特許第6015375号(P6015375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6015375-連続塗布装置および連続塗布方法 図000003
  • 特許6015375-連続塗布装置および連続塗布方法 図000004
  • 特許6015375-連続塗布装置および連続塗布方法 図000005
  • 特許6015375-連続塗布装置および連続塗布方法 図000006
  • 特許6015375-連続塗布装置および連続塗布方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015375
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】連続塗布装置および連続塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20161013BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20161013BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20161013BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B05C1/08
   B05D1/28
   B05D3/00 B
   B05D7/14 J
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-254173(P2012-254173)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-100653(P2014-100653A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】江草 圭二
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−142276(JP,A)
【文献】 特表2002−532232(JP,A)
【文献】 特表2002−532231(JP,A)
【文献】 特開2008−178818(JP,A)
【文献】 特開2004−237234(JP,A)
【文献】 特開2002−361148(JP,A)
【文献】 特開2005−254137(JP,A)
【文献】 特開2012−217982(JP,A)
【文献】 特開平04−187261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00− 1/16
B05D 1/00− 1/42
B05D 3/00− 3/14
B05D 7/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯の少なくとも片面に塗布液を予備塗布する予備塗布ロール、および、前記予備塗布ロールの直下に設けられ、前記予備塗布ロールの軸方向に延在するスリット状開口部を持ち、前記スリット状開口部から前記塗布液を前記予備塗布ロールに供給するプレコートノズルを有するプレコータと、
前記プレコータの下流側で予備塗布された金属帯の表面に前記塗布液を本塗布するロールコータとを備える連続塗布装置であって、
前記予備塗布ロールの軸方向に沿った前記スリット状開口部の長さが前記金属帯の帯幅以上であり、
前記予備塗布ロールの軸方向に直交する方向に沿った前記スリット状開口部の幅が、前記予備塗布ロールの軸方向における前記スリット状開口部の中央から両端側に向かうにつれて漸増することを特徴とする連続塗布装置。
【請求項2】
前記予備塗布ロールの軸方向における前記スリット状開口部中央での前記スリット状開口部の幅Wと、前記予備塗布ロールの軸方向における前記スリット状開口部端部での前記スリット状開口部の幅Wとの比(W/W)が、1.2〜2.0である、請求項1に記載の連続塗布装置。
【請求項3】
前記プレコートノズルが、前記予備塗布ロールの軸方向で、前記スリット状開口部を挟んだ両側に前記スリット状開口部に沿って設けられた一対の線状のブラシを備える、請求項1または2に記載の連続塗布装置。
【請求項4】
金属帯の少なくとも片面に、上流側で予備塗布ロール、および、前記予備塗布ロールの直下に設けられ、前記予備塗布ロールの軸方向に延在するスリット状開口部を持つプレコートノズルを有するプレコータにより塗布液が予備塗布され、予備塗布後、下流側でロールコータにより塗布液が本塗布される連続塗布方法であって、
