特許第6015134号(P6015134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6015134-包装材料 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015134
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20161013BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20161013BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B32B15/08 F
   B32B27/00 A
   B32B9/00 A
   B65D65/40 D
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-122951(P2012-122951)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-248743(P2013-248743A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克伸
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−086876(JP,A)
【文献】 特開2008−001111(JP,A)
【文献】 特開2010−023238(JP,A)
【文献】 特開2003−155465(JP,A)
【文献】 特開2007−126627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 30/00−33/38
B65D 65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、透明バリア層と合成樹脂層を有する第1の基材層、金属バリア層と合成樹脂層を有する第2の基材層、及びシーラント層を有する包装材料であって、
該第1の基材層と該第2の基材層とは、透明バリア層と金属バリア層が対向するように積層されており、
該シーラント層は、エチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とを有し、且つ、
該シーラント層と第1又は第2の基材層とは、シーラント層中のエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と第1又は第2の基材層中の合成樹脂層が対向するように積層されていることを特徴とする、上記包装材料。
【請求項2】
前記シーラント層は、エチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層であることを特徴とする、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
透明バリア層は、酸化珪素、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムよりなる群から選択される無機酸化物から形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装材料。
【請求項4】
金属バリア層は、アルミニウム、銅、亜鉛、金及び銀並びにその合金よりなる群から選択される金属または合金から形成されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項5】
エチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とは、共押出コーティングにより積層されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、食品等の内容物に含有される有効成分の吸着量が低減された非吸着性の包装材料に関し、より詳細には、内容物の吸着量が低減することができ、且つ、遮光性、ガスバリア性、ヒートシール性に優れる包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋や蓋材等の包装材の最内層には、ヒートシール性に優れるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のコポリマー樹脂が使用されている。これらの樹脂は、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができるが、種々の有機化合物を吸着し易いことが知られている。したがって、これらの樹脂を最内層、すなわち内容物と接する層として有する包装材は、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装には不適であり、あらかじめ内容物中に有効成分を多めに含ませる等の対策が必要である。また、上記の樹脂は遮光性やガスバリア性に劣ることから、上記樹脂を用いて包装材料を形成する場合、例えば、バリア層としてアルミニウム箔などを設ける必要があるが、前記バリア性層とこれと隣接する層との間に層間剥離(デラミネーション)が生じ、実用に耐えることができない。
【0003】
そのため、シーラント層に使用する材料として、ヒートシール性を有しながら、有効成分を吸着しにくいものの開発がなされている。代表的には、アクリロニトリル系樹脂からなる非吸着性シーラント層を最内層とする包装材が使用されている(特許文献1)。しかしながら、アクリロニトリル系樹脂は、ヒートシール性が悪く、また高価であるため、より好ましい非吸着性シーラントの開発が求められている。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2には、最内層が、アルミニウム箔又は無機物の蒸着膜で形成される非吸着性包装材が開示されている。前記包装材は、前記アルミニウム箔や蒸着膜に部分的に接着性樹脂層を形成することで製袋して使用されている。接着性樹脂層としては、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂などが開示されている。しかしながら、このような包装材は、その製造工程が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−132946号公報
