(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のカラー信号変換方法は、広い色域のカラーデータを狭い色域のカラーデータに変換してカラー画像の見た目が変化しないようにする方法であり、狭い色域のカラーデータを広い色域のカラーデータに変換することはできない。
【0007】
一方、特許文献3に記載のカラー信号変換方法では、色域を拡大するカラー信号変換を行うが、その色域拡大において彩度や出力色域幅の値によって線形的に拡張するとしているものの、拡張させる度合いを明度や色相に応じて変化させるプロセスは存在しない。そのため、特許文献3に記載のカラー信号変換方法で全明度・全色相について色飽和が起きないような色域幅を制御しようとすると、拡張させる余裕のある色域の拡張を行うことができず、色域を十分に有効利用することは困難である。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、入力側色域と出力側色域とを予め決定しておくことで、色域を十分に有効利用したカラー信号変換を行い得るカラー映像信号処理装置、処理方法及び処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のカラー映像信号処理装置は、CIE xy色度図において、カラー信号変換前のカラー映像信号の基となる
2次元の第1の色域を
示す第1の多角形の各辺上
に、3次元の所定の色空間に変換するために設けた複数の分割点のそれぞれについて、
所定の色空間における複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として入力側彩度を構成する入力側彩度・色相計算手段と、CIE xy色度図において、第1の色域よりも広いカラー信号変換後のカラー映像信号の基となる
2次元の第2の色域を
示す第2の多角形の各辺上
に、所定の色空間に変換するために設けた複数の分割点のそれぞれについて、
所定の色空間における複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として出力側彩度を構成する出力側彩度・色相計算手段と、出力側彩度を入力側彩度で除して彩度比を計算する彩度比計算手段と、入力される第1の色域のカラー映像信号の
所定の色空間における色相と彩度を画素単位に計算する色相・彩度計算手段と、色相・彩度計算手段により計算された色相及び彩度と、彩度比計算手段により計算された彩度比とに基づいて決定した倍率を、色相・彩度計算手段により色相と彩度とが計算されたカラー映像信号の色度に乗じて、そのカラー映像信号の色域拡大色信号を出力する色域拡大手段と、色域拡大色信号を第2の色域の出力カラー映像信号に変換して出力する出力変換手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、本発明のカラー映像信号処理方法は、CIE xy色度図において、カラー信号変換前のカラー映像信号の基となる
2次元の第1の色域を
示す第1の多角形の各辺上
に、3次元の所定の色空間に変換するために設けた複数の分割点のそれぞれについて、
所定の色空間における複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として入力側彩度を構成する入力側彩度・色相計算ステップと、CIE xy色度図において、第1の色域よりも広いカラー信号変換後のカラー映像信号の基となる
2次元の第2の色域を
示す第2の多角形の各辺上
に、所定の色空間に変換するために設けた複数の分割点のそれぞれについて、
所定の色空間における複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として出力側彩度を構成する出力側彩度・色相計算ステップと、出力側彩度を入力側彩度で除して彩度比を計算する彩度比計算ステップと、入力される第1の色域のカラー映像信号の
所定の色空間における色相と彩度を画素単位に計算する色相・彩度計算ステップと、色相・彩度計算ステップにより計算された色相及び彩度と、彩度比計算ステップにより計算された彩度比とに基づいて決定した倍率を、色相・彩度計算ステップにより色相と彩度とが計算されたカラー映像信号の色度に乗じて、そのカラー映像信号の色域拡大色信号を出力する色域拡大ステップと、色域拡大色信号を第2の色域の出力カラー映像信号に変換して出力する出力変換ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また
