特許第6015216号(P6015216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6015216-印刷装置 図000002
  • 特許6015216-印刷装置 図000003
  • 特許6015216-印刷装置 図000004
  • 特許6015216-印刷装置 図000005
  • 特許6015216-印刷装置 図000006
  • 特許6015216-印刷装置 図000007
  • 特許6015216-印刷装置 図000008
  • 特許6015216-印刷装置 図000009
  • 特許6015216-印刷装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015216
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20161013BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20161013BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20161013BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   B41J29/38 D
   B41J29/46 D
   G03G21/00 398
   G03G21/14
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-173401(P2012-173401)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-30972(P2014-30972A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】程 飛
【審査官】 岡▲崎▼ 輝雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−286389(JP,A)
【文献】 特開2009−301380(JP,A)
【文献】 特開2006−062279(JP,A)
【文献】 特開2005−313489(JP,A)
【文献】 特開2000−324279(JP,A)
【文献】 特開2009−223276(JP,A)
【文献】 特開2006−110833(JP,A)
【文献】 特開2006−201198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 29/46
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがない場合,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該印刷ジョブがカラーかモノクロかを判断し,カラーであれば,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,モノクロであれば,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブが複数ある場合に,前記複数の印刷ジョブのうち,カラーの印刷ジョブがあれば,当該補正処理の完了および少なくとも当該カラーの印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,カラーの印刷ジョブがなければ,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,消耗品の残使用量が所定量未満か否かを判断し,消耗品の残使用量が所定量未満であれば,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,消耗品の残使用量が所定量以上であれば,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記補正処理は,各々異なる補正値を取得する少なくとも2つのサブ補正処理を実行する処理であり,
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記サブ補正処理を実行しており,かつ前記複数のサブ補正処理のうちの最後のサブ補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,前記複数のサブ補正処理のうち未実施のサブ補正処理の数が実行済みのサブ補正処理と実行中のサブ補正処理との加算数より少ないか否かを判断し,前記未実施のサブ補正処理の数が前記加算数より少ない場合には,前記最後のサブ補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,前記未実施のサブ補正処理の数が前記加算数以上の場合には,前記補正処理を中止させた後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記補正処理は,各々異なる補正値を取得する少なくとも2つのサブ補正処理を実行する処理であり,
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記サブ補正処理を実行しており,かつ前記複数のサブ補正処理のうちの最後のサブ補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,実行中のサブ補正処理が前記最後のサブ補正処理であるか否かを判断し,当該最後のサブ補正処理であれば,当該最後のサブ補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,当該最後のサブ補正処理でなければ,前記補正処理を中止させた後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っている場合,前記省電力モードを経ることで前記補正処理の実行条件が変化するか否かを判断し,前記補正処理の実行条件が変化するのであれば,前記補正処理の完了および前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,前記補正処理の実行条件が変化しないのであれば,前記補正処理の完了後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
シートに画像を印刷する印刷部と,
自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,