【特許文献2】特開平10−45176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決して、有機化合物成分を吸着しにくくした、すなわち非吸着性に優れ、且つ、良好な遮光性、ガスバリア性、ヒートシール性を有する包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、透明バリア層と合成樹脂層を有する第1の基材層、金属バリア層と合成樹脂層を有する第2の基材層、及びシーラント層を有する包装材料であって、該第1の基材層と該第2の基材層とは、透明バリア層と金属バリア層が対向するように積層されており、該シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE、密度0.900〜0.940g/cm3)層又はエチレン・メタアクリル酸共重
合樹脂(EMAA)層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とを有し、且つ、該シーラント層と第1又は第2の基材層とは、シーラント層中の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層又はエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と第1又は第2の基材層中の合成樹脂層が対向するように積層されていることを特徴とする、上記包装材料が、上述の目的を達成することを見出した。
【0008】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、透明バリア層と合成樹脂層を有する第1の基材層、金属バリア層と合成樹脂層を有する第2の基材層、及びシーラント層を有する包装材料であって、
該第1の基材層と該第2の基材層とは、透明バリア層と金属バリア層が対向するように積層されており、
該シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層又はエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とを有し、且つ、
該シーラント層と第1又は第2の基材層とは、シーラント層中の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層又はエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と第1又は第2の基材層中の合成樹脂層が対向するように積層されていることを特徴とする、上記包装材料。
2.前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなり、該直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層は、アンカーコート層を介して第1又は第2の基材層中の合成樹脂層に積層されていることを特徴とする、上記1に記載の包装材料。
3.アンカーコート層が、不飽和カルボン酸又はその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記第1の基材層又は第2の基材層の合成樹脂層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成されたものであることを特徴とする、上記2に記載の包装材料。
4.アンカーコート層が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層であることを特徴とする、上記2に記載の包装材料。
5.前記シーラント層は、エチレン・メタアクリル酸共重合樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層であることを特徴とする、上記1に記載の包装材料。
6.透明バリア層は、酸化珪素、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムよりなる群から選択される無機酸化物から形成されることを特徴とする、上記1〜5のいずれかに記載の包装材料。
7.金属バリア層は、アルミニウム、銅、亜鉛、金及び銀並びにその合金よりなる群から選択される金属または合金から形成されることを特徴とする、上記1〜6のいずれかに記載の包装材料。
8.直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とは、共押出コーティングにより積層されることを特徴とする、上記1〜7のいずれかに記載の包装材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物を含む包装材用シーラント層は、種々の有機化合物、例えばl−メントールやサリチル酸メチル等の薬効成分を吸着しにくい。また、上記のとおり、主成分として含まれる環状ポリオレフィン系樹脂が高い分子間力を発揮するため、分子間の距離が近い密な表面構造を有する。したがって、低分子量成分の溶出を抑制できるため、保香性にも優れ、また包装材の最内層を形成するのに十分なヒートシール性を示す。
【0010】
また、一般的に、環状ポリオレフィン系樹脂は、その溶融成膜時に、高い分子間力が働
き、ポリマー間で凝集を引き起こすことが知られている。その結果、膜の至る所で樹脂が凝集して瘤状のゲル塊を形成し、均一な膜表面を得ることが難しい。そして、この傾向は、インフレーション法による成膜時には一層顕著になり、該法により得られる環状ポリオレフィン系樹脂膜は、その表面全体に無数のゲル塊が発生する。
【0011】
しかしながら、本発明に従って、環状ポリオレフィン系樹脂層をLLDPE層やEMAA層と隣接させて一緒に製膜することによって、環状ポリオレフィン系樹脂の分子同士の不均一な凝集が抑制される。したがって、本発明の包装材料のシーラント層は、製膜が容易であり、均質で、良好な透明性を有する美麗な層を形成することができる。また、インフレーション法による高速製膜時にも、ゲル塊の発生を抑えることができる。
【0012】
このような本発明の包装材料において、環状ポリオレフィン系樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂の高い分子間力に基づいて、分子間の距離が近い密な表面構造を形成しており、またLLDPE層やEMAA層は、該環状ポリオレフィン系樹脂層と高い層間密着性を発揮し、該環状ポリオレフィン系樹脂層に良好な製膜安定性を付与している。このような構造を有する本発明の包装材料は、内容物中の成分を吸着しにくく、すなわち非吸着性に優れている。
