特許第6015306号(P6015306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015306メタロセン化合物、それを含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びにそのオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015306
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】メタロセン化合物、それを含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びにそのオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20161013BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20161013BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20161013BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C07F17/00
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
   C07F7/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2012-215723(P2012-215723)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70029(P2014-70029A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】石濱 由之
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 努
(72)【発明者】
【氏名】坂田 和也
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮太郎
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025664(JP,A)
【文献】 特開平09−087314(JP,A)
【文献】 特開平07−224079(JP,A)
【文献】 特表2008−544003(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/065844(WO,A1)
【文献】 特開2012−214780(JP,A)
【文献】 特開2011−137146(JP,A)
【文献】 特開2001−072695(JP,A)
【文献】 特開2008−050278(JP,A)
【文献】 特開2011−089019(JP,A)
【文献】 特開2012−188603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 17/00
C07F 7/00
C08F 4/6592
C08F 10/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるメタロセン化合物
【化1】
[式(1)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。QとQは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのRは、結合しているQおよびQと一緒に環を形成していてもよい。mは、0でありは、Rを含む共役5員環と直接結合している。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜6の炭化水素基、または炭素数1〜7のハロゲン含有炭化水素基を示す。Rは、次の一般式(1−a)で示される置換アリール基を示す。
【化2】
式(1−a)中、Yは、周期表14族または16族の原子を示す。R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子炭素数1〜20の炭化水素基ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R、R、R、RおよびRは隣接するR同士でそれらに結合している原子と一緒に環を形成していていない。nは、0または1であり、nが0の場合、Yに置換基Rが存在しない。pは、0または1であり、pが0の場合、Rが結合する炭素原子とRが結合する炭素原子は直接結合している。Yが炭素原子の場合、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【請求項2】
下記一般式(2)で示されるメタロセン化合物
【化3】
[式(2)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Qは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、2つのRは、結合しているQと一緒に環を形成していてもよい。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜6の炭化水素基、または炭素数1〜7のハロゲン含有炭化水素基を示す。R10は、それぞれ独立して、水素原子炭素数1〜20の炭化水素基ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、5つのR10のうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【請求項3】
下記一般式(3)で示されるメタロセン化合物
【化4】
[式(3)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Qは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、2つのRは、結合しているQと一緒に環を形成していてもよい。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜6の炭化水素基、または炭素数1〜7のハロゲン含有炭化水素基を示す。Zは、酸素原子または硫黄原子を示す。R12、R13、R14は、それぞれ独立して、水素原子炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R12、R13およびR14は隣接するR同士でそれらが結合している炭素原子と一緒に環を形成していてもよい。]
【請求項4】
一般式(1)、(2)または(3)中、Mがジルコニウムまたはハフニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタロセン化合物。
【請求項5】
一般式(1)、(2)または(3)中、Mがジルコニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメタロセン化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のメタロセン化合物を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のメタロセン化合物を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
次の必須成分(A)、(B)および(C)を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜5のいずれかに記載のメタロセン化合物
成分(B):成分(A)のメタロセン化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
成分(C):微粒子担体
【請求項9】
成分(B)がアルミノキサンであることを特徴とする請求項8に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項10】
成分(C)がシリカであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項11】
更に、次の成分(D)を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
成分(D):有機アルミニウム化合物
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項13】
オレフィンが少なくともエチレンを含むことを特徴とする請求項12に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項14】
オレフィン系重合体が実質的にエチレン系重合体であることを特徴とする請求項13に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセン化合物、それを含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びにそのオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、十分な数と長さの長鎖分岐を導入したエチレン系重合体を製造できるメタロセン化合物、それを含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びにそれらのオレフィン重合用触媒を用いてなるオレフィン重合体(特にエチレン系重合体)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に成型加工性に乏しいメタロセン系ポリエチレンの成型加工性を改善する方法として、高圧法低密度ポリエチレンをメタロセン系ポリエチレンにブレンドする方法および特定のメタロセンを用いた重合反応でポリエチレンに長鎖分岐を導入する方法が知られている。前者は、ブレンド工程を要するため製造コストが高くなる。また、得られるブレンド物は、成型加工性に優れるもののメタロセン系ポリエチレンの長所である機械強度が低下してしまう。一方、後者の長鎖分岐を導入する特定のメタロセンとして架橋ビスインデニル化合物(例えば、特許文献1参照。)や幾何拘束ハーフメタロセン(特許文献2参照。)を用いる方法が知られているが、得られる重合体中の末端二重結合および長鎖分岐の数が少なく、成型加工性の改善効果が未だ十分ではない。
【0003】
また、特許文献3には、シクロペンタジエニル基とインデニル基を炭素架橋した非対称型メタロセンとメチルアルミノキサンを用いて、溶液重合でエチレンのホモ重合を行なうと、分岐を持つポリエチレンが製造可能なことが報告されているが、分岐の長さが炭素数1〜20と記載されており、長鎖分岐として成型加工性の改善効果を発現するには分岐の長さが短すぎ、伸長粘度の歪硬化を示さない。
また、特許文献4には、各々特定の置換基を有するシクロペンタジエニル基とインデニル基を架橋した非対称型メタロセン化合物およびメチルアルミノキサンと組み合わせた重合触媒によるプロピレンの重合が報告されているが、エチレンの重合に適用した場合に長鎖分岐が生成するとの記載はなく、成型加工性の改善効果は期待されない。
さらに、特許文献5には、シクロペンタジエニル基とインデニル基をケイ素架橋した非対称型メタロセンのうちインデニル基の2、4、7位にメチル基を有するメタロセンと変性粘土化合物を用いて、マクロモノマーとして有用なエチレン重合体およびエチレン/ブテン共重合体を製造する触媒系が報告されているが、重合体の末端二重結合が少なく、この触媒単独で長鎖分岐が生成するとの記載はない。
最近、本発明者等は、特許文献6で、シクロペンタジエニル基とインデニル基を架橋基で架橋した非対称型メタロセンのうち、シクロペンタジエニル基上に該架橋基以外の置換基が無く、かつインデニル基3位に水素あるいは特定の置換基を有する、特定の非対称型メタロセンを必須成分としたオレフィン重合用担持触媒、さらには、そのオレフィン重合用担持触媒を用いた成型加工性が改善されたエチレン系重合体の製造方法を提案した。しかしながら、この発明によれば、伸長粘度の歪硬化度が大きなエチレン系重合体が得られるので、従来の長鎖分岐型ポリエチレンに比べて成型加工性の改良が見られるものの、長鎖分岐の分岐指数が未だ高圧法低密度ポリエチレンには及ばないため、更なる長鎖分岐構造の改良が求められていた。
