(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1連結部及び前記第2連結部の一方は前記進入路の隣に位置し、前記第1連結部及び前記第2連結部の他方は前記進入路の奥側に位置している請求項1又は2記載のロック装置。
前記フォークは、前記フォーク軸心方向に延び、両前記重畳部に挿通されたフォークピンによって揺動可能に設けられている請求項1乃至4のいずれか1項記載のロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のようなロック装置では、フォークピン及びポールピンばかりでなく、複数の締結ピンにより、複数のベース部材を締結し、固定装置としている。このため、このロック装置では、固定装置の強度を確保するために一定数以上の締結ピンが必要であり、部品点数が多い。また、このロック装置では、そのために組み付けに多くの工数が必要となる。このため、ロック装置はコストが高くなってしまう。
【0009】
また、ベース部材によって形成された進入路には、ストライカのピン部から大きな荷重が作用し得るため、ベース部材における進入路近傍の強度は十分に確保される必要がある。この点、ベース部材の数を増加するとすれば、ベース部材の数が増えるばかりでなく、さらに多くの締結ピンが必要になり、また組み付けも面倒になってしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、強度を確保しつつ、部品点数を削減でき、かつ容易に組み付けが可能なロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のロック装置は、軸線方向に延びるピン部を有するストライカと、前記ピン部を前記軸線方向に直交する移動方向から受け入れ、前記ストライカを固定する固定装置とからなり、
前記固定装置は、前記ピン部が進入する進入路が形成されたベース部材と、前記ベース部材に前記軸線方向と平行なフォーク軸心周りで揺動可能に設けられ、前記進入路に前記ピン部を進入させた状態で前記ピン部と係合するフォークと、前記ベース部材に設けられ、前記フォークを固定可能な固定手段とを備えたロック装置において、
前記ベース部材は第1ベース部材と第2ベース部材とを有し、
前記第1ベース部材は、対をなして互いに対面する第1板部と、両前記第1板部を一体に連結する第1連結部とからなり、
前記第2ベース部材は、対をなして互いに対面する第2板部と、両前記第2板部を一体に連結する第2連結部とからなり、
両前記第1板部及び両前記第2板部が
前記軸線方向で重ねられて対をなして互いに対面する重畳部とされ、
両前記重畳部の少なくとも一方に前記進入路が形成されていることを特徴とす
る。
【0012】
本発明のロック装置では、固定装置のベース部材を構成する第1ベース部材及び第2ベース部材がそれぞれコ字形状をなしている。このため、このロック装置では、第1ベース部材自体を締結する必要がなく、第2ベース部材自体を締結する必要もない。第1ベース部材と第2ベース部材との締結を行えば足り得る。このため、固定装置の強度を確保するための締結ピンを不要にしたり、削減できる。また、このロック装置では、そのために組み付けが容易になる。
【0013】
また、このロック装置では、第1、2ベース部材の両第1、2板部が重ねられた両重畳部の少なくとも一方に進入路が形成されている。このため、ベース部材の数を必要以上に増加しなくても、ベース部材における進入路近傍の強度を確保し易い。
【0014】
したがって、本発明のロック装置は、強度を確保しつつ、部品点数を削減でき、かつ容易に組み付けが可能である。
【0015】
また、このロック装置では、第1、2ベース部材の一方に相手材に対して取り付けるための取付部を設けることとすれば、相手材に応じてその一方の形状を変えることにより、他の部材を共通化することが可能である。この場合、右ドア用及び左ドア用で部品の共通化を実現したり、取付部が異なる車種間で部品の共通化を実現したりできるため、コストの低廉化を実現することができる。
【0016】
本発明のロック装置では、ベース部材が第1、2ベース部材の他、第3ベース部材、第4ベース部材等を有することが可能である。この場合、第3、4ベース部材等も、第1、2ベース部材に相当する構成を備え得る。なお、本発明において、平行とは、幾何学上の平行までは意味せず、略平行も含む。
【0017】
