(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015405
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】サーボアンプ
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20161013BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
H05K7/20 E
H01L23/40 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-271032(P2012-271032)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-116529(P2014-116529A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】西川 秀樹
【審査官】
三森 雄介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/091692(WO,A1)
【文献】
特開2008−60430(JP,A)
【文献】
特開2008−47798(JP,A)
【文献】
特開2001−111266(JP,A)
【文献】
特開平10−117464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/34−23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付基台を兼ねたフレーム構造になるフィン付きヒートシンクと、該ヒートシンクに被着してその前方側に基板収納空間を画成したケースカバーと、該ケースカバーの内側に配置した主回路基板,および制御回路基板と、前記ヒートシンクの前方に配置して主回路基板と制御回路基板の間を連係する中継回路基板との組立体になり、前記主回路基板にはパワー半導体デバイス,電解コンデンサを含む回路部品を搭載装備し、かつ該基板の後部域に搭載したパワー半導体デバイスをヒートシンクに重ね合わせて組立てたサーボアンプにおいて、
前記ヒートシンクの前面に熱遮蔽板を覆設してその前方の基板収納空間とヒートシンクとの間を熱遮蔽した上で、該熱遮蔽板の前面に中継回路基板を取付けたことを特徴とするサーボアンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のサーボアンプにおいて、中継回路基板を熱遮蔽板にスナップフィット結合して所定位置に取付け、この取付け位置でプラグイン式のコネクタを介して主回路基板,および制御回路基板に中継接続したことを特徴とするサーボアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボアンプに関し、詳しくはその組立構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
周知のように、汎用サーボアンプはIGBTなどのパワー半導体デバイス,電解コンデンサなどの回路部品を実装した回路基板とヒートシンクを組合せてケースカバーに収容して組立てた構成になり、その従来構造(例えば、特許文献1、特許文献2参照)を
図7〜
図10に示す。なお、
図7はサーボアンプの外観図、
図8は
図7の分解斜視図、
図9は主回路基板の斜視図、
図10は
図7の内部構造を表す略示断面図(横断面図)である。
【0003】
すなわち、この汎用サーボアンプは、ヒートシンク10と、該ヒートシンク10を基体としてヒートシンクに組み付けたケースカバー20と、該ケースカバー20の内方に収納配置した主回路基板30,および制御回路基板40と、ヒートシンク10の前方に配置して主回路基板30と制御回路基板40の間を連係する中継回路基板50を主要部品として組立て構成されている。
【0004】
ここで、ヒートシンク10は取付基台を兼ねたフレーム構造のアルミダイキャスト品になり、11は放熱フィン、12は後端部に設けた取付ベース、13は冷却フィン11に組み付けた風冷ファン13である。
【0005】
また、ケースカバー20は、
図8で示すように胴内の前半部に後記する回路基板の収納空間を画成した側壁カバー21と前面カバー22からなり、側壁カバー21はその後部を前記ヒートシンク10に被せてねじ締結し、前面カバー22には7セグメントLEDからなる表示部や操作用ボタンを有する操作パネル部、および主回路,制御回路に備えた端子台の接続口を備えている。
