特許第6015555号(P6015555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015555
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】多段プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 7/02 20060101AFI20161013BHJP
   B30B 15/20 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B30B7/02
   B30B15/20 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-105298(P2013-105298)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-226669(P2014-226669A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】柴田 高良
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−066931(JP,A)
【文献】 特開平08−103897(JP,A)
【文献】 特開平10−225732(JP,A)
【文献】 特開昭59−087894(JP,A)
【文献】 特開2011−092965(JP,A)
【文献】 特開平10−277799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 7/02
B30B 15/20
B30B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に固定されるベッドと、該ベッドとの間に複数の金型を挟み込む加圧ベースと、該加圧ベースを昇降させる昇降機構と、上記加圧ベースに加圧力を付与する加圧機構と、を備える多段プレス装置において、
上記複数の金型は、上記ベッドの上面に固定された固定型と、
該固定型に対する上方に位置し、加圧ベースの下面に配設された可動型と、
上記加圧ベースが上昇しているときに、該加圧ベースの下方に連結部材によって吊り下げられるスライドベースの下面に配設され、上記固定型との間にワークを挟み込む下側の中間型と、
上記スライドベースの上面に配設され、上記可動型との間にワークを挟み込む上側の中間型と、によって構成されており、
上記ベッド又は上記スライドベースには、上記固定型と上記下側の中間型との間の距離を測定する中間型用変位センサが設けられており、
上記スライドベース又は上記加圧ベースには、上記上側の中間型と上記可動型との間の距離を測定する可動型用変位センサが設けられており、
上記加圧ベースを上記昇降機構によって下降させる際に、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型とが接近したことを示す所定値以下になったときに上記加圧ベースの下降速度を減速させ、さらに上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型とが接近したことを示す所定値以下になったときに上記加圧ベースの下降速度を減速させるよう構成されていることを特徴とする多段プレス装置。
【請求項2】
上記スライドベースが吊り下げられた上記加圧ベースを上記昇降機構によって下降させる際に、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型とが接近したことを示す所定値以下になったときに、上記加圧ベースの下降速度を減速させる減速動作と、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型とが上記ワークを挟み込んだことを示す所定値以下になったとき、あるいは略一定になったときに、上記加圧ベースの下降速度を加速させる加速動作とを行い、
次いで、上記加圧ベースを上記昇降機構によってさらに下降させる際に、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型とが接近したことを示す所定値以下になったときに、上記加圧ベースの下降速度を減速させる減速動作と、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型とが上記ワークを挟み込んだことを示す所定値以下になったとき、あるいは略一定になったときに、上記加圧機構による加圧力を上記加圧ベースに付与する加圧動作とを行うよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多段プレス装置。
【請求項3】
上記中間型用変位センサは、上記スライドベースの下面と上記ベッドの上面とのいずれかであって、これらが対向する対向平面内の複数箇所に設けられており、
上記可動型用変位センサは、上記加圧ベースの下面と上記スライドベースの上面とのいずれかであって、これらが対向する対向平面内の複数箇所に設けられており、
上記対向平面内における複数箇所の上記中間型用変位センサ間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったとき、又は上記対向平面内における複数箇所の上記可動型用変位センサ間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったときには、上記昇降機構による上記加圧ベースの下降を異常停止させるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多段プレス装置。
【請求項4】
上記下側の中間型及び上記上側の中間型が配設されたスライドベースは、上記ベッドと上記加圧ベースとの間に上下に重なるよう複数配置されており、
上記中間型用変位センサは、上記スライドベースの数に対応して上記ベッド又は上記スライドベースに設けられており、かつ、上記ワークを挟み込む上記固定型と上記下側の中間型との間の距離、又は上記ワークを挟み込む上記上側の中間型と上記下側の中間型との間の距離を測定するよう構成されており、
上記中間型用変位センサを用いた上記減速動作及び上記加速動作は、上記スライドベースの数と同じ回数繰り返すよう構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多段プレス装置。
【請求項5】
