(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが所持する携帯機(電子キー)と車両との間で通信を行うことによってユーザを認証し、ドアロックの解錠やエンジンの始動を行うスマートエントリー等と呼ばれる技術が普及している。このような技術を工場内で使用される産業車両等の共有車両の管理システムに採用する場合には、各車両が複数のユーザによって使用可能となるように管理システムを構築する必要がある。
【0003】
特許文献1には、各ユーザが所持する携帯機にそれぞれ一意の識別情報を記憶させると共に、車両側にその車両を使用可能なユーザの識別情報を複数登録することによって、各車両を複数のユーザによって使用可能にする発明(以下、「第1の発明」)が記載されている。
【0004】
また、同じ特許文献1には、各車両にそれぞれ一意の識別情報を記憶させると共に、各ユーザが所持する携帯機にそのユーザが使用可能な車両の識別情報を複数登録することによって、各車両を複数のユーザによって使用可能にする発明(以下、「第2の発明」)も記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記第1の発明では、新規ユーザを追加する際には、そのユーザに使用許可が与えられる全ての車両にユーザの識別情報を追加登録しなければならない。そのため、新規ユーザを追加する際の負担が大きいという問題がある。
【0007】
また、上記第2の発明では、新規ユーザを追加する際には、そのユーザが所持する携帯機に使用許可が与えられる全ての車両の識別情報を一括登録するだけで済むため、新規ユーザを追加する際の負担は比較的小さい。しかしながら、各ユーザが使用可能な車両の数が携帯機の記憶容量に依存するという問題がある。
【0008】
この発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、新規ユーザを追加する際の負担が小さく、かつ各ユーザが使用可能な車両の数が携帯機の記憶容量に依存しない、共有車両管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明に係る共有
産業車両管理システムは、各
産業車両にそれぞれ一意に割り当てられ
て当該産業車両が所属する組織および組織内グループの情報を含む産業車両識別情報を複数含む第1の固定長情報
、および産業車両設定情報を含む第2の固定長情報を記憶する携帯機と、或る
産業車両に割り当てられている
産業車両識別情報が携帯機に記憶されている第1の固定長情報に含まれているか否かを調べる認証手段とを備え、認証手段は、
産業車両識別情報が第1の固定長情報に含まれている場合には、
産業車両を使用可能状態にする
と共に、第2の固定長情報に含まれている産業車両設定情報に従って産業車両の走行能力および荷役能力の少なくとも一方の設定を変更する。
【0010】
走行能力および荷役能力は複数の段階の値をとってもよい。
【0012】
認証手段は、
産業車両の使用終了時に、
当該産業車両の設定に基づいて携帯機に記憶されている第2の固定長情報に含まれている
産業車両設定情報を書き換えてもよい。
【0013】
第1、第2の固定長情報は、暗号化された状態で携帯機に記憶されてもよい。
【0014】
携帯機に記憶されている第1、第2の固定長情報を一元管理する管理手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、新規ユーザを追加する際の負担が小さく、かつ各ユーザが使用可能な車両の数が携帯機の記憶容量に依存しない、共有車両管理システムとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、この発明を工場内で使用される産業車両の管理システムに適用した例に基づいて説明する。
【0018】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る共有車両管理システム100について、
図1〜3を参照して説明する。
図1に示されるように、共有車両管理システム100は、工場内で使用される産業車両の管理システムであり、フォークリフト等の産業車両10と、各ユーザに1枚ずつ配布される携帯機(電子キー)としてのICカード20と、工場内の管理室に設置される管理端末30とから構成されている。
図1には1台の産業車両10と1枚のICカード20しか示されていないが、実際には複数台の産業車両10と複数枚のICカード20が存在し、それらが1台の管理端末30によって管理されている。また、各産業車両10には、それぞれ一意の車両識別情報18が割り当てられている。
【0019】