前記予備塗布ロールの軸方向に沿った前記スリット状開口部の長さが前記金属帯の帯幅以上であり、前記予備塗布ロールの軸方向に直交する方向に沿った前記スリット状開口部の幅が前記予備塗布ロールの軸方向における前記スリット状開口部の中央から両端側に向かうにつれて漸増し、
前記スリット状開口部から前記プレコートノズルの直上にある前記予備塗布ロールの表面に塗布液を供給する、連続塗布方法。
【請求項5】
前記予備塗布ロールの軸方向における前記スリット状開口部中央での前記スリット状開口部の幅Wと、前記予備塗布ロールの軸方向における前記スリット状開口部端部での前記スリット状開口部の幅Wとの比(W/W)が、1.2〜2.0である、請求項4に記載の連続塗布方法。
【請求項6】
前記予備塗布ロールの軸方向で、前記スリット状開口部を挟んだ両側に前記スリット状開口部に沿って一対の線状のブラシを配置し、前記スリット状開口部から供給された塗布液の流れ方向を前記予備塗布ロールの軸方向に向かうように前記ブラシに案内させる、請求項4または5に記載の連続塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯に塗布液を予備塗布し、その後本塗布する連続塗布装置および連続塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、搬送される亜鉛めっき鋼帯などの金属帯の表面に表面被覆物質、塗料、化学反応剤等をコーティングする手段として、金属帯を塗布液中に浸漬したり、金属帯表面に塗布液をスプレー噴射したり、ロールコータやブラシ等を用いて塗布液を塗布するなど各種の手段がある。
【0003】
これらの各種の手段のうち、ロールコータを用いる技術では、金属帯へのロールコーティングの際、低粘度の塗布液を使用すると、金属帯の濡れ性不足のため一様なコーティング層を形成することが難しく、コーティングむらが発生し易いという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、塗布液を塗布するロールコータのアプリケータロールの直前に、予備塗布ロールを有するプレコータで金属帯を予備塗布する方法が提案されている(特許文献1)。また、他の方法としては、搬送される金属帯の帯幅よりも短い開口長さを有するスリット状開口部が設けられたプレコートノズルを用いて、金属帯に予備塗布する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−142276号公報
【特許文献2】特開2005−246313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
予備塗布ロールを用いて予備塗布する特許文献1の方法と、プレコートノズルで直接予備塗布する特許文献2の方法とを比較すると、特許文献1の方法のほうが金属帯に予備塗布する際の塗布液の液量などの調整がしやすく好ましい。
そこで、本発明者らは、特許文献2に記載のプレコートノズルを使用して、特許文献1に記載の予備塗布ロールへ塗布液を供給して、金属帯への塗布液の塗布を実施した。
しかしながら、該態様では、特に幅の広い金属帯(1260mm以上)を高速で走行させて高速塗布を行う際(特に、ライン速度が280mpm超の際)には金属帯のエッジ部(端部)に塗布液が行き渡らず、コーティングムラ(カスレ)が発生した。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、高速塗布の際においても、広幅の金属帯のエッジ部におけるカスレの発生が抑制された連続塗布装置、および、連続塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、プレコータの予備塗布ロールへの塗布液の供給方法によって、カスレなどの塗布欠陥が生じることを見出した。本発明者らは、該知見に基づいてさらに検討を行ったところ、所定の大きさおよび形状のスリット状開口部を有するプレコートノズルを用いて塗布液を予備塗布ロールに供給することにより、上記課題が解決できることを見出した。
つまり、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の連続塗布装置は、金属帯の少なくとも片面に塗布液を予備塗布する予備塗布ロール、および、予備塗布ロールの直下に設けられ、予備塗布ロールの軸方向に延在するスリット状開口部を持ち、スリット状開口部から塗布液を予備塗布ロールに供給するプレコートノズルを有するプレコータと、プレコータの下流側で予備塗布された金属帯の表面に塗布液を本塗布するロールコータとを備える連続塗布装置であって、予備塗布ロールの軸方向に沿ったスリット状開口部の長さが金属帯の帯幅以上であり、予備塗布ロールの軸方向に直交する方向に沿ったスリット状開口部の幅が、予備塗布ロールの軸方向におけるスリット状開口部の中央から両端側に向かうにつれて漸増することを特徴とする。
