(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
斜板室と弁収容孔と複数のシリンダボアが形成されたハウジングと、該ハウジングに回転可能に軸支された回転軸と、該回転軸に一体回転可能に連結されるとともに前記斜板室内に収められた斜板と、前記複数のシリンダボアに往復動可能に収容されるとともに前記斜板に係留された複数のピストンと、前記複数のシリンダボア内には前記複数のピストンにより各々圧縮室が区画され、前記弁収容孔に嵌挿されるとともに前記回転軸と一体回転可能に設けられたロータリーバルブとを備え、
前記ハウジングには、前記シリンダボアと前記弁収容孔とを連通するシリンダボア側連通路がシリンダボア毎に形成されており、
前記ロータリーバルブには、前記ロータリーバルブの回転に伴って、異なる前記シリンダボア側連通路間を順次連通させるロータリーバルブ側連通路が形成されている斜板式圧縮機において、
複数の前記ピストンは、周方向に延在する環状溝と、該環状溝と連通するとともに軸方向に延在する直線溝とを周面上に備え、
前記ピストンの往復動に伴って、前記直線溝と、該直線溝を備えたピストンが収容されるシリンダボアと連通するシリンダボア側連通路とが対向して連通し、
前記ロータリーバルブ側連通路により連通される前記異なるシリンダボア側連通路は、第1のシリンダボア側連通路と第2のシリンダボア側連通路であり、
前記第1のシリンダボア側連通路と連通する前記シリンダボアの前記圧縮室は、前記第2のシリンダボア側連通路と連通する前記シリンダボアの前記圧縮室と比較して高圧であり、
前記異なるシリンダボア側連通路の連通時において、前記第1のシリンダボア側連通路と、前記第1のシリンダボア側連通路と連通する前記シリンダボアに収容された前記ピストンの前記直線溝とが対向して連通し、該直線溝内のガスが、前記第1のシリンダボア側連通路、前記ロータリーバルブ側連通路、前記第2のシリンダボア側連通路、前記第2のシリンダボア側連通路と連通する前記シリンダボア、へと流れることを特徴とする斜板式圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る可変容量型斜板式圧縮機(以下、単に圧縮機とする)を
図1〜
図7に基づいて説明する。
なお、
図1における左側を前方とし、右側を後方とする。
図1に示す圧縮機10のハウジング11は、複数のシリンダボア15が形成されたシリンダブロック12と、そのシリンダブロック12の前部側に接合されるフロントハウジング13と、シリンダブロック12の後部側に接合されるリヤハウジング14とから構成されている。
フロントハウジング13からリヤハウジング14まで通される通しボルト16の前後方向の締め付けにより、フロントハウジング13、シリンダブロック12及びリヤハウジング14が一体的に固定され、ハウジング11が形成される。
【0022】
シリンダブロック12及びフロントハウジング13により区画形成された空間は、斜板室17を形成している。
そして、回転軸18が斜板室17の中央付近を貫通するように備えられており、回転軸18はフロントハウジング13に設けられるラジアル軸受19を介して回転可能に支持されている。
回転軸18の前部を支持するラジアル軸受19の前方に、回転軸18の周面に亘って摺接する軸封装置20が備えられている。軸封装置20は、リップシールであり、斜板室17内の冷媒ガスが、フロントハウジング13と回転軸18の間から漏洩することを防止している。
回転軸18の前端は、図示しない動力伝達機構を介して外部駆動源に連結されており、回転軸18は外部駆動源により回転可能となっている。
【0023】
斜板室17における回転軸18には、ラグプレート21が一体回転可能に固着されている。
ラグプレート21の後方における回転軸18には、斜板22が、回転軸18の軸線方向へスライド可能及び傾動可能に支持されている。なお、ラグプレート21とフロントハウジング13との間にはスラスト軸受23が介在されている。
斜板22とラグプレート21との間にはヒンジ機構24が介在されている。ヒンジ機構24は、斜板22から突出して形成された一対の斜板アーム25がラグプレート21から突出して形成された一対のラグアーム26の間に挿入され、結合されることにより構成されている。従って、斜板22はヒンジ機構24によってラグプレート21に連結され、回転軸18との同期回転及び回転軸18の軸方向への傾動が可能となる。
