特許第6015416号(P6015416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015416
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】積算計
(51)【国際特許分類】
   G06M 1/00 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G06M1/00 A
   G06M1/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-275816(P2012-275816)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-120048(P2014-120048A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】田口 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠一
(72)【発明者】
【氏名】川村 樹
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−311287(JP,A)
【文献】 実開昭57−144621(JP,U)
【文献】 実開昭52−124651(JP,U)
【文献】 実公昭44−12419(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 1/00− 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの両側壁にシャフトの両端部を支持し、このシャフトに複数個の文字車を挿通配置するとともに、前記各文字車の相互間にピニオンギヤを噛合形成し、前記文字車の最下位桁と最上位桁との各外側面に当接して前記文字車の前記シャフト方向への自由移動を規制する係止部材を前記シャフトに設け、順次文字車の最下位桁から上位桁へと桁上げ動作するようにした積算計において、前記シャフトの端部に前記フレームに対して位置決めを行うために転造加工によって径小軸部を形成するとともに、前記文字車の組み付け位置を設定するために前記係止部材を嵌め込むための径小軸部を転造加工によって形成し、少なくとも最下位桁の前記文字車に位置する前記シャフトの外周面に速乾性のオイルを塗布してなることを特徴とする積算計。
【請求項2】
前記文字車の最下位桁と前記係止部材との接触する部分に前記速乾性のオイルを塗布してなることを特徴とする請求項1に記載の積算計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下位桁から順次上位桁へと複数の文字車を回転駆動してたとえば車両などの走行距離を計測表示する積算計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の積算計は、速度計などのフレームに架設されたシャフトに複数個の文字車を挿通し、各文字車の相互間にピニオンギヤを噛合させ、最下位桁文字車の1回転毎にピニオンギヤを介して上位桁側の文字車を桁上げ回転させ、順次文字車の下位桁から上位桁へと桁上げ動作するように構成している。
ところで、フレームに架設されるシャフトには、特許文献1や特許文献2などに示されているように、そのシャフトの端部にフレームに対して位置決めを行うための径小軸部を形成したり、各文字車の組み付け位置を設定するために係止部材となるスナップワッシャ(丸くさび)を嵌め込むための径小軸部を形成している。この径小軸部を形成する場合、切削によって形成すると製造コストが高くなってしまうため、転造加工によってシャフトの径小軸部を形成することによって製造コストを抑えるようにしている。
【0003】
【特許文献1】実公昭44−12419号公報
【特許文献2】特開平4−311287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前述の特許文献1あるいは特許文献2による積算計にあっては、シャフトの製作時において、金型を押しつけながらシャフトを回転する際に金型とシャフトとが滑ることがあるため、金型の表面を粗面加工することによって滑りを抑えるようにしている。このため、金型の粗面となっている表面がシャフトに転写されてしまい、シャフトの表面が荒れてしまうため、文字車の回転駆動時においてスムーズな回転が得られないことがあり、文字車の桁上げ作動などにおいて支障を来す虞がある。この問題点を解決するために、桁上げ時の摩擦抵抗を軽減する目的として回転駆動の頻度の高い下位桁側の文字車と接触するシャフトにグリースを塗布することも考えられるが、積算計の組立時において、文字車の歯車表面にグリースが付着してしまい、商品性を低下させてしまうという問題点を有していた。
【0005】
そこで本発明は、前述の問題点に着目し、製造コストを低く抑え、かつ文字車の作動を円滑に保つことのできる積算計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述した課題を解決するため、請求項1では、フレームの両側壁にシャフトの両端部を支持し、このシャフトに複数個の文字車を挿通配置するとともに、各文字車の相互間にピニオンギヤを歯合形成し、文字車の最下位桁と最上位桁との各外側面に当接して文字車のシャフト方向への自由移動を規制する係止部材をシャフトに設け、順次文字車の最下位桁から上位桁へと桁上げ動作するようにした積算計において、前記シャフトの端部に前記フレームに対して位置決めを行うために転造加工によって径小軸部を形成するとともに、前記文字車の組み付け位置を設定するために前記係止部材を嵌め込むための径小軸部を転造加工によって形成し、少なくとも最下位桁の前記文字車に位置する前記シャフトの外周面に速乾性のオイルを塗布してなることを特徴とする積算計である。
【0007】
このように構成することにより、シャフトに設けられる径小軸部を転造加工によって形成することができるため製造コストを低く抑えることができ、かつ少なくとも最下位桁文字車に位置するシャフトの外表面に速乾性のオイルを塗布することによって文字車の回転駆動を円滑に作動することができる。また、文字車表面に速乾性のオイルが付着した場合であっても、速乾性であるため目立たなくすることができるため、商品性を低下させるという問題も解消することができる。(商品性の低下を軽減できる。)