こうした状況下に、メタロセン系ポリエチレンの成型加工性を改善するため、十分な数と長さの長鎖分岐を導入したメタロセン系ポリエチレンの製造方法を早期に開発することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−048711号公報
【特許文献2】特表平07−500622号公報
【特許文献3】特開平05−043619号公報
【特許文献4】特開平07−224079号公報
【特許文献5】特開2008−050278号公報
【特許文献6】特開2011−137146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、メタロセン系ポリエチレンの成型加工性を改善するために、十分な数と長さの長鎖分岐を導入したエチレン系重合体を製造できるメタロセン化合物およびそれを含むオレフィン重合用触媒成分並びにオレフィン重合用触媒、さらには、それらのオレフィン重合用触媒を用いてなるオレフィン重合体(特にエチレン系重合体)の製造方法を提供することにある。なお、本発明において、ポリエチレンとは、エチレン単独重合体およびエチレンと後述のオレフィンとの共重合体の総称をいい、エチレン系重合体とも言い換えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の置換基を有するメタロセン化合物、すなわちシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋し、さらにインデニル環の4位に特定の置換、及びインデニル環の2位に特定の置換基を有するメタロセン化合物をオレフィン重合用触媒成分として用い、これと反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物、および微粒子担体を組み合わせてなる触媒組成物を用いると、十分な数と長さの長鎖分岐を有するメタロセン系ポリエチレンを製造することができることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記一般式(1)で示されるメタロセン化合物が提供される。
【0008】
【化1】
[式(1)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。QとQは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのRは、結合しているQおよびQと一緒に環を形成していてもよい。mは、0でありは、Rを含む共役5員環と直接結合している。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜6の炭化水素基、または炭素数1〜7のハロゲン含有炭化水素基を示す。Rは、次の一般式(1−a)で示される置換アリール基を示す。
【0009】
【化2】
式(1−a)中、Yは、周期表14族または16族の原子を示す。R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子炭素数1〜20の炭化水素基ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R、R、R、RおよびRは隣接するR同士でそれらに結合している原子と一緒に環を形成していていない。nは、0または1であり、nが0の場合、Yに置換基Rが存在しない。pは、0または1であり、pが0の場合、Rが結合する炭素原子とRが結合する炭素原子は直接結合している。Yが炭素原子の場合、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、下記一般式(2)で示されるメタロセン化合物が提供される。
【0011】
【化3】
[式(2)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Qは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、2つのRは、結合しているQと一緒に環を形成していてもよい。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜6の炭化水素基、または炭素数1〜7のハロゲン含有炭化水素基を示す。R10は、それぞれ独立して、水素原子炭素数1〜20の炭化水素基ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、5つのR10のうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば下記一般式(3)で示されるメタロセン化合物が提供される。
【0013】
【化4】
[式(3)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Qは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、2つのRは、結合しているQと一緒に環を形成していてもよい。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜6の炭化水素基、または炭素数1〜7のハロゲン含有炭化水素基を示す。Zは、酸素原子または硫黄原子を示す。R12、R13、R14は、それぞれ独立して、水素原子炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R12、R13およびR14は隣接するR同士でそれらが結合している炭素原子と一緒に環を形成していてもよい。]
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、一般式(1)、(2)または(3)中、Mがジルコニウムまたはハフニウムであることを特徴とするメタロセン化合物が提供される。
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、一般式(1)、(2)または(3)中、Mがジルコニウムであることを特徴とするメタロセン化合物が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係るメタロセン化合物を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係るメタロセン化合物を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、次の必須成分(A)、(B)および(C)を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
成分(A):第1〜5のいずれかの発明に係るメタロセン化合物
成分(B):成分(A)のメタロセン化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
成分(C):微粒子担体
が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、成分(B)がアルミノキサンであることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、第8または9の発明において、成分(C)がシリカであることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0021】
また、本発明の第11の発明によれば、第8〜10のいずれかの発明において、更に、次の成分(D)を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
成分(D):有機アルミニウム化合物
が提供される。
【0022】
また、本発明の第12の発明によれば、第7〜11のいずれかの発明に係るオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、オレフィンが少なくともエチレンを含むことを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第14の発明によれば、第13の発明において、オレフィン系重合体が実質的にエチレン系重合体であることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0025】
本発明は、上記の如くオレフィン系重合体、特にエチレン系重合体の製造方法に係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第8の発明において、成分(B)がボラン化合物またはボレート化合物であることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
(2)第8の発明において、成分(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物(好ましくはアルミノキサン)及びボラン化合物またはボレート化合物を併用することを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明のメタロセン化合物をオレフィン重合用触媒成分として用いることにより、従来のメタロセン化合物に比べて、十分な数と長さの長鎖分岐を有するメタロセン系ポリエチレンが得られる。そして、メタロセン系ポリエチレンの成型加工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るエチレン系重合体(実施例1)の伸長粘度のプロット図である。
図2】比較例1のエチレン系重合体の伸長粘度のプロット図である。
図3】GPCにおけるクロマトグラムのベースラインと区間を説明する図である。
図4】GPC−VIS測定(分岐構造解析)から算出する分子量分布曲線および分岐指数(g’)と分子量(M)との関係を示すグラフである。
図5】本発明に係るメタロセン化合物を含む触媒を用いた重合反応における、水素濃度とメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のメタロセン化合物、それを含むオレフィン重合用触媒成分およびオレフィン重合用触媒、並びにそのオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法について、項目毎に、詳細に説明する。
【0029】
1.メタロセン化合物
本発明のメタロセン化合物は、一般式(1)で表されるシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋し、さらにインデニル環の4位の特定の置換基を有することに特徴がある。
【0030】
【化5】
[式(1)中、Mは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。QとQは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのRは、結合しているQおよびQと一緒に環を形成していてもよい。mは、0または1であり、mが0の場合、Qは、Rを含む共役5員環と直接結合している。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Tは、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。Rは、次の一般式(1−a)で示される置換アリール基を示す。
【0031】
【化6】
(式(1−a)中、Yは、周期表14族、15族または16族の原子を示す。R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R、R、R、RおよびRは隣接するR同士でそれらに結合している原子と一緒に環を形成していてもよい。nは、0または1であり、nが0の場合、Yに置換基Rが存在しない。pは、0または1であり、pが0の場合、Rが結合する炭素原子とRが結合する炭素原子は直接結合している。Yが炭素原子の場合、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つは水素原子ではない。)]
【0032】
