特許第6015088号(P6015088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015088
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】3相ブラシレスモータの故障判別装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/08 20160101AFI20161013BHJP
【FI】
   H02P6/08
【請求項の数】1
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-94079(P2012-94079)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-223356(P2013-223356A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】井口 浩
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−029462(JP,A)
【文献】 特開2008−199852(JP,A)
【文献】 特開2007−223435(JP,A)
【文献】 特開2011−135692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相ブラスレスモータの各相のコイルに接続された3個のモータ端子と、
前記3相ブラシレスモータの作動を制御するスイッチング素子を有するとともに直流電源の正端子、負端子および前記3個のモータ端子に接続されたモータ駆動回路と、
前記3個のモータ端子の内少なくとも一つの相のモータ端子に接続され分圧されてモニタ装置に接続された電圧モニタ用信号ラインと、
前記負端子と前記モータ端子との間に設けられたプルダウン抵抗と、前記正端子と前記モータ端子との間に設けられたプルアップ用抵抗とを有し、
1個の前記プルアップ用抵抗が前記3個のモータ端子のうちの第1モータ端子に接続され、1個の前記プルダウン用抵抗が前記3個のモータ端子のうちの第2モータ端子に接続され、前記3個のモータ端子のうちの第3モータ端子が前記第1モータ端子および前記第2モータ端子に抵抗を介してそれぞれ接続され、
前記モニタ装置は、前記スイッチング素子の全てがオフしている時に、前記電圧モニタ用信号ラインの電圧に基づいて前記コイルの故障を判別する3相ブラシレスモータの故障判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相ブラシレスモータの各相コイルの断線の故障を判別可能なる3相ブラシレスモータの故障判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
正逆転をスムーズ化、小型化、耐久性の向上するために、例えば車両の電動パワーステアリング、電動オイルポンプ、電動スタビライザー等の制御機器には、3相ブラシレスモータが用いられている。3相ブラシレスモータは、駆動回路から各相のUVWのコイルに順序良く電流を供給することにて、モータを回転し作動する。車両では、この駆動回路と3相ブラシレスモータの3個のコイルとは3相ブラシレスモータの作動を制御可能に電気的に接続されている。
【0003】
3個のコイルは、車両の振動や外部からの引っ張り力などで断線に至る故障がある。断線した場合は、モータが回転できず、制御機器が機能できなくなる。3相ブラシレスモータにおけるこの様な各相のコイルの断線故障を判別するために、例えば特許文献1が開示する技術では、ブラシレスモータの各UVW相の各モータ端子に接続される駆動回路内のスイッチング素子を全てオフ状態にした後、U相又はV相あるいはW相の内の一つのモータ端子に複数の駆動回路の一つに設けられた正端子側のスイッチング素子をオンすることにより電圧を印加して、各モータ端子の端子電圧を取り込むことで、コイルの断線の故障判別を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、仮にU相のコイルが地絡していた場合には、駆動回路の正端子側のスイッチング素子をオンした瞬間に大電流がそのスイッチング素子を介して地絡した線に流れてしまうこととなる。従って、スイッチング素子の損傷の防止又はそのスイッチング素子の上流側に配したヒューズの溶断を防止するためには過大電流を抑制する電流制限回路を追加していた。又、どの相のコイルで断線しているか判別するには、順序立ててU相、V相、W相を切り替えながら各モータ端子の端子電圧をモニタしなければならず、従って、端子電圧をモニタする回路は3つとなり複雑な制御を必要とした。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、3相ブラシレスモータの各相コイルの断線の故障を、電流制限回路を追加することなく、3相ブラシレスモータの停止時に、判別可能なる3相ブラシレスモータの故障判別装置を提供することを目的とする。また、断線の故障判別に加えて、天絡及び地絡の判別が可能な3相ブラシレスモータの故障判別装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置は、3相ブラスレスモータの各相のコイルに接続された3個のモータ端子と、3相ブラシレスモータの作動を制御するスイッチング素子を有するとともに直流電源の正端子、負端子および3個のモータ端子に接続されたモータ駆動回路と、3個のモータ端子の内少なくとも一つの相のモータ端子に接続され分圧されてモニタ装置に接続された電圧モニタ用信号ラインと、負端子と前記モータ端子との間に設けられたプルダウン抵抗と、正端子とモータ端子との間に設けられたプルアップ用抵抗とを有し、1個のプルアップ用抵抗が前記3個のモータ端子のうちの第1モータ端子に接続され、1個のプルダウン用抵抗が前記3個のモータ端子のうちの第2モータ端子に接続され、前記3個のモータ端子のうちの第3モータ端子が前記第1モータ端子および前記第2モータ端子に抵抗を介してそれぞれ接続され、モニタ装置は、スイッチング素子の全てがオフしている時に、電圧モニタ用信号ラインの電圧に基づいてコイルの故障を判別することを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置の発明によれば、3相ブラシレスモータを作動させる駆動回路のスイッチング素子の全てがオフ中に、3相ブラシレスモータの各相コイルの断線の故障を判別できるため、電流制限回路を追加する必要がなくなった。