【実施例】
【0024】
以下に、多段プレス装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の多段プレス装置1は、
図1、
図2に示すごとく、工場内の床面又は架台等の設置面上に固定されるベッド2と、ベッド2との間に複数の金型31,32,33A,33B,33C,33Dを挟み込む加圧ベース22と、加圧ベース22を昇降させる昇降機構41と、加圧ベース22に加圧力を付与する加圧機構42とを備えている。
複数の金型は、固定型31、可動型32、第1の下側の中間型33B、第1の上側の中間型33A、第2の下側の中間型33D、第2の上側の中間型33Cによって構成されている。
【0025】
固定型31は、ベッド2の上面に固定されている。可動型32は、固定型31に対する上方に位置し、加圧ベース22の下面に配設されている。第1の下側の中間型33Bは、加圧ベース22が上昇しているときに、加圧ベース22の下方に第1の連結部材26Aによって吊り下げられる第1のスライドベース23Aの下面に配設され、第2の上側の中間型33Cとの間に中段位置のワーク8Bを挟み込むものである。第1の上側の中間型33Aは、第1のスライドベース23Aの上面に配設され、可動型32との間に上段位置のワーク8Aを挟み込むものである。
【0026】
第2の下側の中間型33Dは、加圧ベース22が上昇しているときに、第1のスライドプレートの下方に第2の連結部材26Bによって吊り下げられる第2のスライドベース23Bの下面に配設され、固定型31との間に下段位置のワーク8Cを挟み込むものである。第2の上側の中間型33Cは、第2のスライドベース23Bの上面に配設され、第1の下側の中間型33Bとの間に中段位置のワーク8Bを挟み込むものである。
【0027】
第1のスライドベース23Aには、第1の上側の中間型33Aと可動型32との間の距離を測定する可動型用変位センサ5Aが設けられている。第2のスライドベース23Bには、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの間の距離を測定する第1の中間型用変位センサ5Bが設けられている。ベッド2には、固定型31と第2の下側の中間型33Dとの間の距離を測定する第2の中間型用変位センサ5Cが設けられている。
【0028】
多段プレス装置1においては、
図8、
図9に示すごとく、加圧ベース22を昇降機構41によって下降させる際に、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が、固定型31と第2の下側の中間型33Dとが接近したことを示す所定値c1以下になったときに、減速動作X1として加圧ベース22の下降速度を減速させる。また、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとが接近したことを示す所定値b1以下になったときに、減速動作X2として加圧ベース22の下降速度を減速させる。さらに、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が、第1の上側の中間型33Aと可動型32とが接近したことを示す所定値a1以下になったときに、減速動作X3として加圧ベース22の下降速度を減速させる。
【0029】
以下に、本例の多段プレス装置1につき、
図1〜
図10を参照して詳説する。
図1、
図2に示すごとく、本例の多段プレス装置1は、加圧ベース22を1ストローク下降させる際に、上下方向Hに並んで配置された複数のワーク8A,8B,8Cに対して加工を行うものである。
スライドベース23A,23Bは、ベッド2と加圧ベース22との間に上下に重なるよう複数(2つ)配置されている。本例のスライドベース23A,23Bは、加圧ベース22の下方に第1の連結部材26Aによって吊り下げられた第1のスライドベース23Aと、第1のスライドベース23Aの下方に第2の連結部材26Bによって吊り下げられた第2のスライドベース23Bとである。
【0030】
各ワーク8A,8B,8Cに対してプレス加工を行う型の組は、可動型32と、第1のスライドベース23Aの上面に配設された第1の上側の中間型33Aとの組、第1のスライドベース23Aの下面に配設された第1の下側の中間型33Bと、第2のスライドベース23Bの上面に配設された第2の上側の中間型33Cとの組、及び第2のスライドベース23Bの下面に配設された第2の下側の中間型33Dと、固定型31との組である。
上段位置のワーク8Aは、可動型32と第1の上側の中間型33Aとの間に挟み込まれてプレス加工され、中段位置のワーク8Bは、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとの間に挟み込まれてプレス加工され、下段位置のワーク8Cは、第2の下側の中間型33Dと固定型31との間に挟み込まれてプレス加工される。多段プレス装置1は、加圧機構42による加圧力を受けて各ワーク8A,8B,8Cに対して同時にプレス加工を行うよう構成されている。
【0031】
図1〜