上記一般式(1)中、メタロセン化合物のMは、Ti、ZrまたはHfを表し、メタロセン化合物のMは、好ましくはZrまたはHfを表し、メタロセン化合物のMは、更に好ましくはZrを表す。また、XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、または塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、アセチル基、1−オキソプロピル基、1−オキソ−n−ブチル基、2−メチル−1−オキソプロピル基、2,2−ジメチル−1−オキソ−プロピル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、ベンゾイル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−フリル基、2−テトラヒドロフリル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジi−プロピルアミノメチル基、ビス(ジメチルアミノ)メチル基、ビス(ジi−プロピルアミノ)メチル基、(ジメチルアミノ)(フェニル)メチル基、メチルイミノ基、エチルイミノ基、1−(メチルイミノ)エチル基、1−(フェニルイミノ)エチル基、1−[(フェニルメチル)イミノ]エチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジi−ブチルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
好ましいXおよびXの具体例としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基が挙げられる。これらの具体例の中でも、塩素原子、メチル基、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0033】
また、QとQは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。好ましくは炭素原子またはケイ素原子である。より好ましくはケイ素原子である。
さらに、Rとしては、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。また、RがQおよびQと一緒に環を形成している場合として、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロへキシリデン基、シラシクロブチル基、シラシクロペンチル基、シラシクロヘキシル基などが挙げられる。
好ましいRの具体例として、Qまたは/およびQが炭素原子の場合、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、エチレン基、シクロブチリデン基が挙げられ、また、Qまたは/およびQがケイ素原子の場合、メチル基、エチル基、フェニル基、シラシクロブチル基が挙げられる。
【0034】
また、RとRは、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基、ビス(t−ブチルジメチルシリル)メチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモプロピル基、3−ブロモプロピル基、2−ブロモシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロペンチル基、2−ブロモ−3−ヨードシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロヘキシル基、2−クロロ−3−ヨードシクロヘキシル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基、トリt−ブチルシリル基、ジt−ブチルメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0035】
また、RとRは、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基であると、特に重合活性が高くなるので、好ましい。
とRの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基が挙げられる。これらの具体例の中でも、水素原子、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基が特に好ましい。
また、Tはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基、ビス(t−ブチルジメチルシリル)メチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモプロピル基、3−ブロモプロピル基、2−ブロモシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロペンチル基、2−ブロモ−3−ヨードシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロヘキシル基、2−クロロ−3−ヨードシクロヘキシル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基、トリt−ブチルシリル基、ジt−ブチルメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などが挙げられる。
好ましいTの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基が挙げられる。
これらの具体例の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフリル基が特に好ましい。
【0036】
置換基のRは、上記一般式(1−a)で示される構造を有する置換アリール基、好ましくは、特定の置換基を有するPh基、またはフリル基類、チエニル基類を示す。具体的には、4−トリメチルシリルフェニル基、4−(t−ブチルジメチルシリル)フェニル基、3,5−ビストリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、2−フリル基、2−(5−メチル)フリル基、2−(5−t−ブチル)フリル基、2−(5−トリメチルシリル)フリル基、2−(2,3−ジメチル)フリル基、2−ベンゾフリル基、2−チエニル基、2−(5−メチル)チエニル基、2−(5−t−ブチル)チエニル基、2−(5−トリメチルシリル)チエニル基、2−(2,3−ジメチル)チエニル基、などが挙げられる。
【0037】
また、一般式(1)中、mは、0または1であり、mが0の場合、Qは、Rを含む共役5員環と直接結合している。
【0038】
本発明のメタロセン化合物は、下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0039】
【化7】
【0040】
上記の一般式(2)で示されるメタロセン化合物において、M、X、X、Q、R、R、RおよびTは、前述の一般式(1)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子および基と同様な構造を選択することができる。また、R10は前述の一般式(1)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR、R、R、R、Rの原子および基と同様な構造を選択することができる。
【0041】
また、本発明のメタロセン化合物は、下記一般式(3)で示されるものも一般式(2)と同様に好ましい。
【0042】
【化8】
上記の一般式(3)で示されるメタロセン化合物において、M、X、X、Q、R、R、RおよびTは、前述の一般式(1)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子および基と同様な構造を選択することができる。また、R12、R13およびR14は、前述の一般式(1)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR、R、R、R、Rの原子および基と同様な構造を選択することができる。そしてZは、酸素原子または硫黄原子を示す。
【0043】
本発明のメタロセン化合物の具体例を一般式(4−1)と表1−1〜4で示すが、これらに限定するものではない。
【0044】
【化9】
なお、これら具体例に示すメタロセン化合物のシクロペンタジエニル環上の置換基Rの位置を示す番号は、次式(4−2)の通りである。
【0045】
【化10】
【0046】
【表1-1】
【0047】
【表1-2】
【0048】
【表1-3】
【0049】
【表1-4】
【0050】
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウムまたはハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
【0051】
また、上記に例示した具体的化合物の中にあって、必須成分(A)であるメタロセン化合物として好ましいものを以下に示す。
表1中の、1〜5、7、8、12〜39、41、42、46〜73、116〜120、122,123、127〜132、等が挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウムまたはハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
【0052】
また、上記に例示した具体的化合物の中にあって、必須成分(A)であるメタロセン化合物として、特に好ましいものを以下に示す。
表1中の、1〜4、7、23、25、27、29、34〜38、41、63、65、67、69、117〜119、122、等が挙げられる。
【0053】
メタロセン化合物の合成法:
本発明のメタロセン化合物は、置換基ないし結合の様式によって、任意の方法によって合成することができる。代表的な合成経路の一例を下記に示す。
【0054】
【化11】
上記合成経路において、1と4−トリメチルシリルフェニルボロン酸を、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行うことにより、2が得られる。2を1当量のn−ブチルリチウムなどでアニオン化した後、過剰量のジメチルジクロロシランと反応させ、未反応のジメチルジクロロシランを留去することで、3が得られる。得られた3とソジウムシクロペンタジエニリドと反応させると4が得られる。4を2当量のn−ブチルリチウムなどでジアニオン化した後、四塩化ジルコニウムとの反応でメタロセン化合物5が得られる。置換基を導入したメタロセン化合物の合成は、対応した置換原料を使用することにより合成することができ、4−トリメチルシリルフェニルボロン酸のかわりに、対応するボロン酸、たとえば4−クロロフェニルボロン酸、4−メトキシフェニルボロン酸、5−メチルフリル−2−ボロン酸、4,5−ジメチルフリル−2−ボロン酸、2−チエニルボロン酸などを用いることにより、インデニル環の4位にそれぞれ対応する置換基を導入することができる。
【0055】
2.オレフィン重合用触媒
本発明のメタロセン化合物は、オレフィン重合用触媒成分を形成し、該触媒成分は、オレフィン重合用触媒に用いることができる。例えば、該メタロセン化合物を成分(A)として含む、次に説明するオレフィン重合用触媒として、用いることが好ましい。
本発明のオレフィン重合用触媒は、次の必須成分(A)、(B)および(C)を含むことを特徴とする。
成分(A):請求項1〜5のいずれかに記載のメタロセン化合物
成分(B):成分(A)のメタロセン化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
成分(C):微粒子担体
2−1.成分(A)
【0056】
本発明のオレフィン重合用触媒は、一般式(1)、(2)、(3)で表されるメタロセン化合物を必須成分(A)として用いるに際して、2種以上を用いることも可能である。
【0057】
2−2.成分(B)
本発明のオレフィン重合用触媒は、必須成分として、上記成分(A)以外に、成分(A)のメタロセン化合物(成分(A)、以下、単にAと記すこともある。)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(成分(B)、以下、単にBと記すこともある。)を含む。