【0013】
また、本発明の包装材料を形成するシーラント層は、良好なヒートシール性を示し、幅広いシール温度範囲でヒートシールが可能であり、低温でのヒートシールでも十分なシール強度を発揮する。したがって、加工が容易であり、樹脂酸化臭等の発生が少ない。そして、この包装材料を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が最内層となるように製袋して得られる包装袋や包装容器は、良好な耐衝撃性を示す。
【0014】
また、本発明の包装材料は、透明バリア層を有する第1の基材層と、金属バリア層を有する第2の基材層とを有する。ここで、上記の透明バリア層はガスバリア性、特に酸素ガスバリア性を有し、金属バリア層は遮光性とガスバリア性、特に水蒸気ガスバリア性とを兼ね備えることから、前記包装材料を使用した包装容器は外部からの光、あるいは酸素ガスや水蒸気ガスなどの進入を防止することができ、光やガスに起因する内容物の変性を有効に防止することができる。
したがって、本発明の包装材料は、特に内容物の品質保持性が要求される包装容器を形成するのに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の包装材用シーラント層を有する包装材用積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
<1>本発明の包装材料を形成する積層体の層構成
図1は、本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
本発明の包装材料は、図1に示すように、第1の基材層1、第2の基材層2、及びシーラント層3をこの順に積層した構成を基本とする。ここで、図1において、第1の基材層1は、合成樹脂層(a)と透明バリア層(b)の2層からなり、第2の基材層2は、合成樹脂層(d)と金属バリア層(c)の2層からなり、透明バリア層(b)と金属バリア層(c)が隣接する。そして、シーラント層3は、LLDPE層又はEMAA層(e)と環状ポリオレフィン系樹脂層(f)の2層からなる層であり、LLDPE層又はEMAA層(e)が、第2の基材層2の合成樹脂層(d)と隣接する。
【0017】
上記の例は、本発明の包装材料の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図示しないが、本発明の包装材料において、シーラント層を構成する層としてLLDPE層を使用した場合には、前記LLDPE層と、第2の基材層の合成樹脂層との間にアンカーコート層を設けてもよい。また、シーラント層は、第1の基材層側に設けてもよく、この場合、LLDPE層又はEMAA層が第1の基材層の合成樹脂層に対向するように積層する。
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定した。
【0018】
<2>第1の基材層
(1)合成樹脂層
第1の基材層を構成する合成樹脂層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの二軸延伸フィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの二軸延伸フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムを好適に使用できる。これらは単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせて積層して使用することもできる。
本発明において、合成樹脂層の層厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmが望ましい。
また、合成樹脂層の上にさらに印刷層を設けてもよく、この場合、印刷層に用いられる印刷インキの密着性向上を図るために、合成樹脂層の表面に表面処理(例えば、コロナ処理等)を施すことが好ましい。
【0019】
(2)透明バリア層
第1の基材層を構成する透明バリア層は、外部への内容物のにおい漏れや、外部からのガス(特に酸素ガス)の浸入を抑え、内容物の変質を防ぐためのものである。
上記透明バリア層は、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズなどの無機酸化物の蒸着層であってもよく、また、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂又はポリアクリロニトリル系樹脂の少なくともいずれか一種からなるバリア性フィルム層であってもよい。
透明バリア層の積層方法としては、透明バリア層が蒸着層である場合は、化学気相成長法及び物理気相成長法等の任意の蒸着法によって、合成樹脂層上に積層される。蒸着層の層厚は、適宜に設定することができるが、好適には、約5〜100nmの範囲である。
【0020】
また、透明バリア層がプラスチックフィルムである場合は、接着剤層を介して合成樹脂層上に貼り合せることによって積層される。貼り合せに使用する接着剤としては、任意のものを用いることができるが、押出ラミネート法(いわゆる、サンドイッチラミネート法)で貼り合わせる場合は、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE、密度0.910〜0.925g/cm3)などを単独で使用するか、又はこれらにハードレジンなどの接着性向上剤をブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに、ドライラミネート法を用いてもよく、その場合は接着剤として、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用することができる。好適に使用されるこれらのバリア性フィルムの厚さは、5〜30μm程度である。
【0021】
<3>第2の基材層
第2の基材層に用いる合成樹脂層としては、第1の基材層に用いたものと同様の材料を使用することができる。また、合成樹脂層上に印刷層を設けてもよい点も同様である。
また、第2の基材層を構成する金属バリア層は、外部からの光やガス(特に水蒸気ガス)の浸入を抑え、内容物の変質を防ぐためのものである。
上記金属バリア層は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、金及び銀並びにその合金から
なる群から選択された1種の素材からなる金属箔層であってもよいし、あるいはこれらの蒸着層であってもよい。
