特許第6015508号(P6015508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015508
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H01L23/12 301Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-55668(P2013-55668)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-183126(P2014-183126A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146776
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 昭則
(72)【発明者】
【氏名】増田 哲
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−304130(JP,A)
【文献】 特開2000−174204(JP,A)
【文献】 特開平10−135406(JP,A)
【文献】 特開平1−147850(JP,A)
【文献】 特開2004−71597(JP,A)
【文献】 実開昭60−68661(JP,U)
【文献】 特開2005−26263(JP,A)
【文献】 特開2005−109005(JP,A)
【文献】 特開平4−322452(JP,A)
【文献】 特開2000−12765(JP,A)
【文献】 実開平3−97958(JP,U)
【文献】 特開2009−176996(JP,A)
【文献】 特開2005−5629(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0051884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12−23/15
H01L 23/00
H01L 23/34−23/473
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面には凹状部が形成されており、他方の面には接地されるベース金属部が形成されている下層基材部と、
前記下層基材部の凹状部の内側に設置される上層基板と、
前記上層基板の一方の面に搭載される半導体素子と、
を有し、
前記上層基板には、前記半導体素子における接地端子と接続されている接地配線が形成されており、
前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている接地金属部が設けられており、
前記接地金属部は、前記上層基板における前記接地配線と接続されていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記上層基板の一方の面及び他方の面には、接地配線が形成されており、
前記上層基板の一方の面及び他方の面に形成された接地配線は、前記上層基板を貫通する貫通配線により接続されており、
前記半導体素子における接地端子は、貫通配線を介し前記上層基板の他方の面における接地配線と接続されており、
前記上層基板の他方の面における接地配線は、前記接地金属部と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記上層基板の一方の面及び他方の面には、接地配線が形成されており、
前記上層基板の一方の面及び他方の面に形成された接地配線は、前記上層基板を貫通する貫通配線により接続されており、
前記半導体素子における接地端子は、貫通配線を介し前記上層基板の他方の面における接地配線と接続されており、
前記上層基板には、前記接地金属部が入り込む、前記上層基板を貫通している貫通孔が設けられており、
前記上層基板の一方の面における接地配線は、前記貫通孔に入り込んでいる前記接地金属部と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
一方の面には凹状部が形成されており、他方の面には接地されるベース金属部が形成されている下層基材部と、
前記下層基材部の凹状部の内側に設置される上層基板と、
半導体素子と、
を有し、
前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている第1の接地金属部が設けられており、
前記上層基板には、前記第1の接地金属部に対応する領域に、前記上層基板を貫通する第1の貫通孔が設けられており、前記半導体素子は、前記第1の貫通孔における前記第1の接地金属部の上に設置されていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項5】
前記半導体素子における接地端子は、前記第1の接地金属部と接続されており、
前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている第2の接地金属部が設けられており、
前記上層基板には、前記第2の接地金属部が入り込む、前記上層基板を貫通している第2の貫通孔が設けられており、
前記上層基板の一方の面における接地配線は、前記第2の貫通孔に入り込んでいる前記第2の接地金属部と接続されていることを特徴とする請求項4に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記第2の接地金属部には段部が設けられており、