図3に示すごとく、昇降機構41は、ベッド(本体構造下部)2の上面とクラウン(本体構造上部)20の下面との間に配置された昇降シリンダー411を用いて構成されている。クラウン20は、ベッド2の4つの角部から立設された4本の支柱21の上端部に取り付けられている。加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bは、昇降シリンダー411による駆動力を受け、4本の支柱21にガイドされて上下方向Hにスライドするよう構成されている。
可動型32と第1の上側の中間型33Aと間、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとの間、及び第2の下側の中間型33Dと固定型31との間には、それぞれが閉じられるときに互いに離れる方向へ反発力を作用させるスプリング等の反発手段が設けられている。
【0032】
図4に示すごとく、本例の昇降機構41を構成する昇降シリンダー411は、加圧ベース22の下降速度を速くするために、可動型32を含む加圧ベース22の自重W及び各中間型33A,33B,33C,33Dを含む各スライドベース23A,23Bの自重Wを利用して、加圧ベース22を下降させるよう構成されている。より具体的には、昇降シリンダー411における下降側のポートP1には、作動油Oが貯留されたタンク43から作動油Oを直接流入させるためのバイパス配管431が接続されている。そして、加圧ベース22を下降させるときには、タンク43からバイパス配管431を経由して、昇降シリンダー411の下降側のポートP1に作動油Oが流入する。
【0033】
これにより、昇降シリンダー411に充分な作動油Oが流入し、昇降シリンダー411が加圧ベース22の下降速度を制限せず、加圧ベース22が、加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bの自重Wを利用して、速い速度で下降することができる。なお、昇降シリンダー411の下降側のポートP1及び上昇側のポートP2には、ポンプ44によってタンク43から作動油が送られる配管441,442も接続されている。
加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bの自重Wを利用した加圧ベース22の下降は、加速動作(後述するY1〜Y3)として加圧ベース22の下降速度を加速させるときに行うことができる。また、加速動作を行うときに、昇降シリンダー411のストロークのみによる加圧ベース22の下降制御から、自重Wを利用した加圧ベース22の下降制御に切り換えることもできる。
加圧ベース22の上昇速度の加速及び減速の制御は、ポンプ44から昇降シリンダー411へ送り出す作動油Oの流量を調整することによって行うことができる。
【0034】
図1、
図7に示すごとく、本例の加圧機構42は、加圧シリンダー421と、加圧シリンダー421による加圧力を増大させるための上下一対のリンク422とを用いたトグル機構である。トグル機構は、上下一対のリンク422が上下に折畳まれた状態から上下に延びる状態に変化する際に、テコの原理によって加圧シリンダー421による加圧力を増大させて、加圧ベース22に加圧力を付与するよう構成されている。また、加圧シリンダー421及び上下一対のリンク422は、左右方向Bにおいて互いに向き合う状態で、加圧ベース22の中心部に対する左右方向Bの対称位置に配設されている。なお、
図2における矢印Dは、左右方向Bに直交する奥行方向を示す。
【0035】
図1、
図2に示すごとく、加圧ベース22が上死点H1にある多段プレス装置1の原位置(上昇位置)101において、第1のスライドベース23Aは、左右両側に設けられた第1の連結部材26Aによって加圧ベース22に吊り下げられており、第2のスライドベース23Bは、左右両側に設けられた第2の連結部材26Bによって第1のスライドベース23Aに吊り下げられている。各連結部材26A,26Bは、上下に伸びるバー又はシャフトを用いて形成されている。
【0036】
図7に示すごとく、加圧ベース22が下死点H2にある多段プレス装置1の加工位置(下降位置)102から加圧ベース22が上昇するときには、
図6に示すごとく、第1の連結部材26Aが加圧ベース22に係止されて、加圧ベース22に第1のスライドベース23Aが吊り上げられ(持ち上げられ)、また、
図5に示すごとく、第2の連結部材26Bが第1のスライドベース23Aに係止されて、加圧ベース22及び第1のスライドベース23Aに第2のスライドベース23Bが吊り上げられる(持ち上げられる)。
【0037】
昇降機構41によって加圧ベース22が下降する際には、第1のスライドベース23A及び第2のスライドベース23Bが各連結部材26A,26Bによって加圧ベース22に吊り下げられた状態で下降する。より具体的には、加圧ベース22が下降する際には、
図5に示すごとく、始めに、第2のスライドベース23Bにおける第2の下側の中間型33Dが、下段位置のワーク8Cを挟み込んでベッド2における固定型31に閉じられる。
【0038】
次いで、加圧ベース22がさらに下降する際には、
図6に示すごとく、第1のスライドベース23Aにおける第1の下側の中間型33Bが、中段位置のワーク8Bを挟み込んで第2のスライドベース23Bにおける第2の上側の中間型33Cに閉じられる。次いで、加圧ベース22がさらに下降する際には、