以下、産業車両10、ICカード20、および管理端末30の構成について順に説明していく。
【0020】
(産業車両の構成)
まず、産業車両10の構成について説明する。産業車両10は、ICカードリーダ/ライタ12、認証ユニット13、および電子制御ユニット(ECU)14〜16を備えており、これらがバス(BUS)17によって接続されている。
【0021】
認証ユニット13の不揮発性メモリ(EEPROM)11には、自車に割り当てられている車両識別情報18が記憶されており、また後述するECU14〜16には、自車の各種設定を含む車両設定情報19が記憶されている。これらの情報は車両の導入時に専用の書き込み端末40によって初期値が書き込まれる。
図2に示されるように、車両識別情報18は16ビットのデータによって構成されており、上位8ビットの「組織ID」によって車両の所属する会社や団体等の組織が特定され、中位4ビットの「グループID」によって組織内のグループが特定され、下位4ビットの「個別ID」によってグループ内における個別の車両が特定される。
【0022】
また、車両設定情報19は、「設定変更」、「上限速度」、「走行能力」、および「荷役能力」という4つの項目から構成されている。「設定変更」の項目は、運転者が車両の上限速度、加速性などの走行能力、および荷役速度などの荷役能力を変更可能であるか否かを示すものであり、変更可または変更不可のいずれかの値をとる。また、「上限速度」の項目は、5km/h〜15km/hの範囲の値をとり、「走行能力」、「荷役能力」の項目は、それぞれレベル1〜レベル5の5段階の値をとる。これら各項目の値は機能に応じて各ECU14〜16に分散して記憶される。
【0023】
図1に戻って、ICカードリーダ/ライタ12は、ICカード20との間で非接触型の無線通信を行い、次に説明するICカード20に暗号化された状態で記憶されている情報を読み出し、認証ユニット13に送信する。
【0024】
認証ユニット13は、主にマイクロコンピュータとEEPROM11とによって構成されており、ICカードリーダ/ライタ12によって読み出されたICカード20の情報を復号し、当該情報とEEPROM11の情報とに基づいてICカード20を所持しているユーザが自車を運転可能であるか否かの認証を行う。
【0025】
ECU14〜16は、車両のドアロック機構やエンジン等(図示せず)に対して各種制御信号を送信することによって、車両のドアロック状態やエンジンの動作等を制御する。この際、ECU14〜16は、認証ユニット13から指定され記憶した車両設定情報19の各項目に応じて、車両の速度、加速性などの走行能力、および荷役速度などの荷役能力を所定値以下に制限する。
【0026】
(ICカードの構成)
次に、ICカード20の構成について説明する。ICカード20は、FelicaやNFC等の無線通信規格に基づく非接触型のICカードであり、産業車両10の車両識別情報18を複数含む使用可能車両情報21と、ICカード20を所持するユーザごとに設定される車両設定変更情報22とが暗号化された状態で記憶されている。
【0027】
使用可能車両情報21には、各産業車両10に対してそれぞれ一意に割り当てられている車両識別情報18が複数含まれており、ICカード20を所持するユーザは、この使用可能車両情報21に含まれている車両識別情報18を有する産業車両10を使用することができる。詳細には、
図2に示されるように、使用可能車両情報21は24ビットの固定長データによって構成されており、上位8ビットによって組織IDが特定され、中位8ビットによって組織内のグループIDの範囲(最大値と最小値)が特定され、下位8ビットによってグループ内の個別IDの範囲(最大値と最小値)が特定される。この図の例では、使用可能車両情報21の値は0xfd52f0であり、このICカード20を所持するユーザは、組織ID=0xfdの会社におけるグループID=0x2〜0x5の4つのグループ内に所属する全ての産業車両10(個別ID=0x0〜0xf)を使用することができる。
【0028】
また、車両設定変更情報22は、ICカード20の所持者が自身の使用する車両の設定を変更する権限を有しているか否かを示すものであり、変更可または変更不可のいずれかの値をとる。例えば、車両の運転に十分に習熟しているユーザに対しては変更可に設定し、車両の上限速度、走行能力、荷役能力を自由に変更できるようにする。一方、車両の運転に未だ十分に習熟していないユーザに対しては変更不可に設定する。この図の例では、ICカード20を所持するユーザは、自身が使用する車両の設定を変更する権限を有している。
【0029】
(管理端末の構成)
次に、管理端末30の構成について説明する。
