特許第6015318号(P6015318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015318
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】熱シール性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20161013BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20161013BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20161013BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B32B3/30
   B32B9/00 A
   B32B27/20 Z
   B65D65/40 D
   B65D65/42 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-220277(P2012-220277)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-69557(P2014-69557A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】盧 和敬
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】井口 依久乃
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−017117(JP,A)
【文献】 特開2010−254377(JP,A)
【文献】 特開平10−007986(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材フィルムの片面に熱シール樹脂層が形成されており、平均粒子径10μm〜50μmの球形粒子が熱シール樹脂層表面に露出した状態で分散されて表面凹凸を形成している熱シール性フィルムの熱シール樹脂層上に、平均一次粒子径5nm〜1μmの酸化物微粒子を分散させた無機バインダー層が形成され、その上から撥水コート層により被覆されていることを特徴とする熱シール性フィルム。
【請求項2】
上記熱シール性フィルムに含まれる球形粒子が、シリコーン、金属酸化物あるいはポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂から選ばれたプラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の熱シール性フィルム。
【請求項3】
上記熱シール性フィルムに含まれる球形粒子が、熱シール樹脂層表面から直径の半分以上の高さで露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱シール性フィルム。
【請求項4】
上記熱シール性フィルムに含まれる球形粒子が、熱シール後も形状を保持し、被シール基材に埋め込まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱シール性
フィルム。
【請求項5】
上記熱シール性フィルムにおける撥水コート層の撥水処理が、乾式、湿式等の手法によってメチル基を含む疎水性官能基を主体とする単分子膜を付与することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱シール性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、医薬品、化学品等を包装する材料に関する。
たとえば、ヨーグルト、ゼリー、プリン、シロップなどの容器蓋材や、お粥、スープなどのレトルト食品用包装材、化学品や医薬品等の液体、半固体、ゲル状物質などの保存容器用に用いるフィルム材料に関する。
具体的には、表面にミクロン粒子を塗布した凹凸を付与することで、易開封性を保ちながらシール不良による内容物の漏洩やシール後の誤開封を防止することが出来る開封容器の蓋材において、易開封性と十分なシール強度を保持するとともに、内容物の付着を低減して外部へ飛び出しにくくした熱シール性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より固体以外の、半固体、液体、粘性体、ゲル状物等のような多種多様の性状の内容物に用いる包装材料が知られており、その内容物も多岐にわたる。例えば、ゼリー菓子、プリン、ヨーグルト、液体洗剤、練り歯磨き、カレールー、シロップ、ワセリン、洗顔クリーム、洗顔ムース等のような、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等がある。また、内容物の性状も様々なものがある。
【0003】
これらの内容物を包装するための包装材料においては、密封性が要求されるほかに、内容物、包装形態、用途等に応じて熱接着性、遮光性、耐熱性、耐久性等が要求される。
ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、次のような問題がある。すなわち、内容物が包装材料に付着するという問題である。内容物が包装材料に付着すれば、内容物をすべて使い切ることが困難になり、それだけ無駄が生じることになる。