図7に示すごとく、加圧ベース22における可動型32が、第1のスライドベース23Aにおける第1の上側の中間型33Aに閉じられる。その後、加圧機構42によって加圧ベース22に加圧力が付与される際には、
図7に示すごとく、各ワーク8A,8B,8Cがそれぞれの型31,32,33A,33B,33C,33Dに挟み込まれてプレス加工が行われる。
また、加圧ベース22が下降する際には、
図6に示すごとく、第2の連結部材26Bの上側部分が第1のスライドベース23Aの上方へ突出し、
図7に示すごとく、第1の連結部材26Aの上側部分が加圧ベース22の上方へ突出する。
【0039】
一方、プレス加工後に加圧ベース22が上昇する際には、第1のスライドベース23A及び第2のスライドベース23Bが各連結部材26A,26Bによって加圧ベース22に吊り下げられる状態を形成しながら上昇する。より具体的には、加圧ベース22が上昇する際には、
図6に示すごとく、始めに可動型32が第1の上側の中間型33Aから離れ、次いで、
図5に示すごとく、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33Cから離れ、最後に、
図1に示すごとく、第2の下側の中間型33Dが固定型31から離れる。
【0040】
図2に示すごとく、各中間型用変位センサ5B,5C及び可動型用変位センサ5Aは、非接触で距離を測定するレーザー変位センサである。なお、各変位センサ5A,5B,5Cには、レーザー変位センサ以外にも、非接触で距離を測定することができるセンサを用いることができる。各変位センサ5A,5B,5Cによる距離の測定値は、型31,32,33A,33B、33C,33D同士が近づくときに小さくなり、型31,32,33A,33B、33C,33D同士が離れるときに大きくなる。
【0041】
可動型用変位センサ5Aは、第1のスライドベース23Aの上面に設けられており、加圧ベース22の下面に設けられたドッグ51との間の距離を測定するよう構成されている。第1の中間型用変位センサ5Bは、第2のスライドベース23Bの上面に設けられており、第1のスライドベース23Aの下面に設けられたドッグ51との間の距離を測定するよう構成されている。第2の中間型用変位センサ5Cは、ベッド2の上面に設けられており、第2のスライドベース23Bの下面に設けられたドッグ51との間の距離を測定するよう構成されている。
なお、各変位センサ5A,5B,5Cとドッグ51との位置関係は、それぞれ上下に配置する位置を入れ替えることができる。
【0042】
図2、
図3に示すごとく、可動型用変位センサ5Aは、第1のスライドベース23Aの上面において、第1のスライドベース23Aの上面と加圧ベース22の下面とが対向する対向平面E1内の複数箇所(本例では4箇所)に設けられている。第1の中間型用変位センサ5Bは、第2のスライドベース23Bの上面において、第2のスライドベース23Bの上面と第1のスライドベース23Aの下面とが対向する対向平面E2内の複数箇所(本例では4箇所)に設けられている。第2の中間型用変位センサ5Cは、ベッド2の上面において、ベッド2の上面と第2のスライドベース23Bの下面とが対向する対向平面E3内の複数箇所(本例では4箇所)に設けられている。
【0043】
図3に示すごとく、本例の各変位センサ5A,5B,5Cは、各対向平面E1,E2,E3の中心位置に対して左右方向W及び奥行方向Dに対称となる位置に設けられている。これにより、加圧ベース22又は各スライドベース23A,23Bの平衡度が悪化していないかを検出することができる。また、各変位センサ5A,5B,5Cは、加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bに対して4本の支柱21が設けられた4つの角部に近い位置に設けられている。
【0044】
昇降機構41及び加圧機構42は、制御装置からの出力信号を受けて動作し、各変位センサ5A,5B,5Cによる測定信号は、制御装置に送られるよう構成されている。制御装置は、各変位センサ5A,5B,5Cからの測定信号を受け取って、昇降機構41及び加圧機構42を動作させるよう構成されている。
制御装置は、同じ対向平面E1,E2,E3内に設けられた各変位センサ5A,5B,5C間における距離の測定値の違いが所定値の範囲内にあるときには、加圧ベース22又は各スライドベース23A,23Bが、4本の支柱21に対して垂直になっており、ベッド2に対する平衡度が正常に維持されていることを検知するよう構成されている。
【0045】
一方、制御装置は、同じ対向平面E1,E2,E3内に設けられた各変位センサ5A,5B,5C間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったときには、加圧ベース22又はスライドベース23A,23Bが、4本の支柱21に対して若干斜めに傾き、ベッド2に対する平衡度が異常であることを検知するよう構成されている。
特に、制御装置は、加圧ベース22が下降する際に、各変位センサ5A,5B,5C間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったときには、昇降機構41による加圧ベース22の下降を異常停止させるよう構成されている。そして、この異常停止を行ったときには、作業者は、メンテナンスを行って、加圧ベース22又はスライドベース23A,23Bに生じた平衡度の悪化を修復することができる。これにより、互いに閉じられる各型31,32,33A,33B,33C,33Dの間に、摩耗、損傷等が発生することを防止することができる。