【0006】
一方、
図9に示す主回路基板30は、IGBTなどのパワー半導体デバイス31,電解コンデンサ32などを含む主回路部品、および主回路の入出力端子,インターフェース用端子などの端子台33を搭載した構成になり、該基板の中央部位には後記する中継回路基板50に接続するプラグイン式のコネクタ34を備えている。
【0007】
そして、前記主回路基板30は、
図10のように部品搭載面を内側に向けて側壁カバー21の胴内側壁に沿ってその内側に配置され、該基板の後部域に搭載したパワー半導体デバイス31をヒートシンク10に重ね合わせた状態でヒートシンクにねじ締結している。
【0008】
また、
図10に示した側壁カバー21の胴内には、制御回路基板40が側壁カバー21の胴内の前記主回路基板30と反対側サイド側壁に沿って部品搭載面を内側に向けて配置され、さらに主回路基板30と制御回路基板40との間を連係する中継回路基板50がヒートシンク10の前部に配置してねじ締結されており、この組立て位置で中継回路基板50の左右両縁部に設けたコネクタ51,52を介して主回路基板30に設けたコネクタ34、および制御回路基板40の後端に設けたコネクタ41と接続して基板相互間を連係している。
【0009】
上記構成になるサーボアンプは次記手順で組立てる。まずヒートシンク10の前端面(回路基板の収納側)に中継回路基板50を組み付ける。次いで、主回路基板30に搭載したパワー半導体デバイス31の主面に伝熱用グリースを塗布してヒートシンク10に重ね合わせ、この状態で主回路基板30をヒートシンク10にねじ締結する。この際に主回路基板30のコネクタ34が中継回路基板50に設けたコネクタ51に接続される。この組立段階で
図8のようにケースカバー20の側壁カバー21を前方から被せる。次に、側壁カバー21の前方から制御回路基板40を挿入してコネクタ41と52の間を接続し、最後に側壁カバー21の前面に前面カバー22を取付ける。なお、図中において、42は制御回路基板40の前端に設けた入出力の端子台、60はヒートシンク10の後端部に配置した回生抵抗である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−138485号公報
【特許文献2】特開2011−14786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記の汎用サーボアンプは、搭載部品の熱的な信頼性を確保しつつ、体格をできる限り小さく抑えて製品を小形,コンパクトに構成することが望まれている。
かかる点、前記した従来の組立構造では次記のよう課題がある。すなわち、
(1)
図10で示すように、ケースカバー20の内部では胴内後部に収設したヒートシンク10と胴内の前半域に画成した基板収納空間との間が自由に連通している。このために、パワー半導体デバイス31,およびヒートシンク10から周囲に放散する熱が図示矢印で表すように前方の基板収納空間に拡散し、この熱によって主回路基板30の前部域に搭載した電解コンデンサ32のように周囲温度の上昇の影響を受け易い回路部品が温度上昇して寿命が低下するおそれがある。
【0012】
そこで、従来の汎用サーボアンプでは、
図7で示すようにヒートシンク10に風冷ファン13を組み付け、ケースカバー20の胴内空気を換気してその基板収容空間に熱が籠もらないようにしている。しかしながら、風冷ファン13を備えてケースカバー20の内部を換気すると、周囲から吸い込んだ粉塵がケースカバー10の胴内に拡散して回路部品の表面に堆積してその絶縁性が低下するほか、ファン13の運転に伴う騒音の問題もある。(2)また、従来構造では主回路基板30と制御回路基板40を左右に振り分けて側壁カバー21の胴内側壁に沿って配置した上で、両基板の間を中継回路基板50で連係するようにレイアウトしており、ここで中継回路基板50はアース電位に設置されているヒートシンク10に対して、その前端面にボス(基板の取付台座)を介してねじ止めしている。
【0013】
