(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の説明は、いずれも図面に基づくものとする。
【0016】
[端子構造]
まず、好適な実施形態に係る端子構造について説明する。
図2は、好適な実施形態に係る端子構造の断面構成を模式的に示す図である。
【0017】
図2に示すように、端子構造1は、基材10と、基材10上に形成された外部電極20と、基材10及び外部電極20上に形成された絶縁性被覆層30と、外部電極20上に形成されたアンダーバンプ金属層(以下、「UBM層」と表記する。)70と、UBM層70上に形成されたドーム状のバンプ85とを備えている。
【0018】
基材10は、絶縁性の基材である。そのような絶縁性の基材としては、例えば、シリコン基板、有機基板等が挙げられる。外部電極20は、例えば、基材10上に設けられた所定の回路パターンにおける、他の素子との接続を行うための端子となる部分である。この外部電極20は、回路パターンやその端子となる部分を構成し得る公知の材料から構成される。外部電極20は、例えば、Cu、Cu合金、Al、Al合金からなる。
【0019】
外部電極20の厚み、及び、外部電極20のピッチ(配置間隔;隣り合う外部電極20の中心間の距離(
図4(a)のPe))は、特に限定されるものではないが、例えば、それぞれ1〜30μm、及び、10〜500μmとすることができる。このような厚み及びピッチを満たすことで、外部電極20の形成が容易となるほか、バンプ同士をより近接して配置すること、すなわちバンプの狭ピッチ化が可能となる。そして、端子構造1においてバンプの狭ピッチ化が可能となると、この端子構造1を用いて得られる半導体デバイス及び電子デバイスの微細化が可能となる。
【0020】
絶縁性被覆層30は、基材10の全体と、外部電極20の周縁部付近とを覆うように設けられており、外部電極20の一部が露出するように開口35を有している。このように、絶縁性被覆層30は、基本的に、開口35以外の部分の基材10及び外部電極20の全体を覆うように設けられている。すなわち、絶縁性被覆層30は、基材10上に設けられた回路パターンの端子となる部分(外部電極20)以外の領域を覆うことで、この端子となる部分以外の回路パターンの外部との絶縁を図ることができる。
【0021】
絶縁性被覆層30は、基材10や外部電極20を水分による腐食等から保護することができる絶縁性の材料から構成されるものであれば特に制限されない。例えば、ポリイミド、SiN等からなるものが挙げられる。
【0022】
絶縁性被覆層30における開口35の平面形状(上側からみた形状)は、特に限定されず、円形や多角形等の種々の形状が適用される。また、UBM層70及びバンプ85は、開口35内に形成されることから、開口35と同様の平面形状を有することができる。本実施形態では、図示しないが、開口35、UBM層70及びバンプ85は、円形の平面形状を有するものとして説明する。なお、開口35の平面形状が多角形である場合、後述する開口35等の直径の値は、例えば、当該多角形において略対向している辺同士の距離の平均値として適用することができる。
【0023】
絶縁性被覆層30の厚み、開口35の直径(
図4(a)のL
0)、及び、隣り合う開口35間の距離(
図4(a)のP
0)は、特に限定されるものではないが、それぞれ、0.1〜50μm、3〜150μm、及び、5〜350μmとすることができる。絶縁性被覆層30の厚みとは、この層が形成されている層(
図2では基材10又は外部電極20)の表面から絶縁性被覆層30の上面までの距離をいう。この厚みにばらつきがある場合は、最も小さい値が上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0024】
UBM層70は、絶縁性被覆層30の開口35内を充填するように設けられている。ここで、UBM層70が開口35内を充填している状態とは、開口35に露出した外部電極20の表面全体を覆うようにUBM層70が設けられている状態を言う。UBM層70は、開口35の全体を埋めていなくてもよく、開口35の全体を埋めるように形成されていてもよく、また、開口35内のみならず開口35周辺の絶縁性被覆層30上の一部をも覆うように形成されていてもよい。
【0025】
UBM層70は、バンプを構成する金属の外部電極への拡散を抑制する観点から、Niを含む層であり、Ni及びPを含有する層であってもよい。UBM層70が、Niに加えてPを5〜15質量%含むと、柔軟性が高く、低応力な層となり易い。そのような割合でPを含むUBM層70は、例えば、後述する無電解ニッケルめっきによって形成できる。UBM層70は、Ni、PのほかにS等を更に含有していてもよい。