前記第2の接地金属部の段部において、前記上層基板の他方の面に形成された接地配線は、前記第2の接地金属部と接続されていることを特徴とする請求項5に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記第1の接地金属部には段部が設けられており、
前記第1の接地金属部の段部において、前記上層基板の他方の面に形成された接地配線は、前記第1の接地金属部と接続されていることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のブロードバンドの進展により、大容量の高速無線通信の要求が高まっている。大容量化に向けて、携帯電話の基地局用増幅器は第3世代が普及し、今後さらに第4世代へと進展していくものと思われる。また、LTE(Long Term Evolution)等の新通信方式も実用化され、今後更に大容量化が進むものと思われる。そのため、より一層の高出力、高効率、小型化、低コスト化が求められている。一方、レーダー用送受信モジュールには、検知距離の拡大や分解能向上等の高性能化に向けた高出力化、広帯域化が求められており、さらに運用コストの削減や冷却器の小型化に向けた高効率化が求められている。また、フェースドアレイレーダーでは、増幅器を含むレーダーモジュールを狭い空間にアレイ状に配置する必要があり、レーダーモジュールの一層の小型化が要求されている。
【0003】
従来の送受信モジュールは、複数のパッケージに収められた増幅器等の半導体素子が金属により形成された筐体内に実装されている構造のものであり、このため、送受信モジュールが大型化してしまう。一方、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)基板やLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板を用いた高周波パッケージの開発もなされている。また、このような誘電体多層基板に増幅器やフィルター等の半導体素子である電子部品を搭載した高周波モジュールについても開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−171576号公報
【特許文献2】特開2003−318319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高周波モジュールにおいては小型化の要求が高いため、半導体素子である電子部品を3次元的に積層する必要があるが、この場合、高周波における接地不良が生じやすく、低損失で広帯域な性能を確保することは困難であった。
【0006】
よって、広帯域において低損失な高周波モジュールが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一観点によれば、一方の面には凹状部が形成されており、他方の面には接地されるベース金属部が形成されている下層基材部と、前記下層基材部の凹状部の内側に設置される上層基板と、前記上層基板の一方の面に搭載される半導体素子と、を有し、前記上層基板には、前記半導体素子における接地端子と接続されている接地配線が形成されており、前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている接地金属部が設けられており、前記接地金属部は、前記上層基板における前記接地配線と接続されていることを特徴とする。
【0008】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、一方の面には凹状部が形成されており、他方の面には接地されるベース金属部が形成されている下層基材部と、前記下層基材部の凹状部の内側に設置される上層基板と、半導体素子と、を有し、前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている第1の接地金属部が設けられており、前記上層基板には、前記第1の接地金属部に対応する領域に、前記上層基板を貫通する第1の貫通孔が設けられており、前記半導体素子は、前記第1の貫通孔における前記第1の接地金属部の上に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
開示の半導体装置によれば、広帯域において低損失な高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】高周波モジュールの断面図
図2】高周波モジュールの構造の説明図
図3】第1の実施の形態における高周波モジュールの断面図
図4】シミュレーションに用いられたモデルの説明図(1)
図5】シミュレーションに用いられたモデルの説明図(2)
図6】シミュレーションにより得られた通過・反射特性図
図7】第2の実施の形態における高周波モジュールの断面図
図8】第3の実施の形態における高周波モジュールの断面図
図9】第3の実施の形態における高周波モジュールの説明図(1)
図10】第3の実施の形態における高周波モジュールの説明図(2)
図11】第4の実施の形態における高周波モジュールの断面図
図12】第4の実施の形態における他の高周波モジュールの断面図(1)
図13】第4の実施の形態における他の高周波モジュールの断面図(2)
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
〔第1の実施の形態〕
最初に、図1及び図2に基づき積層型パッケージに半導体素子である電子部品等を3次元的に積層した構造の高周波モジュールについて説明する。図1は、この高周波モジュールの構造を示す断面図であり、図2は、この高周波モジュールを分解した斜視図である。この高周波モジュールは、下層基材部910、上層基板920、金属蓋部930等を有している。