しかしながらこの組立構造では、基板に導体パターンを形成した中継回路基板50とヒートシンク10との間を離間して安全な絶縁距離を確保する必要があり、そのために製品の小形,コンパクト化が制限される。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的はファンを使用せずに搭載回路部品の熱的信頼性を確保しつつ、製品の小形,コンパクト化、および組立性向上が図れるように組立構造を改良したサーボアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、取付基台を兼ねたフレーム構造になるフィン付きヒートシンクと、該ヒートシンクに被着してその前方側に基板収納空間を画成したケースカバーと、該ケースカバーの内側に配置した主回路基板,および制御回路基板と、前記ヒートシンクの前方に配置して主回路基板と制御回路基板の間を連係する中継回路基板との組立体になり、前記主回路基板にはパワー半導体デバイス,電解コンデンサを含む回路部品を搭載装備し、かつ該基板の後部域に搭載したパワー半導体デバイスをヒートシンクに重ね合わせて組立てたサーボアンプにおいて、
前記ヒートシンクの前面に熱遮蔽板を覆設してその前方の基板収納空間とヒートシンクとの間を熱遮蔽した上で、該熱遮蔽板の前面に前記中継回路基板を取付けるものとする(請求項1)。
【0016】
また、前記構成において、中継回路基板を熱遮蔽板にスナップフィット結合して所定位置に取付け、この取付け位置でプラグイン式のコネクタを介して主回路基板,および制御回路基板に中継接続する(請求項2)。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、ケースカバーの胴内後部に配置したヒートシンクとその前方側に画成した基板収納空間との間が熱遮蔽板で仕切られる。これにより、主回路基板の後部に搭載したパワー半導体デバイス,ヒートシンクから周囲に放出する熱が熱遮蔽板で遮られ、その前方の基板収納空間の温度上昇が抑制される。したがって、従来構造のようにヒートシンクに風冷ファンを組み合わせてケースカバーの内部空間を強制換気しなくても、主回路基板の前部側に搭載した電解コンデンサ、および制御回路基板に搭載した各種回路部品の熱的な信頼性を確保でき、これによりサーボアンプのファンレス化が達成できる。
【0018】
また、前記中継回路基板を熱遮蔽板にスナップフィット結合して所定位置に取付け、この取付け位置でプラグイン式のコネクタを介して主回路基板,および制御回路基板に中継接続することにより、その組立性が向上して製品の組立工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例によるサーボアンプの組立構成図であって、(a)は外観斜視図、(b)は(a)のカバーケース内の組立構造を略示的に表す横断平面図である。
【
図2】
図1における熱遮蔽板の取付け構造を表す図であって、(a)熱遮蔽板の単体外観図、(b)は熱遮蔽板をヒートシンクに装着した組立体の外観斜視図である。
【
図3】
図2の組立体に中継回路基板を装着した組立体の外観斜視図である。
【
図4】
図1における主回路基板をヒートシンクに装着する組立手順の説明図であって、(a),(b)はそれぞれ主回路基板の装着,ねじ締結状態を表す斜視図である。
【
図5】
図4の組立体にカバーケースの側壁カバーを被着する組立手順の説明図である。
【
図6】
図5に続く制御回路基板の装着手順の説明図であって、(a),(b)はそれぞれ制御回路基板の装着前,装着後の状態を表す斜視図である。
【
図7】従来における汎用サーボアンプの外観斜視図である。
【
図9】
図7のサーボアンプに搭載した主回路基板の構成斜視図である。
【
図10】
図7のサーボアンプにおける内部の組立構造を表す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図6に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で、
図7〜
図10に対応する部品には同じ符号を付してその説明は省略する。
図示実施例の汎用サーボアンプは、基本的に従来のサーボアンプと同様にヒートシンク10、ケースカバー20、主回路基板30、制御回路基板40、および中継回路基板50の組立体で構成されているが、従来構造と比べて以下に述べる点で組立構造が異なる。
【0021】
すなわち、
図1(a),(b)で示すように、図示実施例のサーボアンプに搭載したヒートシンク10は、その放熱フィン11に風冷ファン13(
図7参照)を備えてない自冷式の構造である。また、このヒートシンク10の前面には新たに熱遮蔽板(例えば樹脂板)70を覆設してヒートシンク10とケースカバー20の胴内前半域に画成した基板収納空間との間を間仕切りしており、この熱遮蔽板70の前面には中継回路基板70を後記のようにスナップフィット結合して所定位置に装着し、この中継回路基板50を介して主回路基板30と制御回路基板40との間を連係するようにしている。
【0022】
