【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合型吸収式ヒートポンプ装置は、エンジンの排ガスが流通する排ガス流路部と、
吸収液と希釈剤との混液を前記排ガスにより加熱する再生部を持ち、前記再生部において加熱された前記混液を気相状の前記希釈剤と液相状の前記吸収液とに分離する再生器と、
クーラントが流通する冷却経路を持ち、前記再生器で得られた気相状の前記希釈剤と前記クーラントとを熱交換させることで前記希釈剤を凝縮させて液相状の前記希釈剤を得る凝縮器と、
前記凝縮器で得られた液相状の前記希釈剤を蒸発させて気相状の前記希釈剤を得る蒸発器と、
前記再生器で得られた液相状の前記吸収液と前記蒸発器で得られた気相状の前記希釈剤とを接触させることにより、前記吸収液に前記希釈剤を吸収させて前記混液を得るとともに得られた前記混液を前記再生器に供給する吸収器と、
前記冷却経路に流通する前記クーラントと外気とを熱交換させることで前記クーラントを冷却する冷却器と、を持ち、
前記再生部は、
前記排ガス流路部に連絡し前記排ガスが流入する交換部と、前記交換部と熱的に接続され前記混液が流通する混液流路部と、を持ち、前記排ガスと前記混液とを熱交換させることにより前記混液を加熱するとともに前記排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を得る排熱回収部と、
前記排熱回収部で得られた前記凝縮水を前記冷却器にて蒸発させる冷却部と、を持つものである。
【0007】
本発明の複合型吸収式ヒートポンプ装置は、再生器、凝縮器、蒸発器および吸収器を持ち一般的な吸収式ヒートポンプに相当する部分(以下、特に断りのない場合、単に吸収式ヒートポンプと略する)と、排ガスの流路たる排ガス流路部と、を持ち、吸収式ヒートポンプにおける再生部に、排ガスの排熱を回収するための機構(排熱回収部、冷却部)を一体化したものである。排熱回収部においては、排ガスの顕熱により吸収式ヒートポンプの混液(吸収液と希釈剤との混和液)を加熱するとともに、混液により排ガスを冷却することで、排ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて温熱(凝縮熱;潜熱)を回収し、吸収式ヒートポンプを動作させるのに必要な混液の加熱工程に用いることができる。
【0008】
また、ここで水蒸気が凝縮されてなる凝縮水は、冷却部によって冷却器に供給され蒸発する。このとき生じる冷熱(気化熱;潜熱)により、冷却器の冷却作用が増強される。つまり本発明においては、排ガスの排熱として、排ガス全体の顕熱、排ガスに含まれる水の潜熱(凝縮熱および気化熱)の3種を利用し、これらの排熱を吸収式ヒートポンプにて活用している。したがって本発明の複合型吸収式ヒートポンプ装置によると、エンジン排熱の回収効率を向上させることが可能であり、ひいてはエンジンおよび吸収式ヒートポンプを含む装置全体(例えば車両、家庭用発電システム等)の熱効率を向上させることが可能である。
【0009】
本発明の複合型吸収式ヒートポンプ装置は下記の(1)〜(5)の何れかを備えるのが好ましく、複数を備えるのがより好ましい。
(1)前記排熱回収部は、前記凝縮水の出口となる凝縮水流出口と、該凝縮水流出口を開閉可能な開閉弁とを持ち、
前記開閉弁は、前記排熱回収部内における前記凝縮水の量が所定以下になったときに前記凝縮水流出口を閉じる。
(2)前記排熱回収部は、前記凝縮水の流通経路内に、前記排ガスに含まれ前記凝縮水に溶解している酸性成分を除去するためのフィルタ部を持つ。
(3)前記冷却部は、前記凝縮水を前記冷却器に輸送する輸液要素を持ち、
前記輸液要素は、毛細管現象により前記凝縮水を輸送する。
(4)前記冷却器は、前記外気を取入れるためのファンを持ち、
前記冷却部は、前記凝縮水を前記冷却器に輸送する輸液要素を持ち、
前記輸液要素は、前記ファンの動圧により前記凝縮水を前記冷却器に輸送する。
(5)車両用の複合型吸収式ヒートポンプ装置であり、
外気を取入れる吸気ダクトを持ち、
前記冷却部は、前記凝縮水を前記冷却器に輸送する輸液要素を持ち、
前記輸液要素は、走行時に前記吸気ダクトにおいて生じる空気の流体圧によって前記凝縮水を前記冷却器に輸送する。