(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質と、導電助剤と、水酸化ベリリウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種の水酸化物と、が溶媒に溶解又は分散されてなる正極スラリーを正極集電体に塗布する工程を含む、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の電池用正極(以下、単に「正極」とも称する)を説明するため、まず、本実施形態の電池用正極を用いたリチウムイオン二次電池の例として、非水電解質リチウムイオン二次電池について説明する。しかし、以下の例のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
リチウムイオン二次電池の電解質の形態で区別した場合に、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0015】
図1は、扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。
図1に示すように、積層型電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極16と、電解質層17と、負極18とを積層した構成を有している。正極16は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極18は、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極18、電解質層17および正極16がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極16、電解質層17および負極18は、1つの単電池層19を構成する。したがって、
図1に示す積層型電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
【0016】
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体11a、11bには、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、
図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0017】
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0018】
図2は、双極型非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型電池」ともいう)10bの基本構成を模式的に表した断面概略図である。
図2に示す双極型電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0019】
図2に示すように、双極型電池10bの発電要素21は、集電体14の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体14の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
【0020】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型電池10bは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体14aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体14bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体14aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体14bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。
【0021】
さらに、
図2に示す双極型電池10bでは、正極側の最外層集電体14aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体14bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム29から導出している。
【0022】
図2に示す双極型電池10bにおいては、通常、各単電池層19の周囲にシール部31が設けられる。このシール部31は、電池内で隣り合う集電体14どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かようなシール部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10bが提供されうる。
【0023】
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止する必要がある。よって、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0024】
[マンガン溶出の抑制メカニズム]
リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池において、繰り返しの充放電による容量低下の原因は、リチウムマンガン複合酸化物からのマンガンの溶出による、電解液中のマンガン濃度の増加であると考えられている。リチウムマンガン複合酸化物からマンガンが溶出するメカニズムは、以下のように考察される。まず、下記式(1)に示すように、電解液中に含まれる電解質であるリチウム塩(ここでは、LiPF
6を例に挙げる)と水とが反応し、その結果フッ化水素(HF)が生成する。
【0026】
上記式(1)の反応を経て生成したフッ化水素は強酸であり、フッ化水素由来のプロトンは、正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物と、下記式(2)のように反応する。
【0028】
上記式(2)の反応により、正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物からマンガンが溶出し、その結果、負極上でマンガンが析出する。そして、これによって引き起こされる稼動リチウムの減少が原因となり、リチウムイオン二次電池の正極の電極容量が低下し、サイクル特性が低下するのである。
【0029】
このような問題に対し、特許文献1では、リチウムマンガン複合酸化物中のマンガンの一部がベリリウム、アルミニウム等の特定の元素で置換された複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池が提案されている。当該特定の元素は、電解液中においてその酸化物または水酸化物が不動態化する性質を有しており、この酸化物または水酸化物により、該複合酸化物の表面に強固な被膜が形成される。その結果、フッ化水素が該複合酸化物と接触しにくくなるため、マンガンの溶出が抑制されるというものである。