【0024】
回転軸18におけるラグプレート21と斜板22との間にはコイルスプリング27が巻装されているほか、コイルスプリング27の押圧により後方へ付勢される摺動自在の筒状体28が回転軸18に嵌挿されている。
斜板22は、コイルスプリング27の付勢力を受けた筒状体28により常に後方、すなわち、斜板22の傾斜角度が減少する方向(斜板22が立つ方向)へ向けて押圧される。なお、斜板22の傾斜角度とは、ここでは回転軸18と直交する面と斜板22の面により成す角度を意味している。
【0025】
図1に示すように、斜板22の前部にはストッパ部22Aが突設され、このストッパ部22Aがラグプレート21に当接することにより、斜板22の最大傾斜角位置が規制される。斜板22の後方における回転軸18にはシリンダブロック12に規制されたコイルスプリング29が巻装されている。斜板22の後部がコイルスプリング29の前部に当接することにより、斜板22の最小傾斜角位置が規制される。また、コイルスプリング29は、圧縮機の最小容量運転から中間容量運転へ切り換わる時に、斜板22を傾斜する方向へ復帰させる補助機能を有する。
【0026】
シリンダブロック12の複数のシリンダボア15は、
図2に示すように、本実施形態では6個のシリンダボア15A、15B、15C、15D、15E、15Fより構成されている。シリンダボア15(15A〜15F)内には、片頭型のピストン30(30A、30B、30C、30D、30E、30F)が往復移動可能に収容されている。
図1に示すようにピストン30の首部がシュー31を介して斜板22の外周に係留されている。
そして、回転軸18の回転に伴って斜板22が回転運動されるとき、シュー31を介して各ピストン30が往復移動される。なお、ピストン30の構成は後述する。
【0027】
一方、シリンダブロック12の中心部には弁収容孔43が形成されており、弁収容孔43にはロータリーバルブ44が嵌挿されている。ロータリーバルブ44は回転軸18と一体回転可能に連結されている。従って、回転軸18は、前部側をラジアル軸受19で軸支されることにより支持され、後部側をロータリーバルブ44によってシリンダブロック12に軸支されることにより支持されている。なお、ロータリーバルブ44の構成は後述する。
【0028】
一方、
図1に示されるように、リヤハウジング14の前部側とシリンダブロック12の後部側との間は、バルブプレート32、吸入弁プレート33、吐出弁プレート34及びリテーナ35よりなる弁形成体36が介在されている。
シリンダボア15内におけるピストン30と弁形成体36間には圧縮室38がそれぞれ区画されている。
リヤハウジング14内の中心側には、吸入室37が形成されており、吸入室37はバルブプレート32に設けられる各吸入ポート32Aによりシリンダボア15内の圧縮室38と連通されている。
また、リヤハウジング14の外周側には、吐出室39が形成されており、吐出室39はバルブプレート32に設けられる各吐出ポート32Bによりシリンダボア15内の圧縮室38と連通されている。吐出室39と吸入室37は隔壁14Aにより隔絶されている。
【0029】
各吸入ポート32Aには、吸入ポート32Aを覆うように吸入弁33Aが設けられ、各吐出ポート32Bには、吐出ポート32Bを覆うように吐出弁34Aが設けられている。
また、吸入室37は吸入通路40を介して図示しない外部冷媒回路と接続されており、吐出室39は吐出通路41を介して上記外部冷媒回路と接続されている。
【0030】
吸入通路40を介して外部冷媒回路から吸入室37へ吸入された冷媒ガスは、ピストン30の上死点位置から下死点位置への移動により、吸入ポート32A及び吸入弁33Aを介して圧縮室38内に吸入される。
圧縮室38A〜38F内に吸入された冷媒ガスは、ピストン30の下死点位置から上死点位置への移動により所定の圧力にまで圧縮され、吐出ポート32B及び吐出弁34Aを介して吐出室39へ吐出される。
【0031】
シリンダブロック12には、吸入室37と斜板室17とを連通する図示しない抽気通路が形成されている。また、シリンダブロック12及びリヤハウジング14には、吐出室39と斜板室17とを連通する図示しない給気通路が設けられると共に、この給気通路には容量制御弁42が配設されている。