、上記の目的を達成するため、本発明のカラー映像信号処理プログラムは、コンピュータに、CIE xy色度図において、カラー信号変換前のカラー映像信号の基となる
2次元の第1の色域を
示す第1の多角形の各辺上
に、3次元の所定の色空間に変換するために設けた複数の分割点のそれぞれについて、
所定の色空間における複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として入力側彩度を構成する入力側彩度・色相計算機能と、CIE xy色度図において、第1の色域よりも広いカラー信号変換後のカラー映像信号の基となる
2次元の第2の色域を
示す第2の多角形の各辺上
に、所定の色空間に変換するために設けた複数の分割点のそれぞれについて、
所定の色空間における複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として出力側彩度を構成する出力側彩度・色相計算機能と、出力側彩度を入力側彩度で除して彩度比を計算する彩度比計算機能と、入力される第1の色域のカラー映像信号の
所定の色空間における色相と彩度を画素単位に計算する色相・彩度計算機能と、色相・彩度計算機能により計算された色相及び彩度と、彩度比計算機能により計算された彩度比とに基づいて決定した倍率を、色相・彩度計算機能により色相と彩度とが計算されたカラー映像信号の色度に乗じて、そのカラー映像信号の色域拡大色信号を出力する色域拡大機能と、色域拡大色信号を第2の色域の出力カラー映像信号に変換して出力する出力変換機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力側色域と出力側色域とを予め決定しておくことで、色域拡大の倍率を入力カラー映像信号の明度・色相に応じて決定することができ、色域を十分に有効利用したカラー信号変換を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
図1は、本発明に係るカラー映像信号処理装置の一実施形態のブロック図を示す。
図1に示すカラー映像信号処理装置の構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータの中央処理装置(CPU)、メモリ、その他の大規模集積回路(LSI)で実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現される。
図1ではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0015】
図1に示すカラー映像信号処理装置100は、大別すると、信号処理対象の狭い色域の入力カラー映像信号に対して実際の信号処理を行って広い色域のカラー映像信号を得る信号処理部Aと、信号処理部Aで色域拡大のために用いる入出力の彩度比を予め計算して用意しておく入出力彩度比計算部Bとからなる。ここでは狭い色域の入力カラー映像信号として、D65光源下のsRGB色空間の三原色映像信号(以下、RGB映像信号という)を用いる場合を例にとって説明する。また、広い色域の出力カラー映像信号として、Adobe RGB色空間のRGB映像信号を用いる場合を例にとって説明する。
【0016】
信号処理部Aは、RGB→リニアRGB変換部101、リニアRGB→CIE XYZ変換部102、CIE XYZ→L
*a
*b
*変換部103、色相・彩度計算部104、a
*b
*倍率決定部105、a
*b
*拡大部109、L
*a
*b
*→CIE XYZ変換部110、CIE XYZ→リニアRGB変換部111、及びリニアRGB→RGB変換部112からなる。
【0017】
RGB→リニアRGB変換部101は、信号処理対象の狭い色域の入力カラー映像信号であるRGB映像信号が供給され、そのRGB映像信号に対してデジタル処理のために一般的な正規化とガンマ補正を行ってリニアRGB信号に変換する。リニアRGB→CIE XYZ変換部102は、リニアRGB信号を国際照明委員会(CIE)が策定したCIE XYZ色空間(以下、表色系ともいう)の色信号に変換する。CIE XYZ色空間は、sRGB色空間を後述する他の色空間(ここでは、例えばL
*a
*b
*色空間)に変換するときの中間の作業色空間として用いられる。CIE XYZ→L
*a
*b
*変換部103は、CIE XYZ色空間の色信号をL
*a
*b
*色空間の色信号に変換する。色相・彩度計算部104は、CIE XYZ→L
*a
*b
*変換部103から供給されるL
*a
