特許第6015308号(P6015308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6015308ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015308
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20161013BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20161013BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20161013BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20161013BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161013BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08K3/36
   C08K5/098
   C08K5/54
   B60C1/00 A
   B60C11/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-216597(P2012-216597)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70131(P2014-70131A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋樹
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/062099(WO,A1)
【文献】 特開2009−215338(JP,A)
【文献】 特開2001−247718(JP,A)
【文献】 特開2005−232295(JP,A)
【文献】 特開2007−023155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08K3/00−13/08
B60C1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを50質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜100質量部および分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩を前記シリカに対し0.7〜15.0質量%配合してなり、
前記分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩が、シュウ酸またはコハク酸のナトリウム塩またはカリウム塩である
ことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにシランカップリング剤を0.5〜10質量部配合してなることを特徴とする請求項に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、発熱性、加工性および加硫特性を悪化させることなく、高硬度および高強度であるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは各種性能が要求されているが、とくに操縦安定性と燃費性能とを高い次元でバランスさせることが望まれている。一般的に、操縦安定性を向上させるためにはタイヤドレッドの高硬度化、高強度化が効果的である。例えば高硬度化を達成するために、ゴム組成物にポリプロピレンのような樹脂を配合する技術が知られている。しかしこのような手法では、発熱性が悪化し、燃費性能に悪影響を及ぼすという問題点がある。
一方、燃費性能を向上するためには走行時の転がり抵抗を低減する必要があり、タイヤトレッドを構成するゴム組成物にシリカを配合する技術が知られている。しかし、シリカはジエン系ゴムに対する親和性が低く、分散性が悪化し所望の物性が得られないという問題点がある。そこでシリカの分散性を改良するために、例えばシランカップリング剤を配合したり、ジエン系ゴムとして変性ゴムを使用したりする手法が採られているが、ゴム組成物の粘度が増大して加工性が低下したり、タイヤ剛性が低下して操縦安定性が損なわれたりするという問題があった。さらにシリカは加硫促進剤を吸着し、加硫遅延を起こすという問題点もある。
このように、高硬度および高強度と、発熱性、加工性および加硫特性とを同時に改善することは、従来技術において非常に困難な課題であった。
【0003】
なお下記特許文献1には、エポキシ化天然ゴム、硫黄、ならびにヒドロキシカルボン酸金属塩または多塩基酸金属塩を含有するゴム組成物が開示されている。しかしながら特許文献1には、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを主成分とするジエン系ゴムに対し、下記で説明する分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩を特定量配合し、高硬度および高強度と、発熱性、加工性および加硫特性とを同時に改善するという技術思想は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発熱性、加工性および加硫特性を悪化させることなく、高硬度および高強度であるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するジエン系ゴムにシリカの特定量および分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩の特定量を配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを50質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜100質量部および分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩を前記シリカに対し0.7〜15.0質量%配合してなり、前記分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩が、シュウ酸またはコハク酸のナトリウム塩またはカリウム塩であることを特徴とするゴム組成物。
.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにシランカップリング剤を0.5〜10質量部配合してなることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
.前記1または2に記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の組成を有するジエン系ゴムにシリカの特定量および分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩の特定量を配合することにより、発熱性、加工性および加硫特性を悪化させることなく、高硬度および高強度であるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を主成分とする。なお、その他のジエン系ゴムを併用することもでき、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が併用可能である。ジエン系ゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
本発明で使用されるジエン系ゴムは、全体量を100質量部としたときに、SBRを50質量部以上、好ましくは60質量部以上配合するのが好ましい。また、本発明の効果の点からSBRとBRとを併用するのが好ましい。
【0009】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカは、特に限定されるものではなく、通常ゴム組成物に配合されるものを使用することができ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカ、表面処理シリカ等のシリカが挙げられる。シリカのBET比表面積(JIS K6430付属書Eに準拠して測定)は、本発明の効果の点から、例えば50〜400m/g、好ましくは150〜250m/gであるのがよい。