【0058】
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0059】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(5)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
tAlX3−t・・・式(5)
(式(5)中、Rは、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
【0060】
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0061】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
【0062】
オレフィン重合用触媒の成分(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いると、得られるエチレン系重合体の歪硬化度(λmax)が大きくなったり、高分子量成分含有量の尺度であるMz/Mw(ここで、MzはGPCで測定されるZ平均分子量、Mwは同重量平均分子量を示す。)が大きくなって、成形性がより改善されるので好ましい。
【0063】
また、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、さらに好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい化合物として例示される。
【0065】
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式(6)で示される化合物である。
[L−H]+[BR]−・・・式(6)
【0066】
式(6)中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウム等のブレンステッド酸である。アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
【0067】
また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。さらに、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
【0068】
また、式(6)中、RおよびRは、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。さらに、X及びXは、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
【0069】
上記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロ
フェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテト
ラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボ
レート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0070】
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
【0071】
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式(7)で表される。
[L]+[BR]−・・・式(7)
【0072】
式(7)中、Lは、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R、R、X及びXは、前記一般式(6)における定義と同じである。
【0073】
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C)4・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
【0074】
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
【0075】
さらに好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
【0076】
触媒成分(B)として、ボラン化合物やボレート化合物を用いると、重合活性や共重合性が高くなるので、長鎖分岐を有するエチレン系重合体の生産性が向上する。また、オレフィン重合用触媒の成分(B)として、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と、上記ボラン化合物やボレート化合物との混合物を用いることもできる。さらに、上記ボラン化合物やボレート化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0077】
2−3.成分(C)
本発明のオレフィン重合用触媒の必須成分(C)である微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体またはこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、またはこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0078】
また、金属酸化物としては、周期表1〜14族の元素の単独酸化物または複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然または合成の各種単独酸化物または複合酸化物を例示することができる。ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
【0079】
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
【0080】
これら無機物担体は、通常、200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、平均細孔径は20〜1000Å、好ましくは50〜500Å、比表面積は150〜1000m/g、好ましくは200〜700m/g、細孔容積は0.3〜2.5cm/g、好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は0.20〜0.50g/cm、好ましくは0.25〜0.45g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
【0081】
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
【0082】
3.オレフィン重合用触媒の調製
本発明のエチレン系重合体の製造方法の必須成分であるメタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)、および微粒子担体(C)からなるオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
【0083】
(I)メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)とを接触させた後、微粒子担体(C)を接触させる。
(II)メタロセン化合物(A)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)を接触させる。
(III)メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)を接触させる。
【0084】
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
【0085】
また、メタロセン化合物(A)、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0086】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0087】
本発明において、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
【0088】
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、メタロセン化合物(A)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは5〜1000、さらに好ましくは50〜200の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、メタロセン化合物中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。さらに、カチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0089】
微粒子担体(C)の使用量は、メタロセン化合物(A)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり1gである。
【0090】
メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを前記接触方法(I)〜(III)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃で1分〜50時間、好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
【0091】
なお、オレフィン重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(IV)メタロセン化合物(A)と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と接触させる。
(V)有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下でメタロセン化合物(A)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件および溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
【0092】
また、本発明のエチレン系重合体の製造方法の必須成分であるメタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0093】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0094】
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては、次のような化学処理が挙げられる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NH3等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子または無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
【0095】
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって粒子性状を制御することができる。その方法は、合目的的な任意のものであり得る。特に、造粒法について示せば、例えば、噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
【0096】
上記した層状珪酸塩は、もちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
【0097】
本発明のエチレン系重合体の製造方法の必須成分であるメタロセン化合物(A)を、層状珪酸塩に担持するには、メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいはメタロセン化合物(A)、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。