【0046】
各変位センサ5A,5B,5Cを多段プレス装置1に取り付けたときには、次のようにして、加圧ベース22を上死点H1から下降させる際の初期設定を行う。具体的には、加圧ベース22を上死点H1から下降させ、第2の下側の中間型33Dが固定型31に接近した位置で加圧ベース22の下降を停止させて、第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c1を決定する。次いで、加圧ベース22をさらに下降させ、第2の下側の中間型33Dと固定型31との間に下段位置のワーク8Cを挟み込んだ位置で加圧ベース22の下降を停止させて、第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c2を決定する。
また、第1の中間型用変位センサ5Bによる所定値b1及び所定値b2、及び可動型用変位センサ5Aによる所定値a1及び所定値a2についても、第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c1及び所定値c2と同様に決定することができる。
【0047】
また、次のようにして、加圧ベース22を下死点H2から上昇させる際の初期設定を行う。具体的には、加圧ベース22を下死点H2から徐々に上昇させ、可動型32が第1の上側の中間型から離型した位置で加圧ベース22の上昇を停止させて、可動型用変位センサ5Aによる所定値a3を決定する。次いで、加圧ベース22をさらに上昇させ、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が始まる手前位置で加圧ベース22の上昇を停止させて、可動型用変位センサ5Aによる所定値a4を決定する。
また、第1の中間型用変位センサ5Bによる所定値b3及び所定値b4、及び第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c3及び所定値c4についても、可動型用変位センサ5Aによる所定値a3及び所定値a4と同様に決定することができる。
【0048】
次に、制御装置によって多段プレス装置1の動作を制御する方法につき、
図8のグラフ及び
図9、
図10のフローチャートを参照して説明し、その作用効果につき説明する。
ここで、
図8は、横軸に時間をとり、縦軸に加圧ベース22の移動量をとって、多段プレス装置1の加工サイクルにおける、加圧ベース22の移動速度の変化を示す。
【0049】
本例の制御装置は、次のようにして、昇降機構41による加圧ベース22の下降速度の制御、加圧機構42による加圧ベース22の加圧の制御、及び昇降機構41による加圧ベース22の上昇速度の制御を行う。
まず、加圧ベース22が上死点H1にあり、多段プレス装置1が原位置101にある状態において、可動型32と第1の上側の中間型33Aとの間、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとの間、及び第2の下側の中間型33Dと固定型31との間に、それぞれ上段位置のワーク8A、中段位置のワーク8B及び下段位置のワーク8Cを配置する。
【0050】
次いで、制御装置は、昇降機構41を動作させ、1段階目の加速動作Y1として下降速度を速くして加圧ベース22の下降を開始させる(
図9のステップS1)。そして、第1、第2のスライドベース23Bが吊り下げられた加圧ベース22が下降する。このとき、加圧ベース22の下降速度を速くするときには、タンク43からバイパス配管431を経由させて昇降シリンダー411の下降側のポートP1に作動油Oを流入させ、加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bの自重を利用して、加圧ベース22を下降させる。
【0051】
次いで、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c1以下になるまで、加圧ベース22を下降させる(S2)。そして、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c1以下になったときには、制御装置は、第2の下側の中間型33Dが固定型31上の下段位置のワーク8Cに接近したと判断して、1段階目の減速動作X1として加圧ベース22の下降速度を減速させる(S3)。
また、1段階目の減速動作X1として加圧ベース22を遅い速度で下降させる際に、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c2以下になったときには(S4)、制御装置は、第2の下側の中間型33Dと固定型31とが下段位置のワーク8Cを挟み込んだと判断して、2段階目の加速動作Y2として加圧ベース22の下降速度を加速させる(S5)。
【0052】
なお、第2の下側の中間型33Dと固定型31とが下段位置のワーク8Cを挟み込んだときには、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が略一定になる(ほとんど変化しなくなる)。そのため、制御装置は、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が略一定になったときに、2段階目の加速動作Y2を開始させることもできる(S5)。
