(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015093
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/224 20060101AFI20161013BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20161013BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
H01G4/24 301K
H01G4/32 301F
H01G4/32 311Z
H01G1/02 F
H01G1/02 M
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-98971(P2012-98971)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-229390(P2013-229390A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】八木 光春
【審査官】
田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−052826(JP,A)
【文献】
実開昭57−113432(JP,U)
【文献】
実開昭56−004255(JP,U)
【文献】
実開昭57−150941(JP,U)
【文献】
実開昭63−172125(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/224
H01G 2/10
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子が収納される収納部から開口部に向けて開口面積を狭めた係止壁部を持つケースと、
前記コンデンサ素子が挿入された前記ケースの前記収納部に充填され、前記コンデンサ素子の一部または全部を被覆して前記収納部内に封止する封止樹脂層と、
前記コンデンサ素子に接続された端子が取り付けられ、前記封止樹脂層に覆われる段部を備える端子板と、
を備え、
前記封止樹脂層が前記係止壁部により前記ケース内に係止され、
前記端子板が前記段部を前記ケース内の前記封止樹脂層内に埋没固定された、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
さらに、前記端子板の前記段部に前記封止樹脂層を挿通させる樹脂貫通部を備える、
請求項1に記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに封止樹脂の充填により封止したコンデンサに関し、たとえば、乾式の金属化フィルムコンデンサなどのコンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクス分野において、たとえば、高出力電源の平滑回路などには、金属化フィルムコンデンサが使用される。斯かる用途では、高耐電圧、大容量の金属化フィルムコンデンサが求められている。斯かる金属化フィルムコンデンサでは、コンデンサ素子にポリプロピレンフィルムにアルミニウムなどを蒸着した金属化フィルムを使用し、絶縁油を含浸している。
【0003】
コンデンサ素子に含浸する絶縁油に可燃性絶縁油を用いると、コンデンサ素子が燃えやすいという不都合がある。このような湿式に対し、乾式の金属化フィルムコンデンサでは、コンデンサ素子と接続した端子板とともにコンデンサ素子がケース内に封止樹脂により固定されている。乾式では絶縁油を用いていないので、湿式のような欠点はない。
【0004】
コンデンサの樹脂封止に関し、コンデンサ素子を収容したケースに封止樹脂を充填し、この封止樹脂内に端子支持板を設置することが知られている(たとえば、特許文献1)。金属蒸着電極を形成した誘電体フィルムを用いたコンデンサ素子の素子端面にメタリコンにより電極取出し部を形成し、この電極取出し部と電極端子とをリード線によって接続することが知られている(たとえば、特許文献2、3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭56−16926号公報
【特許文献2】実開平7−29829号公報
【特許文献3】特開2008−270329号公報
