特許第6015356号(P6015356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015356
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】電子回路ユニット及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H05K7/14 P
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-240260(P2012-240260)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-90120(P2014-90120A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146776
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 昭則
(72)【発明者】
【氏名】星野 良憲
(72)【発明者】
【氏名】福家 和也
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−343061(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0086456(US,A1)
【文献】 実開平2−62787(JP,U)
【文献】 特開平1−268098(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0025000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルフに挿入されて収容される電子回路ユニット本体と、
電子回路ユニット本体の挿入方向に見て前記電子回路ユニット本体の手前側に設けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸まわりに回転可能に設けられるテコ部材であって、前記第1回転軸まわりの第1方向に回転された際、前記シェルフの一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの奥側に付勢し、前記第1方向とは逆の前記第1回転軸まわりの第2方向に回転された際、前記シェルフの他の一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの手前側に付勢するテコ部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記第1回転軸と平行に延在する第2回転軸と、
前記第2回転軸まわりに回転可能に設けられるロック部材であって、前記電子回路ユニット本体の前記シェルフへの挿入が完了された状態において前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転が不能となるように前記テコ部材をロックし、前記テコ部材のロック状態において前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際、前記テコ部材のロック状態を解除しつつ、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与えるロック部材と
前記テコ部材と前記ロック部材との間で弾性力が伝達される態様で設けられ、前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転するように前記ロック部材を付勢する弾性部材とを備える、電子回路ユニット。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記電子回路ユニット本体の上面と下面の間の高さ範囲に設けられる、請求項1に記載の電子回路ユニット。
【請求項3】
前記第1回転軸、前記第2回転軸及び前記ロック部材は、前記電子回路ユニット本体の手前側における幅方向端部に配置される、請求項1又は2に記載の電子回路ユニット。
【請求項4】
前記電子回路ユニット本体に設けられ、前記テコ部材が前記第1回転軸まわりの第1方向に閉位置まで回転された際、前記ロック部材と係合して前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転を不能とする第1ロック部材受け部とを備え、
前記テコ部材は、前記第1回転軸から長手方向に延在するテコ操作部を備えると共に、前記電子回路ユニット本体の手前側に延在する前面部の上面又は下面に平行な面内であって、前記電子回路ユニット本体の前面部の上面よりも上方又は前記電子回路ユニット本体の前面部の下面よりも下方に位置する面内で回転し、前記テコ部材が前記閉位置にあるとき、前記テコ操作部は、先端部を除いて、前記電子回路ユニット本体の前面部よりも奥側に位置する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
【請求項5】
シェルフに挿入されて収容される電子回路ユニット本体と、
電子回路ユニット本体の挿入方向に見て前記電子回路ユニット本体の手前側に設けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸まわりに回転可能に設けられるテコ部材であって、前記第1回転軸まわりの第1方向に回転された際、前記シェルフの一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの奥側に付勢し、前記第1方向とは逆の前記第1回転軸まわりの第2方向に回転された際、前記シェルフの他の一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの手前側に付勢するテコ部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記第1回転軸と平行に延在する第2回転軸と、
前記第2回転軸まわりに回転可能に設けられるロック部材であって、前記電子回路ユニット本体の前記シェルフへの挿入が完了された状態において前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転が不能となるように前記テコ部材をロックし、前記テコ部材のロック状態において前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際、前記テコ部材のロック状態を解除しつつ、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与えるロック部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記テコ部材のロック状態において前記ロック部材が前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際に、前記ロック部材と当接することで、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与える力伝達部材を備える、電子回路ユニット。
【請求項6】
前記ロック部材は、切欠きを有する操作部を備える、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
【請求項7】
シェルフと、
シェルフに挿入されて収容される電子回路ユニット本体と、