前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,
前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部と,
を備え
前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該印刷ジョブを印刷するか否かをユーザに選択させ,印刷することが選択された場合には,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,印刷しないことが選択された場合には,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,消費電力を抑える省電力モードを有する印刷装置に関する。さらに詳細には,電力供給モードから省電力モードに移行する移行条件を満たした際の,制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,印刷装置では,省電力化を実現するため,電力供給を制限しない電力供給モードから,一部の構成要素への電力供給を制限して消費電力を抑える省電力モードに移行するものがある。
【0003】
省電力モードについて開示されている文献としては,例えば特許文献1がある。この特許文献1には,待機状態時の消費電力を抑える低消費電力モード(省電力モードに相当)を有する印刷装置であって,装置が動作中にユーザが電力供給モードから低消費電力モードに移行する移行指示を入力した場合に,低消費電力モードへの移行ができない旨のメッセージを表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−255968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の印刷装置には,次のような問題があった。すなわち,印刷装置は,印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を必要に応じて実行する。この補正処理を実行する実行条件には複数の種類が有り,実行条件によっては,省電力モードを経てしまうと補正値の信頼性が著しく低下してしまう場合がある。そのような場合,電力供給モードに復帰した際に,補正処理をやり直すことになる。そのため,補正値を直ぐに利用できる印刷ジョブがない場合に補正処理を行ったとしても,その補正処理が無駄になってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は,前記した従来の印刷装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,省電力モードを有する印刷装置であって,無駄な補正処理の実行を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,シートに画像を印刷する印刷部と,自装置の各構成要素に電力を供給する電力供給モードと,自装置の電力消費量を前記電力供給モード時と比較して低減する省電力モードとを有し,前記電力供給モードから前記省電力モードへの移行条件を満たすことを条件に,前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる移行部と,前記印刷部の印刷特性を調整する補正値を取得する補正処理を実行する補正部と,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させる制御部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本明細書で開示される印刷装置は,電力供給状態が異なる電力供給モードと省電力モードとを有し,電力供給モードから省電力モードへの移行条件を満たした際,補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,省電力モードに移行させる。移行条件としては,例えば,移行指示のユーザ入力,最終操作からの経過時間ないし最終印刷からの経過時間が閾値以上等が該当する。補正処理としては,例えば,位置ずれ補正,ガンマ補正が該当する。
【0009】
すなわち,本明細書で開示される印刷装置は,電力供給モードから省電力モードへの移行条件を満たした際,補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合には,省電力モードに移行する前に,補正処理およびその後に実行される印刷ジョブの印刷処理を完了させる。これにより,移行条件を満たした際に実行中であった補正処理の結果を,無駄なく印刷処理に利用することができる。
【0010】
また,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがない場合,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。印刷ジョブがない場合には,補正処理が無駄になる可能性がある。そのため,補正処理の無駄を回避するには,印刷予定がない状態での補正処理は直ちに中止した方が好ましい。
【0011】
また,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該印刷ジョブがカラーかモノクロかを判断し,カラーであれば,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,モノクロであれば,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。モノクロ印刷は,補正処理の恩恵が小さいため,省電力モードへの早期移行を図る上で,補正処理を中止して省電力モードへ移行する方が好ましい。一方,カラー印刷は,補正処理の恩恵が大きいため,補正処理を完了させてその補正結果を利用して印刷する方が好ましい。
【0012】
また,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブが複数ある場合に,前記複数の印刷ジョブのうち,カラーの印刷ジョブがあれば,当該補正処理の完了および少なくとも当該カラーの印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,カラーの印刷ジョブがなければ,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。カラー印刷は,補正処理の恩恵が大きいため,補正処理を完了させてその補正結果を利用して少なくともカラーの印刷ジョブを印刷することで,補正処理の無駄を省くことができる。一方,カラー印刷の機会がなければ,補正処理を中止して省電力モードへ移行する方が好ましい。なお,カラーの印刷ジョブとモノクロの印刷ジョブとが混在する場合,カラーとモノクロとの両方とも印刷を行ってもよいが,カラーの印刷ジョブのみを印刷する方が,補正処理の無駄を省くとともに,省電力モードへの早期移行に資する。
