(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
親局装置が中継装置に対して上り多重アクセス制御を行う第1通信網と、中継装置が子局装置に対して上り多重アクセス制御を行う第2通信網とがあり、前記第1通信網と前記第2通信網が単数又は複数の中継装置を介して接続された通信システムであって、
前記第2通信網に接続された中継装置は、前記第2通信網から前記第1通信網に転送する上りのデータフレームに、その送信元である前記子局装置を識別するためのタグ情報を付与し、
前記親局装置は、前記第1通信網から受信した前記データフレームに含まれる前記タグ情報に基づいて、上りのトラフィック量を前記子局装置ごとに集計することを特徴とする通信システム。
前記親局装置は、前記データフレームに含まれる前記タグ情報と、前記第1通信網における前記中継装置の論理リンクとの組み合わせに基づいて、当該データフレームの送信元である前記子局装置を特定する請求項1に記載の通信システム。
前記中継装置は、前記第1通信網に送信する上り信号の伝送レートと、前記第2通信網から受信する上り信号の伝送レートとの差を吸収するための、上りバッファを有する請求項1〜4に記載の通信システム。
前記中継装置は、前記第1通信網から受信する下り信号の伝送レートと、前記第2通信網に送信する下り信号の伝送レートとの差を吸収するための、下りバッファを有する請求項1〜4に記載の通信システム。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のPONシステムでは、光伝送用の送信器の光出力強度に物理的な上限があるとともに、受信器の受信感度に物理的な下限があることから、OLTからONUまでの伝送距離や分岐数が増加するほど、受信器に入力される光信号の強度が低下する。
このため、PONシステムでは、光ファイバ回線の伝送距離と分岐数に制限が設けられることが一般的である。例えば、伝送距離は20km以内に制限され、分岐数は32分岐以下に制限される。
【0006】
そこで、上段PONではONUとして機能しかつ下段PONではOLTとして機能する中継装置によってPONを階層的に接続し、その中継装置が、OLTによる上段PONの上り多重アクセス制御とは独立して、下段PONの上り多重アクセス制御を行う光通信システムとすることが考えられる。
かかる多段構成の光通信システムを採用すれば、伝送距離については、上段PONの分と下段PONの分を加算した値に増加させることができ、分岐数については、上段PONの分と下段PONの分を乗算した値に増加させることができる。
【0007】
しかし、上記光通信システムのように、上段通信網と下段通信網とで上り多重アクセス制御を独立して行うシステムでは、上段通信網の親局であるOLTが、上りのデータフレームの下段通信網における送信元を特定できず、下段通信網の子局であるONUのSLA(Service Level Agreement)を達成できない場合がある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、上段と下段の通信網で独立した上り多重アクセス制御を行う通信システムにおいて、下段側の子局装置のSLAを確実に達成できるようにすることを第1の目的とする。
【0008】
また、中継装置がOLTと離れた遠隔地に設置されている場合には、各々の中継装置を通信事業者が管理する管理ネットワークに接続しないと、下段通信網の子局であるONUの保守管理を行うことができないという問題もある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、上段と下段の通信網で独立した上り多重アクセス制御を行う通信システムにおいて、下段側の子局装置の保守管理を、上段側の親局装置から行えるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の通信システムは、親局装置が中継装置に対して上り多重アクセス制御を行う第1通信網と、中継装置が子局装置に対して上り多重アクセス制御を行う第2通信網とがあり、前記第1通信網と前記第2通信網が単数又は複数の中継装置を介して接続された通信システムであって、前記第2通信網に接続された中継装置は、前記第2通信網から前記第1通信網に転送する上りのデータフレームに、その送信元である前記子局装置を識別するためのタグ情報を付与し、前記親局装置は、前記第1通信網から受信した前記データフレームに含まれる前記タグ情報に基づいて、上りのトラフィック量を前記子局装置ごとに集計することを特徴とする。
【0010】
本発明の通信システムによれば、中継装置が、上りのデータフレームに上記タグ情報を付与し、親局装置が、そのデータフレームに含まれるタグ情報に基づいて、上りのトラフィック量を子局装置ごとに集計する。従って、親局装置は、集計したトラフィック量に基づいてSLAに見合うQoS(Quality of Service)を子局装置ごとに提供できる。
このため、下段側の子局装置のSLAを確実に達成することができ、前記第1の目的が達成される。
【0011】
(2) 本発明の通信システムにおいて、前記子局装置ごとの集計には、前記データフレームに対して定義された優先度ごとの集計が含まれていてもよい。
データフレームの優先度を示す情報は、データフレーム中の特定のフィールドを参照することにより得られる。例えば、IPv4フレームのヘッダ内のTos(Type of Service)フィールド、IPv6フレームのヘッダ内のTC(Traffic Class)フィールド、あるいは、IEEE Std 802.1Q
TM-2011に規定のPCP(Priority Code Point)フィールドなどに基づいて、データフレームの優先度を決定することができる。なお、フィールドの値と優先度のマッピング規則は別途定義されている必要がある。
【0012】
本発明の通信システムによれば、中継装置が、上りのデータフレームに上記タグ情報を付与し、親局装置が、そのデータフレームに含まれるタグ情報に基づいて、上りのトラフィック量を子局装置ごとの優先度ごとに集計する。従って、親局装置は、集計したトラフィック量に基づいてSLAに見合うQoS(Quality of Service)を子局装置ごとの優先度ごとに提供できる。
このため、下段側の子局装置のSLAがトラフィックの種別毎のQoS条件を含むような場合にもSLAを確実に達成することができ、前記第1の目的が達成される。
【0013】
(3) 本発明の通信システムにおいて、前記中継装置は、子局装置を識別するためのタグ情報をデータフレームに付与すれば足り、自装置を識別するためのタグ情報を付与しなくてもよい。
この場合、前記親局装置は、前記データフレームに含まれる前記タグ情報(子局装置のタグ情報)と、前記第1通信網における前記中継装置の論理リンク番号との組み合わせに基づいて、当該データフレームの送信元である前記子局装置を特定することができる。
【0014】
(4) もっとも、本発明の通信システムにおいて、前記中継装置は、子局装置を識別するためのタグ情報に加えて、自装置を識別するためのタグ情報をデータフレームに付与することにしてもよい。
この場合、前記親局装置は、前記データフレームに含まれる2種類の前記タグ情報の組み合わせに基づいて、当該データフレームの送信元である前記子局装置を特定することができる。
【0015】
(5) 本発明の中継装置は、上述の(1)に記載の通信システムを構成する中継装置(サブコンビネーション)であり、その通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0016】
すなわち、本発明の中継装置は、第1通信網と第2通信網の双方で通信可能な中継装置であって、前記第1通信網の親局装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2通信網の子局装置に対して上り多重アクセス制御を行い、前記第2通信網から前記第1通信網に転送する上りのデータフレームに、その送信元である前記子局装置を識別するためのタグ情報を付与することを特徴とする。
【0017】
(6) 本発明の親局装置は、上述の(1)に記載の通信システムを構成する親局装置(サブコンビネーション)であり、その通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0018】
すなわち、本発明の親局装置は、第2通信網の子局装置に対して上り多重アクセス制御を行う中継装置と、第1通信網において通信する親局装置であって、前記中継装置に対して上り多重アクセス制御を行い、前記中継装置から受信した上りのデータフレームに含まれる、その送信元である前記子局装置を識別するためのタグ情報に基づいて、上りのトラフィック量を前記子局装置ごとに集計することを特徴とする。