上記加圧ベースを上記昇降機構によって上昇させる際に、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型との離型が終わったことを示す所定値以上になったとき、及び上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型との離型が終わったことを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を加速させるよう構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段プレス装置。
【請求項6】
上記加圧ベースを上記昇降機構によって上昇させる際に、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型との離型が終わったことを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を加速させる加速動作と、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型との離型が始まることを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を減速させる減速動作とを行い、
次いで、上記スライドベースが吊り下げられた上記加圧ベースを上記昇降機構によってさらに上昇させる際に、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型との離型が終わったことを示す所定値以上になったとき、あるいは略一定になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を加速させる加速動作と、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記可動ベースが上死点に到達することを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を減速させる減速動作とを行うよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の多段プレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークに対して1ストローク動作でプレス加工を行う多段プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の多段プレス装置においては、上型と下型とからなるプレス型を複数個鉛直方向に並べて配置し、複数のプレス型を鉛直方向に一度に閉じることにより複数の被成形体を一度にプレス成形することが記載されている。多段プレス装置においては、複数のプレス型における上型と下型とが閉じるときに、それらの自重によって大きな衝撃音が発生する。そのため、衝撃音の発生を緩和させるために、上型と下型とが接触する直前に、上型の下降速度を減速させることが考えられる。
【0003】
また、特許文献2のサーボプレスのモーション制御装置においては、スライドが金型にタッチする位置、金型が被加工物にタッチする位置、打抜き位置、ダイクッション戻り位置、ノックアウト位置等のそれぞれの位置を検出している。そして、この検出された位置の所定距離手前の減速開始位置で、スライドを所定速度に減速し、その後、所定の速度に戻して打抜き加工を行うようにしている。これにより、型タッチ時、加圧開始時、打抜き時、ダイクッション戻り時及びノックアウト時において、騒音、振動の発生を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−92965号公報
【特許文献2】特許第3789195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に、自重を利用してプレス型を下降させる多段プレス装置においては、モーション制御等の複雑な電気的制御を伴わずに、簡単な方法によって、プレス型の下降速度を制御したいという要請がある。また、この多段プレス装置において、機械的に接触するスイッチを用いて、プレス型の下降速度の制御を行う場合には、このスイッチの初期設定位置の調整が困難である。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、簡単な方法によって、衝撃音の発生の緩和、及びワークの加工時間の短縮を図ることができ、かつ、初期設定にかかる時間の短縮を図ることができる多段プレス装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、設置面上に固定されるベッドと、該ベッドとの間に複数の金型を挟み込む加圧ベースと、該加圧ベースを昇降させる昇降機構と、上記加圧ベースに加圧力を付与する加圧機構と、を備える多段プレス装置において、
上記複数の金型は、上記ベッドの上面に固定された固定型と、
該固定型に対する上方に位置し、加圧ベースの下面に配設された可動型と、
上記加圧ベースが上昇しているときに、該加圧ベースの下方に連結部材によって吊り下げられるスライドベースの下面に配設され、上記固定型との間にワークを挟み込む下側の中間型と、
上記スライドベースの上面に配設され、上記可動型との間にワークを挟み込む上側の中間型と、によって構成されており、
上記ベッド又は上記スライドベースには、上記固定型と上記下側の中間型との間の距離を測定する中間型用変位センサが設けられており、
上記スライドベース又は上記加圧ベースには、上記上側の中間型と上記可動型との間の距離を測定する可動型用変位センサが設けられており、
上記加圧ベースを上記昇降機構によって下降させる際に、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型とが接近したことを示す所定値以下になったときに上記加圧ベースの下降速度を減速させ、さらに上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型とが接近したことを示す所定値以下になったときに上記加圧ベースの下降速度を減速させるよう構成されていることを特徴とする多段プレス装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記多段プレス装置においては、中間型用変位センサ及び可動型用変位センサから得られる情報としての距離の測定値を用い、昇降機構による加圧ベースの下降速度の制御を行う。
具体的には、加圧ベースを昇降機構によって下降させる際には、加圧ベースの下降を開始させるときの下降速度を速くし、中間型用変位センサによって、固定型と下側の中間型と間の距離を測定する。そして、中間型用変位センサによる距離の測定値が、固定型と下側の中間型とが接近したことを示す所定値以下になったときには、加圧ベースの下降速度を減速させる。また、固定型と下側の中間型との間にワークを挟み込んだ後には、加圧ベースの下降速度を再び上昇させ、可動型用変位センサによって、上側の中間型と可動型と間の距離を測定する。そして、可動型用変位センサによる距離の測定値が、上側の中間型と可動型とが接近したことを示す所定値以下になったときには、加圧ベースの下降速度を減速させる。