【0026】
バンプ85は、その上面が上側に向かって凸の曲面となる形状、すなわち、ドーム状の形状を有している。バンプ85は、その高さ方向に垂直な方向の直径が、上側に向かって徐々に小さくなる形状を有することができる。これにより、隣り合うバンプ85同士が近くても接触し難いので、バンプの狭ピッチ化が容易となる。
【0027】
バンプ85の高さは、実装の際に接続端子と十分かつ適切に接触させる観点から、外部電極20の表面を基準として5〜50μmとすることができる。
【0028】
バンプ85は、少なくともSnを含む組成を有している。また、バンプ85は、Snに加えてTiを更に含有していてもよい。このように、バンプ85がSnに加えてTiを含有することにより、バンプ85の構成金属がUBM層70に拡散するのを抑制することが可能となる。また、バンプ85は、Sn及びTi以外に、P、S等を更に含有していてもよい。バンプ85の好適な組成としては、Tiを1〜100ppm、その他の元素を合計で1〜10ppm含み、残部がSnである組成が挙げられる。なお、バンプ85は、Au、Ag、Cuを実質的に含まない組成を有することが好ましい。それらの金属を含むバンプ85は、そうでないものに比して脆い場合があるので、Au、Ag、Cuを実質的に含まない組成を有することにより、より強いバンプ85が得られ易い傾向にある。なお、「Au、Ag、Cuを実質的に含まない組成」とは、バンプ85の形成時にそれらの元素を意図して添加しないで得られた組成であり、製造途中でそれらの元素が不可避的に混入してしまった場合は、「Au、Ag、Cuを実質的に含まない組成」であるとみなすことができる。
【0029】
図2中には明確には示していないが、本実施形態の端子構造1においては、当該端子構造1の積層方向において、UBM層70の少なくとも一部が、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれている。
図3は、UBM層70が、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれている部分の断面構成を拡大して模式的に示す図である。この
図3に示す領域は、
図2中のTで示される領域に対応する。
【0030】
このように、UBM層70は、その縁部Mが絶縁性被覆層30の開口35の内壁Wよりも外側(絶縁性被覆層30側)に突出するようにして、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれている。かかるUBM層70の縁部Mは、絶縁性被覆層30の底面より下側にまで潜り込んだ状態となっている。このように、UBM層70の縁部Mが外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれていることによって、この部分によるアンカー効果が生じ、その結果、UBM層70の外部電極20からの剥離が極めて生じにくくなる。さらに、この効果は、絶縁性被覆層30の開口35を小さくしても得られることから、バンプ85の狭ピッチ化が容易となる。
【0031】
UBM層70は、その外周の少なくとも一部分において、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれた部分を有していればよいが、バンプ85の部分の強度を良好に得る観点からは、外周の全体にわたって、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれた部分が形成されていることが好ましい。
【0032】
UBM層70は、絶縁性被覆層30の開口35の内壁Wから0.5〜10μm、外側に突出することができる。このような条件を満たすようにUBM層70の縁部Mが、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれていることで、UBM層70、ひいてはバンプ部分の剥離を良好に抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の端子構造1においては、UBM層70だけでなく、その上に形成されているバンプ85も、UBM層70と同様の形態で外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれた部分を有していてもよい。これによって、バンプ85のUBM層70からの剥離も効果的に低減され、バンプ部分の強度を一層向上させることができる。ただし、後述するような端子構造1の製造方法において、スズめっき層80のリフローによりバンプ85を形成する場合は、その縁部が露出しない状態であると、良好なドーム形状のバンプ85が得られない場合がある。したがって、バンプ85の形状によっては、バンプ85は、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれた部分を有しない方が好ましい場合もある。
