特許第6015301号(P6015301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6015301-ガラス管の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015301
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ガラス管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20161013BHJP
   C03B 37/018 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C03B37/012 Z
   C03B37/018 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-214880(P2012-214880)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-69974(P2014-69974A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 圭省
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲夫
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−146680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素が添加されたガラス管を製造する方法であって、
フッ素が添加されたガラスロッドを出発ロッド部として用い、
前記出発ロッド部の周囲に四塩化珪素からなるガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を形成し、フッ素を添加しながら前記ガラス微粒子堆積体を焼結させてガラス管部を形成した後、
前記ガラス管部から前記出発ロッド部を穿孔工具により穿孔して除去し、パイプ状のガラス管を形成することを含み
前記出発ロッド部の平均フッ素添加濃度と前記ガラス微粒子堆積体を焼結した部分の平均フッ素添加濃度との差が0.8wt%以下であることを特徴とする、ガラス管の製造方法。
【請求項2】
穿孔時における前記出発ロッド部の外径は前記穿孔工具の内径よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のガラス管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素が添加されたガラス管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コア部とクラッド部からなる光ファイバは、光ファイバ用のガラス母材を線引きして製造される。このガラス母材は、コア部となるコアロッドをクラッド部となるガラス管に挿入することにより製造する場合があるが、このクラッド部となるガラス管の製造方法として、石英からなるガラスロッドの周囲にスス体を堆積させ、このスス体を焼結させた後、内側のガラスロッドを穿孔により除去することでガラス管を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−192233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のガラス管の製造方法においては、出発ロッドとして石英からなるガラスロッドが使用され、その周囲にスス体を堆積させているが、石英ガラスロッドを用いてその周囲にフッ素が添加されたガラス管部を製造した場合、穿孔工具による穿孔の際に割れが発生する場合があった。これは、石英ガラスロッドとその周囲のフッ素添加されたガラス管部との熱膨張率の差により、ガラスロッドとガラス管部との界面に歪みが生じているためであると考えられる。
【0005】
本発明の目的は、穿孔の際の割れを抑制することが可能なガラス管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明のガラス管の製造方法は、
フッ素が添加されたガラス管を製造する方法であって、
フッ素が添加されたガラスロッドを出発ロッド部として用い、
前記出発ロッド部の周囲に四塩化珪素からなるガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を形成し、フッ素を添加しながら前記ガラス微粒子堆積体を焼結させてガラス管部を形成した後、
前記ガラス管部から前記出発ロッド部を穿孔工具により穿孔して除去し、パイプ状のガラス管を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明のガラス管の製造方法において、穿孔時における前記出発ロッド部の外径は前記穿孔工具の内径よりも小さいことが好ましい。