【特許文献4】特開2009−277828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コンデンサ素子を金属ケースに入れ封止樹脂によって金属ケース内に封止したコンデンサでは、異常サージ電圧などによるコンデンサ素子の膨張やガスが発生すると、金属ケースから封止樹脂やコンデンサ素子に突出する方向に応力が作用する場合がある。この応力が金属ケースと封止樹脂との密着力を超えると、金属ケースから封止樹脂を離脱させ、金属ケースから封止樹脂とともにコンデンサ素子が突出するという課題がある。突出させないまでも、金属ケース内のコンデンサ素子などの膨張が金属ケースを変形させるという課題がある。
【0007】
斯かる課題は、金属ケースだけでなく、ケースと封止樹脂とが別部材であれば、ケースと封止樹脂との密着性が低い場合にはケースから封止樹脂やコンデンサ素子を突出させるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、ケースと封止樹脂層との密着強度を高めコンデンサの信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が収納される収納部から開口部に向けて開口面積を狭めた係止壁部を持つケースと、前記コンデンサ素子が挿入された前記ケースの前記収納部に充填され、前記コンデンサ素子の一部または全部を被覆して前記収納部内に封止する封止樹脂層と、
前記コンデンサ素子に接続された端子が取り付けられ、前記封止樹脂層に覆われる段部を備える端子板と、を備え、
前記封止樹脂層が前記係止壁部により前記ケース内に係止され、前記端子板が前記段部を前記ケース内の前記封止樹脂層内に埋没固定されている。
【0011】
上記コンデンサにおいて、前記コンデンサ素子は、金属化フィルムコンデンサ素子であってもよい。
【0012】
上記コンデンサにおいて、さらに、前記端子板の前記段部に前記封止樹脂層を挿通させる樹脂貫通部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0015】
(1) ケース内に充填されてコンデンサ素子を被覆する封止樹脂層が、収納部から開口部に向けて開口面積を狭められた係止壁部によりケース内に係止されてケース内に保持することができる。
【0016】
(2) 封止樹脂層のケース内保持力が高められ、飛び出しなどの不都合を回避することができる。
【0017】
(3) 封止樹脂層による封止強度を高め、コンデンサの信頼性を高めることができる。
【0018】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施の形態に係るコンデンサを示す縦断面図である。
【
図2】端子面部から見たコンデンサを示す平面図である。
【
図3】
図1に示すコンデンサのIII 部分を拡大して示す断面図である。
【
図4】第2の実施の形態に係るコンデンサ部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、第1の実施の形態に係るコンデンサの縦断面を示している。
図2は、コンデンサの端子面を示している。
図3は、
図1のIII 部分を拡大して示している。
【0022】
このコンデンサ2はたとえば、金属化フィルムコンデンサである。このコンデンサ2には金属ケース4が用いられている。この金属ケース4はケースの一例であり、たとえば、アルミニウムケースである。この金属ケース4には、収納部6と開口部8と係止壁部10とを備えている。収納部6は、コンデンサ素子12を収納する容器部分である。一例としてのコンデンサ素子12は円筒状である。このコンデンサ素子12を収納する収納部6は、コンデンサ素子12を収納可能な円筒体であり、底面部14を備えている。
【0023】
開口部8は、コンデンサ素子12を挿通可能なたとえば、円孔である。係止壁部10は、収納部6から開口部8に向けて開口面積を狭めたテーパ状筒部である。金属ケース4は、アルミニウム板を一体成形したものであり、係止壁部10は収納部6から開口部8に向かって傾斜する傾斜壁面を成形したものである。
【0024】
金属ケース4の底面部14の外面中央にはボス部16が形成され、このボス部16の周囲にはねじ部18が形成されている。このねじ部18は、回路基板やシャーシなどの実装部材にコンデンサ2を固着する際に用いられる。なお、金属ケース4の底面部14の外面中央に形成されたボス部16の内側にねじ部18を形成してもよい。
【0025】
金属ケース4の開口部8側に端子板20が設置されている。この端子板20は、絶縁性合成樹脂などの絶縁板で形成されている。この端子板20にはインサート成形により端子22−1、22−2が固定されている。各端子22−1、22−2は、端子板20の内外に貫通している。この端子板20の最長縁部には段部24が形成されている。