又その故障判別も、3個のモータ端子のうち少なくとも一つのモータ端子の電圧を検出すれば足りるものであるため、順序立ててU相、V相、W相を切り替えながら故障判別をする必要がなくなった。3個のモータ端子のうちの第1モータ端子に接続された1個のプルアップ用抵抗と、3個のモータ端子のうちの第2モータ端子に接続された1個のプルダウン用抵抗と、3個のモータ端子のうちの第3モータ端子と第1モータ端子介在した抵抗と、第3モータ端子と第2モータ端子間に介在した抵抗とにて構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1第1の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図2】3相ブラシレスモータを回転作動させるモータ駆動回路のスイッチング素子の作動変化を示すタイムチャートである。
図3第1の参考例にかかる3相ブラシレスモータの故障判別装置における電圧モニタ用信号ラインの電圧Wvの変化を示す特性図である。
図4マイクロコンピュータにて実行される故障判別処理を表すフローチャートである。
図5第2の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図6第3の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図7】本発明の実施形態に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図8第4の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図9第5の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図10第6の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
図11第7の参考例に係る3相ブラシレスモータの故障判別装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0020】
(第1の参考例
図1には、車両の電動パワーステアリング、電動オイルポンプ、電動スタビライザー等の制御機器に使用される3相ブラシレスモータ10の制御装置の全体が示され、第1の参考例の故障判別装置は、コントロールユニット11内に組み込まれている。
【0021】
3相ブラシレスモータ10は、U相のコイルLu、V相のコイルLv、W相のコイルLwと計3つのコイルがY結線されている。なお、コイルの結線は、この他デルタ結線も可能である。各相のコイルに接続されたモータ端子として、U相のコイルLuと接続されたモータ端子12U、V相のコイルLvと接続されたモータ端子12V、W相のコイルLw接続されたモータ端子12Wの3つを有する。
【0022】
3相ブラシレスモータ10を回転制御するために、各モータ端子12U、12V、12Wに対応して3つのモータ駆動回路13U、13V、13Wを備える。モータ駆動回路13Uは、直流電源なる12ボルトの車載バッテリ14の正端子から正の電源電圧Vbが供給された電源ライン15と車載バッテリ14の負端子と同電位のグランドラインGNDとの間に一対のスイッチング素子なるトランジスタTr1、Tr4を有する。2つのトランジスタTr1とTr4との接続点は、モータ端子12Uに接続されている。
【0023】
モータ駆動回路13Vは、電源ライン15とグランドラインGNDとの間に一対のスイッチング素子なるトランジスタTr2、Tr5を有する。2つのトランジスタTr2とTr5との接続点は、モータ端子12Vに接続されている。
【0024】
モータ駆動回路13Wは、電源ライン15とグランドラインGNDとの間に一対のスイッチング素子なるトランジスタTr3、Tr6を有する。2つのトランジスタTr3とTr6の接続点は、モータ端子12Wに接続されている。
【0025】
3相ブラシレスモータ10は、図2に示す如くのタイムチャートに基づく、スイッチング素子なる6つのトランジスタTr1〜Tr6のオン、オフ作動即ちモータ駆動回路13U、13V、13W内の正端子側のスイッチング素子(Tr1、Tr2、Tr3)を順にオンするとともに、他の駆動回路内の負端子側のスイッチング素子(Tr4、Tr5、Tr6)を順にデュティ駆動することで、3相ブラシレスモータ10の回転を制御するものである。
【0026】
図1に示すように、第1の参考例の3相ブラシレスモータの故障判別装置では、抵抗値が異なる2つのプルアップ抵抗31、32と、1つのプルダウン抵抗33を用いたものである。モータ端子12Uと直流電源14の正端子に接続されて電源電圧Vbなる電源ライン15との間には、プルアップ抵抗31が設けられている。モータ端子12Vと電源ライン15との間には、プルアップ抵抗32が設けられている。モータ端子12WとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗33が設けられている。
【0027】
図1を参照して、モータ端子12Wには、電圧モニタ用信号ライン20が接続されて、モータ端子12Wにおける電圧をモニタする。モータ端子12Wの電圧は、電圧モニタ用信号ライン20を通じて、抵抗21と抵抗22とにて分圧された後、ダイオードD1とD2との電圧クランプを介してコントローラ23のA/D変換器に接続される。なお、電圧モニタ用信号ライン20に分圧用の抵抗21と抵抗22を介在させて、モータ端子12Wの電圧例えば電源ライン15の電圧Vbなる12ボルトからグランドラインGNDなる0ボルトをコントローラ20が読み込み可能な電位なる通常5ボルト〜0ボルトの範囲に分圧している。
【0028】