また、内容物をすべて使い切るためには包装材料に付着した内容物を別途に回収しなければならず、手間がかかる。このため、包装材料では、上記のような密封性等のほか、内容物が包装材料に付着しにくい性質(非付着性)を備えていることが望ましい。
【0004】
このような問題に対して特許文献1では、良好な熱接着性を維持しつつ、優れた非付着性を持続的に発揮できる包装材料として、少なくとも基材層(10)及び熱接着層(11)を有する積層体からなる包装材料であって、前記熱接着層が包装材料の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子(12)が付着している包装材料が提案されている(図2参照)。
しかしながら、この疎水性粒子による撥水性付与の方法は疎水性酸化物の微粒子が3次元網目状に配してあるため機械的強度が弱く、疎水性粒子が基材から剥離しやすいという欠点を有していた。
【0005】
また、特許文献2では、シリコーンオイル、平均粒子径5nm〜20nmの疎水性金属酸化物微粒子、微粒子の結合剤としてのワックス及び/またはパラフィン、界面活性剤、水系溶剤及び水を含むことを特徴とする超撥水性を有するスプレー用撥水剤が提案されているが加工方法がスプレーに限定されている点で生産効率面から制約がある。
【0006】
さらに、特許文献3では、充填されたゲル状食品の内容物が付着しにくく、かつ、容器との接着性が高い、内容物付着防止性を有する熱封緘性蓋材として、基材に熱封緘性層、内容物付着防止層と順に積層された熱封緘性蓋材において、前記内容物付着防止層の組成物がワックスと、そのワックス中に分散された充填剤とからなる、内容物付着防止性を有する包装容器用熱封緘性蓋材が提案されている。
しかし、内容物付着防止層をワックス+微粒子の構成としたこの方法でもまだ、表面凹
凸が不十分なために撥水性が不足する場合があった。
【0007】
また、特許文献4では、優れた非付着性を持続的に発揮できる容器として、内容物を収容するための容器であって、容器が少なくとも内容物と接触する面の一部又は全部に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している非付着性容器が提案されている。
しかしながら、この容器は特許文献1の包装材料と同様に、120℃〜200℃の熱で固着させないと膜凝集力が上がらない。高温にすると、シーラント層が熱溶解しやすく形状も変化しやすいという問題点を有している。
【0008】
特許文献5では、優れた撥水性及び非付着性を持続的に発揮できる積層体、ならびに包装材料として、熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に、一次粒子平均径3nm〜100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している積層体ならびに包装材料が提案されている。さらに有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子が、前記熱可塑性樹脂を含有する層に含まれている積層体ならびに包装材料が提案されている。
しかしながら、この疎水性粒子による撥水性付与の方法も特許文献1の方法と同様にバインダーを使用していないので、固着強度が弱く疎水性粒子が基材から剥離しやすいという欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4348401号公報
【特許文献2】特許第4060333号公報
【特許文献3】特開2009−73523号公報
【特許文献4】特開2010−254377号公報
【特許文献5】特開2011−93315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常のシーラント材や蓋材は、内容物が付着して取りづらく、内容物の無駄や汚れの原因となることが多かった。
また、フッ素材やシリコーンでは、撥水性や付着防止効果はあるものの、シール性に乏しく、蓋やパウチといった容器包装材に使用することが困難であった。
また、安全衛生上の観点から、表面エネルギーの小さいハロゲン系の撥水剤は、C8系の主鎖を持つ撥水剤が体内残存率が高い可能性があるため、やや撥水性の劣ると思われるC6系やシリコーン系がよく使われ、その分撥水性もやや劣るという欠点があった。
また、疎水性微粒子を使用した撥水コート剤は膜凝集力および密着力が弱く粒子の脱離が起こりやすい。
さらにシール剤の上に撥水剤をコートする方法では、撥水層が熱シール阻害を起こしやすく、輸送中に蓋材が剥離したり、シール不良による内容物の漏洩等が懸念される。
【0011】
包装材の内容物に接するシーラント層に安定した撥水性を付与することにより、内容物の付着を防止して取り出し後の残存を低減し、取り出し性の向上を可能とした熱シール性フィルムを提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも基材フィルムの片面に熱シール樹脂層が形成されており、平均粒子径10μm〜50μmの球形粒子が熱シール樹脂層表面に露出した状態で分散されて表面凹凸を形成している熱シール性フィルムの熱シール樹脂層上に、平均一次粒子径5nm〜1μmの酸化物微粒子を分散させた無機バインダー層が形成され