【0019】
(7) 本発明の通信方法は、上述の(1)に記載の通信システムにおいて行われる通信方法であり、その通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0020】
すなわち、本発明の通信方法は、第1通信網の親局装置が中継装置に対して上り多重アクセス制御を行い、前記中継装置が第2通信網の子局装置に対して上り多重アクセス制御を行う通信方法であって、前記第2通信網から前記第1通信網に転送する上りのデータフレームに、その送信元である前記子局装置を識別するためのタグ情報を付与するステップと、前記データフレームに含まれる前記タグ情報に基づいて、上りのトラフィック量を前記子局装置ごとに集計するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
(8) 他の観点から見た本発明の通信システムは、親局装置が中継装置に対して上り多重アクセス制御を行う第1通信網と、前記中継装置が子局装置に対して上り多重アクセス制御を行う第2通信網とが、前記中継装置を介して接続された通信システムであって、前記親局装置は、前記中継装置に含まれる前記第1通信網の子局機能部に対する管理を行うための第1のフォーマットの管理フレームを前記中継装置との間で送受信可能であり、かつ、前記中継装置に含まれる前記第2通信網の親局機能部に対する管理を行うための仮想的な制御系通信路を前記第1通信網に設定可能であり、前記中継装置は、前記子局装置に対する管理を行うための第2のフォーマットの管理フレームを前記子局装置との間で送受信可能であり、前記子局装置に対する保守管理を指示するコマンドを前記親局装置から前記制御系通信路経由で受信した場合に、前記子局装置との間で第2のフォーマットの管理フレームの送受信を行い、前記子局装置からの応答に基づいて前記親局装置へコマンドに対する応答を前記制御系通信路経由で行うことを特徴とする。
【0022】
前記管理フレームとしては、例えばIEEE Std 802.3
TM-2008で規定されるOAM(Operations, Administration, and Maintenance)フレームが考えられる。
IEEE Std 802.3
TM-2008で規定されるPONでは、ONUの保守や管理はOAMフレームあるいはOAMフレームのフォーマットを拡張した拡張OAMフレーム(以下、これらを合わせて「OAMフレーム」と記す。)を用いて行うことができる。また、前記制御系通信路は、例えばVLANを利用して設定することができる。
【0023】
本発明の通信システムによれば、親局装置が、中継装置の親局機能部に対する管理のための仮想的な制御系通信路を第1通信網に設定可能であり、中継装置が、子局装置に対する保守管理を指示するコマンドを親局装置から制御系通信路経由で受信した場合に、子局装置との間の管理フレームの送受信にて得られた子局装置からの応答に基づいて、親局装置のコマンドに対する応答を制御系通信路経由で行う。
このため、下段側の子局装置の保守管理についても、上段側の親局装置から行うことができ、上述の第2の目的が達成される。
【0024】
(9) 本発明の通信システムにおいて、前記親局装置は、前記中継装置の前記子局機能部以外の部分に対する設定を、前記第1のフォーマットの管理フレームで送信することにしてもよい。
この場合、前記中継装置が、前記第1のフォーマットの管理フレームの内容に従って、自装置の子局機能部以外の部分の設定処理を行うことにすれば、前記制御系通信路を使用せずに中継装置の子局機能部以外の部分の設定についても、親局装置を経由した遠隔操作によって行えるようになる。
【0025】
(10) 本発明の中継装置は、上述の(7)に記載の通信システムを構成する中継装置(サブコンビネーション)であり、その通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0026】
すなわち、本発明の中継装置は、第1通信網と第2通信網の双方で通信可能な中継装置であって、前記第1通信網の親局装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2通信網の子局装置に対して上り多重アクセス制御を行い、前記子局装置の管理のための管理フレームを前記子局装置との間で送受信可能であり、前記子局装置に対する保守管理を指示するコマンドを前記親局装置から前記制御系通信路経由で受信した場合に、前記子局装置との間の管理フレームの送受信にて得られた前記子局装置からの応答に基づいて、前記親局装置のコマンドに対する応答を前記制御系通信路経由で行うことを特徴とする。
【0027】
(11) 本発明の通信方法は、上述の(7)に記載の通信システムにおいて行われる通信方法であり、その通信システムと同様の作用効果を奏する。
【0028】
すなわち、本発明の通信方法は、第1通信網の親局装置が中継装置に対して上り多重アクセス制御を行い、前記中継装置が第2通信網の子局装置に対して上り多重アクセス制御を行う通信方法であって、前記親局装置と前記中継装置が、前記中継装置の子局機能部の管理のための管理フレームを送受信し、前記中継装置と前記子局装置が、前記子局装置の管理のための管理フレームを送受信するステップと、前記中継装置が、前記子局装置に対する保守管理を指示するコマンドを前記親局装置から前記制御系通信路経由で受信した場合に、前記子局装置との間の管理フレームの送受信にて得られた前記子局装置からの応答に基づいて、前記親局装置のコマンドに対する応答を前記制御系通信路経由で行うステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
(12) 本発明の通信システムにおいて、前記中継装置は、前記第1通信網に送信する上り信号の伝送レートと、前記第2通信網から受信する上り信号の伝送レートとの差を吸収するための、上りバッファを有することが好ましい。
この場合、第1通信網の上りの伝送レート(例えば10Gbps)が第2通信網の上りの伝送レート(例えば1Gbps)よりも高い通信システムを構成でき、第1通信網での分岐数を増大させても、ユーザ当たりの上りの帯域を有効に確保できる。
【0030】
(13) 本発明の通信システムにおいて、前記中継装置は、前記第1通信網から受信する下り信号の伝送レートと、前記第2通信網に送信する下り信号の伝送レートとの差を吸収するための、下りバッファを有することが好ましい。
この場合、第1通信網の下りの伝送レート(例えば10Gbps)が第2通信網の下りの伝送レート(例えば1Gbps)よりも高い通信システムを構成でき、第1通信網での分岐数を増大させても、ユーザ当たりの下りの帯域を有効に確保できる。
【発明の効果】
【0031】
以上の通り、本発明によれば、上段と下段の通信網で独立した上り多重アクセス制御を行う通信システムにおいて、下段側の子局装置のSLAを確実に達成することができる。
また、本発明によれば、上段と下段の通信網で独立した上り多重アクセス制御を行う通信システムにおいて、下段側の子局装置の保守管理についても、上段側の親局装置から簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔光通信システムの接続形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る光通信システムの接続形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光通信システムは、1つの親局装置10と多数の子局装置30が、それらの間の複数の中継装置20を仲立ちとして、上下2段のPON回線L1,L2によって接続された接続形態(トポロジ)となっている。
【0034】
すなわち、1つの親局装置10とその配下の複数の中継装置20とが光ファイバにてP2MP形態で接続されており、各中継装置20とその配下の複数の子局装置30とが光ファイバにてP2MP形態で接続されている。
より具体的には、親局装置10に接続された一芯の光ファイバは、受動光分岐ノードである光カプラC1を介して複数の一芯の光ファイバに分岐しており、この分岐した各光ファイバの終端に、それぞれ中継装置20が接続されている。
【0035】
また、中継装置20の下段側に接続された一芯の光ファイバは、受動光分岐ノードである光カプラC2を介して複数の一芯の光ファイバに分岐しており、この分岐した各光ファイバの終端に、それぞれ子局装置30が接続されている。
従って、上段側のPON回線L1は、1つのOLTである親局装置10に対応して1つだけ存在し、下位側のPON回線L2は、複数の中継装置20に対応して当該中継装置20と同数だけ存在する。
