(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周波数変調方式で通信を行う端末装置において、 通信データの送受信を制御し、前記通信データの送信中に送信信号の波形がゼロクロス点前後となる期間を示すゼロクロス判別信号を出力する制御部と、前記ゼロクロス判別信号に応じて前記送信信号の出力をオフにする送信部と、前記端末装置と伝送路とを接続し、前記通信データを入出力する通信データ入出力端子と、前記通信データ入出力端子から入力された通信データを受信する受信部と、前記通信データの送信中に前記送信部が前記送信信号の出力をオフしている時、かつ、前記通信データ入出力端子から前記通信データが入力された時、自己の前記端末装置から送信した前記通信データと他の端末装置から送信された前記通信データとが衝突したと判定し前記制御部へ衝突検出信号を出力する衝突検出部とを備え、前記制御部は、前記受信部が他の端末装置から前記通信データを受信していない時に前記通信データを送信し
、前記通信データの送信中に前記衝突検出信号が入力された時、前記通信データの送信を中断し、ランダムな時間待機した後に改めて前記通信データを送信することを特徴とする端末装置。
前記衝突検出部は、前記通信データ入出力端子から入力された前記通信データの電圧値と予め設定された基準電圧の電圧値とを比較する比較器を有し、前記送信部が前記送信信号の出力をオフしている時、かつ、前記通信データ入出力端子から入力された前記通信データの電圧値が前記基準電圧の電圧値を超えた時、自己の前記端末装置から送信した前記通信データと他の端末装置から送信された前記通信データとが衝突したと判定することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【背景技術】
【0002】
空調システムやFA(FactoryAutomation)では、多くの端末を接続すると通信量が増え、各端末が伝送路上に他の端末から送信された信号が存在していない事を確認した後に信号を送信するように処理させていても、プログラムによる処理の遅延時間があるために、同時に複数の端末から信号が送信された時に発生する伝送路上での信号の衝突を回避することが困難となる。
【0003】
このため、信号の衝突が発生しても正常な通信が行われるように、送信信号に対する応答信号を通信先に要求し信号が正常に伝達されたか否かを確認し、信号が正常に伝達されなかった場合に信号の再送信を行う方法があるが、この方法では通信量そのものが増加し衝突が生じ易くなることから、多くの端末を接続するネットワークには適していない。
【0004】
このような背景から、端末が信号を送信している間に伝送路上に他の端末から送信された信号が存在していない事を確認する信号の衝突検出方法があり、特に周波数変調方式の通信を行う各端末において、自機の送信回路から送信した信号を自機の受信回路で受信して送受信信号を比較し、不一致が生じた時に信号の衝突があったものと判定し信号の送信を中断した後、再送信時の取り決めに従って各通信装置で異なる値となるように設定された時間だけ待機して、再送信を行うことができる通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の通信装置によれば信号の送信から受信に至る通信端末装置間の伝送路が短い場合には信号の衝突を判定することができる。しかしながら、信号は通過した伝送路の距離が長い程、電圧レベルが減衰するため、長い伝送路を使用している場合には、信号の衝突を正確に検出することができないという問題があった。
【0007】
例えば、上記の公報に開示されている
図6の通信装置では、上り伝送路に接続された送信回路から送信したデータと、その送信データがHE(ヘッドエンド)で折り返され下り伝送路に伝送され、その下り伝送路に接続された受信回路で受信したデータを、送信回路と受信回路に接続された送受信データ比較回路で比較して、送受信したデータに不一致が生じている場合に衝突を検出するようになっている。
【0008】
ところが、
図7(1)に示すように、信号の送受信を行う端末Aと端末Bを結ぶ伝送路の距離が長い場合には、
図7(2)に示すように、端末Aから送信された信号は伝送路L1地点では高い電圧レベルを保持しているが、伝送路のL2地点、L3地点と通過して行くと端末Aからの伝送路の距離が長くなるにつれ電圧レベルは徐々に低下し、端末B付近の伝送路L4地点では、低い電圧レベルとなる。また、同じ伝送路であれば、
図7(3)に示すように、端末Bから送信された信号についても伝送路L4〜L1と通過する間に低い電圧レベルとなる。このように伝送路の距離の長さに比例する形で信号の電圧レベルは減衰する。
【0009】
ここで、
