特許第6015164号(P6015164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015164
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】金属・不織布貼合シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/14 20060101AFI20161013BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B32B15/14
   B32B7/02
   B32B5/24
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-146746(P2012-146746)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-8673(P2014-8673A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】羽片 健太郎
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−162237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に接着剤を用いて金属箔を貼り合わせ、さらにその上に厚み20〜40μmのPEを用いて不織布を貼り合せた、金属・不織布貼合シートであって、前記貼り合わされた不織布の表面粗さがRa=6〜10μm、Ry=40〜80μmであることを特徴とする金属・不織布貼り合せシート。
【請求項2】
前記不織布の厚みが70〜90μmで、密度が0.20〜0.50g/cmで、使用繊維の繊維長が4〜6mmで、繊維直径が15〜18μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属・不織布貼り合わせシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に、金属層、不織布を積層させた、装飾用の金属・不織布貼合シートであって、より詳しくは表面の質感、輝度感が制御された金属・不織布貼合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
光沢や質感をもたらす装飾性素材として、断裁蒸着フィルム又は断裁金属箔が使用されるが、剥離脱落の問題があり、断裁蒸着フィルム又は断裁金属箔の光沢感を活かしたまま、断裁蒸着フィルムや断裁金属箔の剥離脱落を防止するために、不織布により表面をカバーすることが、提案されている。
【0003】
しかしながら、表面が不織布によりカバーされ、表面が毛羽立った状態になっているため、量産的にオフセット印刷を行うことが難しい(特許文献1)。
【0004】
アルミニウム蒸着フィルムと不織布を接着剤にて貼り合わせ、ガスバリアー性を持ち、金属光沢性が高く、装飾効果を持った不織布積層シートが提案されている。しかしながら、同様に、表面が不織布によりカバーされているため、印刷適正を持たない(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−44311号公報
【特許文献2】特開平8−258216号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JISB0601
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、金属層上に貼り合わされた不織布上に、オフセット印刷による装飾を施しても、前記金属層の輝度感及び前記不織布の質感の低下を抑えることができ、印刷適正を持った金属・不織布貼合シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に接着剤を用いて金属箔を貼り合わせ、さらにその上に厚み20〜40μmのPEを用いて不織布を貼り合せた、金属・不織布貼合シートであって、前記貼り合わされた不織布の表面粗さがRa=6〜10μm、Ry=40〜80μmであることを特徴とする金属・不織布貼り合せシートである。
【0010】
また、請求項に記載の発明は、前記不織布の厚みが70〜90μmで、密度が0.20〜0.50g/cmで、使用繊維の繊維長が4〜6mmで、繊維直径が15〜18μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属・不織布貼り合わせシートである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、基材上に、金属層、不織布を積層させシートに対して、金属層の輝度感や不織布の質感を落とすこと無く、オフセット印刷を施すことができ、既存の加飾では表現できない不織布貼合紙容器を提供することを可能にし、商品の店頭訴求力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の第一の金属・不織布貼合シートの構成を示した断面概念図である。
図2】本願発明の第二の金属・不織布貼合シートの構成を示した断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本願発明の第一の構成における金属・不織布貼合シートを示しており、基材1上に、接着層5を設けさらに、金属層2、接着層5、不織布3が設けられ、不織布3上に印刷層6が設けてある。
【0015】
図2は本願発明の第二の構成における金属・不織布貼合シートを示しており、基材1上に、接着層5、金属層2を設け、その上に、溶融させた樹脂を塗布しながら不織布3をラミネートして、透明樹脂層4を形成し、不織布3上に印刷層6を設けてある。
【0016】
本発明に用いられる基材1としては、上質紙、グラシン紙、トレーシングペーパー、和紙、キャスト紙、コーテッド紙などの通常の天然パルプ紙、含浸紙あるいはラミネート紙等の紙基材、ポリエステル(PET)、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックシートなどが使用される。
