(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸筒内に、芯繰り出し機構が配置されたシャープペンシルであって、前記芯繰り出し機構は、複数の芯を収納する芯収納部と、その芯収納部の前端に連続し一本の筆記芯を挿通可能とする芯挿通孔を有し、その芯挿通孔の内径形状を七角以下の正多角形形状に形成したことを特徴とするシャープペンシル。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャープペンシルにおける芯タンクとして、複数の芯を収納する芯収納部と、前記芯収納部の前端に連続し一本の筆記芯を挿通可能とする芯挿通孔を有し、前記芯収納部から芯繰り出し機構へ芯を供給する構造が知られている。
その一例が、芯収納部から連続する芯挿通孔を一本の筆記芯が挿通可能となるよう正円状に形成した芯タンクである(特開2011−851号公報(特許文献1))。
【0003】
前記特許文献1に記載の芯タンクは、芯収納部から連続する芯挿通孔を一本の筆記芯が挿通可能となるよう正円状に形成したことで、芯挿通孔に筆記芯が二本入り込み芯同士が競って芯が出なくなることを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
作用について説明する。本発明は、軸筒内に、芯繰り出し機構が配置されたシャープペンシルであって、前記芯繰り出し機構は、複数の芯を収納する芯収納部と、その芯収納部の前端に連続し一本の筆記芯を挿通可能とする芯挿通孔を有し、その芯挿通孔の内径形状を
七角以下の正多角形形状に形成している。このため、1本目の筆記芯を繰り出す際や、前記1本目筆記芯を追随するように繰り出す2本目の筆記芯が、芯収納部から芯挿通孔を通る際に、芯挿通孔の内壁に沿って移動しようとした場合でも、多角形形状の頂点に当接することでその移動が制御される。そして、その結果、筆記芯が芯挿通孔を通過する間の無駄な動きを無くすことができる。さらに、芯挿通孔の中心を向いた辺で内壁を構成することで、筆記芯が芯挿通孔の中心に落ち易くなり、チャック体の芯把持部へ速やかな芯の供給ができ、芯繰り出しの良好なシャープペンシルを提供することができる。
【0010】
本発明の第1実施例を
図1〜
図13に示し、説明する。尚、以下では、後述の先部材4側を前方と言い、押圧部材18側を後方という。
【0011】
軸筒1は、前方にステンレス製のパイプ2と内部に芯保持部材3が圧入固定されている先部材4と、その先部材4の後端に螺着により配置された軸筒本体5とから構成されており、その軸筒1の内部には芯繰り出しユニット(芯繰り出し機構)6が配置されている。前記軸筒本体5は、前記先部材4と前記芯繰り出しユニット6とで挟みこまれており、後述するように、前記先部材4と前記芯繰り出しユニット6とを螺着させることで、軸筒本体5を固定している。
芯繰り出しユニット(芯繰り出し機構)6は、芯を収納する芯タンク7を有し、その芯タンク7の前端には中継ぎ部材8が圧入によって固定されている。そして、その中継ぎ部材8の前方には、筆記芯Lを把持、解放するためのチャック体9が固定されており、そのチャック体9には、チャック体9の開閉を行うチャックリング10が囲繞した状態で配置されている。チャック体9は、その前方に形成された芯把持部38により、筆記芯Lの把持、解放を行う。更に、前記中継ぎ部材8、チャック体9、チャックリング10を内包するように中ネジ部材11が配置されている。その中ネジ部材11の位置決めは、中ネジ部材11の前方内部に形成された段部12とチャックリング10の後端面との当接、及び、中ネジ部材11の後方に形成された大径部13の後端と前記芯タンク7の前方であり後述の第一縮径部36と第二縮径部37により形成された段部14の前端との間に張設された弾撥部材(コイルスプリング)15により、なされている。その弾撥部材15は、芯繰り出しユニット6が、軸筒1内に配置された際に、チャック体9、中継ぎ部材8及び芯タンク7を軸筒1の後方に付勢する。また、芯タンク7の後端には、消しゴム受け部材16とその消しゴム受け部材16に圧入により保持された消しゴム17、そして、押圧部材18が着脱自在に取り付けられている。