抵抗21と抵抗22にて分圧された電圧モニタ信号ライン20の電圧を、コントローラ23が読み込み可能な電位通常5ボルト〜0ボルトの範囲に安定化するために、ダイオードD1は5ボルトの安定化電源Vccと電圧モニタ信号ライン20とに接続されている。そして、ダイオードD2は、電圧モニタ用信号ライン20とグランドラインGNDとに接続されている。
【0029】
電圧モニタ信号ライン20の電圧は、3相ブラシレスモータ10を制御する例えばマイクロコンピュータにて構成されたコントローラ23に入力され、コントローラ23が3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwの故障を判別するモニタ装置として用いられる。
【0030】
コントロールユニット11は、イグニッションスイッチIGSWがオンの間、直流電源14と接続されて作動可能である。又、コントローラ23は、電源ライン15の電源電圧Vbの値を読み込み、定期的に更新している。従って、電源電圧Vbが仮に変動しても、実際の電源電圧Vbを認識して演算に使用しているため、電源電圧Vbの変動に基づく支障もない。
【0031】
次に、第1の参考例の故障判別装置において、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lw、Lwの故障を判別するために、コントローラ23のモニタ装置にて実行される故障判別処理について説明する。
【0032】
コントローラ23による3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lw、Lwの故障の判別は、3相ブラシレスモータ10が回転していない時、即ち、イグニションスイッチIGSWがオン状態でかつモータ駆動回路13U、13W、13Wの全てのスイッチング素子なるトランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフしている状態にて行われる。
【0033】
この時、3相ブラシレスモータ10は、抵抗31、32、33からしか電圧供給されないことから、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwが正常な場合には、下記の数式1にて求まる値となる。
【0034】
下記の表1に数式1の各物理量の実用的な値の例を示す。なお、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwの抵抗は、数キロオームに設定されたR31、R32、R33に対して十分小さい数オーム以下である。
【0035】
【数1】
【0036】
【表1】
【0037】
しかし、例えば、3相ブラシレスモータ10のU相のコイルLuが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式2にて示される値に変化する。
【0038】
【数2】
【0039】
なお、3相ブラシレスモータ10のV相のコイルLvが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式3にて示される値に変化する。
【0040】
【数3】
【0041】
なお、3相ブラシレスモータ10のW相のコイルLwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式4にて示される値に変化する。
【0042】
【数4】
【0043】
従って、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧(参照 数式1)に対して、全て変化した電圧(参照 数式2〜数式4)となる。
【0044】
電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、具体的には、表1に基づき、図3に示す如くとなり、どの相のコイルが断線しているか判別できる。このように、第1の参考例の故障判別装置においては、電圧モニタ用信号ライン20からの信号レベルからコントローラ23のモニタ装置にて各相のコイルLu、Lv、Lwの故障判別を行う。
【0045】
次に、コントローラ23にて実際に実行される故障判別処理について図4のフローチャートを用いて説明する。この故障判別処理は、コントローラ23の起動後、故障判別が完了するまで繰り返し実行される処理である。処理が開始されると、先ずステップS1にて、イグニションスイッチIGSWがオンされているか否かを判断する。
【0046】
そして、ステップS1にて、イグニションスイッチIGSWがオンしていると判断された場合には、ステップS2に移行してモータ駆動回路13U、13V、13Wのスイッチング素子のトランジスタTr1、トランジスタTr2、トランジスタTr3、トランジスタTr4、トランジスタTr5、トランジスタTr6の全てがオフされているか否かを判断する。
【0047】
そして、ステップS2にて、トランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフされていると判断された場合には、ステップS3に移行して、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwの断線の故障判別処理を行う。
【0048】
ステップS3にて行われる故障判別処理は、前述の如く、図3に示した電圧モニタ用信号ライン20からの信号レベルを、コントローラ23のモニタ装置へ取り込み、モニタ装置はその信号レベルにて、3相ブラシレスモータ10のコイルLu、Lv、Lwの内どのコイルで断線しているか判別を行うものである。
【0049】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10のコイルLu、Lv、Lwの内いずれかのコイルが断線している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、断線したコイルの点検、修理又は交換を行うことが可能である。
【0050】