この容量制御弁42の弁開度の調整を介して吐出室39から斜板室17に導入される高圧の冷媒ガスの導入量と、斜板室17から吸入室37へ導出させる冷媒ガスの導出量とのバランスにより、斜板室17内の斜板室圧力が決定される。
これにより、ピストン30を挟んだ斜板室17内と圧縮室38内の圧力の差が変更されて、斜板22の傾斜角が変更され、ピストン30のストロークが変えられ、吐出容量が調整される。
【0032】
図3(a)、(b)に示すように、ピストン30は、ヘッド部45とヘッド部45の前部側に延在したシュー支持部46とから構成されている。ヘッド部45の周面上には、周方向に延在する環状溝45Aと、軸方向に延在し環状溝45Aと連通する直線溝45Bとが形成されている。環状溝45Aは、周方向の全周にわたり形成され、ヘッド部45における圧縮室38を臨む後部側に形成されている。環状溝45Aの溝断面は円弧状である。直線溝45Bは、ヘッド部45における後部側から前部側に向けて形成されており、直線溝45Bの後端部が環状溝45Aと連通している。直線溝45Bの溝断面は円弧状である。環状溝45A及び直線溝45Bは、圧縮室38から漏洩するブローバイガスを捕捉し一時的に貯留するためのものである。
【0033】
図2に示すように、シリンダブロック12には、複数のシリンダボア15A〜15Fをそれぞれ個別に弁収容孔43に連通させる複数のシリンダボア側連通路47が形成されている。
ここで、シリンダボア15A〜15Fと弁収容孔43を連通させる6個のシリンダボア側連通路47をそれぞれ順に47A、47B、47C、47D、47E、47Fとする。
【0034】
図2に示すように、シリンダボア15A〜15Fは、弁収容孔43の周りで周方向に等間隔(60°間隔)に並ぶように形成されている。
図2において、シリンダボア15F内のピストン30Fは上死点位置にあり、シリンダボア15C内のピストン30Cは下死点位置にある。なお、
図1は
図2におけるB−B線断面図を示したものであり、
図5及び
図6は、
図2におけるC−C線断面図を示したものである。
図5又は
図6に示すように、圧縮行程にあるシリンダボア15A内のピストン30Aの周面に形成された直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bにおける軸方向の開口部の一部と、シリンダボア側連通路47Aにおけるシリンダボア15A側の開口部とが連通している。なお、直線溝45Bの軸方向の長さは、後述する一方のシリンダボア15に対応するシリンダボア側連通路47A〜47Fと他方のシリンダボア15に対応するシリンダボア側連通路47A〜47Fとが連通する斜板22の回転角において、各ピストン30A〜30Fの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47A〜47Fとが、最小容量運転時を除いて、それぞれ連通する長さに設定されている。
【0035】
図4に示すように、ロータリーバルブ44は、前部側の小径部48と後部側の大径部49からなる柱状体で形成され、小径部48が回転軸18のリヤ側凹部18A内に圧入されることにより回転軸18と一体化されている。
大径部49の周面には、案内溝50が形成されている。案内溝50は、軸方向の接続溝50A、50Bと両接続溝50A、50Bを前部側で繋ぐ周回溝50Cとからなっている。接続溝50A、50Bは、大径部49の周面における後部側から前部側に向けて形成されている。接続溝50A、50Bは、円周方向に180°間隔で形成されている。周回溝50Cは、大径部49の周面における周方向に半周(180°)にわたり形成されている。接続溝50A、50Bの軸方向の前端部と、周回溝50Cの円周方向の両端部とがそれぞれ連結されている。接続溝50A、50B及び周回溝50Cは、溝断面は円弧状である。
【0036】
図2に示すように、ロータリーバルブ44の案内溝50は、ロータリーバルブ44の回転に伴って、異なるシリンダボア側連通路47A〜47F間を順次連通させるロータリーバルブ側連通路に相当する。ロータリーバルブ44は、弁収容孔43内で矢印R方向に回転する。