【0010】
また、予備塗布ロールの軸方向におけるスリット状開口部中央でのスリット状開口部の幅Wと、予備塗布ロールの軸方向におけるスリット状開口部端部でのスリット状開口部の幅Wとの比(W/W)が、1.2〜2.0であることが好ましい。
また、プレコートノズルが、予備塗布ロールの軸方向で、スリット状開口部を挟んだ両側にスリット状開口部に沿って設けられた一対の線状のブラシを備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明の連続塗布方法は、金属帯の少なくとも片面に、上流側で予備塗布ロール、および、予備塗布ロールの直下に設けられ、予備塗布ロールの軸方向に延在するスリット状開口部を持つプレコートノズルを有するプレコータにより塗布液が予備塗布され、予備塗布後、下流側でロールコータにより塗布液が本塗布される連続塗布方法であって、予備塗布ロールの軸方向に沿ったスリット状開口部の長さが金属帯の帯幅以上であり、予備塗布ロールの軸方向に直交する方向に沿ったスリット状開口部の幅が予備塗布ロールの軸方向のスリット状開口部における中央から両端側に向かうにつれて漸増し、スリット状開口部からプレコートノズルの直上にある予備塗布ロールの表面に塗布液を供給する方法である。
【0012】
また、本発明の連続塗布方法においては、予備塗布ロールの軸方向におけるスリット状開口部中央でのスリット状開口部の幅Wと、予備塗布ロールの軸方向におけるスリット状開口部端部でのスリット状開口部の幅Wとの比(W/W)が、1.2〜2.0であることが好ましい。
また、本発明の連続塗布方法においては、予備塗布ロールの軸方向に、スリット状開口部を挟んだ両側にスリット状開口部に沿って一対の線状のブラシを配置し、スリット状開口部から供給された塗布液の流れ方向を予備塗布ロールの軸方向に向かうようにブラシに案内させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高速塗布の際においても、広幅の金属帯のエッジ部におけるカスレの発生が抑制された連続塗布装置、および、連続塗布方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の連続塗布装置の第1の実施態様の要部構成例を示す概要図である。
図2図1に示す連続塗布装置に用いられるプレコートノズルの模式的斜視図である。
図3】本発明の連続塗布装置の第2の実施態様の要部構成例を示す概要図である。
図4図2に示す連続塗布装置に用いられるプレコートノズルの構成を正面から見た断面図である。
図5図4のA−A線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の連続塗布装置および連続塗布方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
<連続塗布装置(第1の好適実施形態)>
まず、図1を参照して、本発明の連続塗布装置の第1の好適実施形態を説明する。
図1は、本発明の連続塗布装置100の要部構成例を示す概要図である。
図1に示すように、帯状被塗布体である金属帯Sは、図示しない上流側の処理セクション、例えば、連続焼鈍設備、塗布前処理設備等から本発明の連続塗布装置100を経て下流側の処理セクション、例えば、焼付設備、乾燥設備へ、パスライン10に沿って矢印の方向に所定の速度で連続搬送される。
連続塗布装置100は、一対のプレコータ(予備塗布装置)12、12、一対のロールコータ(本塗布装置)30、30とからなり、プレコータ12、12がロールコータ30、30よりもパスライン10の上流側にある。そして、パスライン10を搬送される金属帯Sは、金属帯Sを厚さ方向両側から挟んで対向するように配置された一対のプレコータ12、12の間、および、金属帯Sを厚さ方向両側から挟んで対向するように配置された一対のロールコータ30、30の間に挟まれている。
以下では、まず、金属帯Sについて詳述し、その後プレコータ12およびロールコータ30の構成について詳述する。
【0017】
(金属帯S)
金属帯Sは、長尺状であり、その種類は特に制限されない。例えば、冷延鋼板、各種めっき鋼板、アルミニウム板などが挙げられる。
【0018】
(プレコータ)