電子回路ユニット本体の挿入方向に見て前記電子回路ユニット本体の手前側に設けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸まわりに回転可能に設けられるテコ部材であって、前記第1回転軸まわりの第1方向に回転された際、前記シェルフの一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの奥側に付勢し、前記第1方向とは逆の前記第1回転軸まわりの第2方向に回転された際、前記シェルフの他の一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの手前側に付勢するテコ部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記第1回転軸と平行に延在する第2回転軸と、
前記第2回転軸まわりに回転可能に設けられるロック部材であって、前記電子回路ユニット本体の前記シェルフへの挿入が完了された状態において前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転が不能となるように前記テコ部材をロックし、前記テコ部材のロック状態において前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際、前記テコ部材のロック状態を解除しつつ、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与えるロック部材と
前記テコ部材と前記ロック部材との間で弾性力が伝達される態様で設けられ、前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転するように前記ロック部材を付勢する弾性部材とを備える、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子回路ユニット及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子回路ユニットをシェルフに対して挿抜するための電子回路ユニットの挿抜機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。この挿抜機構によれば、シェルフは溝部を備え、電子回路ユニットは、先端に係合部を備える回動可能なレバーと、レバーに接続され、先端に係合部を備える回動可能なストッパーと、レバーとストッパーを収容し、ストッパーの係合部と係合することができる係合面を内部に備える収容部とを有し、レバーを回動してシェルフの溝部とレバーの係合部とが係合することによってシェルフは電子回路ユニットにロックされ、ロックを解除する力が電子回路ユニットに作用されても収容部の係合面とストッパーの係合部との係合は解除されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-53749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の構成では、電子回路ユニットのシェルフへの挿入が完了された状態から電子回路ユニットを取り外す際の初期操作における操作性が良くないという問題がある。具体的には、先ず、ストッパーを反時計回りに回動させて係合を解除し、その後、その回動位置でストッパーを保持しつつ(手を離すとストッパーがバネの付勢力で時計回りに回動して戻るため)、レバーを時計方向に回動させる必要があり、操作性が良くないという問題がある。
【0005】
そこで、開示の技術は、電子回路ユニットをシェルフから取り外す際の操作性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一局面によれば、シェルフに挿入されて収容される電子回路ユニット本体と、
電子回路ユニット本体の挿入方向に見て前記電子回路ユニット本体の手前側に設けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸まわりに回転可能に設けられるテコ部材であって、前記第1回転軸まわりの第1方向に回転された際、前記シェルフの一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの奥側に付勢し、前記第1方向とは逆の前記第1回転軸まわりの第2方向に回転された際、前記シェルフの他の一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの手前側に付勢するテコ部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記第1回転軸と平行に延在する第2回転軸と、
前記第2回転軸まわりに回転可能に設けられるロック部材であって、前記電子回路ユニット本体の前記シェルフへの挿入が完了された状態において前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転が不能となるように前記テコ部材をロックし、前記テコ部材のロック状態において前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際、前記テコ部材のロック状態を解除しつつ、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与えるロック部材と
前記テコ部材と前記ロック部材との間で弾性力が伝達される態様で設けられ、前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転するように前記ロック部材を付勢する弾性部材とを備える、電子回路ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、電子回路ユニットをシェルフから取り外す際の操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子回路ユニット1を搭載した通信装置5の一例の外観を示す図である。
図2図2は、図1に示す通信装置5において1つの電子回路ユニット1が取り外された状態を示す図である。
図3】挿抜レバー30を備えた電子回路ユニット1の一例の外観を示す図である。
図4】挿抜レバー30の一例を示す分解斜視図である。
図5図4のA部の分解斜視図である。
図6】1つの電子回路ユニット1を手前側から視た正面図である。
図7】テコ部材320が閉位置にある状態の電子回路ユニット1の一部を示す斜視図である。
図8】テコ部材320が閉位置にあるときの挿抜レバー30の状態を示す斜視図である。
図9】ロック部材340の第1ロック状態を解除する際の操作状態の一例を示す斜視図である。
図10】第1ロック状態解除時(又はその直後)の操作状態の一例を示す斜視図である。
図11】テコ部材320の開操作を開始し始める際の操作状態の一例を示す斜視図である。
図12】テコ部材320が開位置に至る前の挿抜レバー30の状態を示す斜視図である。
図13】テコ部材320が開位置にあるときの挿抜レバー30の状態を示す斜視図である。
図14A】開操作前のテコ部材320が閉位置にあるときの状態を模式的に上面視で示す図である。
図14B】開操作中のテコ部材320が開位置に至る前(テコ力発生位置にあるとき)の状態を模式的に上面視で示す図である。
図14C】開操作終了時のテコ部材320が開位置にあるときの状態を模式的に上面視で示す図である。