【0036】
なお、中継装置20は、下段のPON回線L2ではOLTとして機能するので、本実施形態の光通信システムは、親局装置10とその配下の複数の中継装置20とから、1つの「大規模なOLT」が仮想的に構成されていると見なすこともできる。
また、
図1に破線で示すように、PONのONUである子局装置30を、上段側のPON回線1に直接接続してもよいし、下段側のPON回線L2に更に中継装置20を接続し、中継装置20を複数階層としてもよい。
【0037】
なお、本明細書では、親局装置10とPON回線L1と複数の中継装置20とからなる上段側のPONを、「上段PON」或いは「第1通信網」と呼ぶことがあり、中継装置20とPON回線2と複数の子局装置30からなる下段側のPONを、「下段PON」或いは「第2通信網」と呼ぶことがある。
また、本実施形態では、上段及び下段の通信網としてPONを想定しているので、親局装置10は「OLT」であり、子局装置30は「ONU」である。
【0038】
図1の光通信システムにおいて、上段PONの上り方向通信では、波長λ1でかつ伝送レートR1〔Gbps〕の上り光信号が用いられる。もっとも、上段PONの上り伝送レートR1は、1種類ではなく複数種類であってもよい。
下段PONの上り方向通信では、波長λ3でかつ伝送レートR3〔Gbps〕の上り光信号が用いられる。もっとも、下段PONの上り伝送レートR3も、1種類ではなく複数種類であってもよい。
【0039】
上段PONの下り方向通信では、波長λ2でかつ伝送レートR2の下り光信号が用いられ、波長λ2と伝送レートR2は1種類に固定されているものとする。もっとも、上段PONの下り光信号は、1種類ではなく複数種類であってもよく、その場合は、λ2とは異なる波長の信号が多重される。
また、下段PONの下り方向通信では、波長λ4でかつ伝送レートR4の下り光信号が用いられ、波長λ4と伝送レートR4は1種類に固定されているものとする。もっとも、下段PONの下り光信号は、1種類ではなく複数種類であってもよく、その場合は、λ4とは異なる波長の信号が多重される。
【0040】
本実施形態では、上記の各伝送レートR1〜R4として、例えば、R1=10、R2=10、R3=1、R4=1を想定している。
従って、親局装置10と中継装置20とがPON回線L1で繋がる上段PONは、伝送レートR1,R2が10Gbps(ボーレートは10.3125Gbaud)の10G−EPONとなり、各中継装置20と子局装置30とがPON回線L2で繋がる下段PONでは、伝送レートR3,R4が1Gbps(ボーレートは1.25Gbaud)のG−EPONとなる。
【0041】
この場合、上段PONの波長λ1,λ2は、例えばIEEE802.3av−2009のClause75の規約に従うならば、1260nm≦λ1≦1280nm、1575nm≦λ2≦1580nmの範囲から選択することができる。
また、下段PONの波長は、例えばIEEE802.3−2008のClause60の規約に従うならば、1260nm≦λ3≦1360nm、1480nm≦λ4≦1500nmの範囲から選択することができる。
【0042】
図1に示すように、親局装置10は公衆網である「上位ネットワーク」に接続されており、各子局装置30は構内通信網である「ユーザネットワーク」に接続されている。
従って、ユーザネットワークに接続されたパーソナルコンピュータや通信家電などの端末装置(図示せず)は、下段PON、上段PON及び上位ネットワークを経由して、インターネットなどと通信できる。
【0043】
親局装置10は、通信事業者の施設内に設置されており、通信事業者が親局装置を管理するための「管理ネットワーク」にも接続されている。
従って、通信事業者は、管理ネットワークに接続したパーソナルコンピュータなどの端末装置を用いて、親局装置10に対するネットワーク管理のための所定の設定作業を行うことができる。もっとも、この場合の端末装置は親局装置10に直接接続してもよい。
【0044】
中継装置20は、PON回線L1を短くして通信事業者の施設内に設置した場合は、親局装置10と同様に、管理ネットワークを介して或いは中継装置20に直接接続されたパーソナルコンピュータなどの端末装置を用いて、中継装置20に対するネットワーク管理のための所定の設定作業を行うことができる。
【0045】
ただし、PON回線L1がキロメーターオーダーの通常の伝送距離を有し、各中継装置20が管理ネットワークから離れた遠隔局である場合は、管理ネットワークや中継装置20に接続した端末装置による設定作業を行うことができない。
そこで、中継装置20が遠隔局の場合でも、親局装置10に接続された管理ネットワークから、中継装置20とその配下の子局装置30に対するネットワーク管理のための設定を行えることが望ましいが、この課題を解決するための方策については後述する。
【0046】
〔親局装置の構成〕
図2は、親局装置10の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、親局装置10は、上位側(
図2の上側)から下位側に向かって順に 、上位側受信部101、上位側送信部102、データ中継処理部103、制御信号処理部104、PON送信部105、PON受信部106、光送信部(E/O変換部)107、光受信部(O/E変換部)108及び合分波部109を備えている。
また、親局装置10は、管理ネットワークや設定用ポートP1を介して、ネットワーク設定のための通信事業者の端末装置と接続可能なOLT機能制御部110を備えている。
【0047】
図2において、上位ネットワークからの下りのデータフレームは、上位側受信部101により受信され、データ中継処理部103に送られる。
データ中継処理部103は、PON送信部105に下りのデータフレームを渡し、このフレームは、光送信部107において波長λ2でかつ伝送レートR2〔Gbps〕の下り光信号に変換され、合分波部109を介してPON回線L1に送出される。
【0048】
PON回線L1の中継装置(
図3)から上り方向に送信された、波長λ1でかつ伝送レートR1〔Gbps〕の上り光信号は、合分波部109を通過して光受信部108に到達する。
光受信部108は、受信した光信号を電気信号に変換する光電変換素子と、変換された電気信号を増幅する増幅器を有しており、この増幅器で増幅された電気信号はPON受信部106に入力される。
【0049】
PON受信部106は、入力された電気信号に対して、クロック及びデータ再生、物理層での復号化、及び、イーサネットフレーム(「イーサネット」は登録商標である。)の再生などの処理を行う。
PON受信部106は、再生した上りフレームのヘッダ部分を読み取って、受信したフレームがデータフレームであるか、或いは、レポートフレームなどの制御フレームであるかを判定する。
【0050】
上記制御フレームの例としては、例えば、IEEE Std 802.3
TM-2008で規定されるMPCP(Multi-Point Control Protocol)フレームやOAM(Operation Administration and Maintenance )フレームなどがある。
親局装置10が中継装置20に上りデータの送信開始時刻と送信許可量を指示する「グラント」や、中継装置20が親局装置10に対して上り方向データの蓄積量に関する値を通知する「レポート」は、MPCPフレームの一種である。
【0051】
上記判定の結果、受信したフレームがデータフレームであれば、PON受信部106はそのフレームをデータ中継処理部103に送る。データ中継処理部103は、データフレームのヘッダ情報の変更や上位側送信部102に対する送信制御などの所定の中継処理を行い、処理後のフレームは上位側送信部102から上位ネットワークに送出される。
また、上記判定の結果、受信したフレームがレポートフレームであれば、PON受信部106はそのフレームを制御信号処理部104に転送する。
【0052】
制御信号処理部104は、上記レポートフレームに基づいて、所定の制御ロジックにて上り帯域の割り当て(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation )を行う。
また、制御信号処理部104は、DBAの結果算出された送信許可量や送信元の中継装置20のLLID(Logical Link ID)を記したグラントフレームを生成して、PON送信部105に入れる。そして、グラントフレームは、光送信部107において波長λ2でかつ伝送レートR2〔Gbps〕の下り光信号に変換され、合分波部109からPON回線L1に送出される。
【0053】