図2では、シリンダボア側連通路47Aとシリンダボア側連通路47Dは案内溝50を介して互いに連通している。ロータリーバルブ44が矢印R方向に回転すると、シリンダボア側連通路47Bとシリンダボア側連通路47Eは案内溝50を介して互いに連通する。このように、ロータリーバルブ44の回転に伴って、異なるシリンダボア側連通路47A〜47F間(シリンダボア側連通路47A、47D間、シリンダボア側連通路47B、47E間、シリンダボア側連通路47C、47F間、シリンダボア側連通路47D、47A間、シリンダボア側連通路47E、47B間、シリンダボア側連通路47F、47C間)を案内溝50を介して順次連通させることが可能である。
【0037】
ところで、異なるシリンダボア15間において、一方のシリンダボア15内にある直線溝45Bは、他方のシリンダボア15と、シリンダボア側連通路47及び案内溝50を経由して連通可能である。
この実施形態においては、
図5に示すように、シリンダボア15Aとシリンダボア15D間において、シリンダボア15A内にある直線溝45Bは、シリンダボア15Dと、シリンダボア側連通路47A、47D及び案内溝50を介して連通可能である。併せてシリンダボア15D内にある直線溝45Bは、シリンダボア15Aと、シリンダボア側連通路47A、47D及び案内溝50を介して連通可能である。よって、圧縮行程にあるシリンダボア15A内のブローバイガスは、直線溝45B、シリンダボア側連通路47A、案内溝50、シリンダボア側連通路47Dを経由して吸入行程にあるシリンダボア15D内の直線溝45Bに送られ回収される。シリンダボア15B、15E間、シリンダボア15C、15F間、シリンダボア15D、15A間、シリンダボア15E、15B間、シリンダボア15F、15C間においても、シリンダボア15A、シリンダボア15D間と同様である。
【0038】
次に、上記構成を有する圧縮機10につき
図5〜
図7を参照して作用説明を行う。
図5は、圧縮機10が中間容量運転をしている場合を示している。なお、中間容量運転とは、最大容量運転と最小容量運転との間の運転状態を指している。
図5では、斜板22の傾斜角度は最小傾斜角位置と最大傾斜角位置の中間的な位置にある。
シリンダボア15A内のピストン30Aが圧縮行程にあるとき、シリンダボア15Aと対向する位置に配置されたシリンダボア15D内のピストン30Dは吸入行程にある。このとき、ピストン30Aの周面に形成された直線溝45Bの前方の部分とシリンダボア側連通路47Aとは連通しており、ピストン30Dの周面に形成された直線溝45Bの後方の部分とシリンダボア側連通路47Dとは連通している。
【0039】
圧縮室38A内の冷媒ガスは、圧縮されることにより高圧となるが、冷媒ガスの一部は、ブローバイガスとしてシリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩する。このブローバイガスは、環状溝45Aによって捕捉され、直線溝45Bに到達する。そして、直線溝45Bに到達したブローバイガスはシリンダボア側連通路47Aを介して弁収容孔43へ送られる。
ここで、斜板室17の圧力をPcとし、圧縮室38Aの圧力をPdとし、圧縮室38Dの圧力をPsとする。シリンダボア15A内のピストン30Aは圧縮行程にあるので、Pc<Pdの関係がある。よって、圧縮室38Aの冷媒ガスは圧力の低い斜板室17の方向へブローバイガスとして漏洩しやすい。
【0040】
一方、回転軸18の回転に伴いロータリーバルブ44の周面に形成された案内溝50は、所定のタイミングでシリンダボア側連通路47A及びシリンダボア側連通路47Dと連通する。よって、シリンダボア側連通路47Aに達したブローバイガスは、案内溝50に至り、案内溝50の接続溝50A、周回溝50C、接続溝50Bを経由してシリンダボア側連通路47Dに至り、シリンダボア15D内にあるピストン30Dの直線溝45Bに送られる。
【0041】
また、シリンダボア15D内のピストン30Dは吸入行程にあるので、Pc>Psの関係がある。よって、シリンダボア側連通路47Dを経由してシリンダボア15D内における直線溝45Bに送られたブローバイガスは、斜板室17と圧縮室38D間の圧力差により、シリンダボア15Dの内周面とピストン30Dの外周面との間の微小な隙間を通って圧縮室38D側へ送られ回収される。なお、
図5において矢印はブローバイガスの移動する方向を示したものである。
【0042】
このように、圧縮行程にある圧縮室38Aからのブローバイガスが、吸入行程にある圧縮室38Dに送られ回収される作用については、圧縮室38B、38E間、圧縮室38C、38F間、圧縮室38D、38A間、圧縮室38E、38B間、圧縮室38F、38C間でも同様に行われる。
