(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)で表される化合物を0.01〜5質量%、式(2)で表される化合物を5〜30質量%、グリセリンを5〜30質量%、着色剤を1〜25質量%および残部として水を含むことを特徴とする、水性インキ組成物。
R1O−(EO)a−(PO)b−H (1)
(式(1)中、R1は3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、aはオキシエチレン基の平均付加モル数でa=3〜15、bはオキシプロピレン基の平均付加モル数でb=3〜5、a/b=1〜3である。)
R2O−(AO)c−H (2)
(式(2)中、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、AOは炭素数2または3のオキシアルキレン基、cは炭素数2または3のオキシアルキレン基の平均付加モル数でc=1〜3である。)
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記具用や印刷用のインキとして油性インキが広く用いられてきたが、近年、これら油性インキに替わって水性インキが用いられるようになりつつある。例えば、ボールペンインキ等の筆記具用インキの場合、水性インキの粘度は油性インキと比較して低いため、弱い筆圧で、且つ、滑らかな筆記が可能となる。また、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の印刷インキの場合、水性インキとすることで有機溶剤の使用量を低減し、環境への負荷を低減することが可能となる。
【0003】
しかし、これら水性インキは油性インキと比較して潤滑性に乏しい、乾燥時間が遅い、起泡しやすい等の問題があった。
【0004】
インキの潤滑性が乏しいと、例えばボールペンインキとして用いた場合、ボールとボール収容部の磨耗を生じ、滑らかな筆感が得られない原因となる。
また、インキの乾燥時間が遅いと、筆記具用インキでは筆記直後に紙面に触れる等により紙面を汚してしまい、印刷インキでは高速印刷に支障をきたす原因となる。
【0005】
さらに、インキが起泡しやすいと、インキ製造時の撹拌工程時に気泡を巻き込みやすくなり、筆記具用インキにおけるインキ収容管やインクジェット用のインキカートリッジへ充填しにくくなるため、生産性を低下させる原因となる。また、遠心分離機等で脱泡処理を行っても脱泡しきれず、インキ収容管やインキカートリッジに気泡が残存することで、筆跡のかすれや印刷不良を引き起こす原因となる。加えて、筆記具用インキでは筆記時にインキ収容管に気泡を巻き込むことにより筆跡のかすれや線切れ等を生じ、印刷インキでは印刷版やインキタンクに気泡が混入することで印刷不良等を生じたり高速印刷に支障をきたしたりする原因となる。
【0006】
これらの問題を解決する手段として、下記に挙げるインキが例示されている。
【0007】
インキの潤滑性を向上させる手段として、例えばC16〜18のアルキル基を用いたポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いたボールペン用水性インキ組成物が提案されている(特許文献1)。このボールペン用水性インキを用いることにより、ボールとボール収容部の摩擦を低減させることで滑らかな筆感を得ることができる。
【0008】
また、紙面での乾燥速度、及び低起泡性を向上させる手段として、アセチレングリコール系の界面活性剤を用いた水性インキ組成物が提案されている(特許文献2及び特許文献3)。このアセチレングリコール系の界面活性剤を用いることにより、乾燥時間が速く、低起泡性のインキが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(式(1)で表される化合物)
式(1)で表される化合物を用いることにより、潤滑性、速乾性、低起泡性を付与し、且つ、経時安定性に優れた水性インキを得ることが可能となる。本発明は、式(1)で表される化合物を用いるところに顕著な特徴を有する。
【0018】
R
1は、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールから水酸基を除いた残基であり、すなわち3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基である。
R
1が炭素数が8以下のアルキル基であると、速乾性や低起泡性が劣り、炭素数が10以上のアルキル基であると、インキの調製直後または経時的に凝集や分離を引き起こしやすい。しかも、炭素数9のアルコールのうち、動的表面張力低下能、低泡性、版トレ防止の観点から、3個のメチル分岐を有する3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基が優れていることを発見した。
【0019】
EOは、オキシエチレン基である。aはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、3〜15とする。aが3より小さい場合は、インキの調製直後または経時的に式(1)で表される化合物が凝集や分離を引き起こしやすくなるため好ましくない。この観点からは、aは4以上が更に好ましい。また、aが15より大きい場合は、速乾性や低起泡性に劣るため好ましくない。この観点からは、aは10以下が更に好ましい。
【0020】
POは、オキシプロピレン基であり、好ましくはプロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基(メチルオキシエチレン基)である。
bは、オキシプロピレン基の平均付加モル数であり、3〜5が好ましく、3〜4がより好ましい。bが3より小さい場合は、速乾性や低起泡性に劣るため好ましくない。また、bが5より大きい場合は、インキの調製直後または経時的に式(1)で表される化合物が凝集や分離を引き起こしやすくなるため好ましくない。