プレコータ12は、金属帯Sの表面への本塗布に先立って、金属帯Sの表面に対して塗布液Pを塗布することにより予備塗布を行う装置である。
プレコータ12は、塗布液タンク(図示しない)と、塗布液供給管(図示しない)と、ポンプ(図示しない)と、予備塗布ロール14と、プレコートノズル16と、液受けパン24とを有する。
【0019】
塗布液タンクは、プレコータ12で使用される塗布液Pを貯留するタンクであり、塗布液Pは後述する塗布液供給管を介してプレコートノズル16に供給される。
塗布液供給管は、塗布液タンクとプレコートノズル16とをつなぐ管であり、その途中にポンプを備える。該ポンプによって、塗布液タンクから塗布液Pが塗布液供給管を介してプレコートノズル16へ供給される。
なお、プレコートノズル16への塗布液Pの供給方法は上記塗布液タンクに限定されず、後述する塗布液パン38からポンプによって塗布液供給管を介して供給されてもよい。
また、塗布液タンクまたは塗布液パン38の配置位置をプレコートノズル16の配置位置よりも高くして、ポンプを使用せず、高低差を利用して塗布液Pをプレコートノズル16に供給してもよい。
【0020】
予備塗布ロール14は、搬送される(走行する)金属帯Sに接触して、プレコートノズル16より供給された塗布液Pを金属帯Sに塗布(転写)する。該予備塗布ロール14は、表面に溝加工を施したゴムがライニングされたゴムライニングロールから構成される。
なお、予備塗布ロール14は金属帯Sの進行方向と逆向きにリバース回転可能に構成されている。すなわち、予備塗布ロール14の表面と金属帯Sの表面とが互いに接触しているとき、その接触位置において、予備塗布ロール14の表面の進行方向が金属帯Sの進行方向と逆向きとなる方向へ、予備塗布ロール14は回転可能に構成されている。
【0021】
プレコートノズル16は、上述した予備塗布ロール14に塗布液Pを供給するために使用されるノズルであり、予備塗布ロール14の直下に配置される。
図2は、プレコートノズル16の模式的斜視図である。
プレコートノズル16は、ノズル本体16aとスリット状開口部形成部材16bとから構成される。プレコートノズル16には、スリット状開口部18が設けられており、該開口部18より塗布液Pが吐出され、塗布液Pが予備塗布ロール14に供給される。スリット状開口部18は予備塗布ロール14の軸方向に延在し、スリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向の開口長さLは金属帯Sの帯幅と同じ長さを有する。つまり、スリット状開口部18の長手方向が予備塗布ロール14の軸方向に略平行になるように、スリット状開口部18が設けられる。なお、図1においては、スリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向に沿った開口長さLが金属帯Sの帯幅と同じである態様を示すが、その開口長さLは金属帯Sより大きい場合であっても、金属帯Sのエッジ部のカスレは抑制される。
【0022】
一方、スリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向の開口長さLが金属帯Sの帯幅未満の場合、金属帯Sのエッジ部においてカスレなどの塗布不良が発生する。
上述した特許文献2で挙げた態様においては、金属帯Sの帯幅よりも短いスリット状開口部を有するプレコートノズルが使用されている。しかし、本実施形態のように予備塗布ロール14を使用して予備塗布する場合は、カスレなどの塗布不良を抑制するためには、特許文献2の態様に反してスリット状開口部18の開口長さLは金属帯Sの帯幅以上であることが必要とされる。
【0023】
また、予備塗布ロール14の軸方向とは直交する方向に沿ったスリット状開口部18の幅は、予備塗布ロール14の軸方向(スリット状開口部18の長手方向)のスリット状開口部18の中央から両端側に向かうにつれて漸増している。このようにスリット状開口部18の開口幅が、中央よりも両端側でより大きくなることにより、金属帯Sのエッジ部におけるカスレなどの塗布不良の発生がより抑制される。
なお、スリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向(長手方向)中央における開口幅Wと端部における開口幅Wとの比(W/W)は、金属帯Sのエッジ部におけるカスレなどの塗布不良の発生がより抑制される点で、1.2〜2.0であることが好ましい。
図1においては、スリット状開口部18の開口幅が長手方向中央から長手方向両端まで線形的(直線的)に漸増している態様を示すが、他の態様であってもよい。例えば、スリット状開口部18の長手方向中央から長手方向両端まで非線形的(例えば、曲線的)に漸増していてもよい。