【0013】
下層基材部910は、絶縁体である酸化アルミニウム等のセラミックスにより形成されており、内部には高融点金属であるWやMo等により形成された配線及びビア配線が設けられている。下層基材部910には、一方の面に凹状部910aが形成されており、凹状部910aの内側には上層基板920が設置されている。また、下層基材部910の一方の面とは反対側の他方の面には、ベース金属部911が形成されている。下層基材部910において、半導体素子である半導体チップ913が搭載される領域には、貫通孔912が設けられており、貫通孔912において露出しているベース金属部911の面上には、半導体チップ913が搭載されている。ベース金属部911は、銅または銅を含む合金等の材料により形成されており、接地されている。このベース金属部911は、グランドとしての機能と半導体チップ913より生じた熱を放熱する機能とを有している。下層基材部910には、ベース金属部911に接続されている接地ビア配線914及び接地ビア配線914に接続されている接地配線915が形成されている。尚、下層基材部910の一方の面の最上部には、金属蓋部930と接続されるメタルフレーム917が形成されている。
【0014】
上層基板920は、絶縁体である酸化アルミニウム等のセラミックスにより形成されており、両面に金属材料等により配線が形成されている。また、上層基板920の一方の面には、半導体素子である半導体チップ940が搭載されている。半導体チップ940には信号の入出力のための不図示の電極端子が設けられており、この電極端子と上層基板920の一方の面に設けられた配線921とは、ボンディングワイヤ922により接続されている。従って、上層基板920の一方の面に形成された配線921には、半導体チップ940に入出力される高周波信号等が伝播している。
【0015】
また、上層基板920の一方の面には接地配線923が設けられており、他方の面には接地配線924が設けられており、接地配線923と接地配線924とは、上層基板920を貫通する貫通配線925により接続されている。また、接地配線924は、下層基材部910に設けられている接地配線915と接続されている。
【0016】
尚、上層基板920の一方の面に形成されている配線921は、下層基材部910に形成された配線916とボンディングワイヤ926により接続されている。半導体チップ940は、上層基板920の一方の面に形成された接地電極927の上に設置されており、半導体チップ940における不図示のグランド端子(接地端子)と接地電極927とが接続されている。尚、接地電極927は、貫通配線928により、上層基板920の他方の面に形成された接地配線924と接続されている。
【0017】
金属蓋部930は、コバール等の金属材料により形成されており、下層基材部910におけるメタルフレーム917と接合されている。このように、金属蓋部930と下層基材部910におけるメタルフレーム917とを接合することにより、下層基材部910と金属蓋部930により上層基板920を覆うことができる。
【0018】
このような構造の高周波モジュールにおいては、上層基板920の一方の面に搭載された半導体チップ940は、接地電極927、貫通配線928、接地配線924、接地配線915、接地ビア配線914、ベース金属部911を介し接地される。
【0019】
下層基材部910は、HTCCやLTCCである場合、セラミックを焼結させることにより形成されるため、接地ビア配線914や接地配線915は、高融点金属であるWやMo等を含む材料により形成されている。しかしながら、このような高融点金属は、一般的な配線材料である銅等と比べて抵抗が高い。また、下層基材部910に形成される接地ビア配線914や接地配線915は、比較的細く長く形成される場合が多い。このため、半導体チップ940におけるグランド(接地端子)と接地電位が印加されるベース金属部911との間における抵抗が高くなるため、半導体チップ940のグランドの電位が不安定になり、高周波特性が低下してしまう。
【0020】
(高周波モジュール)
次に、第1の実施の形態における高周波モジュールについて説明する。図3は、本実施の形態における高周波モジュールの構造を示す断面図である。本実施の形態における高周波モジュールは、下層基材部10、上層基板20、金属蓋部30等を有している。
【0021】
下層基材部10は、絶縁体である酸化アルミニウム(アルミナ)等のセラミックスにより形成されており、内部には高融点金属であるWやMo等により形成された配線及びビア配線が設けられている。下層基材部10には、一方の面に凹状部10aが形成されており、凹状部10aの内側には上層基板20が設置されている。また、下層基材部10の一方の面とは反対側の他方の面には、ベース金属部11が形成されている。下層基材部10において、半導体素子である半導体チップ13が搭載される領域には、貫通孔12が設けられており、貫通孔12において露出しているベース金属部11の面上には、半導体チップ13が搭載されている。ベース金属部11は、銅または銅を含む合金等の材料により形成されており、接地されている。ベース金属部11は、グランドとしての機能と半導体チップ13より生じた熱を放熱する機能とを有している。下層基材部10には、ベース金属部11に接続されている接地ビア配線14及び接地ビア配線14に接続されている接地配線15が形成されている。尚、下層基材部10の一方の面の最上部には、金属蓋部30と接続されるメタルフレーム17が形成されている。
