特許第6015293号(P6015293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015293
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】非接触IC媒体
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/073 20060101AFI20161013BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20161013BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20161013BHJP
【FI】
   G06K19/073 027
   G06K19/077 144
   G06K19/077 152
   G06K19/077 224
   B42D15/10 307
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-210717(P2012-210717)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-67140(P2014-67140A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 利明
(72)【発明者】
【氏名】山岡 経之介
(72)【発明者】
【氏名】名塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 和代
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−025242(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2469453(EP,A1)
【文献】 特開2004−310479(JP,A)
【文献】 特開2009−110146(JP,A)
【文献】 特開2005−310054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
B42D 25/00−25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレット基材とインレット基材に設けられたアンテナ素子と、アンテナ素子に接続されたICチップとを有するインレットを備え、
該インレットの一方の面に電磁遮蔽性スクラッチ層を設けてなり、
該電磁遮蔽性スクラッチ層が、スクラッチ加工層と該スクラッチ加工層上に形成された厚みが1〜15μmの範囲内である金属薄膜層を含むこと特徴とする非接触IC媒体。
【請求項2】
さらにインレットの他方の面に物品に貼付するための接着層を有することを特徴とする請求項1に記載の非接触IC媒体。
【請求項3】
前記電磁遮蔽性スクラッチ層が易剥離層を介してインレット上に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触IC媒体。
【請求項4】
前記電磁遮蔽性スクラッチ層の厚みが5μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非接触IC媒体。
【請求項5】
前記インレットのアンテナ素子がコイル状アンテナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非接触IC媒体。
【請求項6】
前記電磁遮蔽性スクラッチ層がインレットのアンテナ素子の65%以上を覆っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非接触IC媒体。
【請求項7】
前記インレットと物品に貼付するための接着層の間に磁性層を有することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の非接触IC媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば商品やその包装物に貼り付けて使用する非接触通信可能なIC(integrated circuit)媒体に関する
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの比較的高価な商品や電化製品の消耗品、書籍、CD、DVDなどに偽造品をけん制するため、物流管理、万引き防止など、様々な目的で商品本体やそれを包装したケース等にICラベルを貼り付けることが行われている。