図7の端末Aと端末Bとがほぼ同時に信号を送信したものと仮定して、信号の衝突が発生した際に受信する信号について説明する。例えば端末Aは送信した高い電圧レベルの信号と端末Bから送信された低い電圧レベルの信号とが衝突した信号を受信することとなるが、L1地点では端末Aと端末Bから送信された信号の電圧レベルの差異が大きくなるとこから、送信レベルに差がある場合には送信レベルが高い方の信号が正しく送信されるという捕捉効果によって、端末Aが受信する衝突が発生した信号は自機が送信したデータと同様となる。また端末Bにおいても端末Bが受信する衝突が発生した信号は自機が送信したデータと同様となり、端末間の伝送路の距離の長い時には送信データと受信データを比較して衝突を検出することが出来ない場合がある。
【0010】
本発明は、以上述べた問題点を解決し、長い伝送路を利用する空調システムのネットワークにおいて、送信データの衝突を検出することができる通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、周波数変調方式で通信を行う端末装置において、 通信データの送受信を制御し、前記通信データの送信中に送信信号の波形がゼロクロス点前後となる期間を示すゼロクロス判別信号を出力する制御部と、前記ゼロクロス判別信号に応じて前記送信信号の出力をオフにする送信部と
、前記端末装置と伝送路とを接続し、前記通信データを入出力する通信データ入出力端子と、前記通信データ入出力端子から入力された通信データを受信する受信部と、前記通信データの送信中に前記送信部が前記送信信号の出力をオフしている時、かつ、前記通信データ入出力端子から前記通信データが入力された時、自己の前記端末装置から送信した前記通信データと他の端末装置から送信された前記通信データとが衝突したと判定し前記制御部へ衝突検出信号を出力する衝突検出部とを備え、前記制御部は、前記受信部が他の端末装置から前記通信データを受信していない時に前記通信データを送信し、前記通信データの送信中に前記衝突検出信号が入力された時、前記通信データの送信を中断し、ランダムな時間待機した後に改めて前記通信データを送信することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、前記衝突検出部は、前記通信データ入出力端子から入力された前記通信データの電圧値と予め設定された基準電圧の電圧値とを比較する比較器を有し、前記送信部が前記送信信号の出力をオフしている時、かつ、前記通信データ入出力端子から入力された前記通信データの電圧値が前記基準電圧の電圧値を超えた時、自己の前記端末装置から送信した前記通信データと他の端末装置から送信された前記通信データとが衝突したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による通信端末装置によれば、周波数変調を利用した空調システムのネットワークにおいて、長い伝送路であっても通信データの衝突を検出することができる。また、送信データに対する肯定応答(ACK)などの通信を不要にできるため、通信量を低減することが出来る。
【0014】
また、本発明による通信端末装置によれば、ネットワークのノイズレベルに応じて通信データの衝突判定をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0017】
図1は、本発明に係る空調機システムの一例を示す全体図である。
図1は本発明の空調機システムを5階建てのビルで利用する場合を示している。空調機システム1は、ネットワークに接続された複数の室外機20及び室内機30と、これらを制御管理する中央管理装置10の端末装置を有している。中央管理装置10は伝送路L1〜L5に接続され、各端末装置は伝送路L1〜L5からさらに分岐した伝送路(L1−1〜L1−3、・・・L5−1〜L5−2)によって接続され、室外機20はビルの屋外に、室内機30はビルの各フロアにそれぞれ設置される。なお、各フロアの利用者が使用するリモコン31は通信線により各室内機30に接続されるが、通信先が通信線で接続された室内機に限られるため、このリモコン31は本発明の端末装置に含まないこととする。また、各端末装置に記した5桁の英数字は各端末のアドレスを示している。
【0018】
ここで、中央管理装置10から5階に設置されたアドレス“5F020”の室内機30に対して制御が行われたものとして、この時の通信データの伝達経路を説明する。中央管理装置10から送信された通信データは、図示しない中央管理装置10の通信部に接続された伝送路L1に伝達され、伝送路L2と図示しないL3、L4とを経由して伝送路L5へ伝達される。そして、伝送路L5から分岐した伝送路L5−2をさらに経由してアドレス“5F020”の室内機30へ到達し、同室内機30の後述する受信部90で受信され
、同室内機30では通信データの内容に応じて制御が行われる。
【0019】
図2は、本発明に係る端末装置の概略構成を示すブロック図である。
