(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
送電線の既設鉄塔が劣化した場合や、送電線の地上高を高くする必要が生じた場合には、既設鉄塔に代えて新設鉄塔を構築するようにしている。その場合、撤去する既設鉄塔が含まれる線路区間の送電を停止し、撤去する既設鉄塔の近傍に新設鉄塔を構築し、撤去鉄塔から新設鉄塔に電線の懸架を変更するとともに、撤去鉄塔を撤去するようにしている。
【0003】
このような鉄塔建替工事の線路区間の送電を停止する線路停止工事工法としては、線路仮工事(以下、単に仮工事という)と、線路分断工事(以下、単に分断工事という)とがある。
【0004】
仮工事は、当該線路区間とは別に仮設の線路を用意し、鉄塔建替工事の期間中は当該線路区間を停止して仮設の線路にて送電を行うものである。従って、当該線路区間の停止が難しい場合に適用しているが、新たに仮設の線路を設けることが必要となる。
【0005】
また、分断工事は、当該線路区間を系統から切り離して鉄塔建替工事を行うものである。従って、分断工事は、当該線路区間を長期間停止して工事実施が可能な場合に適用している。一方、仮設の線路の確保や線路の長期間の停止が難しい場合は、仮工事及び分断工事のいずれも適用できないことから、別の解決策が必要である。
【0006】
そこで、隣接する2基の既設鉄塔間に新設鉄塔を構築する際に、送電鉄塔と送電線とが接触しないように、送電鉄塔に絶縁材よりなる防護装置を送電線の延在方向の前後にそれぞれ設け、送電線を長期間に亘って停電させる必要がなく、長期間の停電によって各方面に不便を強いることがないようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のものでは、前後の防護装置を構築中の送電鉄塔に沿って千鳥状に、且つ、上下に隣接する前後の防護装置が所定長さだけ互いにオーバーラップするように配置したものであるので、鉄塔の幅方向の全域に亘って絶縁所要間隔を確保できない場合がある。
【0009】
図13(a)に示すように、防護装置5Aが鉄塔4の幅方向の一方側(
図13(a)の上側)にある位置で、送電線1が鉄塔4に接近したときは、鉄塔4の幅方向の他方側(
図13(a)の下側)においては防護装置がないので、送電線1が鉄塔4に接近することがある。つまり、鉄塔4の幅方向の他方側(
図13(a)の下側)においては、鉄塔4の幅方向の一方側(
図13(a)の上側)より、送電線1が鉄塔4に接近するので、送電線1と鉄塔4との間隔d1が絶縁所要間隔を確保できないことがある。
【0010】
同様に、
図13(b)に示すように、防護装置5Bが鉄塔4の幅方向の他方側(
図13(b)の下側)にある位置で、送電線1が鉄塔4に接近したときは、鉄塔4の幅方向の一方側(
図13(b)の上側)においては防護装置がないので、送電線1が鉄塔4に接近することがある。つまり、鉄塔4の幅方向の一方側(
図13(b)の上側)においては、鉄塔4の幅方向の他方側(
図13(b)の下側)より、送電線1が鉄塔4に接近するので、送電線1と鉄塔4との間隔d2が絶縁所要間隔を確保できないことがある。
【0011】
本発明の目的は、鉄塔の構築作業において電線と鉄塔との間隔を最小絶縁間隔以上に保ち、構築作業中の線路区間を送電可能にできる電線接近防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る電線接近防止装置は、隣接する2基の既設鉄塔間に新設鉄塔を構築
し前記既設鉄塔を撤去する際に、
前記既設鉄塔または前記新設鉄塔と電線とが接触しないように
前記既設鉄塔または前記新設鉄塔に設けられる電線接近防止装置において、
前記既設鉄塔または前記新設鉄塔に懸架された
並行二回線の電線のうち
送電可能回線とする電線側の前記電線と対面した前記電線の高さ位置
であって前記電線を支持する腕金がない鉄塔の両端の主柱材にそれぞれ上下方向に取り付けられ、
前記並行二回線の電線が前記