各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(VI)メタロセン化合物(A)と有機アルミニウム化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
(VII)メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(VIII)有機アルミニウム化合物と層状珪酸塩担体を接触させた後、メタロセン化合物(A)と接触させる。
【0098】
これらの接触方法の中で(VI)と(VIII)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
【0099】
メタロセン化合物(A)と、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。メタロセン化合物(A)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。また、有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
【0100】
担持および溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。触媒成分(B)と成分(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いると、得られるエチレン系重合体は、分子量分布が狭くなる。さらに、重合活性が高く、長鎖分岐を有するエチレン系重合体の生産性が向上する。こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
【0101】
4.エチレン系重合体の製造方法(重合方法)
上記したオレフィン重合用触媒は、エチレンの単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合に、使用可能である。
【0102】
コモノマーであるα−オレフィン類には、炭素数3〜30、好ましくは3〜8のものが包含され、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。α−オレフィン類は、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能である。共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。エチレンと他のα−オレフィンとを共重合させる場合、当該他のα−オレフィンの量は、全モノマーの90モル%以下の範囲で任意に選ぶことができるが、一般的には、40モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で選ばれる。もちろん、エチレンやα―オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。
【0103】
本発明において、重合反応は、前記した担持触媒の存在下、好ましくはスラリー重合、又は気相重合にて、行うことができる。スラリー重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることは言うまでもない。また、気相重合の場合、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、または循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜10時間、好ましくは5分〜5時間が採用されるのが普通である。
【0104】
生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
【0105】
5.エチレン系重合体の物性(特徴)
本発明で製造されるエチレン系重合体は、次の(B−1’)、(B−2”)、(B−3)および(B−4’)の特性を有する場合、成形性と機械的物性に優れる点で特に有意な材料となる。すなわち、
(B−1’):MFR=0.001〜1000g/10分
(B−2”):密度=0.85〜0.97g/cm
(B−3):[Mw/Mn]=2.0〜10.0
(B−4’):次の要件(B−4’−i)〜要件(B−4’−iv)の少なくともいずれか1つを充足すること。
【0106】
(B−4’−i);温度170℃、伸長歪速度2(単位1/秒)で測定される伸長粘度η(t)(単位:Pa・秒)と伸長時間t(単位:秒)の両対数プロットにおいて、歪硬化に起因する伸長粘度の変曲点が観測され、かつ、歪硬化後の最大伸長粘度をηMax(t1)、硬化前の伸長粘度の近似直線をηLinear(t)としたとき、ηMax(t1)/ηLinear(t1)で定義される歪硬化度[λmax(2.0)]が1.2〜30.0である。ここで、硬化前の伸長粘度の近似直線とは、歪量0.2から1.0に対応するtの範囲内で両対数グラフの曲線の接線のうち、最も傾きが小さい接線のことである(ただし該傾きは0または正の値である)。
(B−4’−ii);上記(B−4’−i)で定義された[λmax(2.0)]と、伸長歪速度を0.1(単位1/秒)として同様に測定した場合の[λmax(0.1)]の比[λmax(2.0)]/[λmax(0.1)]が1.2〜10.0である。
(B−4’−iii);示差屈折計、粘度検出器、および光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分子量100万における分岐指数(g’)が0.30〜0.70である。
(B−4’−iv);示差屈折計、粘度検出器、および光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分子量100万以上の成分の含有量(W)が0.01〜30%である。
【0107】
以下、各特性について具体的に説明する。
本発明のエチレン系重合体の密度は、好ましくは0.85〜0.97g/cmであり、より好ましくは0.88〜0.97g/cm、更に好ましくは0.90〜0.97g/cmである。
また、MFR(メルトフローレート、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.001〜1000g/10分であり、より好ましくは0.01〜100g/10分、更に好ましくは0.05〜50g/10分、特に好ましくは0.1〜50g/10分である。
一方、本発明のエチレン系重合体の分子量分布[Mw/Mn]は、好ましくは2.0〜10.0であり、より好ましくは2.0〜9.0、更に好ましくは2.5〜8.0、特に好ましくは2.5〜7.5である。
【0108】
そして、本発明で製造されるエチレン系重合体は、通常のエチレン系重合体に対し、溶融物性が改良されており、優れた成形性を有することが大きな特徴である。
一般に、ポリエチレンは、フィルム成形、ブロー成形、発泡成形等の溶融状態を経由する附型方法により工業製品へと加工されるが、この際、伸長流動特性が成形性のし易さに大きな影響を与えることはよく知られている。すなわち、分子量分布が狭く、長鎖分岐を持たないポリエチレンは、溶融強度が低いので成形性が悪く、一方、超高分子量成分や長鎖分岐成分を有するポリエチレンは、溶融伸長時に歪硬化(ストレイン・ハードニング)、すなわち、高歪み側で伸長粘度が急激に上昇する特性を有し、この特性を顕著に示すポリエチレンは、成形性に優れると言われている。
【0109】
この伸長粘度特性を定量的に表現する方法として、歪硬化前の伸長粘度と歪硬化後の伸長粘度の比を歪硬化度(λmax)として算出する方法があり、伸長粘度の非線形性を表す指標として有用である。このλmax値が大きいと、例えば、フィルム成形やブロー成形における製品の偏肉や吹き破れを防止したり、高速成形が可能となったり、発泡成形時の独立気泡率を高くできる効果があり、成形品の強度向上、意匠性向上、軽量化、成形サイクルの向上、断熱性向上等のメリットが得られる。
【0110】
更に近年、ポリエチレンの伸長粘度特性の歪速度依存性も成形性のし易さに大きな影響を与えることが分かってきた。すなわち、小さな歪速度で変形される場合は大きな伸長粘度を示さず、より小さな力で変形可能な一方、大きな歪速度を加えられた場合には大きな伸長粘度を発現することによって上述の吹き破れ等を防止可能な特性を有するポリエチレンが有用であり、この特性は長鎖分岐構造がより高度に発達する程、顕著な傾向にある。
すなわち、これらの好ましいポリエチレンの特性は、上記要件(B−4’−i)〜要件(B−4’−iv)の少なくともいずれか1つを充足することにより、実現されることを見い出すに至り、更に、本発明の特定のメタロセン化合物である成分(Ac)を含むオレフィン重合用触媒を用いてなるエチレン系重合体の製造方法により、これらの特性を満足するエチレン系重合体が製造可能であることを見い出すに至ったのである。
【0111】
本発明に係るエチレン系重合体は、要件(B−4’−i)、(B−4’−ii)、(B−4’−iii)、(B−4’−iv)の少なくともいずれか1つを充足する。これらのいずれの要件も満たさない場合、満足な成形性を有するエチレン系重合体とはならない。
【0112】
要件(B−4’−i)の[λmax(2.0)]が1.2〜30.0、好ましくは2.0〜20.0、更に好ましくは5.0〜10.0の場合、上述のように、溶融伸長時に歪硬化(ストレイン・ハードニング)、すなわち、高歪み側で伸長粘度が急激に上昇する特性のため、成形性に非常に優れる。λmaxが1.2より小さいと、十分な溶融強度が得られず、上述の効果が得られない場合がある。また、λmaxが30.0より大きいと、分岐構造の増加に伴なう製品強度の低下を招くので、好ましくない場合がある。
【0113】
また、要件(B−4’−ii)の[λmax(2.0)]/[λmax(0.1)]が1.2〜10.0、好ましくは1.3〜5.0、より好ましくは1.4〜4.0、更に好ましくは1.5〜3.0の場合、上述のように、小さな歪速度で変形しやすい一方、大きな歪速度で急激に引き伸ばされた場合には大きな伸長粘度を発現することによって吹き破れ等を防止できるので、成形性、特に均一延伸性に優れる特性を有するポリエチレンを得ることができる。λmax(2.0)/λmax(0.1)が1.2未満では該エチレン系重合体の溶融状態が均一でなかったり、熱的に不安定な構造である可能性があったり、非常に長い長鎖分岐構造の存在に起因する成形体の強度異方性による衝撃強度の低下や透明性の悪化が生じたりして、好ましくない場合がある。λmax(2.0)/λmax(0.1)が10.0より大きいと、成形時の溶融張力と流動性には優れるものの、エチレン系重合体の衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない場合がある。
【0114】
また、要件(B−4’−iii)のg’が0.30〜0.70、好ましくは0.30〜0.59、より好ましくは0.35〜0.55であり、更に好ましくは0.35〜0.50であり、特に好ましくは0.35〜0.45の場合、伸長粘度挙動と溶融流動性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られる。g’値が0.70より大きいと該エチレン系重合体の成形加工性が不十分であったり、透明性が不足したりして好ましくない場合がある。g’値が0.30より小さいと、エチレン系重合体の成形加工性は向上するが、成形体の衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない場合がある。
【0115】
また、要件(B−4’−iv)のWが0.01〜30%、好ましくは0.01〜10.0%、より好ましくは0.02〜8.0%、更に好ましくは0.1〜6.0%、最も好ましくは0.2〜4.0%の場合、伸長粘度挙動、衝撃強度、透明性等に優れたエチレン系重合体が得られる。W値が0.01%より小さいと該エチレン系重合体の成形加工性が不十分であったり、該エチレン系重合体等の透明性が不足したりして好ましくない場合がある。W値が30.0%より大きいと、該エチレン系重合体等の成形加工性のうち、溶融張力は向上するが、溶融流動性が低くなり過ぎて、該エチレン系重合体等の製造や成形加工に支障を来たすので好ましくなかったり、更には成形体の衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない場合がある。