なお、結線の間違いにて3相ブラシレスモータ10のモータ端子12U、12V、12Wの何れか一つでも、車載バッテリ14の正端子に誤接続される所謂天絡が生じる故障もある。この様な天絡の故障の場合には、モータ端子12Wの電圧Wvは、電源電圧Vbに変化する。
【0051】
天絡が生じた場合におけるこのモータ端子12Wの電圧Wvにおける電源電圧Vbは、前述の如く、数1、数2、数3及び数4に示した各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧、U相のコイルLuが断線した場合、V相のコイルLvが断線した場合、W相のコイルLwが断線した場合におけるモータ端子12Wの電圧Wvの何れとも相違する。従って、モータ端子12Wの電圧Wvをモニタすることにより、天絡の故障も判別できる。
【0052】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10が天絡している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、正しい結線とすることが可能である。
【0053】
なお、3相ブラシレスモータ10はその配線を保護している被覆が破れ、電線が車両の金属ボデー(バッテリのマイナス端子に接続されている)と接触する所謂地絡が生じる故障もある。3相ブラシレスモータ10が地絡した故障の場合には、モータ端子12Wの電圧Wvは、ゼロボルトに変化し、同様にモータ端子12Uの電圧Uv及びモータ端子12Vの電圧Vvもゼロボルトに変化する。
【0054】
モータ端子12Wの電圧Wvは、地絡の場合もゼロボルトであり、又、コイルLwが断線した場合も、前述の数4に示した如くゼロボルトとなる。
【0055】
しかしながら、モータ端子12Uの電圧Uv及びモータ端子12Vの電圧Vvは、地絡の場合がゼロボルトであるに対し、コイルLwが断線した場合には、モータ端子12Uの電圧Uv及びモータ端子12Vの電圧Vvは、ともにVbとなり、モータ端子12Wの電圧Wvのゼロボルトとは相違する。
【0056】
従って、モータ端子12Wの電圧Wvがゼロボルトの場合に、故障がコイルLwの断線か地絡かを判別するには、次いで、モータ端子12Uの電圧Uv及びモータ端子12Vの電圧Vvの内の少なくとも何れか一方でVbかゼロボルトかを検知すれば足りるものである。又、その検知は、モータ端子12U及びモータ端子12Vの何れか一方にモータ端子12Wと同様に電圧モニター用信号ライン20を接続した構成にて可能である。その検知結果として、モータ端子12Uの電圧Uv又はモータ端子12Vの電圧VvがVbであることを検知した場合には、コイルLwの断線と判別できる。又モータ端子12Uの電圧Uv又はモータ端子12Vの電圧Vvがゼロボルトであることを検知した場合には地絡と判別できる。
【0057】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10の地絡も判別できるとともに地絡している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、適切な配線とすることが可能である。
【0058】
(第2の参考例
次に、図5は、第2の参考例の3相ブラシレスモータの故障判別装置の構成を示す構成図である。なお、図5において、図1と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。そして、以下では、第1の参考例と相違する点のみ説明する。
【0059】
図5に示すように、第2の参考例の3相ブラシレスモータ10の故障判別装置では、1つのプルアップ抵抗41と、抵抗値が異なる2つのプルダウン抵抗42、43を用いたものである。電圧モニタ用信号ライン20は、モータ端子12Uに接続している。
【0060】
図5を参照して、モータ端子12Uと直流電源14の正端子に接続されて電源電圧Vbなる電源ライン15との間には、プルアップ抵抗41が設けられている。モータ端子12VとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗42が設けられている。モータ端子12WとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗43が設けられている。
【0061】
第2の参考例における3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lw、Lwの故障の判別も、第1の参考例の場合と同様に、3相ブラシレスモータ10が回転していない時、即ち、イグニションスイッチIGSWがオン状態でかつモータ駆動回路13U、13W、13Wの全てのスイッチング素子なるトランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフしている状態にて行われる。
【0062】
この時、3相ブラシレスモータ10は、抵抗41、42、43からしか電圧供給されないことから、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Uの電圧Uvは、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwが正常な場合には、下記の数式5によって求まる。なお、R41はプルアップ抵抗41の抵抗値、又、R42、R43はプルダウン抵抗42、43の各抵抗値を表す。
【0063】
【数5】
【0064】
しかし、例えば、3相ブラシレスモータ10のU相のコイルLuが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Uの電圧Uvは、下記の数式6にて示される値となる。
【0065】
【数6】
【0066】
なお、3相ブラシレスモータ10のV相のコイルLvが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Uの電圧Uvは、下記の数式7にて示される値に変化する。
【0067】
【数7】
【0068】
なお、3相ブラシレスモータ10のW相のコイルLwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Uの電圧Uvは、下記の数式8にて示される値に変化する。