本発明のロック装置において、重畳部は、一方の第1板部と一方の第2板部とからなる一方側重畳部と、他方の第1板部と他方の第2板部とからなる他方側重畳部とからなり得る。進入路は、一方側重畳部及び他方側重畳部の一方に形成されてもよい。望ましくは、進入路は、一方側重畳部及び他方側重畳部に形成され
る。一方側重畳部及び他方側重畳部に進入路を形成すれば、フォークがストライカのピン部と係合したロック状態を確実に維持することができる。
【0018】
本発明のロック装置において、第1連結部及び第2連結部の一方は進入路の隣に位置し、第1連結部及び第2連結部の他方は進入路の奥側に位置していることが望まし
い。この場合、固定装置は、第1連結部と第2連結部とが交差することで、両重畳部とともに隣接する4面が壁となった強固な箱状をなす。このため、この固定装置は、多方向から作用する衝撃力に対して変形し難くなり、優れた安全性を発揮する。
【0019】
本発明のロック装置において、第2ベース部材は第1ベース部材の外側に設けられ得る。また、第2連結部が進入路と平行に延び、第1連結部が進入路の奥側に位置し得る。そして、第1連結部には、第2連結部の奥端を支持可能な支持部が形成されていることが望まし
い。この場合、フォークがストライカのピン部と係合したロック状態において、例えば、衝突によって車体からドアが離れる方向の力が作用した時、ピン部から進入路周りに大きな荷重が作用し、第2連結部が奥方向へ変形しようとすると、第1連結部の支持部がその第2連結部の奥端を支え、進入路の変形を防止できる。
【0020】
なお、第1ベース部材は第2ベース部材の外側に設けられ得る。また、第2連結部が進入路と平行に延び、第1連結部が進入路の奥側に位置し得る。そして、この場合、第1連結部において、第2連結部の奥端を支持可能な支持部が形成されていることも好ましい。
【0021】
本発明のロック装置において、フォークは、フォーク軸心方向に延び、両重畳部に挿通されたフォークピンによって揺動可能に設けられていることが望まし
い。この場合、第1ベース部材と第2ベース部材との締結をフォークピンによって行うことができる。
【0022】
本発明のロック装置において、固定装置は、ベース部材に挿入され、フォークを保持可能なコアをさらに備え得る。コアはフォークピンを挿通していることが望まし
い。この場合、フォークをコアに保持させ、それらをベース部材に挿入することで容易に固定装置を組み立てることができる。さらに、コアは、フォークピンを挿通していることで、フォークをベース部材に対し確実に揺動可能に支持することができる。
【0023】
本発明のロック装置において、固定手段は、ベース部材に軸線方向と平行なポール軸心周りで揺動可能に設けられ、フォークを固定又は開放可能なポールを有し得る。ポールは、ポール軸心方向に延び、両重畳部に挿通されたポールピンによって揺動可能に設けられ得る。コアは、ポールを保持するとともに、ポールピンを挿通していることが望まし
い。この場合、第1ベース部材と第2ベース部材との締結をポールピンによっても行うことができる。また、ポールをコアに保持させ、それらをベース部材に挿入することで容易に固定装置を組み立てることができる。さらに、コアは、ポールピンを挿通していることで、ポールをベース部材に対し確実に揺動可能に支持することができる。
【0024】
本発明のロック装置において、ポールには、開放操作によってフォークが開放状態になるようにポールを揺動させるオープンケーブルが設けられていることが望まし
い。この場合、ポールを揺動させる一般的な切替レバーを廃止し、部品点数を低減することができる。
【0025】
本発明のロック装置において、固定手段は、軸線方向と平行な慣性軸心周りで揺動可能に設けられ、閾値を超えた慣性力によってポールを固定可能な慣性レバーを有し得る。コアは、慣性レバーを保持していることが望まし
い。
【0026】
本発明のロック装置を備える装置全体、例えば車両に衝撃力が加わり、ドアが開こうとするとき、その衝撃により慣性レバーに生じた慣性力により、ポールを固定することができる。これにより、フォークが開放状態になることを阻止し、ドアを閉鎖状態に維持することができる。さらに、この慣性レバーもフォーク、ポールとともにコアに保持され、組み立てが容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のロック装置は、強度を確保しつつ、部品点数を削減でき、かつ容易に組み付けが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のロック装置を観音開き式ドアを有する車両に適用した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