*b
*色空間の色信号を、公知の計算式によりL
*a
*b
*表色系の彩度C
*と色相hとを計算する。
【0018】
a
*b
*倍率決定部105は、本実施の形態の要部をなすブロックで、後述する彩度比計算部108から供給される彩度比と、色相・彩度計算部104から供給される彩度C
*及び色相hとを用いて、L
*a
*b
*表色系の色度図の色度a
*、b
*の倍率を計算する。なお、色度a
*、b
*は、色相と彩度とを示す。a
*b
*拡大部109は、a
*b
*倍率決定部105により決定された倍率を、L
*a
*b
*表色系の色度図の色度a
*、b
*の各座標値に乗じて実際の映像(すなわち、入力RGB映像信号)の色域拡大を行う。
【0019】
L
*a
*b
*→CIE XYZ変換部110は、a
*b
*拡大部109で色域が拡大されたL
*a
*b
*色空間の色信号を、中間の作業色空間であるCIE XYZ色空間の色信号に変換する。CIE XYZ→リニアRGB変換部111は、CIE XYZ色空間の色信号に対し所定の演算を行ってリニアRGB信号に変換する。リニアRGB→RGB変換部112は、リニアRGB信号に対し所定の演算を行ってRGB信号に変換する。この変換後のRGB信号は、入力映像信号に対して色域の拡大された映像信号である。
【0020】
色相・彩度計算部104は、本発明において、入力される第1の色域のカラー映像信号の色相と彩度を画素単位に計算する色相・彩度計算手段を構成する。また、a
*b
*倍率決定部105及びa
*b
*拡大部
109は、本発明において、色相・彩度計算手段により計算された色相及び彩度と、後述する彩度比とに基づいて決定した倍率を、色相・彩度計算手段により色相と彩度とが計算されたカラー映像信号の色度に乗じて、そのカラー映像信号の色域拡大色信号を出力する色域拡大手段を構成する。また、L
*a
*b
*→CIE XYZ変換部110、CIE XYZ→リニアRGB変換部111、及びリニアRGB→RGB変換部112は、本発明において色域拡大色信号を第2の色域の出力カラー映像信号に変換して出力する出力変換手段を構成する。
【0021】
一方、入出力彩度比計算部Bは、彩度・色相計算部106及び107と、彩度比計算部108とよりなる。彩度・色相計算部106は、CIE xy色度図において信号処理部Aの入力カラー映像信号の基となる色域を示す多角形の各辺上の複数の点において複数の明度についての彩度と色相を計算して、明度と色相の関数として入力側彩度を構成する。彩度・色相計算部107はCIE xy色度図において信号処理部Aの出力カラー映像信号の基となる色域を示す多角形の各辺上の複数の点において複数の明度についての彩度と色相を計算して、明度と色相の関数として出力側彩度を構成する。彩度比計算部108は、出力側彩度を入力側彩度で除して、明度と色相の関数である彩度比を計算し、計算した彩度比をa
*b
*倍率決定部105に供給する。
【0022】
彩度・色相計算部106は、CIE xy色度図において、カラー信号変換前のカラー映像信号の基となる第1の色域をなす第1の多角形の各辺上の複数の分割点のそれぞれについて、複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として入力側彩度を構成する、本発明における入力側彩度・色相計算手段を構成する。一方、彩度・色相計算部107は、CIE xy色度図において、カラー信号変換前のカラー映像信号の基となる第2の色域をなす第2の多角形の各辺上の複数の分割点のそれぞれについて、複数の明度についての彩度と色相を計算して、それらの明度と色相の関数として出力側彩度を構成する、本発明における出力側彩度・色相計算手段を構成する。また、彩度比計算部108は、出力側彩度を入力側彩度で除して彩度比を計算する、本発明における彩度比計算手段を構成する。
【0023】
次に、本実施の形態のカラー映像信号処理装置100の動作について、
図2のフローチャート、
図3のCIE xy色度図、
図4の倍率決定説明図を併せ参照して更に詳細に説明する。
【0024】
まず、入出力彩度比計算部Bの動作について説明する。彩度・色相計算部106に対し、CIE xy色度図において信号処理部Aの入力RGB映像信号の基となる色域(以下、「入力側色域」という)を入力する(ステップS1)。一般的には、色域はCIE xy色度図において、R、G、Bの3つの原色点の色度座標(x,y)の入力により指定される。ここでは、入力側色域は、一例として