【0022】
本実施の形態においては、下層基材部10には、ベース金属部11と接続されている接地金属部50が設けられており、この接地金属部50は、後述する上層基板20における接地配線24と接続されている。接地金属部50は、銅等の導電性の高い材料により形成されており、接地ビア配線14等よりも幅が太く形成されている。
【0023】
本実施の形態においては、下層基材部10は、0.25mm厚のアルミナセラミックスを5層積層することにより形成されており、このアルミナセラミックスの最上層には、メタルフレーム17が、凹状部10aの周囲を囲むように形成されている。ベース金属部11は、CuW等の材料により形成されており、下層基材部10に搭載される半導体チップ13としては、MMIC(monolithic microwave integrated circuits)等の集積回路チップが挙げられる。尚、ベース金属部11の上には、その他機能素子が搭載されていてもよい。
【0024】
上層基板20は、絶縁体である酸化アルミニウム等のセラミックスにより形成されており、両面に金属材料等により配線が形成されている。また、上層基板20の一方の面には、半導体素子である半導体チップ40が搭載されている。半導体チップ40には信号の入出力のための不図示の電極端子が設けられており、この電極端子と上層基板20の一方の面に設けられた配線21とは、ボンディングワイヤ22により接続されている。従って、上層基板20の一方の面に形成されている配線21には、半導体チップ40に入出力される高周波信号等が伝播している。
【0025】
また、上層基板20の一方の面には接地配線23が設けられており、他方の面には接地配線24が設けられており、接地配線23と接地配線24とは、上層基板20を貫通する貫通配線25により接続されている。また、接地配線24は、下層基材部10に設けられている接地配線15と接続されている。
【0026】
尚、上層基板20の一方の面に形成されている配線21は、下層基材部10に形成された配線16とボンディングワイヤ26により接続されている。半導体チップ40は、上層基板20の一方の面に形成された接地電極27の上に設置されており、半導体チップ40における不図示のグランド端子(接地端子)と接地電極27とが接続されている。尚、接地電極27は、貫通配線28により、上層基板20の他方の面に形成された接地配線24と接続されている。
【0027】
金属蓋部30は、コバール等の金属材料により形成されており、下層基材部10におけるメタルフレーム17と接合されている。このように、金属蓋部30と下層基材部10におけるメタルフレーム17とを接合することにより、下層基材部10と金属蓋部30により、上層基板20を覆うことができる。
【0028】
金属蓋部30は、例えば、厚さが約0.3mmであって、メタルフレーム17と略同じ大きさで形成されている。メタルフレーム17と金属蓋部30とは、窒素雰囲気中において、約300℃の温度まで加熱することにより、AuSnにより接合することができ、下層基材部10と金属蓋部30とに被われた領域を気密封止することができる。尚、この領域の内部の端子と外部の端子とは、フィードスルー構造により接続されている。
【0029】
本実施の形態における高周波モジュールにおいては、上層基板20の一方の面に搭載された半導体チップ40は、接地電極27、貫通配線28、接地配線24、接地金属部50、ベース金属部11を介し接地されている。このため、図2に示す構造の高周波モジュールよりも、接地されるまでの距離が短く、接地金属部50の幅等は、接地ビア配線914と比較して太い。また、接地金属部50は、銅又は銅を含む材料により形成されており、接地ビア配線914や接地配線915を形成しているWやMoよりも抵抗が低い。このため、半導体チップ40のグランドと接地電位が印加されているベース金属部11との間における抵抗を図2に示される高周波モジュールよりも低くすることができる。よって、半導体チップ40におけるグランドの電位が不安定になることを防ぎ、高周波特性が低下することを抑制することができる。従って、本実施の形態における高周波モジュールは、広帯域において低損失となる。
【0030】
(通過・反射特性)
次に、図3に示される構造の本実施の形態における高周波モジュールと、図2に示される構造の高周波モジュールとの通過・反射特性について説明する。
【0031】
図4は、図3に示される本実施の形態における高周波モジュールのモデルである。尚、図4(a)は、このモデルの上面図であり、図4(b)は、図4(a)における一点鎖線4A−4Bにおいて切断された断面図であり、図4(c)は、図4(a)における一点鎖線4C−4Dにおいて切断された断面図である。
【0032】
図4に示されるモデルは、絶縁体により形成された基板120の一方の面には、信号が伝播する配線130が形成されており、一方の面とは反対側の他方の面には、接地配線140が形成されている。図4に示されるモデルには、入力側のポート(port1)となる電極131と出力側のポート(port2)となる電極132が設けられている。配線130と電極131とはボンディングワイヤ133により接続されており、配線130と電極132とはボンディングワイヤ134により接続されている。よって、入力側のポート(port1)となる電極131より入力した信号は、ボンディングワイヤ133を介し、配線130を伝播し、ボンディングワイヤ134を介し、出力側のポート(port2)となる電極132より出力される。
【0033】