、その上から撥水コート層により被覆されていることを特徴とする熱シール性フィルムである。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、上記熱シール性フィルムに含まれる球形粒子が、シリコーン、金属酸化物あるいはポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂から選ばれたプラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の熱シール性フィルムである。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、上記熱シール性フィルムに含まれる球形粒子が、熱シール樹脂層表面から直径の半分以上の高さで露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱シール性フィルムである。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、上記熱シール性フィルムに含まれる球形粒子が、熱シール後も形状を保持し、被シール基材に埋め込まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱シール性フィルムである。
【0017】
本発明の請求項に係る発明は、上記熱シール性フィルムにおける撥水コート層の撥水処理が、乾式、湿式等の手法によってメチル基を含む疎水性官能基を主体とする単分子膜を付与することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の熱シール性フィルムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱シール性フィルムによれば、少なくとも基材フィルムの片面に熱シール樹脂層が形成されており、平均粒子径10μm〜50μmの球形粒子が熱シール樹脂層表面に露出した状態で分散されて表面凹凸を形成している熱シール性フィルムの熱シール樹脂層上に、平均一次粒子径5nm〜1μmの酸化物微粒子を分散させた無機バインダー層が形成され、その上から撥水コート層により被覆されている熱シール層を有するので、内容物と接する領域で高い撥水性、撥乳性が付与され、さらに熱シール性が保持されており、容器本体に用いる包装材として内容物の残存が少ない包装材や内容物付着による汚染を防止する蓋材、包装材を提供することが可能となる。
【0019】
また、熱シール樹脂層表面にあらわれた球形粒子により大きな表面粗さを付与でき、さらにその上に酸化物微粒子を混ぜた無機バインダー層を設けることでフラクタルな形状を持つ凹凸基材が作成される。
さらに表面に撥水処理を施すことで、表面形状を崩すことなく低表面エネルギーを有する撥水性表面が形成でき、表面凹凸と撥水処理の効果でフラットな基材の上に撥水剤層を設けたフィルムよりも撥水性を向上させることが可能となった。
【0020】
また、球形粒子が、熱シール樹脂層から粒径の1/2以上表面に出ていることにより、急峻な段差があらわれ、酸化物微粒子の凹凸とともに撥水コートされることでフラット面より撥水性が向上するとともに、熱シール時に投錨効果によって被シール基材との密着性を向上させることが出来る。
熱シール実施時において、無機バインダーを使用した微細凹凸付与層が粒子凹凸上に存在するので、シール圧がかかる局面で無機層が壊れ、撥水コート層がシール阻害することなく、シール層中のシール樹脂が被着体表面に届きやすく、強固な熱シールが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の熱シール性フィルムの層構成の一例を示す断面略図
図2】従来の熱シール性フィルムの層構成の一例を示す断面略図
図3】本発明の熱シール性フィルムの層構成の一例を示す断面略図(実施例1)
図4】本発明の熱シール性フィルムの層構成の一例を示す断面略図(実施例2)
図5】従来の熱シール性フィルムの層構成の一例を示す断面略図(比較例1)
図6】従来の熱シール性フィルムの層構成の一例を示す断面略図(比較例2)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に必要に応じて図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の熱シール性フィルムの一例の断面模式図である。図の上部が包装体に用いた場合の内容物側で下部が外側となるような向きである。
【0023】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも基材フィルム(1)の片面に熱シール樹脂層(2)が形成されており、平均粒子径10〜50μmの球形粒子(3)が熱シール樹脂層表面に露出した状態で分散されて表面凹凸を形成している熱シール性フィルムの熱シール樹脂層上に、平均一次粒子径5nm〜1μmの酸化物微粒子(5)を分散させた無機バインダー層(4)が形成され、その上から撥水コート層(6)により被覆されていることを特徴とする熱シール性フィルム(7)である。
【0024】
本発明の熱シール性フィルムに用いる基材(1)としては、公知の材料又は積層材料を採用することができる。例えば、紙、合成紙、樹脂フィルム、蒸着層付き樹脂フィルム、
アルミニウム箔等の単体又はこれらの複合材料・積層材料を好適に用いることができる。
これらの材料には、公知の包装材料で採用されている各層が任意の位置に積層されていても良い。例えば、印刷層、印刷保護層(いわゆるOP層)、着色層、接着剤層、接着強化層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層等が挙げられる。
