特許第6015204号(P6015204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015204
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】自動二輪車用エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 61/02 20060101AFI20161013BHJP
   F01M 11/03 20060101ALI20161013BHJP
   F01M 1/02 20060101ALI20161013BHJP
   B60K 17/02 20060101ALI20161013BHJP
   B62K 11/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   F02B61/02 C
   F01M11/03 A
   F01M1/02 A
   F02B61/02 B
   B60K17/02 A
   B62K11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-167473(P2012-167473)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25439(P2014-25439A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】小野 正樹
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−068703(JP,A)
【文献】 特開2009−068699(JP,A)
【文献】 特開2002−122013(JP,A)
【文献】 特開2007−009868(JP,A)
【文献】 特開2011−132937(JP,A)
【文献】 特開2001−233276(JP,A)
【文献】 特開2001−248415(JP,A)
【文献】 特開2003−262112(JP,A)
【文献】 特開2011−214610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 61/02
B60K 17/00−08
B62K 11/00
F01M 1/02
F01M 11/03
F16H 9/00−26
F16H 57/00−10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの軸線がやや前傾して略上下方向に設定され、遠心クラッチを左右方向に水平配置されるクランクシャフトの端部に配置すると共に、オイルポンプのギヤをクランク軸受と前記遠心クラッチの間に配置し、車幅中心線に対して前記遠心クラッチが配置された側に前記オイルポンプとオイルフィルタを配置した自動二輪車において、
前記遠心クラッチを前記クランクシャフトのクランクウェブの回転半径よりも小径とし、側面視にて前記遠心クラッチよりも径方向外側で、前方且つ前後方向で前記遠心クラッチと重なるように前記オイルフィルタを配置したことを特徴とする自動二輪車用エンジン。
【請求項2】
前記オイルフィルタは、側面視で前記オイルポンプよりも上方に配置したことを特徴とする請求項に記載の自動二輪車用エンジン。
【請求項3】
前記オイルフィルタは、車幅中心線が通るように配置されるセルモータと、側面視で一部が重なるように配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車用エンジン。
【請求項4】
メインクラッチは、前記遠心クラッチより後方、且つ前記クランク軸受と前記遠心クラッチの間に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動二輪車用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはクランクシャフトの端部に遠心クラッチを配置した自動二輪車用エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばバックボーンタイプの小型自動二輪車用エンジンにおいて、エンジンの基本構成は共通とした上で、遠心クラッチ式(AT)とマニュアルクラッチ式(MT)とがある。この場合、クランクシャフトの右側軸端部においてATにあっては遠心クラッチが、またMTにあってはフライホイールがそれぞれ配置される。
【0003】
一方、エンジン潤滑用のオイルポンプは、駆動ギヤの取付のためにスタータのリングギヤの反対側であって、遠心クラッチ(フライホイール)とクランクアーム(もしくはクランクウェブ)の間に配置される。またオイルフィルタは、遠心クラッチ(フライホイール)を避けるためにエンジンの左側に配置される。クランクシャフトやシリンダヘッド、トランスミッション等の潤滑のための潤滑通路は、エンジンの右側に配置構成される。このためクランクケース右側のオイルポンプからクランクケース左側のオイルフィルタを経由し、再度右側のオイル通路に戻り、各部を潤滑する。