【0024】
本実施形態においては、スリット状開口部18はスリット状開口部形成部材16bに設けられている。スリット状開口部形成部材16bは、円筒形のノズル本体16aの外周面上に軸方向に沿って設けられ、ノズル本体16aと連通する部材である。該スリット状開口部形成部材16bは、ノズル本体16aの外周面から予備塗布ロール14の方向に向かって延設される。該スリット状開口部形成部材16bにスリット状開口部18を設けることにより、塗布液Pがより予備塗布ロール14に向かって吐出され、塗布液Pの供給効率が高まり、好ましい。
なお、本実施形態に限定されず、スリット状開口部形成部材16bを設けずに、ノズル本体16aの外周面上にスリット状開口部18を設けてもよい。
【0025】
液受けパン24は、プレコートノズル16の直下に設置される。液受けパン24は、予備塗布ロール14およびプレコートノズル16より落下した塗布液Pを受ける上方に開放した受け皿であり、予備塗布ロール14とプレコートノズル16の下方に位置する。液受けパン24は、予備塗布ロール14およびプレコートノズル16が常に上方に位置するに足りる面積を有する。
液受けパン24は、図示しない戻りラインに繋がっており、回収した塗布液Pは塗布液タンク(図示しない)に戻される。
【0026】
(ロールコータ)
ロールコータ30は、プレコータ12により予備塗布された金属帯Sに対して、ロールにより塗布液Pを塗布して本塗布を行う装置である。
ロールコータ30は、ピックアップロール32、ミタリングロール34、アプリケータロール36、および塗布液パン38を有する。
【0027】
ピックアップロール32は、塗布液パン38から塗布液Pを汲み上げるロールである。ピックアップロール32は表面をクロムメッキ等された金属ロールであり、ピックアップロール32の表面とアプリケータロール36の表面とは、互いに接触している。ピックアップロール32は、接触するアプリケータロール36の回転方向と同じ向きに回転可能に構成されている。
【0028】
ミタリングロール34は、ピックアップロール32上の塗布液Pの液量を調整するロールである。ミタリングロール34は表面をクロムメッキ等された金属ロールであり、ミタリングロール34の表面とピックアップロール32の表面とは、所定の間隙をあけて近接している。ミタリングロール34はその位置を調整可能であり、ミタリングロール34とピックアップロール32との間隙の大きさを調整できる。該間隙を調整することにより、ピックアップロール32上の塗布液Pの液量を調整できる。ミタリングロール34の回転方向は、近接配置されたピックアップロール32の回転方向と同じである。
なお、ミタリングロール34には、塗布液Pをかきとるブレード(図示しない)が設置されている。
【0029】
アプリケータロール36は、ピックアップロール32上の塗布液Pを金属帯Sに転写するロールであり、ピックアップロール32と接触するように配置される。アプリケータロール36は表面をゴム被覆されたゴムロールであり、アプリケータロール36は金属帯Sの進行方向と逆向きにリバース回転可能に構成されている。すなわち、アプリケータロール36の表面と金属帯Sの表面とが互いに接触しているとき、その接触位置Xb1において、アプリケータロール36の表面の進行方向が金属帯Sの進行方向と逆向きとなる方向へ、アプリケータロール36は回転可能に構成されている。
【0030】
塗布液パン38は上方が開放した受け皿であり、直上にピックアップロール32が位置している。ピックアップロール32の下端の高さ位置は、塗布液パン38中の塗布液Pの液面よりも下方にある。
なお、塗布液パン38は、塗布液タンク(図示しない)と供給ライン(図示しない)を介してつながっており、一定量の塗布液Pが常時供給され、塗布液Pの液面の高さは一定に保たれている。また、塗布液パン38の底部には塗布液Pの排出口(図示しない)を有しており、塗布液タンクに塗布液Pを戻す戻りライン(図示しない)とつながっている。
【0031】
<連続塗布方法>
次に、上記した連続塗布装置100を用いた、連続塗布方法について詳述する。
まず、金属帯Sが搬送ロール(図示しない)によってパスライン10を下流側から上流側へ連続搬送され、一対のプレコータ12、12同士の間に入る。
【0032】
一方のプレコータ12では、予備塗布ロール14の表面が金属帯Sの一方の表面に接触しており、予備塗布ロール14は金属帯Sの進行方向と逆向きにリバース回転している。予備塗布ロール14の表面には、プレコートノズル16のスリット状開口部18から吐出された塗布液Pが付着しており、接触位置Xa1において、予備塗布ロール14の表面に付着している塗布液Pが金属帯Sの表面に転写される。