送電可能回線から非送電可能回線に入れ替わったとき、前記既設鉄塔の前記腕金がない電線側においてその電線の高さ位置に前記新設鉄塔に前記腕金があるときは前記既設鉄塔から取り外され、前記新設鉄塔に前記腕金が取り付けられるときには前記新設鉄塔から取り外される取付部と、前記取付部が取り付けられた鉄塔と前記電線との間隔が前記取付部の位置での前記鉄塔の幅方向の全域に亘って最小絶縁間隔以上の間隔を保つように前記取付部の上部及び下部に前記電線側に突出して取り付けられた一対の碍子と、前記一対の碍子に取り付けられ前記電線が揺動したときに前記電線を受け止めて前記電線が前記鉄塔に対して前記最小絶縁間隔未満の間隔まで接近するのを防止する電線受止部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係る電線接近防止装置は、請求項1の発明において、前記取付部は、前記鉄塔の両端からはみ出した位置で、前記一対の碍子を前記電線側に突出して取り付けることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係る電線接近防止装置は、請求項1または2の発明において、前記取付部は、前記一対の碍子の取付位置を調整して取り付けるための複数個の取付穴を上下方向に有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、
隣接する2基の既設鉄塔間に新設鉄塔を構築し既設鉄塔を撤去する際に、既設鉄塔または新設鉄塔に懸架された
並行二回線の電線のうち
送電可能回線とする電線側の電線と対面した電線の高さ位置
であって電線を支持する腕金がない鉄塔の両端の主柱材にそれぞれ上下方向に取付部を取り付け、取付部は、並行二回線の電線が前記
送電可能回線から非送電可能回線に入れ替わったとき、既設鉄塔の腕金がない電線側においてその電線の高さ位置に新設鉄塔に腕金があるときは既設鉄塔から取り外され、新設鉄塔に腕金が取り付けられるときには新設鉄塔から取り外され、鉄塔と電線との間隔が取付部の位置での鉄塔の幅方向の全域に亘って最小絶縁間隔以上の間隔を保つように、それらの取付部から突出させた一対の碍子に電線受止部を取り付けるので、送電可能とする電線が揺動したとしても、電線受止部により鉄塔と電線との間隔を最小絶縁間隔以上の間隔に保つことができる。従って、送電可能とする電線を活線状態とできるので長期間の停電を防止できる。
また、既設鉄塔から取り外された取付部より上部の既設鉄塔の上部部位を撤去できるので、新設鉄塔を構築しつつ既設鉄塔を撤去する場合に好適である。
【0016】
請求項2の発明によれば、取付部は鉄塔の両端からはみ出した位置で、一対の碍子を取り付けるので、鉄塔の幅より大きい幅を保って電線接近防止装置を取り付けられる。従って、より確実に、鉄塔と電線との間隔を最小絶縁間隔以上の間隔に保つことができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、取付部は一対の碍子の取付位置を調整して取り付けるための複数個の取付穴を上下方向に有しているので、電線の揺動範囲に応じて電線受止部の取り付け位置を調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る電線接近防止装置の一例の構成図であり、
図1(a)は鉄塔に取り付けた状態の電線接近防止装置の斜視図、
図1(b)は鉄塔の上面から見た電線接近防止装置の平面図、
図1(c)は
図1(b)の状態から電線が電線接近防止装置に接触した状態を示す平面図である。
図1では、新設鉄塔11に電線接近防止装置12が設けられた場合を示しており、新設鉄塔11と既設鉄塔に懸架された電線13との接触を防止する場合について説明する。
【0020】
電線接近防止装置12は、取付部14、碍子15、電線受止部16とから構成される。すなわち、取付部14a、14bは、電線13に対面する側の新設鉄塔11の両端の主柱材17a、17bに、それぞれ上下方向に取り付けられる。取付部14aの上部及び下部には、電線13側に突出して一対の碍子15a1、15a2が取り付けられ、同様に、取付部14bの上部及び下部には、電線13側に突出して一対の碍子15b1、15b2が取り付けられる。そして、一対の碍子15a1、15a2には電線受止部16aが取り付けられ、一対の碍子15b1、15b2には電線受止部16bが取り付けられる。電線受止部16a、16bは、電線13が揺動したときに電線13を受け止めるものであり、これにより、電線13が新設鉄塔11に接触するのを阻止する。
【0021】