【0116】
本発明で製造されるエチレン系重合体は、上述のように、その特徴的な長鎖分岐構造に基づく極めて特徴的な伸長粘度特性や分子量分布および極限粘度特性を有し、更に、本発明のエチレン系重合体の製造方法により製造されるエチレン系重合体は、上記要件(B−4’−i)、(B−4’−ii)、(B−4’−iii)、(B−4’−iv)の少なくともいずれか1つを充足するが、これらのうち、好ましくは少なくともいずれか2つ以上、より好ましくは3つ以上、更に好ましくは全てを満足すると、本発明で製造されるエチレン系重合体は、通常のエチレン系重合体に対し、溶融物性が特に改良され、優れた成形性を有すると共に、剛性、衝撃強度、透明性といった機械的物性にも優れることとなる。
さらに、本発明に係るエチレン系重合体は、赤外吸収スペクトル(IR)で測定した分子末端に存在する二重結合の数が炭素原子1000個あたり0.15個以上であることも望ましい。
【0117】
さらに、本発明におけるエチレン系重合体は、更に下記条件(B−9)を満たすことも好ましい。
条件(B−9):オルトジクロロベンゼン溶媒を用いたTREF測定において、−15℃で溶出する成分の含有量(W−15;単位wt%)が、2.0wt%以下。
−15値は、好ましくは1.1wt%以下であり、より好ましくは0.6wt%以下であり、更に好ましくは0.5wt%であり、特に好ましくは0.4wt%であり、最も好ましくは0.3wt%である。W−15の下限は検出されないことであり、好ましくは0.0wt%である。W−15値が2.0wt%より大きいとエチレン系重合体の衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したり、ベトツキやすくなったりするので好ましくない。また、他樹脂との相容性が悪化して衝撃強度や透明性の悪化要因となるので好ましくない。
【0118】
上記歪硬化度の測定方法に関しては、一軸伸長粘度を測定できれば、どのような方法でも原理的に同一の値が得られ、例えば、公知文献:Polymer 42(2001)8663に測定方法及び測定機器の詳細が記載されている。本発明に係るエチレン系重合体の測定に当り、好ましい測定方法及び測定機器として、以下を挙げることができる。
【0119】
測定方法:
・装置:Rheometorics社製 Ares
・冶具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:170℃
・歪み速度:2/秒
・試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
【0120】
算出方法:
170℃、歪み速度2/秒における伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で、歪硬化後、歪量が4.0となるまでの最大伸長粘度をηMax(t1)(t1は最大伸長粘度を示す時の時間)とし、歪硬化前の伸長粘度の近似直線をηLinear(t)としたとき、ηMax(t1)/ηLinear(t1)として算出される値を歪硬化度(λmax)と定義する。なお、歪硬化の有無は、時間の経過と共に伸長粘度が上に凸の曲線から下に凸の曲線へと変わる変曲点を有するか、否かによって、判断される。
図1図2は、歪み速度2/秒および0.1/秒における、下記実施例に記載されている実施例1、比較例2の伸長粘度のプロット図である。
【実施例】
【0121】
以下に、本発明を、実施例を示して具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において使用した評価方法は、以下のとおりであり、以下の触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、また、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
【0122】
(I)各種評価(測定)方法
(i)MFR:
JIS K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した。FR(フローレイト比)は、190℃・10kg荷重の条件で同様に測定したMFRであるMFR10kgとMFRとの比(=MFR10kg/MFR)から算出した。
【0123】
(ii)密度:
密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
(iii)融点:
融点の測定方法
DSC(デュポン社製のTA2000型、又はセイコー・インスツルメンツ社製のDSC6200型)を使用し、10℃/分で20〜170℃までの昇降温を1回行った後、10℃/分で2回目の昇温時の測定値により求めた。
【0124】
(iv)伸長粘度の歪硬化度(λmax):
レオメータを用いて、上記本明細書記載の方法で測定した。なお、試験片の作成に先立ち、以下の手順で重合体の溶解・再沈殿処理を実施した。冷却管を付けた500mlの二口フラスコにキシレン300mlを導入し、室温で窒素バブリングを30分間行った。重合体6.0グラムと2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BTH)1.0グラムを導入した。窒素雰囲気下、125℃で30分間撹拌し、重合体をキシレンに完全に溶解させた。重合体が溶解したキシレン溶液をエタノール2.5Lに注ぎ、重合体を析出させた。ろ過により回収した重合体を80℃の真空乾燥機で乾燥した。
【0125】
(v)末端二重結合数の測定:
末端二重結合の定量は、プレスフィルムを作製し、赤外吸収スペクトル(IR)を島津製作所製FTIR−8300の装置を用いて、一置換アルケンの面外変角振動の吸収である910cm−1のピークの吸光度より次式から算出される。
末端二重結合の数(個/1000炭素当り)=1.14×ΔA/d/t
ここで、ΔAは910cm−1のピークの吸光度、dはフィルム密度(g/cm3)、tはフィルム厚(mm)である。
【0126】
(vi)分子量分布の測定:
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
【0127】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図3に例示されるように行う。
【0128】
(vii)GPC−VISによる分岐構造解析
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行った。
【0129】
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4. Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
【0130】
[分岐指数(gc’)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量100万以上の成分の、RIで測定される全成分量に対する含有比率(%)を、分子量100万以上の成分の含有量(Wc)として算出し、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量100万における上記g’を、gc’として算出する。
図4に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。図4の左は、MALLSから得られる分子量(M)とRIから得られる濃度を元に測定された分子量分布曲線を、図4の右は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
【0131】
(viii)可溶分量の測定。
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、−15℃で溶出する成分量を−15℃可溶分量、すなわちW−15(単位wt%)とした。
【0132】
装置
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0133】
(II)使用材料
[メタロセン化合物の合成]
(i)メタロセン化合物A:ジメチルシリレン(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(1−1)2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデンの合成
100mlフラスコに4−トリメチルシリルフェニルボロン酸(2.23g、11.4mmol)とDME20mlを加え溶液とした後、リン酸カリウム(6.08g、28.6mmol)の水溶液20ml、2−メチル−4−ブロモインデン(2.00g、9.56mmol)、トリフェニルホスフィン(0.0500g、0.190mmol)、Pd(PPhCl(0.0670g、0.095mmol)を順に加え、12時間攪拌還流した。室温まで冷却し水20mlを加えた。有機相を分離した後、水相を酢酸エチル20mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラム(石油エーテル)で精製し、2−メチル−4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの黄色液体1.20g(収率45%)を得た。
【0134】
(1−2)ジメチル(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)シランの合成
100mlフラスコに2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデン(3.00g、10.7mmol)とTHF20mlを加え溶液とした後、−78℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、5.2ml、12.9mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。別に準備した200mlフラスコにジメチルジクロロシラン(2.78g、21.5mmol)とTHF10mlを加え溶液とした後、上記反応物を−78℃で滴下し、室温で12時間攪拌した。揮発成分を減圧留去し、再びTHF20mlを加えて溶液とした後、ソジウムシクロペンタジエニリド/THF溶液(2M、5.60ml、11.3mmol)を−20℃でゆっくりと滴下し、室温で1時間攪拌した。揮発成分を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル)で精製しジメチル(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)シラン2.00g(収率46%)を得た。
【0135】
(1−3)ジメチルシリレン(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
100mlフラスコにジメチル(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)シラン(2.00g、5.00mmol)とジエチルエーテル20mlを加え溶液とした後、−78℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、4.20ml、10.5mmol)を加え、室温で2時間、さらに45℃で1時間攪拌した。揮発成分を減圧留去し、続いてジクロロメタン40mlを加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(1.30g、5.50mmol)を加えた後、室温で12時間攪拌した。反応混合物をろ過し、得られたろ液を濃縮することでジメチルシリレン(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド2.5g(収率89%)を得た。
【0136】
H−NMR値(CDCl):δ0.31(s,9H),δ0.98(s,3H),δ1.09(s,3H),δ2.28(s,3H),δ5.87(m,1H),δ5.97(m,1H),δ6.81(m,2H),δ7.00(s,1H),δ7.12(dd,1H),δ7.40(d,1H),δ7.46(d,1H),δ7.65(d,4H)。
【0137】