【0017】
本発明に用いられる金属層2としては、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、インジウム、錫、洋銀、しんちゅうなどを箔化したものや、蒸着等の薄膜技術を用いて形成しても良い。
【0018】
本発明に用いられる透明樹脂層4としては、ポリエチレンが挙げることができる。
【0019】
本発明に用いられる不織布3としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、フェノール系繊維、再生繊維等の合成繊維及び木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプ等の天然繊維から選ばれる繊維、ガラスファイバーの様な無機繊維を単独あるいは複数混合して使用することができる。
【0020】
本発明の接着層5で用いられる接着剤としては、一般に紙あるいは不織布分野で用いられる接着剤であれば特に制限はなく用いることができ、ゴム系接着剤、合成ゴム系接着剤、変性ゴム系接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、尿素樹脂系接着剤、フェノール樹脂系
接着剤、メラミン樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ケイ酸ソーダ系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、エチレン・酢酸ビニル系接着剤、ポリアミド樹脂系接着剤、脂肪族あるいは芳香族ポリウレタン系接着剤、共重合ナイロン系接着剤などが使用されるが、接着強度、耐熱性などからポリウレタン系接着剤が好適に用いられる。
【0021】
本発明の不織布に用いられるバインダー繊維としては、熱溶融性繊維あるいは熱水溶解性繊維が例示される。熱溶融性繊維は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等の合成樹脂から選ばれた繊維状のもので、合成樹脂の融点以上の温度で処理することによって合成樹脂が溶融し、接着及び強度を発現するものである。
【0022】
熱水溶解性繊維は、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール等の合成樹脂から選ばれた繊維状のもので、加熱により含水状態のウェブを乾燥させる工程で水温の上昇によって溶解し、ウェブが乾燥することで接着及び強度を発現するものである。
【0023】
表面粗さの測定は、JISB0601に準じて測定した。
【0024】
測定器 : SJ-201P
メーカー : Mitsutoyo
測定長8mm、針先端半径5μm、測定力4mN、針先端角度40
なぜ、不織布を接着剤又は透明樹脂で貼り合せた時に、最適な表面粗さが変わるのか
その理由はわかっていないが、接着剤と透明樹脂とでは微妙に異なる。しかし、紙の厚みが十分にあれば接着剤、透明樹脂により表面粗さは変わらない。
【0025】
また、高透明度レーヨン9gといった非常に薄い材料を使用する場合、通常の接着剤では糊が染み出してしまい貼合することができない。よって、あらかじめ不織布にバックPEを行い、板紙とPEラミで貼合する手法が取られる。
【実施例1】
【0026】
基材1として、板紙を用い、金属層2は、6〜7μmの厚みのアルミ箔を、接着剤(
酢ビ系)用いて貼り合わせ設けた。さらに、不織布3として、高透明度レーヨン:9g/m(日本製紙パピリア製)ニューソフロン:9g/m(ユニチャーム社製)を、透明樹脂層4にはPEの押し出しラミネーションを用い貼り合わせた。押し出しラミネーション条件を下記に示す。
PE種類 : NUC(TM)‐8007(ダウケミカル)ラミネーション温度 : 320〜330℃スピード : 50〜100m/min厚み : 20〜40μmである。
【0027】
不織布3の厚みは30〜50μmで、密度は0.15〜0.30g/cmであり、繊維長は5mm、繊維の直径は15〜18μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=4〜7μm、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=30〜50μmで、オフセット印刷層を設けたものは、質感を持ち、印刷後のAl箔の輝度感が濃淡はっきりと表現される金属・不織布貼合シートである。
【実施例2】
【0028】
基材1として、板紙を用い、金属層2は、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(酢ビ系)を用いて貼り合わせて設けた。さらに、不織布3として、マニラ麻紙:32g/m
)改良紙(丸菱ペーパーテック社製を、PEの押し出しラミネーションによって貼り合せた。
【0029】
不織布3の厚みは30〜50μmで、密度が0.15〜0.30g/cmで、繊維長は5〜7mm、繊維の直径は16〜32μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=6〜10μm、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=40〜80μmで、オフセット印刷層6を設けたものは、和紙感があり、輝度感に濃淡があり、オフセット印刷適正を持つ金属・不織布貼合シートであった。
【0030】
<比較例1>
実施例2同様に、基材1として、板紙を用い、金属層2は、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(日本製箔社製 高輝度タイプ)を用いて貼り合わせて設けた。さらに、不織布3として、高透明度レーヨン:9g/m(日本製紙パピリア製)ニューソフロン:9g/m(ユニチャーム社製)に接着剤を用いて貼り合せた。この時、接着層5の厚みは1〜2μmであった。
【0031】
