特許第6015453号(P6015453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 堺化学工業株式会社の特許一覧

特許6015453多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の製造方法
<>
  • 特許6015453-多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の製造方法 図000003
  • 特許6015453-多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の製造方法 図000004
  • 特許6015453-多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015453
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/37 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   C01B25/37 J
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-1383(P2013-1383)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-133671(P2014-133671A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】寺部 敦樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸男
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−089199(JP,A)
【文献】 特開平04−199607(JP,A)
【文献】 特開昭59−102808(JP,A)
【文献】 特開昭52−109497(JP,A)
【文献】 特開平03−150214(JP,A)
【文献】 特表2012−502871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/37
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度50重量%以上で温度50℃以上のリン酸水溶液を攪拌しながら、大気圧下にこれにP25/TiO2モル比が0.9〜2.5の範囲にて含水酸化チタンを0.5〜12時間にわたって加え、この間、リン酸水溶液の温度を50℃以上に保ち、このようにして含水酸化チタンを加え終わった後、得られた反応混合物を大気圧下に温度70℃以上で0.5〜12時間にわたって熟成することを特徴とするα型リン酸水素チタン1水和物球状多孔質粒子の製造方法。
【請求項2】
濃度60重量%以上で温度70℃以上のリン酸水溶液を攪拌しながら、これに含水酸化チタンを加える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
含水酸化チタンを水スラリーの形態にてリン酸水溶液に加える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
含水酸化チタンを粉体の形態にてリン酸水溶液に加える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
含水酸化チタンの水スラリーにおける含水酸化チタン濃度が二酸化チタン換算で50〜500g/Lの範囲である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
含水酸化チタンがメタチタン酸とオルトチタン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の方法。












【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の製造方法に関し、詳しくは、常圧下に温和な反応条件下に、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタン等の混入なしに、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸水素チタンには、従来、結晶性のものと無定形のものとが知られている。結晶性リン酸水素チタンのうち、α型結晶性リン酸水素チタンは、化学式Ti(HPO4)2・H2O で表され、ビス(リン酸一水素)チタン1水和物とも呼ばれている。このようなα型結晶性リン酸水素チタンは層状構造を有し、水不溶性であって、無機イオン交換体や吸着剤としてよく知られており、また、触媒や触媒担体としての用途についても研究が進められている。
【0003】
このようなα型結晶性リン酸水素チタンの製造方法として、従来、例えば、酸化チタン又は水酸化チタンとリン酸水溶液とを所定の比率で混合し、圧力容器中、温度130〜175℃、水蒸気圧1〜7気圧で水熱処理する方法が知られている(特許文献1参照)。同様に、酸化チタンをリン酸水溶液に混合し、圧力容器に密閉して、100〜200℃の温度に加熱する方法が知られている(特許文献2参照)。しかし、このような水熱処理による方法は、酸による腐食を防止した材質と構造を有する高価な高耐圧反応装置を必要とする問題がある。
【0004】
水酸化チタンとリン酸水溶液を混合し、常圧下に高温の加熱水蒸気の存在下に加熱反応させて、α型結晶性リン酸水素チタンを得る方法も知られているが(特許文献3参照)、反応に際して、高温の加熱水蒸気を用いる点において、反応装置が複雑になり、また、製造費用の点でも、不利であるほか、得られるα型結晶性リン酸水素チタンは板状粒子である。このような板状粒子は、カラムに充填し、吸着剤として用いて、気体や液体を通過させたときに、通気性や通液性に劣る問題があり、また、バインダーと共に造粒する場合に球状物を得難い。
【0005】
含水酸化チタンと濃度70重量%以上のリン酸水溶液を1〜40のP25/TiO2モル比にて混合し、常圧下に、好ましくは、80〜100℃の温度で反応させて、α型結晶性リン酸水素チタンを得る方法も知られているが、この方法によって得られるリン酸水素チタンは、α型結晶性リン酸水素チタンが結晶性が発達した双晶粒子であって(特許文献4参照)、球状様の外観をなすが、しかし、吸着剤や触媒等に必要な多孔質の表面構造を有するとはいい難い。
【0006】
また、四塩化チタンの塩酸酸性水溶液にリン酸水溶液を加えた後、95℃に昇温し、この後、加熱還流して、リン酸水素チタンを製造する方法も知られている(特許文献5参照)。しかし、この方法によれば、反応系に共存する塩素イオンによると考えられる結晶成長抑制効果のために、チタン源に対して大過剰のリン酸が必要であり、更に、無定形リン酸水素チタンや二酸化チタンが副生し、混入しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−119507号公報