ここで、先部材4と芯繰り出しユニット6による軸筒本体5の固定方法について詳述する。前記先部材4の後方内面には、雌螺子部19が形成されており、一方、前記芯繰り出しユニット6における中ネジ部材11の縮径部14の外面には、雄螺子部20が形成されている。また、前記軸筒本体5は、その前方内面に小径部21を有し、その小径部21によりその小径部21の後端には段部22が形成されている。その軸筒本体5の段部22と前記中ネジ部材11の大径部13の前端とを当接するように構成することで、前記芯繰り出しユニット6の軸筒本体5内での位置決めをし、その軸筒本体5から突出した前記中ネジ部材11の雄螺子部20と先部材4の雌螺子部19とを、先部材4と軸筒本体5とが当接するまで螺着せしめることで、軸筒本体5は固定される。
符号23は、前記軸筒本体5の上部に取り付けられた金属製のクリップである。このクリップ23は、前記軸筒本体5の後方に形成された凹部24に嵌め込まれている。
【0012】
前記軸筒本体5の前方部には、縮径部(把持部)25が形成されており、その縮径部(把持部)25には金属製の円筒状の把持部材26が装着されている。尚、本実施例では、前記軸筒本体5は、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)により形成しているが、これに限らず、任意の材料から内軸本体を形成することができる。
前記軸筒本体5の縮径部25の前方部には、円周突部27が形成されており、この円周突部27が前記把持部材26を装着する際の乗り越え段部となっている。更に、前記軸筒本体5の縮径部25の後方部には、軸筒1の前方方向に突出した台形形状部(台形状部28)が形成されており、この軸筒側台形状部28は、前記縮径部25よりも大径となっている。
【0013】
次に、本実施例における芯タンク7について詳述する(
図6〜
図9)。
本実施例の芯タンク7の内径部の後方には、最も内径の大きい芯収納部29が形成され、筆記芯Lの減少に合わせて適宜供給される予備芯L´が収納されている。前記芯収納部29は前端に向けて縮径するなだらかなテーパ状であり、前記予備芯L´が、2本から5本程度入るような内径となっている。尚、前記芯収納部29をなだらかなテーパ状に形成しているのは、芯タンク7の成形時に、コアピンの離形を良くするためである。
前記芯収納部29の前端には、筆記芯が1本のみ通過できる内径の芯挿通孔30が正七角形に形成されている。芯挿通孔30と前記芯収納部29との間には、緩やかなテーパ部31が連続的に形成されており、このテーパ部31により、縮径された芯挿通孔30への予備芯L´の速やかな通過を可能にしている。さらに、前記芯挿孔30の前端には芯挿通孔30よりも拡径された圧入部32が形成され、中継ぎ部材8の圧入を容易にしている。本実施例では、圧入部32に中継ぎ部材8を圧入固定しているが、チャック体9などの別部材を圧入しても良いことは言うまでもない。
本実施例にあたっては、芯挿通孔30の内径形状を多角形形状としたことを特徴としている。後述するが、内径形状を多角形に形成することで、芯挿通孔内に筆記芯Lの動きを制御することができる頂点33と、芯挿通孔30の中心を向く辺34を形成することができる。
【0014】
続いて、前記芯タンク7の外径形状について詳述する(
図6)。
芯タンク7の外径部は最大径部35、第一縮径部36、第二縮径部37からなる。最大径部35は前述した芯収納部29に沿って一律の肉厚で形成され、芯収納部29と同様になだらかなテーパ形状となっている。最大径部35の前端には、内部の芯収納部29から芯挿通孔30への縮径に合わせるように第一縮径部36が断面正円状に形成されている。このように、内径形状の縮径に合わせて外径部も縮径し、部品全体での肉厚を略均一にすることで成形の際のヒケを防止することができる。さらに、第一縮径部36の前方には第二縮径部37が設けられ、芯タンク37を弾発部材15によって後方へ付勢する為の段部36を形成している。