不織布3の厚みは30〜50μmで、密度は0.15〜0.30g/cmであり、繊維長は5mm、繊維の直径は15〜18μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=4〜7μm、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=30〜50μmは、印刷適正が無く、オフセット印刷を施すことが出来なかった。
【0032】
<比較例2>
実施例1同様に、基材1として、板紙を用い、金属層2は、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(酢ビ系)を用いて貼り合わせて設けた。さらに、不織布3として、マニラ麻紙:32g/m、改良紙(丸菱ペーパーテック社製)を、実施例1と同様に、PEの押し出しラミネーションを用い貼り合わせた。
【0033】
不織布3の厚みは70〜90μmで、密度が0.20〜0.50g/cmで、繊維長は5〜7mm、繊維の直径は16〜32μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=6〜10μm、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=40〜80μmで、オフセット印刷層6を設けたものは、和紙感があり、輝度感に濃淡があり、オフセット印刷適正を持つ金属・不織布貼合シートであるが、実施例2に比してコスト面は高いものとなった。
【0034】
<比較例3>
実施例2同様に、基材1として、板紙を用い、金属層2として、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(酢ビ系)を用いて貼り合わせた。不織布3として、純白紙:32g/m(北越紀州製紙製)を、接着剤を用いて貼り合せた。この時、接着層5の厚みは1〜2μmであった。
【0035】
不織布3の厚みは50〜70μmで、密度が0.15〜0.40g/cmで、繊維長は1.5〜4mm、繊維の直径は20〜40μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=4μm以下、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=30μm以下で、オフセット印刷層6を設けたものは、高輝度で、印刷適正を持つが、和紙感の無い金属・不織布貼合シートであった。
【0036】
<比較例4>
実施例1と同様に、基材1として、板紙を用い、金属層2として、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(酢ビ系)を用いて貼り合わせた。不織布3として、純白紙:32g/m(北越紀州製紙製)を、透明樹脂層4としてPEを用い、押し出しラミネーションによ
って貼り合せた。
【0037】
不織布3の厚みは50〜70μmで、密度が0.15〜0.40g/cmで、繊維長は1.5〜4mm、繊維の直径は20〜40μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=4μm以下、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=30μm以下で、オフセット印刷層を設けたものは、高輝度で、印刷適正を持つが、和紙感の無いものであった。
【0038】
<比較例5>
実施例2と同様に、基材1として、板紙を用い、金属層2として、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(酢ビ系)を用いて貼り合わせた。不織布3として、マニラ麻紙:32g/m(丸菱ペーパーテック社製)に、接着剤を用いて貼り合せた。この時、接着層5の厚みは1〜2μmであった。
【0039】
不織布3の厚みは70〜90μmで、密度が0.20〜0.50g/cmで、繊維長は5〜7mm、繊維の直径は16〜32μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=10μm以上、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=80μm以上で、オフセット印刷層を設けたものは、和紙感はあるものの、輝度感が薄れ、印刷適正が無く、通常のスピードでは生産できなかった。
【0040】
<比較例6>
実施例1と同様に、基材1として、板紙を用い、金属層2として、6〜7μmの厚みのアルミ箔に接着剤(酢ビ系)を用いて貼り合わせた。不織布3として、マニラ麻紙:32g/m(丸菱ペーパーテック社製)を、透明樹脂層4としてPEを用い、押し出しラミネーションによって貼り合せた。
【0041】
不織布3の厚みは70〜90μmで、密度が0.20〜0.50g/cmで、繊維長は5〜7mm、繊維の直径は16〜32μmである。作製した金属・不織布貼合シートの表面粗さRa(輪郭曲線の算術平均高さ)=10μm以上、Ry(輪郭曲線の最大高さ)=80μm以上で、オフセット印刷層6を設けたものは、和紙感はあるが、輝度感が薄れ、印刷適正が無く、通常のスピードでは生産できなかった。
【0042】
以上の結果を表1に示す。不織布へのオフセット印刷の適性(繊維の脱落や安定したインキ着肉性)は表面粗さの制御により達成され、接着剤を用いて不織布を貼り合せた場合には、貼り合わされた不織布の表面粗さがRa=6〜10μm、Ry=40〜80μmである時に、和紙感があり、輝度感に濃淡がある金属・不織布貼合シートを提供できることがわかった。
【0043】
【表1】
また、PEの押し出しラミネーションによって不織布を貼り合せた場合には、貼り合わされた場合には、貼り合わされた不織布の表面粗さがRa=4〜7μm、Ry=30〜50μmである時に、質感を持ち、印刷後のAl箔の輝度感に、濃淡がはっきりと表現される金属・不織布貼合シートを提供できることがわかった。
【符号の説明】
【0044】
1・・・基材
2・・・金属層
3・・・不織布
4・・・透明樹脂層
5・・・接着層
6・・・印刷層
図1
図2