【0053】
次いで、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b1以下になるまで、加圧ベース22を下降させる(S6)。そして、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b1以下になったときには、制御装置は、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33C上の中段位置のワーク8Bに接近したと判断して、2段階目の減速動作X2として加圧ベース22の下降速度を減速させる(S7)。
また、2段階目の減速動作X2として加圧ベース22を遅い速度で下降させる際に、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b2以下になったときには(S8)、制御装置は、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとが中段位置のワーク8Bを挟み込んだと判断して、3段階目の加速動作Y3として加圧ベース22の下降速度を加速させる(S9)。
【0054】
なお、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとが中段位置のワーク8Bを挟み込んだときには、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が略一定になる(ほとんど変化しなくなる)。そのため、制御装置は、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が略一定になったときに、3段階目の加速動作Y3を開始させることもできる(S9)。
【0055】
そして、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a1以下になるまで、加圧ベース22を下降させる(S10)。次いで、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a1以下になったときには、制御装置は、可動型32が第1の上側の中間型33A上の上段位置のワーク8Aに接近したと判断して、3段階目の減速動作X3として加圧ベース22の下降速度を減速させる(S11)。
また、3段階目の減速動作X3として加圧ベース22を遅い速度で下降させる際に、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a2以下になったときには(S12)、制御装置は、可動型32と第1の上側の中間型33Aとが上段位置のワーク8Aを挟み込んだと判断して、加圧動作Zとして加圧機構42による加圧力を加圧ベース22に付与する(S13)。
そして、この状態を一定時間の間保って(一定時間保圧し)、加圧機構42による加圧力によって、各型31,32,33A,33B,33C,33Dの間に挟み込まれた各ワーク8A,8B,8Cにプレス加工を行う。
【0056】
なお、可動型32と第1の上側の中間型33Aとが上段位置のワーク8Aを挟み込んだときには、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が略一定になる(ほとんど変化しなくなる)。そのため、制御装置は、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が略一定になったときに、加圧動作Zを開始させることもできる(S13)。
【0057】
次いで、各ワーク8A,8B,8Cに対するプレス加工が行われた後には、昇降機構41による加圧ベース22の上昇速度の制御を行う。そして、制御装置は、昇降機構41を動作させ、4段階目の減速動作X4として上昇速度を遅くして加圧ベース22の上昇を開始させる(
図10のステップS14)。このとき、加圧ベース22が単体で上昇する。
次いで、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a3以上になるまで、加圧ベース22を上昇させる(S15)。そして、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a3以上になったときには、制御装置は、第1の上側の中間型33Aと可動型32との離型が終わったと判断して、4段階目の加速動作Y4として加圧ベース22の上昇速度を加速させる(S16)。ここで、離型の終わりは、可動型32が加工後の上段位置のワーク8Aから離れたときとして判断する。
【0058】
また、4段階目の加速動作Y4として上昇速度を速くして加圧ベース22を上昇させる際に、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a4以上になったときには(S17)、制御装置は、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が始まると判断して、5段階目の減速動作X5として加圧ベース22の上昇速度を減速させる(S18)。この第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が始まるときは、加圧ベース22による第1のスライドベース23Aの吊り上げが開始されるときである。