【0021】
a/bは、オキシエチレン基の平均付加モル数aとオキシプロピレン基の平均付加モル数bの比であり、1〜3である。これが1より小さい場合、インキの調製直後または経時的に式(1)で表される化合物が凝集や分離を引き起こしやすくなるため好ましくない。この観点からは、a/bは、1.2以上がさらに好ましい。また、a/bが3より大きい場合、親水性が強くなり過ぎることにより速乾性や低泡性に劣る。この観点からは、a/bは、2.8以下がより好ましく、2.6以下が一層好ましい。
【0022】
なお、式(1)で表される化合物は、単独で使用しても、2種類以上を併用しても良い。2種類以上の式(1)で表される化合物を併用する場合は、(A)R
1が3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基、a=3〜6、b=2〜4、1≦a/b≦2の化合物と、(B)R
1が3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基、a=7〜12、b=3〜5、2≦a/b≦3の化合物を、重量比で(A):(B)=10〜50:50〜90で用いることが好ましく、15〜40:60〜85で用いることがより好ましい。
【0023】
(式(2)で表される化合物、及びグリセリン)
式(2)で表される化合物とグリセリンとを併用することにより、式(1)で表される化合物を相溶化し、且つ、水性インキの粘度調製やペン先やインキノズルでの乾燥防止が可能となる。また、式(1)で表される化合物との併用により、水性インキに低起泡性を付与することが可能となる。
【0024】
R
2は、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。この中でも水素原子が最も好ましい。
【0025】
AOは、炭素数2または3のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。オキシプロピレン基はプロピレンオキシド由来であり、好ましくはオキシエチレン基である。
【0026】
cは、炭素数2または3のオキシアルキレン基の平均付加モル数で、AOが2種以上の場合は合計平均付加モル数を示す。cの範囲は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1がさらに好ましい。cが3より大きい場合、起泡し易くなったり、粘度が高くなり過ぎたりするため好ましくない。
【0027】
式(2)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下を例示できる。
エチレングリコール及びそのエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル);
ジエチレングリコール及びそのエーテル(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル);
トリエチレングリコール及びそのエーテル(トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル);
プロピレングリコール及びそのエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル);
ジプロピレングリコール及びそのエーテル(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル);
トリプロピレングリコール及びそのエーテル(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル)。
【0028】
これらのうち、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールが最も好ましい。なお、これら式(2)で表される化合物は、単一でも2種以上を併用しても良い。
【0029】
(着色剤について)
本発明に用いる着色剤は、顔料や水溶性の染料が用いられ、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0030】
顔料としては、従来より用いられている無機系および有機系顔料の中から任意のものを使用することができる。無機系顔料としては、例えば酸化チタン、カーボンブラック、金属粉などが挙げられる。また有機系顔料としては、例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料等であり、具体的には、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー3G、ジスアゾエローGR、パーマネントレッド4R、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッドが挙げられる。
【0031】
また、スチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂を単独もしくは二種以上を用いて乳化重合して得られる平均粒子径0.1〜1μmのポリマー微粒子の水分散体に塩基性染料や蛍光性塩基染料および/または蛍光増白剤で染着した樹脂エマルション着色体等が挙げられる。
【0032】
水溶性の染料としては、従来より水性インキに用いられているものの中から任意のものを使用することができる。例えば、C.I.アシッドレッド87、アシッドオレンジ56、アシッドバイオレッド49、アシッドブルー9等の酸性染料、C.I.ダイレクトエロー50、ダイレクトブラック19等の直接染料、C.I.ベイシックブルー9、ベイシックレッド1、ベイシックイエロー35等の塩基性染料等が挙げられる。