基板120の他方の面に形成された接地配線140は、入力側に設けられた接地電極141と出力側に設けられた接地電極142に接続されている。また、図4に示されるモデルでは、基板120を貫通する接地電極150が設けられている。尚、接地電極141、142、150は接地されている。図4に示されるモデルにおいて、接地電極150は、図3に示される本実施の形態における高周波モジュールにおける接地金属部50に対応するものであり、接地配線140は、接地配線24に対応するものであり、配線130は、配線21等に対応するものである。
【0034】
図5は、図2に示される高周波モジュールのモデルである。尚、図5(a)は、このモデルの上面図であり、図5(b)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bにおいて切断された断面図であり、図5(c)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dにおいて切断された断面図である。
【0035】
図5に示されるモデルは、接地電極150が設けられていないことを除き、図4に示されるモデルと略同じである。尚、図5に示されるモデルでは、接地電極141、142は接地されている。接地配線140は、図2に示される高周波モジュールにおいて、接地配線924に対応するものであり、配線130は、配線921等に対応するものである。
【0036】
図6は、図4に示すモデルと図5に示すモデルについてシミュレーションを行った結果を示す。図6において、6Atは、図4に示す本実施の形態における高周波モジュールのモデルにおける通過特性(S21)を示し、6Arは、反射特性(S11)を示す。また、6Btは、図5に示すモデルにおける通過特性(S21)を示し、6Brは、反射特性(S11)を示す。尚、このシミュレーションは、基板120の長さを8mm、厚さを0.25mm、比誘電率を9.9として行った。
【0037】
図6に示されるように、図5に示すモデルでは、通過特性6Bt(S21)に示されるように、周波数が8GHz近傍において、通過損失が急激に低下しており、これに対応して、反射特性6Br(S11)に示されるように反射が増大している。これに対し、図4に示される本実施の形態における高周波モジュールのモデルにおいては、通過特性6At(S21)に示されるように、周波数が20GHz以下において、通過損失は0.2dB以下である。また、反射特性6Ar(S11)に示されるように、反射も−20dB以下である。よって、図2に示される高周波モジュールのモデルである図5に示されるモデルに比べて、図3に示される本実施の形態における高周波モジュールのモデルである図4に示されるモデルの方が、広帯域において低損失となる。従って、本実施の形態における高周波モジュールは、広帯域において低損失なものとなる。
【0038】
これは、図2に示される高周波モジュールに対応した図5に示されるモデルでは、基板120の中心部の接地インダクタンスが、高周波において大きく、高インピーダンスになるからである。よって、特に、接地電極141、142から信号波長の1/4波長離れた点は、接地インピーダンスが無限大にまで大きくなり、理想的な接地特性と大きな乖離が発生する。一方、図3に示される高周波モジュールに対応した図4に示されるモデルでは、接地電極141、142の他、接地電極150を基板120の中心部に配置することにより、理想的な接地特性と大きな乖離が発生することを抑制している。尚、接地電極の間隔は、1/2波長以下となるように配置することがより好ましい。つまり、接地電極141、142が設けられている基板120の端部から接地電極150までの距離が1/2波長以下となるように接地電極150が配置されていることが好ましい。また、ここにおいて記載されている波長とは、実効波長を意味するものであり、例えば、誘電体中の場合では、真空中の波長/(実効誘電率)1/2が、実効波長となる。
【0039】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態における高周波モジュールは、図7に示されるように、上層基板220に貫通孔221が設けられており、接地金属部250が上層基板220における貫通孔221に入り込んでいる構造のものである。接地金属部250は、上層基板20の一方の面に設けられた接地配線23とボンディングワイヤ251により接続されている。尚、下層基材部10において、接地金属部250は、ベース金属部11と接続されている。
【0040】
本実施の形態においては、図7に示される構造にすることにより、より一層、接地抵抗を低くすることができる。よって、半導体チップ40等における接地電位が不安定になることを抑制することができ、より一層、広帯域において低損失な高周波モジュールを得ることができる。尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0041】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態における高周波モジュールは、図8から図10に示されるように、半導体チップ40の下に接地金属部350が設けられている構造のものである。即ち、下層基材部10に設けられた接地金属部350の上に、半導体チップ40が設置されている構造のものである。図8は、本実施の形態における高周波モジュールの断面図である。図9は、本実施の形態における高周波モジュールにおいて、金属蓋部30及び上層基板320を透過した上面図であり、図10は、本実施の形態における高周波モジュールにおいて、金属蓋部30を透過した上面図である。尚、図8に示される断面図は、図9における一点鎖線9A−9Bにおいて切断された断面及び図10における一点鎖線10A−10Bにおいて切断された断面に対応するものである。