図1(b)において、一対の碍子15a1、15a2(15b1、15b2)は、新設鉄塔11と電線13との間隔が最小絶縁間隔d0以上の間隔を保つように、取付部14a、14bの上部及び下部に電線13側に突出して取り付けられている。この最小絶縁間隔d0は、電線13が活線状態であるときに、電線13と新設鉄塔11との間に絶縁を保つに必要な最小の間隔である。
【0022】
これにより、電線13が揺動して、
図1(c)に示すように、電線13が新設鉄塔11側に移動した場合であっても、一対の碍子15a1、15a2(15b1、15b2)の先端部に取り付けられた電線受止部16a、16bにより電線13を受け止め、電線13が新設鉄塔11に対して最小絶縁間隔d0未満の間隔まで接近するのを防止する。
【0023】
図2は本発明の実施形態に係る電線接近防止装置の構成要素の説明図であり、
図2(a)は電線接近防止装置を横方向から見た場合の一対の碍子15b1、15b2(15a1、15a2)及び電線受止部16b(16a)の側面図、
図2(a)は電線接近防止装置の取付部14a、14bの正面図である。
【0024】
図2(a)において、碍子15b1、15b2(15a1、15a2)の先端部には電線受止部16b(16a)を把持するための把持部18b1、18b2(18a1、18a2)が設けられ、この把持部18b1、18b2(18a1、18a2)にて電線受止部16b(16a)を把持する。一方、碍子15b1、15b2(15a1、15a2)の後端部には嵌合凸部19b1、19b2(19a1、19a2)が設けられている。
【0025】
図2(b)において、取付部14a、14bには、碍子15b1、15b2(15a1、15a2)の嵌合凸部19b1、19b2(19a1、19a2)が嵌合する複数個の取付穴20b1〜20b8(20a1〜20a8)が設けられている。取付部14b、14aが複数個の取付穴20b1〜20b8(20a1〜20a8)を上下方向に有しているのは、一対の碍子15b1、15b2(15a1、15a2)の取付位置を調整して取り付けるためである。
【0026】
碍子15b1、15b2(15a1、15a2)を取付部14b、14aに取り付けるにあたって、電線13の上下方向に揺動する範囲を考慮して、複数個の取付穴20b1〜20b8(20a1〜20a8)にいずれかを選択する。
図2(a)では、取付穴20b2、20b7(20a2〜20a7)を選択し、碍子15b1、15b2(15a1、15a2)を取付部14b、14aに取り付けた場合を示している。
【0027】
以上の説明では、新設鉄塔11に電線接近防止装置12が設けられ、新設鉄塔11と既設鉄塔に懸架された電線13との接触を防止する場合について説明したが、既設鉄塔が撤去鉄塔である場合には、撤去鉄塔にも電線接近防止装置12が設けられる。
【0028】
以下、隣接する2基の既設鉄塔間に新設鉄塔を構築して既設鉄塔を撤去する場合について説明する。
図3は新設鉄塔11の基礎部分を構築した段階での既設鉄塔21と新設鉄塔11との説明図であり、
図3(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図3(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0029】
図3(a)に示すように、既設鉄塔21は並行二回線の電線を有し、1回線1Lは三相三線の電線13x、13y、13zを有し、2回線2Lは三相三線の電線13u、13v、13wを有する。新設鉄塔11を構築の際には分断工事を行うので、1回線1L及び2回線2Lともに送電停止している。
図3(b)に示すように、新設鉄塔11の基礎部分を構築した段階では、既設鉄塔21の電線13x〜13y、13u〜13wのいずれも新設鉄塔11に接触することはない。これは、新設鉄塔11の基礎部分は、既設鉄塔21の電線13x〜13y、13u〜13wよりも低い箇所に位置するからである。
【0030】
次に、
図4は新設鉄塔の本体部分を構築した段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図4(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図4(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。いま、
図4の状態で、既設鉄塔21に懸架された電線13x〜13z、13u〜13wのうち送電可能とする電線は、2回線2Lの電線13u〜13wであるとする。
