなる傾向を示すが、メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーを使用することにより、ブレンド樹脂を形成する際のこれらの不都合を解消することができる。
【0054】
シーラント層は、前記シクロオレフィンコポリマーのみから形成されていてもよいが、前記シクロオレフィンコポリマーと他の樹脂成分を含むブレンド樹脂から形成されていてもよい。このようなブレンド樹脂の好適な一例として、前記シクロオレフィンコポリマーと、ポリオレフィン及び/又はカルボン酸変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0055】
また、シーラント層は、前記シクロオレフィンコポリマーの単独あるいは異なるメルトフローレートや数分子量や分子量分布のブレンド、さらには上記他の樹脂成分を含むブレンド樹脂の単層、あるいは上記ブレンド樹脂に用いられる樹脂との多層構成を用いることができる。
【0056】
また、シーラント層の厚みとしては、適宜選定することができるが、例えば、2〜2000μm、好ましくは5〜1000μm、更に好ましくは10〜500μmが挙げられる。また、シーラント層を多層化する場合であれば、前記シクロオレフィンコポリマーのみから形成されている層又は前記シクロオレフィンコポリマーと他の樹脂成分を含むブレンド樹脂から形成される層の厚みとしては、例えば0.3〜1500μm、好ましくは0.5〜1000μm、さらに好ましくは1〜400μmが挙げられる。
【0057】
ブレンド樹脂の一成分として使用されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレンポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;ポリメチルペンテン;環状オレフィン等が挙げられる。
【0058】
また、ブレンド樹脂の一成分として使用されるカルボン酸変性ポリオレフィン、及びカルボン酸変性ポリオレフィンの中でも好適な例については、前記接着樹脂層Aで使用されるものと同様である。
【0059】
ブレンド樹脂に使用される前記シクロオレフィンコポリマー以外の樹脂成分の中でも、ヒートシールによって電池内部で生じる短絡を防止する作用、クラックの発生を抑制する作用、及び耐熱破裂温度を上昇させる作用を一層有効に発揮させるという観点から、好ましくは、ポリエチレン、結晶性又は非晶性のポリプロピレン、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー、ポリメチルペンテン、及び環状オレフィンが挙げられる。
【0060】
シーラント層を、前記シクロオレフィンコポリマーと他の樹脂成分を含むブレンド樹脂から形成する場合、これらの樹脂の比率としては、特に制限されないが、例えば、前記シクロオレフィンコポリマー10質量部当たり、他の樹脂成分が1〜90質量部、好ましくは3〜40質量部となる範囲が挙げられる。
【0061】
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
【0062】
まず、基材に、必要に応じて表面が化成処理された金属層を積層させる。基材に、必要に応じて表面が化成処理された金属層を直接積層させる場合には、基材と、予め加熱した当該金属層とを熱圧着させる方法が挙げられる。また、基材に、必要に応じて表面が化成処理された金属層を、接着樹脂層Bを介して積層させる場合には、基材上又は金属層に接着樹脂層Bを形成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層又は基材を積層させて接着樹脂層Bを硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。斯して、基材/必要に応じて設けられる接着樹脂層B/必要に応じて表面が化成処理された金属層からなる積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)が得られる。
【0063】
次いで、積層体Aの金属層上に、接着樹脂層A及びシーラント層を順に積層させる。接着樹脂層A及びシーラント層を積層させる方法としては、例えば、(1)積層体Aの金属層上に、接着樹脂層A及びシーラント層を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着樹脂層Aとシーラント層が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層上にサーマルネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層上に、接着樹脂層Aの樹脂成分を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着樹脂層A上に予めシート状に製膜したシーラント層をサーマルネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層と、予めシート状に製膜したシーラント層との間に、溶融させた接着樹脂層Aを流し込みながら、接着樹脂層Aを介して積層体Aとシーラント層を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)、(5)前記(1)から(4)を組み合わせて貼り合せる方法等が挙げられる。
【0064】
上記のようにして、基材/必要に応じて設けられる接着樹脂層B/必要に応じて表面が化成処理された金属層からなる積層体/接着樹脂層A/シーラント層からなる積層体が形成されるが、当該積層体の必要に応じて設けられる接着樹脂層B及び接着樹脂層Aによる接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜210℃で1〜10秒が挙げられる。
【0065】
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
【0066】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
【0067】
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1〜9及び比較例1〜3