図15A】閉操作前のテコ部材320が開位置にあるときの状態を模式的に上面視で示す図である。
図15B】閉操作中のテコ部材320が閉位置に至る前(テコ力発生位置にあるとき)の状態を模式的に上面視で示す図である。
図15C】閉操作終了時のテコ部材320が閉位置にあるときの状態を模式的に上面視で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、電子回路ユニット1を搭載した通信装置5の一例の外観を示す図である。通信装置5は、多数の電子回路ユニット1を含んでよい。通信装置5は、シェルフ100を備える。図1に示す例では、多数の電子回路ユニット1が、シェルフ100に挿入されて収容されている。通信装置5は、例えば光伝送装置であるが、他の通信装置であってもよい。
【0011】
図2は、図1に示す通信装置5において1つの電子回路ユニット1が取り外された状態を示す図である。各電子回路ユニット1は、後述する挿入レバー30を操作することによってシェルフ100に対して挿抜可能である。
【0012】
以下では、説明の都合上、図2のZ方向を上下方向と称し(図2の上側を上方向と称し)、Y方向を奥行き方向と称し、X方向を幅方向と称する。Y方向は、電子回路ユニット1の挿抜方向に対応する。Y方向のY1側を手前側(前方向)とし、Y方向のY2側を奥側とする。
【0013】
図3は、挿抜レバー30を備えた電子回路ユニット1の一例の外観を示す図である。ここでは、ある1つの電子回路ユニット1について説明するが、他の電子回路ユニット1についても同様であってよい。
【0014】
電子回路ユニット1は、電子回路ユニット本体10と、挿抜レバー30とを含む。
【0015】
電子回路ユニット本体10は、底板40と、コネクタ42と、前面部(フロントパネル)50と、被ロック部材60とを含む。
【0016】
底板40は、電子回路を備える。例えば、底板40は、電子回路基板自体であってもよいし、電子回路基板を保持する板材(例えば板金部材)であってもよい。
【0017】
コネクタ42は、電子回路ユニット本体10の奥側で底板40の端部に取付けられてよい。コネクタ42は、例えば、シェルフ100のバックボード上のコネクタ(図示せず)と嵌合される。コネクタ42は、底板40の電子回路とバックボード側の電子回路とを接続する機能を有する。
【0018】
前面部50は、電子回路ユニット本体10の手前側を画成する。前面部50は、コネクタ42とは反対側の底板40の端部に取り付けられてよい。前面部50には、図3に示すように、多数のポート53やアラームランプ54等が設定されてよい。図3に示す例では、前面部50は、多数のポート53を備える多ポート接続部品(フロントアクセス部)を構成する。尚、図3に示す例では、前面部50は、上下方向の面(XZ面)、即ち手前側の面(ポート53等が設けられる面)に加えて、上面(XY面)を備える。
【0019】
被ロック部材60は、挿抜レバー30のロック部材340と協動して、挿抜レバー30のテコ部材320のロック状態を形成する。被ロック部材60の詳細は、図5を参照して詳説する。
【0020】
尚、図3に示す例では、電子回路ユニット本体10は、幅方向の左右端部において奥行き方向に延在する側部52を備える。側部52の手前側は、前面部50と接続される。
【0021】
挿抜レバー30は、電子回路ユニット本体10の手前側(即ち前面部50側)に設けられる。挿抜レバー30は、電子回路ユニット本体10の幅方向両側にそれぞれ設けられる。即ち、挿抜レバー30は、幅方向で左右対となって電子回路ユニット本体10に設けられる。対の左右の挿抜レバー30は、左右対称の構成であってよい。
【0022】
図4は、挿抜レバー30の一例を示す分解斜視図である。図4に示す例では、図3の左側の挿抜レバー30が示されている。図4に示す例では、挿抜レバー30は、電子回路ユニット本体10の側部52の手前側に設けられる。但し、前面部50を幅方向に延長して前面部50の幅方向の端部に挿抜レバー30が設けられてもよい。
【0023】
挿抜レバー30は、レバー軸310と、テコ部材320と、ロック回転軸330と、ロック部材340とを含む。
【0024】
レバー軸310は、テコ部材320の回転軸(第1回転軸)を画成する。レバー軸310は、図4に示すように、電子回路ユニット本体10の手前側端部(図4に示す例では、側部52の手前側)に設けられる。レバー軸310は、上下方向に延在する。レバー軸310は、図4に示すように、電子回路ユニット本体10の手前側端部を上下方向に貫通する態様で設けられてよく、上下方向のそれぞれの端部に、上側プレート370及びテコ部材320が取り付けられる。尚、レバー軸310は、電子回路ユニット本体10に対して回転可能に保持されてもよいし(即ちレバー軸310自身が回転してもよいし)、或いは、電子回路ユニット本体10に対して固定されてもよい。前者の場合、上側プレート370及びテコ部材320は、レバー軸310に対して固定されてよく、後者の場合、上側プレート370及びテコ部材320は、レバー軸310に対して回転可能に取り付けられてよい。
【0025】
テコ部材320は、レバー軸310により画成される第1回転軸まわりに回転可能に設けられる。テコ部材320は、第1方向R1と第2方向R2の双方に回転可能である。ここでは、第1方向R1は、挿抜レバー30を閉じる方向(電子回路ユニット1を挿入する際のテコ部材320の回転方向)に対応し、第2方向R2は、挿抜レバー30を開く方向(電子回路ユニット1を取り外す際のテコ部材320の回転方向)に対応するものとする。第1方向R1及び第2方向R2は、ロック部材340の回転方向を説明する際にも同様に使用する。尚、上面視での時計方向又は反時計方向で考えたとき、第1方向R1及び第2方向R2は、左右の挿抜レバー30で逆となる。
【0026】
図4に示す例では、テコ部材320は、電子回路ユニット本体10の手前側の下面10b(図3参照)よりも下方に位置する面内で回転するように、配置される。但し、テコ部材320は、電子回路ユニット本体10の手前側の上面10a(図3参照)よりも上方に位置する面内で回転するように、配置されてもよい。尚、電子回路ユニット本体10の手前側の上面10aは、前面部50の上面及び/又は側部52の手前側の上面により画成されてよい。また、電子回路ユニット本体10の手前側の下面10bは、前面部50の下面及び/又は側部52の手前側の下面又は底板40の手前側の下面により画成されてよい。
【0027】
テコ部材320は、好ましくは、電子回路ユニット1の上下方向の厚さを低減する観点から、板厚の小さい板材により構成される。テコ部材320は、金属材料により形成されてもよいし、樹脂により形成されてもよい。テコ部材320は、ユーザにより操作されるテコ操作部322を備える。テコ操作部322は、任意の形状であってよいが、図4に示すように、操作性を考慮して、一定方向に延在し、先端部323(回転中心に対して遠い側の端部)にて手前側に屈曲する形状であってよい。テコ部材320の回転中心側端部には、レバー軸310が取り付けられる穴328が形成される。テコ部材320は、穴328を中心とした径方向で考えるとき、テコ部材320のテコ操作部322よりも径方向内側に、第1及び第2当接部324,326を備える。第1及び第2当接部324,326は、後述のテコ力を発生させる際の支点となる。尚、図4に示す例では、第1及び第2当接部324,326は、穴328に関してテコ操作部322とは略逆側に配置されている。テコ部材320は、また、ロック回転軸330が貫通される穴329を備える。