ICラベルは、封印ラベル(ラベル基材)の粘着面の一部に、高いセキュリティ機能を有するICインレット(非接触IC媒体)が貼り付けられた構成からなる。このICラベルによれば、ICインレットに埋め込まれたICチップに固有の識別情報が記憶させることで、個々の判別が可能となる。
【0003】
また、IC読取機の普及が進んでおり、IC読取機が組み込まれた携帯電話など、一般消費者が使用できる環境になりつつある。例えばIC読取機能を有するNFC(Near Field Communication)チップを搭載したスマートフォンなどである。
そのため、このようなICラベルの他の用途として、従来の偽造防止用途以外に、ICチップに商品情報を格納しておき、消費者が自らIC読取機で広告、特典、クーポンなどの商品情報を取得する、という使い方が可能となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−150924号公報
【特許文献2】特開2002−083250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICを用いた非接触通信方法は、一定の距離まで読取機を近づけることで、ICの情報を読取ることが出来るため、商品の購入前に商品や包装物に貼付されたICの情報を読取られる可能性がある。これは、ICラベルに限らず非接触通信可能なIC媒体一般にいえることである。
そこで、本発明では、商品やその包装物に貼り付けて使用する非接触IC媒体において、初期状態読取ることが不可能でありながら、その後に読取ることが可能とすることができる非接触IC媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インレット基材とインレット基材に設けられたアンテナ素子と、アンテナ素子に接続されたICチップとを有するインレットを備え、該インレットの一方の面に電磁遮蔽性スクラッチ層を設けてなること特徴とする非接触IC媒体とする。
【0007】
また、さらにインレットの他方の面に物品に貼付するための接着層を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記電磁遮蔽性スクラッチ層が、スクラッチ加工層と該スクラッチ加工層上に形成された金属薄膜層を含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記電磁遮蔽性スクラッチ層が易剥離層を介してインレット上に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記電磁遮蔽性スクラッチ層の厚みが5μm以上であることを特徴とする。
【0011】
また、前記インレットのアンテナ素子がコイル状アンテナであることを特徴とする。
【0012】
また、前記電磁遮蔽性スクラッチ層がインレットのアンテナ素子の50%以上を覆っていることを特徴とする。
【0013】
また、前記インレットと物品に貼付するための接着層の間に磁性層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、商品やその包装物に貼り付けて使用するICラベルやICカード等の非接触IC媒体において、初期状態では読取ることが不可能でありながら、その後に読取ることが可能とすることができる非接触IC媒体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の非接触IC媒体の概略を示す説明図である。
図2】本発明の非接触IC媒体の概略を示す断面説明図である。
図3】本発明の非接触IC媒体の概略を示す断面説明図である。
図4】本発明の非接触IC媒体の概略を示す断面説明図である。
図5】本発明の非接触IC媒体の概略を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る非接触IC媒体の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0017】
図1は本発明の非接触IC媒体の概略を示す説明図である。図2、3、4は非接触IC媒体としてラベルの例の概略を示す断面説明図である。図5は、ICカードの例の概略を示す断面説明図である。
図2に示すように、非接触IC媒体1は、非接触通信が可能なICインレット2とインレットの一方の面に電磁遮蔽性スクラッチ層6を設けてなり、他方の面にCD、DVDや書籍等の被着体9に貼り合わせるための接着(粘着)層7を設けてなる。なお、電磁遮蔽性スクラッチ層6とインレット2の間には適宜他の中間層があってもよい。
このようにすることで、商品の購入前など初期状態では電磁遮蔽性スクラッチ層が通信を遮蔽するため、不正なICチップの読み取りを防ぐことができ、商品購入後などその後消費者が、非接触IC媒体の上側の電磁遮蔽性スクラッチ層を削ると、ICチップの中身を読取ることができる。