【特許文献2】特開2000−63110号公報
【特許文献3】特開平3−150214号公報
【特許文献4】特開2000−7311号公報
【特許文献5】特開昭59−102808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、α型結晶性リン酸水素チタンの製造方法について鋭意、研究した結果、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタン等の副生、混入なしに、α型リン酸水素チタン1水和物を多孔質高結晶性球状粒子として、常圧下に温和な反応条件下に得ることができる方法を見出して本発明に至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、無機イオン交換体、吸着剤、触媒、触媒担体等において好適に用いることができる多孔質高結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を、常圧下に温和な反応条件下に、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタン等の副生、混入なしに、製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、濃度50重量%以上で温度50℃以上のリン酸水溶液を攪拌しながら、大気圧下にこれにP25/TiO2モル比が0.9〜2.5の範囲にて含水酸化チタンを0.5〜12時間にわたって加え、この間、リン酸水溶液の温度を50℃以上に保ち、このようにして含水酸化チタンを加え終わった後、得られた反応混合物を大気圧下に温度70℃以上で0.5〜12時間にわたって熟成することを特徴とするα型リン酸水素チタン1水和物球状多孔質粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常圧下に温和な反応条件下に、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタン等の副生、混入なしに、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を得ることができる。
【0012】
このような多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子は、酸やアルカリに対する化学的安定性が高く、リンやチタンが溶出せず、環境安全性が高いうえに、大きい比表面積を有する多孔質球状粒子であるので、無機イオン交換体、吸着剤、触媒、触媒担体等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の方法によって得られた多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物の粉末X線回折のチャートである。
図2】本発明の方法によって得られる多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)である。
図3】本発明の方法によって得られる多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子の走査型電子顕微鏡写真(10000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、濃度50重量%以上で温度50℃以上のリン酸水溶液を攪拌しながら、大気圧下にこれにP25/TiO2モル比が0.9〜2.5の範囲にて含水酸化チタンを0.5〜12時間にわたって加え、この間、リン酸水溶液の温度を50℃以上に保ち、このようにして含水酸化チタンを加え終わった後、得られた反応混合物を大気圧下に温度70℃以上で0.5〜12時間にわたって熟成することによって、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタンの混入なしに、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を得ることができる。
【0015】
本発明によれば、チタン源としては含水酸化チタンを用いる。含水酸化チタンとは、次の化学式(I)
TiO2・nH2O … (I)
(式中、nは0<n≦2を満たす数である。)
で表されるチタン化合物である。なかでも、本発明においては、このような含水酸化チタンとして、化学式TiO2・2H2O(又はTi(OH)4))で表されるオルトチタン酸(水酸化チタン)や化学式TiO2・H2O(又はTiO(OH)2)で表されるメタチタン酸が好ましく用いられる。
【0016】
本発明において、上記含水酸化チタンの由来は特に限定されるものではないが、例えば、四塩化チタンや硫酸チタニルの水溶液を室温でアルカリ中和によってオルトチタン酸を得ることができ、また、チタンイソプロポキシドのようなチタンアルコキシドを加水分解することによっても、オルトチタン酸を得ることができる。他方、硫酸チタン水溶液を熱加水分解することによってメタチタン酸を得ることができる。
【0017】
本発明においては、これらの含水酸化チタンは、粉体の形態でリン酸水溶液に加えてもよいが、好ましくは、水に懸濁させたスラリーの形態でリン酸水溶液に加える。特に、本発明においては、チタン源としては、硫酸チタン水溶液を熱加水分解することによって得られるメタチタン酸の水スラリーが好ましく用いられる。
【0018】
ここに、含水酸化チタンの水スラリーにおける含水酸化チタンの濃度は、特に限定されるものではないが、通常、50〜500g/Lの範囲であり、好ましくは、75〜400g/Lの範囲であり、最も好ましくは、100〜350g/Lの範囲である。
【0019】
チタン源として、硫酸チタンや四塩化チタンを用いた場合には、反応系に共存する硫酸イオンや塩素イオンが生成するリン酸水素チタンの結晶化を妨げるためとみられるが、無定形リン酸水素チタンや二酸化チタンが生成して、結晶性α型リン酸水素チタンの球状粒子を得ることができない。
【0020】
本発明によれば、仕込みのリン酸水溶液、即ち、当初に反応容器に入れるリン酸水溶液は、濃度50重量%以上であり、好ましくは、60重量%以上であり、特に好ましくは、85重量%以上である。85重量%濃度のリン酸水溶液は市販品として入手することができ、本発明においては、そのような市販品を好ましく用いることができる。
【0021】
当初に反応に供するリン酸水溶液の濃度が50重量%よりも小さいときは、含水酸化チタンとリン酸の反応が十分に進行せず、含水酸化チタンは未反応のままに反応混合物中に残留しやすく、また、得られるリン酸水素チタンも、結晶性が低いか、又は無定形である。
【0022】