【0026】
端子22−1とコンデンサ素子12の素子端面26−1は、リード線31を用いて半田により接続されている。端子22−2には、コンデンサ素子12の中空部30から引き出された端子リード線32が接続されている。この端子リード線32はコンデンサ素子12の素子端面26−2に形成された電極部に半田によって接続されている。
【0027】
コンデンサ素子12は、金属化フィルムの巻回により形成された素子体である。金属化フィルムには、基材として誘電体フィルムが用いられる。この誘電体フィルムは、少なくとも片面にアルミニウムなどの電極用金属が蒸着されて金属化されている。誘電体フィルムにはたとえば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの合成樹脂フィルムが用いられる。
【0028】
コンデンサ素子12は素子端面26−1、26−2を備える。この実施の形態では素子端面26−1には正極側電極部、素子端面26−2には負極側電極部が形成されている。素子端面26−1にはコンデンサ素子12の正極体、素子端面26−2には負極体が露出している。このように各素子端面26−1、26−2は異なる電極で構成されている。コンデンサ素子(素子体)12には正極体側の金属化フィルムの幅と負極体側の金属化フィルムの幅とを異ならせてもよい。これに対し、金属化フィルムを形成する誘電体フィルムを同一幅にし、誘電体フィルムに対する金属蒸着幅(範囲)を異ならせることにより、素子端面26−1側にたとえば、正極体、素子端面26−2側に負極体が露出するように構成してもよい。つまり、一方の素子端面26−1または素子端面26−2に異なる電極体が露出しないように構成する。
【0029】
このように正極体または負極体からなる素子端面26−1、26−2にはメタリコンにより電極金属を蒸着し、素子端面26−1には正極側電極部、素子端面26−2には負極側電極部が形成されている。正極側電極部および負極側電極部を構成する電極金属には、金属化フィルムの誘電体フィルムに蒸着する電極金属と同一でもよいが、異ならせてもよい。この場合、素子端面26−1、26−2には、半田付けなど、接続の容易性から半田付け可能な金属を用いればよい。この半田付け可能な金属にはたとえば、亜鉛、錫合金などの金属を用いればよい。その他、半田付け可能な金属にはたとえば、アルミニウムと亜鉛の合金、アルミニウムと錫合金、亜鉛と錫合金などを用いてもよい。
【0030】
素子端面26−1と端子22−2との間には絶縁手段としてたとえば、ポリエチレンフィルム36が設置されている。このポリエチレンフィルム36により、素子端面26−1側と端子22−2との絶縁性が確保されている。
【0031】
この実施の形態では、コンデンサ素子12の素子端面26−1側に端子板20が設置されている。この端子板20の外面は、金属ケース4の開口部8の縁面に一致させてある。そして、金属ケース4には封止樹脂が充填され、封止樹脂層38が形成されている。封止樹脂には高度な絶縁性を有する樹脂が使用され、絶縁性の高い封止樹脂層38を形成している。この封止樹脂層38は、コンデンサ素子12の外周面および素子端面26−1、26−2を覆うとともに、中空部30を満たしている。さらに、封止樹脂層38は、金属ケース4の内壁面に密着状態である。
【0032】
斯かる構成では、
図3に示すように、金属ケース4の係止壁部10が収納部6より開口部8に向けて狭められているので、封止樹脂層38は金属ケース4内に強固に保持されている。金属ケース4は、開口部8側に窄められているので、機械的強度が増しており、封止樹脂層38にコンデンサ2の中心軸方向に応力が作用しても、その応力に対向して封止樹脂層38を金属ケース4内に保持することができる。
【0033】
封止樹脂層38は、端子板20の周囲と金属ケース4の内壁との間に介在し、しかも、
図2および
図3に示すように、端子板20の段部24にも回り込んで硬化しているので、端子板20の封止樹脂層38への保持強度を高めている。
【0035】
(1) 金属ケース4、コンデンサ素子12および端子板20の形成工程
【0036】
この形成工程では、金属ケース4、コンデンサ素子12および端子板20のそれぞれを個別に形成する。
【0037】
金属ケース4の開口部8と収納部6との間には係止壁部10を形成する。
【0038】
(2) コンデンサ素子12と端子板20の接続工程
【0039】
金属ケース4にコンデンサ素子12を収納する前に、コンデンサ素子12と端子板20の各端子22−1、22−2とを個別に電気的に接続する。この接続により、コンデンサ素子12と端子板20とを一体化する。