【0022】
金属バリア層の積層方法としては、金属バリア層が蒸着層である場合は、第1の基材層において説明したのと同様に、化学気相成長法及び物理気相成長法等の任意の蒸着法によって、積層することができる。蒸着層の層厚は、適宜に設定することができるが、好適には、約5〜100nmの範囲である。
また、金属バリア層が金属箔である場合は、第1の基材層において説明したのと同様に、押出ラミネート法やドライラミネート法などにより積層することができる。好適に使用されるこれらの金属箔の厚さは、5〜30μm程度である。
【0023】
<4>シーラント層
本発明のシーラント層は、LLDPE層又はEMAA層と環状ポリオレフィン系樹脂層とを有する。本発明の包装材料において、該LLDPE層又はEMAA層は、シーラント層の表面(貼合面)に位置し、第1又は第2の基材層の合成樹脂層と対向するように積層される。
(1)シーラント層の構造
本発明の一態様において、シーラント層は、LLDPE層又はEMAA層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層である。この構成を有するシーラント層は、環状ポリオレフィン系樹脂層が、本発明の包装材料の最表層、すなわち包装容器の最内層となるため、優れた非吸着性を示すことができる。
当該構成において、シーラント層の総厚は、任意であってよいが、安定した成膜化及び製品コストの観点から好適には、12〜150μmの層厚を有する。ここで、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層及びLLDPE層又はEMAA層の厚さは、包装材の用途に応じて適宜に設定することができるが、安定した成膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層厚は、望ましくは2〜30μmであり、LLDPE層又はEMAA層の層厚は、望ましくは10〜120μmである。
【0024】
(2)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)層又はエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂(EMAA)層
本発明において、シーラント層中のLLDPE層を構成するLLDPEは、密度0.900〜0.940g/cm3の直鎖状ポリエチレンであって、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒又はチーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト系触媒を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを低温、低圧で共重合させて得られるコポリマーである。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0025】
また、共重合方法としては、エチレン及びα−オレフィンを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法が挙げられる。
【0026】
本発明に使用するLLDPEは、短鎖分岐として炭素数1000個あたり、3〜25個の短鎖分岐を有するが、炭素数約20個を超える長鎖分岐を有しない点で、LDPEと区別される。通常、LLDPEにおいて、エチレン由来の構造単位は約99.9〜90モル%であり、α−オレフィン由来の構造単位は約0.1〜10モル%である。本発明では、構造均一性に優れる点で、メタロセン触媒で調製されたLLDPEを好適に使用することができる。
【0027】
本発明において使用するのに好適なLLDPEとしては、住友化学(株)社製の「スミカ
セン」等が挙げられる。
本発明において、シーラント層中のEMAA層を構成するEMAAとしては、隣接する層との接着強度の観点から、0.93〜0.94g/cm3の密度のものが好適に使用される。また、EMAAのMFRは、共押出における加工性の観点から、望ましくは3〜30g/10分であり、より好ましくは5〜20g/10分である。MFRが3g/10分より小さいと、環状ポリオレフィン系樹脂層との共押出ができない。なお、上記のメルトフローレート(MFR)とは、JIS K6922に準拠した手法から測定したものであり、特に記載のない限り、190℃、2.16kg荷重で測定した数値である。
【0028】
EMAA中のエチレン由来の構造単位及びメタクリル酸由来の構造単位の割合は、基材層の種類や蓋材の用途に応じて、当業者が任意に決定することができる。エチレン由来の構造単位の割合が多いほど、樹脂の臭気が抑えられる。
本発明において使用するのに好適なEMAAとしては、三井・デュポンポリケミカル(株)社製の「ニュクレルN0908C」等が挙げられる。
さらに、LLDPE層、EMAA層については、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0029】
(3)環状ポリオレフィン系樹脂層
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂層を構成する環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合した開環メタセシス重合体(COP)、及び、環状オレフィンとα−オレフィン(鎖状オレフィン)との共重合体、すなわち環状オレフィンコポリマー(COC)を包含する。
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができるが、特にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
【0030】
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5 ]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。環状オレフィンは、置換基として、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基等の極性基を有していてもよい。
【0031】
環状オレフィンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンを使用することができ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくはエチレンである。