図2において、端末装置40は、送信データを周波数変調したデジタル信号と、そのデジタル信号がゼロクロス点前後を示す期間にゼロクロス判別信号とを出力する制御部50と、制御部50に接続される送信部60と、送信部60に接続され端末装置40と伝送路との通信データを入出力する通信データ入出力端子70と、制御部50と通信データ入出力端子70との間を送信部60と並列に接続される衝突検出部80と、さらに制御部50と通信データ入出力端子70との間を衝突検出部80と並列に接続され、他の端末装置から送信された通信データを受信する受信部90とを備えている。
【0020】
図2において送信部60は、制御部50に接続され制御部50から入力されたデジタル信号をアナログ信号へと変換して出力するD/Aコンバータ61と、D/Aコンバータ61に接続されD/Aコンバータ61から入力されたアナログ信号を伝送路に送信する際の適正レベルに増幅する増幅器62と、増幅器62に接続され制御部50からゼロクロス判別信号が入力された時にスイッチをオフするアナログスイッチ63と、アナログスイッチ63に接続され、アナログスイッチ63から入力されたアナログ信号の高周波成分を低減させて出力する低域通過フィルタであるLPF64とを有している。なお、LPF64(低域通過フィルタ)はD/Aコンバータ61において送信データをデジタル信号からアナログ信号へと変換する際と、アナログスイッチ63においてアナログ信号がオフされた時に生じるアナログ信号のノイズ(高周波成分)が伝送路に出力される事を抑制する。
【0021】
図2において、衝突検出部80は、通信データ入出力端子70に入力されたアナログ信号の電圧レベルが基準電圧(例えば、受信する信号の最大ノイズレベル値など)よりも高い時に“Hi”の信号を出力し、入力された信号の電圧レベルが基準電圧よりも低い時に“Low”の信号を出力する比較器81と、一方の入力端子が比較器81の出力と、他方の入力端子がゼロクロス判別信号を出力する制御部50とに接続され、比較器81からの“Hi”の信号と、制御部50からのゼロクロス判別信号との両方が同時に入力された時だけ出力端子に接続された制御部50へ送信データの衝突発生を示す衝突検出信号を出力するAND回路82とを有している。
【0022】
図3は、送信信号のゼロクロス点付近で検出される他の端末装置から送信されたアナログ信号の電圧レベルを説明する説明図である。
図3(1)は、ある端末装置(中央管理装置10、室外機20、室内機30)から送信された“1010”の通信データと対応するアナログ信号の波形を示している。
図3(2)は、
図3(1)の端末装置から伝送路上の遠い位置に接続された他の端末装置から送信された“0101”の通信データと対応するアナログ信号の波形を示している。
図3(3)は、
図3(1)と
図3(2)のアナログ信号が
図3(1)の端末装置付近の伝送路上で衝突した時に
図3(1)の端末装置で受信される衝突信号の波形を示している。
【0023】
図3(1)と
図3(3)とのアナログ信号の波形から、衝突信号は送信した信号の波形と比較すると乱れているものの、“1010”の通信データを示す信号として判別可能な波形を維持していることから、送受信した信号を比較して衝突が発生したことを判定できない場合があることが判る。
【0024】
一方、
図3(4)は、
図3(1)の送信信号がゼロクロス点(つまり送信信号の電圧が0V)となるタイミングt1〜t6で発生する
図3(2)の他の端末装置から送信された通信データの信号との電位差(電圧レベル)を示している。この
図3の例では、ある端末装置で送受信された信号は、送信信号がゼロクロス点となるt1〜t3で0Vを基準として正の値の電位差、t4〜t6で0Vを基準として負の値の電位差が発生していることが判る。
【0025】
つまり、
図3では送受信した通信データを比較して衝突を判定することができない場合においても、送信信号の電圧が0Vとなるゼロクロス点では、他の端末装置から送信された通信データのみが通信データ入出力端子70へ入力されるため、送信信号のゼロクロス点で同通信データ入出力端子70へ入力された信号の電圧値を確認することで、他の端末装置からの通信データ送信の有無、すなわち信号の衝突を判定することができることを示している。
【0026】
図4は、本発明に係る端末装置で行われる衝突検出を説明するタイミングチャートである。
図4(1)は、端末装置が通信データを送信する時に増幅器62から出力されるアナログ信号の波形を示している。また、
図4(4)は、端末装置が
図4(1)の通信データを送信しようとすると同時に、他の端末装置から送信されたアナログ信号の波形を示している。
図4では、この2つのアナログ信号が伝送路へ伝送された時、端末装置40において信号の衝突がどのように検出されるかについて説明する。
【0027】