【0043】
図6は、圧縮機10が最大容量運転をしている場合を示している。このとき、斜板22の傾斜角度は最大傾斜角位置にある。
シリンダボア15A内のピストン30Aが圧縮行程にあるとき、シリンダボア15Aと対向する位置に配置されたシリンダボア15D内のピストン30Dは吸入行程にある。このとき、ピストン30Aの周面に形成された直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとは連通しており、圧縮室38Dとシリンダボア側連通路47Dとは連通している。この場合には、ピストン30Dの周面に形成された直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Dとは連通していないが、これはピストン30Dのストロークが大きくなっているためである。
【0044】
中間容量運転時と同様に、圧縮室38Aより漏洩したブローバイガスは、ピストン30Aの環状溝45Aによって捕捉され、直線溝45Bに到達し、シリンダボア側連通路47Aを通って案内溝50に至り、案内溝50の接続溝50A、周回溝50C、接続溝50Bを経由してシリンダボア側連通路47Dに至り、シリンダボア15D内にある圧縮室38Dに直接送られ回収される。
【0045】
シリンダボア15A内のピストン30Aは圧縮行程にあるので、Pc<Pdの関係がある。よって、圧縮室38Aの冷媒ガスは圧力の低い斜板室17の方向へブローバイガスとして漏洩しやすい。
また、シリンダボア15D内のピストン30Dは吸入行程にあるが、圧縮機10が最大容量運転をしているので、Pc≒Psの関係があり、斜板室17と圧縮室38D間の圧力差はない状態である。
このように、最大容量運転時においては、斜板室17と圧縮室38D間の圧力差を利用して、ピストン30Dの直線溝45Bに送られたブローバイガスを、シリンダボア15Dの内周面とピストン30Dの外周面との間の微小な隙間を通って圧縮室38Dに回収することは難しい場合がある。しかし、ブローバイガスを圧縮室38Dへ直接送り込み回収することが可能なので、最大容量運転時においても斜板室17側へ漏洩するブローバイガスを効率よく低減できる。なお、
図6において矢印はブローバイガスの移動する方向を示したものである。
【0046】
このように、圧縮行程にある圧縮室38Aからのブローバイガスが、吸入行程にある圧縮室38Dに直接送られ回収される作用については、圧縮室38B、38E間、圧縮室38C、38F間、圧縮室38D、38A間、圧縮室38E、38B間、圧縮室38F、38C間でも同様に行われる。
【0047】
図7は、回転軸18の回転角度とシリンダボア内(圧縮室38A〜38F)の圧力の関係を示すグラフである。横軸は回転軸18の回転角度(deg.)を表し、縦軸はシリンダボア内の圧力を示す。ピストン30A〜30Fが上死点位置にあるときの回転角度を0°、360°とし、下死点位置にあるときの回転角度を180°としている。どちらであるかは、斜板の回転角でなくシリンダボア内の圧力によって決まるのが実際であるが、ここでは便宜上、回転角度0°〜180°間を吸入行程、回転角度180°〜360°間を圧縮行程と定義する。
図7において、圧縮行程における回転角度αが、ロータリーバルブ44の周面に形成された案内溝50と、シリンダボア側連通路47Aとが連通する所定のタイミングに相当する。なお、回転角度αは、本実施形態においては、シリンダボア内(圧縮室38A)の圧力が圧縮により上昇し、最大圧力となる回転角度より少し小さい回転角度に設定されているが、ロータリーバルブ44の組み付け方によって適宜変更可能である。この場合には、α=300°に設定されている。
図7において、吸入行程における回転角度βが、ロータリーバルブ44の周面に形成された案内溝50と、シリンダボア側連通路47Dとが連通する所定のタイミングに相当する。なお、α=β+180°の関係がある。すなわち、回転角度αの状態にある圧縮室38Aからのブローバイガスは、回転角度βの状態にある圧縮室38Dに回収される。破線はブローバイガスの回収方向を示している。この場合には、β=120°に設定されている。
なお、圧縮室38B、38E間、圧縮室38C、38F間、圧縮室38D、38A間、圧縮室38E、38B間、圧縮室38F、38C間でも同様である。