【0069】
【数8】
【0070】
従って、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Uの電圧Uvは、各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧(参照 数式5)に対して、全て変化した電圧(参照 数式6〜数式8)となるため、どの相のコイルが断線しているか判別できる。
【0071】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10のコイルLu、Lv、Lwの内いずれかのコイルが断線している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、断線したコイルの点検、修理又は交換を行うことが可能である。
【0072】
なお、3相ブラシレスモータ10はその配線を保護している被覆が破れ、電線が車両の金属ボデー(バッテリのマイナス端子に接続されている)と接触する所謂地絡が生じる故障もある。3相ブラシレスモータ10が地絡した故障の場合には、モータ端子12Uの電圧Wvは、ゼロボルトに変化する。
【0073】
地絡が生じた場合におけるこのモータ端子12Uの電圧Uvにおけるゼロボルトは、前述の如く、数5、数6、数7及び数8に示した各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧、U相のコイルLuが断線した場合、V相のコイルLvが断線した場合、W相のコイルLwが断線した場合におけるモータ端子12Uの電圧Uvの何れとも相違する。従って、モータ端子12Uの電圧Uvをモニタすることにより、地絡の故障も判別できる。
【0074】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10が地絡している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、正しい結線とすることが可能である。
【0075】
なお、結線の間違いにて3相ブラシレスモータ10のモータ端子12U、12V、12Wの何れか一つでも、車載バッテリ14の正端子に誤接続される所謂天絡が生じる故障もある。この様な天絡の故障の場合には、モータ端子12Uの電圧Uvは、電源電圧Vbとなり、同様にモータ端子12Vの電圧Vv及びモータ端子12Wの電圧Wvも電源電圧Vbとなる。
【0076】
モータ端子12Uの電圧Uvは、天絡の場合も電源電圧Vbであり、又、コイルLuが断線した場合も、前述の数6に示した如く電源電圧Vbとなる。
【0077】
しかしながら、モータ端子12Vの電圧Vv及びモータ端子12Wの電圧Wvは、天絡の場合が電源電圧Vbであるに対し、コイルLuが断線した場合には、モータ端子12Vの電圧Vv及びモータ端子12Wの電圧Wvは、ともにゼロボルトとなり、モータ端子12Uの電圧Uvの電源電圧Vbとは相違する。
【0078】
従って、モータ端子12Uの電圧Uvが電源電圧Vbの場合に、故障がコイルLuの断線か天絡かを判別するには、次いで、モータ端子12Vの電圧Vv及びモータ端子12Wの電圧Wvの内の少なくとも何れか一方でVbかゼロボルトかを検知すれば足りるものである。又、その検知は、モータ端子12V及びモータ端子12Wの何れか一方にモータ端子12Uと同様に電圧モニター用信号ライン20を接続した構成にて可能である。その検知結果として、モータ端子12Vの電圧又はモータ端子12Wの電圧Wvがゼロボルトであることを検知した場合には、コイルLwの断線と判別できる。又モータ端子12Vの電圧Vv又はモータ端子12Wの電圧Wvが電源電圧Vbであることを検知した場合には天絡と判別できる。
【0079】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10の天絡も判別できるとともに天絡している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、適切な配線とすることが可能である。
【0080】
(第3の参考例
次に図6は、第3の参考例の3相ブラシレスモータの故障判別装置の構成を示す構成図である。なお、図6において、図1と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。そして、以下では、第1の参考例と相違する点のみ説明する。
【0081】
図6に示すように、第3の参考例の3相ブラシレスモータの故障判別装置では、抵抗値が異なる3つのプルアップ抵抗51、52、53と、抵抗値が異なる3つのプルダウン抵抗54、55、56を用いたものである。電圧モニタ用信号ライン20は、モータ端子12Vに接続している。
【0082】
図6を参照して、モータ端子12Uと直流電源14の正端子に接続されて電圧Vbなる電源ライン15との間には、プルアップ抵抗51が設けられている。モータ端子12Vと電源ライン15との間には、プルアップ抵抗52が設けられている。モータ端子12Wと電源ライン15との間には、プルアップ抵抗53が設けられている。
【0083】
モータ端子12UとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗54が設けられている。モータ端子12VとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗55が設けられている。モータ端子12WとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗56が設けられている。
【0084】
第3の参考例における3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lw、Lwの故障の判別も、第1の参考例の場合と同様に、3相ブラシレスモータ10が回転していない時、即ち、イグニションスイッチIGSWがオン状態でかつモータ駆動回路13U、13W、13Wの全てのスイッチング素子なるトランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフしている状態にて行われる。
