特許第6015089号(P6015089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015089
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】梁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   E04B2/86 601C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-94108(P2012-94108)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-221342(P2013-221342A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−014008(JP,U)
【文献】 特開2002−004412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/86
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単板状をなすコンクリート部にトラス筋の基部を埋設したプレキャストコンクリートと、
梁筋の鉄筋組を構成する主筋及びあばら筋とを備え、
前記トラス筋は、波形状をなすラチス筋と、ラチス筋の波頭部に接合された第1端筋と、各ラチス筋の波底部に接合された第2端筋とを備え、前記ラチス筋、第1端筋及び第2端筋を長方形状のコンクリート部に延在させ、前記第1端筋をコンクリート部の外部に位置させるとともに、前記第2端筋をコンクリート部に埋設し、
前記あばら筋は、前記第1端筋と前記コンクリート部との間に挿通され一方が開口した第1分割片と、前記第1分割片の開口を覆い他方が開口された第2分割片とを有しており、
前記プレキャストコンクリートによって、梁の底面が構成されていることを特徴とする梁。
【請求項2】
一対のラチス筋の波底部間に間隔を設けるとともに、波頭部間に前記第1端筋を挟持したことを特徴とする請求項に記載の
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の躯体として用いることに適するプレキャストコンクリートを用いた梁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に建物の梁などにはプレキャストコンクリートが用いられる。
このようなプレキャストコンクリートが特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1のプレキャストコンクリートは、U形状の樋状体の内側に四角リング状の補強筋が列設されている。
【0003】
特許文献2のプレキャストコンクリートは、複数枚のコンクリート板または樋状のコンクリート板よりなるPC梁本体の内側に四角リング状のあばら筋が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−29424号公報
【特許文献2】特開2004−124538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、特許文献1及び特許文献2に記載された構成は、立体形状の樋状体あるいはPC梁本体に加えて、四角環状の補強筋やあばら筋が設けられているため、大型で、嵩張るものであり、運搬や保管に不便で、施工コストを押し上げる要因のひとつになった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、全体形状がコンパクトになって、運搬や保管に手間がかからないプレキャストコンクリートを用いた梁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、単板状をなすコンクリート部にトラス筋の基部を埋設したプレキャストコンクリートと、梁筋の鉄筋組を構成する主筋及びあばら筋とを備え、前記トラス筋は、波形状をなすラチス筋と、ラチス筋の波頭部に接合された第1端筋と、各ラチス筋の波底部に接合された第2端筋とを備え、前記ラチス筋、第1端筋及び第2端筋を長方形状のコンクリート部に延在させ、前記第1端筋をコンクリート部の外部に位置させるとともに、前記第2端筋をコンクリート部に埋設し、前記あばら筋は、前記第1端筋と前記コンクリート部との間に挿通され一方が開口した第1分割片と、前記第1分割片の開口を覆い他方が開口された第2分割片とを有しており、前記プレキャストコンクリートによって、梁の底面が構成されていることを特徴としている。
従って、この発明においては、プレキャストコンクリートが単純な単板状のコンクリート部とトラス筋とで構成されているため、嵩張らない。このため、運搬や保管に手間がかからず、それに要するスペースも小さくなる。従って、施工コストを低減できる。
【0009】
前記の構成において、一対のラチス筋の波底部間に間隔を設けるとともに、波頭部間に前記第1端筋を挟持することが望ましい
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、全体形状がコンパクトになって、運搬や保管に手間がかからず、施工コストを低減できる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)及び(b)は第1実施形態の鉄筋コンクリート構造物の施工方法を順に示す概略構成図。