【0033】
(水性インキ組成物)
本発明の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、グリセリン、着色剤、及び水を含んでおり、各成分の好適な配合量は下記の通りである。
【0034】
式(1)で表される化合物の配合比率は、水性インキの潤滑性、速乾性、低起泡性の観点から、水性インキ中に0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましい。この比率は、0.1質量%以上が好ましく、0.15質量%以上が更に好ましい。また、式(1)で表される化合物の配合比率は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以下が一層好ましい。
【0035】
式(2)で表される化合物の配合比率は、水性インキの粘度調製、乾燥防止、低起泡性の観点から、水性インキ中に5〜30質量%が好ましい。式(2)で表される化合物の配合比率は、10質量%以上が更に好ましい。また、この比率は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0036】
グリセリンの配合比率は、水性インキの粘度調製、乾燥防止、低起泡性の観点から、水性インキ中に5〜30質量%が好ましい。グリセリンの配合比率は、10質量%以上が好ましく、また、25質量%以下が好ましく、20質量%が更に好ましい。
【0037】
着色剤の配合比率は、水性インクの着色度合いや粘度、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、グリセリン、水との相互作用等の観点から、水性インキ中に1〜25質量%が好ましい。着色剤の配合比率は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。また、着色剤の配合比率は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0038】
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、グリセリン、着色剤および水の配合比率の合計を100質量%とするので、組成物の残部を水が占めている。具体的数値を例示すると、水の配合比率は、水性インキの粘度、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、グリセリン、着色剤との相互作用等の観点から、水性インキ中に10質量%以上が好ましく、27質量%以上がより好ましく、33質量%以上が更に好ましく、44質量%以上が特に好ましい。また,水の配合比率は、88.99質量%以下が好ましく、87.95質量%以下がより好ましく、77.9質量%以下が更に好ましく、74.9質量%以下が特に好ましい。
【0039】
(添加剤)
製品化に際しては、本発明の水性インキ組成物に対して、他の添加剤を更に添加することができる。こうした添加剤としては、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性の各種界面活性剤、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、キサンタンガム、ウェランガム等の水溶性高分子化合物、尿素、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の乾燥防止剤、有機酸、無機酸、及びこれらの塩等のpH調整剤、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物等の防腐剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、シリコーン化合物等の消泡剤等を例示できる。
【0040】
本発明の水性インキを製造するには、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、ペイントシェーカー、ニーダー、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ディゾルバー、エクストルーダー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の撹拌機を用い、撹拌して均一になるまで溶解、混合することによりにより得ることができる。さらに必要に応じて、脱泡機により泡の除去を行ったり、濾過機や遠心分離機により粗大粒子や不溶成分を除いたりしても良い。
【0041】
本発明の水性インクは、ボールペンや万年筆等の筆記具、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の印刷インキに好適に用いることができる。さらに、塗料等にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、合成品の分析は、
1H NMR測定により行った。
【0043】
まず、式(1)で表される化合物の合成例を示す。また、表1に合成した化合物及び用いた化合物を示す。
【0044】
(合成例1(化合物1))
5Lオートクレーブに、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール(商品名:ノナノール、KHネオケム(株)製)433g(3mol)および水酸化カリウム5gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド529g(12mol)を滴下し、1時間反応させた。続いて滴下装置によりプロピレンオキシド523g(9mol)を滴下し、2時間反応させた。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1410gの化合物1を得た。