【0028】
尚、図4に示す例では、テコ部材320の回転中心側端部に対向して上側プレート370が設けられている。上側プレート370は、電子回路ユニット本体10の手前側の上面10aに略対応した高さに配置される。上側プレート370は、テコ部材320の回転中心側端部と協動して、ロック回転軸330(後述の力伝達部材372についても同様)を上下から保持する。但し、上側プレート370は省略されてもよい。この場合、ロック回転軸330(後述の力伝達部材372についても同様)は片持ち構造とされてもよい。
【0029】
ロック回転軸330は、ロック部材340の回転軸(第2回転軸)を画成する。ロック回転軸330は、テコ部材320に設けられる。ロック回転軸330は、レバー軸310に平行に設けられる。即ち、ロック回転軸330は、レバー軸310と同様、上下方向に延在する。ロック回転軸330は、上側プレート370及びテコ部材320に取り付けられてよく、上側プレート370及びテコ部材320の間に延在する。ロック回転軸330まわりにはロック部材340が回転可能に設けられる。尚、図4に示す例では、ロック回転軸330は、上側プレート370及びテコ部材320に対して固定されている。例えば、ロック回転軸330は、上側プレート370及びテコ部材320に対してかしめ等により固定されてよい。但し、ロック回転軸330は、上側プレート370及びテコ部材320に対して回転可能に支持されてもよい(即ちロック回転軸330自身が回転してもよい)。ロック回転軸330が上側プレート370及びテコ部材320に対して回転可能である場合は、ロック部材340がロック回転軸330に固定されればよい。尚、ロック回転軸330は、図4に示すように、2部材により構成されてもよい。
【0030】
ロック部材340は、ロック回転軸330により画成される第2回転軸まわりに回転可能に設けられる。ロック部材340は、第1方向R1と第2方向R2の双方に回転可能である。尚、ロック回転軸330は、上述の如く、テコ部材320に設けられる。従って、ロック部材340は、テコ部材320に対して回転可能な構成となる。尚、ロック部材340の回転方向に関する第1方向R1及び第2方向R2は、時計回り及び反時計回りの観点から、上述したテコ部材320の回転方向に関する第1方向R1及び第2方向R2と同様である。例えば、図示の左側の挿抜レバー30については、第1方向R1は、上面視で反時計回りであり、第2方向R2は時計回りである。
【0031】
ロック部材340は、好ましくは、電子回路ユニット1の上下方向の厚さの増加要因とならないように、図4に示すように、電子回路ユニット本体10の上面10aと下面10b(図3参照)の間の高さ範囲に設けられる。即ち、ロック部材340は、電子回路ユニット本体10の上面10aより下方で且つ下面10bよりも上方に設けられる。図4に示す例では、ロック部材340は、電子回路ユニット本体10の上下方向の中央位置を占める態様で設けられている。
【0032】
ロック部材340は、ロック用のフック部342を備える。フック部342は、ロック回転軸330まわりの回転方向に対して係止力を発生できる形状を有する。フック部342のロック機能については後述する。尚、図4に示す例では、ロック部材340は、ロック回転軸330が挿通される穴341を備える。
【0033】
ロック部材340は、ユーザにより操作される操作部344を備える。操作部344は、任意の形状を有してよいが、ユーザの単一の指による操作性を高める観点(人間工学的な観点)から、切欠き346を有してよい。切欠き346は、後述の如く、アラームランプ54(図3及び図7参照)の視認性を高める機能をも果たす。
【0034】
挿抜レバー30は、好ましくは、力伝達部材372を備える。力伝達部材372は、テコ部材320に設けられる。力伝達部材372は、ロック部材340をロック回転軸330まわりに第2方向R2に回転させるためにロック部材340に付与される力をテコ部材320に伝達する機能を有する。図4に示す例では、力伝達部材372は、ロック回転軸330と平行に上下方向に延在し、上側プレート370及びテコ部材320に対して固定されている。ロック部材340は、ロック回転軸330まわりに第2方向R2に回転される際に力伝達部材372に当接する当接部348を備える。尚、力伝達部材372は、後述の如く、ロック部材340の第1方向R1の回転を係止する機能を有してもよい。
【0035】
挿抜レバー30は、好ましくは、弾性部材350を備える。弾性部材350は、ロック部材340がロック回転軸330まわりの第1方向R1に回転するようにロック部材340を付勢する。弾性部材350は、テコ部材320とロック部材340との間で弾性力が伝達される態様で設けられる。図8に示す例では、弾性部材350は、小型の線ばねであり、例えば一端が力伝達部材372に保持され(図8参照)、他端がロック部材340に保持される。この場合、例えばユーザの操作によりロック部材340が第2方向R2にテコ部材320に対して回転されると、弾性部材350が弾性変形し、その際の弾性力(第1方向R1にロック部材340を回転させようとする力の反力)をロック回転軸330を介してテコ部材320が受ける。かかる弾性力が伝達されると、テコ部材320はレバー軸310まわりで第2方向R2に回転するように付勢されることになる。尚、この弾性力の伝達による付勢力が、テコ部材320をレバー軸310まわりで第2方向R2に回転する初動を起こさせることができるときは、上述した力伝達部材372(及び当接部348)は省略されてもよい。
【0036】
図5は、図4のA部の分解斜視図である。被ロック部材60は、電子回路ユニット本体10に設けられる。被ロック部材60は、ロック部材340と協動してロック機能を実現するように設けられる。図5に示す例では、被ロック部材60は、電子回路ユニット本体10の側部52の手前側の面を覆うように設けられる。被ロック部材60は、側部52に対して嵌合により固定されてもよいし、他の結合方法で固定されてもよい。また、被ロック部材60は、側部52にスクリュー800(図12参照)により締結されてもよい。尚、被ロック部材60の前面68には、図5に示すように、スクリュー800は挿通される穴69を有してもよい。また、被ロック部材60は、図5に示すように、レバー軸310が挿通される穴66を有してもよい。
【0037】
被ロック部材60は、第1ロック部材受け部62と、第2ロック部材受け部64とを備える。尚、被ロック部材60は、2部材から構成されてもよく、それぞれの部材が、第1ロック部材受け部62及び第2ロック部材受け部64を備えてもよい。
【0038】
第1ロック部材受け部62は、ロック部材340のフック部342が引っ掛かる形状を有する。フック部342が第1ロック部材受け部62に引っ掛かった状態(以下、「第1ロック状態」という)では、テコ部材320の第2方向R2の回転が阻止される。第1ロック状態は、テコ部材320が閉位置(電子回路ユニット1が挿入完了したときのテコ部材320の位置)まで第1方向R1に回転されたときに形成される。第1ロック状態の解除は、ユーザの操作によりロック部材340を第2方向R2に回転させることにより実現される。即ち、ユーザの操作によりロック部材340を第2方向R2に回転させると、ロック部材340のフック部342が第1ロック部材受け部62から外れ、第1ロック状態が解除される。
【0039】