本発明の方法においては、濃度50重量%以上のリン酸水溶液を大気圧下に温度50℃以上に加熱し、攪拌しながら、これに含水酸化チタンの水スラリーをP25/TiO2モル比が0.9〜2.5の範囲にて含水酸化チタンを0.5〜12時間にわたって加え、この際、得られる反応混合物の温度を50℃以上に保ち、このようにして、含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に加え終わった後、得られた反応混合物を大気圧下に温度70℃以上で0.5〜12時間にわたって熟成する。
【0023】
含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に加える際に温度が50℃よりも低いときは、含水酸化チタンとリン酸の反応が十分に進行せず、含水酸化チタンが未反応のままに反応混合物中に残留しやすく、また、得られるリン酸水素チタンも、結晶性が低いか、又は無定形である。
【0024】
また、含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に加える際の時間が0.5時間よりも短いときも、含水酸化チタンが未反応のままに残留しやすく、得られるリン酸水素チタンも、結晶性が低いか、又は無定形の微粒子である。一方、含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に加える際の時間が12時間よりも長いとき、α型結晶性リン酸水素チタンの板状粒子が生成して、α型リン酸水素チタンの球状粒子を得ることが困難である。
【0025】
本発明において、このような含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に徐々に加えるに際して、含水酸化チタンを0.5〜6時間にわたって、最も好ましくは、1〜3時間にわたってリン酸水溶液に加えることが好ましく、このように、含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に加えるに際して、リン酸水溶液は、その温度を50℃以上に保つことが必要であり、70℃以上に保つことが好ましく、90℃以上に保つことが最も好ましい。
【0026】
更に、本発明においては、含水酸化チタンを濃度50重量%以上で温度50℃以上のリン酸水溶液に加えるに際して、含水酸化チタンの量をP25/TiO2モル比が0.9〜2.5である範囲とすることが重要である。
【0027】
用いる含水酸化チタンの量がP25/TiO2モル比で0.9よりも小さいときは、含水酸化チタンが未反応のままに反応混合物中に残留しやすく、また、得られるリン酸水素チタンも、結晶性が低いか、又は無定形である。しかし、用いる含水酸化チタンの量がP25/TiO2モル比で2.5よりも大きいときは、α型結晶性リン酸水素チタンの板状粒子が生成して、α型リン酸水素チタンの球状粒子を得ることが困難である。
【0028】
特に、本発明によれば、P25/TiO2モル比が好ましくは、1.0〜1.8であるように、最も好ましくは、1.1〜1.5である範囲であるように、含水酸化チタンを用いることが好ましい。
【0029】
このようにして、含水酸化チタンの水スラリーをリン酸水溶液に加え終わった後、大気圧下に温度70℃以上で0.5〜12時間にわたって熟成することも、本発明において必要であり、1〜6時間にわたって熟成することが好ましく、1〜3時間にわたって熟成することが最も好ましい。
【0030】
上記熟成温度が70℃よりも低いときは、リン酸水素チタンの結晶成長が進まず、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を得ることができない。また、上記熟成時間が0.5時間よりも短いときも、リン酸水素チタンの結晶成長が進まず、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を得ることができない。しかし、上記熟成時間が12時間よりも長いときは、板状のリン酸水素チタンが生成する。
【0031】
このようにして、熟成の終了後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、常法に従って固液分離し、得られた固形分を回収し、水洗して、余剰のリン酸を洗浄、除去し、更に、例えば、105〜110℃の温度で加熱乾燥して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を得ることができる。
【0032】
このようにして得られる多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子は、必要に応じて、例えば、500℃で焼成することによって、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン無水物球状粒子を得ることができる。
【0033】
結晶性リン酸水素チタンは、前述したように、層状構造を有し、吸着剤や触媒担体等としての特性は固体酸やイオン交換体としての機能によるものであり、特に、上記層状構造の断面において起こるインターカレーション作用によるところが大きい。
【0034】
上記層状構造を発達させれば、α型リン酸水素チタンを板状粒子として得ることができるが、このような板状粒子は、前述したように、カラムに充填した場合に通気性や通液性に劣る問題があり、また、球状物に造粒し難い問題がある。
【0035】
本発明によれば、上述したように、チタン源とリン酸を反応させるに際して、チタン源として含水酸化チタンを用い、これをリン酸水溶液に加えて、反応させるに際して、P25/TiO2モル比を規定すると共に、リン酸水溶液の濃度と温度を規定し、更に、含水酸化チタンをリン酸水溶液に加えるに際して、所定の時間幅をもって含水酸化チタンをリン酸水溶液に加えると共に、含水酸化チタンをリン酸水溶液に加え終わった後に、得られた反応混合物を所定温度で所定時間にわたって熟成することによって、温和な反応条件下に、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタン等の生成なしに、結晶性球状粒子を得ることができる。
【0036】
特に、本発明の方法によれば、常圧下においても、リン酸と反応しやすい含水酸化チタンを使用すると共に、リン酸水溶液に含水酸化チタンを一定の時間をかけて連続的に添加することによって、α型リン酸水素チタン1水和物の球状多孔質粒子を選択的に得ることができる。
【0037】
その理由は未だ明らかではないが、反応初期には高濃度のリン酸水溶液に添加された含水酸化チタンがリン酸と反応して微細なリン酸水素チタン粒子を生成し、この微細なリン酸水素チタン粒子が核となって粒子が球状に成長すると推定される。この以後、引き続いて、含水酸化チタンがリン酸水溶液に添加されて反応が進行するに伴い、未反応のリン酸濃度が低下する結果、リン酸水素チタンの生成速度が遅くなると共に、結晶成長も遅くなるので、粒子は、板状結晶が発達せずに、球状のままに粒子成長することによって、球状多孔質粒子が得られるとみられる。
【0038】