【0085】
この時、3相ブラシレスモータ10は、抵抗51〜抵抗56からしか電圧供給されないことから、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Vの電圧Vvは、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwが正常な場合には、下記の数式9によって求まる値となる。なお、R51、R52、R53はプルアップ抵抗51、52、53の抵抗値、又、R54、R55、R56はプルダウン抵抗54、55、56の各抵抗値を表す。
【0086】
【数9】
【0087】
しかし、例えば、3相ブラシレスモータ10のU相のコイルLuが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Vの電圧Vvは、下記の数式10にて示される値に変化する。
【0088】
【数10】
【0089】
なお、3相ブラシレスモータ10のV相のコイルLvが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Vの電圧Vvは、下記の数式11にて示される値に変化する。
【0090】
【数11】
【0091】
なお、3相ブラシレスモータ10のW相のコイルLwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Vの電圧Vvは、下記の数式12にて示される値に変化する。
【0092】
【数12】
【0093】
従って、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Vの電圧Vvは、各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧(参照 数式9)に対して、全て変化した電圧(参照 数式10〜数式12)となるため、どの相のコイルが断線しているか判別できる。
【0094】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10のコイルLu、Lv、Lwの内いずれかのコイルが断線している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、断線したコイルの点検、修理又は交換を行うことが可能である。
【0095】
なお、3相ブラシレスモータ10はその配線を保護している被覆が破れ、電線が車両の金属ボデー(バッテリのマイナス端子に接続されている)と接触する所謂地絡が生じる故障もある。3相ブラシレスモータ10が地絡した故障の場合には、モータ端子12Vの電圧Vvは、ゼロボルトに変化する。
【0096】
一方、結線の間違いにて3相ブラシレスモータ10のモータ端子12U、12V、12Wの何れか一つでも、車載バッテリ14の正端子に誤接続される所謂天絡が生じる故障もある。この様な天絡の故障の場合には、モータ端子12Vの電圧Vvは、電源電圧Vbに変化する。
【0097】
モータ端子12Vの電圧Vvに関し、3相ブラシレスモータ10に地絡が生じた場合におけるモータ端子12Vの電圧Vvのゼロボルト及び3相ブラシレスモータ10に天絡に天絡が生じた場合におけるモータ端子12Vの電圧Vvの電源電圧Vbは、前述の如く、数9、数10、数11及び数12に示した各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧、U相のコイルLuが断線した場合、V相のコイルLvが断線した場合、W相のコイルLwが断線した場合におけるモータ端子12Vの電圧Vvの何れとも相違する。従って、モータ端子12Vの電圧Vvをモニタすることにより、各相のコイルの断線並びに地絡及びの天落の故障も判別できる。
【0098】
この判別に基づき、地絡あるいは天絡している場合には、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、適切な配線とすることが可能である。
【0099】
本発明の実施形態)
次に図7は、本発明の実施形態の3相ブラシレスモータの故障判別装置の構成を示す構成図である。なお、図7において、図1と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。そして、以下では、第1の参考例と相違する点のみ説明する。
【0100】
図7を参照して、モータ端子12Uと直流電源14の正端子に接続されて電圧Vbなる電源ライン15との間には、プルアップ抵抗61が設けられている。モータ端子12WとグランドラインGNDとの間には、プルダウン抵抗64が設けられている。モータ端子12Vとモータ端子12U間には抵抗62が接続され、又、モータ端子12Vとモータ端子12W間には抵抗63が接続されている。
【0101】
本発明の実施形態における3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lw、Lwの故障の判別も、第1の参考例の場合と同様に、3相ブラシレスモータ10が回転していない時、即ち、イグニションスイッチIGSWがオン状態でかつモータ駆動回路13U、13W、13Wの全てのスイッチング素子なるトランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフしている状態にて行われる。
【0102】
電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvに基づき、各相のコイルの断線をモニタすることにより、コイルの断線及び地絡及び天絡を含めた3相ブラシレスモータ10の異常を検知して、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することが可能である。
【0103】
なお、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧とV相のコイルが断線の場合とも同じ電圧となる。次いで、モータ端子12Uの電圧Uv及びモータ端子12Vの電圧Vvの検知に基づき、3相ブラシレスモータ10各相のコイルの断線並びに地絡及びの天落の故障も判別でき、適切な修理が可能となる。