他方のプレコータ12においても、接触位置Xa2において、予備塗布ロール14の表面に付着した塗布液Pが金属帯Sの他方の表面に転写される。
つまり、接触位置Xa1および接触位置Xa2において、金属帯Sは両面を予備塗布され、予備塗布された金属帯Sが下流側のロールコータ30へ搬送される。
【0033】
なお、プレコートノズル16には、塗布液タンク(図示しない)からポンプ(図示しない)によって供給ライン(図示しない)を介して塗布液Pが供給されており、供給された塗布液Pは、スリット状開口部18から吐出され予備塗布ロール14表面に付与される。
【0034】
一定量の塗布液Pを塗布されて予備塗布を終えた金属帯Sは、パスライン10を下方から上方へ連続搬送され、一対のロールコータ30同士の間に入る。
ロールコータ30のピックアップロール32の下端は、塗布液パン38中の塗布液Pの液面より下方の高さ位置にあるので、塗布液パン38内の塗布液Pに浸かっており、塗布液Pがピックアップロール32の表面に付着する。ピックアップロール32が回転し、ピックアップロール32の表面に付着した塗布液Pは、ミタリングロール34とピックアップロール32との間隙を通過し、所定の液量となるように計量される。なお、ミタリングロール34の表面に計量後に付着している塗布液Pは、ブレード(図示しない)により除去される。
【0035】
所定の液量となった塗布液Pは、ピックアップロール32とともに回転し、ピックアップロール32とアプリケータロール36とが接触している接触位置へ運ばれ、該接触位置において、アプリケータロール36の表面に転写される。アプリケータロール36の表面に転写された塗布液Pは、アプリケータロール36とともに回転し、アプリケータロール36の表面と金属帯Sの表面との接触位置Xb1に達する。該接触位置Xb1において、アプリケータロール36の表面に付着している塗布液Pが、予備塗布された金属帯Sの上に転写され、本塗布を終える。
なお、他方のロールコータ30においても、接触位置Xb2において、アプリケータロール36の表面に付着している塗布液Pが、予備塗布された金属帯Sの上に転写される。
【0036】
本塗布を終えた金属帯Sは、パスライン10によって、連続塗布装置100の下流側の次の工程へ搬送される。例えば、本塗布された金属帯Sは、図示されない焼付設備、乾燥設備等で加熱乾燥されて所望の皮膜が形成される。
【0037】
本発明においては、プレコートノズル16に設けられたスリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向の長さを金属帯Sの帯幅以上の長さにすると共に、スリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向と直交する方向の幅をスリット状開口部の長手方向中央部から両端側に向かって漸増させることによって、280mpm以上の高速ラインにおいてもエッジ部で塗布欠陥のない金属帯Sを得ることができる。
【0038】
<連続塗布装置(第2の好適実施形態)>
以下に、図3を参照して、本発明の連続塗布装置の第2の好適実施形態を説明する。
図3は、本発明の連続塗布装置200の要部構成例を示す概要図である。
図3に示すように、連続塗布装置200は、プレコータ112とロールコータ30とを備える。プレコータ112中のプレコートノズル116は、ノズル本体16a、立設壁20と、ブラシ22とを備える。
図3に示す連続塗布装置200は、スリット状開口部形成部材16bを有さず、立設壁20およびブラシ22を備える点以外を除いて、図1に示す連続塗布装置100と同様の構成を有するものであるため、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、主として立設壁20およびブラシ22について説明する。
【0039】
図4は、プレコートノズル116の構成を正面から見た断面図であり、図5図4中の矢印A−A線から見た断面矢視図である。
【0040】
図4および図5に示すように、予備塗布ロール14の軸方向(スリット状開口部18の長手方向)で、プレコートノズル116のスリット状開口部18を挟んだ両側にスリット状開口部18に沿って延びる一対の立設壁20が設けられる。この立設壁20を設けることにより、スリット状開口部18より吐出された塗布液Pはその立設壁20に案内されて、予備塗布ロール14の軸方向に流れ、予備塗布ロール14に対してより一様なコーティングを施すことができ、好ましい。
【0041】