従来の技術はいずれも、未反応の酸化チタンを残さずに、リン酸水素チタン結晶を得ることを目的にしているので、結晶成長が避けられないが、しかし、本発明によれば、上述のような製造方法における特徴によって、リン酸水素チタンの結晶成長を制御した結果、α型リン酸水素チタン1水和物の球状多孔質粒子が得られるとみられる。
【0039】
本発明に従って、このようにして得られる多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物粒子は、前記式で表される球状粒子である。
【0040】
前述したように、α型結晶性リン酸水素チタンの双晶構造を有する粒子を得る方法も知られている。この双晶構造はリン酸水素チタンの結晶性が高い形態であると考えられる。、本発明の方法によれば、α型リン酸水素チタン結晶を過度に成長させないために、上述した条件を見出したものであり、詳細には、微細な板状結晶が網目状に集合した多孔質構造を有する球状の粒子であって、双晶粒子ではない。
【0041】
本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物は、走査型電子顕微鏡による定方向径測定による平均粒子径は0.1〜50μmの範囲であり、好ましくは、1〜30μmの範囲であり、アスペクト比は、1.0〜2.5の範囲にあって、本発明においては、アスペクト比が1.0〜2.5の範囲にある粒子を球状であるとする。
【0042】
また、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物は、BET法による比表面積が30〜200m2/gの範囲にあり、好ましくは、50〜100m2/gの範囲にある。
【0043】
本発明によるリン酸水素チタン粒子の上記定方向径測定による平均粒子径と真比重から上記粒子を真球として算出した上記粒子の比表面積に対して、上記粒子のBET法による比表面積が通常、50〜1000倍の範囲にあり、殆どの場合、80〜500倍の範囲にあるので、本発明によるリン酸水素チタン粒子は、多孔質粒子である。
【0044】
ここで、α型リン酸水素チタン1水和物の密度は、JIS K 5101−11−1(2004)顔料試験方法−第11部、密度−第1節、ピクノメータ法によって、発明者らが測定したところ、2.60g/mLであった。また、粒子が真球状の場合、次の計算式により比表面積を算出することができる。
【0045】
比表面積S(m2/g)=6÷(密度ρ(g/mL)×粒子径D(μm))
【0046】
実際、本発明によるα型リン酸水素チタン1水和物の細孔容積は、水銀圧入法によれば、0.5〜3.0mL/gの範囲である。
【実施例】
【0047】
以下において、得られたリン酸水素チタンの平均粒子径、粉末X線回折、BET法比表面積及び水銀圧入法による細孔容積は以下のようにして測定した。
【0048】
平均粒子径
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM−1200EX II)による倍率2000〜50000倍の写真において、100個の粒子の定方向径を計測し、累積分布の平均値として平均粒子径D1を求めた。次に、上記定方向径と直交する方向の定方向径を同様に計測して、平均粒子径D2を求めた。上記平均粒子径D1/D2からアスペクト比を求めた。
【0049】
粉末X線回折
(株)リガク製Ultima III(銅管球)を用いて測定した。
比表面積
(株)マウンテック製Macsorb HM model−1220を用いて測定した。
細孔容積
マイクロメリティクス製AutoPore IV 9500を用いて測定した。
【0050】
実施例1
水冷式還流冷却器とフッ素樹脂製攪拌機を備え、マントルヒーターで加熱し得るようにした1L容量のガラス製三口フラスコを反応容器とし、これに市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。
【0051】
別に、市販の硫酸チタン水溶液(TiO2 として90g/L)1.109L(TiO2 として100g、1.252モル)をガラス製の2L容量ビーカーに計量し、攪拌しながら、90℃でこれに30重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを3.0とした。生成した固形物を濾過、水洗し、再度、水に懸濁させて、その容量を0.5Lとし、かくして、メタチタン酸のスラリー(TiO2 として200g/L)を調製した。
【0052】
上記95℃に加熱した濃リン酸346.4gに上記メタチタン酸のスラリー0.5L(TiO2 として100g、1.252モル、P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて2時間かけて連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0053】
上記メタチタン酸のスラリーの添加終了後、得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0054】
この後、反応混合物を常温に冷却し、固形物を濾過、回収し、純水で洗浄し、次いで、105℃で12時間加熱して乾燥した。
【0055】
このようにして得られた反応生成物は、その粉末X線回折チャートを図1に示すように、α型リン酸水素チタン1水和物であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡写真を図2及び図3に示すように、平均粒子径(D1)14.8μm、平均粒子径(D2)10.3μm、アスペクト比1.44の球状粒子であった。また、図3に示す電子顕微鏡写真から明らかなように、本発明による反応生成物の表面は網目状を呈していた。
【0056】
また、表1に示すように、反応生成物のBET法による比表面積は55.4m2/gであり、水銀圧入法による細孔容積は1.11mL/gであった。
【0057】
実施例2
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として143g/L)を調製した。
【0058】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.7L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて4時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で6時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0059】
この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0060】
このようにして得られた反応生成物の平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0061】
実施例3