この車両は、
図1に示すように、車両の進行方向とほぼ平行な車両本体1の左側面に開口2が設けられている。開口2には、2個のドア3、4が前後に並んで設けられている。前方のドア3は、開口2の前縁側のヒンジ31により水平方向で揺動可能になっている。また、後方のドア4は、開口2の後縁側のヒンジ41により水平方向で揺動可能となっている。各ドア3、4は、各ヒンジ31、41とは反対側の自由端側を互いに接近させた閉鎖位置から、矢印で示すように、車両の外方へ開放することができる。つまり、両ドア3、4は、いわゆる観音開きで開口2を開放するようになっている。
【0031】
この車両では、両ドア3、4間に開口2を仕切るピラーが設けられていない。このため、このロック装置5は、ヒンジ41とは反対側のドア4の上下端側にそれぞれ設置されている。
【0032】
ドア4の上端に位置するロック装置5は、
図2に示すように、車両本体1に組み付けられたストライカ6と、ドア4の上端に組み付けられた固定装置7とからなる。固定装置7がストライカ6を固定することによりドア4が閉鎖状態に維持され、その閉鎖状態を解除することによりドア4が開放可能になる。ドア4の下端に位置するロック装置5も同様である。
【0033】
図1に示すように、ドア4の上下方向の中間位置には、作動装置10が設けられている。作動装置10は、ドアハンドル等の開放操作によってオープンケーブル11を変位させて両ロック装置5を作動させ、ドア4の閉鎖状態を解除する。なお、後方のドア4は、前方のドア3が開放された後に、補助的に開放されるものである。このため、作動装置10は、ドア3が閉鎖状態にある場合には、ドア4に対する開放操作を無効化し、オープンケーブル11を変位させなくする。その結果、ドア4に対する開放操作があっても両ロック装置5が作動せず、ドア4の閉鎖状態が維持される。
【0034】
図3〜
図5に示すように、ストライカ6は、コ字形に折り曲げて形成された金属棒材61と、その両端を固定する固定具62とからなる。金属棒材61の中間辺であるピン部61Aの軸線方向D1は、車両本体1の側面とほぼ平行に、車両本体1の前後方向に延びている。
【0035】
固定装置7は、ベース部材70と、フォーク72と、ポール76と、慣性レバー77と、コア75とを備えている。固定装置7は、ベース部材70の進入路71にピン部61Aをその軸線方向D1に直交する移動方向D2から受け入れ、ピン部61Aにフォーク72を係合させることで、ドア4を閉鎖状態に維持する。移動方向D2は、車両の内外方向に延びている。なお、固定装置7についての以下の説明では、ドア4が閉鎖された状態における固定装置7の姿勢を基準とする。
【0036】
ベース部材70は、第1ベース部材73と第2ベース部材74とからなる。第1ベース部材73は、対をなして互いに対面する第1板部73A、73Bと、その両第1板部73A、73Bを一体に連結する第1連結部73Cとからなる。第1ベース部材73は、板状の金属材料をコ字形に折り曲げることにより形成されている。また、第2ベース部材74は、対をなして互いに対面する第2板部74A、74Bと、その両第2板部74A、74Bを一体に連結する第2連結部74Cとからなる。第2ベース部材74も、板状の金属材料をコ字形に折り曲げることにより形成されている。
【0037】
第2ベース部材74は、第1ベース部材73の外側に重畳して配置されている。詳細には、一方の第2板部74Aが第1板部73Aの外側に重畳し、他方の第2板部74Bが第1板部73Bの外側に重畳するように、第2ベース部材74が第1ベース部材73の外側に被せられる。そして、
図7に示すように、一方の第2板部74Aと一方の第1板部73Aとが重ねられることにより、一方側重畳部70Aとされている。また、他方の第2板部74Bと他方の第1板部73Bとが重ねられることにより、他方側重畳部70Bとされている。
【0038】
図3及び
図4に示すように、一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bは
軸線方向D