【0030】
しかしながら、上記の通り、本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1のリチウム二次電池は、電極容量が十分ではないことが見出された。そして、本発明者らは、この電極容量の低下について、以下のように考察した。
【0031】
特許文献1のリチウム二次電池に用いられる複合酸化物は、リチウムマンガン複合酸化物のマンガンの一部を特定の元素で置換している構造を有する。したがって、リチウムイオンを酸化還元する金属の量が少なくなり、その結果、正極の電極容量が低下すると考えられる。
【0032】
これに対し、本実施形態の電池用正極は、正極活物質層にリチウムマンガン複合酸化物と、アルカリ金属の水酸化物、第二族元素の水酸化物および遷移金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の水酸化物とを含む。かような構成とすることにより、上記式(1)の反応により生じたフッ化水素は、正極活物質層内に含まれる水酸化物と反応する。これにより、フッ化水素と正極活物質層内に含まれるリチウムマンガン複合酸化物との反応を抑制し、活物質からのマンガンの溶出を抑制することができる。その結果、マンガン溶出に起因する電極容量の低下を抑制し、また、サイクル特性の低下を抑えることができる。
【0033】
より詳細には、上記フッ化水素と正極活物質層に含まれる水酸化物との反応は、下記の式(3)によって表される。なお、下記の式(3)では、正極活物質層に含まれる水酸化物として水酸化リチウムを用いた場合の反応例を示す。
【0035】
このように、正極活物質層内では、水酸化物とフッ化水素とが反応し、フッ化リチウムと水が生成する。つまり、フッ化水素を消費することができる一方で、水酸化物とフッ化水素との反応により生じた水が電解質層へ移動し、電解質であるLiPF
6等と反応し、新たなフッ化水素が生成するというフッ化水素の生成サイクルが生じるようにも見える。
【0036】
しかしながら、本実施形態の電池用正極において、上記式(3)の反応により生成する水は、正極活物質層内に含まれ、かつフッ化水素との反応に関与しなかった水酸化物と水和物を形成することによって固定化される。よって、新たに生成した水は、電解質であるLiPF
6等との反応よりも、正極活物質層内での水酸化物との水和物の形成を優先的に起こす。すなわち、上記式(3)の反応により生成する水は、その生成反応が生じた箇所の近傍で捕捉されやすくなり、その結果、新たなフッ化水素の生成が抑制され、さらなるマンガンの溶出は抑制されるのである。
【0037】
図1を参照して説明した非双極型リチウムイオン二次電池中の正極16、および、
図2を参照して説明した双極型リチウムイオン二次電池中の集電体14と正極活物質層13とを組み合わせたものが、それぞれ本実施形態における電池用正極に相当する。このように、電池用正極は、各種のリチウムイオン二次電池中に適した構成で配設されるものであり、以下に詳述する構成を備えていればよい。
【0038】
以下、本実施形態の電池用正極について、詳細に説明する。
【0039】
[電池用正極]
本実施形態の電池用正極は、集電体と、該集電体上に形成された正極活物質層とを有する。以下、集電体および正極活物質層について詳細に説明する。
【0040】
(集電体)
電池用正極の集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。
【0041】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましく、アルミニウムがより好ましい。したがって、集電体としてアルミニウム箔を用いると特に好ましい。
【0042】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
【0043】
(正極活物質層)
正極活物質層は、正極活物質、導電助剤および特定の水酸化物を含み、必要に応じて、結着材(バインダ)、イオン伝導性ポリマー、電解液、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。また、正極活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。以下、正極活物質層を構成する各種材料について、説明する。
【0044】
(a)正極活物質
正極活物質層に含まれる正極活物質としては、コストや安全性に優れる、リチウムマンガン複合酸化物が使用される。リチウムマンガン複合酸化物は、リチウム、マンガンおよび酸素からなる複合酸化物であり、具体的には、例えば、LiMn
2O
4等のスピネル構造のマンガン酸リチウム、LiMnO
2およびLi
2MnO
3等を挙げることができる。また、正極活物質として、上記のリチウムマンガン酸化物だけでなく、これらの材料におけるマンガン原子の一部が、他の金属原子で置換されてなる材料を含んでいてもよい。このとき、マンガン原子を置換する原子は、アルミニウム、マグネシウム、コバルト、クロム等から選択される元素の原子である。なお、電極容量の観点から、マンガン原子を置換する原子は、リチウムの酸化還元に寄与することができる元素の原子であると好ましい。また、上記リチウムマンガン酸化物の中でも、LiMn
2O
4等のスピネル構造を持つものが好ましい。また、例えば、エネルギー密度に優れるLiCoO
2などのリチウムコバルト酸化物や、コストや安全性に優れるLiFeO
2などのリチウム鉄酸化物をリチウムマンガン複合酸化物と組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(b)導電助剤
正極活物質層は、導電助剤を含む。導電助剤とは、正極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック(カーボン粉末)、グラファイト、炭素繊維などの導電性炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むことで、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性が向上しうる。
【0046】
正極活物質層中に含まれる導電助剤の量は、正極活物質層の導電性を良好にすることができる量であれば特に限定されるものではない。しかしながら、以下で詳述する所定の水酸化物を除いた正極活物質層の総量に対して、好ましくは0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
(c)水酸化物