【0004】
このような従来エンジンにおけるオイルポンプ等の配置構成例につき、図9及び図10を参照して概略説明すると、クランクケース200の右外側のクラッチカバーの内側には、クランクシャフトを駆動源とする駆動ギヤ201により駆動されるオイルポンプ202が配置される。オイルポンプ202は吸引口202a及び吐出口202bを有し、吐出口202bから吐出された潤滑オイルは油路P1を介して、一旦クランクケース200の左外側のマグネトカバー側へ給送され、マグネトカバー側に配設されているオイルフィルタ203へ送り込まれる。オイルフィルタ203にて浄化された潤滑オイルは油路P2を介して、再びクラッチカバー側へ戻され、その後、油路P3を介してクランクシャフト及びシリンダ回り、更にトランスミッション等の潤滑を要する部位に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−105131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した例のように従来の自動二輪車用エンジンでは特にオイルポンプとオイルフィルタとの間でオイル通路(油路P1〜油路P3)が長くなり、そのままではクランクケースの重量増加、オイル圧の損失によるオイルポンプの大型化の要因となる。
なお、オイルフィルタの配置構成等に関して、車幅中心線に対して遠心クラッチのある側にオイルフィルタを配置するものが知られている(特許文献1等)。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、オイル通路を効果的に短縮して軽量、小型化を図り、ポンプ効率を有効に向上し得る自動二輪車用エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による自動二輪車用エンジンは、シリンダの軸線がやや前傾して略上下方向に設定され、遠心クラッチを左右方向に水平配置されるクランクシャフトの端部に配置すると共に、オイルポンプのギヤをクランク軸受と前記遠心クラッチの間に配置し、車幅中心線に対して前記遠心クラッチが配置された側に前記オイルポンプとオイルフィルタを配置した自動二輪車において、前記遠心クラッチを前記クランクシャフトのクランクウェブの回転半径よりも小径とし、側面視にて前記遠心クラッチよりも径方向外側で、前方且つ前後方向で前記遠心クラッチと重なるように前記オイルフィルタを配置したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動二輪車用エンジンにおいて、前記オイルフィルタは、側面視で前記オイルポンプよりも上方に配置したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動二輪車用エンジンにおいて、前記オイルフィルタは、車幅中心線が通るように配置されるセルモータと、側面視で一部が重なるように配置したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動二輪車用エンジンにおいて、メインクラッチは、前記遠心クラッチより後方、且つ前記クランク軸受と前記遠心クラッチの間に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オイルフィルタとオイルポンプを共に遠心クラッチ(もしくはフライホイール)と同じ側に配置することで、オイル通路がクランクケースの右側に集約される。これによりエンジン全体としてのオイル通路長を短縮することで、その軽量化を図ると同時にオイル給送中の圧力損失を低減し、実質的にオイルポンプの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
図2】本発明の実施形態におけるエンジンユニットを示す(a)は右側面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は背面図である。
図3】本発明の実施形態に係るエンジンユニットのクランクケースの右外観側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るエンジンユニットのクラッチカバーを外した状態のクランクケースの斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るエンジンユニットのクラッチカバーを外した状態のクランクケースの右側面図である。