【0031】
図4(b)に示すように、新設鉄塔11の本体部分を構築した段階では、既設鉄塔21の電線13x〜13y、13u〜13wの高さは新設鉄塔11の本体部分に接触する可能性がある高さとなる。
【0032】
そこで、
図4(b)に示すように、送電可能回線である2回線2Lの電線13u〜13w側に位置する新設鉄塔11の両端の主柱材それぞれに電線接近防止装置12a〜12cを取り付ける。これにより、送電可能回線(2回線2L)の電線13u〜13wが新設鉄塔11に接触することはなくなり、また、最小絶縁間隔d0以上の間隔を保つので、電線13u〜13wが活線状態となったとしても新設鉄塔11を介しての地絡事故は発生しない。なお、非送電可能回線(1回線1L)の電線13x〜13yは送電停止状態を維持し活線状態となることがないので、非送電可能回線(1回線1L)側における新設鉄塔11の両端の主柱材に電線接近防止装置12a〜12cを取り付ける必要はない。
【0033】
図5は、既設鉄塔(撤去鉄塔)の1回線1L側の上相電線を新設鉄塔に移動する段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図5(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図5(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0034】
既設鉄塔(撤去鉄塔)21の非送電可能回線(1回線1L)側の上相電線13xを新設鉄塔11に移動する段階では、
図5(b)に示すように、新設鉄塔11の非送電可能回線(1回線1L)側において、上相電線13xを取り付けるための腕金22xを新設鉄塔11に取り付け、その腕金22xに上相電線13xを取り付ける。
【0035】
一方、
図5(a)に示すように、既設鉄塔(撤去鉄塔)21の非送電可能回線(1回線1L)側において、腕金23xから上相電線13xを取り外し、その後に腕金23xを撤去する。そして、既設鉄塔(撤去鉄塔)21に電線接近防止装置12xを取り付ける。これは、既設鉄塔(撤去鉄塔)21から腕金23xが撤去され、新設鉄塔11の腕金22xにより上相電線13xが支持されることになるので、上相電線13xが既設鉄塔(撤去鉄塔)21に接触することを防止するためであり、また、1回線1Lは、現在は非送電可能回線であるが、送電可能回線として使用できるようにしておくためである。
【0036】
次に、
図6は、既設鉄塔(撤去鉄塔)の2回線2L側の上相電線を新設鉄塔に移動する段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図6(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図6(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0037】
既設鉄塔(撤去鉄塔)21の2回線2L側の上相電線13uを新設鉄塔11に移動する作業を行うには、2回線2Lを非送電可能回線とし1回線1Lを送電可能回線とする必要がある。
【0038】
そこで、
図6(b)に示すように、新設鉄塔11の1回線1L側に電線接近防止装置12y、12zを設ける。なお、上相電線13xは新設鉄塔11の腕金22xにより既に支持されており、新設鉄塔11に接触することはない。また、既設鉄塔(撤去鉄塔)21には既に電線接近防止装置12xを取り付けているので、上相電線13xが既設鉄塔(撤去鉄塔)21に接触することはない。これにより、1回線1Lを送電可能回線とし、2回線2Lを非送電可能回線とする。
【0039】
2回線2Lを非送電可能回線とした状態で、電線接近防止装置12aを取り外し、上相電線13uを取り付けるための腕金22uを新設鉄塔11に取り付け、その腕金22uに上相電線13uを取り付ける。
【0040】
一方、
図6(a)に示す既設鉄塔(撤去鉄塔)21の非送電可能回線(2回線2L)側において、腕金23uから上相電線13uを取り外し、その後に腕金23uを撤去する。また、電線接近防止装置12xも取り外し、既設鉄塔21の腕金23y、23vより上部部位を解体し取り外す。
【0041】