この組立構造によれば、ケースカバー20の胴内後部に配置したヒートシンク10とその前方側に画成したケースカバー内方の基板収納空間との間が熱遮蔽板70で仕切られており、これによりパワー半導体デバイス31,ヒートシンク10から周囲に放散する熱が熱遮蔽板70で遮られる。これにより、主回路基板30の前部側に搭載した電解コンデンサ32、および制御回路基板40に搭載した各種回路部品がヒートシンク10からの放熱に曝されることがなく、搭載部品の熱的信頼性を確保できる。そのほか、ファンレスとしてケースカバー20の内部を強制換気しないので、周囲からケース内に粉塵を吸い込んで回路部品の絶縁性が低下することも防げる。
【0023】
次に前記した中継回路基板50,および熱遮蔽板70の詳細な取付け構造、およびその組立手順を
図2〜
図6により説明する。
まず、
図2(a)に示す熱遮蔽板70は樹脂成形品(断熱材)になり、その板面には図示のように表面側に起立する円弧状の係合カバー71、裏面側に突き出す係合爪72、および中継回路基板70を両側からスナップフィット結合する一対の係合爪73が形成されている。そして、組立時には
図2(b)のように熱遮蔽板70をヒートシンク10の前面側(回路基板の収納側)の端面に重ね合わせ、前記係合カバー71をヒートシンク10の側面に形成したボス14に嵌め合わせた状態で矢印方向に押込み、裏面側の係合爪72をヒートシンクに形成した係合凹溝(
図1(b)参照)に引っ掛けて所定位置に係止固定する。
【0024】
次に、
図2(b)の組立体に対して、
図3のように熱遮蔽板70の前面に中継回路基板50を定位置に位置決めして重ね合わせ、熱遮蔽板70に形成した一対の係合爪73の間に矢印方向に圧挿してスナップフィット結合する。なお、中継回路基板50の左右両側縁部には主回路基板30,制御回路基板40に対応するプラグイン式のコネクタ51,52を備えている。
【0025】
このように、中継回路基板50を熱遮蔽板70にスナップフィット結合することで、所定位置への位置合せが容易にできるとともに、面倒なねじ締め作業が必要なくなって組立性が向上する。
【0026】
さらに、
図3の組立体に対して、次に
図4(a),(b)で示すように主回路基板30を装着する。この組立工程では、主回路基板30に搭載したパワー半導体デバイス31の主面にシリコーンなどの伝熱グリースを塗布した上で、
図4(a)で示すように主回路基板30に搭載した回路部品を下に向けて基板の左端縁を斜め上方からヒートシンク10の角部に形成した凹溝に嵌入して位置決めし、次いで回路基板30矢印方向に倒して
図4(b)のようにヒートシンク10に重ね合わせる。なお、この基板重ね合わせ操作により、主回路基板30の中央に設けたコネクタ34(
図9参照)が中継回路基板50のコネクタ51へ自動的にプラグイン接続されるとともに、パワー半導体デバイス31がヒートシンク10と伝熱的に重なり合う。続いて
図4(b)で示すように、締結ねじ35を主回路基板30に通してヒートシンク10のねじ穴に螺合,締結し、主回路基板30をこの位置に固定する。
【0027】
この組立体に対し、次の工程では
図5のように前方からケースカバーの側壁カバー21を被せ、側壁カバー21の後端部をヒートシンク10の後端枠部にねじ止めする。これにより、主回路基板30が部品搭載面を内側に向けて側壁カバー21の胴内側壁に沿ってその内側に配置される。
【0028】
次に、
図6(a)で示すように側壁カバー21の前方からその右側壁に沿って制御回路基板40を挿入して定位置に押込みセットする。これにより、制御回路基板40の後端部に設けたプラグイン式のコネクタ41(
図1(b)参照)が先に組み付けた中継回路基板50のコネクタ52にプラグイン接続される。この状態で
図6(b)のように側壁カバー21の側方からねじ23を通し、制御回路基板40の板面に穿孔した穴を貫通してヒートシンク10に設けたボス14(
図2(b)参照)のねじ穴に螺合する。これにより、制御回路基板40が側壁カバー21の胴内の前記主回路基板30とは反対側サイドの側壁に沿った所定の組立位置に部品搭載面を内側に向けて固定される。そして、最後に側壁カバー21の前部に前面カバー22(
図8参照)を被着することでサーボアンプの組立てが完成する。
【符号の説明】
【0029】
10:ヒートシンク
11:放熱フィン
12:取付ベース
20:ケースカバー
21:側壁カバー
22:正面カバー
30:主回路基板
31:パワー半導体デバイス
32:電解コンデンサ
34:コネクタ
40:制御回路基板
41:コネクタ
50:中継回路基板
51,52:コネクタ
70:熱遮蔽板
72,73:係合爪(スナップフィット)