【0013】
また,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,消耗品の残使用量が所定量未満か否かを判断し,消耗品の残使用量が所定量未満であれば,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,消耗品の残使用量が所定量以上であれば,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。消耗品としては,例えば着色剤,現像ローラ,感光体,ベルトが該当する。消耗品の残使用量としては,例えば着色剤であれば残着色剤量,現像ローラ等の回転体であれば残回転数が該当する。消耗品の残使用量が多い場合には,補正処理に伴う消耗品の使用によって直ちに印刷処理ができなくなる可能性は低い。そのため,補正処理の無駄が多少許容される。このことから,補正処理を中止して省電力モードへ移行する方が好ましい。一方,消耗品の残使用量が少ない場合には,補正処理の無駄が許容し難い。そのため,補正処理を完了させてその補正結果を利用して印刷することで,補正処理の無駄を省く方が好ましい。なお,補正処理の中止後,印刷ジョブを印刷してもしなくてもよいが,印刷しない方が省電力モードへの早期移行に資する。
【0014】
また,前記補正処理は,各々異なる補正値を取得する少なくとも2つのサブ補正処理を実行する処理であり,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記サブ補正処理を実行しており,かつ前記複数のサブ補正処理のうちの最後のサブ補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,前記複数のサブ補正処理のうち未実施のサブ補正処理の数が実行済みのサブ補正処理と実行中のサブ補正処理との加算数より少ないか否かを判断し,前記未実施のサブ補正処理の数が前記加算数より少ない場合には,前記最後のサブ補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,前記未実施のサブ補正処理の数が前記加算数以上の場合には,前記補正処理を中止させた後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。複数のサブ補正処理で構成される補正処理において,未実施のサブ補正処理の数が加算数より少ない場合には,補正処理を中止した際のこれまでのサブ補正処理の無駄が多くなる。そのため,最後のサブ補正処理まで完了させてその補正結果を利用して印刷することで,補正処理の無駄を省く方が好ましい。一方,未実施のサブ補正処理の数が前記加算数以上であれば,補正処理を中止したとしてもこれまでのサブ補正処理の無駄が少ない。また,サブ補正処理を全て完了させるとなると,省電力モードへの移行が遅延する。そのため,補正処理を中止して省電力モードへの早期移行を図る方が好ましい。
【0015】
また,前記補正処理は,各々異なる補正値を取得する少なくとも2つのサブ補正処理を実行する処理であり,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記サブ補正処理を実行しており,かつ前記複数のサブ補正処理のうちの最後のサブ補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,実行中のサブ補正処理が前記最後のサブ補正処理を実行中か否かを判断し,当該最後のサブ補正処理であれば,当該最後のサブ補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,当該最後のサブ補正処理でなければ,前記補正処理を中止させた後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。最後のサブ補正処理の場合にのみ,補正処理を完了させることで,補正処理の完了待ちが最小限になり,省電力モードへの移行遅延を抑えることができる。
【0016】
また,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っている場合,前記省電力モードを経ることで前記補正処理の実行条件が変化するか否かを判断し,前記補正処理の実行条件が変化するのであれば,前記補正処理の完了および前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,前記補正処理の実行条件が変化しないのであれば,前記補正処理の完了後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。補正処理の実行条件が変化しないのであれば,補正処理の効果が維持できる。そのため,電力供給モードに復帰した後も補正値を利用することができ,補正処理が無駄にならない。よって,印刷を行うことなく速やかに省電力モードに移行する方が好ましい。
【0017】
また,前記制御部は,前記移行条件を満たした際,前記補正部が前記補正処理を行っており,かつ前記補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合,当該印刷ジョブを印刷するか否かをユーザに選択させ,印刷することが選択された場合には,当該補正処理の完了および当該印刷ジョブを印刷した後に,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させ,印刷しないことが選択された場合には,当該補正処理を中止させた後,前記移行部にて前記電力供給モードから前記省電力モードに移行させるとよい。印刷するか否かの判断をユーザが選択できる方が,ユーザにとって利便性が高い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,省電力モードを有する印刷装置であって,無駄な補正処理の実行を低減する技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態にかかるプリンタの外観を示す斜視図である。