正極活物質層に含まれる水酸化物は、アルカリ金属の水酸化物、第二族元素の水酸化物および遷移金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の水酸化物である。これらの水酸化物の中から一種を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。上記水酸化物は、アルカリ金属の水酸化物および第二族元素の水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種であるとより好ましい。アルカリ金属の水酸化物または第二族元素の水酸化物は、フッ化水素との反応性が特に高く、マンガンの溶出をより効率的に抑制することができる。
【0048】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)が挙げられる。
【0049】
第二族元素の水酸化物としては、水酸化ベリリウム(Be(OH)
2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)
2)、水酸化バリウム(Ba(OH)
2)が挙げられる。
【0050】
遷移金属の水酸化物としては、例えば、水酸化鉄(Fe(OH)
3)、水酸化クロム(Cr(OH)
3)、水酸化コバルト(Co(OH)
2)、水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)
4)、水酸化ロジウム(Rh(OH)
3)、水酸化パラジウム(Pd(OH)
2)、水酸化セリウム(Ce(OH)
3)、水酸化銅(Cu(OH)
2)等が挙げられる。
【0051】
なお、上記水酸化物の例示において示される括弧内の化学式は一例を示すものであり、これに限定されず、他の価数の水酸化物もまた含まれる。
【0052】
上記水酸化物の中でも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種であると好ましい。かような化合物を用いると、水酸化物とフッ化水素との反応による生成物が、リチウムイオン二次電池内の材料と反応しにくい。したがって、セル特性に与える影響を小さくしながらフッ化水素と水酸化物との反応を進行させることができる。
【0053】
さらに上記水酸化物の中でも、水酸化リチウムを用いるとより好ましい。水酸化リチウムとフッ化水素との反応による生成物は、従来の電池反応においても生成する物質であるため、セル特性に対する影響をさらに小さくしながら、フッ化水素との反応を進行させることができる。
【0054】
また、遷移金属の水酸化物としては、水酸化ニッケル、水酸化銅が好ましく用いられる。これらの水酸化物は、取り扱いが容易であるため、電池用正極の製造がより容易になる。
【0055】
なお、上記式(3)の反応は、正極活物質層内のいずれの箇所でも起こりうるが、水酸化物は、正極活物質層内に含まれる導電助剤の表面に付着しているか、または導電助剤の内部に包含された態様であるとより好ましい。導電助剤としては、上記の通り、導電性炭素材料のように、多孔質であり、比表面積の大きいものが用いられる。したがって、かような導電助剤に付着しているか、またはその内部に包含された水酸化物は、電解液との接触がより容易となる。その結果、フッ化水素と水酸化物とがより容易に接触し、フッ化水素と水酸化物との反応がより進行しやすくなる。また、このとき、上記式(3)の反応に起因して、導電助剤の表面または内部に、水酸化物だけではなく、フッ化物がさらに存在する態様となる。かような態様により、水酸化物とフッ化水素との反応が、導電助剤の表面、または内部で起こりうることが示される。また、このような態様であれば、フッ化物が導電助剤に吸着されたような形態となるため、フッ化物が他の材料と相互作用しにくくなり、その結果、電池性能の低下を抑制することができるという効果を有する。
【0056】
また、水酸化物が正極活物質の表面に存在する場合、上記式(3)の反応に起因して、正極活物質の表面に、水酸化物だけでなく、フッ化物がさらに存在する態様となる。かような態様により、水酸化物とフッ化水素との反応が、正極活物質表面でも起こりうることが示される。また、このような態様であれば、フッ化物によって正極活性物質の表面に被膜が形成されるため、正極活物質と電解液中に含まれる物質との副反応(電池反応に寄与しない反応)を抑制することができる。
【0057】
正極活物質層中に含まれる水酸化物の量は、上記所定の水酸化物を除いた正極活物質層を構成する材料の総量に対し、0.05〜2重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5重量%、特に好ましくは0.2〜1重量%である。水酸化物の添加量を2重量%以下とすることにより、正極活物質層中に含まれる他の材料に対する、水酸化物の影響を小さくすることができる。さらに、1重量%以下とすることにより、正極活物質層に含まれる結着材のゲル化を抑制する効果が極めて高くなり、正極の性能がより向上するだけでなく、正極の製造をより容易にすることができる。一方、水酸化物の添加量を0.05重量%以上とすることにより、フッ化水素と水酸化物とが十分に反応してフッ化水素が消費される結果、フッ化水素に起因するマンガンの溶出を抑制することができる。さらに、0.2重量%以上とすることにより、フッ化水素と水酸化物との反応が進行しやすくなり、フッ化水素に起因するマンガン溶出を効果的に抑制することができる。
【0058】
(d)結着材(バインダ)
正極活物質層は、結着材(バインダ)を含んでいてもよい。
【0059】
用いられる結着材としては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適な結着材は、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらの結着材は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0060】
正極活物質層中に含まれる結着材の量は、正極活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではない。しかしながら、好ましくは上記所定の水酸化物を除いた正極活物質層の総量に対して、0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0061】
(e)その他の添加剤
正極活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、電解質、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0062】
電解質(リチウム塩)としては、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3等が挙げられる。
【0063】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0064】
正極活物質層に含まれる水酸化物以外の成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0065】
(f)電池用正極の製造方法