基材層/接着樹脂層B/金属層が順に積層された積層体において、サーマルラミネート法、サンドラミネート法、ドライラミネート法のいずれかの方法で接着層樹脂A及びシーラント層を形成することにより、電池用包装材料を製造した。電池用包装材料の製造条件は、以下に示す通りである。
【0070】
<基材層/接着樹脂層B/金属層が順に積層された積層体の形成>
基材層1として厚み12μの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートを用い、基材層2として厚み15μmのニ軸延伸ナイロンを用いた。また、金属層としては、厚み40μmのアルミニウム(JIS 8021系)の両面を化成処理したものを用いた。金属層の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をロールコート法により金属層の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
【0071】
基材層1と基材層2の積層、及び基材層(基材層1/基材層2の積層体)と金属層の積層はドライラミネーション法で積層させた。具体的には、基材層1上に、ポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤からなる接着樹脂層を厚さ4μmとなるように形成し、基材層2と加圧加熱貼合した後、60℃で24時間のエージング処理を実施し、基材層(基材層1/基材層2の積層体)を得た。基材層の基材層2側に、ポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤からなる接着樹脂層Bを厚さ4μmとなるように形成し、金属層の化成処理面と加圧加熱貼合した後、60℃で48時間のエージング処理を実施し、基材層(基材層1/基材層2)/接着樹脂層B/金属層が順に積層された積層体を得た。
【0072】
<電池用包装材料の製造>
実施例1〜4では、上記基材層/接着樹脂層B/金属層からなる積層体の金属層(化成処理された面)に、接着樹脂層Aとシーラント層をサーマルラミネーション法で貼合することにより積層し、基材層/接着樹脂層B/金属層/接着樹脂層A/シーラント層からなる積層体を形成した。
【0073】
また、実施例5〜7及び比較例1では、上記基材層/接着樹脂層B/金属層からなる積層体の金属層(化成処理された面)に、接着樹脂層Aとシーラント層を共押出し方法で積層し、基材層/接着樹脂層B/金属層/接着樹脂層A/シーラント層からなる積層体を形成した。
【0074】
また、実施例8、9及び比較例2では、シーラント層を予め製膜したフィルムを用意し、上記基材層/接着樹脂層B/金属層からなる積層体の金属層(化成処理された面)に、接着樹脂層Aの構成樹脂を押出しながら、前記シーラント層フィルムを貼合するサンドラミネーション方法で積層し、基材層/接着樹脂層B/金属層/接着樹脂層A/シーラント層からなる積層体を形成した。
【0075】
前記実施例1〜9、比較例1、2では、得られた積層体を一旦冷却した後に、アルミニウム(金属層)を190℃になるまで加熱し、5秒間その温度を保持して熱処理を施すことにより、電池用包装材料を得た。
【0076】
また、比較例3は、記基材層/接着樹脂層B/金属層からなる積層体の金属層(化成処理された面)に、ポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤からなる接着樹脂層A’を厚さ4μmとなるように形成した後に、ドライラミネーション法でシーラント層を貼り合せて積層し、基材層/接着樹脂層B/金属層/接着樹脂層A’/シーラント層からなる積層体を形成し、電池用包装材料を得た。
【0077】
各実施例及び比較例で使用した接着樹脂層Aとシーラント層の構造、組成及び厚みは、以下の通りである。なお、以下に示す「シクロオレフィンコポリマー」は、いずれも、メタロセン系触媒を用いてエチレンとノルボルネンを共重合させることにより得られたポリマーである。また、以下に示す「カルボン酸変性」は、いずれも無水マレイン酸変性である。
[実施例1]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ブロックポリプロピレン(MFR20.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:単層
構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度65℃、MFR0.9、重量分子量/数平均分子量の比2.0)
厚み:10μm
【0078】
[実施例2]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR2.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)と層(2)からなる2層
層(1)の構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度65℃、MFR2.0、重量分子量/数平均分子量の比2.5)
層(1)の厚み:3μm
層(2)の構成樹脂:ランダムプロピレン
層(2)の厚み:25μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(2)が最表面を形成するように積層した。
【0079】
[実施例3]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR8.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)と層(2)からなる2層
層(1)の構成樹脂:ブロックポリプロピレン50重量部、及びシクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度140℃、MFR0.08、重量分子量/数平均分子量の比1.9)50重量部からなるブレンド樹脂
層(1)の厚み:10μm
層(2)の構成樹脂:ランダムプロピレン
層(2)の厚み:15μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(2)が最表面を形成するように積層した。
【0080】
[実施例4]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR8.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)と層(2)からなる2層