図2】(a)及び(b)は図1(b)に続く鉄筋コンクリート構造物の施工方法を順に示す概略構成図。
図3図1(a)の組み付け方法における梁筋の組み上げ状態を拡大して示す要部側面図。
図4図3の4−4線における断面図。
図5図3の梁におけるトラス筋を拡大して示す部分斜視図。
図6図4の梁の一部を分解して示す断面図。
図7】(a)は第1実施形態の組み付け方法における梁の第1変更例を示す断面図。(b)は同梁の一部を分解して示す断面図。
図8】(a)は第1実施形態の組み付け方法における梁の第2変更例を示す断面図。(b)は同梁の一部を分解して示す断面図。
図9】(a)は第1実施形態の組み付け方法における梁の第3変更例を示す断面図。(b)は同梁の一部を分解して示す断面図。
図10】(a)は第1実施形態の組み付け方法における梁の第4変更例を示す断面図。(b)は同梁の一部を分解して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、鉄筋コンクリート構造体の施工方法を説明する。図1(a),(b)及び図2(a),(b)に示すように、建物の下層階をN(整数)階とし、その上層階をN+1階とする。前記図1(a)はN階の柱51の柱筋21が施工された状態を示す。この状態において、まず、梁筋22が建物の外部において組立てられる。次いで、図1(b)に示すように、前記梁筋22がN階の柱筋21の上端間の位置,すなわちN+1階の梁52の位置に設置される。図面に示す61はフープ筋を示す。
【0014】
ここで、前記梁52のコンクリート打設用の型枠の底部は、図3及び図4に示す単板よりなるプレキャストコンクリート(以下、単にPCという)31よって形成される。前記梁筋22は、建物の外部近辺においてこのPC31上に設置された後、PC31とともにクレーン等で吊り上げられて、前記梁52の位置に設置される。24はPC31(PC31が存在しない場合は梁用の型枠の底枠)を支える支保工を示す。
【0015】
また、これと相前後して、図1(b)に示すように、N+1階の梁筋22で囲まれた水平構面にハーフプレキャストコンクリートよりなる床部材としての床板25を支保工23を用いて敷設する。この床板25は、床の型枠を構成する。
【0016】
次いで、図2(a)(b)に示すように、N階において、柱51間の壁の鉄筋(図示しない)の配置、柱筋21の周囲及び壁筋の両側の型枠26の設置、N+1階の梁筋22の側部における側型枠(図示しない)の設置、柱筋21間の壁の鉄筋(図示しない)の配置及びその壁の型枠の設置を行なう。
【0017】
また、床板25の敷設完了に続いて、N+1階において、床板25上への床部材としての鉄筋の配置及び柱筋21の配置を行う。
なお、N階の壁の鉄筋の配置,壁の型枠の設置,柱の型枠の設置、N+1階の床板25上への鉄筋の配置,N+1階の柱筋21の配置の少なくともふたつを同時並行して行なうことが工期短縮の面から好ましい。あるいは、N+1階の梁筋22及び床板25の設置と同時に、N階の壁の鉄筋の配置,壁の型枠の設置,柱の型枠の設置、N+1階の床板25上への鉄筋の配置の少なくともひとつを並行して行なってもよい。さらには、N階の柱筋21の配置をN+1階の梁筋22及び床板25の設置と同時に行なってもよい。
【0018】
その後、図2(a)または(b)の状態において、N階の柱51及び壁、N+1階の梁52及び床板25上へのコンクリートの打設を行う。梁52の型枠の底板を構成する前記PC31は埋め殺されて梁52のコンクリートの底面を形成する。
【0019】
前記のように、この鉄筋コンクリート構造物の施工方法によれば、少なくとも、N+1階の梁52の鉄筋工事及びN+1階の床の型枠工事を先行して実施する。
次に、前記梁52の構成及び施工方法について詳細に説明する。
【0020】
梁52は、図3図6に示すように、梁筋22と、その底面に取り付けた梁底型枠を兼ねる単板(平板)状のPC31とを備えている。
PC31の長方形状のコンクリート部31aには、鉄筋よりなるトラス筋33が立設されている。図5に示すように、この各トラス筋33は、波形状をなすとともに、コンクリート部31aの長手方向に延在する複数対(実施形態では2対)のラチス筋33aと、両ラチス筋33aの波頭部間に接合されるとともに、コンクリート部31aの長手方向に延在する第1端筋としての1本の上端筋33bと、各ラチス筋33aの波形の下端内側に接合されるとともに、コンクリート部31aの長手方向に延在する第2端筋としての下端筋33cと、下端筋33c間に跨って所定間隔おきに架設状態で接合され、コンクリート部31aの短手方向に延在する複数本の架設筋33dとより構成されている。そして、各ラチス筋33aの波形の下端部、各下端筋33c及び各架設筋33dがコンクリート部31a内に埋設されている。
【0021】
図3図4及び図6に示すように、梁筋22の鉄筋組32は、梁筋22の長さ方向へ平行に延びる複数本の主筋34と、それらの主筋34を取り囲む状態で所定間隔おきに配置され、複数のあばら筋35とより結束線による結束状態で構成されている。各あばら筋35は、PC31上のトラス筋33の内側に挿通されるとともに、上方に向かって開口し、横バンドを構成する下側の第1分割片35Aと、その第1分割片35Aの開口端を覆うように下方に向かって開口する上側の第2分割片35Bとによって分割構成されている。第1分割片35Aの開口端の両側には、両側上端に位置する主筋34に係止可能な係止部35aが折り曲げられている。