【0009】
このように、加圧ベースの下降速度を速くしたことにより、多段プレス装置によるワークの加工時間を短縮することができる。また、加圧ベースの下降速度を遅くしたことにより、下側の中間型が固定型に閉じられる際に発生する衝撃音、及び可動型が上側の中間型に閉じられる際に発生する衝撃音を緩和することができる。そして、モーション制御等の複雑な電気的制御を伴わずに、簡単な方法によって、加圧ベースの下降速度を制御することができる。
【0010】
また、各変位センサを用いて加圧ベースの下降速度を制御することにより、機械的に接触するスイッチに必要であった初期設定位置の調整をなくすことができる。そして、各変位センサの初期設定を極めて簡単に行うことができる。
それ故、上記多段プレス装置によれば、簡単な方法によって、衝撃音の発生の緩和、及びワークの加工時間の短縮を図ることができ、かつ、初期設定にかかる時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、原位置にある多段プレス装置を正面から見た状態で示す説明図。
図2】実施例にかかる、原位置にある多段プレス装置を側面から見た状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、多段プレス装置における型の部分を上面から見た状態で示す説明図。
図4】実施例にかかる、多段プレス装置における昇降機構周辺の構成を模式的に示す説明図。
図5】実施例にかかる、第2の下側の中間型と固定型とが下段位置のワークを挟み込む状態の多段プレス装置を正面から見た状態で示す説明図。
図6】実施例にかかる、第1の下側の中間型と第2の上側の中間型とが中段位置のワークを挟み込む状態の多段プレス装置を正面から見た状態で示す説明図。
図7】実施例にかかる、可動型と第1の上側の中間型とが上段位置のワークを挟み込む状態の多段プレス装置を正面から見た状態で示す説明図。
図8】実施例にかかる、横軸に時間をとり、縦軸に加圧ベースの移動量をとって、加圧ベースの移動速度の変化を示すグラフ。
図9】実施例にかかる、加圧ベースが下降する際の制御を示すフローチャート。
図10】実施例にかかる、加圧ベースが上昇する際の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した多段プレス装置における好ましい実施の形態につき説明する。
上記多段プレス装置においては、上記スライドベースが吊り下げられた上記加圧ベースを上記昇降機構によって下降させる際に、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型とが接近したことを示す所定値以下になったときに、上記加圧ベースの下降速度を減速させる減速動作と、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型とが上記ワークを挟み込んだことを示す所定値以下になったとき、あるいは略一定になったときに、上記加圧ベースの下降速度を加速させる加速動作とを行い、次いで、上記加圧ベースを上記昇降機構によってさらに下降させる際に、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型とが接近したことを示す所定値以下になったときに、上記加圧ベースの下降速度を減速させる減速動作と、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型とが上記ワークを挟み込んだことを示す所定値以下になったとき、あるいは略一定になったときに、上記加圧機構による加圧力を上記加圧ベースに付与する加圧動作とを行うよう構成されていてもよい。
【0013】
この場合には、次のようにして、昇降機構による加圧ベースの下降速度の制御、及び加圧機構による加圧ベースの加圧の制御を行う。まず、下降速度を速くして、加圧ベースの下降を開始させる。次いで、中間型用変位センサによる距離の測定値が所定値以下になったときには、下側の中間型が固定型に接近したと判断して、減速動作として加圧ベースの下降速度を減速させる。また、減速動作として下降速度を遅くして加圧ベースを下降させる際に、中間型用変位センサによる距離の測定値が所定値以下になったとき、あるいは略一定になったときには、固定型と下側の中間型とがワークを挟み込んだと判断して、加速動作として加圧ベースの下降速度を加速させる。
【0014】
次いで、加圧ベースをさらに下降させる際に、可動型用変位センサによる距離の測定値が所定値以下になったときには、可動型が上側の中間型に接近したと判断して、減速動作として加圧ベースの下降速度を減速させる。また、減速動作として下降速度を遅くして加圧ベースを下降させる際に、可動型用変位センサによる距離の測定値が所定値以下になったとき、あるいは略一定になったときには、可動型と上側の中間型とがワークを挟み込んだと判断して、加圧動作として加圧機構による加圧力を加圧ベースに付与する。
【0015】
この場合には、特に、可動型用変位センサを用いることにより、加圧機構による加圧力を加圧ベースに付与するタイミングを適切に調整することができる。これによっても、多段プレス装置によるワークの加工時間を短縮することができる。
また、昇降機構による加圧ベースの下降速度の制御、及び加圧機構による加圧ベースの加圧の制御を行うことにより、衝撃音の発生を緩和して、ワークの加工時間をより短縮することができる。
【0016】
また、上記中間型用変位センサは、上記スライドベースの下面と上記ベッドの上面とのいずれかであって、これらが対向する対向平面内の複数箇所に設けられており、上記可動型用変位センサは、上記加圧ベースの下面と上記スライドベースの上面とのいずれかであって、これらが対向する対向平面内の複数箇所に設けられており、上記対向平面内における複数箇所の上記中間型用変位センサ間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったとき、又は上記対向平面内における複数箇所の上記可動型用変位センサ間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったときには、上記昇降機構による上記加圧ベースの下降を異常停止させるよう構成されていてもよい。
【0017】