図4(2)は、端末装置40が通信データを送信している間に、アナログスイッチ63へ制御部50からゼロクロス点前後を示すゼロクロス判別信号が入力された時、スイッチがオフとなるタイミングを示している。この
図4(2)に示すOFF−1〜OFF−5のスイッチングにより、アナログスイッチ63を通過したアナログ信号は
図4(3)に示す波形のようになる。なお、ゼロクロス点前後でアナログスイッチ63により部分的にカットされたアナログ信号は、このアナログ信号を受信した端末装置の受信部において、アナログ信号の疎密状態によって“0”または“1”を判別し通信データへと復調するため、
ゼロクロス点前後でアナログ信号が一時的にカットされたとしても疎密状態の判別は可能であり、通信データの復調には影響を及ぼさないようになっている。
【0028】
図4(5−1)は、通信データ入出力端子70に入力される
図4(3)と
図4(4)に示すアナログ信号が衝突した際の波形を太線で示し、比較器81で衝突の判定に用いられる基準電圧を一点鎖線で示している。なお、比較器81は、入力されたアナログ信号が示す電圧レベルを正の値と、負の値の両方で信号の衝突判定が行えるように構成されているものとしている。
【0029】
図4(5−2)は、比較器81が出力する信号を示している。比較器81は、
図4(5−1)に示した入力信号の電圧値が衝突の判定に用いられる基準電圧の正または負の値よりも高い時に“Hi”の信号を出力し、同信号の電圧値が同基準電圧の正および負の値よりも低い時に“Low”の信号を出力する。つまり、アナログスイッチのタイミングOFF−1〜OFF−3では基準電圧の正の値よりも高いと判定し、OFF−4〜OFF−5では基準電圧の負の値よりも高いと判定して、それぞれ“Hi”の信号を出力している。
【0030】
図4(5−3)は、AND回路82が出力する衝突検出信号を示している。AND回路82は、比較器81から入力された“Hi”の信号と、制御部50から入力されたゼロクロス点前後を示すゼロクロス判別信号との両方が入力された時、制御部50へ衝突検出信号を出力することを示している。端末装置40は、このような構成と働きによって通信データを送信中に送信信号の衝突を検出することができる。
【0031】
図5は、本発明に係る端末装置の制御部で行われる通信処理のフローチャートである。なお、
図5のフローチャートに記載のSTはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。
【0032】
端末装置40の制御部50は、受信部90が通信データを受信したか否かを確認する(ST1)。受信部90が通信データを受信していない場合(ST1−No)、端末装置40から発信する通信データである送信予定データがバッファ内に有るか否かを確認する(ST2)。送信予定データが無い場合(ST2−No)、送受信停止の要求(例えば、リモコン31からの運転停止の操作など)を受付けたか否かを確認する(ST3)。送受信停止の要求を受付けた場合(ST3−Yes)、通信処理を終了する。また、送受信停止の要求を受付けていない場合(ST3−No)、ST1へ戻る。
【0033】
端末装置40の制御部50はST1において、受信部90から通信データを受信した場合(ST1−Yes)、受信した通信データが自機のアドレス宛のデータか否かを確認する(ST4)。受信データが自機のアドレス宛の場合(ST4−Yes)、受信データの内容に従い制御を行う(ST5)。そしてST1へ戻る。また、受信データが自機のアドレス宛ではない場合(ST4−No)、受信データを破棄する(ST6)。そしてST1へ戻る。
【0034】
端末装置40の制御部50はST2において、送信予定データが有る場合(ST2−Yes)、後述するデータ送信の待機タイマーが作動中か否かを確認する(ST7)。データ送信の待機タイマーが作動していない場合(ST7−No)、送信予定データの送信を開始する(ST8)。次に、データ送信が完了したか否かを確認する(ST9)。データ送信が完了していない場合(ST9−No)、AND回路82から衝突検出信号が入力されたか否かを確認する(ST10)。AND回路82から衝突検出信号が入力された場合(ST10−Yes)、データの送信を中断してその送信データをバッファに格納し、中断の都度ランダムな時間(例えば、制御部50内部に乱数を発生させて取得した値を基にした時間など)が経過するまで待機する様に、制御部50内部でデータ送信の待機タイマーを作動させる(ST11)。そしてST1へ戻る。
【0035】
端末装置40の制御部50はST7において、データ送信の待機タイマーが作動している場合(ST7−Yes)と、ST9において、データ送信が完了している場合(ST9−Yes)とは、ST3へジャンプする。また、ST10において、AND回路82から衝突検出信号が入力されていない場合(ST10−No)、ST9へジャンプする。