1で重ねられている。一方側重畳部70Aと他方側重畳部70Bとは互いに対面している。一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bに進入路71が形成されている。
【0039】
第1ベース部材73の第1連結部73Cは、進入路71の奥端よりも奥側、すなわち車両外側に位置して、上下方向に延びている。第2ベース部材74の第2連結部74Cは、進入路71より上側に位置し、進入路71とほぼ平行に、すなわち、車両の内外方向に延びている。つまり、第1連結部73Cと第2連結部74Cとは、ほぼ直交する位置関係にある。このため、ベース部材70は、一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bとともに隣接する4面がほぼ壁となった箱状をなし、強固な構成となる。換言すると、第1ベース部材73及び第2ベース部材74は、板金を単純なほぼコ字形に折り曲げたものであるが、これらをほぼ90度向きを変えて重畳することで、隣接する4面がほぼ壁となった強固な箱状を構成している。
【0040】
第2ベース部材74の第2板部74A、74Bには、それぞれ外方に突出する取付部74Dが折り曲げ形成されている。取付部74Dがネジ、リベット等によってドア4の内側に固定されることにより、固定装置7は、進入路71を車内方向に向けた状態でドア4の内側に設置される。
【0041】
第1ベース部材73の第1板部73A、73B間には、合成樹脂製のコア75が挿入されている。また、コア75と一方の第1板部73Aとの間には、フォーク72と、ポール76とが配置されている。ポール76は、フォーク72を固定可能な固定手段の一例である。コア75と他方の第1板部73Bとの間には、後述する慣性レバー77、検出器78及び緩衝体79、80が配置されている。
【0042】
コア75は、進入路71と対応する位置に切欠71Aを有する。切欠71Aは、ピン部61Aがベース部材70の進入路71に干渉せず、コア75の切欠71Aに案内されるように、進入路71より若干狭くされている。コア75において切欠71Aよりも第2連結部74C側の部分は、ガイド部75Cとされている。ガイド部75Cは、進入路71の開放端側から見て、進入路71より上側に位置し、第2連結部74C及びそれに隣接する第2板部74A、74Bを覆うように膨らんでいる。ガイド部75Cは、ピン部61Aが進入路71より上側にずれている場合にピン部61Aに摺接し、ピン部61Aが進入路71に進入するように案内する。
【0043】
図3、
図5(A)及び
図6に示すように、第1ベース部材73の第1連結部73Cには、位置決め孔73Kが形成されている。一方、コア75の位置決め孔73Kと対応する位置には、突起75Dが凸設されている。第1ベース部材73の位置決め孔73Kに対してコア75の突起75Dを嵌合させることで、コア75が第1ベース部材73に対して位置決めされている。
【0044】
第1ベース部材73の第1連結部73Cには、支持部73Jが形成されている。支持部73Jは、第1連結部73Cの上端縁から上方に延びている。支持部73Jの先端は、第2連結部74Cの奥端とほぼ同じ高さである。支持部73Jの先端は、第2連結部74Cの奥端に対して、車両外側から当接しているか、又はわずかな隙間を有して車両外側から対向している。フォーク72がストライカ6のピン部61Aと係合したロック状態において、例えば、衝突によって車体からドア3が離れる方向の力が作用した時、ピン部61Aが進入路71に衝突した後、第2連結部74Cを奥方向(
図6の矢印F方向)に変形させようとしても、支持部73Jが第2連結部74Cの奥端を支持して、第2連結部74Cを補強する。
【0045】
図6及び
図7等に示すように、フォーク72は、フォークピン81によりフォーク軸心X72周りで揺動可能に支持されている。フォーク軸心X72は、ドア4の閉鎖状態において、ピン部61Aの軸心方向D1と平行に延びている。フォークピン81は、中間においてコア75を貫通している。
【0046】
図3及び
図4に示すように、一方側重畳部70Aには貫通孔73F、74Fが形成されている。フォークピン81の一端は貫通孔73F、74Fに支持されている。また、他方側重畳部70Bには貫通孔73E、74Eが形成されている。フォークピン81の他端は貫通孔73E、74Eに支持されている。なお、フォーク72とフォークピン81との間には、コア75に突出状態で形成された中空筒部75Aが介在しており、フォーク72は中空筒部75Aの外周に沿って揺動する。しかし、ドア4の開閉によりフォーク72に作用する衝撃は、フォークピン81により受けられるので、フォーク72は、実質フォークピン81によって支持されている。