【0008】
また請求項2では、前記文字車の最下位桁と前記係止部材との接触する部分に前記速乾性のオイルを塗布してなることを特徴とする請求項1に記載の積算計である。
【0009】
このように構成することにより、最下位桁の文字車と係止部材との接触部分に速乾性のオイルを塗布することで摺動による摩擦を軽減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、製造コストを低く抑え、かつ文字車の作動を円滑に保つことのできる積算計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態である積算計を指示計器に組み付けた状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1の積算計の要部構造を示す一部を断面で表した正面図である。
図3図3は、図2の積算計を分解した状態を示す要部の正面図である。
図4図4は、図1のフレームに対し、シャフトの取り付け状態を示す要部の側面図である。
図5図5は、図3のシャフトの成形前と成形後とを示す概略図および一部拡大模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の対象とする積算計を車両用の指示計器(速度計)のフレームに組み付けたものを示すものであり、以下本発明の積算計の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1から図5は本発明の積算計の第1の実施形態を示すものであり、積算計機構は、金属製材料からなるシャフト1に複数個の文字車2を挿通し、この複数個の文字車2の相互間にピニオンホルダー3を配置し、このピニオンホルダー3に回転可能に組み付けられたピニオンギヤ4と、このピニオンギヤ4と文字車2とを噛合形成しており、この文字車2の1回転毎にピニオンギヤ4を介して上位桁側の文字車2を桁上げ回転させ、順次文字車2の下位桁から上位桁へと桁上げ動作するように構成している。
【0014】
また、積算計に設けられたシャフト1の両端部分は、コ字状に形成された速度計本体の保持枠であるフレーム5に掛け渡されて固定保持されるように設けられている。
【0015】
保持枠であるフレーム5の側壁端部には、シャフト1が保持されるように窪みからなる溝部50が設けられている。この場合、溝部50の両側の立ち上がり箇所にはシャフト1を固定するための加締め用突部51が設けられ、フレームの5の溝部50にセットした後、加締め用突部51の端面箇所をシャフト1側へと塑性変形することにより、シャフト1の両端部がフレーム5に組み付け保持される。
【0016】
なお、最下位桁の文字車2のさらに下位桁側には、例えば車両などの速度計本体からの回転駆動を伝達するための歯車6がシャフト1に挿通されている。
【0017】
また、本実施形態においては、フレーム5に対し、シャフト1がその軸線方向に移動することを防ぐために、シャフト1の軸部の両端部に径小軸部1aが転造加工によって形成されている。
【0018】
またシャフト1には、各文字車2の組み付け位置を設定するために、係止部材7である丸くさびを嵌め込むための径小軸部1bが転造加工によって形成されている。
【0019】
本実施形態においては、径小軸部1bは最下位桁の文字車2の外側面箇所と最上位桁の文字車2の外側面箇所との二箇所に設けているが、どちらか一方には径小軸部1bを設けない場合もあり、その際には、係止部材7としてリング状のカラーをシャフト1の端部から圧入して所定の位置に配置するようにすればよいものである。
【0020】
シャフト1の製作時において、図示はしないが金型による転造加工によってシャフト1に径小軸部1a,1bを成形する際、金型を押しつけながらシャフト1を回転する時に金型とシャフト1とが滑ることがないように金型の表面を粗面加工することによって滑りを抑えるようにしている。このため、金型の粗面となっている表面がシャフト1に転写されてしまうため、シャフト1の表面が細かい凹凸となって荒れてしまうが、文字車2の回転駆動時においてスムーズな回転が得られるようにシャフト1の外周面に速乾性のオイル8を塗布するようにしている。本実施形態においては、速乾性のオイル8として、液状の潤滑剤を用いており、塗布後においては、べたつきのないセミドライ膜が形成される。
【0021】
このように構成された積算計機構にあっては、シャフト1に設けられる径小軸部1aを転造加工によって形成することができるため製造コストを低く抑えることができ、かつ少なくとも最下位桁文字車2に位置するシャフト1の外表面に速乾性のオイル8を塗布することによって文字車2の回転駆動を円滑に作動することができる。また、文字車2の表面に速乾性のオイル8が付着した場合であっても、速乾性であり目立たなくすることができるため、商品性の低下を軽減することができる。
【0022】
また文字車2の最下位桁と係止部材7である丸くさびとの接触する部分に速乾性のオイル8を塗布してなることにより、最下位桁の文字車2と係止部材7(丸くさび)との接触部分に速乾性のオイル8を塗布することで摺動による摩擦を軽減することができる。
【0023】
なお、速乾性のオイル8は、シャフト1の全体に塗布するようにしても良いものであり、結果的にシャフト1の外表面の凹凸箇所に塗布することによって、文字車2の回転駆動を円滑に行うことが可能となればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
また、前述した実施形態において詳述したように、車両用の積算計を例にして説明したが、車両用計器に限らず船舶用計器の稼働時間を積算表示するアワメータなどの積算計あるいは農業用機械や建設機械などの特殊車両の積算計などにおいても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 シャフト
1a,1b 径小軸部
2 文字車
3 ピニオンホルダー
4 ピニオンギヤ
5 フレーム
6 歯車
7 係止部材(丸くさび)
8 速乾性のオイル
50 溝部
51 加締め用突部
図1
図2
図3
図4
図5