親局装置10のOLT機能制御部110は、第1通信網を構成する各装置に対する運用、保守又は管理(以下、「保守管理」と略記する。)のための「管理コマンド」を、管理ネットワークや設定用ポートP1から受信することができる。この親局の持つ保守管理用のインタフェースをコマンドラインインタフェースと呼ぶ。
OLT機能制御部110は、所定のコマンドを、管理ネットワークなどを介して通信事業者の端末装置から受信すると、そのコマンドに従った処理を行い、この処理の結果を記した応答を、通信事業者の端末装置に返信する。
【0054】
上記の管理コマンドは、例えば、Telnet(Telecommunication network)や経路上での盗聴(覗き見)を防止するための暗号通信を行うためのSSH(Secure Shell)などの仮想端末ソフトウェアにて確立される通信事業者の端末とのリモートのセッションを介して伝達される。本実施形態では次の2種類の用語を定義する。
1)管理コマンド:通信事業者の端末装置からコマンドラインインタフェースを介して「親局」あるいは「親局相当部」に入力される、特定のPONを保守管理するためのコマンド。
図1では、親局装置10及び中継装置20の親局機能部21が、それぞれ「親局」と「親局相当部」に該当する。
【0055】
2)管理フレーム:「親局」あるいは「親局相当部」からPONインタフェースを介してPONの「子局」あるいは「子局相当部」に入力される、「子局」あるいは「子局相当部」を保守管理するためのフレーム。
図1では、中継装置20の子局機能部22及び子局装置30がそれぞれ「子局相当部」と「子局」に該当する。
【0056】
OLT機能制御部110は、管理コマンドを受信すると、その管理コマンドに従って、親局装置10内の各部101〜106に対して保守管理のための設定や処理を行う。
例えば、OLT機能制御部110は、管理コマンドに従い、上位側受信部101のフロー制御に関する設定、上位側送信部102の送信レートのシェーピングに関する設定、データ中継処理部103のキューに関する設定やフレーム変換に関する設定、制御信号処理部104のDBAの動作パラメータに関する設定、PON送信部105とPON受信部106の暗号モードや動作タイミングに関する設定、などを行う。また、装置内の各部の状態を取得し、通信事業者の端末に応答を返す。
【0057】
さらに、OLT機能制御部110は、自身の保守管理のための設定や処理を行う。例えば、装置やモジュールの再起動、親局装置の時計の設定、管理ポートのIPアドレスの設定、装置バージョンの表示、装置状態の表示、警報の表示、ログ情報の表示、などを行う。
【0058】
OLT機能制御部110は、第1通信網に接続されている子局に対する管理コマンド管理コマンドを受信すると、その管理コマンドを制御信号処理部104に渡す。制御信号処理部104は、その管理コマンドに基づいて、保守管理の対象とされている第1通信網の子局30あるいは中継装置20に対する管理フレームを組み立て、PON送信部105に入れる。
【0059】
そして、管理コマンドは、光送信部107において波長λ2でかつ伝送レートR2〔Gbps〕の下り光信号に変換され、合分波部109からPON回線L1に送出される。
第1通信網に接続されている子局(中継装置20の子局機能部21や子局装置30など)に対する管理コマンドの例は、子局との論理リンク切断、子局のリセット、子局とのループバックテストの実施、子局のキューに関する設定、子局におけるフレーム変換則に関する設定、子局の状態や設定内容の表示などである。
【0060】
制御信号処理部104は、上段PONの中継装置20を管理対象とするOAMフレームの生成と送受信を行うが、このOAMフレームには、IEEE802.3−2008のClause57に規定された通常のOAMフレームや、通信事業者が保守管理の目的で独自に定めた拡張OAMフレームなどがある。
制御信号処理部104は、上段PONでのディスカバリによって中継装置20の登録が完了すると、その中継装置20との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立する。また、管理コマンドによる指示があれば、特定の中継装置20との間でOAMループバック試験を実施する。
【0061】
OLT機能制御部110は、中継装置20の親局機能部22に対する制御系通信路内に通信セッションの確立を求める管理コマンドを受信すると、その管理コマンドに基づいて保守管理の対象とされている中継装置20に対して通信セッションの確立を要求するフレームを組み立て、データ中継処理部103に渡す。
データ中継処理部103は、PON送信部105を介して組み立てられたフレームを送信し、中継装置から応答があればデータ中継処理部103を介してOLT機能制御部110へ応答を中継する。
【0062】
OLT機能制御部110は、応答を受け取り、必要であればさらに中継装置20の親局機能部22との間で所定のフレームを交換してセッションを確立させる。この一連のフレームの交換は、
図7に示す仮想的な制御系通信路内で行われる。この手順により、管理ネットワークから前記制御系通信路を介して中継装置20の親局機能部22に対するコマンドラインインタフェースへのアクセスが可能となる。
通信事業者は、中継装置20の親局機能部22のコマンドラインインタフェースを用いて、第2通信網に接続される子局装置30の保守管理を行う。
【0063】
〔中継装置の構成〕
図3は、中継装置20の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、中継装置20は、概略的には、上位側(
図3の上側)の子局機能部21と、下位側の親局機能部22と、これらの機能部21,22の間にあるデータ振り分け部23とを備えている。データ振り分け部23は、例えばL2スイッチよりなる。
また、中継装置20は、上段PON内の仮想的な制御系通信路や設定用ポートP2を介して通信事業者の端末装置と接続可能な、ネットワーク設定のための装置制御部24を備えている。
【0064】
上記機能部21,22のうち、子局機能部21は、上段PONのONUを構成する機能部分であり、上位側から下位側に向かって順に、合分波部201、光受信部(O/E変換部)202、光送信部(E/O変換部)203、PON受信部204、PON送信部205、制御信号処理部206、データ中継処理部207、データ送信部208、データ受信部209及びONU機能制御部210を備えている。
【0065】
図3において、親局装置10からの下り方向に送信されて来る光信号は、合分波部201を通過して、光受信部202により電気信号に変換され、この電気信号はPON受信部204により受信される。
PON受信部204は、受信したフレームのヘッダ部分(プリアンブル部分を含む。)を読み取ることにより、当該フレームが自己宛(ここでは、自己又は自己の配下の子局装置30宛又はブロードキャストを意味する。)であるか否かを判定する。
【0066】
上記判定の結果、自己宛であれば、PON受信部204は、当該フレームを取り込み、そうでなければ、当該フレームを廃棄する。
例えば、上記の宛先判定を行うためのヘッダ情報の例として、IEEE規格802.3−2008に記載の論理リンクの識別子(LLID)を挙げることができる。
【0067】
更に、PON受信部204は、フレームのヘッダ部分を読みとることにより、受信したフレームがデータフレームであるか、或いは、制御フレームであるかを判定する。
上記判定の結果、受信したフレームがデータフレームであれば、PON受信部204はそのフレームをデータ中継処理部207に送る。データ中継処理部207は、データ送信部208に対する送信制御などの所定の中継処理を行い、処理後のフレームは、データ振り分け部23に入力される。
【0068】
また、上記判定の結果、受信したフレームが制御フレームであれば、PON受信部204はそのフレームを制御信号処理部206に転送する。制御信号処理部206は、制御フレームの内容に基づいて処理を行う。例えば、制御フレームが上り方向の送信許可を示すグラントフレームであれば、制御信号処理部206は、グラントフレームに基づいて、上り方向の送出タイミングとデータ量をデータ中継処理部207に指示する。
【0069】
データ振り分け部23が上り方向に出力するデータフレームは、データ受信部209により受信され、データ中継処理部207に転送される。
転送されたデータフレームは、データ中継処理部207内のバッファメモリに一旦蓄積され、その上りデータ量が制御信号処理部206に通知される。制御信号処理部206は、PON送信部205に対して送信制御を行い、所定のタイミングでバッファメモリに蓄積されている上りのデータフレームをPON送信部205に出力させる。
【0070】