【0047】
図6等に示すように、ポール76は、フォーク72の下側に位置している。ポール76は、ポールピン82によりポール軸心X76周りで揺動可能に支持されている。ポール軸心X76も、フォーク軸心X72と同様、ドア4の閉鎖状態において、ピン部61Aの軸心方向D1と平行に延びている。ポールピン82は、中間においてコア75を貫通している。
【0048】
図3及び
図4に示すように、一方側重畳部70Aには貫通孔73G、74Gが形成されている。ポールピン82の一端は貫通孔73G、74Gに支持されている。また、他方側重畳部70Bには貫通孔73H、74Hが形成されている。ポールピン82の他端は貫通孔73H、74Hに支持されている。なお、ポール76とポールピン82との間には、コア75に突出状態で形成された中空筒部75Bが介在しており、ポール76は中空筒部75Bの外周に沿って揺動するが、ポール76は、実質ポールピン82によって支持されている。
【0049】
フォークピン81及びポールピン82は、それぞれコア75及びベース部材7
0に挿通された後、端部をかしめ加工等されることにより、ベース部材70に対して抜け止めされる。これにより、コア75と、一方の第1板部73A及び第2板部74Aと、他方の第1板部73B及び第2板部74Bとは、相互に位置決めされ、かつ固定される。
【0050】
図6〜
図9等に示すように、フォーク72は、進入路71を横切って揺動する外周を有し、その外周から半径方向内方に凹んだ切欠72Aを備えている。つまり、フォーク72は、切欠72Aを間に持つ二股形状をなしている。フォーク72の外周には、揺動方向に間隔をおいて係止段部72C、72Dが形成されている。フォーク72は、バネ83により、切欠72Aが進入路71の奥端から開放端に移動する方向、すなわち、
図6及び
図9の紙面に向かって時計方向に付勢されている。
【0051】
図8に示すように、フォーク72の側面には、突起72Bが設けられている。突起72Bは、コア75に形成した円弧状の長孔75M内に突出している。フォーク72の揺動に伴って、突起72Bが長孔75M内を移動する。突起72Bが長孔75Mの車両外側の端部の近傍に位置するとき、フォーク72の切欠72Aの開放端は、進入路71の開放端と対応する位置にある。
【0052】
図6及び
図9に示すように、ポール76は、係止段部72C、72Dに係止可能な係止突部76Aを有している。ポール76は、バネ84により、係止突部76Aがフォーク72に接近する方向、すなわち、
図6及び
図9の紙面に向かって反時計方向に付勢されている。
【0053】
フォーク72は、
図9(A)〜(C)に示すように、進入路71に進入するピン部61Aによって切欠72Aが進入路71の奥端側に向かって押されることにより、バネ83の付勢力に抗しつつ、
図9の紙面に向かって反時計方向に揺動する。フォーク72は、
図9(B)に示すように、進入路71の中間に位置する位置で、係止段部72Cが係止突部76Aによって係止されることにより、ハーフラッチ位置に固定される。また、フォーク72は、
図9(C)に示すように、切欠72Aが進入路71の奥端に位置する位置で、係止段部72Dが係止突部76Aによって係止されることにより、フルラッチ位置に固定される。
【0054】
図6及び
図9等に示すように、ポール76の先端には、オープンケーブル11の一端部11Aが連結されている。オープンケーブル11の他端部は、
図1に示すように、作動装置10に連結されている。作動装置10は、前方のドア3が開放された後に、ドア4に対する開放操作があった場合、オープンケーブル11を変位させる。これにより、オープンケーブル11の一端部11Aが下側に変位し、ポール76の先端が引き下げられる。このため、ポール76は、バネ84の付勢力に抗しつつ、
図6及び
図9の紙面に向かって時計方向に揺動する。その結果、係止突部76Aが係止段部72C又は係止段部72Dを係止しなくなり、ポール76によるフォーク72の固定が解除される。その結果、
図9(D)に示すように、フォーク72は、バネ83に付勢されて、
図9の紙面に向かって時計方向に揺動する。
【0055】
図3、
図4、
図8及び