この場合には、対向平面内の複数箇所に設けられた各変位センサによって、加圧ベース又はスライドベースの平衡度が悪化していないか(加圧ベース又はスライドベースがベッド及び固定型に対して傾いていないか)を検出することができる。そして、中間型変位センサ間又は可動型変位センサ間における距離の測定値の違いが、所定値の範囲外になったときには、加圧ベースの下降を異常停止させる。このときには、メンテナンスを行って、加圧ベース又はスライドベースに生じた平衡度の悪化を修復することができる。これにより、下側の中間型と固定型との間、又は可動型と上側の中間型との間に、摩耗、損傷等が発生することを防止することができる。
【0018】
また、上記下側の中間型及び上記上側の中間型が配設されたスライドベースは、上記ベッドと上記加圧ベースとの間に上下に重なるよう複数配置されており、上記中間型用変位センサは、上記スライドベースの数に対応して上記ベッド又は上記スライドベースに設けられており、かつ、上記ワークを挟み込む上記固定型と上記下側の中間型との間の距離、又は上記ワークを挟み込む上記上側の中間型と上記下側の中間型との間の距離を測定するよう構成されており、上記中間型用変位センサを用いた上記減速動作及び上記加速動作は、上記スライドベースの数と同じ回数繰り返すよう構成されていてもよい。
この場合には、加圧ベースの1ストローク動作によって、各型の間に挟み込む3つ以上のワークに対してプレス加工を行うことができる。また、スライドベースの数に応じて中間型用変位センサを設けることにより、種々の段数の金型を有する多段プレス装置において、衝撃音の発生の緩和、及びワークの加工時間の短縮等の効果を得ることができる。
【0019】
また、上記加圧ベースを上記昇降機構によって上昇させる際に、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型との離型が終わったことを示す所定値以上になったとき、及び上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型との離型が終わったことを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を加速させるよう構成されていてもよい。
【0020】
この場合には、加圧ベースの上昇速度を速くしたことにより、多段プレス装置によるワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。また、加圧ベースの上昇速度を遅くしたことにより、可動型が上側の中間型から離型する際に発生する衝撃音、及び下側の中間型が固定型から離型する際に発生する衝撃音を緩和することができる。そして、モーション制御等の複雑な電気的制御を伴わずに、簡単な方法によって、加圧ベースの上昇速度を制御することができる。
【0021】
また、上記加圧ベースを上記昇降機構によって上昇させる際に、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記上側の中間型と上記可動型との離型が終わったことを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を加速させる加速動作と、上記可動型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型との離型が始まることを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を減速させる減速動作とを行い、次いで、上記スライドベースが吊り下げられた上記加圧ベースを上記昇降機構によってさらに上昇させる際に、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記固定型と上記下側の中間型との離型が終わったことを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を加速させる加速動作と、上記中間型用変位センサによる距離の測定値が、上記可動ベースが上死点に到達することを示す所定値以上になったときに、上記加圧ベースの上昇速度を減速させる減速動作とを行うよう構成されていてもよい。
【0022】
この場合には、ワークのプレス加工を行った後に、次のようにして、昇降機構による加圧ベースの上昇速度の制御を行う。まず、上昇速度を遅くして、加圧ベースの上昇を開始させる。次いで、可動型用変位センサによる距離の測定値が所定値以上になったときに、上側の中間型と可動型との離型が終わったと判断して、加速動作として加圧ベースの上昇速度を加速させる。ここで、離型の終わりは、可動型が加工後のワークから離れたときとして判断する。
また、加速動作として上昇速度を速くして加圧ベースを上昇させる際に、可動型用変位センサによる距離の測定値が所定値以上になったときには、固定型と下側の中間型との離型が始まると判断して、減速動作として加圧ベースの上昇速度を減速させる。この固定型と下側の中間型との離型が始まるときは、加圧ベースによるスライドベースの吊り上げが開始されるときである。
【0023】
次いで、加圧ベースをさらに上昇させる際に、中間型用変位センサによる距離の測定値が所定値以上になったときには、固定型と下側の中間型との離型が終わったと判断して、加速動作として加圧ベースの上昇速度を加速させる。ここで、離型の終わりは、下側の中間型が加工後のワークから離れたときとして判断する。
また、加速動作として上昇速度を速くして加圧ベースを上昇させる際に、中間型用変位センサによる距離の測定値が所定値以上になったときには、可動ベースが上死点に到達すると判断して、減速動作として加圧ベースの上昇速度を減速させる。
この場合には、昇降機構による加圧ベースの上昇速度の制御を行うことにより、衝撃音の発生を緩和して、ワークの加工サイクルタイムをより短縮することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、多段プレス装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の多段プレス装置1は、図1図2に示すごとく、工場内の床面又は架台等の設置面上に固定されるベッド2と、ベッド2との間に複数の金型31,32,33A,33B,33C,33Dを挟み込む加圧ベース22と、加圧ベース22を昇降させる昇降機構41と、加圧ベース22に加圧力を付与する加圧機構42とを備えている。
複数の金型は、固定型31、可動型32、第1の下側の中間型33B、第1の上側の中間型33A、第2の下側の中間型33D、第2の上側の中間型33Cによって構成されている。
【0025】