【0034】
[端子構造の製造方法]
次に、上述した構成を有する端子構造の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0035】
図4は、本実施形態に係る端子構造の好適な形成工程を模式的に示す断面図である。まず、
図4(a)に示すように、公知の工法を用いて、基材10上に、外部電極20及び絶縁性被覆層30をそれぞれ形成する。なお、この際、外部電極20の厚みやピッチP
e、絶縁性被覆層30の厚み、開口35の直径Lo及び開口35の間隔Poは、それぞれ上述したような範囲となるように調整する。
【0036】
次に、絶縁性被覆層30の開口35に露出した外部電極20の表面に対し、エッチングを行うことが好ましい。このようなエッチングを行うことで、開口35付近の絶縁性被覆層30の下側の外部電極20を一部除去することができる。こうすると、後述するUBM層70の形成工程において、UBM層70が、エッチングにより除去された外部電極20の部分にまで入り込むようになる。その結果、UBM層70の縁部Mが、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれた構造が形成され易くなる。また、エッチングにより外部電極20の表面に凹凸をつけることも可能となり、その結果、外部電極20と、その上に形成されるUBM層70とを強く密着させることができる。なお、かかる構造を形成する方法としては、エッチング以外の外部電極20の表面を除去する方法を適用することもできる。
【0037】
エッチングは、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸などの有機酸、塩化物塩や過硫酸塩などの無機塩等を含むエッチング液を用いて行うことができる。また、上記の構造を好適に形成する目的で、例えば、エッチング液に界面活性剤等を添加したり、またエッチング液の攪拌や超音波照射を行ったりすることで、エッチング液を開口の細部まで浸透させることができる。
【0038】
その後、
図4(b)に示すように、絶縁性被覆層30の開口35に露出した外部電極20の表面に対し、必要に応じて公知の前処理を行った後、Niを含むUBM層70を形成する。前述の前処理としては、例えば、外部電極20がCuまたはCu合金からなる場合、脱脂、酸洗及び活性化処理等が挙げられる。また、外部電極がAlまたはAl合金からなる場合、脱脂、酸洗及びジンケート処理等が挙げられる。また、脱脂もしくは酸洗処理は、必要に応じて前述のエッチング処理の前に行ってもよい。さらに、これらの処理を複合的に前後し、またそれぞれを複数回行ってもよい。
【0039】
UBM層70の形成方法としては、無電解ニッケルめっきによる方法が挙げられる。無電解ニッケルめっきは、例えば、ニッケル塩、錯化剤、還元剤を含むめっき液を用いて行うことができる。無電解ニッケルめっきの作業性(浴安定性、析出速度)を向上する観点からは、還元剤として次亜リン酸を含むめっき液を用いることが好ましい。
【0040】
次に、
図4(c)に示すように、UBM層70上にスズめっき層80を形成する。これにより、所望の端子構造1を得るための前駆体基板12が得られる。スズめっき層80は、例えば、還元型無電解スズめっきにより形成することができる。還元型無電解スズめっきの好適な態様は、詳しくは後述する。
【0041】
スズめっき層80は、
図4(c)に示すように、UBM層70上だけでなく、絶縁性被覆層30における開口35の周辺までを覆うように形成してもよい。また、外部電極20の表面を基準とするスズめっき層80の高さ(
図4(c)のH
b0)は、5〜40μmとすることが好ましい。
【0042】
本実施形態の端子構造1は、本発明者らが検討した結果、還元型無電解スズめっきによりこのようなスズめっき層80を形成することによって特に実現し易いことが判明した。すなわち、本実施形態の端子構造1を得るための前駆体基板12を製造する際には、還元型無電解スズめっきによりスズめっき層80を形成することができるので、従来の電解はんだめっきを行う場合に必要であったシード層を事前に形成しておく必要がない。そのため、UBM層70の形成時には、
図4(b)に示すように、シード層を介さずに外部電極20上の開口35を充填するようにUBM層70を形成することができる。この際、UBM層70は、例えば前述のような無電解ニッケルめっきによって形成されることから、外部電極20の表面に絶縁性被覆層30との隙間となる凹部があると、その部分の外部電極20上にまでUBM層70が形成されることになる。その結果、UBM層70の縁部Mが、外部電極20と絶縁性被覆層30との間に挟まれた構造を形成することが可能となる。