【0018】
インレット2は、インレット基材3とインレット基材3の一方の面にアンテナ素子5とアンテナ素子5と電気的に接続されているICチップ(ICモジュール)4を備えてなる。
【0019】
インレット基材3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートなどのプラスック基材を用いることができる。また、紙基材などを用いてもかまわない。
【0020】
アンテナ素子5としては、UHF帯域(800〜1000MHz)、13.56MHz、2.45GHzなどを通信周波数とする、コイル型、ダイポール型、パッチ型のアンテナ素子を用いることができる。
アンテナ素子5は、導電性材料により回路形成できるものであれば特に限定するものではなく様々なものを用いることができる。例えば、金属薄膜をエッチングによりパターン状に形成する方法や、導電性ワイヤーを配置する方法、導電性インキを印刷によりパターン状に形成したものなどが挙げられる。
【0021】
金属薄膜をエッチングによりパターン状に形成する方法としては、アルミニウムや銅などの導電性薄膜をエッチング液耐性のある材料でパターン状に被覆し、エッチング液で部分的に導電性薄膜を除去することにより、パターン状に導電性薄膜を形成する方法を用いることができる。なお、配線が交差する部分についてはインレット基材の裏面にジャンパー線を設け、インレット基材に接続用の開口を設けて接続しても良いし、別途ジャンパー線部材を用いて貼り合わせるて接続させても良い。
導電性ワイヤーを配置する方法としては、銅などの金属線を布線機等によりパターン状に形成する方法が挙げられる。なお、金属線は絶縁被膜で被覆することができ、コイル状のアンテナとする場合は、アンテナコイルとアンテナコイルが交差する部分において、ジャンパー線加工など施すことなく配線できるため好ましい。
導電性インキを印刷によりパターン状に形成する方法としては、導電性材料からなる粒子をバインダー中に溶解又は分散した導電性ペーストからなることが好ましい。上記した導電性材料としては銀系が好ましく、導電性ペーストとしてはバインダーの樹脂、溶剤及び銀粉を含みそれらの接触により導電性を得る蒸発乾燥型の銀ペーストが挙げられる。ただし、導電性材料は、銀系に限らず、例えば、銅やニッケルなどの金属粉末や、導電性カーボン粉末、導電性繊維、導電性ウィスカーなどを樹脂バインダーとともに溶媒に溶解又は分散したものを使用できる。印刷方法としては例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方式で印刷して形成することができる。また、導電性のインクをプリンタでプリントすることも可能である。
【0022】
本発明のICチップは、チップ上に接続用のバンプを形成したいわゆるベアチップや接続板状にチップを実装し、樹脂で封止したいわゆるICモジュールなどを含む。
ICチップは、アンテナ素子電気的に接続されてインレット基材上に実装される。通常はアンテナ素子を形成した後に実装する。実装する際、例えばICモジュールを用いる場合、ICモジュールの厚みを緩和するためにインレット基材に開口を設けておき、開口内にICモジュールのチップ部等を部分的に収納するように実装することができる。
また、ICチップは、非接触通信機能を有し、またメモリ部に広告、ポイント、特典などの商品情報又は商品情報のアドレスを記憶してなる。
【0023】
電磁遮蔽性スクラッチ層6は、電波又は磁界を遮蔽することで非接触通信を遮断することができ、かつ硬化などの硬質材料で削って除去、又は粘着テープ・粘着シートなどを付着・剥離ことで除去することが可能なものであれば特に限定するものではない。
例えば、金属材料を含むスクラッチインキを用いることができる。
スクラッチインキとしては、バインダー樹脂に金属材料を混練したものがあげられ、バインダー樹脂としては、天然ゴムや塩酸ゴム等のゴム系天然樹脂と、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系樹脂の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂を用いることができ、金属材料としては、アルミニウム微粉末、黄銅微粉末、銅微粉末等の金属微粉末やそれらの酸化微粉末及びカーボンラック微粉末があげられる。
また、バインダー樹脂にカーボンや導電性高分子などを添加することで導電性を向上させ、電波又は磁界を遮蔽性をあげることができる。
さらに、金属材料として鱗状又は板状の金属材料を用いたり、銀ペーストなどを添加することで導電性を向上させ、電波又は磁界を遮蔽性をあげることができる。