【0042】
本実施の形態における高周波モジュールにおいては、貫通孔221及び321が形成されている上層基板320が用いられている。また、下層基材部10には、ベース金属部11と接続される接地金属部250及び350が設けられており、上層基板320における貫通孔221には接地金属部250が入り込んでおり、貫通孔321には接地金属部350が入り込んでいる。本実施の形態においては、第2の実施の形態と同様、接地金属部250は、上層基板20の一方の面に設けられた接地配線23とボンディングワイヤ251により接続されている。また、上層基板320の貫通孔321においては、接地金属部350の上に、半導体チップ40が設置されており、半導体チップ40における不図示のグランド端子と接地金属部350とが接続されている。
【0043】
本実施の形態においては、半導体チップ40における不図示のグランド端子と接地金属部350とが接続されているため、上層基板320の一方の面に搭載された半導体チップ40は、接地金属部350、ベース金属部11を介し接地されている。よって、半導体チップ40のグランドと接地電位が印加されているベース金属部11との間における抵抗をより接地抵抗を低くすることができる。また、接地金属部350は銅または銅を含む材料により形成されているためは、半導体チップ40において生じた熱を効率よく放熱することができる。
【0044】
尚、本実施の形態においては、接地金属部350を第1の接地金属部と、接地金属部250を第2の接地金属部と記載する場合がある。また、上層基板320に形成されている貫通孔321を第1の貫通孔と、貫通孔221を第2の貫通孔と記載する場合がある。
【0045】
また、上記以外の内容については、第2の実施の形態と同様である。
【0046】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態における高周波モジュールは、図11に示されるように、接地金属部260及び360と上層基板320の他方の面に形成されている接地配線24とが接続されている構造のものである。尚、本実施の形態においては、接地金属部360を第1の接地金属部と、接地金属部260を第2の接地金属部と記載する場合がある。また、上層基板320に形成されている貫通孔321を第1の貫通孔と、貫通孔221を第2の貫通孔と記載する場合がある。
【0047】
本実施の形態における高周波モジュールにおいては、下層基材部10には、ベース金属部11と接続される接地金属部260及び360が設けられている。接地金属部260には、上層基板320に形成されている接地配線24と接続するための段部260aと、段部260aよりも高い位置に表面が略平らに形成された先端部260bが形成されている。また、接地金属部360には、上層基板320に形成されている接地配線24と接続するための段部360aと、段部360aよりも高い位置に表面が略平らに形成された先端部360bが形成されている。
【0048】
上層基板320における貫通孔221には接地金属部260における先端部260bが入り込んでおり、貫通孔321には接地金属部360における先端部360bが入り込んでいる。尚、上層基板320の他方の面に形成された接地配線24と接地金属部260とは、接地金属部260に形成されている段部260aにおいて接続されている。また、上層基板320の他方の面に形成された接地配線24と接地金属部360とは、接地金属部360に形成されている段部360aにおいて接続されている。
【0049】
本実施の形態においては、接地金属部260は、先端部260bにおいて、上層基板20の一方の面に設けられた接地配線23とボンディングワイヤ251により接続されている。また、上層基板320の貫通孔321においては、接地金属部360における先端部360bの上に、半導体チップ40が設置されており、半導体チップ40における不図示のグランド端子は、接地金属部360における先端部360bと接続されている。
【0050】
本実施の形態においては、上層基板320の他方の面に形成された接地配線24と接地金属部260及び360とが接続されているため、より一層、接地抵抗を低くすることができる。また、尚に、本実施の形態においては、上層基板320の他方の面に形成された接地配線24と接地金属部260及び360とが接続されているため、上層基板320には、貫通配線25等が形成されていない基板を用いてもよい。
【0051】
また、本実施の形態における高周波モジュールは、図12に示されるように、接地金属部260に代えて、第2の実施の形態または第3の実施の形態における接地金属部250を用いた構造のものであってもよい。
【0052】
更に、本実施の形態における高周波モジュールは、図13に示されるように、接地金属部260が形成されていない構造のものであってもよい。この場合、貫通孔221が形成されることなく貫通孔321が形成されている上層基板420が用いられる。
【0053】
また、図示はしないが、接地金属部360を形成することなく、接地金属部260が形成されている構造のものであってもよい。
【0054】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0055】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