【0025】
積層材料を用いる場合の積層方法も限定的でなく、例えばドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等の公知の方法を採用することができる。
基材層の厚みは限定されないが、包装材料としての強度、柔軟性、コスト等の観点より通常15μm〜500μmの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0026】
本発明の熱シール性フィルムの熱シール樹脂層(2)に用いる素材としては、公知の材料を採用することができる。押出しポリエチレン樹脂のようなシーラントフィルムのほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤により形成される層を採用することができる。、好ましくは、アクリル系のヒートシールニス、ホットメルト、押出し用ポリエチレン樹脂などがよい。
熱シール樹脂層(2)の厚みは特に限定されないが、密封性、生産性、コスト等の観点より通常2〜150μm程度とすることが好ましい。
【0027】
上記熱シール性フィルム(7)に含まれる球形粒子(3)としては、シリコーン、金属酸化物あるいはポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂から選ばれたプラスチックが好ましく用いることが出来る。
球形粒子(3)は、熱シール層表面から直径の半分以上の高さで露出していて、熱シール後も形状を保持し、被シール基材に埋め込まれる。
【0028】
本発明の熱シール性フィルムの疎水性酸化物微粒子(5)は、平均一次粒子径が好ましくは5nm〜1μmである。平均一次粒子径を上記範囲とすることにより、酸化物微粒子が適度な凝集状態となり、その凝集体中にある空隙に空気等の気体を保持することができる結果、優れた非付着性を得ることができる。
すなわち、この凝集状態は、熱接着層に付着した後も維持されるので、優れた非付着性を発揮することができる。
【0029】
酸化物微粒子(5)としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。
酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
この中でも、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。とりわけ、より優れた非付着性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。
これに対応する市販品としては、例えば「AEROSIL R300」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
無機バインダー層(4)に用いるバインダーとしては、たとえば、テトラエトキシシラン加水分解溶液からなるシリカゾルバインダーが挙げられる。
【0031】
酸化物微粒子コート剤の塗布方法は、ロールコート、グラビアコート、バーコート、キスリバースコート、ダイコート、ドクターブレードコート、刷毛塗り、ディップコート、スプレーコート、スピンコートなどの公知の方法を採用することが出来る。
【0032】
撥水処理のための撥水コート方式としては、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法等の乾式、ならびにディップ法、スプレー法、スピンコート法、刷毛塗り、ダイコート等に代表される湿式のいずれかの手法を用いることが出来る。
これらのコート方法によって、酸化物微粒子(5)を含む無機バインダー層(4)の凹凸表面上をトリメチルシリル、ジメチルシリル、ジメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかのうち少なくとも1つを含む疎水性官能基を付着させて、球形粒子ならびに酸化物微粒子により形成されている表面凹凸を崩すことなく単分子コートすることが出来る。
【0033】
上記熱シール性フィルムの撥水コート層の表面形状は、球形粒子と微粒子分散によるフラクタル状の凹凸を有し、表面粗さRzが5μm超である。
また撥水コート層の撥水処理は、乾式、湿式等の手法によってメチル基を含む疎水性官能基を主体とする単分子膜を付与することにより行われる。
【0034】
本発明の熱シール性フィルムの製造においては、熱シール樹脂層(2)表面の撥水性を増強するために表面積を増大させるものとして、熱シール樹脂層(2)の厚さよりも大きな径で熱シール樹脂層によって保持出来る程度の直径(10〜50μm)の球形粒子(3)を表面凹凸付与材として基材フィルム表面に塗布する。
あるいは、球形粒子(3)と熱シール性樹脂とを混合した熱シール性塗工液を基材(1)上に塗布し乾燥する。
【0035】
これら熱シール性凹凸基材の上に、酸化物微粒子(5)を含むシリカバインダー樹脂層(4)を別途塗布する。酸化物微粒子(5)の粒子径は球形粒子(3)の間隙に容易に充填が可能でかつ表面凹凸の形成に寄与するような程度の平均一次粒子径(5nm〜1μm)とする。さらにその上にシランカップリング剤や各種シリコーンを用いて表面上に撥水コート層(6)を施す。
【0036】
熱シール性フィルム(7)の塗布乾燥後の表面は球形粒子(3)がほぼ均一に分散し、その上に酸化物微粒子(5)が全面を覆うように付着している構造をとる。