【0040】
このコンデンサ素子12を金属ケース4に収納し、金属ケース4内にあるコンデンサ素子12の素子端面26−1側に端子板20を設置する。
【0042】
金属ケース4には、封止樹脂を充填し、金属ケース4内にコンデンサ素子12および端子板20を封止樹脂層38の硬化によって固定させる。
【0044】
(1) 金属ケース4と封止樹脂層38の密着性を維持助長することができる。コンデンサ素子12が異常サージ電圧の印加などにより発火するような稀な状態に至った場合にも、コンデンサ素子12を包み込んだ封止樹脂層38が金属ケース4から突出するような事態を避けることができる。
【0045】
(2) 係止壁部10は、金属ケース4の開口端をケース中心に向かって折曲させた折曲部であり、斯かる折曲部によって形成できる。これにより、コンデンサ素子12や封止樹脂層38が飛び出るといった不都合を防止できる。
【0046】
(3) コンデンサ素子12に何らかの異常が生じ、金属ケース4の外部方向への圧力がコンデンサ素子12や封止樹脂層38に加わった場合にも、コンデンサ素子12や封止樹脂層38の外部方向への移動を押さえ込み、封止状態を維持することが可能である。
【0047】
(4) 金属ケース4と端子板20との間に形成される隙間に封止樹脂層38が充填されるので、端子板20が封止樹脂層38に挟み込まれた状態となり、封止樹脂層38と端子板20との密着性を向上させることができる。これにより、金属ケース4と封止樹脂層38との密着性が高められる。
【0049】
(1)
図4のAに示すように、端子板20の段部24に厚肉部40に沿って貫通孔42を形成してもよい。この貫通孔42は樹脂貫通部の一例である。このような貫通孔42を形成すれば、封止樹脂層38が貫通孔42内にも形成される。この貫通孔42内の封止樹脂層38は他の部分の封止樹脂層38と一体化し、端子板20の封止樹脂層38内の固定強度を高められる。
【0050】
また、貫通孔42に代えて金属ケース4の内壁との間に溝部を形成してもよい。
【0051】
(2) 上記実施の形態では、係止壁部10を円錐状面または傾斜面で形成したが、
図4のBに示すように、金属ケース4の中心軸方向に突出する湾曲突部44で形成してもよい。このような湾曲突部44によっても、金属ケース4内に封止樹脂層38を保持することができ、保持強度を強化することができる。
【0053】
(1) 上記実施の形態では、コンデンサとして金属化フィルムコンデンサを例示したが、本発明は電解コンデンサなどのコンデンサにも適用でき、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0054】
(2) 上記実施の形態では、コンデンサ素子12を封止樹脂層38で被覆しているが、被覆の形態は一部であってもよいし、全部であってもよい。
【0055】
(3) 上記実施の形態では、金属ケース4を例示したが、金属ケース4に代え、樹脂ケースであってもよい。
【0056】
(4) 上記実施の形態では、コンデンサ素子12や端子板20の収納前の金属ケース4に係止壁部10を予め形成することを例示しているが、係止壁部10の形成順序は変更してもよい。係止壁部10が形成されていない金属ケース4にコンデンサ素子12および端子板20を収納した後、金属ケース4の開口縁部を折り曲げて係止壁部10を金属ケース4に形成してもよい。このようにすれば、係止壁部10の折り曲げ間隔や折り曲げ加工の自由度が高められる。つまり、端子板20の長さに対して、係止壁部10の間隔を小さくでき、端子板20の上面に係止壁部10を重ねることができ、封止樹脂層38の保持強度を高めることができる。しかも、折り曲げ後の金属ケース4の開口径を端子板20の長さより小さくできるなど、コンデンサの小型化にも寄与する。
【0057】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のコンデン
サは、封止樹脂を用いてコンデンサ素子を封止樹脂とともにケースに強固に固定でき、封止樹脂やコンデンサ素子の飛び出しなどの不都合を回避でき、コンデンサの信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0059】
2 コンデンサ
4 金属ケース
6 収納部
8 開口部
10 係止壁部
12 コンデンサ素子
14 底面部
16 ボス部
18 ねじ部
20 端子板
22−1、22−2 端子
24 段部
26−1、26−2 素子端面
30 中空部
32 端子リード
36 ポリエチレンフィルム
38 封止樹脂層
40 厚肉部
42 貫通孔
44 湾曲突部