図2図1に示したプリンタの内部構成を示す断面図である。
図3】マークセンサの配置を示す図である。
図4】実施の形態にかかるプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図5】第1の形態にかかる省電力モード移行処理の手順を示すフローチャートである。
図6】印刷実行ジョブを選択する選択画面を示す図である。
図7】第2の形態にかかる省電力モード移行処理の手順を示すフローチャートである。
図8】カラーの印刷ジョブを抽出して印刷を継続する概念を示す図である。
図9】複数のサブ補正処理からなる補正処理において電源スイッチが押下されたタイミングと省電力モードへ移行するタイミングとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0021】
[プリンタの全体構成]
本形態のプリンタ100は,図1に示すように,印刷を行う画像形成部10(印刷部の一例)と,印刷前のシートを収容する給紙トレイ91と,印刷後のシートを収容する排紙トレイ92とを備えている。また,画像形成部10の上面には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,OKボタン,キャンセルボタン,テンキー,ユーザ認証ボタン等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられている。この操作パネル40により,動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になる。
【0022】
また,画像形成部10の上面には,操作パネル40のボタン群42とは別に,電力の供給状態を切り替える電源スイッチ25が設けられている。プリンタ100は,電力の供給状態を表すモードとして,全ての構成要素に電力供給を行う電力供給モードと,一部の構成要素への電力供給を制限して消費電力を抑える省電力モードとを有している。プリンタ100は,ユーザによって電源スイッチ25が押下された際,電力供給モードであれば省電力モードに切り替え,省電力モードであれば電力供給モードに切り替える。各モードの詳細については後述する。
【0023】
[プリンタの画像形成部の構成]
続いて,プリンタ100の画像形成部10の構成について,図2を参照しつつ説明する。画像形成部10は,電子写真方式によってトナー像を形成し,そのトナー像を用紙に転写するプロセス部50と,用紙上の未定着のトナーを定着させる定着装置8とを備えている。また,画像形成部10の下方には,画像転写前の用紙を載置する給紙トレイ91が
あり,画像形成部10の上方には,画像転写後の用紙を載置する排紙トレイ92がある。
【0024】
また,画像形成部10は,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kに光を照射する露光装置53と,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kの転写位置に用紙を搬送する搬送ベルト7と,搬送ベルト7上に形成されたパターン画像を検出するマークセンサ61とを備えている。
【0025】
また,プリンタ100内には,底部に位置する給紙トレイ91に収容された用紙が,給紙ローラ71,レジストローラ72,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ76を介して上部の排紙トレイ92への導かれるように,略S字形状の搬送路11(図2中の一点鎖線)が設けられている。
【0026】
プロセス部50は,カラー画像の形成が可能であり,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応するプロセス部を並列に配置している。具体的には,Y色の画像を形成するプロセス部50Yと,M色の画像を形成するプロセス部50Mと,C色の画像を形成するプロセス部50Cと,K色の画像を形成するプロセス部50Kとを備えている。そして,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kは,用紙の搬送方向において互いに一定の距離をおいた状態で配置されている。
【0027】
プロセス部50では,感光体の表面が帯電装置によって一様に帯電される。その後,露光装置53からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置を介して,トナーが感光体に供給される。これにより,感光体上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0028】
搬送ベルト7は,搬送ローラ73,74によって張架された無端状のベルト部材であり,ポリカーボネート等の樹脂材からなる。搬送ベルト7は,搬送ローラ74が回転駆動されることにより紙面反時計回りに循環移動する。これにより,その上面に載置された用紙を,レジストローラ72側から定着装置8側に搬送する。
【0029】
画像形成部10は,給紙トレイ91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙を搬送ベルト7上に搬送する。そして,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。このとき,カラー印刷では,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kにてトナー像が形成され,用紙上で各トナー像が重ね合わせられる。一方,モノクロ印刷では,プロセス部50Kのみでトナー像が形成され,用紙に転写される。その後は,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0030】
また,マークセンサ61は,用紙の搬送方向におけるプロセス部50Y,50M,50C,50Kよりも下流であって定着装置8よりも上流に位置し,搬送ベルト7上に形成された画調整用のパターンを検知する。
【0031】
具体的に,マークセンサ61は,図3に示すように,搬送ベルト7の幅方向の右側に配置されたセンサ61Rと,左側に配置されたセンサ61Lとの,2つのセンサによって構成される。各センサ61R,61Lは,発光素子62(例えば,LED)と,受光素子63(例えば,フォトトランジスタ)とが一対となる反射型の光学センサである。マークセンサ61は,発光素子62にて搬送ベルト7の表面(図3中の点線枠E)に対して斜め方向から光を照射し,その光を受光素子63が受光する構成になっている。そして,画調整用のマーク66(図3中のマーク66は静的位置ずれ補正用のマークの一例)が通過する際の受光量と搬送ベルト7から直接受ける受光量との違いによって,画調整用のマークを検知できる。