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として100g/L)を調製した。
【0062】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.5L(TiO2 として50g、0.626モル)(P25/TiO2 モル比2.40)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0063】
この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0064】
このようにして得られた反応生成物の粒子形状、平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0065】
実施例4
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として333.3g/L)を調製した。
【0066】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.3L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて1時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で1時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0067】
この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0068】
このようにして得られた反応生成物の平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、P25量、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0069】
実施例5
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら75℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として333.3g/L)を調製した。
【0070】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.3L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度75℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を75℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度75℃で6時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0071】
この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0072】
このようにして得られた反応生成物の平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0073】
実施例6
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら60℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として200g/L)を調製した。
【0074】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.5L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて3時間かけて上記温度60℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を60℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、得られた反応混合物を温度95℃で6時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0075】
このようにして得られた反応生成物の平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0076】
実施例7
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。
【0077】
ガラス製の2L容量ビーカーに10重量%塩酸1Lを入れた。温度5℃に維持した冷水浴に上記このビーカーを入れ、ビーカー内の塩酸を撹拌しながら、これに市販の四塩化チタン237.5g(TiO2 として100g)を投入した。この後、ビーカー内の混合物の液温を30℃以下に保ちながら、30重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、混合物のpHを3.0とした。このようにして、生成した固形物を濾過、水洗し、再度、水に懸濁させて、その容量を1Lとし、かくして、オルトチタン酸のスラリー(TiO2 として100g/L)を調製した。
【0078】
実施例1において、上記オルトチタン酸のスラリー1.0L(TiO2 として100g、1.252モル、P25/TiO2 モル比1.20)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0079】
このようにして得られた反応生成物の平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0080】
実施例8
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸を希釈して、H3PO4 として50重量%としたリン酸588.9g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。
【0081】
実施例1と同様にしてメタチタン酸スラリーを調製し、固形分を濾過し、乾燥し、105℃で加熱して、メタチタン酸を粉体として得た。
【0082】
このメタチタン酸粉体をTiO2 として100g(1.252モル、P25/TiO2 モル比1.20)を2時間をかけて上記95℃に加熱したリン酸に少量ずつ、加えた以外は、実施例1と同様にして、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。
【0083】
このようにして得られた反応生成物の平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0084】
実施例9
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として200g/L)を調製した。