【0043】
これに対し、
図1に示すように、従来技術において形成する前駆体基板では、電解はんだめっきを行うために事前にシード層40形成しておく必要がある。ところが、外部電極20の絶縁性被覆層30との界面に凹部があると、このようなシード層40が形成できない。したがって、従来の方法では、本実施形態のような、UBM層の縁部が、外部電極と絶縁性被覆層との間に挟まれた構造を含む端子構造を得ることができない。また、同様の理由から、本実施形態の端子構造は、外部電極の表面が従来の端子構造の場合と比較して大きい凹凸を有していても、良好にUBM層を形成することができるので、好適に端子構造を製造することができる。
【0044】
ここで、スズめっき層80を形成するために好適な還元型無電解スズめっきについて説明する。
【0045】
還元型無電解スズめっきは、例えば、スズ化合物、有機錯化剤、有機イオウ化合物、酸化防止剤、及び還元剤としてチタン化合物を含む還元型無電解スズめっき液を用いて行うことができる。これらの還元型無電解スズめっき液の構成成分の種類、濃度を好適に選択することにより、UBM層70上に安定的にスズめっき層80を析出することが可能である。以下、その詳細を示すが、種類、濃度、またそのメカニズムは記載したものに限定されない。
【0046】
還元型無電解スズめっき用のめっき液に含まれるスズ化合物は、スズの供給源となるものであれば特に制限されないが、スズの、無機酸塩、カルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルカノールスルホン酸塩、水酸化物及びメタスズ酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。これらの水溶性のスズ化合物は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
なお、スズ化合物のスズの価数(酸化数)としては、2価又は4価のどちらでも使用可能である。析出速度が良好である観点からは、スズの価数は2価とすることができる。すなわち、第一スズ化合物が好ましい。
【0048】
還元型無電解スズめっき液中のスズ化合物の含有量は特に限定はないが、当該めっき液全体に対して、金属スズとして、好ましくは0.5g/L〜100g/L、より好ましくは5g/L〜30g/L、さらに好ましくは7g/L〜15g/Lである。還元型無電解スズめっき液中の金属スズの含有量が0.5g/L以上であれば、スズ被膜の析出速度を実用的なレベルで早くすることが可能である。また、還元型無電解スズめっき液中の金属スズの含有量が100g/L以下であれば、スズ源としてのスズ化合物を容易に溶解することができる。
【0049】
有機錯化剤としては特に限定はないが、有機ホスホン酸化合物のような酸化数が3価のリンを含有するホスホン酸化合物を適用できる。例えば、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等のアミノ基含有メチレンホスホン酸類;1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等の水酸基含有ホスホン酸類;3−メトキシベンゼンホスホン酸等のベンゼンホスホン酸類;3−メチルベンジルホスホン酸、4−シアノベンジルホスホン酸等のベンジルホスホン酸類;それらのアルカリ金属塩;それらのアルカリ土類金属塩;それらのアンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、水酸基含有ホスホン酸がより好ましい。有機錯化剤は、これらのうち1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
還元型無電解スズめっき液中の有機錯化剤の含有量は特に限定はないが、還元型無電解スズめっき液全体に対して、好ましくは1g/L〜500g/L、より好ましくは10g/L〜200g/L、さらに好ましくは50g/L〜150g/Lである。還元型無電解スズめっき液中の有機錯化剤の含有量が1g/L以上であれば、有機錯化剤は、錯化力が十分となるためめっき液を安定でき、錯化剤としての効果を十分に発揮することができる。また、500g/L以下であれば、有機錯化剤は、水に対し容易に溶解する。なお、有機錯化剤の含有量を500g/L以上としても、錯化剤としての更なる効果の上昇は見られないため、コスト的に不経済となる場合がある。
【0051】