第2ロック部材受け部64は、ロック部材340のフック部342が引っ掛かる形状を有する。フック部342が第2ロック部材受け部64に引っ掛かった状態(以下、「第2ロック状態」という)では、テコ部材320の第2方向R2の回転が阻止される。第2ロック状態は、テコ部材320が開位置まで第2方向R2に回転されたときに形成される。他言すると、第2ロック部材受け部64は、テコ部材320の最大開度(開位置)を定める。尚、第2ロック状態においては、テコ部材320の第1方向R1の回転は許容される。
【0040】
図6は、1つの電子回路ユニット1を手前側から視た正面図である。図6では、前面部50におけるポート53等の搭載可能なエリアが点線範囲Y1で示されている。
【0041】
図6に示すように、挿抜レバー30は、実質的に、テコ部材320の厚み分のみしか、電子回路ユニット1の全体の厚さに影響しないので、電子回路ユニット1の薄型化を阻害せずに成立することができる。尚、図6に示す例では、テコ部材320の回転範囲よりも奥側では、底板40は、テコ部材320の板厚分に相当する高さだけ下方にオフセットされている。従って、図6に示す例では、電子回路ユニット1の厚さを定める下面は、テコ部材320及び底板40により画成されている。
【0042】
また、挿抜レバー30は、電子回路ユニット本体10の幅方向の左右の端部に設けられるので、点線範囲Y1にて示すように、前面部50におけるポート53等の搭載エリアに大きな制約を与えることなく成立することができる。特に、ロック部材340は、上述の如く、電子回路ユニット本体10の幅方向の端部において、電子回路ユニット本体10の上面10aより下方で且つ下面10bよりも上方のスペース内に配置されるので、電子回路ユニット1の薄型化を阻害せず、且つ、前面部50におけるポート53等の搭載エリアをも阻害しない。
【0043】
図7は、テコ部材320が閉位置にある状態の電子回路ユニット1の一部(左側手前の端部)を示す斜視図である。テコ部材320が閉位置にある状態は、電子回路ユニット1がシェルフ100内に挿入完了した状態に対応する。尚、図7では、シェルフ100の図示は省略されている。
【0044】
図7に示すように、テコ部材320が閉位置にある状態では、テコ部材320のテコ操作部322は、先端部323を除いて、電子回路ユニット本体10の前面部50によりも奥側に位置する。即ち、テコ操作部322は、先端部323を除いて、電子回路ユニット本体10の前面部50よりも手前側に突出しない。尚、図7に示す例では、テコ操作部322の先端部323は、手前側に屈曲しているため、電子回路ユニット本体10の前面部50によりも手前側に僅かに突出している。しかしながら、テコ操作部322の先端部323についても、前面部50によりも奥側に位置するように構成してもよい。このように、テコ部材320が閉位置にある状態において、テコ部材320のテコ操作部322の略全体が電子回路ユニット本体10の前面部50よりも手前側に突出しないので、前面部50におけるポート53(フロントアクセス部)へのアクセス性を良好に維持することができる。即ち、テコ部材320が閉位置にある状態において、テコ部材320のテコ操作部322が電子回路ユニット本体10の前面部50よりも手前側に突出していると、テコ操作部322が邪魔になり、前面部50におけるポート53へのアクセス性が悪くなる。これに対して、図7に示す例によれば、テコ部材320が閉位置にある状態において、テコ部材320のテコ操作部322の略全体が電子回路ユニット本体10の前面部50よりも奥側に収容されるので、前面部50におけるポート53へのアクセス性が良好となる。
【0045】
また、図7に示すように、幅方向の左側の手前から斜め方向から視た場合でも、アラームランプ54は、ロック部材340の切欠き346を介して視認することができる。即ち、ロック部材340において、かかる切欠き346が存在しない場合は、幅方向の左側の手前側から斜め方向に前面部50を視たときに、アラームランプ54(特に最も左側のアラームランプ54)が見え難くなる。これに対して、ロック部材340に切欠き346を設けることにより、テコ部材320が閉位置にある状態におけるアラームランプ54の視認性が向上する。尚、ロック部材340の切欠き346は、第1ロック状態を解除する際の操作性を向上する点からも有利な構成である。即ち、ロック部材340に切欠き346が存在することによって、切欠き346に指を収めて操作すればよいこと(又は図9に示すように、切欠き346の角に指を当てて操作すればよいこと)をユーザに直感的に理解してもらうことができる。また、切欠き346は指との良好な引っ掛かりをももたらすので、ロック部材340の第2方向R2への回転操作の操作性を高めることができる。但し、ロック部材340は、かかる切欠き346を備えない構成であってもよい。
【0046】
次に、図8乃至図13を参照して、電子回路ユニット1を取り外す際の挿抜レバー30の操作と共に、各操作段階における挿抜レバー30の状態等を説明する。
【0047】
図8は、テコ部材320が閉位置にあるときの挿抜レバー30の状態を示す斜視図である。図9は、ロック部材340の第1ロック状態を解除する際の操作状態の一例を示す斜視図である。図10は、第1ロック状態の解除時(又はその直後)の操作状態の一例を示す斜視図である。但し、図10においては、操作中の指の図示は省略されている。図11は、テコ部材320の開操作を開始し始める際の操作状態の一例を示す斜視図である。図12は、テコ部材320が開位置に至る前の挿抜レバー30の状態を示す斜視図である。図13は、テコ部材320が開位置にあるとき(テコ部材320の開操作終了時)の挿抜レバー30の状態を示す斜視図である。尚、図8乃至図13においては、前面部50におけるポート53等の図示は省略されている。
【0048】
前提として、図8に示すテコ部材320が閉位置にある状態(電子回路ユニット1がシェルフ100内に完全に挿入されている状態)では、ロック部材340は、弾性部材350による付勢力(第1方向R1への回転方向の付勢力)より第1ロック状態(図8では見えないが、フック部342が第1ロック部材受け部62に引っ掛かった状態)である。
【0049】
図8に示す状態から、電子回路ユニット1を取り外す場合、ユーザは、先ず、図9に示すように、指によりロック部材340を手前側に引く(第2方向R2に回転させる)。この操作により、ロック部材340は、第1ロック状態が解除され(フック部342が第1ロック部材受け部62から外れ)、ロック部材340は、弾性部材350からの付勢力に抗して、ロック回転軸330まわりに第2方向R2に回転する。このとき、付勢力(弾性部材350の弾性力)が比較的大きいと、ロック部材340の回転と共に、テコ部材320が閉位置から開方向(第2方向R2)に回転する。尚、ここでは、付勢力(弾性部材350の弾性力)が非常に小さく、テコ部材320が閉位置から開方向に実質的に回転していないものとする。
【0050】
図9に示す状態から、ユーザがロック部材340を更に手前側に引くと(第2方向R2に回転させると)、図10に示すように、ロック部材340の当接部348が力伝達部材372に当たる。尚、第1ロック状態からロック部材340の当接部348が力伝達部材372に当たるまでのロック部材340の回転角(第2方向R2の回転角)は任意であるが、非常に小さい角度であってもよい。
【0051】