(ii)メタロセン化合物B:ジメチルシリレン(2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(2−1)2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの合成
100mlフラスコに2−メチルフラン(2.34g、28.6mmol)とTHF40mlを加え溶液とした後、−30℃でn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M、11.4ml、28.6mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。別に準備した100mlフラスコに塩化亜鉛(3.80g、28.6mmol)とTHF10mlを加え、続いて0℃で上記反応溶液を加え、室温で1時間攪拌した。さらに別に準備した100mlフラスコにヨウ化銅(I)(272mg、1.43mmol)、Pd(dppf)Cl(522mg、0.715mmol)、2−メチル−4−ブロモインデン(3.00g、14.3mmol)とDMA5mlを加えた懸濁液に、上記反応物を加え、還流を15時間行なった。室温まで冷却し、水50mlを加え、酢酸エチル50mlで2回抽出を行なった。有機相を集め、水50mlで2回、飽和食塩水50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。さらにシリカゲルカラム(石油エーテル)で精製し2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデン2.50g(収率82%)を得た。
【0138】
(2−2)ジメチル(2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)シランの合成
2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデンの代わりに2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンを用い、メタロセン化合物A(1−2)と同様の手順で合成を行ない、ジメチル(2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)シランの黄色液体を収率43%で得た。
【0139】
(2−3)ジメチルシリレン(2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
ジメチル(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)シランの代わりに2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(2−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの黄色結晶を収率40%で得た。
【0140】
H−NMR値(CDCl):δ0.97(s,3H),δ1.06(s,3H),δ2.33(s,3H),δ2.40(s,3H),δ5.82(m,1H),δ5.96(m,1H),δ6.13(m,1H),δ6.77(m,3H),δ7.22(s,1H),δ7.36(d,1H),δ7.38(d,1H),δ7.67(d,1H)。
【0141】
(iii)メタロセン化合物C:ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(3−1)4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの合成
500mlフラスコに、4−トリメチルシリルフェニルボロン酸10.0g(51.5mmol)とジメトエタン200mlを加え溶液とした後、リン酸カリウム27.3g(128mmol)、水100ml、4−ブロモインデン8.37g(43.0mmol)、トリフェニルホスフィン0.22g(0.86mmol)、PdCl(PPh 0.300g(0.430mmol)を順に加え、12時間攪拌還流した。室温まで冷却し水100mlを加えた。有機相を分離した後、水相を酢酸エチル100mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの黄色液体9.0g(収率79%)を得た。
【0142】
(3−2)(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
200mlフラスコに、4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデン16.2g(61.2mmol)とTHF100mlを加え溶液とした後、−78℃に冷却してn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M)29.4ml(173.5mmol)を加え、室温に戻して4時間攪拌した。別途用意した300mlフラスコにジメチルジクロロシラン14.8ml(122mmol)とTHF20mlを加え溶液とし、−78℃に冷却して先の反応溶液を加えた。室温に戻して12時間攪拌した。揮発物を減圧留去で除くことで黄色溶液21.8gが得られた。この黄色溶液にTHF80mlを加えて溶液とし、−30℃でCpNa/THF溶液(2M)36.7ml(73.5mmol)を加えた。室温に戻して1時間攪拌し、氷水100mlを加えた。酢酸エチル100mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの黄色液体12.0g(収率51%)を得た。
【0143】
(3−3)ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
300mlフラスコに、(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシラン1.20g(3.00mmol)、ジエチルエーテル20mlを加え、−70℃まで冷却した。ここに2.5mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液2.60ml(6.60mmol)を滴下した。滴下後、室温に戻し2時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、ジクロロメタン30mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ジルコニウム0.770g(3.30mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。反応液をろ過して得られたろ液から溶媒を減圧で留去することで、黄色粉末がえら得た。この粉末をトルエン10mlで再結晶し、ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶として0.500g(収率31%)得た。
【0144】
H−NMR値(CDCl3):δ0.21(s,3H),δ0.23(s,9H),δ0.43(s,3H),δ5.48(m,1H),δ5.51(m,1H),δ5.81(d,1H),δ6.60(m,1H),δ6.66(m,1H),δ6.95(dd,1H),δ7.13(s,1H),δ7.39(dd,2H),δ7.57(d,2H),δ7.95(d,2H)。
【0145】
(iv)メタロセン化合物D:ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−1)4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの合成
500mlフラスコに、2−メチルフラン2.52g(30.7mmol)とTHF30mlを加え溶液とした後、−78℃に冷却してn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(2.5M)14.7ml(36.9mmol)を加え、室温に戻して4時間攪拌した。別途用意した300mlフラスコに塩化亜鉛4.18g(30.7mmol)とTHF10mlを加え懸濁液とし、0℃に冷却して先の反応溶液を加えた。室温に戻して1時間攪拌した。さらに別途用意したmlフラスコにヨウ化銅(I)0.35g(1.84mmol)、Pd(dppf)Cl0.690g(0.932mmol)、4−ブロモインデン3.00g(15.3mmol)とDMA5mlを加え懸濁液とし、先の反応溶液を加えて15時間攪拌還流した。室温まで冷却し水50mlを加えた。有機相を分離した後、水相を酢酸エチル50mlで2回抽出し、得られた有機相を混合して水50mlで2回洗浄、食塩水50mlで1回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え有機相を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンの黄色液2.10g(収率70%)を得た。
【0146】
(4−2)(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデンの代わりに4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデンを用い、メタロセン化合物A(1−2)と同様の手順で合成を行ない、(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの淡黄色固体を収率38%で得た。
【0147】
(4−3)ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(4−(4−トリメチルシリルフェニル)インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの代わりに(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを用い、メタロセン化合物A(1−3)と同様の手順で合成を行ない、ジメチルシリレン(4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを黄色結晶(収率25%)として得た。
【0148】
H−NMR値(CDCl3):δ0.00(s,3H),δ0.18(s,3H),δ1.79(s,3H),δ5.22(m,1H),δ5.32(m,1H),δ5.64(m,1H),δ5.72(d,1H),δ6.33(m,1H),δ6.35(m,1H),δ6.70(m,2H),δ6.82(d,1H),δ7.43(d,1H),δ7.60(d,1H)。
【0149】
(実施例1)
(1)固体触媒の調製
窒素雰囲気下、200ml二口フラスコに600℃で5時間焼成したシリカ5gを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した100ml二口フラスコに窒素雰囲気下でメタロセン化合物A70mgを入れ、脱水トルエン13.4mlで溶解した。室温でメタロセン化合物Aのトルエン溶液にアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液8.6mlを加え30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った200ml二口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、メタロセン化合物Aとメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで固体触媒を得た。
【0150】
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
上記の(1)固体触媒の調製で得た固体触媒を用いてエチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
すなわち、攪拌および温度制御装置を有する内容積1リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、充分脱水および脱酸素したポリエチレン製のペレットを80g、トリエチルアルミニウムを33mg導入し撹拌しながら70℃へ昇温した。1−ブテン10重量%を含むエチレンを分圧が2.0MPaになるまで導入した後、上記固体触媒202mgをアルゴンガスで圧入し、エチレン分圧2.0MPa、温度70℃を保って60分間重合を継続した。