固定型31は、ベッド2の上面に固定されている。可動型32は、固定型31に対する上方に位置し、加圧ベース22の下面に配設されている。第1の下側の中間型33Bは、加圧ベース22が上昇しているときに、加圧ベース22の下方に第1の連結部材26Aによって吊り下げられる第1のスライドベース23Aの下面に配設され、第2の上側の中間型33Cとの間に中段位置のワーク8Bを挟み込むものである。第1の上側の中間型33Aは、第1のスライドベース23Aの上面に配設され、可動型32との間に上段位置のワーク8Aを挟み込むものである。
【0026】
第2の下側の中間型33Dは、加圧ベース22が上昇しているときに、第1のスライドプレートの下方に第2の連結部材26Bによって吊り下げられる第2のスライドベース23Bの下面に配設され、固定型31との間に下段位置のワーク8Cを挟み込むものである。第2の上側の中間型33Cは、第2のスライドベース23Bの上面に配設され、第1の下側の中間型33Bとの間に中段位置のワーク8Bを挟み込むものである。
【0027】
第1のスライドベース23Aには、第1の上側の中間型33Aと可動型32との間の距離を測定する可動型用変位センサ5Aが設けられている。第2のスライドベース23Bには、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの間の距離を測定する第1の中間型用変位センサ5Bが設けられている。ベッド2には、固定型31と第2の下側の中間型33Dとの間の距離を測定する第2の中間型用変位センサ5Cが設けられている。
【0028】
多段プレス装置1においては、図8図9に示すごとく、加圧ベース22を昇降機構41によって下降させる際に、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が、固定型31と第2の下側の中間型33Dとが接近したことを示す所定値c1以下になったときに、減速動作X1として加圧ベース22の下降速度を減速させる。また、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとが接近したことを示す所定値b1以下になったときに、減速動作X2として加圧ベース22の下降速度を減速させる。さらに、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が、第1の上側の中間型33Aと可動型32とが接近したことを示す所定値a1以下になったときに、減速動作X3として加圧ベース22の下降速度を減速させる。
【0029】
以下に、本例の多段プレス装置1につき、図1図10を参照して詳説する。
図1図2に示すごとく、本例の多段プレス装置1は、加圧ベース22を1ストローク下降させる際に、上下方向Hに並んで配置された複数のワーク8A,8B,8Cに対して加工を行うものである。
スライドベース23A,23Bは、ベッド2と加圧ベース22との間に上下に重なるよう複数(2つ)配置されている。本例のスライドベース23A,23Bは、加圧ベース22の下方に第1の連結部材26Aによって吊り下げられた第1のスライドベース23Aと、第1のスライドベース23Aの下方に第2の連結部材26Bによって吊り下げられた第2のスライドベース23Bとである。
【0030】
各ワーク8A,8B,8Cに対してプレス加工を行う型の組は、可動型32と、第1のスライドベース23Aの上面に配設された第1の上側の中間型33Aとの組、第1のスライドベース23Aの下面に配設された第1の下側の中間型33Bと、第2のスライドベース23Bの上面に配設された第2の上側の中間型33Cとの組、及び第2のスライドベース23Bの下面に配設された第2の下側の中間型33Dと、固定型31との組である。
上段位置のワーク8Aは、可動型32と第1の上側の中間型33Aとの間に挟み込まれてプレス加工され、中段位置のワーク8Bは、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとの間に挟み込まれてプレス加工され、下段位置のワーク8Cは、第2の下側の中間型33Dと固定型31との間に挟み込まれてプレス加工される。多段プレス装置1は、加圧機構42による加圧力を受けて各ワーク8A,8B,8Cに対して同時にプレス加工を行うよう構成されている。
【0031】
図1図3に示すごとく、昇降機構41は、ベッド(本体構造下部)2の上面とクラウン(本体構造上部)20の下面との間に配置された昇降シリンダー411を用いて構成されている。クラウン20は、ベッド2の4つの角部から立設された4本の支柱21の上端部に取り付けられている。加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bは、昇降シリンダー411による駆動力を受け、4本の支柱21にガイドされて上下方向Hにスライドするよう構成されている。
可動型32と第1の上側の中間型33Aと間、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとの間、及び第2の下側の中間型33Dと固定型31との間には、それぞれが閉じられるときに互いに離れる方向へ反発力を作用させるスプリング等の反発手段が設けられている。
【0032】
図4に示すごとく、本例の昇降機構41を構成する昇降シリンダー411は、加圧ベース22の下降速度を速くするために、可動型32を含む加圧ベース22の自重W及び各中間型33A,33B,33C,33Dを含む各スライドベース23A,23Bの自重Wを利用して、加圧ベース22を下降させるよう構成されている。より具体的には、昇降シリンダー411における下降側のポートP1には、作動油Oが貯留されたタンク43から作動油Oを直接流入させるためのバイパス配管431が接続されている。そして、加圧ベース22を下降させるときには、タンク43からバイパス配管431を経由して、昇降シリンダー411の下降側のポートP1に作動油Oが流入する。
【0033】
これにより、昇降シリンダー411に充分な作動油Oが流入し、昇降シリンダー411が加圧ベース22の下降速度を制限せず、加圧ベース22が、加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bの自重Wを利用して、速い速度で下降することができる。なお、昇降シリンダー411の下降側のポートP1及び上昇側のポートP2には、ポンプ44によってタンク43から作動油が送られる配管441,442も接続されている。
加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bの自重Wを利用した加圧ベース22の下降は、加速動作(後述するY1〜Y3)として加圧ベース22の下降速度を加速させるときに行うことができる。また、加速動作を行うときに、昇降シリンダー411のストロークのみによる加圧ベース22の下降制御から、自重Wを利用した加圧ベース22の下降制御に切り換えることもできる。