図10に示す状態から、ユーザがロック部材340を更に手前側に引くと(第2方向R2に回転させると)、図10において力Fにて模式的に示すように、ロック部材340に付与される力が力伝達部材372を介してテコ部材320に伝達される。これにより、テコ部材320にレバー軸310まわりの回転モーメント(第2方向R2に働く回転モーメント)が作用し、テコ部材320は、閉位置から開方向(第2方向R2)に回転(初動)し、図11に示す状態となる。
【0052】
図11に示す状態では、テコ部材320のテコ操作部322は、先端部323以外の部分についても、電子回路ユニット本体10の前面部50よりも手前側に突出している。従って、ユーザは、テコ部材320のテコ操作部322を容易に操作することができる。図11に示す状態になると、ユーザは、ロック部材340の操作を終了し、テコ部材320の操作(テコ部材320を開く操作)を開始する(ロック部材340からテコ部材320へと操作対象を変更する)。
【0053】
尚、ロック部材340の操作終了に伴って、ユーザがロック部材340から指を離すと、ロック部材340は、弾性部材350からの付勢力により第1方向R1に付勢されているため、第1方向R1に回転しようとする。この際、ロック部材340は、力伝達部材372の一部に当たることで、第1方向R1への回転が規制されてよい(図14B等参照)。また、ロック部材340の操作終了に伴って、ユーザがロック部材340から指を離すと、ロック部材340は、弾性部材350の付勢力により第1方向R1に回転するが、このとき、テコ部材320はもはや閉位置には位置しないので、ロック部材340が第1ロック部材受け部62に再び引っ掛かることはない。従って、ユーザは、ロック部材340から指を離してから、テコ部材320を持つことができる(即ち、ロック部材340を指で押さえながらテコ部材320に持ちかえる必要がない)。
【0054】
図11に示す状態から、ユーザがテコ部材320のテコ操作部322を手前に引くと(第2方向R2に回転させると)、図12に示す状態を経由して、図13に示すように、テコ部材320がレバー軸310まわりに第2方向R2に開位置まで回転する。テコ部材320が開位置まで回転されると、フック部342が第2ロック部材受け部64(図13において透視により破線で図示)に引っ掛かり、それ以上のテコ部材320の第2方向R2の回転が規制される第2ロック状態が実現される。
【0055】
このようにして、テコ部材320が閉位置から開位置へと第2方向R2に回転されると、その間のテコ部材320によるテコ作用により、電子回路ユニット1のコネクタ42が外れ、電子回路ユニット1が手前側に引き出される。この原理について、図14A乃至図14Cを参照して説明する。
【0056】
図14A乃至図14Cは、テコ部材320が閉位置から開位置へと第2方向R2に回転される際のテコ作用の原理の説明図である。図14A乃至図14Cは、テコ部材320が閉位置から開位置へと第2方向R2に回転される際の各段階における、テコ部材320と、シェルフ100と、電子回路ユニット本体10、ロック部材340のフック部342と、被ロック部材60の第2ロック部材受け部64との位置関係を模式的に示す。図14Aは、テコ部材320が閉位置にあるとき(開操作開始時)の同関係を模式的に上面視で示す図である。図14Bは、テコ部材320が開位置に至る前(開操作中のテコ力発生位置にあるとき)の同関係を模式的に上面視で示す図である。図14Cは、テコ部材320が開位置にあるとき(開操作終了時)の同関係を模式的に上面視で示す図である。
【0057】
上述の如く、テコ部材320が閉位置にある状態(電子回路ユニット1がシェルフ100内に完全に挿入されている状態)では、図14Aに示すように、ロック部材340は、フック部342が第1ロック部材受け部62に引っ掛かった状態(第1ロック状態)である。また、電子回路ユニット1のコネクタ42は、バックボード上のコネクタ(図示せず)に嵌合された嵌合状態である。
【0058】
図14Aに示す状態から、上述の如くロック部材340を手前側に引けば、テコ部材320が手前側に突出する。その後、ユーザの操作によりテコ部材320が開位置へと第2方向R2に回転されると、図14Bに示すように、テコ部材320の第2当接部326がシェルフ100の部位101(図14Bに示す例では手前側の部位)に当接する。従って、この状態でテコ部材320に第2方向R2に回転させる力を与えると、第2当接部326が支点となり、レバー軸310が作用点となり、テコ操作部322が力点となって、テコ力がレバー軸310に作用する。このテコ力は、電子回路ユニット本体10を手前側に引き出す力F2を生み、シェルフ100のバックボード上のコネクタとのコネクタ42の嵌合状態を解除しつつ、電子回路ユニット1をシェルフ100の手前側に引き出す。即ち、テコ比によりコネクタ嵌合力以上の力F2が生成され、これにより、コネクタ42の嵌合状態が解除されつつ、電子回路ユニット1がシェルフ100の手前側に引き出される。
【0059】
図14Bに示す状態から、テコ部材320が開位置まで回転されると、図14Cに示すように、電子回路ユニット1がシェルフ100の手前側に更に引き出され、電子回路ユニット1をシェルフ100から取り外し可能な状態となる。尚、電子回路ユニット1は、基本的には、コネクタ42の嵌合状態が完全に解除された後は、電子回路ユニット1をシェルフ100から取り外し可能な状態となる。従って、テコ部材320が開位置まで回転されるまでに、取り外し可能な状態が形成されればよい。尚、図14Cに示すように、テコ部材320が開位置まで回転されると、フック部342が第2ロック部材受け部64に引っ掛かり、第2ロック状態が実現される。
【0060】
他方、テコ部材320が開位置から閉位置へと第1方向R1に回転されると、その間のテコ部材320によるテコ作用により、電子回路ユニット1のコネクタ42がシェルフ100のバックボード上のコネクタ(図示せず)に嵌合され、電子回路ユニット1がシェルフ100の奥側に押し込まれる。この原理について、図15A乃至図15Cを参照して説明する。
【0061】
図15A乃至図15Cは、テコ部材320が開位置から閉位置へと第1方向R1に回転される際のテコ作用の原理の説明図である。図15A乃至図15Cは、テコ部材320が開位置から閉位置へと第1方向R1に回転される際の各段階における、テコ部材320と、シェルフ100と、電子回路ユニット本体10、ロック部材340のフック部342と、被ロック部材60の第1ロック部材受け部62との位置関係を模式的に示す。図15Aは、テコ部材320が開位置にあるとき(閉操作開始時)の同関係を模式的に上面視で示す図である。図15Bは、テコ部材320が閉位置に至る前(閉操作中のテコ力発生位置にあるとき)の同関係を模式的に上面視で示す図である。図15Cは、テコ部材320が閉位置にあるとき(閉操作終了時)の同関係を模式的に上面視で示す図である。
【0062】
テコ部材320が開位置から閉位置へと第1方向R1に回転させる操作は、電子回路ユニット1をシェルフ100内にある程度まで(電子回路ユニット1のコネクタ42がシェルフ100のバックボード上のコネクタに当たる程度まで挿入してから実行されてよい。尚、上述の如く、テコ部材320が開位置にある状態では、図15Aに示すように、ロック部材340は、フック部342が第2ロック部材受け部64に引っ掛かった状態(第2ロック状態)であるが、テコ部材320の第1方向R1への回転は許容される。
【0063】