上記正極活物質、導電助剤および水酸化物を含む正極活物質層を有する電池用正極は、以下の手法によって作製される。すなわち、本実施形態の電池用正極の製造方法は、正極活物質、導電助剤および上記所定の水酸化物が溶媒に溶解又は分散されてなる正極スラリーを正極集電体に塗布する工程を含んでいる。具体的には、正極活物質、導電助剤および上記所定の水酸化物、さらに必要に応じて用いられる結着材等を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の適当な溶媒に溶解又は分散させて正極スラリーを得る。得られた正極スラリーを正極集電体にダイコーター等を用いて塗布し、乾燥することにより、電池用正極を得ることができる。かような工程を経て電池用正極を製造すると、正極活物質層中に、正極活物質、導電助剤および水酸化物が均一に分散しやすくなり、フッ化水素と水酸化物との反応が起こりやすくなる。その結果、マンガンの溶出を効果的に抑制することができる。なお、電池用電極が上記製造方法によって作製されたものであることは、正極活物質層内に、所定の水酸化物と、フッ化水素との反応によって生じるフッ化物が存在することにより確認することができる。
【0066】
このとき、予め導電助剤および水酸化物を溶媒に分散させておき、その後、これを用いて正極活物質や結着材とともにスラリーを調整するとよい。このように、導電助剤と水酸化物を予め混合しておくと、導電助剤と水酸化物とがより均一に混合され、水酸化物が導電助剤の表面に付着、またはその内部に包含されやすくなる。その結果、水酸化物と電解液との接触が容易となり、フッ化水素と水酸化物とがより反応しやすくなる。
【0067】
以下では、正極以外のリチウムイオン二次電池の構成について説明する。
【0068】
[電池用負極]
上記のリチウムイオン二次電池の負極は、集電体と、該集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層とを有する。
【0069】
集電体は、正極の集電体と同様の構成を採るため、その説明を省略する。
【0070】
負極活物質層は、非双極型及び双極型リチウムイオン二次電池のいずれに関しても、特に限定されず、公知の負極活物質層が適用可能である。
【0071】
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて、電子伝導性を高めるための導電助剤、結着材(バインダ)、電解質(イオン伝導性高分子、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤を含む。これらの負極活物質以外の構成材料に関しては、正極活物質層の活物質以外の構成材料と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0072】
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウムチタン複合酸化物などのリチウム遷移金属複合酸化物、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。
【0073】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解質としては、かような機能を発揮できるものであれば特に制限されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられる。
【0074】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、電解質となるリチウム塩としては、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiTaF
6、LiCF
3SO
3等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0075】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質とに分類される。
【0076】
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0077】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーにリチウム塩が溶解してなる構成を有し、有機溶媒を含まない。したがって、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上し得る。
【0078】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0079】
これらの電解質は、一種単独であってもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。
【0080】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンやポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。
【0081】
[シール部]
シール部31は、
図2に示す双極型電池10bに特有の部材であり、電解質層17の漏れを防止する目的で単電池層19の外周部に配置されている。このほかにも、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。
図2に示す形態において、シール部31は、隣接する2つの単電池層19を構成するそれぞれの集電体11で挟持され、電解質層17の基材であるセパレータの外周縁部を貫通するように、単電池層19の外周部に配置されている。シール部31の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0082】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。また、
図2に示すように最外層集電体(14a、14b)を延長することにより集電板としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
【0083】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体(11または14)と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0084】
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
【0085】
なお、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0086】
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図3は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0087】
図3に示すように、扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した