球形粒子(3)の平均粒径は、熱シール樹脂層(2)の樹脂の厚さに対し2倍以上の大きさを有するものである。
【0037】
さらに、酸化物微粒子(5)は、球形粒子(3)および熱シール樹脂層(2)と強固に密着するようにシリカ等の無機バインダー層(4)に分散され、凹凸基材表面に酸化物微粒子(5)がほぼ全面を覆うように配置されて基材上に強固に密着している。
さらにその後の撥水処理を単分子膜オーダーのコーティングによりおこなうことによって、基材表面の凹凸を変化させることなく疎水性官能基を全面に付着させ、撥水性と撥乳性の高い熱シール性フィルムとすることが可能となる。
【0038】
球形粒子(3)が熱シール樹脂層(2)より大きく出ていることにより、熱シール時に被シール基材に球形粒子(3)が埋まるように食い込み、熱シール樹脂の被シール基材との密着強度を保持し、補う役目を果たしている。
また、撥水コート層が表面の凹凸に沿って配置されているため、熱シール時にシール圧力により撥水コート層が一部破壊されやすく、下部の熱シール樹脂が表面上に滲みだして被シール基材との密着性を保持することが出来る。
このようにして本発明の熱シール性フィルムは、良好な熱シール性を保ちながら優れた撥水性を有し、蓋材やパウチとして利用した場合には内容物の残量の低減や付着防止効果等の優れた効果を有する。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
厚み15μmのアルミニウム箔(AL)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後塗布量3.5g/m)を用いて、裏印刷を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の印刷面と貼り合わせ、基材(20)を作成した。
ドライラミネートで作成したPET/AL基材(20)上に、ウレタン系アンカーコートを塗布した上から、アクリル樹脂からなる平均粒子径20μmの球形粒子とアクリル樹脂からなるヒートシール剤を酢酸エチルに分散して30質量%の固形分に調整した分散液を、ヒートシール剤の乾燥後の塗布量が4.0g/mになるようにグラビアコートにより塗布し、球形樹脂(3)による凹凸を付与した熱シール性基材を作成した。
【0040】
さらに、この熱シール性基材の上に、酸化物微粒子(5)として平均一次粒子径7nmの未処理シリカ微粒子(日本アエロジル R300)とTEOS(テトラエトキシシラン)加水分解溶液からなるシリカゾルバインダーを固形分重量比1:1で混合し、メタノールで10質量%に希釈した酸化物微粒子コート剤を、1.5g/mの塗布量でグラビアコートにより塗布し、凹凸付与熱シール基材とした。
さらに、ヘキサメチルジシロキサンを0.01N塩酸とメタノールの混合溶媒に10質量%溶解させた撥水コート剤を上記凹凸付与熱シール基材の上にディップコートし、撥水性を付与した熱シール性フィルム(17)とした(図3参照)。
【0041】
<実施例2>
厚み15μmのアルミニウム箔(AL)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後塗布量3.5g/m)を用いて、裏印刷を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の印刷面と貼り合わせ、基材(20)を作成した。
ドライラミネートで作成したPET/AL基材(20)上に、ウレタン系アンカーコートを塗布した上から、アクリル樹脂からなるヒートシール剤を酢酸エチルに分散して20
質量%の固形分に調整した分散液を、乾燥後の塗布量が2.0g/mの塗布量になるようにグラビアコートにより塗布してヒートシール性基材とした基材フィルムの上に、アクリル樹脂からなる平均粒子径20μmの球形粒子(3)を酢酸エチルによって分散した粒子分散液をバーコートにより均一に塗布し、凹凸を付与した熱シール性基材を作成した。
【0042】
さらに、この熱シール性基材の上に、酸化物微粒子(5)として平均一次粒子径7nmの未処理シリカ微粒子(日本アエロジル R300)とTEOS(テトラエトキシシラン)加水分解溶液からなるシリカゾルバインダーを固形分重量比1:1で混合し、メタノールで10質量%に希釈した酸化物微粒子コート剤を、1.5g/mの塗布量でグラビアコートにより塗布し、凹凸付与熱シール基材とした。
さらに、ヘキサメチルジシロキサンを0.01N塩酸とメタノールの混合溶媒に10質量%溶解させた撥水コート剤を上記凹凸付与熱シール基材の上にディップコートし、撥水性を付与した熱シール性フィルム(27)とした(図4参照)。
【0043】
<比較例1>
厚み15μmのアルミニウム箔(AL)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後塗布量3.5g/m)を用いて、裏印刷を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の印刷面と貼り合わせ、基材(20)を作成した。
ドライラミネートで作成したPET/AL基材(20)上に、ウレタン系アンカーコートを塗布した上から、アクリル樹脂からなるヒートシール剤を酢酸エチルに分散して20質量%の固形分に調整した分散液を、乾燥後の塗布量が2.0g/mになるようにグラビアコートにより塗布してヒートシール性基材とした基材フィルムの上に、疎水性シリカ微粒子とTEOS加水分解溶液からなるシリカゾルバインダーを混合した酸化物微粒子コート剤を、グラビアコートにより塗布し、撥水性を付与した熱シール性フィルム(37)とした(図5参照)。