図15Aに示す状態から、ユーザの操作によりテコ部材320が閉位置へと第1方向R1に回転されると、図15Bに示すように、テコ部材320の第1当接部324がシェルフ100の部位102(図15Bに示す例では奥側の部位)に当接する。従って、この状態でテコ部材320に第1方向R1に回転させる力を与えると、第1当接部324が支点となり、レバー軸310が作用点となり、テコ操作部322が力点となって、テコ力がレバー軸310に作用する。このテコ力は、電子回路ユニット本体10を奥側に押し込む力F3を生み、シェルフ100のバックボード上のコネクタに対するコネクタ42の嵌合を開始させつつ、電子回路ユニット1をシェルフ100の奥側に押し込む。即ち、テコ比によりコネクタ嵌合を引き起こす力F3が生成され、これにより、コネクタ42の嵌合状態が形成されつつ、電子回路ユニット1がシェルフ100の奥側に押し込まれる。
【0064】
図15Bに示す状態から、テコ部材320が閉位置まで回転されると、図15Cに示すように、電子回路ユニット1がシェルフ100の奥側に更に押し込まれ、コネクタ42が嵌合状態となり、電子回路ユニット1がシェルフ100に対して固定される(即ち挿入完了となる)。この際、フック部342は、第1ロック部材受け部62を乗り越えて、第1ロック部材受け部62の奥側に引っ掛かることで、第1ロック状態が実現される。このように、電子回路ユニット1をシェルフ100内に挿入する操作の際は、ユーザによるロック部材340の直接的な操作は不要である。
【0065】
尚、テコ操作部322を閉位置まで回転させるとき、テコ操作部322は、上述の如く、先端部323を除き、電子回路ユニット本体10の前面部50よりも奥側に収容される(押し込まれる)。他方、テコ操作部322の先端部323は、手前側に屈曲しているため、図15Cに示すように、電子回路ユニット本体10の前面部50によりも手前側に僅かに突出する。従って、例えば部品公差等に起因して、テコ操作部32が前面部50よりも奥側に押しこんでも依然として第1ロック状態が実現されない場合であっても(又はコネクタ42が嵌合状態とならない場合であっても)、テコ操作部322の先端部323を更に押し込むことで、確実に第1ロック状態(及びコネクタ42の嵌合状態)を実現することができる。
【0066】
以上説明した電子回路ユニット1を挿抜する際の挿抜レバー30の操作方法は、操作性が良好であると共に、ユーザにとって非常に理解しやすいものである。例えば、ユーザが、ある1つの電子回路ユニット1をシェルフ100内から取り外したいとき、先ず、その電子回路ユニット1に係るロック部材340を手前側に引き、それにより手前側に突出したテコ部材320を開位置へと回せば、電子回路ユニット1をシェルフ100内から取り外すことができる。その際、ロック部材340からテコ部材320への手を持ちかえは、ロック部材340から手を離した後でテコ部材320を持つことで実現することができる(即ち、ロック部材340を保持しながらテコ部材320に持ちかえる必要がない)。具体的には、テコ部材320が閉位置から僅かに第2方向R2に回転した後は、再びユーザの操作によりテコ部材320が閉位置まで押し込まれない限り、ユーザがロック部材340から手を離しても、ロック部材340は第1ロック部材受け部62に再び引っ掛かることはない(即ち、ロック部材340は、弾性部材350の付勢力により第1方向R1に回転するものの、テコ部材320が閉位置から回転しているので、第1ロック部材受け部62に再び引っ掛かることはない)。
【0067】
また、ユーザが、ある1つの電子回路ユニット1をシェルフ100内から取り外したいとき、先ず、その電子回路ユニット1に係るロック部材340を手前側に引けば、テコ部材320が手前側に突出する(図11参照)。従って、ユーザは、突出したテコ部材320を手前に引けば(開位置へと回せば)、電子回路ユニット1をシェルフ100内から取り外すことができることを容易に理解することができる。具体的には、図1を参照すると理解しやすいように、テコ部材320が電子回路ユニット1の下面側又は上面側に配置される構成(図1に示す例ではテコ部材320が電子回路ユニット1の下面側に配置される構成)では、図1に示すような複数の電子回路ユニット1が積層されているとき、どのテコ部材320がどの電子回路ユニット1に対応しているのかを判断するのが困難である。他方、ロック部材340については、対応する電子回路ユニット本体10の上下方向の中央位置を占める態様で設けられているので、どのロック部材340がどの電子回路ユニット1に対応しているのかを判断するのが容易である。従って、ユーザが意図しない電子回路ユニット1を誤って取り外そうとしてしまうのを効果的に防止することができる。
【0068】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0069】
例えば、上述した実施例では、テコ部材320が、テコ力を発生させる際の支点となる第1及び第2当接部324,326を備えているが、上側プレート370が、同様のテコ力を発生させる際の支点となる第1及び第2当接部を備えてもよい。この場合、テコ部材320及び上側プレート370の双方が、それぞれ、第1及び第2当接部を備えてもよいし、テコ部材320及び上側プレート370のいずれか一方が、第1及び第2当接部を備えてもよい。或いは、上側プレート370及びテコ部材320の一方が、第1及び第2当接部324,326の一方を備え、上側プレート370及びテコ部材320の他方が、第1及び第2当接部324,326の他方を備えてもよい。いずれの場合も、第1及び第2当接部324,326の少なくともいずれか一方を有する上側プレート370は、テコ部材320と実質的に一体として機能するので、テコ部材320の一要素となる。このように、テコ部材320を構成するテコ操作部322と第1及び第2当接部324,326とは、同一の部材に設けられてもよいし、一体的に動作する2つ以上の部材に分散して設けられてもよい。
【0070】
また、上述した実施例では、力伝達部材372を備えているが、力伝達部材372は上述の如く省略されてもよい。この場合、テコ部材320の開閉操作中、ロック部材340は、力伝達部材372に代えて、フック部342が被ロック部材60の前面68に当接することで第1方向R1の回転が規制されてもよい。この場合、テコ部材320が開位置の直前まで開くと、被ロック部材60の前面68による規制が無くなり、ロック部材340が第1方向R1に回転する。これにより、フック部342が第2ロック部材受け部64に引っ掛かり、第2ロック状態が実現される。
【0071】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
[付記1]
シェルフに挿入されて収容される電子回路ユニット本体と、
電子回路ユニット本体の挿入方向に見て前記電子回路ユニット本体の手前側に設けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸まわりに回転可能に設けられるテコ部材であって、前記第1回転軸まわりの第1方向に回転された際、前記シェルフの一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの奥側に付勢し、前記第1方向とは逆の前記第1回転軸まわりの第2方向に回転された際、前記シェルフの他の一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの手前側に付勢するテコ部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記第1回転軸と平行に延在する第2回転軸と、