図10に示すように、慣性レバー77は、コア75に装着された慣性ピン85により慣性軸心X77周りで揺動可能に支持されている。慣性軸心X77は、ドア4の閉鎖状態において、ピン部61Aの軸線方向D1と平行に延びている。
【0056】
図8及び
図10に示すように、ポール76には、突起76Bが設けられている。突起76Bは、コア75に形成した円弧状の長孔75Nから慣性レバー77の位置する側へ突出している。慣性レバー77は、突起76Bの揺動軌跡内に進入する方向に揺動可能とされている。慣性レバー77は、
図10(A)に示すように、通常はバネ86により突起76Bの揺動軌跡内に進入しない位置へ付勢されている。車両に衝撃が作用し固定装置7が振れたとき、
図10(B)に示すように、相対的に、慣性レバー77に慣性力S1が作用する。この慣性力S1が閾値を超えている場合、
図10(C)に示すように、慣性レバー77は、バネ86の付勢に抗して突起76Bの揺動軌跡内に進入する。その結果、衝撃によりポール76が揺動しようとしても、慣性レバー77が突起76Bに当接してポール76を固定する。こうして、慣性レバー77は、衝撃力によってポール76の係止突部76Aが係止段部72Dと係止しなくなることを防止する。
【0057】
検出器78は、コア75の円弧状の長孔75Mの下側に設置されている。検出器78は、
図9(C)に示すように、フォーク72の切欠72Aが進入路71の奥端に位置するとき、
図10に示すように、フォーク72の突起72Bに接触して、フォーク72がフルラッチ位置にあることを検出する。つまり、検出器78は、フォーク72がピン部61Aを固定したことを検出し、車両の図示しない制御装置に送信する。
【0058】
図8及び
図10に示すように、進入路71の奥端には緩衝体79が配設されている。
図10に示すように、ピン部61Aが進入路71の奥端に進入したとき、緩衝体79がピン部61Aに当接し、ピン部61Aと進入路71との間で衝突音が発生することを抑制する。また、緩衝体79は、ドア
4を閉鎖している間のがたつきも抑制する。
【0059】
図8及び
図10に示すように、コア75の長孔75Nの上端には、緩衝体80が配設されている。緩衝体80は、ポール76がバネ84に付勢されてフォーク72に接近するとき、ポール76の突起76Bに当接し、衝突音が発生することを抑制する。
【0060】
このような構成である固定装置7では、ドア4の開放状態において、
図9(A)に示すように、フォーク72は、バネ83の付勢により切欠72Aの開放端を進入路71の開放端と対応させて位置し、ストライカ6のピン部61Aを受け入れ可能としている。
【0061】
ドア4を閉鎖する過程において、
図9(B)に示すように、ピン部61Aが進入路71に進入すると、ピン部61Aは、フォーク72の切欠72Aに入ってフォーク72を押し
、同図において反時計方向に揺動させる。ポール76の係止突部76Aが1つ目の係止段部72Cを越えた位置でドア4の閉鎖を止めると、フォーク72は、バネ83の付勢により係止段部72Cを係止突部76Aに係止したハーフラッチ位置で停止する。つまり、ドア4が完全に閉鎖する手前で停止するいわゆるハーフロック状態となる。
【0062】
ドア4を完全に閉鎖する位置まで押し込むと、
図9(C)に示すように、ピン部61Aは、進入路71のほぼ奥端に達し、2つ目の係止段部72Dが係止突部76Aに係止する位置までフォーク72を揺動させる。フォーク72は、バネ83の付勢により係止段部72Dを係止突部76Aに係止したフルラッチ位置で停止する。つまり、ドア4が完全に閉鎖したいわゆるフルロック状態となる。
【0063】
この状態において、通常では、
図10(A)に示すように、慣性レバー77はバネ86により図において反時計方向に付勢され、ポール76の突起76Bの揺動軌跡から外れた位置にある。車両に衝撃が作用して固定装置7が振れ、慣性レバー77に閾値を超える慣性力S1が作用すると、
図10(B)に示すように、慣性レバー77は、バネ86の付勢に抗して、突起76Bの揺動軌跡内に向かう方向に揺動する。そして、
図10(C)に示すように、慣性レバー77は突起76Bの揺動軌跡内に進入すると、衝撃力によって揺動しようとするポール76を固定する。つまり、車両に作用した衝撃によりポール76が揺動しようとしても、慣性レバー77によって、意に反するドア4の開放を阻止する。
【0064】
一方、前方のドア3が開放された後に、ドア4に対する開放操作があった場合、作動装置10及びオープンケーブル11により、ポール76の先端が引き下げられ、ポール76によるフォーク72の固定が解除される。その結果、