【0032】
[プリンタの補正処理]
続いて,プリンタ100が実行する各種の補正処理について説明する。本形態のプリンタ100は,動的位置ずれ補正,静的位置ずれ補正,現像バイアス補正,ガンマ補正,の各補正処理を,各補正処理の実行条件に従って実行する。なお,これらの補正処理は一例であってこれらに限るものではない。
【0033】
動的位置ずれ補正は,感光体や搬送ローラ73,74の偏心やこれらを回転駆動するギアのピッチの狂い等に起因する,特定の周期を有する動的な画像位置のずれを調整する補正値を取得するための処理である。静的位置ずれ補正は,感光体や露光装置53の取り付け位置のずれ等に起因する,特定の周期を有しない静的な画像位置のずれを調整する補正値を取得するための処理である。現像バイアス補正は,プリンタ100が規定する理想濃度と,実際に形成したマークの濃度とのずれを調整する補正値を取得するための処理である。ガンマ補正は,外部のコンピュータによる指示濃度(指示階調)とプリンタ100自身の出力濃度とのずれを補正するための処理である。各補正処理では,専用のマークを形成し,マークセンサ61にてマークを読み取ることで,それぞれ補正値を取得する。
【0034】
補正処理の実行条件は,補正処理ごとに複数ある。そして,実行条件ごとに,補正処理の実行タイミングも異なる。例えば,カバーオープン,電源投入,あるいはユーザ指示を実行条件とする場合,実行タイミングはその実行条件を満たした即時となる。また,印刷枚数,連続起動時間,あるいは環境変化を実行条件とする場合,実行タイミングはその実行条件を満たした後に実行されるジョブの印刷前となる。
【0035】
なお,各マークの濃度にずれがあると,同じ画像形成位置に形成されたマークであっても,マークセンサ61での読み取り受光量にばらつきが生じる。このため,マークの検出位置にずれが生じ,画像形成位置を精度よく検出することが難しくなる。従って,動的位置ずれ補正ないし静的位置ずれ補正を実行する際には,現像バイアス補正もセットで実行し,さらに現像バイアス補正を動的位置ずれ補正ないし静的位置ずれ補正よりも先に実行する。
【0036】
また,ガンマ補正においても,プリンタ100自身に濃度ずれがあると,各色の濃度の特性変化を精度よく検出することが難しくなる。従って,ガンマ補正を実行する際には,現像バイアス補正もセットで実行し,さらに現像バイアス補正をガンマ補正よりも先に実行する。
【0037】
また,画像形成位置に動的位置ずれがあると,静的位置ずれを精度よく検出することが難しくなる。そのため,静的位置ずれ補正を実行する際には,動的位置ずれ補正もセットで実行し,さらに動的位置ずれ補正を静的位置ずれ補正よりも先に実行する。
【0038】
上記の補正の組み合わせを踏まえ,各補正処理が同時に実行条件を満たし,ある実行タイミングで複数の補正処理を実行する必要がある場合,当該実行タイミングにおける一連の補正では,次のような優先順序によって実行される。
1.現像バイアス補正
2.ガンマ補正
3.動的補正処理
4.静的補正処理
【0039】
[プリンタの電気的構成]
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。本形態のプリンタ100は,図4に示すように,画像形成部10と,操作パネル40と,各種構成要素への電力の供給を制御する給電制御部20(移行部の一例)と,画像形成部10を制御する制御部30と,外部デバイスと接続するための通信インターフェースとなるUSBインターフェース35およびネットワークインターフェース36とを備えている。なお,電源スイッチ25は,給電制御部20に含まれる。
【0040】
また,制御部30は,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34とを有している。ROM32には,プリンタ100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0041】
CPU31(補正部,制御部の一例)は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ100の各構成要素を制御する。
【0042】
USBインターフェース35は,他の装置との通信を可能にするインターフェースである。プリンタ100は,例えば,USBインターフェース35にUSBメモリが接続されている場合には,当該USBメモリに記憶されている画像データを読み出して出力することができる。USBインターフェース35の接続先は,USBメモリに限らず,例えばパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。
【0043】
ネットワークインターフェース36も,USBインターフェース35と同様に,他の装置との通信を可能にするインターフェースである。プリンタ100は,例えば,USBインターフェース35と同様に,ネットワークインターフェース36を介して接続する外部デバイスから画像データを受け付けて出力することができる。
【0044】
なお,プリンタ100と外部デバイスとの接続は,USBインターフェース35やネットワークインターフェース36を介する形態に限るものではない。例えば,プリンタ100が無線通信インターフェースを有している場合には,無線通信によって外部装置とデータ通信を行ってもよい。また,FAXインターフェースを有している場合には,電話回線を介してデータ通信を行うことが可能である。
【0045】
画像形成部10は,画像をシートに印刷する構成要素を含むものであり,前述したプロセス部50,定着装置8,シートを搬送する各種ローラが含まれる。また,各種ローラを駆動する駆動モータ79も含まれる。
【0046】
[給電制御]
続いて,プリンタ100の給電制御について説明する。プリンタ100は,少なくとも画像形成部10への電力供給を遮断し,電力消費量を低減する省電力モードと,全ての電源系統に電力を供給する電力供給モードとを有している。電力供給モードでは,画像形成部10,制御部30,操作パネル40,外部インターフェース,電源スイッチ25の全てに電力が供給され,印刷動作が可能になる。プリンタ100の起動直後は,電力供給モードで動作する。
【0047】