【0032】
本発明において、開環メタセシス重合体の製造は、公知の開環メタセシス重合反応であれば特に限定されず、上記の環状オレフィンを、重合触媒を用いて開環重合させることによって製造することができる。
【0033】
また、環状オレフィンコポリマーの製造は、25〜45モル%のα−オレフィンと、55〜75モル%の環状オレフィンとを、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることによりなされる。
本発明において好適に使用される開環メタセシス重合体及び環状オレフィンコポリマーは、いくつか市販されており、例えば日本ゼオン(株)社製の「ZEONOR(R)」やポリプラスチック(株)社製の「TOPAS(R)」等が挙げられる。
【0034】
なお、上記環状ポリオレフィン系樹脂には、製膜時の環状ポリオレフィン系樹脂同士の凝集によるゲル塊の発生を抑制して、一層均一な膜表面を得るために、高流度のオレフィン系樹脂を、非吸着性を損なわない範囲で任意に添加することができる。該オレフィン系樹脂としては、任意のポリエチレン及びポリプロピレン等であって、190℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10分、好ましくは15〜30g/10分のものを使用することができる。また、添加量としては、全体の3〜50質量%、好ましくは5〜10質量%の比率でオレフィン系樹脂を配合するとよい。
また、さらに必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0035】
(4)アンカーコート層
シーラント層を構成する層としてLLDPEを使用する場合には、第1又は第2の基材層中の合成樹脂層上にアンカーコート層を設け、この上にシーラント層を積層することが好ましい。このようなアンカーコート層としては、任意のものを使用することができ、例えば、ポリオレフィン系、有機チタネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、イソシアネート系、ポリエステル系、アクリル系などの非硬化型または、硬化型のアンカーコート剤を用いることができる。また、アンカーコート層としては、以下に詳述する水性分散液やエポキシ樹脂組成物により形成されるアンカーコート層を使用することが好ましい。
【0036】
上記の水性分散液により形成されるアンカーコート層は、不飽和カルボン酸、又はその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含有し、かつ、数平均粒子径が1μm以下、例えば50nm〜200nmのポリオレフィン樹脂粒子からなり、乳化剤等の不揮発性水性化助剤を実質的に含まない水性分散体を塗布、乾燥したものである。この水性分散液は、特開2004−9504号公報に記載されるものであり、不飽和カルボン酸又はその無水物とオレフィン化合物と(メタ)アクリル酸エステルとから構成されるポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と陰イオン性基が20〜700(当量/106g)のポリエステル樹脂(B)の水性分散体とを、それぞれの水性分散体中の樹脂分の質量比が(A)/(B)=90/10〜20/80となるように混合して製造されるものである。上記において、不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられ、陰イオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基等が挙げられる。上記の水性分散液の具体例としては、ユニチカ(株)からアローベースSA−1200、SB−1200、SE−1200、TB−2010等として市販されるものが例示される。
【0037】
乳化剤等の不揮発性水性化助剤は、乾燥後も塗膜中に残存し、たとえ少量であっても接着界面に大きな影響を与え、接着性や耐水性を低下させるが、上記のアンカーコート層にあっては、水性分散体の製造工程において水性化促進や水性分散体の安定化の目的で乳化剤等の不揮発性水性化助剤は添加されていない。このため、層間剥離が起こることなく、第1又は第2の基材層との接着性に優れると共にシーラント層との接着性にも優れるものとできる。
【0038】
アンカーコート層の形成に使用する上記水性分散液の塗布量は、0.1g/m2以下、より好ましくは、0.05〜0.1g/m2である。これは通常の接着剤の使用量と比較して1/10以下であり、しかも、前記水性分散体中に含まれる低分子量の微量成分は、シー
ラント層をほとんど通過しないことから、水性分散体に含まれる微量成分は、内容物中に漏出せず、内容物の劣化を防止することができる。
【0039】
また、上記エポキシ樹脂組成物により形成されるアンカーコート層は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層である。上記エポキシ樹脂組成物としては、例えば、特開2003−155465号公報や特開2007−126627号公報に記載されたものが挙げられる。
【0040】
具体的には、上記エポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂と芳香族部位を分子中に含むエポキシ樹脂硬化剤とからなるものを使用することができる。好ましくは、アンカーコート層に使用するエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物により形成されるエポキシ樹脂硬化物中に式(1)に示される骨格構造が40質量%以上含有されることを特徴とするエポキシ樹脂組成物を使用することができる。
【0041】
【化1】
【0042】
さらに、上記エポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、該樹脂組成物より形成される硬化物中の上記式(1)に示される骨格構造の含有量が30質量%以上であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物についても使用することができる。
【0043】
上記のエポキシ樹脂としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、特にメタキシレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。また、これらの樹脂は、単独でも2種以上を任意に混合しても使用することができる。