図6図5のI−I線に沿う断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るクラッチカバーを外した状態のクランクケースにおけるオイルポンプまわりを示す右側面図である。
図8】本発明の実施形態に係るクラッチカバーを外した状態のクランクケースにおけるオイルポンプまわりを示す斜視図である。
図9】従来エンジンにおけるオイルポンプ等の配置構成例を示すクラッチカバー側斜視図である。
図10】従来エンジンにおけるオイルポンプ等の配置構成例を示すマグネトカバー側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明における自動二輪車用エンジンの好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の適用例としての自動二輪車100の側面図である。先ず、図1を用いて、自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrによりそれぞれ示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。
【0019】
自動二輪車100は、鋼製あるいはアルミニウム合金製でなる、典型的にはバックボーン型の車体フレームにより車体骨格を形成し、車体フレームに対する各種部品の艤装を経て構成される。車体フレームの構成例として、その前上端部に結合するステアリングヘッドパイプ101から後斜め下方へ向けてメインフレーム102が延設され、あるいはまた略下方へ向けてダウンチューブ103が垂架される。車体フレームにはその他、メインフレーム102の後部付近に結合するシートレール等(図示せず)が含まれる。エンジンユニット10は車体フレームにより車体の略中央部で支持される。
【0020】
ステアリングヘッドパイプ101は、フロントフォーク104を回動可能に支持し、フロントフォーク104の上端にはハンドルバー105が固定されると共に、その下端側には前輪106が回転可能に支持される。前輪106の上方はフロントフェンダ107により覆われる。エンジンユニット10の後方には、詳細図示を省略するが、ピボット軸を介して上下動可能なスイングアームがメインフレーム102により支持され、該スイングアームの後端部に後輪108が回転可能に支持される。スイングアームの後端部と車体フレーム側の間にはショックアブソーバ109が装架され、後輪108の上方にはライダーが着座するシート110が配置される。シート110の前側には燃料タンク111が搭載される。後輪108の上方はリヤフェンダ112よって覆われる。
【0021】
車両外観としては、各種車体カバーが車体フレーム等の適所に支持されて被着される。即ち、車体側部乃至後部はサイドカバー113やリヤフレームカバー114等により覆われる。また、ハンドルバー105の前側にはヘッドランプユニット115が配置され、その他ウィンカやブレーキランプが実装される。
【0022】
次に、図2は本実施形態におけるエンジンユニット10の例を示している。図2(a)は右側面図、図2(b)は左側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は背面図である。この例ではエンジンユニット10は空冷式4サイクル単気筒エンジンを有し、このエンジンは主に、左右方向に水平配置されるクランクシャフトを回転自在に支持・収容するクランクケース11と、クランクケース11の上部に結合し、その軸線がやや前傾して略上下方向に設定されたシリンダもしくはシリンダブロック12と、シリンダ12の更に上部に結合するシリンダヘッド13及びシリンダヘッド13に蓋着するシリンダヘッドカバー14とを含んで構成される。
【0023】
クランクケース11は左右2つ割りに分割構成され、その右外側に形成されたクラッチ室等がクラッチカバー15(図2(a)等参照)により覆われる。また、クランクケース11の左外側に形成されたマグネト室は、図2(b)等に示されるマグネトカバー16により覆われる。なお、クランクケース11の後側にミッション室が形成される。
【0024】
エンジンに混合気を供給する吸気系において、その吸気通路の途中に配置されたスロットル装置がインテークパイプを介して、エンジンのインテークポート17と接続される。スロットル装置により制御された混合気はインテークポート17を介して、シリンダヘッド13の燃焼室へと供給される。
また、エンジンからの排気ガスを排気する排気系において、シリンダヘッド13の前部側にエキゾーストポート18が形成される(図2(c))。図1に示されるようにエキゾーストパイプ116(排気管)がエキゾーストポート18に接続され、エンジン内で生成された燃焼ガスが排気ガスとして、エキゾーストポート18からエキゾーストパイプ116を通り、最終的にマフラ117(排気消音器)から排気される。
【0025】