図7は、既設鉄塔(撤去鉄塔)の1回線1L側の中相電線を新設鉄塔に移動する段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図7(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図7(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0042】
既設鉄塔(撤去鉄塔)21の1回線1L側の中相電線13yを新設鉄塔11に移動する作業を行うには、1回線1Lを非送電可能回線とし2回線2Lを送電可能回線とする必要がある。
【0043】
図7(b)に示すように、新設鉄塔11の2回線2L側には電線接近防止装置12b、12cが設けられており、上相電線13uは新設鉄塔11の腕金22uにより既に支持されているので、新設鉄塔11に接触することはない。従って、2回線2Lを送電可能回線とし、1回線1Lを非送電可能回線とする。
【0044】
1回線1Lを非送電可能回線とした状態で、中相電線13yを取り付けるための腕金22yを新設鉄塔11に取り付け、その腕金22yに中相電線13yを取り付ける。
【0045】
一方、
図7(a)に示す既設鉄塔(撤去鉄塔)21の非送電可能回線(1回線1L)側において、腕金23yから中相電線13yを取り外し、その後に腕金23yを撤去する。また、既設鉄塔(撤去鉄塔)21に電線接近防止装置12yを取り付ける。これは、中相電線13yが既設鉄塔(撤去鉄塔)21に接触することを防止し、1回線1Lが送電可能回線として使用できるようにしておくためである。
【0046】
図8は、既設鉄塔(撤去鉄塔)の1回線1L側の下相電線を新設鉄塔に移動する段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図8(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図8(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0047】
1回線1L側の中相電線13yを新設鉄塔11に移動した後、1回線1L側の下相電線13zを新設鉄塔11に移動する。この状態では、1回線1Lが非送電可能回線であるので、
図8(b)に示すように、下相電線13zを取り付けるための腕金22zを新設鉄塔11に取り付け、その腕金22zに下相電線13zを取り付ける。
【0048】
一方、
図8(a)に示す既設鉄塔(撤去鉄塔)21の非送電可能回線(1回線1L)側において、腕金23zから
下相電線13zを取り外し、その後に腕金23zを撤去する。また、既設鉄塔(撤去鉄塔)21に電線接近防止装置12zを取り付ける。これは、下相電線13zが既設鉄塔(撤去鉄塔)21に接触することを防止し、1回線1Lが送電可能回線として使用できるようにしておくためである。
【0049】
図9は、既設鉄塔(撤去鉄塔)の2回線2L側の中相電線を新設鉄塔に移動する段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図9(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図9(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0050】
既設鉄塔(撤去鉄塔)21の2回線2L側の中相電線13vを新設鉄塔11に移動する作業を行うには、2回線2Lを非送電可能回線とし1回線1Lを送電可能回線とする必要がある。
【0051】
図9(b)に示すように、新設鉄塔11の1回線1L側は、腕金22xにより上相電線13x、腕金22yにより中相電線13y、腕金22zにより下相電線13zが支持されているので、電線13x〜13zが新設鉄塔11に接触することはない。従って、1回線1Lを送電可能回線とし、2回線2Lを非送電可能回線とする。
【0052】
2回線2Lを非送電可能回線とした状態で、中相電線13vを取り付けるための腕金22vを新設鉄塔11に取り付け、その腕金22vに中相電線13vを取り付ける。
【0053】
一方、
図9(a)に示す既設鉄塔(撤去鉄塔)21の1回線1L側において、電線接近防止装置12yを取り外し、既設鉄塔(撤去鉄塔)21の2回線2L側において、腕金23vから中相電線13vを取り外し、その後に腕金23vを撤去する。さらに、既設鉄塔21の腕金23vより上部部位を解体し取り外す。
【0054】