【0104】
(第参考例
次に、図8は、第参考例の3相ブラシレスモータ10の故障判別装置の構成を示す構成図である。なお、図8において、図1と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。そして、以下では、図1にて示した第1の参考例と相違する点のみ説明する。
【0105】
図8に示すように、第参考例の3相ブラシレスモータ10の故障判別装置では、図1に示す第1の参考例と同様に、抵抗値が異なる2つのプルアップ抵抗31、32と、1つのプルダウン抵抗33を有し、電圧モニタ用信号ライン20をモータ端子12Wに接続し、そしてバイパス抵抗Rxを用いたものである。このバイパス抵抗Rxは、一端側が電源ライン15に接続され、又その他端側がモータ端子12Wに接続されている。
【0106】
参考例における3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwの故障の判別も、第1の参考例の場合と同様に、3相ブラシレスモータ10が回転していない時、即ち、イグニションスイッチIGSWがオン状態でかつモータ駆動回路13U、13W、13Wの全てのスイッチング素子なるトランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフしている状態にて行われる。
【0107】
この時、3相ブラシレスモータ10は、抵抗31、32、33及びRxからしか電圧供給されないことから、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwが正常な場合には、下記の数式13にて求まる値となる。
【0108】
【数13】
【0109】
しかし、例えば、3相ブラシレスモータ10のU相のコイルLuが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式14にて示される値に変化する。
【0110】
【数14】
【0111】
なお、3相ブラシレスモータ10のV相のコイルLvが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式15にて示される値に変化する。
【0112】
【数15】
【0113】
なお、3相ブラシレスモータ10のW相のコイルLwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式16にて示される値に変化する。
【0114】
【数16】
【0115】
従って、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧(参照 数式13)に対して、全て変化した電圧(参照 数式14〜数式16)となる。
【0116】
なお、3相ブラシレスモータ10はその配線を保護している被覆が破れ、電線が車両の金属ボデー(バッテリのマイナス端子に接続されている)と接触する所謂地絡が生じる故障もある。3相ブラシレスモータ10が地絡した故障の場合には、モータ端子12Wの電圧Wvは、ゼロボルトに変化する。
【0117】
一方、結線の間違いにて3相ブラシレスモータ10のモータ端子12U、12V、12Wの何れか一つでも、車載バッテリ14の正端子に誤接続される所謂天絡が生じる故障もある。この様な天絡の故障の場合には、モータ端子12Wの電圧Wvは、電源電圧Vbに変化する。
【0118】
モータ端子12Wの電圧Wvに関し、3相ブラシレスモータ10に地絡が生じた場合におけるモータ端子12Wの電圧Wvのゼロボルト及び3相ブラシレスモータ10に天絡に天絡が生じた場合におけるモータ端子12Wの電圧Wvの電源電圧Vbは、前述の如く、数13、数14、数15及び数16に示した各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧、U相のコイルLuが断線した場合、V相のコイルLvが断線した場合、W相のコイルLwが断線した場合におけるモータ端子12Vの電圧Vvの何れとも相違する。従って、モータ端子12Wの電圧Wvをモニタすることにより即ち他のモータ端子12U及びモータ端子12Vの電圧をモニタすることなく、どの相のコイルが断線したかの判別並びに地絡及びの天落の故障も判別可能である。
【0119】
この判別に基づき、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、断線したコイルの点検、修理又あるは交換又は適切な配線とすることが可能である。
【0120】
(第参考例
次に、図9は、第参考例の3相ブラシレスモータ10の故障判別装置の構成を示す構成図である。なお、図9において、図5と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。そして、以下では、図5にて示した第2の参考例と相違する点のみ説明する。
【0121】
図9に示すように、第参考例の3相ブラシレスモータ10の故障判別装置では、図2に示す第2の参考例と同様に、1つのプルアップ抵抗41と抵抗値が異なる2つのプルダウン抵抗42、43とを有し、電圧モニタ用信号ライン20をモータ端子12Wに接続し、そしてバイパス抵抗Rxを用いたものである。このバイパス抵抗Rxは、一端側が電源ライン15に接続され、又その他端側がモータ端子12Wに接続されている。
【0122】
参考例における3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lw、Lwの故障の判別も、第2の参考例の場合と同様に、3相ブラシレスモータ10が回転していない時、即ち、イグニションスイッチIGSWがオン状態でかつモータ駆動回路13U、13W、13Wの全てのスイッチング素子なるトランジスタTr1〜Tr6のすべてがオフしている状態にて行われる。
【0123】
この時、3相ブラシレスモータ10は、抵抗41、42、43及びRxからしか電圧供給されないことから、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwが正常な場合には、下記の数式17にて求まる値となる。