また、スクラッチインキは、適宜溶剤を加え、印刷法により塗布することができる。スクラッチインキを用いた層の膜厚としては特に限定はしないが、1〜15μm程度、好ましくは5〜10μm程度の範囲内で設定できる。
【0024】
また、上記スクラッチインキにより形成した層では遮蔽性が不十分である場合は、スクラッチ層上に金属薄膜層を形成することができる。
金属薄膜層としては、アルミニウム、銅等の金属からなる金属薄膜や、これらの金属を蒸着したもの、金属ペーストを塗布したものなどがあげられる。
金属薄膜層の厚みは、充分な遮蔽性があり、かつ硬化などの硬質材料で削る際、下層のスクラッチ層と合わせて削りとることが可能であれば特に限定するものではなく、材質など合わせて適宜設定できるが、例えば1〜15μm程度、好ましくは5〜10μm程度の範囲内で設定できる。
スクラッチ層としては、上記スクラッチインキを塗布したものがあげられる。
スクラッチ層は1〜15μm程度、好ましくは5〜10μm程度の範囲内で設定できる。
なお、金属薄膜層のかわりに非金属材料からなる導電性薄膜層を用いても良い。
【0025】
また、電磁遮蔽性スクラッチ層の色については、特に限定しないが、光透過度の低いものであれば、アンテナ素子やICチップを隠蔽できる。
また、スクラッチ層は適宜色材を添加してもよい。
【0026】
また、インレットと電磁遮蔽性スクラッチ層の間には易剥離層を形成しても良い。
易剥離層を設けることで、スクラッチオフしやすくすることができる。
易剥離層としては、公知のニス材料などを用いることができる。
【0027】
インレット2の他方の面に設ける被着体と貼り合わせるための接着(粘着)層7としては、接着強度として、幅10mmの接着(粘着)層をステンレス板に貼付したときの180度剥離試験の値が、2N/10mm以上、好ましくは3N/10mm以上の材料と用いることができる。いわゆる中粘着性、強粘着性の領域であり、この範囲であれば被着体に貼り付け保持が可能なものとなる。なお、貼付後剥がしたい要望がある場合は弱粘着材料を用いてもよい。弱粘着剤としては、2N/10mm以下の材料を用いることができる。
接着(粘着)層7の厚みとしては、特に限定するものではないが0.1μm〜5mm、好ましくは10〜50μmの範囲内で設けることができる。
【0028】
接着(粘着)層7としては、溶剤型、水系エマルション型、ホットメルト型などを用いることができる。
溶剤型としては、天然ゴム、ブロック共重合体系を含む合成ゴムを主成分とし、ロジンとそのエステル、テルペン樹脂等の粘着付与樹脂、フタル酸エステル、リン酸エステル等の軟化剤をトルエン、N−ヘキサンなどの溶媒に溶解したもの、あるいは酢酸エチルやトルエンが主体の溶媒中でラジカル重合で得られたポリアクリル酸エステルを主体としたアクリル系樹脂に、ロジンとそのエステル、テルペン樹脂等の粘着付与樹脂、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、ジイソシアネート、アジリジニル基化合物などの硬化剤等でなるものがある。
水系エマルション型としては、水中での乳化重合で得られたポリアクリル酸エステルを主体としたアクリル系樹脂を消泡剤、レベリング剤、増粘剤ネチタン分散体等添加剤等でなるエマルションとしたものがある。
ホットメルト型(無溶剤型)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分としたものがあり、上記溶剤型、水系エマルション型、ホットメルト型(無溶剤型)のいずれもが使用できるが、その中でもアクリル系樹脂を主要樹脂とした水系エマルション型の粘着剤を用いた粘着剤層がローラー間での柔軟性においてより好適なものであり、かつ環境問題への対応、安全性、経済性などの観点からもより有利な粘着剤である。
また、その他、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル系、ポリ塩化ビニル系、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系、ポリウレタン系などの非水溶性高分子材料を用いることもできる。
これらの材料は、添加剤、分子量などの最適化により前述の接着強度の範囲に設定できる。
【0029】
なお、接着(粘着)層7はインレット基材のアンテナ、ICチップが形成された側に設けられていることが好ましい。このようにすることで後述する金属層を設ける面を平坦にすることができ、後から金属層を剥がす時に金属層を剥がしやすくでき、またアンテナ等の破壊を防ぐ構造とすることができる。
【0030】
また、さらに非接触IC媒体1は中間基材(図示せず)を用いてもよい。中間基材を設ける位置は特に限定することはないが、例えばインレット基材に隣接するように設けても良い。また中間基材は接着(粘着)剤のより貼り合わせることができる。接着(粘着)剤としては、接着(粘着)層7と同様の中粘着、強粘着材料を用いることができる。