【0015】
以上のように、本実施例の芯タンク7にあたっては、芯挿通孔30の内径形状を正七角形に形成している(
図8、
図9)。内径形状を正七角形に形成することで、1本目の筆記芯を繰り出す際や、前記1本目筆記芯を追随するように繰り出す2本目の筆記芯が、芯収納部29から芯挿通孔30内を通過する際に、芯挿通孔30の内壁に沿って移動しようとしても、筆記芯Lが頂点33に当接することで移動が制御される。そして、その結果、筆記芯Lの無駄な動きを無くすことができる。さらに、芯挿通孔30の中心を向いた辺34で内壁を構成することで、辺34に当接した筆記芯Lは中心に向かって跳ね返され、芯挿通孔30の中心に落ち易くなる。以上により、チャック体9の芯把持部38へ速やかな筆記芯Lの供給ができ、芯繰り出しの良好なシャープペンシルを提供することができる。
仮に、従来技術の様に内径形状が正円状で筆記芯Lを芯挿通孔30の中心に落ち易くしようとする場合、筆記芯Lと芯挿通孔30とのクリアランスを狭くする方法が考えられる。しかし、前記クリアランスが狭くなると芯収納部29から芯挿通孔30への通りが悪くなり、さらにチャック体9や中継ぎ部材8などの部品が少しでも芯挿通孔30の軸心とずれて配置されていると芯挿通孔の内壁で筆記芯Lを擦ってしまい筆記芯Lが繰り出しにくくなってしまう恐れがある。つまり、芯挿通孔30の内径形状を本実施例のように正七角形にすることで筆記芯Lと芯挿通孔30とのクリアランスも確保でき良好な芯繰り出しが実現できる。
本実施例中では芯挿通孔30の内径形状を正七角形としているが、筆記芯の移動を制御できる頂点33と芯挿通孔30の中心を向いた辺34とで構成されていればいかなる多角形形状であっても同様の効果が得られ、芯繰り出しの良好なシャープペンシルを提供することができる。例えば、
図10に示すように、芯挿通孔30の内径形状が正六角形であっても良い。また、多角形形状の頂点33は加工の際などにRが付いたとしても、使用する芯径よりも小さいRであれば影響はなく、その場合も同様に、芯繰り出しの良好なシャープペンシルを提供することができる。
【0016】
尚、本実施例において、芯タンク7はポリプロピレン樹脂(PP)から形成しているが、芯タンク7の形成材料はポリプロピレン樹脂(PP)に限らない。芯タンク7を形成するにあたって使用する材料としては、芯挿通孔30を多角形形状に形成できれば良い。材料の具体的な例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレンテレフタレート樹脂(PET)などの樹脂材料が挙げられるが、この例に限らず、芯挿通孔30を多角形形状に形成できる材料であれば適宜使用することが出来る。
【0017】
また、本実施例にあたっては芯挿通孔30の内径形状を正円状から多角形形状にすることで芯挿通面積を狭くしているが、これにより、異なる芯径のシャープペンシルであっても芯タンク7を共通で使用することができる。尚、ここで言う芯挿通面積とは、芯挿通孔30の横断面積のことである。
例えば、本実施例の構成で、芯挿通孔30をφ0.78に内接する正七角形に形成することで、JIS記載の表示直径0.3の筆記芯(0.3mm芯)とJIS記載の表示直径0.5の筆記芯(0.5mm芯)において芯タンク7の共通使用が可能となる。多角形形状を、奇数の頂点を有する多角形で形成することにより、その横断面で頂点33の対面が辺34になる。そして、これにより効果的に芯挿通面積を狭くできる。0.3mm芯を使用した場合、
図11に示すように筆記芯Lが芯挿通孔30の中心に存在していると、予備芯L´が通過可能な隙間がなく、確実に予備芯L´の侵入を防ぐことができる。
図11における破線部は、0.3mmの前記予備芯L´を表す仮想線である。仮に、