エンジンユニット10について更に具体的に説明する。クラッチ室を含めたクランクケース11の右外側は、前述のようにクラッチカバー15により覆われる。図3は、クランクケース11の右外側がクラッチカバー15により覆われた状態を示し、図4及び図5はクラッチカバー15を取り外した状態を示している。図4及び図5に示されるクランクケース11の右側壁11Rとクラッチカバー15との間にクラッチ室が形成され、このクラッチ室にクラッチ19(メインクラッチ)等が配設される。
【0026】
図6を参照して、クランクケース11まわりを説明する。なお、図6は、図5のI−I線に沿う断面図である。左右半割りのクランクケース11の左側壁11L及び右側壁11Rには、クランクシャフト20を支持するためのベアリング21(クランク軸受)がそれぞれ装着される。クランクシャフト20はそのクランクウェブ20aがクランクケース11内に収容され、右側壁11Rから右方へ延出する右延出部にはドライブギヤ22が取り付けられる。クランクシャフト20の後側にはカウンタシャフト23が平行配置されており、このカウンタシャフト23に取り付けたドリブンギヤ24がドライブギヤ22と噛合する。クランクシャフト20及びカウンタシャフト23間の動力伝達は、カウンタシャフト23の軸端に取り付けられたクラッチ19を介して接続、切断される。なお、この例ではクランクシャフト20の右軸端部に遠心クラッチ25(フライホイール)が取り付けられる。
【0027】
また、クランクシャフト20の左側壁11Lから左方へ延出する左延出部には、マグネト装置を構成するマグネト26が一体的に結合する。このマグネト装置は、クランクケース11の左側壁11Lとマグネトカバー16との間に形成されるマグネト室内に配設される。一方、オイルポンプ27は図5及び図6等に示すように、車幅中心線C.L(図2(c)参照)に対して遠心クラッチ25が配置された側、つまりクランクケース11の右外側のクラッチ室内に配置される。
【0028】
ここで、オイルポンプ27の配置構成等につき概略説明する。図6に示されるようにクランクシャフト20の右延出部にはオイルポンプ駆動用のドライブギヤ28が取り付けられ、このドライブギヤ28にオイルポンプ27のドリブンギヤ29が噛合する。これらドライブギヤ28及びドリブンギヤ29は、ベアリング21(クランク軸受)とフライホイール25の間に配置される。
【0029】
オイルポンプ27は例えばトロコイド式等の形式のものであってよく、図7のようなポンプケーシング30内にインナロータ及びアウタロータが収容されている。ポンプケーシング30の内側には図8に示すように、吸引口27a及び吐出口27bを有する。吸引口27aから、クランクケース11の底部に貯留された潤滑オイルを吸引し、吸引した潤滑オイルを吐出口27bから吐出するようになっている。
【0030】
さて、本発明において車幅中心線C.L(図2(c)参照)に対して遠心クラッチ25が配置された側であって、図4図6等に示されるように側面視(特に図5)で遠心クラッチ25よりもその径方向外側にオイルフィルタ31が配置される。オイルフィルタ31自体の詳細説明は省略するが、概略円柱状もしくは円筒状を呈し、図4あるいは図6等に示されるような円筒状のケーシング32内に収容される。この場合、ケーシング32本体はクラッチカバー15の前端部付近の一部を凹状に形成してなり、そのケーシング32本体にカバー32Aが被さることで、ケーシング32内にオイルフィルタ31用の収容スペースが形成される。
【0031】
更にオイルフィルタ31は図6に示されるように、前後方向で遠心クラッチ25と重なるように配置される。つまりこの例ではケーシング32の左右方向幅は図6から分かるように遠心クラッチ25の左右方向幅よりも大きく、車幅方向で見るとケーシング32の左右方向幅の領域内に遠心クラッチ25が配置される。
また、オイルフィルタ31は図4図6等に示されるように、遠心クラッチ25よりも前方に配置し、且つその後方にはクラッチ19(メインクラッチ)が配置される。
また、オイルフィルタ31は図5等に示されるように、側面視でオイルポンプ27よりも上方に配置される。
【0032】
ここで、クランクケース11の前部にはセルモータ33が搭載される。このセルモータ33は図2(c)に示されるように、車幅中心線C.Lが通るように配置される。オイルフィルタ31は図5に示されるように、側面視でセルモータ33と一部が重なるように配置される。
【0033】
上記の場合、クラッチ19は図6に示されるように、車幅方向でベアリング21とフライホイール25の間に配置される。
また、遠心クラッチ25はクランクシャフト20のクランクウェブ20aの回転半径よりも小径とする。このように遠心クラッチ25を小径とすることで、オイルフィルタ31をフライホイール25よりも外側に容易に配置可能になると共に、オイルフィルタ31の前方への突出量を抑制することができる。
【0034】