また、制御信号処理部206は、通知されたバッファメモリ内のデータ蓄積量に基づいてレポートフレームを作成し、PON送信部205に出力させる。
PON送信部205が出力する上りフレームは、光送信部203において波長λ1でかつ伝送レートR1の上り光信号に変換され、合分波部201からPON回線L1に送出される。
【0071】
なお、本実施形態では、子局機能部21のデータ中継処理部207の上りバッファ(例えば、送信権を得る際の優先度が異なる複数のキュー)として、少なくともPON回線L2での上り方向の伝送レートR3にPON回線L1でのレポート送信からグラント受信までに要する最大時間を乗じた程度のバッファ容量を有するものを採用することが好ましい。
上段PONでの上り光信号の伝送レートR1(=10G)が、下段PONでの上り信号の伝送レートR3(=1G)よりも高い構成であれば、上段PONでの分岐数を多くしても、ユーザ当たりの上りの帯域を有効に確保できるようになる。
【0072】
また、本実施形態では、子局機能部21のデータ中継処理部207の下りバッファ(例えば、送信権を得る際の優先度が異なる複数のキュー)として、所定の時間(親局が各子局へ送信を継続する時間)にわたって各PON回線L1,L2での下り方向の伝送レートR2,R4の差を吸収できる程度のバッファ容量を有するものを採用することが好ましい。
上段PONでの下り光信号の伝送レートR2(=10G)が、下段PONでの下り信号の伝送レートR4(=1G)よりも高い構成であれば、上段PONでの分岐数を多くしても、ユーザ当たりの下りの帯域を有効に確保できるようになる。
【0073】
中継装置20に搭載された機能部21,22のうち、親局機能部22は、下段PONのOLTを構成する機能部分であり、上位側から下位側に向かって順に、データ受信部211、データ送信部212、データ中継処理部213、制御信号処理部214、PON送信部215、PON受信部216、光送信部(E/O変換部)217、光受信部(O/E変換部)218、合分波部219及びOLT機能制御部220を備えている。
【0074】
図3において、データ振り分け部23が下り方向に出力する下りのデータフレームは、データ受信部211により受信され、データ中継処理部213に送られる。
データ中継処理部213は、PON送信部215に下りのデータフレームを渡し、このフレームは、光送信部217において波長λ4でかつ伝送レートR4〔Gbps〕の下り光信号に変換され、合分波部219を介してPON回線L2に送出される。
【0075】
PON回線L2の子局装置(
図4)から上り方向に送信された、波長λ3でかつ伝送レートR3〔Gbps〕の上り光信号は、合分波部219を通過して光受信部218に到達する。
光受信部218は、受信した光信号を電気信号に変換する光電変換素子と、変換された電気信号を増幅する増幅器を有しており、この増幅器で増幅された電気信号はPON受信部216に入力される。
【0076】
PON受信部216は、入力された電気信号に対して、クロック及びデータ再生、物理層での復号化、及び、イーサネットフレームの再生などの処理を行う。
PON受信部216は、再生した上りフレームのヘッダ部分を読み取って、受信したフレームがデータフレームであるか、或いは、レポートフレームなどの制御フレームであるかを判定する。
【0077】
親局装置10の場合と同様に、上記制御フレームの例としては、例えば、MPCPフレームやOAMフレームなどがある。
中継装置20の親局機能部22が子局装置30に上りデータの送信開始時刻と送信許可量を指示する「グラント」や、子局装置30が中継装置20の親局機能部22に対して上り方向データの蓄積量に関する値を通知する「レポート」は、MPCPフレームの一種である。
【0078】
上記判定の結果、受信したフレームがデータフレームであれば、PON受信部216はそのフレームをデータ中継処理部213に送る。データ中継処理部213は、データフレームのヘッダ情報の変更やデータ送信部212に対する送信制御などの所定の中継処理を行い、処理後のフレームはデータ送信部212からデータ振り分け部23に入力される。
また、上記判定の結果、受信したフレームがレポートフレームであれば、PON受信部216はそのフレームを制御信号処理部214に転送する。
【0079】
制御信号処理部214は、上記レポートフレームに基づいて、所定の制御ロジックにて上り帯域の割り当て(DBA)を行う。
また、制御信号処理部214は、DBAの結果算出された送信許可量や送信元の子局装置30のLLIDを記したグラントフレームを生成して、PON送信部215に入れる。そして、グラントフレームは、光送信部217において波長λ4でかつ伝送レートR4〔Gbps〕の下り光信号に変換され、合分波部219からPON回線L2に送出される。
【0080】
制御信号処理部214は、下段PONの子局装置30を管理対象とするOAMフレームの生成と送受信も行う。
このOAMフレームには、IEEE802.3−2008のClause57に規定された通常のOAMフレームや、通信事業者が保守管理の目的で独自に定めた拡張OAMフレームなどがある。
【0081】
制御信号処理部214は、下段PONでのディスカバリによって子局装置30の登録が完了すると、その子局装置30との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立する。また、管理コマンドによる指示があれば、OAMループバック試験を実施する。
【0082】
〔中継装置の子局機能部に対する保守管理〕
中継装置20の子局機能部21に対する保守管理は、親局装置10が生成する前述の通常のOAMフレームや拡張OAMフレームによって行われる。これらのOAMフレームは、制御信号処理部206あるいは、ONU機能制御部210において終端され、データ振り分け部23には到達しない。従って、OAMフレームは、ONUが有する外部ポートへは中継されない。
すなわち、PON受信部204は、受信したフレームがOAMフレームの場合は、そのフレームを制御信号処理部206あるいは、ONU機能制御部210に渡す。
【0083】
制御信号処理部206は、OAMフレームを取得した場合、そのフレームの内容に従った所定の保守管理の処理を行う。
例えば、制御信号処理部206は、通常のOAMフレームのループバック開設要求を取得すると、ループバック開設応答を親局装置10に返し、その後、ループバック試験の実行要求を受信すると、所定の試験結果を記したループバック試験の応答フレームを親局装置10に返す。
【0084】
また、制御信号処理部206は、拡張OAMフレームを取得すると、そのフレームをONU機能制御部210へ渡し、ONU機能制御部210は、その内容に従った所定の保守管理の処理を、子局機能部21内の各部204〜209に対して行い、その処理結果を、制御信号処理部206を介して親局装置10に返す。
【0085】
〔中継装置の親局機能部に対する保守管理〕
中継装置20の親局機能部22に対する保守管理は、前述の「仮想的な制御系通信路」(
図7参照)を経由して送られる管理コマンドによって行われる。この管理コマンドは、OAMフレームやMPCPフレームなどの制御フレームのフォーマットをもたないデータフレームに格納されて転送されるため、PON受信部204はそれをデータフレームとして扱う。従って、管理コマンドを格納するデータフレームは、データ中継処理部207とデータ送信部208を経由してデータ振り分け部23に入力される。
【0086】
データ振り分け部23は、下りのデータフレームが管理コマンドを含むデータフレームか、或いは、それ以外のデータフレームかを判定し、その判定結果に応じて出力先を振り分ける。
すなわち、データ振り分け部23は、管理コマンドを含むデータフレームの場合には、それを装置制御部24に渡し、それ以外のデータフレームの場合には、それを親局機能部22のデータ受信部211に渡す。なお、この振り分けは、制御系通信路を経由してきたフレームか否かを振り分ける処理でもあり、例えば、フレーム中の宛先MACアドレスや宛先MACアドレスと送信元MACアドレスの組み合わせ、VLAN IDなどに基づいて行うことができる。
【0087】
装置制御部24は、管理コマンドに記された処理内容を読み取り、OLT機能制御部220に保守管理のための指令を出す。
OLT機能制御部110は、その指令に従って、中継装置20の親局機能部22内の各部211〜216に対して保守管理のための設定や処理を行う。
【0088】
例えば、OLT機能制御部220は、上記指令に従い、データ受信部211のフロー制御に関する設定、データ送信部212の送信レートのシェーピングに関する設定、データ中継処理部213のキューに関する設定やフレーム変換に関する設定、制御信号処理部214のDBAの動作パラメータに関する設定、PON送信部215とPON受信部216の暗号モードや動作タイミングに関する設定などを行う。また、装置内の各部の状態を取得し、装置制御部24に応答を返す。