図3に示すCIE xy色度図において、D65光源下のsRGB色空間のR点を示すR1(0.640,0.330)、G点を示すG1(0.300,0.600)、B点を示すB1(0.150,0.060)を頂点とする実線で示す三角形20であるものとする。
【0025】
次に、彩度・色相計算部106は、0〜100の明度について入力側色域外周における彩度を計算する(ステップS2)。具体的には、彩度・色相計算部106は、まず、D65光源下のsRGB色空間の三角形20の3つの辺それぞれの直線の方程式を求め、続いて各辺をそれぞれ例えば1000分割する。分割するのは、CIEが策定した略完全な色空間であるL
*a
*b
*色空間は3次元であり、2次元で表されている上記のCIE xy色度図のsRGB色空間をこのL
*a
*b
*色空間に変換するためである。そして、それぞれの分割点について式(1)によりzを導出する。
【0026】
z=1−x−y (1)
ここで、式(1)のx,yは分割点のxy色度図におけるx,y座標の値、zはXYZ表色系の3次元色空間におけるz座標の値を示す。
【0027】
続いて、彩度・色相計算部106が、明度L
*を0〜100の整数単位とし、Yを式(2)、式(5)、式(6)、式(7)を基に計算する。このときのX、Zは式(8)、式(9)で計算する。ここで、下記において、X、Y、ZはCIE XYZ表色系のX座標、Y座標、Z座標の値を示し、Xn、Yn、Znは基準となっているホワイトポイントのCIE XYZでの三刺激値である。また、L
*はL
*a
*b
*表色系の明度、a
*、b
*はL
*a
*b
*表色系の色度を示す。
【0028】
Y=fy
3Yn (fy>6/29),Y=(3/29)
3(116fy−16)Yn (fy<6/29) (2)
X=fx
3Xn (fx>6/29),X=(3/29)
3(116fx−16)Yx (fx<6/29) (3)
Z=fz
3Zn (fz>6/29),Z=(3/29)
3(116fz−16)Zx (fz<6/29) (4)
fy=(L
*+16)/116 (5)
fx=fy+(a
*/500) (6)
fz=fy−(b
*/200) (7)
X=xY/y (8)
Z=zY/y (9)
続いて、彩度・色相計算部106が、CIE XYZの各座標値から式(10)〜式(14)によりL
*a
*b
*表色系の座標値に変換する。
【0029】
L
*=116 f(Y/Yn)−16 (10)
a
*=500[f(X/Xn)−f(Y/Yn)] (11)
b
*=200[f(Y/Yn)−f(Z/Zn)] (12)
ここで
f(t)=t
1/3 (t>(6/29)
3=0.008856の場合) (13)
f(t)=[(29/3)
3t+16]/116 (その他の場合) (14)
ただし、D65光源下ではXn=95.045、Yn=100、Zn=108.892
次に、彩度・色相計算部106は、入力側色域外周につき彩度を明度・色相についての関数として構成する(ステップS3)。具体的には、ステップS2において式(10)で明度L
*を求めた三角形20の一つの辺上の各分割点のデータについて、次式により位相すなわち色相h’(単位ラジアン)を計算する。
【0030】
h’=atan(b
*/a
*) (15)
ただし、式(15)中、「atan」は逆タンジェントを示す。
【0031】
続いて、彩度・色相計算部106は、式(15)で計算した色相h’を度換算して色相h(単位°)を得て、その色相hが最も整数に近い場合の明度L
*と色度a
*、b
*をその記憶部の配列(またはテーブル)に組み込む。以下同様にして彩度・色相計算部106は、前述した三角形20の3つの辺上の全ての分割点について上記の処理を明度L
*を変化させて行うことで、色相0°〜360°の明度L
*と色度a
*、b
*のテーブルを得る。この結果、彩度は変数を明度L
*と色相hとする配列となる。
【0032】
このように、本実施の形態では、彩度・色相計算部106は、CIE xy色度図において信号処理部Aの入力RGB映像信号の基となる入力側色域を示すD65光源下のsRGB色空間の三角形20の各辺上の複数の分割点において、複数の明度についての彩度と色相を計算して、明度L
*と色相hの関数として入力側彩度を構成する。
【0033】
次に、彩度・色相計算部107に対し、CIE xy色度図において信号処理部Aの出力RGB映像信号の基となる色域(以下、「出力側色域」という)を入力する(ステップS4)。ここでは、出力側色域は、一例として