図10は、既設鉄塔(撤去鉄塔)の2回線2L側の下相電線を新設鉄塔に移動する段階での既設鉄塔と新設鉄塔との説明図であり、
図10(a)は既設鉄塔21の状態を示す説明図、
図10(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0055】
2回線2L側の中相電線13vを新設鉄塔11に移動した後、2回線2L側の下相電線13wを新設鉄塔11に移動する。この状態では、2回線2Lが非送電可能回線であるので、
図10(b)に示すように、下相電線13wを取り付けるための腕金22wを新設鉄塔11に取り付け、その腕金22wに下相電線13wを取り付ける。
【0056】
一方、
図10(a)に示す既設鉄塔(撤去鉄塔)21の1回線1L側において、電線接近防止装置12zを取り外し、既設鉄塔(撤去鉄塔)21の2回線2L側において、腕金23wから下相電線13wを取り外し、その後に腕金23wを撤去する。
【0057】
さらに、既設鉄塔21を解体し撤去する。
【0058】
図11は、既設鉄塔に代えて新設鉄塔の構築が完了した状態の説明図であり、
図11(a)は既設鉄塔21を撤去した後の電線の状態を示す説明図、
図11(b)は新設鉄塔11の状態を示す説明図である。
【0059】
以上のように、隣接する2基の既設鉄塔間に新設鉄塔11を構築する際に、鉄塔と電線とが接触しないように電線接近防止装置12を鉄塔に設ける。そして、電線接近防止装置12は、以下のようにして取り付けられる。まず、隣接する一方の鉄塔に懸架された電線13のうち、送電可能とする電線側に位置する他方の鉄塔の両端の主柱材17に、それぞれ取付部14を取り付ける。そして、取付部14が取り付けられた鉄塔と、電線13との間隔が最小絶縁間隔以上の間隔を保つように、取付部14の上部及び下部に、電線側に突出して一対の碍子15を取り付ける。さらに、一対の碍子15の先端部に電線受止部16を取り付ける。電線受止部16は、電線13が揺動したときに電線13を受け止めて、電線13が鉄塔に接触するのを阻止するものである。
【0060】
次に、本発明の実施形態に係る電線接近防止装置の他の一例を説明する。
図12は本発明の実施形態に係る電線接近防止装置の他の一例を示す構成図であり、
図12(a)は鉄塔に取り付けた状態の他の一例の電線接近防止装置の斜視図、
図12(b)は電線が他の一例の電線接近防止装置に接触した状態の一例を示す平面図、
図12(c)は電線が
図1に示す電線接近防止装置に接触した状態の一例を示す平面図である。
【0061】
この他の一例は、
図1に示した一例に対し、取付部14は、鉄塔11の両端からはみ出した位置で、一対の碍子15を電線13側に突出して取り付けるようにしたものである。
図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0062】
図12(a)において、電線接近防止装置12の取付部14a、14bは、鉄塔11の両端の主柱材17a、17bの幅より、はみ出した位置で一対の碍子15a1、15a2(15b1、15b2)を取り付けるように形成されている。従って、鉄塔11の幅より大きい幅を保って、電線接近防止装置12を取り付けられる。
【0063】
図12(b)において、取付部14a、14bは、鉄塔11の両端の主柱材17a、17bの幅より、Δdだけはみ出した位置で一対の碍子15a1、15a2(15b1、15b2)を取り付けている。従って、電線13が鉄塔11側に食い込んできた場合であっても、鉄塔11と電線13との間隔d3として、最小絶縁間隔d0以上の間隔を確保できる。
【0064】
一方、
図12(c)において、
図1に示した電線接近防止装置12の場合には、電線13が鉄塔11側に大きく食い込んできたとき、確保できる離間間隔d4は最小絶縁間隔d0より小さくなることも考えられる。
【0065】
このように、他の一例の電線接近防止装置12では、鉄塔11の両端の主柱材17a、17bの幅より、Δdだけはみ出した位置で一対の碍子15a1、15a2(15b1、15b2)を取り付けるので、電線13が鉄塔11側に大きく食い込んできたとしても、最小絶縁間隔d0以上の離間間隔d4を確保できる。従って、より確実に、鉄塔11と電線13との間隔を最小絶縁間隔d0以上の間隔に保つことができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。