その結果、27.9gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは32.2、密度は0.920g/cmで、末端二重結合は0.08個/1000炭素あった。重合結果を表2にまとめた。
【0151】
(実施例2)
実施例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒194mgを用い、重合開始前に水素204mlを添加した以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、13.9gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは9.0、密度は0.931g/cmで、末端二重結合は0.09個/1000炭素であった。重合結果を表2にまとめた。
【0152】
(実施例3)
実施例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒55mgを用い、重合開始前に水素34mlを添加し、重合温度を90℃とした以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、9.4gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは24.1、密度は0.925g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0153】
(実施例4)
実施例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒105mgを用い、重合開始前に水素187mlを添加し、重合温度を90℃とした以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、10.9gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは7.0、密度は0.943g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0154】
(実施例5)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A70mgの代わりに、メタロセン化合物B62mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
上記の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒50mgを用い、重合開始前に水素68mlを添加した以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、5.6gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.936g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0155】
(実施例6)
実施例5の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒205mgを用い、重合開始前に水素238mlを添加した以外は、実施例5と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、17.4gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは7.3、密度は0.926g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0156】
(実施例7)
実施例5の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒51mgを用い、重合開始前に水素102mlを添加し、重合温度を90℃とした以外は、実施例5と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、14.0gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは14.7、密度は0.926g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0157】
(実施例8)
実施例5の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒105mgを用い、重合開始前に水素187mlを添加し、重合温度を90℃とした以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、12.2gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは9.9、密度は0.930g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0158】
(比較例1)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A70mgの代わりに、メタロセン化合物C68mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
上記の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒53mgを用いた以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、5.4gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは21.6、密度は0.924g/cmで、末端二重結合は0.14個/1000炭素であった。重合結果を表2にまとめた。
【0159】
(比較例2)
比較例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒54mgを用い、重合開始前に水素34mlを加えた以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、4.3gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.919g/cmであった。重合結果を表2にまとめた。
【0160】
(比較例3)
(1)固体触媒の調製
メタロセン化合物A70mgの代わりに、メタロセン化合物D60mgを用いた以外は、実施例1と同様に、固体触媒を調製した。
(2)エチレン・1−ブテン共重合体の製造
上記の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒203mgを用いた以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、24.2gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体のFRは17.6、密度は0.920g/cmで、末端二重結合は0.21個/1000炭素であった。重合結果を表2にまとめた。
【0161】
(比較例4)
比較例3の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒203mgを用い、重合開始前に水素68mlを加えた以外は、実施例1と同様に、エチレン・1−ブテン共重合体を製造した。
その結果、17.0gのエチレン・1−ブテン共重合体が生成した。得られた共重合体の密度は0.924g/cmで、末端二重結合は0.18個/1000炭素であった。重合結果を表2にまとめた。
【0162】
(実施例9)
実施例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒を用いてエチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。
すなわち、誘導撹拌装置付き2Lオートクレーブに1−ヘキセン20ml、トリエチルアルミニウム0.20mmol、ヘキサン950mLを加え、65℃に昇温し、水素を0.0091MPa加えた後、エチレンを導入してエチレン分圧を0.7MPaに保った。次いで、実施例1の(1)の固体触媒の調製で得られた固体触媒224mgを窒素で圧入し、エチレン分圧0.7MPa、温度65℃を保って60分間重合を継続した。60分経過後、エチレンをパージし、窒素置換を3回行い、重合を停止させた。こうして得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体は12.4gであった。重合結果を表3にまとめた。
【0163】
(実施例10)
実施例1の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒183mgを用い、1−ヘキセン30mlとした以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、11.6gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表3にまとめた。
【0164】
(実施例11)
実施例5の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒224mgを用いた以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、23.6gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表3にまとめた。
【0165】
(実施例12)
実施例5の(1)固体触媒の調製で得られた固体触媒212mgを用い、1−ヘキセン40mlとした以外は、実施例9と同様に、エチレン・1−ヘキセン共重合体を製造した。その結果、28.5gのエチレン・1−ヘキセン共重合体が生成した。重合結果を表3にまとめた。
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
3.評価
本発明のメタロセン化合物の要件を満たすメタロセン化合物Aおよびメタロセン化合物Bは、本発明のメタロセン化合物の要件を満たさないメタロセン化合物Cおよびメタロセン化合物Dとそれぞれ、インデン2位にメチル基を有するか否かの構造的な違いを有する。
表2に示す結果から、メタロセン化合物Aを用いた70℃重合である実施例1および実施例2と、メタロセン化合物Cを用いた70℃重合の比較例1および比較例2を比べると、生成するエチレン系重合体の成形性を向上させる長鎖分岐の特性を示す特性値である[λmax(2.0)]、[λmax(2.0)]/[λmax(0.1)]B、’、Wのいずれもが、劣ることなく、図5に示すように水素濃度見合いで低MFRのエチレン/1−ブテン共重合体がメタロセン化合物Aを用いた重合で得られた。
また、メタロセン化合物Bを用いた70℃重合である実施例5および実施例6と、メタロセン化合物Dを用いた70℃重合の比較例3および比較例4を比べると、同じく、上記の長鎖分岐の特性を示す特性値が、劣ることなく、図5に示すように水素濃度見合いで低MFRのエチレン/1−ブテン共重合体がメタロセン化合物Bを用いた重合で得られた。
従って、本発明のメタロセン化合物の要件を満たすメタロセン化合物を用いて得られるエチレン系重合体は、長鎖分岐を有し、成形性に優れ、より高分子量のエチレン系重合体を製造することが可能と言える。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のメタロセン化合物をオレフィン重合用触媒成分として用いることにより、従来のメタロセン化合物に比べて、十分な数と長さの長鎖分岐を有するメタロセン系ポリエチレンが得られる。そして、メタロセン系ポリエチレンの成型加工性を改善することができる。そのため、本発明のメタロセン化合物およびそれを含むオレフィン重合用触媒成分並びにオレフィン重合用触媒、さらには、それらのオレフィン重合用触媒を用いてなるオレフィン重合体(特にエチレン系重合体)の製造方法は、産業上大いに有用である。
図1
図2
図3
図4
図5