上記構成において、特に潤滑系ではエンジンが始動するとクランクシャフト20が回転することで、ドライブギヤ28を介してオイルポンプ27が駆動される。オイルポンプ27は吸引口27aから、クランクケース11の底部に貯留された潤滑オイルを吸引し、その吸引した潤滑オイルを吐出口27bから吐出する。図8に示したように吐出口27bから吐出された潤滑オイルは油路P1を介して、上方に配置されたオイルフィルタ31へ送り込まれる。オイルフィルタ31で浄化された潤滑オイルは油路P2から、クランクシャフト20及びシリンダ12回り、更にトランスミッション等の潤滑を要する部位に潤滑オイルを供給するための油路P3へと給送される。
【0035】
特に本発明では先ずオイルフィルタ31は、遠心クラッチ25が配置された側に配置される。オイルフィルタ31とオイルポンプ27を共に遠心クラッチ25と同じ側に配置することで、オイル通路(油路P1〜油路P3)がクランクケース11の右側に集約される。これによりエンジン全体としてのオイル通路長を短縮することで、その軽量化を図ると同時にオイル給送中の圧力損失を低減し、実質的にオイルポンプ27の小型化を実現することができる。
この場合、遠心クラッチ25よりもその径方向外側にオイルフィルタ31が配置されることで、遠心クラッチ25とオイルフィルタ31とが車幅方向では重ならない。両者が車幅方向に重なると、オイルフィルタ31が側方(この例では右方)に突出することとなり、車幅が増加せざるを得ない。本発明によれば、そのような車幅増加を回避して、実質的に車幅を縮小することができ、ライダーの足付き性等を有効に向上することが可能となる。
【0036】
また、ドライブギヤ28及びドリブンギヤ29は、ベアリング21(クランク軸受)と遠心クラッチ25の間に配置される。
オイルフィルタ31を遠心クラッチ25の外側に配置することで、オイルポンプギヤを遠心クラッチ25側に配置しても、オイルフィルタ31がクランクカバー15から外側に張り出すことがない。
【0037】
また、オイルフィルタ31は、前後方向で遠心クラッチ25と重なるように配置されることで、オイルフィルタ31を遠心クラッチ25よりも突出しない構成とすることができる。この点でも実質的に車幅を縮小することが可能となる。
また、オイルフィルタ31は、遠心クラッチ25よりも前方に配置し、且つその後方にはクラッチ19が配置される。後方にクラッチ19が配置されるため、前方の空いたスペースを有効活用することができる。
【0038】
また、オイルポンプ27は、車幅中心線C.L(図2(c)参照)に対して遠心クラッチ25が配置された側に配置される。
このようにオイルフィルタ31とオイルポンプ27をクランクケース11の同一側に配置することで、オイル通路長を有効に短縮することができる。
【0039】
また、オイルフィルタ31は、側面視でオイルポンプ27よりも上方に配置される。
オイルフィルタ31をオイルポンプ27よりも下方に配置すると、ポンプロータ室に空気が溜まって、そのままでは始動時の初期潤滑やポンプ効率の低下を招来する。オイルフィルタ31をオイルポンプ27よりも上方に配置することで、そのような不都合をなくすると共に、オイル通路の迂回路をとらないことでオイル通路の短縮が可能になる。
【0040】
また、オイルフィルタ31は、側面視でセルモータ33と一部が重なるように配置される。
セルモータ33が車幅方向へ突出しないため、重量バランスの適正化による操縦安定性の向上や、ライダーの足付き性の向上に寄与することができる。
【0041】
また、クラッチ19は、車幅方向でベアリング21と遠心クラッチ25の間に配置される。
このように重量物であるクラッチ19をクランク軸受であるベアリング21に近づけた配置することで、クランクシャフト20に作用する曲げモーメントを小さく抑えることができる。
【0042】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上記実施形態において空冷式4サイクル単気筒エンジンの例で説明したが、並列2気筒エンジン等の場合にも本発明を同様に適用可能である。また、空冷式エンジンに限らず、水冷式エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 エンジンユニット、11 クランクケース、12 シリンダ、13 シリンダヘッド、15 クラッチカバー、16 マグネトカバー、18 エキゾーストポート、19 クラッチ、20 クランクシャフト、21 ベアリング、22 ドライブギヤ、23 カウンタシャフト、24 ドリブンギヤ、25 遠心クラッチ、26 マグネト、27 オイルポンプ、28 ドライブギヤ、29 ドリブンギヤ、30 ポンプケーシング、31 オイルフィルタ、32 ケーシング、33 セルモータ、100 自動二輪車。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10