図9(D)に示すように、フォーク72は、バネ83に付勢されて、
図9の紙面に向かって時計方向に揺動し、ピン部61Aを進入路71から送り出す。つまり、ドア4が開放可能になる。
【0065】
固定装置7を組み立てる場合、
図11に示すように、コア75に、フォーク72及びポール76を中空筒部75A、75Bに嵌合して保持させる。
図11では図示を省略するが、オープンケーブル11の一端部11Aをポール76の先端に連結し、オープンケーブル11のガイドチューブをコア75に保持させる。また、コア75の他方の面に、慣性レバー77、検出器78及び緩衝体79、80を保持させる。そして、
図11に示すように、各機能部品を保持したコア75を第1ベース部材73の第1板部73A、73B間に挿入する。その後、フォークピン81及びポールピン82をコア75及びベース部材7
0に挿通し、フォークピン81及びポールピン82をかしめ加工する。こうして
、組み立てられた固定装置7は、第2ベース部材74に設けた取付部74Dによりドア4に取り付けられる。
【0066】
実施例のロック装置5では、固定装置7のベース部材70を構成する第1、2ベース部材73、74がそれぞれコ字形状をなす一体構造とされている。このため、このロック装置5では、第1ベース部材73自体を締結する必要がなく、第2ベース部材74自体を締結する必要もない。第1ベース部材73と第2ベース部材74との締結を行えば足り得る。このため、このロック装置5では、従来の板状部材を連結するピン状連結部材を省略することができ、部品点数を少なくし、組み立て工数を低減することができる。
【0067】
また、第1、2ベース部材73、74とも一体構造であるから、従来のように衝撃力によって板部とピン状連結部材との連結部が変形することがない。さらに、その一体構造の第1、2ベース部材73、74において、一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bにストライカ6のピン部61Aが進入する進入路71を形成している。これにより、このロック装置5では、ベース部材70における進入路71近傍の強度を高く確保することができ、衝撃力による進入路71の変形を抑え、高い安全性を発揮することができる。
【0068】
したがって、実施例のロック装置5は、強度を確保しつつ、部品点数を削減でき、かつ容易に組み付けが可能である。
【0069】
また、このロック装置5では、固定装置7について、第1ベース部材73で、その内部の機能部品をほぼ保持し、第2ベース部材74にドア4に対応する取付部74Dを設けている。これにより、このロック装置5では、ロック装置5を取り付ける部位又は車種に応じて第2ベース部材74の形状(特に取付部74Dの形状)を変えるだけで、左ドア及び右ドアのように左右勝手違いの取り付け場所等や、取り付け部が異なる車種等に容易に取り付けることができる。その結果、このロック装置5では、第1ベース部材73と機能部品を共通に使用して複数の品種を容易に製造できるので、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0070】
さらに、このロック装置5では、両ベース部材73、74の一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bに進入路71が形成されて、進入路71の強度が向上しているので、ストライカ6のピン部61Aが進入路71に進入した状態で、フォーク72がピン部61Aと係合したロック状態を確実に維持することができる。
【0071】
また、このロック装置5では、第1、2ベース部材73、74とも、板金を単純なほぼコ字形に折り曲げた一体構造であり、これらをほぼ90度向きを変えて重畳することで、隣接する4面がほぼ壁となった強固な箱状を構成している。その結果、このロック装置5では、ベース部材70が多方向から作用する衝撃力に対して変形し難くなり、優れた安全性を発揮することができる。
【0072】
さらに、このロック装置5では、第1連結部73Cに形成された支持部73Jにより、フォーク72がストライカ6のピン部61Aと係合したロック状態において、例えば、衝突によって車体からドア3が離れる方向の力が作用した時、ピン部61Aが進入路71に衝突した後、第2連結部74Cを奥方向へ変形しようとしても、第1連結部73Cの支持部73Jが第2連結部74Cを支え、進入路71の変形を防止できる。