有機イオウ化合物としては、メルカブタン類及びスルフィド類からなる群より選ばれる有機イオウ化合物が挙げられる。「メルカブタン類」とは、分子中に、メルカプト基(−SH)を有する化合物である。「スルフィド類」とは、分子中に、スルフィド基(−S−)を有する化合物である。スルフィド類においてSに結合する基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アセチル基(エタノイル基)等のアルカノイル基等が挙げられる。また、スルフィド類には、ジスルフィド、トリスルフィド等の「−S−」が複数個直接結合したポリスルフィドも含まれる。なお、メルカブタン類及びスルフィド類のいずれも、S原子の孤立電子対(Lone Pair)が活性であるため、UBM層70上(Niを含む被膜上)において、スズ析出のための触媒として作用することができる。その結果、UBM層70上へスズを安定的に析出することが可能となる。
【0052】
還元型無電解スズめっき液中の有機イオウ化合物の含有量は特に限定はないが、還元型無電解スズめっき液全体に対して、好ましくは0.1ppm〜100000ppm、より好ましくは1ppm〜10000ppm、さらに好ましくは5ppm〜1000ppmである。還元型無電解スズめっき液中の有機イオウ化合物の含有量が0.1ppm以上であれば、十分な析出速度が確保きる。一方、100000ppm以下であれば、容易に水に溶解するため、安定しためっき液を得ることができる。
【0053】
酸化防止剤は、価数(酸化数)が2価のスズが4価に酸化されることを防ぐことができるものであれば特に限定されない。例えば、含リン酸化合物(次亜リン酸化合物、亜リン酸化合物)、ヒドラジン誘導体、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール若しくはそれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、含リン酸化合物が好ましく、亜リン酸化合物がより好ましい。
【0054】
これらの酸化防止剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。なお、酸化防止剤を添加することで、上述したスズの酸化を防止するだけでなく、後述する3価チタンの過剰な酸化を抑えることもできる。これにより、安定しためっき液を得ることができ、UBM層70上(Niを含む被膜上)へスズを安定的に析出することが可能となる。
【0055】
還元型無電解スズめっき液中の酸化防止剤の含有量は特に限定はないが、還元型無電解スズめっき液全体に対して、好ましくは0.1g/L〜100g/L、より好ましくは1g/L〜80g/Lである。還元型無電解スズめっき液中の酸化防止剤の含有量が0.1g/L以上であれば、酸化防止剤の効果を十分に確保することができる。一方、100g/L以下であれば、還元型無電解スズめっき液中においてスズが異常に析出することを抑制することができるため、浴安定性が良くなり、安定したスズめっきを行うことが可能である。
【0056】
チタン化合物は、水溶性であり、還元剤として作用するものであれば特に限定されない。例えば、三塩化チタン、三ヨウ化チタン、三臭化チタン等のハロゲン化チタン;硫酸チタンなどが、めっき性能が高く、また入手が容易な傾向にある。チタンの価数(酸化数)としては3価が好ましい。これは、2価のチタン化合物は不安定であり、容易に酸化されて4価に変わってしまう場合があり、また、4価のチタン化合物は自身が酸化されないので電子の供給ができなくなってしまう場合があるためである。これらの水溶性のチタン化合物は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、三塩化チタンは、めっき性能が高く、また入手が容易な傾向にある。
【0057】
還元型無電解スズめっき液中のチタン化合物の含有量は特に限定はないが、還元型無電解スズめっき液全体に対して、金属チタンとして、好ましくは0.01g/L〜100g/L、より好ましくは0.1g/L〜20g/L、さらに好ましくは1g/L〜10g/Lである。還元型無電解スズめっき液中のチタン化合物の含有量が0.01g/L以上であれば、スズ被膜の析出速度を実用的な速さにすることが可能である。また、還元型無電解スズめっき液中のチタン化合物の含有量が100g/L以下であれば、スズが異常析出することを抑制することができるため、浴安定性が良くなり、安定したスズめっきを行うことが可能である。
【0058】
なお、還元型無電解スズめっき液には、これらの成分以外に、必要に応じて、めっき液のpHを一定に保つための緩衝剤、価数(酸化数)が2価のスズイオンが4価に酸化されるのをさらに効果的に防ぐための酸化防止剤、スズめっき被膜のピンホール除去のため若しくはめっき液の泡切れを良好にするための界面活性剤、スズめっき被膜をより平滑にするための光沢剤等を、適宜含有させることができる。