【0045】
上記合成例1に準じて、下記の表1に示す化合物2、3、6、7を合成した。
【0046】
(合成例2(化合物4))
5Lオートクレーブに、イソノナノール(商品名:オキソコール900、分岐数:1.3、KHネオケム(株)製)433g(3mol)および水酸化カリウム5gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド1057g(24mol)を滴下し、1時間反応させた。続いて滴下装置によりプロピレンオキシド697g(12mol)を滴下し、2時間反応させた。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、2080gの化合物4を得た。
【0047】
(合成例3(化合物5))
【0048】
5Lオートクレーブに、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール(商品名:ノナノール、KHネオケム(株)製)433g(3mol)および水酸化カリウム5gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド1057g(24mol)を滴下し、1時間反応させた。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1415gの化合物5を得た。
【0049】
(合成例4(化合物8))
5Lオートクレーブに、ステアリルアルコール(商品名:NAA−45、日油(株)製)811g(3mol)および水酸化カリウム5gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド925g(21mol)を滴下し、1時間反応させた。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1649gの化合物8を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
(溶液調製と外観の観察)
表1に示した化合物、式(2)の化合物、エチレングリコール、グリセリン、及びイオン交換水を表2、表3に記載の質量%にて混合し、均一になるまで撹拌後し、合計95質量%の溶液を得た。得られた各溶液について、室温での外観を確認し、結果を表2、表3に示した。
【0052】
(水性インキの調製)
外観を確認した各溶液に、着色剤「アシッドブルー9」を5質量%加えて均一になるまで撹拌し、合計100質量%の水性インキ組成物を得た。得られた各水性インキ組成物について、乾燥時間と消泡時間の測定を行った。
【0053】
(筆感試験)
得られた各水性インキ組成物について、普通紙上にGペンにて筆記した際の筆感の評価を行った。滑らかな筆感でかすれや線切れが起こらないものを○、かすれや線切れがおこるものを×とした。滑らかな筆感の得られる水性インク組成物は潤滑性に優れることを表す。
【0054】
(速乾性試験)
得られた各水性インキ組成物について、普通紙上にGペンにて10cmの直線を引き、描線後、インキ組成物が乾燥するまでの時間を測定した。乾燥するまでの時間が短いほど速乾性が良好であることを表す。
【0055】
(低泡性試験、及び経時安定性試験)
得られた各水性インキ組成物を50mLスクリュー管に20mL充填し、蓋をして4回/秒の速さで100回上下に振とうし、振とう終了直後から発生した気泡が完全に消失するまでの時間を測定した。発生した気泡が消失するまでの時間が短いほど、低起泡性であることを表す。
【0056】
また、各水性インキ組成物について、日の当たる部屋にて室温で1ヶ月静置後に、再度振とう試験を同様の方法で行った。発生した気泡が消失するまでの時間が調製直後と同等であれば、経時安定性に優れることを表す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
本発明の式(1)で表される化合物を用いた実施例1〜3の水性インキ組成物は、いずれも透明な溶液が得られ、潤滑性、速乾性、低起泡性、経時安定性のいずれも優れていた。
【0060】
比較例1の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物を用いなかったため、潤滑性、速乾性、低起泡性に劣っていた。
【0061】
比較例2の水性インキ組成物は、式(2)で表される化合物、及びグリセリンを用いなかったため、潤滑性、低起泡性に劣っていた。
【0062】
比較例3の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物のアルキル基が3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基でないため、透明な溶液が得られなかった。
【0063】
比較例4の水性インキ組成物は、用いた化合物にオキシプロピレン基が付加されていないため、低起泡性に劣っていた。
【0064】
比較例5の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物のオキシプロピレンの平均付加モル数が多く、透明な溶液が得られなかった。
【0065】
比較例6の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物のオキシプロピレンの平均付加モル数が少なく、低起泡性に劣っていた。
【0066】
比較例7の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物を用いなかったため、透明な溶液が得られなかった。また、速乾性や低起泡性に劣っていた。
【0067】
比較例8の水性インキ組成物は、式(1)で表される化合物を用いなかったため、低起泡性に劣り、加えて経時安定性にも劣っていた。