加圧ベース22の上昇速度の加速及び減速の制御は、ポンプ44から昇降シリンダー411へ送り出す作動油Oの流量を調整することによって行うことができる。
【0034】
図1図7に示すごとく、本例の加圧機構42は、加圧シリンダー421と、加圧シリンダー421による加圧力を増大させるための上下一対のリンク422とを用いたトグル機構である。トグル機構は、上下一対のリンク422が上下に折畳まれた状態から上下に延びる状態に変化する際に、テコの原理によって加圧シリンダー421による加圧力を増大させて、加圧ベース22に加圧力を付与するよう構成されている。また、加圧シリンダー421及び上下一対のリンク422は、左右方向Bにおいて互いに向き合う状態で、加圧ベース22の中心部に対する左右方向Bの対称位置に配設されている。なお、図2における矢印Dは、左右方向Bに直交する奥行方向を示す。
【0035】
図1図2に示すごとく、加圧ベース22が上死点H1にある多段プレス装置1の原位置(上昇位置)101において、第1のスライドベース23Aは、左右両側に設けられた第1の連結部材26Aによって加圧ベース22に吊り下げられており、第2のスライドベース23Bは、左右両側に設けられた第2の連結部材26Bによって第1のスライドベース23Aに吊り下げられている。各連結部材26A,26Bは、上下に伸びるバー又はシャフトを用いて形成されている。
【0036】
図7に示すごとく、加圧ベース22が下死点H2にある多段プレス装置1の加工位置(下降位置)102から加圧ベース22が上昇するときには、図6に示すごとく、第1の連結部材26Aが加圧ベース22に係止されて、加圧ベース22に第1のスライドベース23Aが吊り上げられ(持ち上げられ)、また、図5に示すごとく、第2の連結部材26Bが第1のスライドベース23Aに係止されて、加圧ベース22及び第1のスライドベース23Aに第2のスライドベース23Bが吊り上げられる(持ち上げられる)。
【0037】
昇降機構41によって加圧ベース22が下降する際には、第1のスライドベース23A及び第2のスライドベース23Bが各連結部材26A,26Bによって加圧ベース22に吊り下げられた状態で下降する。より具体的には、加圧ベース22が下降する際には、図5に示すごとく、始めに、第2のスライドベース23Bにおける第2の下側の中間型33Dが、下段位置のワーク8Cを挟み込んでベッド2における固定型31に閉じられる。
【0038】
次いで、加圧ベース22がさらに下降する際には、図6に示すごとく、第1のスライドベース23Aにおける第1の下側の中間型33Bが、中段位置のワーク8Bを挟み込んで第2のスライドベース23Bにおける第2の上側の中間型33Cに閉じられる。次いで、加圧ベース22がさらに下降する際には、図7に示すごとく、加圧ベース22における可動型32が、第1のスライドベース23Aにおける第1の上側の中間型33Aに閉じられる。その後、加圧機構42によって加圧ベース22に加圧力が付与される際には、図7に示すごとく、各ワーク8A,8B,8Cがそれぞれの型31,32,33A,33B,33C,33Dに挟み込まれてプレス加工が行われる。
また、加圧ベース22が下降する際には、図6に示すごとく、第2の連結部材26Bの上側部分が第1のスライドベース23Aの上方へ突出し、図7に示すごとく、第1の連結部材26Aの上側部分が加圧ベース22の上方へ突出する。
【0039】
一方、プレス加工後に加圧ベース22が上昇する際には、第1のスライドベース23A及び第2のスライドベース23Bが各連結部材26A,26Bによって加圧ベース22に吊り下げられる状態を形成しながら上昇する。より具体的には、加圧ベース22が上昇する際には、図6に示すごとく、始めに可動型32が第1の上側の中間型33Aから離れ、次いで、図5に示すごとく、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33Cから離れ、最後に、図1に示すごとく、第2の下側の中間型33Dが固定型31から離れる。
【0040】
図2に示すごとく、各中間型用変位センサ5B,5C及び可動型用変位センサ5Aは、非接触で距離を測定するレーザー変位センサである。なお、各変位センサ5A,5B,5Cには、レーザー変位センサ以外にも、非接触で距離を測定することができるセンサを用いることができる。各変位センサ5A,5B,5Cによる距離の測定値は、型31,32,33A,33B、33C,33D同士が近づくときに小さくなり、型31,32,33A,33B、33C,33D同士が離れるときに大きくなる。
【0041】
可動型用変位センサ5Aは、第1のスライドベース23Aの上面に設けられており、加圧ベース22の下面に設けられたドッグ51との間の距離を測定するよう構成されている。第1の中間型用変位センサ5Bは、第2のスライドベース23Bの上面に設けられており、第1のスライドベース23Aの下面に設けられたドッグ51との間の距離を測定するよう構成されている。第2の中間型用変位センサ5Cは、ベッド2の上面に設けられており、第2のスライドベース23Bの下面に設けられたドッグ51との間の距離を測定するよう構成されている。
なお、各変位センサ5A,5B,5Cとドッグ51との位置関係は、それぞれ上下に配置する位置を入れ替えることができる。
【0042】
図2図3に示すごとく、可動型用変位センサ5Aは、第1のスライドベース23Aの上面において、第1のスライドベース23Aの上面と加圧ベース22の下面とが対向する対向平面E1内の複数箇所(本例では4箇所)に設けられている。第1の中間型用変位センサ5Bは、第2のスライドベース23Bの上面において、第2のスライドベース23Bの上面と第1のスライドベース23Aの下面とが対向する対向平面E2内の複数箇所(本例では4箇所)に設けられている。第2の中間型用変位センサ5Cは、ベッド2の上面において、ベッド2の上面と第2のスライドベース23Bの下面とが対向する対向平面E3内の複数箇所(本例では4箇所)に設けられている。
【0043】
図3に示すごとく、本例の各変位センサ5A,5B,5Cは、各対向平面E1,E2,E3の中心位置に対して左右方向W及び奥行方向Dに対称となる位置に設けられている。これにより、加圧ベース22又は各スライドベース23A,23Bの平衡度が悪化していないかを検出することができる。また、各変位センサ5A,5B,5Cは、加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bに対して4本の支柱21が設けられた4つの角部に近い位置に設けられている。
【0044】
昇降機構41及び加圧機構42は、制御装置からの出力信号を受けて動作し、各変位センサ5A,5B,5Cによる測定信号は、制御装置に送られるよう構成されている。制御装置は、各変位センサ5A,5B,5Cからの測定信号を受け取って、昇降機構41及び加圧機構42を動作させるよう構成されている。