【0059】
還元型無電解スズめっきの際のめっき条件は、特に限定されるものではないが、温度条件は、40℃〜90℃とすることができ、好ましくは50℃〜80℃とすることができる。また、めっき時間は、30秒〜5時間とすることができ、好ましくは1分〜2時間とすることができる。
【0060】
上記のようにしてスズめっき層80を形成した後には、前駆体基板12を、例えば窒素雰囲気中で高温処理(リフロー)することにより、スズめっき層80を溶融し、さらにこれを急冷して凝固させることで、ドーム状のバンプ85を形成する(
図4(d)。このようにして、
図2に示す構造を有する端子構造1を得ることができる。リフロー条件に特に制限はないが、雰囲気:酸素濃度が1000ppm以下、温度:235〜300℃、及び保持時間:5〜120秒間、であることが好ましい。なお、高温処理によって、バンプ85におけるUBM層70との境界に近い部分は、スズを主成分(50質量%以上)とする金属間化合物によって構成される場合がある。その場合は、このスズを主成分とする金属間化合物もバンプ85を構成する一部であるとみなすこととする。
【0061】
[半導体素子]
上述したような構成を有する端子構造1は、半導体素子等に好適に適用することができる。例えば、半導体素子の場合、基材10としては、シリコン基板等の表面ないしは内部に半導体回路が形成されたものを適用することができる。また、外部電極20としては、半導体回路と電気的に接続されたものを適用することができる。このような半導体素子であれば、隣接するバンプ間隔を狭くすることができることから、半導体デバイスの微細化に対する要求に十分に対応することが可能である。
【0062】
[モジュール基板]
また、上述したような構成を有する端子構造1は、半導体素子等を搭載するモジュール基板等にも好適に適用することができる。例えば、モジュール基板の場合、基材10としては、有機基板等の表面ないしは内部に配線回路が形成されたものを適用することができる。また、外部電極20としては、配線回路と電気的に接続されたものを適用することができる。このようなモジュール基板であれば、隣接するバンプ間隔を狭くすることができることから、電子デバイスの微細化に対する要求に十分に対応することが可能である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
(基材の準備)
まず、
図4(a)に示すような、外部電極20及び絶縁性被覆層30が形成された基材10(5×5mm、厚み0.6mm)を準備した。基材10の材質、外部電極20の材質及びピッチPe、絶縁性被覆層30の材質及び厚み、並びに、絶縁性被覆層30における開口35の直径L
0及び開口35間の距離P
0は、それぞれ表1に示す通りとした。なお、開口は、互いに等間隔で10×10(個)となるように配置した。また、外部電極20は、後述するバンプ部分の強度の評価の際の導通性の確認のため、実装時にデイジー回路が形成されるように予め配線するようにして作製した。さらに、各構成の直径、高さや距離等は、いずれも走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察することで測定した。表1中、外部電極20の材質について、「Cu箔」とは、基材10上に予め設けられていた銅箔をエッチングすることにより形成したものを示し、「Cuメッキ」とは、基材10上に直接Cuメッキを行うことにより形成したものを示す。
【0065】
(エッチング)
次に、絶縁性被覆層30の開口35に露出した外部電極20の表面に対し、エッチングを行って、外部電極20の表面を一部除去した。エッチングは、硫酸、過硫酸ナトリウム等を含むエッチング液を用い、温度30℃で、超音波を照射しながら1分間浸漬することにより行った。エッチングにより除去される外部電極20の表面からの厚み(除去厚み)は、表1に示す通りとした。
【0066】
(無電解ニッケルめっき)
次に、
図4(b)に示すように、エッチング後の絶縁性被覆層30の開口35に露出した外部電極20の表面に対し、無電解ニッケルめっきを行い、絶縁性被覆層30の開口35内を充填するUBM層70を形成した。このようにして形成したUBM層70の厚みは、表1に示す通りであった。
【0067】
なお、無電解ニッケルめっきは、公知の無電解ニッケル−リンめっき液(UBM中リン濃度:10質量%)を用いて行った。また、めっき条件は、温度条件を85℃とし、めっき時間は、所定のニッケルめっき層厚みが得られるように調整した。
【0068】
(還元型無電解スズめっき)
次に、