図12に示すように1本目や2本目を繰り出す際に予備芯L´が並列して芯挿通孔30を通過しようとした際でも、芯挿通面積は0.3mm芯が並列した幅よりも狭く形成されているので2本同時に通過することはない。
図12における破線部は、0.3mm芯を表す仮想線である。また、
図13に示すように0.5mm芯を使用した場合も筆記芯Lと芯挿通孔30との間に十分なクリアランスを形成でき筆記芯の速やかな通過を可能となる。ここで、0.3mm芯が二本入らないように芯挿通孔の芯挿通面積を確保し、0.5mm芯使用時に筆記芯と芯挿通孔内壁との間に充分なクリアランスをとるにはφ0.79〜φ0.75に内接する多角形形状であることが望ましい。φ0.79よりも大きい円に内接する多角形とした場合では、対面する頂点同士の間隔が0.3mm芯2本分の外径と同等かそれ以上になってしまう。そして、0.3mm芯が並列して2本同時に芯挿通孔30を通過しようとした際に、芯の端面が削れていた場合や、ばらつきにより0.3mm芯の外径が小さくできていた場合では、芯挿通孔30内に筆記芯Lが2本入ってしまい、筆記芯が詰まったり、筆記芯同士が競ってしまい、筆記芯が出なくなってしまう恐れがある。一方、φ0.74よりも小さい円に内接する多角形とした場合では、0.5mm芯と芯挿通孔との間に十分なクリアランスが取れず筆記芯Lと芯挿通孔30の内壁で競ってしまい、芯の繰り出しが遅延してしまう恐れがある。
この他、0.3mm芯と0.5mm芯との共通化に限らず、芯挿通孔の内径形状を多角形形状にすることで0・5mm芯と0.7mm芯(JIS記載の表示直径0.7の筆記芯)や0.7mm芯と0.9mm芯(JIS記載の表示直径0.9の筆記芯)など異なる芯径での芯タンクの共通化を可能にすることができる。以上のように、異なる芯径でも芯タンクを共通化することで部品の組み間違いをなくし、さらにコストダウンも推進することができる。
【0018】
さらに、本実施例にあっては、芯挿通孔30を多角形形状にしたことで筆記芯Lと予備芯L´が芯挿通孔30内で長手方向に重なった状況で筆記した場合でも、予備芯L´は多角形の頂点33で動きが規制される為、筆記芯Lと予備芯L´の端面同士の擦れによる摩耗を防ぐことができ、摩耗で発生する芯カスによる芯挿通孔30の詰まりを解消でき、さらに予備芯L´を初期状態のまま保管することができる。
この他にも、組立の際に芯タンク内に多角形形状部があることで芯タンクが回転しない様に組立治具に固定することができ、中継ぎ部材やチャック体などの圧入を正確に行うことができる。
【0019】
この他、本実施例では芯タンク7において筆記芯が1本のみ通過できる内径の芯挿通孔30を形成し多角形形状としているが、芯挿通孔30は、芯タンク7の芯収納部と連続し、チャック体9の芯把持部38に芯を供給するまでの間に、筆記芯Lが1本のみ通過できる多角形形状の内径で形成されていれば良く、芯タンク7に形成することに限らない。即ち、芯タンク7の前端に圧入固定されたチャック体9の内径部に前記芯挿通孔30を形成しても同様の効果を得ることができる(第1変形例。
図14〜
図15)。尚、第1実施例と同様に、チャック体9と芯タンク7の間に中継ぎ部材8を介す場合にあっては、中継ぎ部材8の内径部に、筆記芯Lが1本のみ通過できる内径が多角形形状の芯挿通孔30を形成しても良い。
本変形例では、チャック体9の後端からチャック体9の芯把持部38までの内径形状をφ0.78に内接する正七角形で形成している。チャック体9に芯挿通孔30を設けることで、チャック体9及び芯タンク7に局部的な縮径部をなくすことができる。これにより、縦断面で肉厚を略均一にでき、成形時のヒケによる芯挿通孔30の拡径や多角形形状の変形を防ぎ、より確実に芯挿通孔30を形成することが出来る為、チャック体9の芯把持部38へ速やかな芯の供給ができる。
仮に、芯挿通孔30を芯タンク7などの内径部の局部的な縮径により形成する場合では、芯挿通孔30の内径形状と外径形状を同一にし、横断面で肉厚を均一にすることで、より確実に成形時のヒケを防ぐことができる(第2変形例。
図16)