【0048】
図示しないが、最小容量運転時には、斜板22の傾斜角度は0°ではなく、若干の角度を有している。この時に、直線溝45Bとシリンダボア側連通路47とが連通しないよう、直線溝45Bの長さが設定されている。よって、最小容量運転時には、圧縮行程にあるシリンダボア15から吸入行程にあるシリンダボア15へのブローバイガス供給は行われない。ところで、最小容量運転時においては、吸入行程にあるシリンダボア15へのブローバイガス供給は、斜板22の傾斜角度増大につながり、最小容量維持の観点からして不利である。しかし、ブローバイガス供給が行われないように直線溝45Bの長さが設定されていることにより、上記不具合を防止することが可能である。
【0049】
第1の実施形態に係る圧縮機10によれば以下の効果を奏する。
(1)ピストン30A〜30Fには環状溝45Aと直線溝45Bがそれぞれ形成され、各直線溝45Bは対応するシリンダボア側連通路47A〜47Fと個別に連通可能であり、所定の回転角度αではロータリーバルブ44の案内溝50とシリンダボア側連通路47A及び47Dとは連通可能である。特に、中間容量運転時においては、圧縮行程にある圧縮室38Aからのブローバイガスは、ピストン30Aの直線溝45B、シリンダボア側連通路47A、案内溝50、シリンダボア側連通路47Dを経由して吸入行程にあるピストン30Dの直線溝45Bに送られ、圧力差により圧縮室38Dへ送り込み回収することができる。圧縮室38B、38E間、圧縮室38C、38F間、圧縮室38D、38A間、圧縮室38E、38B間、圧縮室38F、38C間でも作用効果は圧縮室38A、38D間の作用効果と同様である。よって、直線溝45Bを設けることにより、さまざまな吐出容量に対応可能であり、さまざまな吐出容量において斜板室17側へ漏洩するブローバイガスを効率よく低減できる。
(2)最大容量運転時においては、圧縮行程にある圧縮室38Aからのブローバイガスは、ピストン30Aの直線溝45B、シリンダボア側連通路47A、案内溝50、シリンダボア側連通路47Dを経由して吸入行程にあるシリンダボア15D内にある圧縮室38Dに直接送り込み回収することができる。圧縮室38B、38E間、圧縮室38C、38F間、圧縮室38D、38A間、圧縮室38E、38B間、圧縮室38F、38C間でも作用効果は、圧縮室38A、38D間の作用効果と同様である。ブローバイガスを他方のシリンダボア15におけるピストン30との間隙に戻すと、斜板室17の圧力が低い場合にブローバイガスが斜板室17へと漏洩してしまう可能性があるが、他方のシリンダボア15における圧縮室38に直接戻すなら、ブローバイガスが斜板室17へと漏洩しにくい。
(3)ロータリーバルブ側連通路は、ロータリーバルブ44の周面に設けられた案内溝50なので、ロータリーバルブ44の周面に案内溝50を設けるだけで良く、製造が容易である。また、回収されるブローバイガス中には潤滑油が含まれているので、ロータリーバルブ44周面と弁収容孔43間へ潤滑油を供給することができ、ロータリーバルブ44の摺動性を高めることが可能である。
(4)案内溝50と、シリンダボア側連通路47Aとが連通する回転角度αは、圧縮行程にあるシリンダボア内(圧縮室38A)の圧力が圧縮により上昇し、最大圧力となる回転角度より少し小さい回転角度に設定されているので、斜板室17側へ漏洩するブローバイガスが増大するタイミングで回収でき、ブローバイガスの回収効率を向上可能である。
(5)回転角度αの状態にある圧縮室38Aからのブローバイガスは、回転角度βの状態にある圧縮室38Dに回収される。(但し、α=β+180°)ところで、吸入弁33Aが開くタイミングで吸入弁33Aの自励振動が発生することがあるが、この自励振動発生直後にブローバイガスを圧縮室38Dに戻すことにより、吸入弁33Aの振動を抑止し脈動の低減を行える。また、ブローバイガスを吸入行程に戻すことにより、回収したブローバイガスの圧力分だけピストン30が下死点側へと押されるので、圧縮機を駆動するための動力が低減される。
(6)最小容量運転時には、直線溝45Bとシリンダボア側連通路47とが連通しないよう、直線溝45Bの長さが設定されている。よって、最小容量運転時には、圧縮行程にあるシリンダボア15から吸入行程にあるシリンダボア15へのブローバイガス供給は行われない。従って、ブローバイガス供給を行うことによる斜板22の傾斜角度増大などの不具合を防止することが可能である。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る圧縮機を