前記第2回転軸まわりに回転可能に設けられるロック部材であって、前記電子回路ユニット本体の前記シェルフへの挿入が完了された状態において前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転が不能となるように前記テコ部材をロックし、前記テコ部材のロック状態において前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際、前記テコ部材のロック状態を解除しつつ、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与えるロック部材とを備える、電子回路ユニット。
[付記2]
前記ロック部材は、前記電子回路ユニット本体の上面と下面の間の高さ範囲に設けられる、付記1に記載の電子回路ユニット。
[付記3]
前記ロック部材は、前記電子回路ユニット本体の上下方向の中央位置を占める態様で設けられる、付記1に記載の電子回路ユニット。
[付記4]
前記第1回転軸、前記第2回転軸及び前記ロック部材は、前記電子回路ユニット本体の手前側における幅方向端部に配置される、付記1〜3のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
[付記5]
前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転するように前記ロック部材を付勢する弾性部材を備える、付記1〜4のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
[付記6]
前記弾性部材は、前記テコ部材と前記ロック部材との間で弾性力が伝達される態様で設けられる、付記5に記載の電子回路ユニット。
[付記7]
前記電子回路ユニット本体に設けられ、前記テコ部材が前記第1回転軸まわりの第1方向に閉位置まで回転された際、前記弾性部材の付勢力により前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転する前記ロック部材と係合し、前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転を不能とする第1ロック部材受け部と、
前記電子回路ユニット本体に設けられ、前記テコ部材が前記第1回転軸まわりの第2方向に開位置まで回転された際、前記弾性部材の付勢力により前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転する前記ロック部材と係合し、前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の更なる回転を不能とする第2ロック部材受け部とを備える、付記5又は6に記載の電子回路ユニット。
[付記8]
前記電子回路ユニット本体に設けられ、前記テコ部材が前記第1回転軸まわりの第1方向に閉位置まで回転された際、前記ロック部材と係合して前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転を不能とする第1ロック部材受け部を備え、
前記テコ部材は、前記第1回転軸から長手方向に延在するテコ操作部を備えると共に、前記電子回路ユニット本体の手前側に延在する前面部の上面又は下面に平行な面内であって、前記電子回路ユニット本体の前面部の上面よりも上方又は前記電子回路ユニット本体の前面部の下面よりも下方に位置する面内で回転し、前記テコ部材が前記閉位置にあるとき、前記テコ操作部は、先端部を除いて、前記電子回路ユニット本体の前面部よりも奥側に位置する、付記1〜7のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
[付記9]
前記電子回路ユニット本体に設けられ、前記テコ部材が前記第1回転軸まわりの第1方向に閉位置まで回転された際、前記弾性部材の付勢力により前記第2回転軸まわりの前記第1方向に回転する前記ロック部材と係合し、前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転を不能とする第1ロック部材受け部を備え、
前記テコ部材は、前記第1回転軸から長手方向に延在するテコ操作部を備えると共に、前記電子回路ユニット本体の手前側に延在する前面部の上面又は下面に平行な面内であって、前記電子回路ユニット本体の前面部の上面よりも上方又は前記電子回路ユニット本体の前面部の下面よりも下方に位置する面内で回転し、前記テコ部材が前記閉位置にあるとき、前記テコ操作部は、先端部を除いて、前記電子回路ユニット本体の前面部よりも奥側に位置する、付記5又は6に記載の電子回路ユニット。
[付記10]
前記テコ部材に設けられ、前記テコ部材のロック状態において前記ロック部材が前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際に、前記ロック部材と当接することで、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与える力伝達部材を備える、付記1〜9のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
[付記11]
前記ロック部材は、切欠きを有する操作部を備える、付記1〜10のうちのいずれか1項に記載の電子回路ユニット。
[付記12]
シェルフと、
シェルフに挿入されて収容される電子回路ユニット本体と、
電子回路ユニット本体の挿入方向に見て前記電子回路ユニット本体の手前側に設けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸まわりに回転可能に設けられるテコ部材であって、前記第1回転軸まわりの第1方向に回転された際、前記シェルフの一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの奥側に付勢し、前記第1方向とは逆の前記第1回転軸まわりの第2方向に回転された際、前記シェルフの他の一部に当接してテコの原理により前記電子回路ユニット本体を前記シェルフの手前側に付勢するテコ部材と、
前記テコ部材に設けられ、前記第1回転軸と平行に延在する第2回転軸と、
前記第2回転軸まわりに回転可能に設けられるロック部材であって、前記電子回路ユニット本体の前記シェルフへの挿入が完了された状態において前記テコ部材の前記第1回転軸まわりの第2方向の回転が不能となるように前記テコ部材をロックし、前記テコ部材のロック状態において前記第2回転軸まわりの前記第2方向に回転された際、前記テコ部材のロックを解除しつつ、前記テコ部材を前記第1回転軸まわりの第2方向に回転させる力を前記テコ部材に与えるロック部材とを備える、通信装置。
【符号の説明】
【0072】
R1 第1方向
R2 第2方向
1 電子回路ユニット
5 通信装置
10 電子回路ユニット本体
10a 上面
10b 下面
30 挿入レバー
40 底板
42 コネクタ
50 前面部
52 側部
53 ポート
54 アラームランプ
60 被ロック部材
62 第1ロック部材受け部
64 第2ロック部材受け部
100 シェルフ
310 レバー軸
320 テコ部材
322 テコ操作部
323 先端部
324 第1当接部
326 第2当接部
330 ロック回転軸
340 ロック部材
342 フック部
344 操作部
346 切欠き
348 当接部
350 弾性部材
372 力伝達部材
図1
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