【0008】
本発明のガラス管の製造方法において、前記出発ロッド部の平均フッ素添加濃度と前記ガラス微粒子堆積体を焼結した部分の平均フッ素添加濃度との差が0.8wt%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス微粒子をその周囲に堆積させる出発ロッド部としてフッ素が添加されたガラスロッドが用いられているため、出発ロッド部と、その周囲にガラス微粒子を堆積させ、フッ素を添加しながら焼結して形成したガラス管部との間に熱膨張率の差がなくなり、出発ロッド部とガラス管部との界面における歪みの発生を抑えることができる。これにより、穿孔の際に生じる割れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るガラス管の製造方法の一例を示す断面図であって、(a)は出発ロッド部の周囲にガラス微粒子が堆積された状態の図、(b)は出発ロッド部の周囲に堆積されたガラス微粒子堆積体を焼結させた状態の図、(c)は焼結された透明ガラス体を延伸させた状態の図、(d)は透明ガラス体のうち出発ロッド部の部分を除去した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るガラス管の製造方法の実施の形態の例を、図1(a)〜(d)を参照して説明する。
【0012】
まず、図1(a)に示すように、出発ロッド部20の周囲に例えば四塩化珪素(SiCl)からなるガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体10を形成し、多孔質ガラス母材1を作製する。具体的には、原料ガスである四塩化珪素(SiCl)と、燃料ガスである水素ガス(H)および酸素ガス(O)等を用いて加水分解反応若しくは熱酸化反応によりガラス微粒子を生成し、出発ロッド部20の外周にガラス微粒子を堆積させる。
【0013】
次に、図1(b)に示すように、例えばヘリウムガス等の雰囲気中でフッ素を添加しながら出発ロッド部20の周囲に形成されたガラス微粒子堆積体10を焼結することで、ガラス微粒子堆積体10が透明ガラス体10aとなった焼結母材1aを作製する。
【0014】
その後、図1(c)に示すように、焼結母材1aを所望の長さおよび外径となるよう延伸させて、延伸母材1bを作製する。延伸母材1bは、焼結母材1aのときと比較して、透明ガラス体10bおよび出発ロッド部20bが長くなり、細径化されている。
【0015】
最後に、図1(d)に示すように、延伸された透明ガラス体10bのうち出発ロッド部20bの部分を図示しない穿孔工具により穿孔して除去し、パイプ状のガラス管1cを得る。
【0016】
本実施形態においては、出発ロッド部20としてフッ素が添加されたガラスロッドが用いられる。また、穿孔時の割れをより抑制するためには、出発ロッド部20のフッ素添加濃度とガラス微粒子堆積体10を焼結した透明ガラス体10aのフッ素添加濃度との差は小さくすることが好ましい。
【0017】
穿孔工具としては、筒状部材の先端にダイアモンド等で形成されるヘッドが取り付けられたものが用いられる。穿孔工具の筒部の内径は穿孔時の出発ロッド部20bの外径D’よりも大きいものであることが好ましい。出発ロッド部20bと周囲の透明ガラス体10bとの界面にはガラス微粒子堆積体10を形成する際に発生するOH基などの不純物が付着している。また、出発ロッド部20b自体も不純物を含んでいる。穿孔後に出発ロッド部20bの部分が残るとOH基などの不純物に起因する伝送ロスが生じるため、穿孔時の出発ロッド部20bの外径D’を穿孔工具の筒部の内径よりも小さくなるようにして出発ロッド部20bの部分を完全に除去することが必要である。
【0018】
なお、穿孔工具により出発ロッド部20bの部分を完全に除去するためには、焼結前の出発ロッド部20の外径が以下の式(1)の関係を満たすことが必要である。
【0019】
【数1】

・・・式(1)
(mm):出発ロッド部20の外径
(mm):焼結後の透明ガラス10aの外径
’(mm):延伸後の透明ガラス体10bの外径
(mm):穿孔工具の(筒部の)内径
【0020】
式(1)のうち「(D−0.5)」は出発ロッド部20の曲がりなどを考慮して、穿孔工具の内径Dに余裕を持たせた値である。なお、ガラス微粒子堆積体10の焼結後に延伸を行わない場合には、D=D’となる。
【0021】
また、式(1)のうち、「α」は以下の式(2)で表されるものであり、焼結される際のガラス微粒子堆積体10の軸方向における収縮率を示す。
【数2】

・・・式(2)
L(mm):ガラス微粒子堆積時の出発ロッド部20のロッド長
L’(mm):焼結後の出発ロッド部20aのロッド長
【0022】