【0089】
OLT機能制御部220は、上記保守管理を行った結果の応答が必要であれば、装置制御部24に応答を返す。
上記応答を受けた装置制御部24は、その応答内容の一部あるいは全部を格納した応答フレームを生成し、この応答フレームをデータ振り分け部23に入力する。この応答フレームは、データ中継処理部207においてデータフレームとして扱われるため、PON回線L1に送出されて親局装置10に返信される。
なお、装置制御部24は、中継装置の保守管理のための設定や処理も行う。例えば、装置や機能ブロックの再起動、装置の時計の設定、管理ポートのIPアドレスの設定、装置バージョンの表示、装置状態の表示、警報の表示、ログ情報の表示、などを行う。
【0090】
このように、本実施形態の光通信システムでは、管理ネットワークと繋がる親局装置10が、中継装置20との間に制御系通信路を設定することにより、OAMフレームとは異なるフォーマットの保守管理用のデータフレームを遠隔局である中継装置20の装置制御部24と交換できるようになっている。
なお、
図3の中継装置20では、装置制御部24の設定用ポートP2に接続した端末装置から、親局機能部22の保守管理を行うこともできる。
【0091】
〔子局装置の構成〕
図4は、子局装置30の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、子局装置30は、上位側(
図4の上側)から下位側に向かって順に、合分波部301、光受信部(O/E変換部)302、光送信部(E/O変換部)303、PON受信部304、PON送信部305、制御信号処理部306、データ中継処理部307、ユーザ側送信部308、ユーザ側受信部309及びONU機能制御部310を備えている。
【0092】
図4において、中継装置20からの下り方向に送信されて来る光信号は、合分波部301を通過して、光受信部302により電気信号に変換され、この電気信号はPON受信部304により受信される。
PON受信部304は、受信したフレームのヘッダ部分(プリアンブル部分を含む。)を読み取ることにより、当該フレームが自己宛であるか否かを判定する。
【0093】
上記判定の結果、自己宛であれば、PON受信部304は、当該フレームを取り込み、そうでなければ、当該フレームを廃棄する。
例えば、上記の宛先判定を行うためのヘッダ情報の例として、IEEE規格802.3−2008に記載のLLIDを挙げることができる。
【0094】
更に、PON受信部304は、フレームのヘッダ部分を読みとることにより、受信したフレームがデータフレームであるか、或いは、制御フレームであるかを判定する。
上記判定の結果、受信したフレームがデータフレームであれば、PON受信部304はそのフレームをデータ中継処理部307に送る。データ中継処理部307は、ユーザ側送信部308に対する送信制御などの所定の中継処理を行い、処理後のフレームは、ユーザネットワークに送出される。
【0095】
また、上記判定の結果、受信したフレームが制御フレームであれば、PON受信部304はそのフレームを制御信号処理部306に転送する。制御信号処理部306は、制御フレームの内容に基づいて処理を行う。例えば、制御フレームが上り方向の送信許可を示すグラントフレームであれば、グラントフレームに基づいて、上り方向の送出タイミングとデータ量をデータ中継処理部307に指示する。
【0096】
ユーザネットワークからの上りのデータフレームは、ユーザ側受信部309により受信され、データ中継処理部307に転送される。
転送されたデータフレームは、データ中継処理部307内のバッファメモリに一旦蓄積され、その上りデータ量が制御信号処理部306に通知される。制御信号処理部306は、PON送信部305に対して送信制御を行い、所定のタイミングでバッファメモリに蓄積されている上りのデータフレームをPON送信部305に出力させる。
【0097】
また、制御信号処理部306は、通知されたバッファメモリ内のデータ蓄積量に基づいてレポートフレームを作成し、PON送信部305に出力させる。
PON送信部305が出力する上りフレームは、光送信部303において波長λ3でかつ伝送レートR3の上り光信号に変換され、合分波部301からPON回線L2に送出される。
【0098】
〔子局装置に対する保守管理〕
子局装置30に対する保守管理は、基本的には、上段PONの親局装置10が中継装置20の子局機能部21に対して行う保守管理の場合と同様である。具体的には、上記保守管理は、中継装置20の親局機能部22が生成する前述の通常のOAMフレームや拡張OAMフレームによって行われる。
すなわち、PON受信部304は、受信したフレームがOAMフレームの場合は、そのフレームを制御信号処理部306に渡す。
【0099】
制御信号処理部306は、OAMフレームを取得した場合、そのフレームの内容に従った所定の保守管理の処理を行う。
例えば、制御信号処理部306は、通常のOAMフレームのループバック開設要求を取得すると、ループバック開設応答を中継装置20に返し、その後、ループバック試験の実行要求を受信すると、所定の試験結果を記したループバック試験の応答フレームを中継装置20に返す。
【0100】
また、制御信号処理部306は、拡張OAMフレームを取得すると、そのフレームをONU機能制御部310へ渡し、ONU機能制御部310は、その内容に従った所定の保守管理の処理を、自装置30内の各部304〜309に対して行い、その処理結果を、制御信号処理部306を介して中継装置20に返す。
【0101】
ここで、子局装置30が中継装置20に送信するOAMフレームは、中継装置20における親局機能部22の制御信号処理部214(
図3参照)にて終端されるため、データ振り分け部214には到達しない。子局装置30から送信される上り方向のOAMフレームは中継装置で終端され、中継装置20が有する外部ポートへは中継されない。
従って、中継装置20が配下の子局装置30とのOAMフレームの送受信により得られた情報(以下、「OAM情報」という。)が、受信されたOAMフレームのフォーマットのままで親局装置10に通知されることはない。
【0102】
そこで、本実施形態では、前述の管理コマンドを用いて、子局装置30のOAM情報を親局装置10に報告するようになっている。
すなわち、
図3を参照して、親局機能部22の制御信号処理部214は、OAMフレームの送受信によって子局装置30のOAM情報を取得すると、取得したOAM情報を、OLT機能制御部220を経由させて装置制御部24に渡す。
【0103】
装置制御部24は、OAM情報を取得すると、その情報の一部又は全部を含む管理フレームの応答を生成し、その応答フレームをデータ振り分け部23に入力する。
このOAM情報を含む応答フレームは、データ中継処理部207においてデータフレームとして扱われるため、PON回線L1に送出されて親局装置10に返信される。
【0104】
図2を参照して、親局装置10に到達した応答フレームは、光受信部108及びPON受信部106を経由してデータ中継処理部103に入力される。
データ中継処理部103に入力された応答フレームは、OLT機能制御部110に転送され、管理ネットワーク又は設定用ポートP1に接続された通信事業者の端末装置に送信される。
【0105】
〔データフレームへのタグ情報の付与〕
ところで、サービス提供者(通信事業者)と利用者の間のサービス水準に関する合意であるSLAには、QoSに関する条項が含まれており、利用者に対する課金と関連していることが一般的である。
例えば、データ転送区間における「最低保証帯域」、「最大許容帯域」、「最大遅延時間」、「最大遅延時間ゆらぎ」、「最大フレーム損失率」及び「最大サービス断時間」などがQoSの指標となり得る。
【0106】
また、電話、放送やデータ通信などのデータ種別ごとのトラフィックに応じて、QoSの指標が定義されるような場合もある。
従って、通信サービスの利用者に提供される通信のQoSは、SLAを満足していることが望ましく、提供される通信のQoSは、各利用者に対するSLAに応じて公平であることが望ましい。すなわち、同じSLAで契約している利用者については、提供されるQoSが同じであることが望ましい。
【0107】
或いは、より有利なSLAで契約している利用者には、より不利なSLAで契約している他の利用者に比べて、より良いQoSが提供されることが望ましい。ここで、QoSの良否を表す指標や、公平さを表す指標は、別途定義されている必要がある。