図4(c)に示すように、還元型無電解スズめっきを行い、UBM層70と絶縁性被覆層30の一部とが覆われるようにスズめっき層80を形成して、前駆体基板12を得た。このようにして形成されたスズめっき層80の厚み(UBM層70の表面からの高さ)は、表1に示す通りであった。
【0069】
なお、還元型無電解スズめっき液の組成は、以下のとおりであった。また、めっき条件は、温度条件を60℃とし、めっき時間は、所定のスズめっき層高さが得られるように調整した。
スズ化合物(塩化第一スズ):10g/L(スズとして)
含リン有機錯化剤(水酸基含有ホスホン酸):100g/L
有機イオウ化合物(スルフィド基含有有機イオウ化合物):100ppm
酸化防止剤(亜リン酸化合物):40g/L
還元剤(三塩化チタン): 5g/L(チタンとして)
【0070】
(リフロー)
上記のようにして得られた前駆体基板12を、窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm)、250℃で30秒間保持して、スズめっき層80を溶融し、さらにこれを急冷して凝固させることで、
図4(d)に示すようなドーム状のバンプ85を有する端子構造1(実施例1の端子構造)を備えるTEG基板を得た。リフローにより得られたバンプ85の高さ(外部電極20上の絶縁性被覆層30の上面からの高さ)、バンプ85を頂部側からみた場合の直径、及び、バンプ85中のTi含有量は、表1に示す通りであった。なお、バンプ85中のTi含有量は、得られた端子構造のバンプを酸で溶解、抽出し、その抽出液のICP発光分光分析を行い、Sn量に対するTi量を算出することにより測定した。
【0071】
[実施例2〜11]
端子構造の各要素がそれぞれ表1に示すものとなるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11の端子構造を備えるTEG基板を製造した。
【0072】
[比較例1]
(基材の準備)
まず、実施例1と同様にして、外部電極及び絶縁性被覆層が形成された基材を準備した。基材の材質、外部電極の材質及びピッチPe、絶縁性被覆層の材質及び高さ(外部電極表面からの高さ)、並びに、絶縁性被覆層における開口の直径及び開口間の距離は、それぞれ表1に示す通りとした。
【0073】
(エッチング)
次に、絶縁性被覆層の開口に露出した外部電極の表面に対し、エッチングを行って、外部電極の表面を一部除去した。エッチングは、硫酸、過硫酸ナトリウム等を含むエッチング液を用い、温度30℃で、超音波を照射しながら1分間浸漬することにより行った。エッチングにより除去される外部電極20の表面からの厚み(除去厚み)は、表1に示す通りとした。
【0074】
(電解ニッケルめっき)
次に、絶縁性被覆層の開口に露出した外部電極の表面及び絶縁性被覆層の表面に対し、スパッタリングにより厚さ0.1μmの銅層をシード層として形成しようとしたが、比較例1においては、絶縁性被覆層の下部にくぼみができてしまい、シード層を形成することができなかったので、以後の工程を行うことができなかった。すなわち、エッチング工程を施すと、電解めっきのためのシード層を形成することができないことが確認された。
【0075】
[比較例2]
(基材の準備)
まず、実施例1と同様にして、外部電極及び絶縁性被覆層が形成された基材を準備した。基材の材質、外部電極の材質及びピッチPe、絶縁性被覆層の材質及び高さ(外部電極表面からの高さ)、並びに、絶縁性被覆層における開口の直径及び開口間の距離は、それぞれ表1に示す通りとした。
【0076】
(電解ニッケルめっき)
次に、絶縁性被覆層の開口に露出した外部電極の表面及び絶縁性被覆層の表面に対し、スパッタリングにより厚さ0.1μmの銅層をシード層として形成した。次いで、全面を覆うようにドライフィルムを形成してから、フォトレジストによりドライフィルムのパターニングを行い、絶縁性被覆層の開口周辺のドライフィルムを除去した後、絶縁性被覆層の開口に露出した外部電極の表面及び絶縁性被覆層の表面の一部に対し、電解ニッケルめっきを行い、UBM層を形成した。このようにして形成したUBM層の高さ(外部電極の表面からの高さ)は、表1に示す通りであった。
【0077】
なお、電解ニッケルめっきは、公知のスルファミン酸浴を用いて行った。また、めっき条件は、温度条件を50℃とし、めっき時間及びめっき電流値は、所定のニッケルめっき層厚みが得られるように調整した。
【0078】
(電解はんだめっき)
次に、UBM層の表面に対して、電解はんだめっきを行い、はんだめっき層を形成した(
図1(b)参照)。このとき、はんだめっき層はUBM層の上面にのみ形成されていた。このようにして形成したスズめっき層の厚み(UBM層の表面からの高さ)は、表1に示す通りであった。
【0079】