焼結前の出発ロッド部20の外径Dが上記の式(1)を満たしていれば、焼結・延伸後の出発ロッド部20bの外径D’が穿孔工具の内径よりも小さくなるため、焼結あるいは延伸後の出発ロッド部20a,20bの部分を穿孔工具により確実に除去することができる。
【実施例】
【0023】
異なる外径Dを有する複数の出発ロッド部20を用いて図1(a)〜(d)に示す製造方法にて複数のガラス管1cを製造し、それぞれのガラス管1cにおけるロス良好率を測定した結果を表1に示している。表1に示すように、穿孔工具の内径Dが11.8mmであり、焼結される際のガラス微粒子堆積体10の収縮率αが0.8である場合、式(1)は、D≦19.44となる。
そこで、式(1)を満たす実施例1〜3として、焼結前の出発ロッド部20の外径Dを17.0〜19.0mmとして作製されたガラス管1cを用いて光ファイバ用ガラス母材を製造し、これを線引して得られた光ファイバについて評価を行った。また、式(1)を満たさない比較例1〜5として、焼結前の出発ロッド部20の外径Dを19.5〜23.0mmとしたガラス管1cについて、同様に評価を行った。
なお、本実施形態における「ロス良好率」とは、波長1550nmの場合の伝送損失が0.175dB/km以下である割合を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
その結果、表1に示すように実施例1〜3においては、ロス良好率がいずれも100%であったが、比較例1〜5においては、ロス良好率が0〜85%であった。
【0026】
以上より、式(1)の関係を満たしている実施例1〜3においては、出発ロッド部20bの部分を完全に除去することができるため、伝送ロスの発生を抑制できることが確認された。
【0027】
次に、実施例4〜8および比較例6〜8として、出発ロッド部20の平均フッ素添加濃度とガラス微粒子堆積体10を焼結した部分であるガラス管部(透明ガラス体10a,10b)の平均フッ素添加濃度との差(以下、「フッ素添加濃度の差」という)、および出発ロッド部20bの部分を穿孔して除去する際にガラス管1cに割れが生じる確率(以下、「ガラス管割れ発生率」という)を比較した。その結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2に示すように、出発ロッド部20のフッ素添加濃度を1.20〜0wt%の各値とし、ガラス管部(透明ガラス体10a,10b)のフッ素添加濃度を1.05wt%として、フッ素添加濃度の差に基づく、穿孔時のガラス管割れ発生率を比較評価した。
その結果、フッ素添加濃度の差が−0.15〜0.75wt%である実施例4〜8においては、ガラス管割れ発生率は0〜0.5%であった。
一方、フッ素添加濃度の差が0.84〜1.05wt%である比較例6〜8においては、ガラス管割れ発生率は45〜100%であり、実施例4〜8と比べてガラス管割れ発生率が大幅に上がった。
【0030】
以上より、ガラス管割れ発生率をほぼ0%に抑えるためには、フッ素添加濃度の差を0.8wt%以下とすることが好適であることが確認された。
【0031】
以上説明した本実施形態に係るガラス管1cの製造方法によれば、フッ素が添加されたガラスロッドが出発ロッド部20として用いられているため、出発ロッド部20とガラス管部との間の熱膨張率の差を最小限にすることができ、出発ロッド部20とガラス管部との界面における歪みの発生を抑えることができる。これにより、穿孔工具による穿孔の際に生じる割れの発生を抑制することができる。
【0032】
また、焼結・延伸後の出発ロッド部20bの外径が穿孔工具の内径よりも小さく設定されていることで、出発ロッド部20bの部分を穿孔工具により完全に除去することができ、出発ロッド部20bの残留による伝送ロスの発生を抑制することができる。
【0033】
さらに、出発ロッド部20の平均フッ素添加濃度とガラス管部の平均フッ素添加濃度との差を0.8wt%以下とすることで、穿孔の際のガラス管1cの割れの発生を有意に抑制することができる。
【0034】
以上において本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、必要に応じて他の構成を採用することが可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態においては、ガラス微粒子堆積体10の焼結時にフッ素を添加したが、スス付け時にフッ素を添加してもよい。また、細径の出発ロッド部20の周囲にガラス微粒子を堆積させる方法としては、VAD法(気相軸付け法)でもよいし、OVD法(外付け法)、MMD法(多バーナ多層付け法)などの他のガラス母材の製造方法でもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:多孔質ガラス母材、1a:焼結母材、1b:延伸母材、1c:ガラス管、10:ガラス微粒子堆積体、10a,10b:透明ガラス体(ガラス管部)、20,20a,20b:出発ロッド部
図1