【0085】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.5L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0086】
この後、反応混合物を常温に冷却し、固形物を濾過、回収し、純水で洗浄し、次いで、105℃で12時間加熱して乾燥して、本発明による多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を反応生成物として得た。次いで、このリン酸水素チタン1水和物球状粒子を空気中、500℃で3時間焼成して、多孔質結晶性無水α型リン酸水素チタン球状粒子を得た。
【0087】
このようにして得られた反応生成物の粒子形状、平均粒子径(D1)、平均粒子径(D2)、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0088】
実施例10
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として333.3g/L)を調製した。
【0089】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.4L(TiO2 として133.1g、1.667モル)(P25/TiO2 モル比0.90)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0090】
このようにして得られた反応生成物は、表面が網目状多孔質の球状粒子であった。また、反応生成物は、粉末X線回折の結果、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物であった
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0091】
比較例1
実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として200g/L)を調製し、これを実施例1と同じ反応容器に入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。
【0092】
上記95℃に加熱したメタチタン酸のスラリー0.5L(TiO2 として100g、1.252モル)に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル、P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて2時間かけて連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0093】
上記濃リン酸の添加終了後、得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。
【0094】
この後、反応混合物を常温に冷却し、固形物を濾過、回収し、純水で洗浄し、次いで、105℃で12時間加熱して乾燥した。
【0095】
このようにして得られた反応生成物は、不揃いな板状粒子と球状粒子の混合物であった。また、反応生成物は、粉末X線回折の結果、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物とアナターゼ型二酸化チタンの混合物であった。
【0096】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0097】
比較例2
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら60℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として200g/L)を調製した。
【0098】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.5L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて15時間かけて上記温度60℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を60℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度60℃で15時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0099】
このようにして得られた反応生成物は、不揃いな板状粒子と球状粒子の混合物であった。また、反応生成物は、粉末X線回折の結果、無定形リン酸水素チタンとアナターゼ型二酸化チタンの混合物であった。
【0100】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0101】
比較例3
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として100g/L)を調製した。
【0102】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー1.0L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて15時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で15時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0103】
このようにして得られた反応生成物は、不揃いな板状粒子と球状粒子の混合物であった。また、反応生成物は、粉末X線回折の結果、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物とアナターゼ型二酸化チタンの混合物であった。
【0104】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0105】
比較例4
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として333.3g/L)を調製した。
【0106】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.3L(TiO2 として100g、1.252モル)(P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて15時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で15時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0107】
このようにして得られた反応生成物は、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物の板状粒子であった。