【0022】
トラス筋33を有するPC31は工場で製造されて施工現場に搬入される。また、鉄筋組32は、施工現場の鉄筋コンクリート構造物の外部において、分割片35A,35BをPC31のトラス筋の内側に通しながらトラス筋33に上に配置される。
【0023】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 実施形態においては、N+1階の梁52の鉄筋工事及びN+1階の床の型枠工事を他の工事に先行して実施する。従って、N+1階の梁52の型枠の設置、N階の壁の鉄筋工事及び壁及び柱の型枠の設置と、N+1階における床の鉄筋工事、柱51の鉄筋工事とを並行して同時に行うことが可能となり、工期の短縮を図ることができる。
【0024】
(2) 実施形態においては、梁筋22を有する鉄筋コンクリート構造物の施工に際して、梁筋22を構成する鉄筋組32を構造体の外部において組立てた後、梁筋22を柱筋21間に設置するようにしている。このため、梁筋22をクレーン等により吊り下げながら柱筋21間に簡単に設置することができる。これに対して、梁筋22を梁の位置において配筋する場合は、空中作業や型枠内の狭いスペースにおける作業になるため、その作業は煩雑である。よって、本実施形態においては、梁筋22を構成する鉄筋組32の設置、及び柱筋21間に対する梁筋22の配置の作業を能率良く行うことができて、工期の短縮を図ることができる。また、施工現場で鉄筋を配筋することで、大きな嵩高の鉄筋組32をトラック等の輸送手段を用いて輸送する必要がないため、そのための手間や費用を削減できる。従って、本実施形態によれば、建物の施工コストを低減できる。
【0025】
(3) この実施形態においては、前記梁の底面がPC31により構成されている。このため、PC31の上部側に鉄筋組32を設置することにより、PC31を型枠として利用して、梁52の成形を容易に行うことができ、施工コストの低減に寄与する。
【0026】
(4) この実施形態においては、PC31が単純な平板状のコンクリート部31aとトラス筋33とで構成されているため、嵩張らない。このため、運搬や保管に手間がかからず、それに要するスペースも小さくなる。従って、この点からも施工コストを低減できる。
【0027】
(変更例)
次に、前記実施形態の第1〜第4変更例について説明する。
図7(a)及び(b)に示す第1変更例においては、前記実施形態の場合とほぼ同様に、鉄筋組32を構成するあばら筋35が、上方に向かって開口する下側の第1分割片35Aと、下方に向かって開口する上側の第2分割片35Bとに分割して構成されている。第1分割片35Aの開口端の両側には、両側の下から2段目に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35aが折り曲げられている。第2分割片35Bの開口端の両側には、両側下端に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35bが折り曲げられている。
【0028】
図8(a)及び(b)に示す第2変更例においては、前記第1変更例の場合とほぼ同様に、鉄筋組32を構成するあばら筋35が、上方に向かって開口する下側の第1分割片35Aと、下方に向かって開口する上側の第2分割片35Bとに分割して構成されている。第1分割片35Aの開口端の両側には、両側の上から2段目に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35aが折り曲げられている。第2分割片35Bの開口端の両側には、両側の下から2段目に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35bが折り曲げられている。
【0029】
図9(a)及び(b)に示す第3変更例においては、鉄筋組32を構成するあばら筋35が、直線状をなす下側の第1分割片35Aと、下方に向かって開口する上側の第2分割片35Bとに分割して構成されている。第1分割片35Aの両端縁には、両側下端に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35aが折り曲げられている。第2分割片35Bの開口端の両側には、両側下端に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35bが折り曲げられている。
【0030】
図10(a)及び(b)に示す第4変更例においては、鉄筋組32を構成するあばら筋35が、直線状をなす一側の第1分割片35Aと、一側方に向かって開口する他側の第2分割片35Bとに分割して構成されている。第1分割片35Aの両端縁には、一側の上下両端に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35aが折り曲げられている。第2分割片35Bの開口端の上下には、一側の上下両端に位置する一対の主筋34と係止可能な係止部35bが折り曲げられている。
【符号の説明】
【0031】
26…型枠、31…プレキャストコンクリート、31a…コンクリート部、32…鉄筋組、33…トラス筋、33a…ラチス筋、52…梁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10