【0059】
次いで、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b3以上になるまで、加圧ベース22を上昇させる(S19)。そして、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b3以上になったときには、制御装置は、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が終わったと判断して、5段階目の加速動作Y5として加圧ベース22の上昇速度を加速させる(S20)。ここで、離型の終わりは、第1の下側の中間型33Bが加工後の中段位置のワーク8Bから離れたときとして判断する。
【0060】
また、5段階目の加速動作Y5として上昇速度を速くして加圧ベース22を上昇させる際に、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b4以上になったときには(S21)、制御装置は、固定型31と第2の下側の中間型33Dとの離型が始まると判断して、6段階目の減速動作X6として加圧ベース22の上昇速度を減速させる(S22)。この固定型31と第2の下側の中間型33Dとの離型が始まるときは、加圧ベース22による第2のスライドベース23Bの吊り上げが開始されるときである。
【0061】
次いで、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c3以上になるまで、加圧ベース22を上昇させる(S23)。そして、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c3以上になったときには、制御装置は、固定型31と第2の下側の中間型33Dとの離型が終わったと判断して、6段階目の加速動作Y6として加圧ベース22の上昇速度を加速させる(S24)。ここで、離型の終わりは、第2の下側の中間型33Dが加工後の下段位置のワーク8Cから離れたときとして判断する。
また、6段階目の加速動作Y6として上昇速度を速くして加圧ベース22を上昇させる際に、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c4以上になったときには(S25)、制御装置は、加圧ベース22が上死点H1に到達すると判断して、7段階目の減速動作X7として加圧ベース22の上昇速度を減速させる(S26)。
【0062】
このように、加圧ベース22の下降速度を1段階目〜3段階目の加速動作Y1〜Y3として速くし、また、加圧ベース22の上昇速度を4段階目〜6段階目の加速動作Y4〜Y6として速くしたことにより、多段プレス装置1によるワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。また、加圧ベース22の下降速度を1段階目〜3段階目の減速動作X1〜X3として遅くしたことにより、第2の下側の中間型33Dが固定型31に閉じられる際、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33Cに閉じられる際、可動型32が第1の上側の中間型33Aに閉じられる際にそれぞれ発生する衝撃音を緩和することができる。
【0063】
また、加圧ベース22の上昇速度を4段階目〜7段階目の減速動作X4〜X7として遅くしたことにより、可動型32が第1の上側の中間型33Aから離型される際、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33Cから離型される際、第2の下側の中間型33Dが固定型31から離型される際、加圧ベース22が上死点H1に到達する際にそれぞれ発生する衝撃音を緩和することができる。
また、可動型用変位センサ5Aを用いることにより、加圧機構42による加圧力を加圧ベース22に付与するタイミングを適切に調整することができる。これによっても、多段プレス装置1によるワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。
【0064】
また、本例の多段プレス装置1の制御装置によれば、モーション制御等の複雑な電気的制御を伴わずに、簡単な方法によって、加圧ベース22の下降速度及び上昇速度を制御することができる。そして、衝撃音の発生を緩和して、ワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。
また、各変位センサ5A,5B,5Cを用いて加圧ベース22の下降速度及び上昇速度を制御することにより、機械的に接触するスイッチに必要であった初期設定位置の調整をなくすことができる。そして、各変位センサ5A,5B,5Cの初期設定を極めて簡単に行うことができる。
【0065】
それ故、本例の多段プレス装置1によれば、簡単な方法によって、衝撃音の発生の緩和、及びワークの加工サイクルタイムの短縮を図ることができ、かつ、初期設定にかかる時間の短縮を図ることができる。