図1に示されるように、管理端末30は、パーソナルコンピュータによって構成されており、ICカードリーダ/ライタ31と、ストレージ32とを備え、ICカード20への情報の書き込みおよびその情報の一元管理を行うものである。
【0030】
ICカードリーダ/ライタ31は、ICカード20との間で非接触型の無線通信を行い、ICカード20に使用可能車両情報21と車両設定変更情報22とを暗号化して書き込む機能を有している。
【0031】
ストレージ32には、車両管理テーブル33と、ユーザ管理テーブル34とが記憶されている。
図2に示されるように、車両管理テーブル33には、各産業車両10の車両識別情報が組織ID、グループID、および個別IDに区分けされた状態で一元管理されており、これらの情報に基づいて各ICカード20に車両識別情報18が書き込まれる。また、ユーザ管理テーブル34には、各ユーザの車両設定変更情報が一元管理されている。この図の例では、IDが0x01のユーザは、自身が運転する車両の設定を変更する権限を有しており、このユーザが所持するIDカード20の車両設定変更情報22には変更可の値が書き込まれる。
【0032】
(ユーザ認証処理)
次に、この実施の形態1に係る共有車両管理システム100におけるユーザ認証処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。なお、この処理はユーザが産業車両10に搭乗するために自身が所持するICカード20を車両のICカードリーダ/ライタ12に近づけた際に、産業車両10によって開始される。
【0033】
まず、産業車両10のICカードリーダ/ライタ12がICカード20に暗号化された状態で記憶されている使用可能車両情報21を読み出し、認証ユニット13に送信する(ステップS1)。
【0034】
認証ユニット13は、ICカードリーダ/ライタ12によって読み出された暗号化状態の使用可能車両情報21を復号し(ステップS2)、EEPROM11に記憶されている自車の車両識別情報18が当該復号された使用可能車両情報21に含まれているか否かを調べる(ステップS3)。
図2の例では、自車の車両識別情報18(組織ID=0xfd、グループID=0x2、個別ID=0xa)は、ICカード20の使用可能車両情報21(組織ID=0xfd、グループID=0x2〜0x5、個別ID=0x0〜0xf)に含まれている。
【0035】
ステップS3において、自車の車両識別情報18がICカード20の使用可能車両情報21に含まれていると判定された場合には、認証ユニット13は、ICカード20を所持しているユーザが自車を使用する権限を有していると判断する。この際、ICカードリーダ/ライタ12がICカード20に暗号化された状態で記憶されている車両設定変更情報22を読み出し(ステップS4)、認証ユニット13は、暗号化状態の車両設定変更情報22を復号し(ステップS5)、当該復号された車両設定情報の値(変更可または変更不可)に基づいて、ECU14〜16それぞれに記憶されている車両設定情報19の「設定変更」の項目の値を設定する(ステップS6)。最後に、認証ユニット13は、BUS17を経由して各ECU14〜16に動作許可信号を送信することによって、ドアロック機構の解錠、エンジンの始動等を許可し、車両を使用可能状態にする(ステップS7)。
【0036】
なお、上記ステップS3において、自車の車両識別情報18がICカード20の使用可能車両情報21に含まれていないと判定された場合には、認証ユニット13は、ICカード20を所持しているユーザが自車を運転する権限を有していないと判断し、BUS17を経由して各ECU14〜16に動作不許可信号を送信することによって、車両を使用不能状態にする(ステップS8)。
【0037】
以上説明したように、この実施の形態1に係る共有車両管理システム100では、各産業車両10には、それぞれ一意の車両識別情報18が割り当てられ、各ユーザが所持するICカード20には、車両識別情報18を複数含む固定長の使用可能車両情報21が記憶されている。各ユーザは、自身が所持するICカード20に記憶されている使用可能車両情報21に含まれている車両識別情報18を有する産業車両10を使用することができる。
【0038】
新規ユーザを追加する際には、管理端末30によって、そのユーザが所持するICカード20の使用可能車両情報21を、そのユーザに使用許可が与えられる産業車両10の車両識別情報18が全て含まれるように設定するだけでよい。また、ICカード20に記憶されている使用可能車両情報21は固定長の情報であるため、ユーザが使用可能な車両の数がICカード20の記憶容量に依存することはない。