一方の面には凹状部が形成されており、他方の面には接地されるベース金属部が形成されている下層基材部と、
前記下層基材部の凹状部の内側に設置される上層基板と、
前記上層基板の一方の面に搭載される半導体素子と、
を有し、
前記上層基板には、前記半導体素子における接地端子と接続されている接地配線が形成されており、
前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている接地金属部が設けられており、
前記接地金属部は、前記上層基板における前記接地配線と接続されていることを特徴とする高周波モジュール。
(付記2)
前記上層基板の一方の面及び他方の面には、接地配線が形成されており、
前記上層基板の一方の面及び他方の面に形成された接地配線は、前記上層基板を貫通する貫通配線により接続されており、
前記半導体素子における接地端子は、貫通配線を介し前記上層基板の他方の面における接地配線と接続されており、
前記上層基板の他方の面における接地配線は、前記接地金属部と接続されていることを特徴とする付記1に記載の高周波モジュール。
(付記3)
前記上層基板の一方の面及び他方の面には、接地配線が形成されており、
前記上層基板の一方の面及び他方の面に形成された接地配線は、前記上層基板を貫通する貫通配線により接続されており、
前記半導体素子における接地端子は、貫通配線を介し前記上層基板の他方の面における接地配線と接続されており、
前記上層基板には、前記接地金属部が入り込む、前記上層基板を貫通している貫通孔が設けられており、
前記上層基板の一方の面における接地配線は、前記貫通孔に入り込んでいる前記接地金属部と接続されていることを特徴とする付記1に記載の高周波モジュール。
(付記4)
前記接地金属部には段部が設けられており、
前記接地金属部の段部において、前記上層基板の他方の面に形成された接地配線は、前記接地金属部と接続されていることを特徴とする付記3に記載の高周波モジュール。
(付記5)
前記接地金属部は、銅を含む材料により形成されていることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の高周波モジュール。
(付記6)
一方の面には凹状部が形成されており、他方の面には接地されるベース金属部が形成されている下層基材部と、
前記下層基材部の凹状部の内側に設置される上層基板と、
半導体素子と、
を有し、
前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている第1の接地金属部が設けられており、
前記上層基板には、前記第1の接地金属部に対応する領域に、前記上層基板を貫通する第1の貫通孔が設けられており、前記半導体素子は、前記第1の貫通孔における前記第1の接地金属部の上に設置されていることを特徴とする高周波モジュール。
(付記7)
前記半導体素子における接地端子は、前記第1の接地金属部と接続されており、
前記下層基材部には、前記ベース金属部と接続されている第2の接地金属部が設けられており、
前記上層基板には、前記第2の接地金属部が入り込む、前記上層基板を貫通している第2の貫通孔が設けられており、
前記上層基板の一方の面における接地配線は、前記第2の貫通孔に入り込んでいる前記第2の接地金属部と接続されていることを特徴とする付記6に記載の高周波モジュール。
(付記8)
前記第2の接地金属部には段部が設けられており、
前記第2の接地金属部の段部において、前記上層基板の他方の面に形成された接地配線は、前記第2の接地金属部と接続されていることを特徴とする付記7に記載の高周波モジュール。
(付記9)
前記第1の接地金属部には段部が設けられており、
前記第1の接地金属部の段部において、前記上層基板の他方の面に形成された接地配線は、前記第1の接地金属部と接続されていることを特徴とする付記6から8のいずれかに記載の高周波モジュール。
(付記10)
前記第1の接地金属部及び第2の接地金属部は、銅を含む材料により形成されていることを特徴とする付記6から9のいずれかに記載の高周波モジュール。
(付記11)
前記上層基板の一方の面には、前記半導体素子に入出力する信号が伝播される配線が形成されていることを特徴とする付記1から10のいずれかに記載の高周波モジュール。
(付記12)
前記下層基材部の一方の面に接合される金属蓋部を有しており、
前記下層基材部と前記金属蓋部とが接合されることにより、前記上層基板は、前記下層基材部と前記金属蓋部とにより囲まれることを特徴とする付記1から11のいずれかに記載の高周波モジュール。
(付記13)
前記下層基材部と前記金属蓋部とは、前記下層基材部の一方の面に設けられたメタルフレームを介し接合されていることを特徴とする付記12に記載の高周波モジュール。
【符号の説明】
【0056】
10 下層基材部
10a 凹状部
11 ベース金属部
12 貫通孔
13 半導体チップ
14 接地ビア配線
15 接地配線
16 配線
17 メタルフレーム
20 下層基板
21 配線
22 ボンディングワイヤ
23 接地配線
24 接地配線
25 貫通配線
26 ボンディングワイヤ
27 接地電極
28 貫通配線
30 金属蓋部
40 半導体チップ
50 接地金属部
120 基板
130 配線
131 電極(port1)
132 電極(port2)
133 ボンディングワイヤ
134 ボンディングワイヤ
140 接地配線
141 接地電極
142 接地電極
150 接地電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13