電力供給モードで動作中,省電力モードに移行するための条件を満たすと,省電力モードに移行する。本形態の省電力モードでは,画像形成部10,制御部30,操作パネル40および外部インターフェースへの給電を遮断する。これにより,印刷動作が不可能になり,電力供給モードよりも消費電力が抑えられる。各種構成要素への電力供給の切り換えは,給電制御部20が行う。一方,省電力モードであっても,給電制御部20への給電は継続される。給電制御部20は,電源スイッチ25のオンオフを検知するセンサを有しており,省電力モードであっても電源スイッチ25のユーザ操作を受け付ける。省電力モードで動作中,電源スイッチ25の押下を受け付けると,制御部30を含む全ての構成要素への電力供給を再開し,電力供給モードに移行する。
【0048】
本形態では,プリンタ100が電力供給モードから省電力モードに移行する移行条件としては,電源スイッチ25の押下,PC等の外部装置からの移行命令の受信,移行時刻として設定された時間に発行されるタイマイベントの受信の3つがあり,そのうち1つでも満たされれば電力供給モードから省電力モードに移行する。一方,省電力モードでは,外部インターフェースや操作パネル40に電力が供給されないため,プリンタ100が省電力モードから電力供給モードに移行する移行条件としては,電源スイッチ25の押下のみとなる。
【0049】
[省電力モード移行処理]
[第1の形態]
続いて,省電力モードへの切り替え動作を実現する省電力モード移行処理の手順について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。なお,省電力モード移行処理は,電力供給モードで動作中,省電力モードへの移行条件を満たしたことを契機に,CPU31によって実行される。
【0050】
省電力モード移行処理では,先ず,画像形成部10が補正処理を実行中か否かを判断する(S101)。補正処理を実行していなければ(S101:NO),S109に移行して画像形成部10が印刷処理中であるか否かを判断する。S109以降の処理については後述する。
【0051】
補正処理を実行している場合には(S101:YES),印刷待ちとなって待機している印刷ジョブがあるか否かを判断する(S102)。印刷ジョブがない場合には(S102:NO),実行中の補正処理が無駄になる可能性があるため,実行中の補正処理を中止する(S121)。S121の後は,印刷を行わず,省電力モードへの移行指示を出力し(S110),省電力モード移行処理を終了する。給電制御部20は,省電力モードへの移行指示を受け付けると,画像形成部10,制御部30,操作パネル40および外部インターフェースへの給電を遮断する。
【0052】
なお,S121での補正処理を中止する態様は,実行中の補正処理は完了させ,後続する補正処理を中止する態様であってもよいし,実行中の補正処理を中止する態様であってもよい。前者の場合は,例えば複数の補正処理が同時に実行条件を満たし,ある実行タイミングで複数の補正処理を実行する必要がある場合に,前述の優先順位に従って,一連の補正処理を実行することなる。このうち,実行中の補正処理までは完了させ,他の補正処理については中止することになる。補正処理は,マークを形成し,そのマークを回収する必要があることから,未回収のまま補正処理を中止すると,後の印刷に悪影響を与える可能性がある。そのため,画質への影響を回避する上では,実行中の補正処理は完了させる方が望ましい。一方,後者の場合は,実行中の補正処理の完了を待たないため,より速やかに省電力モードに移行することができる。
【0053】
印刷ジョブがある場合には(S102:YES),補正処理を中止することなく,実行中の補正処理が,プリンタ100が省電力モードに移行した際も当該補正処理によって得られる補正値の信頼性が維持される効果継続型の補正処理か否かを判断する(S106)。
【0054】
効果継続型か否かは,補正処理の実行条件によって判断できる。例えば,印刷枚数や現像ローラの回転数等の印刷量に基づく値が閾値以上であることを補正処理の実行条件とする場合,省電力モードを経たとしてもその実行条件は変化しない。そのため,補正値の信頼性は低下せず,電力供給モードに復帰した後もその補正値を継続して使用しても問題は生じ難い。従って,効果継続型であると判断できる。
【0055】
一方,環境変数(温度や湿度)に基づく値が閾値以上であることを補正処理の実行条件とする場合,省電力モードを経ると,機内環境が省電力モード移行前と電力供給モード復帰後とで大きく変化することも想定される。そのため,省電力モードに移行する直前の環境で最適な補正値を取得したとしても,電力供給モードに復帰した後の環境で最適な補正値にならない可能性があり,補正値の信頼性が低下する。従って,効果非継続型であると判断できる。効果非継続型の補正処理は,電力供給モードへの復帰時,あるいは復帰後の最初の印刷前に,必要に応じてあらためて実行されることになる。
【0056】
効果継続型の補正処理は,上述したようにその補正値が省電力モードを経た後でも利用できる。そのため,補正処理を完了させた方が望ましい。補正処理を完了させることで,電力供給モードへの復帰後に当該補正処理を実行する必要がなくなり,印刷の早期開始が期待できる。そこで,実行中の補正処理が効果継続型の場合には(S106:YES),補正処理の完了を待ち(S141),補正処理が完了した後に(S141:YES),給電制御部20に対して省電力モードへの移行指示を出力する(S110)。S110の後は,省電力モード移行処理を終了する。
【0057】
一方,実行中の補正処理が効果非継続型である場合には(S106:NO),その補正値の効果が継続しないため,その補正処理が無駄になってしまう可能性がある。そこで,補正処理を中止することなく,補正処理の完了を待つ(S107)。補正処理が完了した後は(S107:YES),印刷を開始し(S108),印刷待ちとなって待機している印刷ジョブを順次に実行する。この印刷時には,直前に実行された補正処理の補正値が利用される。その結果として,直前に実行された補正処理が無駄にならない。
【0058】
S108の後,あるいは省電力モードへの移行条件を満たした際に,補正処理を実行していなかった場合(S101:NO),画像形成部10にて印刷処理中か否かを判断する(S109)。S109では,印刷ジョブの全ページの印刷が完了するまで印刷処理中と判断する。印刷処理中の場合には(S109:YES),印刷処理の完了を待つ。印刷処理中でなければ(S109:NO),省電力モードへの移行指示を出力し(S110),省電力モード移行処理を終了する。
【0059】