制御装置は、同じ対向平面E1,E2,E3内に設けられた各変位センサ5A,5B,5C間における距離の測定値の違いが所定値の範囲内にあるときには、加圧ベース22又は各スライドベース23A,23Bが、4本の支柱21に対して垂直になっており、ベッド2に対する平衡度が正常に維持されていることを検知するよう構成されている。
【0045】
一方、制御装置は、同じ対向平面E1,E2,E3内に設けられた各変位センサ5A,5B,5C間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったときには、加圧ベース22又はスライドベース23A,23Bが、4本の支柱21に対して若干斜めに傾き、ベッド2に対する平衡度が異常であることを検知するよう構成されている。
特に、制御装置は、加圧ベース22が下降する際に、各変位センサ5A,5B,5C間における距離の測定値の違いが所定値の範囲外になったときには、昇降機構41による加圧ベース22の下降を異常停止させるよう構成されている。そして、この異常停止を行ったときには、作業者は、メンテナンスを行って、加圧ベース22又はスライドベース23A,23Bに生じた平衡度の悪化を修復することができる。これにより、互いに閉じられる各型31,32,33A,33B,33C,33Dの間に、摩耗、損傷等が発生することを防止することができる。
【0046】
各変位センサ5A,5B,5Cを多段プレス装置1に取り付けたときには、次のようにして、加圧ベース22を上死点H1から下降させる際の初期設定を行う。具体的には、加圧ベース22を上死点H1から下降させ、第2の下側の中間型33Dが固定型31に接近した位置で加圧ベース22の下降を停止させて、第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c1を決定する。次いで、加圧ベース22をさらに下降させ、第2の下側の中間型33Dと固定型31との間に下段位置のワーク8Cを挟み込んだ位置で加圧ベース22の下降を停止させて、第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c2を決定する。
また、第1の中間型用変位センサ5Bによる所定値b1及び所定値b2、及び可動型用変位センサ5Aによる所定値a1及び所定値a2についても、第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c1及び所定値c2と同様に決定することができる。
【0047】
また、次のようにして、加圧ベース22を下死点H2から上昇させる際の初期設定を行う。具体的には、加圧ベース22を下死点H2から徐々に上昇させ、可動型32が第1の上側の中間型から離型した位置で加圧ベース22の上昇を停止させて、可動型用変位センサ5Aによる所定値a3を決定する。次いで、加圧ベース22をさらに上昇させ、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が始まる手前位置で加圧ベース22の上昇を停止させて、可動型用変位センサ5Aによる所定値a4を決定する。
また、第1の中間型用変位センサ5Bによる所定値b3及び所定値b4、及び第2の中間型用変位センサ5Cによる所定値c3及び所定値c4についても、可動型用変位センサ5Aによる所定値a3及び所定値a4と同様に決定することができる。
【0048】
次に、制御装置によって多段プレス装置1の動作を制御する方法につき、図8のグラフ及び図9図10のフローチャートを参照して説明し、その作用効果につき説明する。
ここで、図8は、横軸に時間をとり、縦軸に加圧ベース22の移動量をとって、多段プレス装置1の加工サイクルにおける、加圧ベース22の移動速度の変化を示す。
【0049】
本例の制御装置は、次のようにして、昇降機構41による加圧ベース22の下降速度の制御、加圧機構42による加圧ベース22の加圧の制御、及び昇降機構41による加圧ベース22の上昇速度の制御を行う。
まず、加圧ベース22が上死点H1にあり、多段プレス装置1が原位置101にある状態において、可動型32と第1の上側の中間型33Aとの間、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとの間、及び第2の下側の中間型33Dと固定型31との間に、それぞれ上段位置のワーク8A、中段位置のワーク8B及び下段位置のワーク8Cを配置する。
【0050】
次いで、制御装置は、昇降機構41を動作させ、1段階目の加速動作Y1として下降速度を速くして加圧ベース22の下降を開始させる(図9のステップS1)。そして、第1、第2のスライドベース23Bが吊り下げられた加圧ベース22が下降する。このとき、加圧ベース22の下降速度を速くするときには、タンク43からバイパス配管431を経由させて昇降シリンダー411の下降側のポートP1に作動油Oを流入させ、加圧ベース22及び各スライドベース23A,23Bの自重を利用して、加圧ベース22を下降させる。
【0051】
次いで、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c1以下になるまで、加圧ベース22を下降させる(S2)。そして、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c1以下になったときには、制御装置は、第2の下側の中間型33Dが固定型31上の下段位置のワーク8Cに接近したと判断して、1段階目の減速動作X1として加圧ベース22の下降速度を減速させる(S3)。
また、1段階目の減速動作X1として加圧ベース22を遅い速度で下降させる際に、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c2以下になったときには(S4)、制御装置は、第2の下側の中間型33Dと固定型31とが下段位置のワーク8Cを挟み込んだと判断して、2段階目の加速動作Y2として加圧ベース22の下降速度を加速させる(S5)。
【0052】
なお、第2の下側の中間型33Dと固定型31とが下段位置のワーク8Cを挟み込んだときには、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が略一定になる(ほとんど変化しなくなる)。そのため、制御装置は、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が略一定になったときに、2段階目の加速動作Y2を開始させることもできる(S5)。
【0053】