【0039】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る共有車両管理システム200について、
図4を参照して説明する。
【0040】
実施の形態1では、認証ユニット13が自車を運転可能状態にする際には、ICカード20の車両設定変更情報22の値(変更可または変更不可)に基づいて、産業車両10の車両設定情報19における「設定変更」の値を設定するのみであった。
【0041】
これに対して、
図4に示されるように、実施の形態2に係るICカード220の車両設定変更情報222には、産業車両210の車両設定情報19の各項目(「設定変更」、「上限速度」、「走行能力」、「荷役能力」)に対応する値が全て記憶されており、産業車両210の認証ユニット13が自車を運転可能状態にする際には、ICカード220の車両設定変更情報222に基づいて、自車の車両設定情報19の各項目の値を設定する。これにより、各ユーザは、産業車両210に搭乗した直後から、自身の所持するICカード220に記憶されている自分専用の車両設定で車両を使用することができる。
【0042】
また、車両の使用終了時には、使用中に値が変更された可能性のある産業車両210の車両設定情報19の各項目の値を、認証ユニット13がECU14〜16からBUS17を経由して読み出し、ICカード220の車両設定変更情報222に書き戻す。これにより、各ユーザは、産業車両210の使用中に車両設定を変更した場合でも、その設定を保存しておき次回搭乗する別の車両においてその設定を使用することができる。
【0043】
また、運転者が車両の使用終了後に管理事務所に立ち寄った際に、自身の所持するICカード220を管理端末230のICカードリーダ/ライタ31に近づけることによって、ICカード220の車両設定変更情報222を管理端末230のユーザ管理テーブル234に書き戻すようにしておけば、ICカード220内の情報と管理端末230内の情報との間の整合性を保つことができる。この際、管理端末230は、ICカード220に記憶されているユーザID223に基づいて、ユーザ管理テーブル234内の各ユーザの車両設定変更情報を検索することができる。なお、ICカード220に予め設定されている識別番号(カードID)が存在する場合には、その識別番号をユーザID223として管理端末230が紐付けることによって、ICカード220の記憶容量を節約することができる。また、ICカード220内にICカード220を設定した時刻(貸出時刻)やICカード220を書き戻した時刻(返却時刻)、および設定変更履歴等の情報を記憶するようにしておけば、管理端末230は各ユーザに関連付けてこれらの運用情報を一元管理することができる。
【0044】
その他の実施の形態.
(変形例1)
実施の形態1,2では、ICカード20,220に記憶されている使用可能車両情報21は、上位8ビットによって組織IDを特定し、中位8ビットによって組織内のグループIDの範囲(最大値と最小値)を特定し、下位8ビットによってグループ内の個別IDの範囲(最大値と最小値)を特定するものであった。しかしながら、使用可能車両情報の構成はこれに限定されるものではなく、例えば
図5(a)に示されるような構成にしてもよい。
【0045】
図5(a)の例では、上位8ビットによって組織IDを特定する点は実施の形態1,2と同様であるが、グループIDを特定する中位8ビットと個別IDを特定する下位8ビットにおける各上位4ビットはマスク値として使用される。そして、
図5(b)に示されるように、車両識別情報のグループIDをグループIDマスク値でマスクした結果がグループID指定値に等しく、かつ車両識別情報の個別IDを個別IDマスク値でマスクした結果が個別ID指定値に等しい場合に、当該車両識別情報を有する産業車両10,210を使用可能であると判定する。
【0046】
(変形例2)
実施の形態1、2では、各ユーザが所持する携帯機(電子キー)として、Felica(登録商標)やNFC等の無線通信規格に基づく非接触型のICカードを使用していたが、携帯機の種類はこれに限定されるものではなく、例えば接触型のICカードを使用してもよい。また、SDカードやスマートメディア等の記憶メディアを携帯機として使用してもよいし、それらと車両との間の通信をBluetooth(登録商標)やWi−Fi(登録商標)等の無線通信によって行ってもよい。
【0047】
(変形例3)
実施の形態1,2において、産業車両10,210のICカードリーダ/ライタ12をUSB等の汎用インターフェースを経由して認証ユニット13に接続してもよい。これにより、携帯機を別の規格のものに変更する際には、汎用インターフェースに接続されているICカードリーダ/ライタ12を別の規格に適合したアクセス装置に置き換えるだけで済む。