【0044】
また、上記のエポキシ樹脂硬化剤としては、一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができるが、ガスバリア性をさらに向上させるために、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましく、上記式(1)の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤を使用することがより好ましい。具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との変性反応物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、エピクロルヒドリンとの付加反応物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類とのとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
【0045】
さらに、第1又は第2の基材層とシーラント層との接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
【0046】
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0047】
前記(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0048】
また、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などの炭素数1〜8の一価のカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などを上記多官能性化合物と併用して開始ポリアミンと反応させてもよい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性および各種フィルム材料への良好な接着強度が得られる。
【0049】
また、上記の硬化促進剤としては、硬化時間の短縮または低温硬化性を増大させるものであれば特に制約はなく、例えば、三ハロゲン化ホウ素錯体や有機酸に加え、フェノール、m−クレゾール、p−クロロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、o−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、フロログリシノール、ビスフェノールA、トリスジメチルアミノフェノールなどのフェノール類;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、チオグリセノール、ペンタエリスリトール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ベンジルアルコールのようなアルコール類;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫、トリフェニルホスフィン、リン酸トリフェニルなどを使用することができる。中でも三ハロゲン化ホウ素錯体および有機酸が好ましい。これらの硬化促進剤は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
三ハロゲン化ホウ素錯体としては、特に三フッ化ホウ素錯体がより好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体;三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素のエーテル錯体;その他三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素リン酸錯体、三フッ化ホウ素アセトニトリル錯体などが挙げられ、特に三フッ化ホウ素のアミン錯
体、中でも三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体が好適に用いられる。これらの三ハロゲン化ホウ素錯体は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0051】
有機酸としてはp−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、安息香酸、p−トルイル酸、p−アミノ安息香酸、p−クロロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、蟻酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、n−酪酸、iso−酪酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクタン酸、n−ヘプチル酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、などが挙げられ、特にp−トルエンスルホン酸が好適に用いられる。これらの有機酸は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
上記のアンカーコート層は、第1又は第2の基材層中の合成樹脂層上あるいはシーラント層上に、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコート、ブレードコート、ショートドウェル、キャストコート等の塗工方法を用いて、上記エポキシ樹脂組成物を0.01〜0.1g/m2塗布し、乾燥することにより形成することができる。
本発明において使用するのに好適なエポキシ樹脂組成物としては、株式会社日本触媒製のエポミン(アンカーコート剤)が挙げられる。
【0053】
(5)シーラント層の製造方法
本発明の包装材用シーラント層の製造は、任意の方法によりなされるが、成膜安定性の観点から好ましくは、共押出コーティング法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物とLLDPE又はEMAAとを、第1又は第2の基材層中の合成樹脂層上に共押出コーティングすることにより形成するか、又は、溶融共押出法(例えばTダイ法、インフレーション法)等の成膜法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物とLLDPE又はEMAAとを共押出して多層シーラントフィルムを製造し、これを第1及び第2基材層からなる積層体とラミネートする。