非接触IC媒体をラベルとする場合、インレット基材のサイズ(面積)がラベルのサイズ(面積)に対し小さい場合や、インレット基材の機械強度が充分でない場合に中間基材をラベル基材として用いることが効果的である。
中間基材としては、塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸及びエチレングリコールとの共重合体、またはその共重合体とポリカーボネート及び、またはポリアリレートとのポリマーアロイからなる非晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、紙、含浸紙、ゴム系基材等があげられる。
【0031】
また、非接触IC媒体をラベルとする場合に、被着体としてCDやDVD等金属を含むものを用いる場合、そのまま貼り付けると通信が阻害されることがある。そのため、インレット2と接着(粘着)層7の間に磁性層9を用いることができる。磁性層を設ける位置としては例えばインレット基材のアンテナを設けた側に直接設けることができる。
磁性層としては、磁性材料を含むものであれば特に限定はないが、例えば磁性材料を樹脂や溶剤に混ぜて塗布したものが挙げられる。
磁性材料としては、特に限定はないが、カーボニル鉄粉末、パーマロイ等のアトマイズ粉末、還元鉄粉末等等の、鉄や鉄を含む合金又は化合物の粉体などがあげられる。
【0032】
また、スクラッチ層が、粘着テープを付着・剥離することで除去可能な構成の場合、予め電磁遮蔽性スクラッチ層上に粘着テープ又は粘着シートを設けておいても良い。
なお、粘着テープ又は粘着シートには予め文字や絵柄等の印刷を施しておいても良い。
【0033】
また、ICカードとする場合、適宜カード基材を用いても良い。具体的には図5に示すようにカード基材10にインレット2を挟んだ構成とすることができる。
カード基材としては、非晶質ポリエステル系基材、ポリエチレン系基材、塩化ビニル系基材、ポリカーボネート系基材、アクリル系基材、紙系基材、多孔質ポリオレフィン系基材などを用いることができる。
【0034】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
<実施例1>
インレット基材として、サイズ18×50μmで厚み50μmからなるポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、一方の面にエッチング法により形成した銅箔からなる8×37mmのサイズで12巻のコイル状アンテナからなるアンテナ素子を形成した。なお、コイルが交差する部分については、短冊状の銅箔付PETのPET側をコイル上に配置し、かしめ加工により導通させた。そしてアンテナコイルの端部にICチップを接続し、実装しインレットを得た。
インレット基材の他方の面に、スクラッチ層を形成した。スクラッチ層は、アルミペースト(平均粒径15μmのアルミ粉60%、MFG系溶剤40%)とバインダー樹脂としてスチレン・ブタジエン共重合体を含む組成物に溶剤を加え、印刷法により乾燥膜厚が5μmになるように形成した。このスクラッチ層上に厚み10μmのアルミニウム箔を貼り合わせ、電磁遮蔽性スクラッチ層を得た。電磁遮蔽性スクラッチ層のサイズは18×50μmとしアンテナコイルの100%を覆うようにした。
次にインレットのアンテナ面にアクリル系粘着剤からなる粘着層を介してアクリル板からなる被着体に貼り合わせた。なおこの粘着層の強度は3N/10mmであった。
【0035】
<実施例2>
電磁遮蔽性スクラッチ層のサイズを6×37μmに変更し、アンテナコイルの75%を覆うように変更した以外は実施例1と同様に作成した。
【0036】
<実施例3>
電磁遮蔽性スクラッチ層のサイズを5.2×37μmに変更し、アンテナコイルの65%を覆うように変更した以外は実施例1と同様に作成した。
【0037】
<評価>
実施例1〜3のサンプルについて、電磁遮蔽性スクラッチ層を除去する前と、除去した後について、読取用RW(TAKAYA製 TR3XM−SU01)を用いて、通信状態を確認した。電磁遮蔽性スクラッチ層の除去は硬化を用いて削ることにより除去した。
結果実施例1〜3のサンプル全てにおいて、金属層を剥離する前は通信が不可能であったが、金属層を剥離した後は通信が可能となった。
【符号の説明】
【0038】
1・・・・非接触IC媒体
2・・・・インレット
3・・・・インレット基材
4・・・・ICチップ(ICモジュール)
5・・・・アンテナ素子
6・・・・電磁遮蔽性スクラッチ層
6a・・・金属薄膜層
6b・・・スクラッチ層
7・・・・接着(粘着)層
8・・・・被着体
9・・・・磁性層
10・・・カード基材
図1
図2
図3
図4
図5