【0010】
(分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩)
本発明で使用される分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩またはカリウム塩(以下、特定有機酸塩と言う)は、例えば、シュウ酸、HOOC−R−COOHで表されるジカルボン酸(式中、Rはアルキレン基またはアリーレン基を表す)等のナトリウム塩またはカリウム塩;クエン酸等のトリカルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩等が挙げられ、中でも本発明の効果の点から、シュウ酸、上記式でRが1〜7を表す脂肪族ジカルボン酸、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸またはアゼライン酸のナトリウム塩またはカリウム塩が好ましく、とくにシュウ酸またはコハク酸のナトリウム塩またはカリウム塩が好ましい。
特定有機酸塩の作用効果は現時点では明確ではないが、本発明者の検討によれば、特定有機酸塩がシリカ表面に吸着し、シリカの凝集を抑制しつつ、適度なネットワークを形成するとともに、ゴムとの親和性が高まり補強性を向上させ、本発明の効果が奏されるものと推測している。そしてこのような作用効果は、シュウ酸、上記式でRが1〜7を表す脂肪族ジカルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩でとくに顕著となることが判明した。
【0011】
(シランカップリング剤)
本発明で使用するシランカップリング剤は、その効果向上の観点から、硫黄含有シランカップリング剤を使用するのが好ましい。シランカップリング剤としては、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであればよく、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
シランカップリング剤を使用する場合、その配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して例えば0.5〜10質量部、好ましくは1.0〜8.0質量部である。
【0012】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜100質量部および特定有機酸塩をシリカに対し0.7〜15.0質量%配合してなることを特徴とする。
シリカの配合量が5質量部未満であると、補強性が低下し、所望の物性を得られないので好ましくなく、逆に100質量部を超えると、充填剤の分散が悪化し物性低下を引き起こす。
前記特定有機酸塩の配合量が0.7質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に15.0質量%を超えると、またシリカが凝集し加工性が悪化する。
【0013】
さらに好ましい前記シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、30〜80質量部である。
さらに好ましい前記特定有機酸塩の配合量は、シリカに対し、3.0〜14.5質量%である。
【0014】
本発明のゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0015】
本発明のゴム組成物の用途としては、ベルトコンベアー、ホース、タイヤ等が挙げられるが、とくにタイヤ用途が好ましく、とりわけトレッド用(とくにキャップトレッド用)として好適に使用される。
【0016】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0018】
実施例1〜4および比較例1〜5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物をオープンロールで、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られたゴム組成物または加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0019】
ムーニー粘度:JIS K6300に準拠して、L形ローターを使用し、ムーニー粘度ML(1+4)100℃を求めた。結果は比較例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
加硫速度:得られたゴム組成物をJIS K6300−2に準拠し、ロータレス加硫試験機を使用し、温度160℃に得られるトルクと加硫時間との加硫曲線から求めた最大トルクの90%に達する迄の加硫時間(T90)を測定した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど加硫速度が速いことを示す。
硬度:JIS 6253に準拠して、20℃で測定した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど硬度が高く、操縦安定性に優れることを示す。
破断強度および破断伸び:JIS 3号ダンベル試料を用いてJIS K6251に準拠し、破断強度および破断伸びを測定した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど破断強度または破断伸びが高く、すなわち強度が高く、良好であることを示す。
tanδ(60℃):(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件にて測定した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほど低発熱性であることを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0020】
【表1】
【0021】
*1:S−SBR(ランクセス社製溶液重合SBR(VSL5025)、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン(株)製BR1220)
*3:シリカ(東ソー・シリカ(株)製ニップシールAQ、BET比表面積=200m/g)
*4:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339M)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸)
*7:シュウ酸ナトリウム(関東化学(株)製)
*8:シュウ酸カリウム一水和物(関東化学(株)製)
*9:ステアリン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)
*10:シュウ酸二水和物(関東化学(株)製)
*11:老化防止剤(住友化学(株)製アンチゲン6C)
*12:シランカップリング剤(エボニック・デグサ社製Si69)
*13:オイル(昭和シェル石油(株)製エクストラクト4号S)
*14:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理硫黄)
*15:加硫促進剤−1(三新化学工業(株)製サンセラーCM−PO)
*16:加硫促進剤−2(三新化学工業(株)製サンセラーD−G)
【0022】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜4で調製されたゴム組成物は、特定の組成を有するジエン系ゴムにシリカの特定量および特定有機酸塩の特定量を配合しているので、従来の代表的な比較例1に対し、硬度および強度が向上し、優れた操縦安定性を提供している。また発熱性、加工性および加硫特性の悪化も抑制している。
比較例2は、特定有機酸塩の替わりに、分子中に1個のカルボキシル基を有する有機酸のナトリウム塩を配合した例であり、破断強度および破断伸びが悪化している。
比較例3は、特定有機酸塩の替わりに、シュウ酸二水和物を配合した例であり、加工性および発熱性が悪化している。
比較例4は、特定有機酸塩の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、本発明の効果が確認できなかった。
比較例5は、特定有機酸塩の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、シリカが凝集し、加工性が悪化した。