【0044】
<比較例2>
厚み15μmのアルミニウム箔(AL)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後塗布量3.5g/m)を用いて、裏印刷を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の印刷面と貼り合わせ、基材(20)を作製した。
ドライラミネートで作成したPET/AL基材(20)上に、ウレタン系アンカーコートを塗布した基材上に、アクリル樹脂からなる平均粒子径15μmの球形粒子(3)とアクリル樹脂からなるヒートシール剤を酢酸エチルに分散して30質量%の固形分に調整した分散液を、20.0g/mの塗布量でグラビアコートにより塗布し、球形樹脂(3)による凹凸が熱シール樹脂層(2)内にほぼ埋没した形状の熱シール性基材を作成した。
【0045】
さらに、この熱シール性基材の上に、酸化物微粒子(5)として平均一次粒子径7nmの未処理シリカ微粒子(日本アエロジル R300)とTEOS(テトラエトキシシラン)加水分解溶液からなるシリカゾルバインダーを固形分重量比1:1で混合し、メタノールで10質量%に希釈した酸化物微粒子コート剤を、1.5g/mの塗布量でグラビアコートにより塗布し、凹凸付与熱シール基材とした。
さらに、ヘキサメチルジシロキサンを0.01N塩酸とメタノールの混合溶媒に10質量%溶解させた撥水コート剤を上記凹凸付与熱シール基材の上にディップコートし、撥水性を付与した熱シール性フィルム(47)とした(図6参照)。
【0046】
<評価結果>
<シール強度>
各実施例及び比較例で得られたサンプルについてシール強度を調べた。
実施例1,2および比較例1,2で作成した熱シール性フィルムを、フランジ付きポリスチレン製容器のフランジ上にインパルスシーラーにてヒートシールし、シール強度を引
張試験機(テンシロン)にて測定した。
ヒートシール条件は、温度210℃及び圧力2kg/cmにて1.0秒間、シール強度の測定条件は、引張速度300mm/min、剥離角度180度、シール幅10mm、測定フィルム幅15mm、n=3の平均としその平均値を求めた。
【0047】
<接触角>
各フィルムの内容物側を試験面とし、この面を上面として水平な平台にクリップで固定し、水滴およびヨーグルト(ダノンヨーグルト/プレーン加糖)を滴下し、その接触角ならびに転落角(目視)を測定した。純水とヨーグルトの接触角は接触角測定装置を用いて測定した。
【0048】
<転落角>
純水とヨーグルトの転落角は各フィルムの内容物側を試験面とし、水滴およびヨーグルトを至近距離から垂らし、水平な平台を傾け、ヨーグルト液滴が転げ落ちた場合はその角度を目視で判定し、平台を90度傾けても転げ落ちずに垂れ流れた場合を付着残りとした。
【0049】
<密着強度>
熱シール性フィルムの内容物に接する面の撥水処理の密着強度試験として、学振形耐磨耗試験機(JISK5701)で往復回数100回、荷重200g、相手材:クロムメッキ面の条件にて耐磨耗試験を実施した。
耐磨耗試験後に前記のヨーグルトの転落角試験を行い、ヨーグルト液滴が転げ落ちた場合は○、平台を90度傾けても転げ落ちずに付着が残った場合を付着(不合格)とした。
以上の結果を表1及び表2に示す。
【表1】
【0050】
表1の結果からも明らかなように、比較例の熱シール性フィルムではシール強度が弱く、球形粒子が熱シール性樹脂層に埋没している比較例2においては特に弱いことが目立っている。
また非付着性については実施例と比較例では接触角と転落角において全般に差があり、本発明の熱シール性フィルムが優れていることが示されている。
とくに収納物にヨーグルトを選んだ場合には、比較例では付着残りがあるが実施例では転落角が10°未満と高い非付着性を発揮していることがわかる。
【0051】
また、学振試験機による表面磨耗試験後の付着性の劣化の程度を示す密着強度の項目でも実施例の熱シール性フィルムは実用上差し支えのない良好な性能を示していることがわかる。
以上の結果より、本発明の熱シール性フィルムによれば、包装材の内容物に接するシーラント層に安定した撥水性を付与することにより、内容物の付着を防止して取り出し後の残存を低減し、取り出し性の向上を可能とした熱シール性フィルムを提供することが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のこのような熱シール性フィルムは包装材料として、蓋材として使用できるほか、ピロー袋、ガセット袋、自立袋、三方シール袋、四方シール袋等の袋体、成形容器、包装シート、チューブ等の様々な用途に効果的に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…基材
2…熱シール樹脂層
3…球形粒子
4…無機バインダー層
5…酸化物微粒子
6…撥水コート層
7…熱シール性フィルム
8…アルミニウム箔
9…接着剤
10…基材
11…熱接着層
12…疎水性酸化物微粒子
13…裏印刷
14…ポリエステルフィルム
17…熱シール性フィルム
20…基材
27…熱シール性フィルム
37…熱シール性フィルム
47…熱シール性フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6