【0124】
【数17】
【0125】
しかし、例えば、3相ブラシレスモータ10のU相のコイルLuが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式18にて示される値に変化する。
【0126】
【数18】
【0127】
なお、3相ブラシレスモータ10のV相のコイルLvが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式19にて示される値に変化する。
【0128】
【数19】
【0129】
なお、3相ブラシレスモータ10のW相のコイルLwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、下記の数式20にて示される値に変化する。
【0130】
【数20】
【0131】
従って、3相ブラシレスモータ10の各相のコイルLu、Lv、Lwが断線すると、電圧モニタ用信号ライン20が接続されたモータ端子12Wの電圧Wvは、各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧(参照 数式17)に対して、全て変化した電圧(参照 数式18〜数式20)となる。
【0132】
なお、3相ブラシレスモータ10はその配線を保護している被覆が破れ、電線が車両の金属ボデー(バッテリのマイナス端子に接続されている)と接触する所謂地絡が生じる故障もある。3相ブラシレスモータ10が地絡した故障の場合には、モータ端子12Wの電圧Wvは、ゼロボルトに変化する。
【0133】
一方、結線の間違いにて3相ブラシレスモータ10のモータ端子12U、12V、12Wの何れか一つでも、車載バッテリ14の正端子に誤接続される所謂天絡が生じる故障もある。この様な天絡の故障の場合には、モータ端子12Wの電圧Wvは、電源電圧Vbに変化する。
【0134】
モータ端子12Wの電圧Wvに関し、3相ブラシレスモータ10に地絡が生じた場合におけるモータ端子12Wの電圧Wvのゼロボルト及び3相ブラシレスモータ10に天絡に天絡が生じた場合におけるモータ端子12Wの電圧Wvの電源電圧Vbは、前述の如く、数13、数14、数15及び数16に示した各相のコイルLu、Lv、Lwが正常な場合の電圧、U相のコイルLuが断線した場合、V相のコイルLvが断線した場合、W相のコイルLwが断線した場合におけるモータ端子12Vの電圧Vvの何れとも相違する。従って、モータ端子12Wの電圧Wvをモニタすることにより即ち他のモータ端子12U及びモータ端子12Vの電圧をモニタすることなく、どの相のコイルが断線したかの判別並びに地絡及びの天落の故障も判別可能である。
【0135】
この3相ブラシレスモータ10の故障の判別に基づき、3相ブラシレスモータ10の制御を中止することができ、次いで、断線したコイルの点検、修理又あるは交換又は適切な配線とすることが可能である。
【0136】
(第参考例
本発明の実施形態、第1の参考例〜第参考例において、プルアップ抵抗及びバイパス抵抗は、直流電源14の正端子に接続されて電源電圧Vbなる電源ライン15に接続した例を示したが、変動し得る電源電圧Vbとの接続に代えて安定化された定電圧と接続することも可能である。図1に示した第1の参考例における3相ブラシレスモータ10の故障判別装置を定電圧に接続した例をその代表として、本第参考例図10に基づいて説明する。なお、図10において、図1と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。そして、以下では、第1の参考例と相違する点のみ説明する。
【0137】
図10において、直流電源なる車載バッテリ14の正端子から正の電源電圧Vb例えば12ボルトが供給された電源ライン15と接続した安定化電源70による安定化された定電圧Va例えば8ボルトの定電圧ライン71が設けられる。そして、プルアップ抵抗31、32を定電圧ライン71と接続した構成である。
なお、図8に示す第参考例及び図9に示す第5の参考例におけるバイパス抵抗Rxにおいても、同様に定電圧ライン71に接続するものとする。従って、各モータ端子12U、12V、12Wには、安定化された定電圧Vaに基づく電圧が発生するため、コントローラ23は、電圧モニタ用信号ライン20からの信号の読み込みに際し、電源ライン15の電源電圧Vbの変動分を考慮する必要がないものである。
【0138】
(第参考例
本発明の実施形態、第1の参考例〜第参考例において、プルダウン抵抗は、車載バッテリ14の負端子と同電位のグランドラインGNDに接続した例を示したが、所定電圧Vx例えば2ボルトの電圧ラインと接続することも可能である。図1に示した第1の参考例における3相ブラシレスモータ10の故障判別装置のプルダウン抵抗33を所定電圧Vx例えば2ボルトの電圧ライン80に接続した例をその代表として、本第参考例図11に示す。なお、図11において、図1と同じものについては、その図と同一の符号を付しているため説明を省略する。
【0139】
なお、本発明の実施形態、第1の参考例〜第参考例において、コントロールユニット11は、イグニッションスイッチIGSWがオンの間、直流電源14と接続されて作動可能である。
【0140】
本発明の実施形態、第1の参考例〜第参考例において、3相ブラシレスモータはコイルをY結線した例を示したが、本発明は、コイルをデルタ結線した3相ブラシレスモータにも適用可能である。
【0141】
また、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。
【符号の説明】
【0142】
10・・・3相ブラシレスモータ、Lu,Lv,Lw・・・各相のコイル、12U,12V,12W・・・モータ端子、13U,13V,13W・・・モータ駆動回路、20・・・電圧モニタ用信号ライン、33,42,54,55,56,64・・・プルダウン抵抗、31,32,41,51,52,53,61・・・プルアップ抵抗、62,63・・・抵抗、Rx・・・バイパス抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11