【0108】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0109】
比較例5
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として200g/L)を調製した。
【0110】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.2L(TiO2 として40g、0.501モル)(P25/TiO2 モル比3.00)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0111】
このようにして得られた反応生成物は、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物の板状粒子であった。
【0112】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0113】
比較例6
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。
【0114】
実施例1において、メタチタン酸のスラリーに代えて、硫酸チタン水溶液(TiO2 として90.2g/L)1.109L(TiO2 として100g、P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0115】
このようにして得られた反応生成物は、アスペクト比が大きく、大きさと形状の不揃いの球状粒子であった。また、反応生成物は、粉末X線回折の結果、無定形リン酸水素チタン化合物とアナターゼ型二酸化チタンの混合物であった。
【0116】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0117】
比較例7
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として200g/L)を調製した。
【0118】
予め、95℃に加熱したメタチタン酸のスラリー(TiO2 として200g/L)0.5L(TiO2 として100g、P25/TiO2 モル比1.20)を上記95℃に加熱した濃リン酸に一時に加えた。反応混合物を95℃で4時間撹拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0119】
このようにして得られた反応生成物は、粉末X線回折の結果、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物であったが、大きさが不揃いの板状粒子であった。
【0120】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0121】
比較例8
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。
【0122】
実施例1において、メタチタン酸のスラリーに代えて、四塩化チタン水溶液(TiO2 として100g/L)1L(TiO2 として100g、P25/TiO2 モル比1.20)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0123】
このようにして得られた反応生成物は、粉末X線回折の結果、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物であったが、大きさが不揃いの板状粒子が凝集した粒子であった。
【0124】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0125】
比較例9
実施例1と同じ反応容器に市販の濃リン酸(H3PO4 として85重量%)346.4g(H3PO4 として294.4g、3.005モル)を入れ、攪拌しながら95℃に加熱した。実施例1と同様にしてメタチタン酸のスラリー(TiO2として333.3g/L)を調製した。
【0126】
実施例1と同様にして、上記メタチタン酸のスラリー0.45L(TiO2 として150g、1.878モル)(P25/TiO2 モル比0.80)をマイクロチューブを用いて2時間かけて上記温度95℃に加熱した濃リン酸に連続的に加えた。この間、反応混合物を攪拌しながら、その温度を95℃に維持した。反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。得られた反応混合物を温度95℃で2時間攪拌して、熟成した。この間、反応混合物から蒸発する水分は、上記水冷式還流冷却器にて凝縮させ、反応混合物に戻した。この後、実施例1と同様に反応混合物を処理して、反応生成物を得た。
【0127】
このようにして得られた反応生成物は、表面が網目状多孔質の球状粒子であった。また、反応生成物は、粉末X線回折の結果、結晶性α型リン酸水素チタン1水和物と少量のアナターゼ型二酸化チタンの混合物であった。
【0128】
得られた混合物の平均粒子径D1、平均粒子径D2、アスペクト比、比表面積及び細孔容積を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
本発明の方法によれば、常圧下に温和な反応条件下に、板状粒子、無定形粉末、二酸化チタン等の混入なしに、多孔質結晶性α型リン酸水素チタン1水和物球状粒子を得ることができる。
【0131】
これに対して、比較例1においては、含水酸化チタンのスラリーに濃リン酸を加えており、反応生成物は、不揃いな板状粒子と球状粒子の混合物であって、微粒子を含む。比較例1による反応生成物においては、この微粒子間の空隙が細孔容積として測定されたために、比表面積と細孔容積が大きくなっているとみられる。比較例2及び3においても、同様の理由によって、比表面積と細孔容積が大きくなっているとみられる。
【0132】
比較例4においては、含水酸化チタンをリン酸に加える際の時間と熟成時間が長すぎ、また、比較例5においては、P25/TiO2モル比が高すぎて、得られたα型リン酸水素チタン1水和物は板状であった。
【0133】
比較例6においては、チタン源として、硫酸チタンを用いたので、得られた反応生成物は、無定形リン酸水素チタンとアナターゼ型二酸化チタンの混合物であって、比較例2におけると同じく、比表面積と細孔容積が大きくなっているとみられる。
【0134】
比較例7においては、含水酸化チタンを一括して濃リン酸に加えたので、反応生成物は、球状を維持しつつ、一様な粒子成長や結晶成長することが阻害された結果、不揃いな板状粒子を生成したものとみられる。比較例8においては、チタン源として、四塩化チタン水溶液を用いたので、比較例6同様の結果となったとみられる。
【0135】
比較例9においては、P25/TiO2モル比が0.80であるので、アナターゼ型酸化チタンが未反応のまま、一部、残留したものとみられる。









図1
図2
図3