【0054】
また、上記のとおり、シーラント層を構成する層としてLLDPEを使用した場合には、第1又は第2の基材層中の合成樹脂層上にアンカーコート層を設け、この上にシーラント層を積層することが好ましい。
【0055】
第1又は第2の基材層中の合成樹脂層上に共押出コーティングするか、又は多層シーラントフィルムを第1及び第2の基材層からなる積層体とラミネートする際に、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が積層体における最表層となるように、LLDPE層又はEMAA層側の面と合成樹脂層とを対向させて積層する。
特に、共押出コーティングすることにより、第1及び第2の基材層からなる積層体とLLDPE層又EMAA層は、及び、LLDPE層又はEMAA層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層間の密着性が高まり、一層高いシール強度を示すシーラント層を提供することができる。
【0056】
<6>使用
本発明の包装材料は、シーラント層が最内層となるように製袋することにより、包装袋とすることができる。また、本発明の包装材料をシーラント層を最内層とする蓋材として使用し、包装容器を製造することができる。
本発明の包装材料は、優れた非吸着性を示し、且つ良好なガスバリア性とヒートシール性を示す。したがって、これを有する積層体や包装袋、包装容器は、特に、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装のために、例えば、コーヒー豆、米、茶、豆、おかき、せんべい等の乾燥食品あるいはフリーズドライ食品の包装袋として、好適に使用することができる。
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
(1)厚さ12μmの透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(アルミナ蒸着PETフィルム)を用い、その蒸着面上にドライラミネート用接着剤を、版深90μmの斜線版を用いて塗工量3.0g/m2で塗布し、厚さ9μmのアルミ蒸着PETフィルムのアルミ蒸着面と貼り合せた後、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させた。
(2)アルミ蒸着PETフィルムのPET面に、アンカーコート剤(株式会社日本触媒製 エポミン)を、版深20μmの斜線版を用いて塗工量0.4g/m2で塗布した。
(3)次いで、このアンカーコート剤の塗布面上に、LLDPE(住友化学(株)社製スミカセンHi−α CW8003)及び環状オレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)社製 TOPAS 8007F−500)を、共押出コーティング法によりこの順で積層した。これにより、本発明の包装材を形成する積層体が得られた。得られた積層体の層構成は以下のとおりであった:
透明蒸着PETフィルム(蒸着面)/接着剤/(蒸着面)アルミ蒸着PETフィルム/アンカーコート剤/LLDPE層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(5μm)
なお、本願明細書の積層体の記載において、「/」はその左右の層が積層一体化されていることを示す。
【0058】
[実施例2]
シーラント層の形成において、アンカーコート剤を使用せず、さらに、LLDPEの代わりに、EMAA(三井・デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレル N0908C)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0059】
[比較例1]
シーラント層の形成において、環状ポリオレフィン樹脂の代わりに、LLDPEを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0060】
[比較例2]
シーラント層の形成において、LLDPEの代わりに、LDPEを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0061】
[比較例3]
シーラント層の形成において、LLDPEの代わりに、環状ポリオレフィン樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0062】
[評価方法・結果]
(1)吸着性試験
実施例1、2及び比較例1〜3の積層体を10cm×10cm四方に切り取り、その初期重量を測定した。
容積10リットルのステンレス容器内にl−メントール固体10gを入れ、蓋をして容器内をl−メントール蒸気で満たし、その中に、切り取った積層体を吊り下げて、40℃で7日間保管した。
保管後、積層体を取り出して、重量を測定し、初期重量との差から、l−メントールの吸着量を算出した。
【0063】
(2)シール強度試験
実施例1、2及び比較例1〜3の積層体を、基材層を外側にして重ね合せ、ヒートシー
ラー(テスター産業(株)製TP-701S HEAT SEAL TESTER)で、160℃で1秒間、圧力1kgf/cm2でヒートシールした。
次いで、これを幅15mmの短冊状に切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて圧着されたシール部を引き剥がし、シール強度を測定した。このときの引張速度は300mm/分とした。
以下の表に結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
環状ポリオレフィン樹脂組成物層を有する実施例1、2及び比較例2、3の積層体は、比較例1の積層体と比較してメントール吸着量が少ないという傾向があった。
また、シール強度については、LLDPE層を有さない比較例3の積層体は、実施例1、2の積層体と比較してシール強度が弱かった。
【符号の説明】
【0066】
1:第1の基材層
2:第2の基材層
3:シーラント層
a:合成樹脂層
b:透明バリア層
c:金属バリア層
d:合成樹脂層
e:LLDPE層又はEMAA層
f:環状ポリオレフィン系樹脂層
図1