なお,本形態の省電力モード移行処理では,実行中の補正処理が効果継続型の場合には(S106:YES),補正処理を完了させた後,速やかに省電力モードに移行しているが,S106の判断は無くてもよい。すなわち,補正処理の種類にかかわらず,印刷ジョブがなければ補正処理を中止し,印刷ジョブがあれば補正処理を完了させて印刷を開始してもよい。この場合,印刷ジョブがあった場合に(S102:YES),S107に移行すればよい。
【0060】
また,本形態の省電力モード移行処理では,印刷ジョブがあった場合に(S102:YES),補正処理の無駄を回避するために,補正処理の完了後,S108にてその印刷ジョブを印刷しているが,印刷が必要か否かをユーザに問い合わせてもよい。
【0061】
例えば,印刷ジョブがあった場合に(S102:YES),図6に示すような印刷実行ジョブ選択画面を表示部41に表示する。印刷実行ジョブ選択画面では,省電力モードへの移行条件を満たした際にジョブキューに登録されている印刷ジョブを一覧表示するとともに,各印刷ジョブについて実行するか否かの選択を可能にする。そして,ユーザによる選択を受け付けた後,S107に移行して補正処理の完了を待ち,S108では選択された印刷ジョブを印刷する。選択されなかった印刷ジョブは印刷しない。これにより,よりユーザの事情に適した移行制御を実現できる。
【0062】
また,実施の形態の省電力モード移行処理にて中止対象となった補正処理については,電力供給モードに復帰した後,実行条件を満たす場合には実行される。この補正処理の実行タイミングとしては,復帰直後であってもよいし,復帰後の最初の印刷を実行する前であってもよい。
【0063】
[第2の形態]
続いて,省電力モード移行処理の他の形態について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の形態では,補正処理後の印刷ジョブがあったとしても,所定の条件を満たした場合には,補正処理を中止し,速やかに省電力モードに移行する。この点,第1の形態とは異なる。
【0064】
なお,第2の形態は,印刷ジョブがある場合(S102:YES)以降の処理が第1の形態と異なり,それ以外の処理は第1の形態と同じである。そのため,印刷ジョブがあった場合(S102:YES)以降の処理について説明し,それ以外の処理の説明は省略する。
【0065】
第2の形態の省電力モード移行管理処理では,印刷ジョブがある場合(S102:YES),トナーの残量が閾値以上か否かを判断する(S103)。トナーの残量は,プロセス部50の4色のトナーのうち,最も少ない色の残量としてもよいし,4色の合計残量としてもよい。また,トナーの残量は,トナーカートリッジ内に閾値以上のトナーがあるか否かを検知する光センサを配置して直接的に残量を検知してもよいし,現像ローラの回転数やドットカウンタから間接的に算出してもよい。
【0066】
トナーの残量が閾値以上の場合(S103:YES),例えば4色とも新品に近いような場合,多少のトナーの無駄が許容される。すなわち,補正処理の無駄が許容される。そこで,省電力モードへの早期移行を優先し,実行中の補正処理を中止する(S121)。
【0067】
トナーの残量が閾値より少ない場合(S103:NO),待機中の印刷ジョブが全てモノクロ印刷のジョブか否かを判断する(S104)。モノクロ印刷の場合,他色とのバランスが問題にならないことから,カラー印刷と比較して補正処理の恩恵が小さい。そのため,モノクロ印刷のみの場合には(S104:YES),S121に移行して補正処理を中止し,省電力モードへの移行を早める。
【0068】
また,待機中の印刷ジョブが複数あり,カラー印刷のジョブとモノクロ印刷のジョブとが混在する場合,印刷対象のジョブを,当該複数の印刷ジョブすべてであってもよいし,モノクロ印刷のジョブをキャンセルし,カラー印刷のジョブのみであってもよい。前者の場合には,補正処理の無駄をより確実に回避することができ,後者の場合には,補正処理の無駄を回避しつつ省電力モードへの移行を早めることが期待できる。なお,後者の場合,例えば図8に示すように,補正処理Aの実行中に電源スイッチ25の押下を検知し,ジョブキューにモノクロの印刷ジョブ1,カラーの印刷ジョブ2,モノクロの印刷ジョブ3,カラーの印刷ジョブ4の順に登録されていた場合,印刷ジョブ1と印刷ジョブ3とがキャンセルされ,印刷ジョブ4の実行完了後に省電力モードに移行することになる。
【0069】
待機中の印刷ジョブにカラー印刷のジョブが含まれる場合(S104:NO),補正処理の完了を待たない中止タイミングか否かを判断する(S105)。プリンタ100は,複数の補正処理が同時に実行条件を満たし,ある実行タイミングで複数の補正処理を実行する必要がある場合に,前述の優先順位に従って,一連の補正処理を実行する。この一連の補正処理を実行している場合,最後の補正処理が完了するまでこの一連の補正処理が完了しない。一方で,全ての補正処理が完了するまで待つとなると,省電力モードへの移行が著しく遅延する可能性がある。そこで,補正処理の完了を待たない中止タイミングを規定する。中止タイミングの場合には(S105:YES),S121に移行して補正処理を中止し,省電力モードへの移行を早める。
【0070】
例えば,この一連の補正処理として,図9に示すように補正処理A,補正処理B,補正処理Cを実行するものとし,さらに印刷ジョブがジョブキューに登録されているものとする。これらの補正処理A,補正処理B,補正処理Cが,サブ補正処理に該当する。この場合,最後の補正処理Cを実行するまで一連の補正処理としての補正値は得られない。そこで,最後の補正処理Cの実行中であれば,補正処理Cの完了後に補正値が得られるため,後続する印刷ジョブを実行できる。一方,補正処理Aや補正処理Bの実行中であった場合,当該補正処理が完了することで一連の補正処理は中止できるが,最終的な補正値は得られない。この場合,残りの補正処理の完了を待つと省電力モードへの移行が遅延することから,補正処理Aや補正処理Bが実行中のタイミングを中止タイミングとする。
【0071】
この場合,補正処理Aの実行中であるA1で電源スイッチ25の押下を検知した場合は,補正処理Aが完了あるいは中止した後,補正処理Bおよび補正処理Cおよび印刷を行うことなく,補正処理Aの完了直後であるA2にて省電力モードに移行させる。補正処理Bの実行中であるB1で電源スイッチ25の押下を検知した場合も,補正処理Bが完了あるいは中止した後,補正処理Cおよび印刷を行うことなく,補正処理Bの完了直後であるB2にて省電力モードに移行させる。一方,補正処理Cの実行中であるC1で電源スイッチ25の押下を検知した場合は,補正処理Cを完了させることで一連の補正処理が全て完了する。そこで,補正処理Cの完了直後であるC0にて省電力モードに移行させるのではなく,印刷ジョブを完了させた後,印刷ジョブの完了直後であるC2にて省電力モードに移行させる。