層(1)の構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度65℃、MFR2.0、重量分子量/数平均分子量の比2.5)
層(1)の厚み:500μm
層(2)の構成樹脂:ランダムプロピレン
層(2)の厚み:100μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(2)が最表面を形成するように積層した。
【0081】
[実施例5]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性線状低密度ポリエチレン(MFR42.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:単層
構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度65℃、MFR0.9、重量分子量/数平均分子量の比2.0)
厚み:10μm
【0082】
[実施例6]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR8.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:単層
構成樹脂:非晶性プロピレンとエチレンの共重合体90重量部、及びシクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度75℃、MFR2.0、重量分子量/数平均分子量の比2.5)10重量部からなるブレンド樹脂
厚み:20μm
【0083】
[実施例7]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR12.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)と層(2)からなる2層
層(1)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(1)の厚み:10μm
層(2)の構成樹脂:ブロックポリプロピレン3重量部、及びシクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度140℃、MFR0.08、重量分子量/数平均分子量の比1.9)10重量部からなるブレンド樹脂
層(2)の厚み:5μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(2)が最表面を形成するように積層した。
【0084】
[実施例8]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR8.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)、層(2)、層(3)が順に積層された3層
層(1)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(1)の厚み:10μm
層(2)の構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度175℃、MFR0.01、重量分子量/数平均分子量の比1.5)
層(2)の厚み:2μm
層(3)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(3)の厚み:18μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(3)が最表面を形成するように積層した。
【0085】
[実施例9]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ランダムポリプロピレン(MFR 20.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)、層(2)、層(3)が順に積層された3層
層(1)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(1)の厚み:10μm
層(2)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン1量部及びシクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度140℃、MFR0.08、重量分子量/数平均分子量の比1.9)10重量部からなるブレンド樹脂
層(2)の厚み:10μm
層(3)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(3)の厚み:10μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(3)が最表面を形成するように積層した。
【0086】
[比較例1]
接着樹脂層A
構成樹脂:カルボン酸変性ブロックポリプロピレン(MFR8.0)
厚み:20μm
シーラント層
層構造:単層
構成樹脂:ランダムポリプロピレン
厚み:30μm
【0087】
[比較例2]
接着樹脂層A
構成樹脂:ランダムポリプロピレン
厚み:20μm
シーラント層
層構造:下記層(1)、層(2)、層(3)が順に積層された3層
層(1)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(1)の厚み:10μm
層(2)の構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度75℃、MFR2.0、重量分子量/数平均分子量の比2.5)
層(2)の厚み:2μm
層(3)の構成樹脂:ランダムポリプロピレン
層(3)の厚み:18μm
層(1)が接着樹脂層Aと接面し、層(3)が最表面を形成するように積層した。
【0088】
[比較例3]
接着樹脂層A’
構成樹脂:ポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤
厚み:4μm
シーラント層
層構造:単層
構成樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ガラス転移温度75℃、MFR2.0、重量分子量/数平均分子量の比2.5)
厚み:30μm
【0089】