【0073】
また、このロック装置5では、フォーク72を揺動可能に支持するフォークピン81と、ポール76を揺動可能に支持するポールピン82とは、両ベース部材73、74の一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bと、コア75とに挿通されて、第1ベース部材73と第2ベース部材74とを締結している。これにより、このロック装置5では、フォーク72をコア75に保持させ、それらを両ベース部材73、74の一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bに挿入することで容易に固定装置7を組み立てることができる。さらに、コア75は、フォークピン81及びポールピン82を挿通していることで、フォーク72及びポール76をベース部材70に対し確実に揺動可能に支持することができる。また、コア75を挟んで両ベース部材73、74の第1板部73A、73B及び第2板部74A、74Bが締結されていることにより、衝撃等が作用してもフォークピン81、ポールピン82及び両ベース部材73、74の第1板部73A、73B及び第2板部74A、74Bがコア75に補強されて変形し難くなっている。
【0074】
さらに、このロック装置5では、観音開き式のドア3、4において、後方のドア4が前方のドア3が開放された後に補助的に開放されるものである。そして、作動装置10は、ドア3が閉鎖状態にある場合には、ドア4に対する開放操作を無効化し、ドア4の閉鎖状態を維持する。観音開き式のドア3、4の施錠及び開錠は、ドア3に設けられた固定装置及び作動装置によって行われる。つまり、作動装置10がオープンケーブル11を変位させる場合、必ずポール76が操作されるので、ポール76の先端にオープンケーブル11の一端部11Aを連結しても問題が生じない。これにより、このロック装置5では、固定装置7について、特許文献1のラチェットレバーを廃止することができ、部品点数を削減できる。
【0075】
また、このロック装置5では、
図10に示すように、車両に衝撃力が加わり、ドア4が開こうとするとき、その衝撃により慣性レバー77に生じた閾値を超える慣性力S1により、ポール76を固定することができる。これにより、フォーク72が開放状態になることを阻止し、ドア4を閉鎖状態に維持することができる。さらに、この慣性レバー77もフォーク72、ポール76とともにコア75に保持されるので、固定装置7の組み立てが容易になる。
【0076】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0077】
実施例では、1つの開口2に2枚のドア3、4を配置した観音開き式のドアに本発明を適用したが、本発明は、1つの開口に1枚のドアを配置したものにも適用できる。この場合、ロック装置は、そのドアの上下両端でなく、上下方向の中間部に1個設けるようにすることができる。
【0078】
また、本発明は、車両の側面のドアだけでなく、背面ドアのロック、ボンネットのロック、折り畳み座席の固定、さらには建物あるいは収納箱の扉のロック等にも適用できる。
【0079】
実施例では、内側の第1ベース部材73に、進入路71の奥側に位置する第1連結部73Cを設け、外側の第2ベース部材74に、進入路71とほぼ平行に延びる第2連結部74Cを設けているが、内側のベース部材に進入路71とほぼ平行に延びる連結部を設け、外側のベース部材に進入路71の奥側に位置する連結部を設けることもできる。
【0080】
実施例では、ベース部材70は、第1ベース部材73及び第2ベース部材74の2枚の板材を重畳しているが、3枚以上の板材を重畳して構成することもできる。
【0081】
実施例では、一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bに進入路71が形成されているが、一方側重畳部70A及び他方側重畳部70Bの一方にのみ進入路を形成することもできる。
【0082】
また、実施例では、ストライカ6においてコ字形に折り曲げた棒材の中間辺をピン部61Aとしているが、コ字形のうち対向する2辺の一方をピン部とすることもできる。
【0083】
実施例では、ストライカ6を車両本体1側、固定装置7をドア側に設けているが、ストライカ6をドア側、固定装置7を車両本体1側に設けることもできる。