図8及び
図9に基づいて説明する。
この実施形態は、第1の実施形態におけるロータリーバルブ44の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0051】
図8に示すように、本実施形態のロータリーバルブ60は、前部側の小径部61と後部側の大径部62からなる柱状体で形成され、小径部61が回転軸18のリヤ側凹部18A内に圧入されることにより回転軸18と一体化されている。
大径部49の内部には、案内室63が設けられ、大径部49の周面には案内孔64、65が設けられ、案内室63と案内孔64、65とは連通されている。案内室63は円柱状の空間を有している。案内孔64、65は、軸心方向に向けて貫通形成され、それぞれ円周方向に180°間隔で形成されている。
【0052】
ロータリーバルブ60の案内室63と案内孔64、65は、ロータリーバルブ60の回転に伴って、異なるシリンダボア側連通路47A〜47F間を順次連通させるロータリーバルブ側連通路に相当する。
図9に示すように、シリンダボア側連通路47Aと案内室63とは案内孔64を介して連通され、シリンダボア側連通路47Dと案内室63とは案内孔65を介して連通されている。
【0053】
回転軸18の回転に伴い所定のタイミングで、ロータリーバルブ60の周面に形成された案内孔64は、シリンダボア側連通路47Aと連通すると共に、案内孔65は、シリンダボア側連通路47Dと連通する。よって、圧縮室38Aからのブローバイガスは、ピストン30Aの直線溝45B、シリンダボア側連通路47A、案内孔64を通って案内室63に至り、案内室63で一時的に貯留される。そして、案内室63に貯留されたブローバイガスは、案内孔65、シリンダボア側連通路47Dを経由してシリンダボア15D内にあるピストン30Dの直線溝45Bに送られ、圧力差により圧縮室38Dへ回収することができる。なお、
図9において矢印はブローバイガスの移動する方向を示したものである。
【0054】
このように、案内室63が設けられているために、圧縮室38Aより漏洩したブローバイガスを案内室63で一時的に貯留できる。案内室63とシリンダボア15Dとの距離は、シリンダボア15Aとシリンダボア15Dの距離よりも短いので、ブローバイガスの回収効率の安定や向上を図れる。また、案内室63が設けられているために、ロータリーバルブの周面に案内溝50のようなガス通路を設ける場合と比較して、ロータリーバルブの周面と弁収容孔43間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するブローバイガスを少なくすることができる。
その他の作用効果については、第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る圧縮機を
図10〜
図12に基づいて説明する。
この実施形態は、第2の実施形態における回転軸18及びロータリーバルブ60の形状を変更したものであり、その他の構成は共通である。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0056】
図10に示すように、本実施形態の圧縮機70においては、回転軸71の中心部には軸孔71Aが形成され、軸孔71Aの前部側には軸封装置20側に開口する連通孔71Bが形成され、軸孔71Aの後部側はロータリーバルブ72側に開口している。そして、回転軸71の後部側端部に軸孔71Aより大径のリヤ側凹部71Cが形成されている。
【0057】
図11及び
図12に示すように、ロータリーバルブ72は、径の異なる筒状体より形成され、外側の大径部73と内側の小径部74より構成されている。大径部73と小径部74間には前部側に開口する空間部73Aが形成され、小径部74の内側には前後方向に連通する通し孔74Aが形成されている。小径部74は前部側に突出して形成されている。大径部73の周面には案内孔73B、73Cが設けられ、空間部73Aと案内孔73B、73Cとは連通されている。案内孔73B、73Cは、円周方向に180°間隔で形成されている。
【0058】