図3に示すCIE xy色度図において、Adobe RGB色空間のR点を示すR2(0.640,0.340)、G点を示すG2(0.210,0.710)、B点を示すB2(0.150,0.060)を頂点とする一点鎖線で示す三角形22であるものとする。
【0034】
次に、彩度・色相計算部107は、0〜100の明度について出力側色域外周における彩度を計算する(ステップS5)。このステップS5では彩度・色相計算部107は、彩度色相計算部106によるステップS2と同様の処理を行う。続いて、彩度・色相計算部107は、出力側色域外周につき彩度を明度・色相についての関数として構成する(ステップS6)。このステップS6では彩度・色相計算部107は、彩度色相計算部106によるステップS3と同様の処理を行う。
【0035】
このようにして、本実施の形態では、彩度・色相計算部107は、CIE xy色度図において信号処理部Aの出力RGB映像信号の基となる出力側色域を示すAdobe RGB色空間の三角形22の各辺上の複数の分割点において、複数の明度についての彩度と色相を計算して、明度L
*と色相hの関数として出力側彩度を構成する。
【0036】
次に、彩度比計算部108が、明度・色相について出力側色域外周の彩度を入力側色域外周の彩度で除して彩度比を計算する(ステップS7)。すなわち、彩度比計算部108は、彩度・色相計算部107で計算された出力側彩度を彩度・色相計算部106で計算された入力側彩度で除して得た彩度比を、明度と色相の関数として計算する。
【0037】
次に、信号処理部Aの動作について説明する。RGB映像入力端子を介してRGB→リニアRGB変換部101に実際にカラー信号変換を行いたい狭い色域(ここでは、D65光源下のsRGBの色域)のRGB映像信号が入力される(ステップS8)。すると、RGB→リニアRGB変換部101は、入力されたRGB映像信号に対してデジタル処理のために一般的な正規化とガンマ補正を画素単位に行ってリニアRGB信号に変換する(ステップS9)。
【0038】
続いて、リニアRGB→CIE XYZ変換部102が、RGB→リニアRGB変換部101から供給されるリニアRGB信号をCIE XYZ色空間の色信号に変換する(ステップS10)。ここでは、リニアRGB→CIE XYZ変換部102は、D65光源下のsRGBの色空間のRGB映像信号を、公知の次式によりCIE XYZ色空間のX座標、Y座標、Z座標で示される色信号に画素単位に変換する。
【0039】
X=100*(0.4124*R+0.3576*G+0.1805*B) (16)
Y=100*(0.2126*R+0.7152*G+0.0722*B) (17)
Z=100*(0.0193*R+0.1192*G+0.9505*B) (18)
続いて、CIE XYZ→L
*a
*b
*変換部103が、リニアRGB→CIE XYZ変換部102から供給されるCIE XYZ色空間の色信号をL
*a
*b
*色空間の色信号に変換する(ステップS11)。具体的には、CIE XYZ→L
*a
*b
*変換部103は、前記式(10)〜式(14)の変換式を用いてCIE XYZ色空間の色信号をL
*a
*b
*色空間の色信号に変換する。
【0040】
続いて、色相・彩度計算部104が、CIE XYZ→L
*a
*b
*変換部103により変換されたL
*a
*b
*色空間の色信号の色相と彩度とを計算する(ステップS12)。色相と彩度の計算は、彩度・色相計算部106と同様の計算方法による計算処理にて画素単位に行われる。なお、L
*a
*b
*表色系の彩度C
*は次式で表される。
【0041】
C
*=√{(a
*)
2+(b
*)
2} (19)
次に、a
*b
*倍率決定部105は、明度と彩度と彩度比とから倍率を決定する(ステップS13)。すなわち、a
*b
*倍率決定部105は、色相・彩度計算部104から供給されるL
*a
*b
*色空間の色信号の明度L
*及び彩度C
*と、彩度比計算部108により計算して得られた彩度比とを用いて、色度a
*及びb
*の倍率を決定する。この倍率決定について更に
図4と共に説明する。
【0042】
図4は、縦軸が乗数、横軸がC
*/Cin[L
*,h]である倍率決定説明用グラフで、倍率として候補となる関数の例を示す。ここで、「C*」は上記の彩度を示し、「Cin[L
*,h]」は彩度・色相計算部106に入力される入力側色域の彩度を示す。「Cin[L
*,h]」は計算されたL
*a
*b
*色空間の色信号の明度L
*及び色相hによりアクセスされる。また、
図4中の「rate[L
*,h]」は彩度比計算部108で計算された彩度比を示す。
【0043】