そして、親局装置10が、各フレームの送信元のユーザネットワークや送信元の子局装置30を特定できなければ、ユーザネットワークと上位ネットワーク間の通信のQoSの制御や、ユーザ間のQoSの公平さを保つ制御を行うことはできない。
【0108】
なお、ここでの「公平」とは、対価に応じたQoSを提供することを意味している。高い利用料を払った利用者により良いサービスを提供することが公平なのであって、利用料に関わらず、全ての利用者に同じQoSを提供することが公平なのではない。
このため、子局装置30のSLAを満足するQoSを達成するには、その前提として、中継装置20から取得する上りのデータフレームの下段PONにおける送信元が、どの子局装置30であるかを把握する必要がある。
【0109】
図1に示すような、中継装置20を介してPONが上下に階層的に接続され、上段PONの上り多重アクセス制御と下段PONの上り多重アクセス制御が独立して行われるシステムでは、子局装置30が親局装置10と直接的にリンクを確立していないことから、何らかの手段を講じないと、親局装置10は、上りのデータフレームの送信元がどの子局装置30であるかを特定できない。
【0110】
この点、イーサネットフレームの場合には、MACアドレスフィールドで送信元の特定を行うことができるが、例えばMACブリッジのようにユーザネットワークから中継されるイーサネットフレームに子局装置30のMACアドレスが格納されないようなフレームの中継方式が存在する。
【0111】
また、中継されるイーサネットフレームに子局装置30のMACアドレスが格納されるような中継方式については、MACアドレスは、48ビット長という長いデータ長であり、また、ネットワークの接続構成とは無関係であるので、MACアドレスを検索キーとして送信元を特定するには、例えば、CAM(Content Addressable Memory)を用いた検索回路などの特別な手段が必要であり、これを実装するとなると装置がコスト高となる。
【0112】
例えば、
図1に示す本実施形態の光通信システムでは、上段と下段のPONの分岐数を32とすると、システム全体の分岐数は最大で32×32=1024であり、48ビットという長いデータ領域を使用しなくても、子局装置30を十分に識別可能である。
そこで、本実施形態では、子局装置30のQoSを適切に制御できるようにすべく、中継装置20が、下段PONから受信した上りのデータフレームに、送信元の子局装置30を識別するための「タグ情報」を書き込んでから、上段PONに転送する。
具体的には、例えば、中継装置20のデータ中継処理部213が、上記タグ情報を上りのデータフレームに書き込む。
【0113】
親局装置10は、上りのデータフレームに書き込まれたタグ情報の値を利用して、上りのトラフィック量を子局装置30ごとに集計し、あるいは、子局装置ごとの優先度ごとに集計し、その集計データに基づいて、子局装置30に対するQoSを制御する。
例えば、親局装置10のデータ中継処理部103は、タグ情報の値で特定される子局装置30のトラフィック量が、その子局装置30に設定されたQoSを満足していない場合には、その子局装置30に優先的に上り帯域が割り当てられるように、DBAを動作させる。
【0114】
あるいは、上り通信を行っている全ての子局装置30に対して優先度の高いトラフィックを送信させるための帯域を割り当てた後に余剰の帯域が残っている場合に、子局装置30から要求された帯域を満足させることができなかった子局装置30に対して、最低保証帯域と割り当て済み帯域の差分の比に応じて余剰帯域を割り当てることもできる。
あるいは、上り通信を行っている全ての子局装置30に対して最低保証帯域を割り当てた後に余剰の帯域が残っている場合に、子局装置30から要求された帯域を満足させることができなかった子局装置30に対して、最低保証帯域の比に応じて余剰帯域を割り当てることもできる。
【0115】
あるいは、上り通信を行っている全ての子局装置30に対して最低保証帯域を割り当てた後に余剰の帯域が残っている場合に、子局装置30から要求された帯域を満足させることができなかった子局装置30に対して、最大許容帯域と最低保証帯域の差分の比に応じて余剰帯域を割り当てることもできる。
あるいは、上り通信を行っている全ての子局装置30に対して最低保証帯域を割り当てた後に余剰の帯域が残っている場合に、子局装置30から要求された帯域を満足させることができなかった子局装置30に対して、順番に最大許容帯域に達するまで余剰帯域を割り当てていくこともできる。
【0116】
図5は、上りデータフレームのフレーム形式の一例を示す図である。
図5(a)は、タグ情報を付与する前の通常のデータフレームを示し、
図5(b)は、子局装置用のタグ情報T1のみを付与した場合のデータフレームを示す。
また、
図5(c)は、子局装置用と中継装置用の2種類のタグ情報T1,T2を付与した場合のデータフレームを示す。
【0117】
図5(b)に示すように、子局装置用のタグ情報T1のみをデータフレームに付与する場合は、中継装置20は、例えば、MPCPにおいて付与した子局装置30の論理リンク番号(LLID)の値に基づいて、タグ情報T1の値を決定する。
すなわち、中継装置20は、下段PONで用いる子局装置30の論理リンク番号ごとにタグ情報T1の値を保持し、上りのデータフレームの所定領域にその値を書き込む。
【0118】
このタグ情報T1の書き込みは、データフレームの形式に応じて、フレームに既にあるフィールドに上書きしてもよいし、新たに設けたフィールドに書き込んでもよい。
この場合、親局装置10は、上りのデータフレームに含まれる1種類のタグ情報T1と、上段PONにおける中継装置20の論理リンク番号との組み合わせにより、当該データフレームの送信元である子局装置30を一意に特定することができる。
【0119】
もっとも、論理リンク番号を用いずに子局装置用のタグ情報T1のみで子局装置30を一意に特定することもできる。この場合には、異なる中継装置20が同じタグ情報T1の値を用いると、実際には異なる子局装置30が同じ子局装置として扱われ、親局装置10が子局装置30ごとのトラフィック量を適切に集計できなくなるおそれがあるので、各々の中継装置20が用いるタグ情報の値が重複しないよう、予め中継装置20に通知ないし設定しておくことが好ましい。
【0120】
図5(c)に示すように、子局装置用と中継装置用の2種類のタグ情報T1,T2をデータフレームに付与する場合は、中継装置20は、予め親局装置10から通知されたタグ情報T2を、上記タグ情報T1とともにデータフレームに書き込む。
このタグ情報T2の書き込みも、データフレームの形式に応じて、フレームに既にあるフィールドに上書きしてもよいし、新たに設けたフィールドに書き込んでもよい。
【0121】
この場合、親局装置10は、上りのデータフレームに含まれる2種類のタグ情報T1,T2の組み合わせにより、当該データフレームの送信元である子局装置30を一意に特定することができる。
このように、2種類のタグ情報T1,T2が付与される場合は、論理リンク番号を利用せずとも、その2種類のタグ情報T1,T2の値によって子局装置30を一意に特定できるので、子局装置用のタグ情報T1の値を重複させないための通知ないし設定を、中継装置20に対して行う必要はない。
【0122】
親局装置10は、子局装置30ごとに設定されたSLAに応じて、上位ネットワークへのトラフィック量を制御する。例えば、通信を行っている子局装置30に対して、SLAに定められた最低保証帯域分の帯域を割り当てた後に余剰の帯域があれば、最大保証帯域の比に応じて、余剰帯域を子局装置30に割り振る制御を行う。
親局装置10における子局装置30とSLAの紐付けは、タグ情報T1と上段PONの論理リンク番号の組みに関連させて各子局装置30に対するSLAを親局装置10内に設定しておくことができる。
【0123】
あるいは、タグ情報T1とT2の組みに関連させて、各子局装置30に対するSLAを親局装置10内に設定しておくことができる。あるいは、T1がシステム内で重複していない場合には、タグ情報T1に関連させて各子局装置30に対するSLAを親局装置10内に設定しておくことができる。
なお、親局装置10は、上りのデータフレームを上位ネットワークに転送する際に、タグ情報T1,T2の書き換えや削除を行ってもよい。
【0124】
親局装置10による上り送信スケジューリング(帯域割当)は、具体的には、例えば次のようにして行われる。
親局装置10は、上りフレームの優先度に対応させた複数のキューを有し、フレームの優先度に基づいて複数のキューのいずれかに上りフレームをキューイングする。そして、親局装置10は、上位ネットワーク側へ、優先度の高いキューにキューイングされたフレームから送信したり、キューごとに設けられた重み付けの配分に従って、空でないキューから順にフレームを送信したりする。あるいは、それらを組み合わせた送信順序の決定方法もある。