図10に示すように、小径部74の前部側の突出部が回転軸71のリヤ側凹部71Cに圧入されることにより回転軸71と一体化されている。そして、軸孔71Aと通し孔74Aとは連通されている。大径部73の前部側が回転軸71の後端部で閉塞されることにより、大径部73の内側にはドーナツ状の案内室75が形成される。案内室75と案内孔73B、73Cとは連通されている。弁収容孔43は、弁形成体36に形成された絞り孔76を介して吸入室37と連通している。
【0059】
ロータリーバルブ72の案内室75と案内孔73B、73Cは、ロータリーバルブ72の回転に伴って、異なるシリンダボア側連通路47A〜47F間を順次連通させるロータリーバルブ側連通路に相当する。
シリンダボア側連通路47Aと案内室75とは案内孔73Bを介して連通され、シリンダボア側連通路47Dと案内室75とは案内孔73Cを介して連通されている。
ロータリーバルブ72の作用効果については、第2の実施形態におけるロータリーバルブ60と同様なので説明を省略する。
【0060】
このように、回転軸71の中心部に形成された軸孔71Aは、前部側が連通孔71Bを介して軸封装置20の収容空間に開口し、後部側がロータリーバルブ72の通し孔74Aを介して弁収容孔43に開口している。また、弁収容孔43は絞り孔76を介して吸入室37と連通している。なお、軸封装置20の収容空間と斜板室17とは連通している。よって、斜板室17と吸入室37とは、軸封装置20の収容空間、連通孔71B、軸孔71A、通し孔74A、弁収容孔43、絞り孔76を介して連通した状態にあり、潤滑油を含んだ冷媒ガスを斜板室17から吸入室37に至る上記経路で循環することにより、軸封装置20に潤滑油を供給することが可能である。このことにより軸封装置20の耐久性を向上できる。
【0061】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 第1〜第3の実施形態において、最大容量運転時に、圧縮行程にあるシリンダボア15から吸入行程にあるピストン30の直線溝45Bへとブローバイガスを供給するようにしてもよい。前述したように、最大容量運転時においては、吸入行程にあるピストン30の直線溝45Bへのブローバイガス供給は、斜板室17へとブローバイガスが漏洩する可能性があるが、ピストン30とシリンダボア15間の隙間や直線溝45Bの長さを調整することにより対応可能である。
○ 第1〜第3の実施形態では、弁形成体36に吐出ポート32B及び吐出弁34Aと共に、吸入ポート32A及び吸入弁33Aを設けるとして説明したが、吸入ポート32A及び吸入弁33Aがロータリーバルブに形成されていても良い。すなわち、ロータリーバルブ内に吸入室と連通する供給通路を形成すると共に、シリンダブロックにシリンダボアと連通する吸入通路を形成し、供給通路と吸入通路とを所定のタイミングで連通可能とすれば良い。
○ 第1〜第3の実施形態では、回転角度αの状態にある圧縮室38Aからのブローバイガスは回転角度βの状態にある圧縮室38Dに回収されるとして説明したが、
図13に示すように、回転角度αの状態にある圧縮室からのブローバイガスを、圧縮初期行程にある回転角度β1の状態にある圧縮室に回収しても良いし、吸入行程と圧縮行程の境界にある回転角度β2の状態にある圧縮室に回収しても良いし、さらに、吸入初期行程にある回転角度β3の状態にある圧縮室に回収しても良い。なお、α=β1+60°、α=β2+120°、α=β3+240°の関係があり、α=300°、β1=240°、β2=180°、β3=60°となっている。この場合には、異なるシリンダボア側連通路47A〜47F間を順次連通させるロータリーバルブ側連通路の形状(円周方向の設定角度)を変更すれば良い。特に、回転角度αの状態にある圧縮室からのブローバイガスを、吸入初期行程にある回転角度β3の状態にある圧縮室に回収する場合には、回収したブローバイガスの圧力分だけピストンが下死点側へと押されるので、圧縮機を駆動するための動力が低減される。また、回転角度αの状態にある圧縮室からのブローバイガスを、圧縮初期行程にある回転角度β1の状態にある圧縮室に回収する場合には、冷媒ガスが圧縮室に供給されるので、体積効率を増加することが可能である。
○ 第1〜第3の実施形態では、圧縮機が6気筒(シリンダボア及びピストンが6個)として説明したが、6気筒以外の気筒数であっても構わない。この場合には、回転角度α、βの角度、及び間隔が異なる角度となる。