また、図4および図5に示すように、立設壁20上には線状のブラシ22が設けられる。該ブラシ22を設けることにより、スリット状開口部18より吐出された塗布液Pの予備塗布ロール14への流れがより促進されると共に、吐出された塗布液Pがブラシ22の小さい隙間を通って上昇し、液の飛散も減少し、予備塗布ロール14への塗布液Pの供給をより効率よく行うことができ、好ましい。
なお、図4および図5においては、ブラシ22を立設壁20上に設けているが、ブラシ22を直接ノズル本体16aのスリット状開口部18を挟んだ両側でスリット状開口部18に沿って線状に設けてもよい。
【0042】
ブラシ22を構成する材料は特に限定されるものではなく、ロールにキズが入りにくく、かつ、ロールに接触したときに、カスが出にくい素材が好ましく、1本1本が別れたブラシになっていてもよく、フェルト状になっていてもよい。
ブラシ22の長さは、金属帯Sのエッジ部のカスレがより防止される点で、0.3〜3.0cmが好ましく、0.5〜2.0cmがより好ましい。
【0043】
なお、図面では、金属帯Sを縦(地面と垂直)に流すパスとして記載したが、金属帯Sを横に流すパスとしてもよい。また、表裏同時塗布の場合を例示したが、表裏の塗布位置をずらしたり、表裏片面ずつの塗布としてもよい。
また、図面では、ロールの回転をリバース回転としたが、ナチュラル回転としてもよい。
【実施例】
【0044】
本実施例では、図3に示した第2の実施形態と同様の構成を有する連続塗布装置200を使用し、ライン速度を変更しながら、塗布液Pを金属帯Sに連続塗布した。連続塗布した金属帯Sは、その板厚は0.5mm、板幅は1290mmであった。また、プレコートノズル116のスリット状開口部18の予備塗布ロール14の軸方向に沿った開口長さLは1290mmであった。また、スリット状開口部18の開口幅は予備塗布ロール14の軸方向におけるスリット状開口部18の中央から両端側に向かって直線的に漸増していた。より具体的には、予備塗布ロール14の軸方向におけるスリット状開口部18の中央での幅WCと端部での幅WEとの比(WE/WC)は、1.5であった。なお、両端部は同じ開口幅であった。
なお、ブラシ22として、ポリプロピレン製の9mmの長さのブラシを用い、プレコートノズル116は、金属帯Sの幅方向の中心線を通りスリット状開口部18の該プレコートノズル116から供給された塗布液Pが金属帯Sの全幅に供給されるようにプレコートノズル116の位置を調整した。言い換えると、金属帯Sの幅方向における中心線を通る法線が、プレコートノズル116のスリット状開口部18の幅方向の中心線を通るように位置が調整される。
また、比較例1として、プレコートノズル116のスリット状開口部18を矩形状として、開口長さLを1270mmに、予備塗布ロール14の軸方向におけるスリット状開口部18の中央での幅WCと端部での幅WEとの比(WE/WC)を1.0にした以外は、実施例で使用した連続塗布装置200を使用し、塗布液Pを金属帯Sに連続塗布した。また、比較例2として、プレコートノズル116のスリット状開口部18を矩形状として、開口長さLを1290mmに、予備塗布ロール14の軸方向におけるスリット状開口部18の中央での幅WCと端部での幅WEとの比(WE/WC)を1.0にした以外は、実施例で使用した連続塗布装置200を使用し、塗布液Pを金属帯Sに連続塗布した。
【0045】
ライン速度を250〜300mpmに変更した際に、金属帯Sのエッジ部においてカスレがあるか否かを判定した。カスレがない場合は「○」、わずかにカスレがある場合を「△」、カスレがある場合を「×」とした。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、実施例においては、ライン速度を300mpmに変更した場合であっても、塗布液Pのカスレは確認されなかった。
一方、スリット状開口部18が矩形状で開口長さLが金属帯Sより短い比較例1においては、ライン速度250mpmにおいてカスレが発生した。また、スリット状開口部18が矩形状で開口長さLは金属帯Sと同じの比較例2においては、ライン速度300mpmにおいてカスレが発生した。
【符号の説明】
【0048】
100,200 連続塗布装置
10 ラインパス
12,122 プレコータ
14 予備塗布ロール
16,116 プレコートノズル
16a ノズル本体
16b スリット状開口部形成用部材
18 スリット状開口部
20 立設壁
22 ブラシ
30 ロールコータ
32 ピックアップロール
34 ミタリングロール
36 アプリケータロール
S 金属帯
P 塗布液
図1
図2
図3
図4
図5