<シクロオレフィンコポリマーの重量分子量/数平均分子量の比及びガラス転移温度の測定>
前記実施例及び比較例で使用したシクロオレフィンコポリマーの重量分子量/数平均分子量の比及びガラス転移温度は、以下の測定条件にて求めた。
以下の条件でGPC法による測定を行って、重量分子量/数平均分子量の比を求めた。
測定装置:GPC 150−CALC(ウォーターズ社製)
カラム:AT−806M/S(SHODEX社製) 2本
測定温度:140℃
サンプル調製:試料約4mgに1,2-ジクロロベンゼン約4mlを加えて、ヒーターで加熱し140℃で1時間かけて溶解させ、不溶分をフィルターで除去した。
【0090】
<ガラス転移温度の測定条件>
ガラス転移温度(Tg)測定は、ISO11357に準拠して行った。
【0091】
試験例:性能評価
上記で得られた各電池用包装材料について、耐久性、短絡性、クラックの有無、耐熱性の評価を行った。具体的な評価方法は、以下に示す通りである。
[電解液耐久性の評価]
金型を用いた塑性加工を行うことにより、各電池用包装材料を深さ6mm、縦横50mm×35mmの凹型に成形した。これに下記に示す組成の混合液3gをシール幅3mmで190℃、2.0MPa、3.0秒のヒートシール条件で密封し、85℃で720時間保存した。保存後に、各電池用包装材料における金属層とシーラント層のデラミネーションの有無を確認した。
混合液の組成:1MのLiPF
6を含む、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(容積比で1:1:1)の混合液。
【0092】
[水蒸気バリア性の評価]
各電池用包装材料を用いて縦横60mm×縦50mmの包装袋を作製し、これに、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートを容積比1:1:1で含む混合液3gを充填し、シール幅3mmとなるようにシール条件は190℃、2.0M、3.0秒で3方シールし密封した。これを60℃、90%RHの恒温恒湿槽に10日間保管して、前記混合液の水分増加量をカールフィッシャー法で測定した。
【0093】
[短絡性の評価]
金型を用いた塑性加工を行うことにより、各電池用包装材料から深さ6mm、縦横50mm×35mmの凹型の成型品を調製した。次いで、所定素材からなるリード線用フィルム(厚み50μm)を電池本体のリード線(ニッケル製、100μmの厚さ、4mm巾、長さ25mm)の所定の位置に巻きつけ後、電池本体を前記の成形品に挿入し、成形された電池用包装材料/リード線/包装材料となるように挟んだ後、その部分を、190℃、2.0MPaでヒートシールした。短絡性の評価は、リード線と電池用包装材料の金属層との短絡が生じるまでの時間を計測した。短絡の有無はテスター(判定条件:印加電圧100V、判定抵抗値2000MΩ)により確認し、さらに断面写真(光学顕微鏡、倍率200倍)によって、リード線と電池用包装材料と金属層の接触の有無を確認した。なお、実施例1〜4、6〜9、及び比較例1〜3の場合には、リード線用フィルムはカルボン酸変性ポリプロピレン製のものを使用し、実施例5の場合には、カルボン酸変性線状低密度ポリエチレン製のものを使用した。
【0094】
[成形でのクラックの有無の評価]
金型を用いた塑性加工を行うことにより、各電池用包装材料を深さ6mm、縦横50mm×35mmサイズの凹型に成形した。各電池用包装材料について、延伸された側面と底面を光学顕微鏡500倍で観察し、クラックの有無を目視で確認した。
【0095】
[シール後、折り加工でのクラックの確認]
金型を用いた塑性加工を行うことにより、各電池用包装材料を深さ6mm、縦横50mm×35mmサイズの凹型に成形した。塑性加工に供した各電池用包装材料において延伸されていない部分(凹部の周囲)と、塑性加工を行っていない各電池用包装材料とをシール幅3mmで190℃、2.0MPa、3.0秒のヒートシール条件でヒートシールした。これを冷却した後、ヒートシール部分に対して直角に折り加工を行い、折り加工を行った部分を光学顕微鏡500倍で観察し、クラックの有無を目視で確認した。
【0096】
[耐熱性の評価]
金型を用いた塑性加工を行うことにより、各電池用包装材料を深さ3mm、縦横50mm×35mmサイズの凹型にに成形した。塑性加工に供した各電池用包装材料において延伸されていない部分(凹部の周囲)と、塑性加工を行っていない各電池用包装材料とをシール幅3mmで190℃、2.0MPa、3.0秒のヒートシール条件でヒートシールした。これを1気圧減圧した状態で昇温速度10℃/分で室温から昇温し、破裂(ヒートシール部分が分離)した時の温度を計測した。
【0097】
[評価結果]
得られた結果を表1に示す。実施例1〜9の電池用包装材料は、いずれも、電解液によるデラミネーションも発生せず、水分増加量も100ppm以下であり、電池用包装材料として求められる基本性能を十分に備えていた。また、実施例1〜9の電池用包装材料では、リードと金属層の短絡時間も10秒以上と長く、成形時のクラック、シール後のクラックも無かった。更に、実施例1〜9の電池用包装材料は、破裂温度も110℃以上と高い状態であった。これに対して、比較例1の電池用包装材料は、短絡時間が短かく、成形時及びシール後の折れでクラックが発生していた。また、比較例2の電池用包装材料は、デラミネーションが発生し、また水分増加量も高く、成形時及びシール後の折れでクラックが発生し、耐熱破裂温度も低かった。更に、比較例3の電池用包装材料では、短絡時間は10秒と長かったが、デラミネーションが発生し、また水分増加量も高く、耐熱破裂温度も低かった。
【0098】
以上の結果から、基材層、金属層、接着樹脂層、及びシーラント層が順次積層された電池用包装材料において、前記接着樹脂層がカルボン酸変性ポリオレフィンを含み、且つ前記シーラント層がエチレンとノルボルネンの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマーを含むことによって、電極と包装材料の金属層との間で生じる短絡を防止でき、しかもクラックの発生を抑制できることが確認された。また、前記構成を有する電池用包装材料は、電解液によるデラミネーションも発生せず、水蒸気バリア性に優れ、密封後の熱膨張による耐熱破裂温度も高く、電池用包装材料として求められる基本性能も十分に備えていることが確認された。
【0099】
【表1】