【0072】
すなわち,一連の補正処理のうち最後の補正処理以外の補正処理の実行期間を,中止タイミングとし,省電力モードへの移行条件を満たした際,一連の補正処理を実行しており,かつ一連の補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,中止タイミングか否かを判断し,中止タイミング以外のタイミングであれば,最後の補正処理の完了後に印刷ジョブを印刷し,その後に,省電力モードに移行させる。一方,中止タイミングであれば,一連の補正処理を途中で中止させた後に,印刷ジョブをキャンセルして省電力モードに移行させる。すなわち,最後の補正処理の場合にのみ,一連の補正処理を完了させることで,補正処理の完了待ちが最小限になり,省電力モードへの移行遅延を抑えることができる。
【0073】
あるいは,一連の補正処理のうち未実施の補正処理の数が実行済みの補正処理と実行中の補正処理との加算数以上となるタイミングを,中止タイミングとしてもよい。すなわち,省電力モードへの移行条件を満たした際,一連の補正処理を実行しており,かつ一連の補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合に,一連の補正処理のうち未実施の補正処理の数が実行済みの補正処理と実行中の補正処理との加算数より少ない場合には,一連の補正処理の完了後に印刷ジョブを印刷し,その後に,省電力モードに移行させる。これにより,一連の補正処理の無駄を回避することができる。一方,未実施の補正処理の数が加算数より少なくない場合には,一連の補正処理を中止させた後に,印刷ジョブをキャンセルして省電力モードに移行させる。これにより,省電力モードに速やかに移行できる。
【0074】
中止タイミング以外の場合には(S105:NO),補正処理の完了を待ち(S
107),印刷を開始する(S108)。これにより,S103,S104,S105のいずれか1つを満たす場合には,印刷ジョブがあったとしても,補正処理を中止し,印刷を行うことなく速やかに省電力モードへ移行できる。
【0075】
なお,S103,S104,S105の判断は,必ずしも全て行う必要はない。すなわち,S103,S104,S105のうち,1つのみを判断してもよいし,2つを判断してもよい。また,判断順序は不問である。また,第1の形態におけるS106の効果継続型の補正処理であるか否かの判断を組み合わせてもよい。この場合,例えば,中止タイミング以外の場合(S105:NO),その後にS107の判断を行うとよい。
【0076】
以上詳細に説明したように本形態のプリンタ100は,電力供給モードから省電力モードへの移行条件を満たした際,補正処理を行っており,かつ当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合には,省電力モードに移行する前に,補正処理およびその後に実行される印刷ジョブの印刷処理まで完了させる。これにより,当該補正処理の結果を印刷処理に利用することができ,当該補正処理が無駄にならない。その結果として,無駄な補正処理の低減が期待できる。
【0077】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,印刷装置は,プリンタに限らず,コピー機,FAX装置,複合機等,印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,印刷方式も,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラープリンタに限らず,モノクロ専用プリンタであってもよい。
【0078】
また,実施の形態では,電力の供給状態を表すモードとして,電力供給モードと省電力モードとの2つのモード間で切り替えを行っているが,3つ以上のモードがあってもよい。例えば,本形態の電力供給モード(全ての電源系統に電力が供給されるモード)をレディモードとし,レディモードから省電力モードに移行するまでの間に,画像形成部10への電力供給は遮断するものの,制御部30やインターフェースには電力供給を継続するスリープモードを設けてもよい。
【0079】
また,実施の形態では,省電力モードへの移行条件を満たした際,補正処理中ではなく印刷処理中であった場合に,その印刷処理対象である印刷ジョブの全ページの印刷が完了するまで待っている,すなわち補正処理が完了した後に開始された印刷ジョブの完了を待つ処理と共通であるが,印刷ジョブの途中であっても,その印刷ジョブの完了を待たずに印刷ジョブをキャンセルしてもよい。すなわち,印刷ジョブの完了よりも,省電力モードへの移行を優先してもよい。
【0080】
また,実施の形態では,S103にてトナーの残量が閾値以下か否かによってトナーの無駄が許容されるか否かを判断しているが,許容判断はこれに限るものではない。例えば,トナーセーブモードの設定は,トナーの寿命が近いと推測できる。そのため,印刷ジョブにトナーセーブモードが設定されている場合には,トナーの無駄が許容されず,トナーセーブモードが設定されていない場合に,トナーの無駄が許容されると判断してもよい。
【0081】
また,実施の形態では,S103にてトナーの残量が閾値以下か否かによってトナーの無駄が許容されるか否かを判断しているが,消耗品はトナーに限るものではない。例えば,現像ローラ,感光体,あるいは搬送ベルト7の回転数が閾値以下か否かによって消耗品の無駄が許容されるか否かを判断してもよい。
【0082】
また,実施の形態では,補正処理中に省電力モードへの移行条件を満たした際,当該補正処理の完了後に実行される印刷ジョブがある場合には,省電力モードに移行する前に,補正処理およびその後に実行される印刷ジョブの印刷処理まで完了させるが,省電力モードへの移行条件を満たしてから当該補正処理の完了までに受信された印刷ジョブがあれば,それらの印刷を完了させてから省電力モードへ移行してもよい。
【0083】
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 画像形成部
20 給電制御部
25 電源スイッチ
40 操作パネル
50 プロセス部
100 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9