なお、電解はんだめっきは、公知のアルカノールスルホン酸浴(Cu含有量:0.5質量%)を用いて行った。また、めっき条件は、温度条件を50℃とし、めっき時間及びめっき電流値は、所定のはんだめっき層厚みが得られるように調整した。
【0080】
その後、ドライフィルムの剥離及び不要なシード層の除去を行い、前駆体基板を得た(
図1(c)参照)。
【0081】
(リフロー)
上記のようにして得られた前駆体基板に対し、窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm)、250℃で30秒間保持して、スズめっき層を溶融し、さらにこれを急冷して凝固させることで、ドーム状のバンプを有する端子構造を備えるTEG基板を得た(
図1(d)参照)。リフローにより得られたバンプの高さ(外部電極20の表面からの高さ)、バンプを頂部側からみた場合の直径、及び、バンプ中のTi含有量は、表1に示す通りであった。
【0082】
[比較例3]
電解ニッケルめっきに代えて、シード層(銅層)上に無電解ニッケルめっきを行ったこと以外は、比較例2と同様にして、比較例3の端子構造を作製した。無電解ニッケルめっきは、実施例1と同様にして行った。
【0083】
[比較例4、5]
端子構造の各要素がそれぞれ表1に示すものとなるように変更したこと以外は、比較例2と同様にして、比較例4、5の端子構造を製造した。
【0084】
[特性評価]
(バンプ形成性の評価)
各実施例及び比較例で得られた端子構造について、目視により以下のようにしてバンプ形成性の評価を行った。具体的には、隣接するバンプ同士が独立して形成されておりショートしていなかったものをOK、隣接するバンプ同士が一対でもショートしていたものをNGとし、得られた結果を表1に示した。なお、比較例5についてはショートが確認されたため、上述したバンプの高さ、バンプの直径、及び、バンプ中のTi含有量についての計測は行わなかった。
【0085】
(バンプ部分の強度の評価)
各実施例及び比較例で得られた端子構造について、以下のようにしてバンプ部分の強度を評価した。具体的には、デイジー回路を形成する二枚一対のTEG基板のバンプ(10×10(個))を、フリップチップ実装機によりFace to Faceで超音波接合することで、バンプ部分の強度評価用の試料を作製し、この試料のデイジー回路の導通性を確認した。デイジー回路が導通していたもの、つまり全端子の導通が確認できたものを、超音波接合に耐えうるバンプ部分の強度を有するものとしてAと評価し、デイジー回路が断絶していた、つまり少なくとも一部の端子の導通が確認できなかったものを、超音波接合に耐えうるバンプ部分の強度を有していないものとしてBと評価した。なお、隣接するバンプ同士がショートしていた比較例5については、この試験を行わなかった。結果を表1に示す。
【0086】
(UBM層の外部電極と絶縁性被覆層との間への潜り込みの評価)
各実施例及び比較例で得られた端子構造について、積層方向に沿った断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより、UBM層の端部が外部電極と絶縁性被覆層との間に潜り込んでいるか否かについて観察した。その結果を表1に示した。例えば、
図5のSEM写真は、実施例2の端子構造において、UBM層が、外部電極と絶縁性被覆層との間に挟まれている部分を拡大したSEM写真である。なお、理解を容易化するため、
図5には、外部電極20とUBM層70との境界を破線で示してある。実施例1〜11の端子構造では、いずれもUBM層の端部が外部電極と絶縁性被覆層との間に潜り込んでいた一方、比較例2〜4の端子構造では、いずれもそのような構造は形成されていなかった。なお、隣接するバンプ同士がショートしていた比較例5については、この試験を行わなかった。
【表1】
【0087】
上記の評価結果に示されるように、実施例1〜11の端子構造においては、いずれもUBM層70の端部が外部電極20と絶縁性被覆層30との間に潜り込んでおり、また、バンプ85の直径が絶縁性被覆層30の開口35の直径と等しく、バンプ85が開口35内の領域に形成されていた。そして、このような構造を含む実施例1〜11の端子構造によれば、バンプ部分が良好な強度を有していることが確認された。
【0088】
他方、比較例1では、そもそもバンプの形成ができなかった。また、比較例2〜4の端子構造は、UBM層が外部電極と絶縁性被覆層との間に潜り込んでおらず、また、バンプが開口の領域内に形成されていなかったほか、バンプがTiを含まないものでもあった。このような比較例2〜4の端子構造では、バンプ部分の強度が不十分となることが判明した。なお、バンプ部分の強度評価において、デイジー回路が断絶していた端子構造を詳細に検証したところ、いずれもUBM層が外部電極から剥離していた。