【0125】
データフレームの優先度は、例えば、フレーム中の特定のフィールドから決定することができる。IPv4フレームのヘッダ内のTosフィールド、IPv6フレームのヘッダ内のTCフィールド、またはIEEE Std 802.1Q
TM-2011に規定のPCPフィールドが、その特定のフィールドに該当する。
親局装置10は、これらのフレーム中の優先度フィールドを参照して、子局装置30ごとに優先度別キューへフレームを振り分けることができ、優先度別キューごとに上りの送信スケジューリングを行うことができる。
【0126】
この場合、例えば、電話、放送、データ通信などのデータ種別ごとに優先度を分けて、遅延に敏感な電話のトラフィックに高い優先度を割り当てて、電話のトラフィックを優先して中継させることができる。
【0127】
〔光通信システムの効果〕
以上の通り、本実施形態の光通信システムによれば、中継装置20が、自装置から送信する上りフレームの送信については、親局装置10が行う上り多重アクセス制御に従い、自装置が受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うので、
図1に示すような、1つの親局装置10を頂点として複数の中継装置20を接続する上段PONと、その中継装置20の配下に更に複数の子局装置30を接続する下段PONとを備えた、多段接続の光通信システムを構成できる。
【0128】
このため、PON固有の伝送距離が上段PONの分と下段PONの分を加算した値になるので、親局装置10と子局装置30の間の距離を長くすることができる。
また、PON固有の分岐数については、上段PONの分と下段PONの分とを乗算した値になるので、光通信システム全体の分岐数を多くすることできる。
【0129】
また、下段PONが多くなった場合でも、親局装置10が1つあれば足りるので、光通信システム全体のコストを抑えることができる。この場合、親局装置10の上位ネットワークとのインタフェースも1つで足りるので、上位ネットワークを含めた光通信システム全体のコストも抑えることができる。
更に、1つの下段PON当たりに中継装置20が1台あればよいので、この点からも、光通信システム全体のコストを抑えることができる。
【0130】
一方、前述の特許文献2のような、10Gと1Gの伝送レートが混在するマルチレートPONにおいて、1Gで伝送が行われる場合のリンクのスループットは、最大の伝送レートである10Gのみで時分割多重アクセスを行う場合のリンクのスループットよりも小さい。
例えば、上記マルチレートPONで、半分の時間を10Gでかつ残り半分の時間を1Gで時分割多重される場合を考えると、この場合のリンクのスループットは5,5Gbpsであり、全時間を10Gで時分割多重するリンクのスループットよりも小さい。
【0131】
この点、本実施形態の光通信システムでは、上段PONを10G−EONとしかつ下段PONを1G−EPONとした階層構造になっているので、1つのPONにおいて上り方向の伝送レートが混在する特許文献2のマルチレートPONに比べて、システム全体の上り方向の帯域利用効率を向上できるとう利点がある。
【0132】
本発明の光通信システムによれば、中継装置20が、上りのデータフレームにタグ情報T1,T2(T1のみでもよい。)を付与し、親局装置10が、そのデータフレームに含まれるタグ情報T1,T2(T1のみでもよい。)に基づいて、上りのトラフィック量を子局装置30ごとにあるいは子局装置ごとの優先度ごとに集計する。
従って、親局装置10は、集計したトラフィック量に応じた、SLAに見合うQoSを子局装置30ごとに設定でき、下段PONの子局装置30のSLAを確実に達成することができる。
【0133】
また、本発明の光通信システムによれば、親局装置10が、仮想的な制御系通信路を設定し、OAMとは異なるフォーマットの管理用のデータフレームを中継装置20との間で送受信可能であり、中継装置20が、親局装置10から管理フレームのメッセージを受信した場合に、子局装置30とのOAMフレームの送受信によって得られたOAM情報を含む管理用のデータフレームの応答を、親局装置10に送信するようになっている。
このため、下段PONの子局装置30の保守管理についても、上段PONの親局装置10から簡単に行うことができる。
【0134】
〔中継装置の変形例〕
図6は、中継装置20の変形例を示すブロック図である。
図6に示す変形例に係る中継装置20が、上述の実施形態に係る中継装置20(
図3)と異なる点は、装置制御部24が、ONU機能制御部210とも繋がっており、親局装置10から取得する管理コマンドに従って、ONU機能制御部210に対しても保守管理の指令を行える点にある。
【0135】
すなわち、この場合、親局装置10は、中継装置20の子局機能を担う子局機能部21の設定情報についても、管理コマンドに含めることができる。
また、中継装置20の装置制御部24は、上記管理フレームに含まれる設定情報に従って、ONU機能制御部210に対して子局機能の設定処理の指令を発する。
【0136】
従って、変形例に係る中継装置20を採用すれば、親局装置10との間で送受信するOAMフレームでは行えない中継装置20の子局機能の設定についても、親局装置10を経由した遠隔操作によって行えるようになる。
【0137】
逆に、変形例に係る中継装置20を採用すれば、親局装置10との間で送受信するOAMフレームを用いてONU機能制御部210から、装置制御部24に対して保守管理の指令を行うこともできる。
このため、例えば、設置当初の中継装置20であっても、その装置制御部24に対して、IPアドレスなどのネットワークアドレスの設定などの操作を、親局装置10を経由した遠隔操作で行うことができる。なお、設置当初の中継装置20にはIPアドレスなどのネットワークアドレスが設定されていないことがあり、この場合には、仮想的な制御系通信路内にTelnetやSSHなどのセッションを確立することができない。従って、変形例に係る中継装置20を採用しない場合には設置場所において設定用ポートP2からネットワークアドレスを設定する必要がある。
【0138】
〔その他の変形例〕
本発明の権利範囲は、上述の実施形態(変形例を含む。)ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲内のすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、上段と下段の通信網がいずれもPONである場合を例示したが、上段又は下段若しくは双方のネットワークが、同軸ケーブル(Coax)を使用したCDN(Coaxial Distribution Network )やHFC(Hybrid Fiber-Coaxial Network)であってもよい。
【0139】
一般に、CDNは、親局装置であるCLT(Coax Line Terminal)と、子局装置である複数のCNU(Coax Network Unit )を分岐した同軸ケーブルにて1対多に接続したネットワークよりなる。
また、CDNシステムにおいても、CNUの登録や上り方向の多重アクセス制御を行うために、IEEE Std 802.3
TM-2008に規定のMPCPと類似のアクセス制御が使用される。すなわち、CDNとPONは、伝送媒体こそ異なるものの、システム内の論理的な動作は同じになるので、本発明を適用できる。
【0140】
このように、上段通信網と下段通信網を構成する通信回線は、光ファイバに限られるものではなく、同軸ケーブルであってもよいし、それ以外の有線回線であってもよいし、また無線回線であってよい。
【0141】
上述の実施形態の親局装置10と中継装置20の通信方式を一般化すると、これらの装置10,20は、配下の装置に対して上り多重アクセス制御を採用する通信装置であると言える。
ここで、上り多重アクセス制御とは、伝送に用いる媒体(搬送周波数)を時間領域で分割して複数の端末からアクセスさせるTDMA(Time Division Multiple Access)通信方式のことであり、PONやCDNで用いられるMPCPも、上り方向通信については上り多重アクセス制御の範疇に属する。
【0142】
従って、上述の実施形態の親局装置10は、上位網である第1通信網(多段PONにおける「上段PON」)において、複数の中継装置20に対して上り多重アクセス制御を行う通信装置であると言える。
また、上述の実施形態の中継装置20は、下位網である第2通信網(多段PONにおける「上段PON」)では親局として機能し、複数の中継装置に対して上り多重アクセス制御を行う通信装置であると言える。