図4において、Iは入力映像の彩度によらず一律に乗数を彩度比rate[L
*,h]とした場合の特性を示す。IIは入力映像の彩度の低い場合には彩度比rate[L
*,h]よりも小さな値の乗数とし、C
*/Cin[L
*,h]の値に比例して乗数が大となる特性を示す。IIIは特性Iと特性IIとの中間の特性で、係数kにより変化する特性を示す。
【0044】
本実施の形態では、a
*b
*倍率決定部105は、上記の特性IIIが示す乗数を倍率として決定する。すなわち、a
*b
*倍率決定部105は、彩度比rate[L
*,h]から1を減じた値に係数kを乗じた値を最小値とし、彩度比rate[L
*,h]を最大値とする範囲内で、彩度C
*が高いほど大となる値を倍率として決定する。ただし、上記の特性IIが示す乗数を倍率に決定しても構わない。
【0045】
次に、a
*b
*拡大部109が、a
*b
*倍率決定部105により決定された倍率を、入力されるL
*a
*b
*色空間の色信号の色度a
*、b
*の各座標値に乗じる拡大処理を行う(ステップS14)。これにより、L
*a
*b
*色空間の色信号に変換されている入力RGB映像信号の色域が拡大される。
【0046】
続いて、L
*a
*b
*→CIE XYZ変換部110が、a
*b
*拡大部109で色域が拡大されたL
*a
*b
*色空間の色信号を、中間の作業色空間であるCIE XYZ色空間の色信号に変換する(ステップS15)。具体的にはL
*a
*b
*→CIE XYZ変換部110は、L
*a
*b
*色空間の色信号に対して前記式(2)〜式(7)による演算処理を行ってCIE XYZ色空間の色信号に変換する。
【0047】
続いて、CIE XYZ→リニアRGB変換部111が、CIE XYZ色空間の色信号をリニアRGB信号に変換する(ステップS16)。ここでは、CIE XYZ→リニアRGB変換部111は、L
*a
*b
*→CIE XYZ変換部110から供給されるCIE XYZ色空間のX座標、Y座標、Z座標で示される色信号を、画素単位に公知の次式によりAdobe RGB色空間のR点座標、G点座標、B点座標で示されるRGB映像信号に変換する。
【0048】
R=0.01*(2.0416*X−0.5650*Y−0.3447*Z) (20)
G=0.01*(−1.0199*X+1.9171*Y+0.0481*Z) (21)
B=0.01*(0.0340*X−0.1229*Y+1.0014*Z) (22)
次に、リニアRGB→RGB変換部112が、リニアRGB映像信号をRGB映像信号に変換する(ステップS17)。すなわち、リニアRGB→RGB変換部112は、CIE XYZ→リニアRGB変換部111から供給されるAdobe RGB色空間のリニアRGB映像信号に対して、一般的なガンマ変換と定数倍(例えば、RGB映像信号が8ビットであれば255倍)する処理を行うことで、モニタ画面の表示に適したRGB映像信号に変換する。
【0049】
そして、最後にリニアRGB→RGB変換部112は、変換後のRGB映像信号を外部へ出力する(ステップS18)。この出力RGB映像信号は、D65光源下のsRGB色空間の入力RGB映像信号よりも色域が拡大されたAdobe RGB色空間のRGB映像信号である。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、入力側色域と出力側色域とをCIE xy色度図の座標として予め指定しておくことで、それらの入出力彩度比に基づいて色域拡大し得る倍率を決定することができる。そして、実際の入力カラー映像信号の明度・色相を解析して、その明度・色相に応じた倍率を入力カラー映像信号の色度に乗ずるようにしたため、色域を有効利用したカラー信号変換ができる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、例えば明度・色相により倍率そのものを制御する方法や、
図4に例示した倍率決定関数とは別の関数を使うようにしてもよい。また、出力側色域は入力側色域よりも色域が拡大している公知の色空間の色域を用いることができる。更に、上記の色域は三角形に限定されるものではなく、四角形などの他の多角形でもよい。
【0052】
更に、本発明は、
図2のフローチャートに示した各ステップの処理をコンピュータに実行させるカラー映像信号処理プログラムも包含する。このカラー映像信号処理プログラムは、記録媒体に記録されてコンピュータに書き込まれたり、通信ネットワークを介して配信されてコンピュータにダウンロードされることができる。