図1および
図2に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極活物質層13、電解質層17および負極活物質層15を含む単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0088】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0089】
また、
図3に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59とをそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、
図3に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0090】
上記リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【実施例】
【0091】
上記電池用正極を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。
【0092】
(
参考例1)
・負極の作製
負極活物質としてのグラファイト、および結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、95:5(重量比)でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて負極スラリーを作製した。ダイコーターを用いて前記負極スラリーを銅箔に塗布して乾燥させ、負極を得た。
【0093】
・正極の作製
導電助剤としてのカーボン粉末および水酸化リチウムをNMPに分散させて混合した。正極活物質としてのマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)粉末、結着材としてのPVdF、前述のカーボン粉末をそれぞれ90:5:5(重量比)でNMPに分散させて正極スラリーを作製した。なお、水酸化リチウムは、前記の正極材料(マンガン酸リチウム粉末、PVdF、カーボン粉末)の全量に対し0.2wt%を添加した。この正極スラリーを、アルミニウム箔にダイコーターにて塗布し、乾燥させて正極を得た。その際、正極の塗布量を、正極の容量が負極の容量の90%となる量とした。
【0094】
・電池の作製
セパレータとして、ポリエチレン製微多孔質膜(厚さ25μm)を準備した。また、電解液として、1M LiPF
6/(EC:DEC)(EC:DEC=1:1 体積比)を準備した。
【0095】
上記で作製した正極、負極およびセパレータをそれぞれ1枚ずつ準備し、負極/セパレータ/正極の順に積層して、発電要素を作製した。
【0096】
得られた発電要素を外装であるアルミラミネートシート製のバッグ中に載置し、上記で準備した電解液を注液した。真空条件下において、両電極に接続された電流取り出しタブが導出するようにアルミラミネートシート製バッグの開口部を封止し、試験用セルを完成させた。
【0097】
(
参考例2)
水酸化物として、水酸化リチウムを正極材料(正極活物質層を構成する材料)の全量に対し0.5wt%添加したこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0098】
(
参考例3)
水酸化物として、水酸化リチウムを正極材料(正極活物質層を構成する材料)の全量に対し1wt%添加したこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0099】
(
参考例4)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化ナトリウムを用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0100】
(
参考例5)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化カリウムを用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0101】
(実施例
1)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化ベリリウムを用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0102】
(
参考例6)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化マグネシウムを用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0103】
(実施例
2)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化カルシウムを用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0104】
(
参考例7)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化銅を用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0105】
(
参考例8)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化ニッケルを用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0106】
(比較例1)
水酸化物を添加しなかったこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0107】
(比較例2)
水酸化物として、水酸化リチウムに代えて水酸化亜鉛を用いたこと以外は、
参考例1と同様の方法で試験用セルを作製した。
【0108】
[評価]
各実施例
、各参考例および各比較例で得られた試験用セルについて、25℃で0.2C/4.2V、CC/CV充電を7時間行った。次いで、10分間の休止後、0.2C CC放電で2.5Vまで放電を行なった。
【0109】
その後、55℃で1C/4.2V、CC/CV充電(0.015Cカット)、1C CC放電(2.5V電圧カット)のサイクルを繰り返してサイクル試験を行なった。このサイクル試験において、1サイクル目の放電容量に対する、300サイクル目における放電容量の値を容量維持率として算出した。
【0110】
【表1】
【0111】
上記表1から明らかなように、正極活物質層において、アルカリ金属の水酸化物、第二族元素の水酸化物または遷移金属の水酸化物のいずれかを含む実施例
および参考例の試験用セルは、容量維持率に優れていることが分かる。
【0112】
また、
参考例1〜3の比較により、同じ水酸化物を用いた場合、添加量が多いほど、容量維持率が高くなることが示された。