次いで、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b1以下になるまで、加圧ベース22を下降させる(S6)。そして、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b1以下になったときには、制御装置は、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33C上の中段位置のワーク8Bに接近したと判断して、2段階目の減速動作X2として加圧ベース22の下降速度を減速させる(S7)。
また、2段階目の減速動作X2として加圧ベース22を遅い速度で下降させる際に、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b2以下になったときには(S8)、制御装置は、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとが中段位置のワーク8Bを挟み込んだと判断して、3段階目の加速動作Y3として加圧ベース22の下降速度を加速させる(S9)。
【0054】
なお、第1の下側の中間型33Bと第2の上側の中間型33Cとが中段位置のワーク8Bを挟み込んだときには、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が略一定になる(ほとんど変化しなくなる)。そのため、制御装置は、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が略一定になったときに、3段階目の加速動作Y3を開始させることもできる(S9)。
【0055】
そして、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a1以下になるまで、加圧ベース22を下降させる(S10)。次いで、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a1以下になったときには、制御装置は、可動型32が第1の上側の中間型33A上の上段位置のワーク8Aに接近したと判断して、3段階目の減速動作X3として加圧ベース22の下降速度を減速させる(S11)。
また、3段階目の減速動作X3として加圧ベース22を遅い速度で下降させる際に、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a2以下になったときには(S12)、制御装置は、可動型32と第1の上側の中間型33Aとが上段位置のワーク8Aを挟み込んだと判断して、加圧動作Zとして加圧機構42による加圧力を加圧ベース22に付与する(S13)。
そして、この状態を一定時間の間保って(一定時間保圧し)、加圧機構42による加圧力によって、各型31,32,33A,33B,33C,33Dの間に挟み込まれた各ワーク8A,8B,8Cにプレス加工を行う。
【0056】
なお、可動型32と第1の上側の中間型33Aとが上段位置のワーク8Aを挟み込んだときには、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が略一定になる(ほとんど変化しなくなる)。そのため、制御装置は、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が略一定になったときに、加圧動作Zを開始させることもできる(S13)。
【0057】
次いで、各ワーク8A,8B,8Cに対するプレス加工が行われた後には、昇降機構41による加圧ベース22の上昇速度の制御を行う。そして、制御装置は、昇降機構41を動作させ、4段階目の減速動作X4として上昇速度を遅くして加圧ベース22の上昇を開始させる(図10のステップS14)。このとき、加圧ベース22が単体で上昇する。
次いで、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a3以上になるまで、加圧ベース22を上昇させる(S15)。そして、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a3以上になったときには、制御装置は、第1の上側の中間型33Aと可動型32との離型が終わったと判断して、4段階目の加速動作Y4として加圧ベース22の上昇速度を加速させる(S16)。ここで、離型の終わりは、可動型32が加工後の上段位置のワーク8Aから離れたときとして判断する。
【0058】
また、4段階目の加速動作Y4として上昇速度を速くして加圧ベース22を上昇させる際に、可動型用変位センサ5Aによる距離の測定値が所定値a4以上になったときには(S17)、制御装置は、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が始まると判断して、5段階目の減速動作X5として加圧ベース22の上昇速度を減速させる(S18)。この第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が始まるときは、加圧ベース22による第1のスライドベース23Aの吊り上げが開始されるときである。
【0059】
次いで、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b3以上になるまで、加圧ベース22を上昇させる(S19)。そして、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b3以上になったときには、制御装置は、第2の上側の中間型33Cと第1の下側の中間型33Bとの離型が終わったと判断して、5段階目の加速動作Y5として加圧ベース22の上昇速度を加速させる(S20)。ここで、離型の終わりは、第1の下側の中間型33Bが加工後の中段位置のワーク8Bから離れたときとして判断する。
【0060】
また、5段階目の加速動作Y5として上昇速度を速くして加圧ベース22を上昇させる際に、第1の中間型用変位センサ5Bによる距離の測定値が所定値b4以上になったときには(S21)、制御装置は、固定型31と第2の下側の中間型33Dとの離型が始まると判断して、6段階目の減速動作X6として加圧ベース22の上昇速度を減速させる(S22)。この固定型31と第2の下側の中間型33Dとの離型が始まるときは、加圧ベース22による第2のスライドベース23Bの吊り上げが開始されるときである。
【0061】
次いで、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c3以上になるまで、加圧ベース22を上昇させる(S23)。そして、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c3以上になったときには、制御装置は、固定型31と第2の下側の中間型33Dとの離型が終わったと判断して、6段階目の加速動作Y6として加圧ベース22の上昇速度を加速させる(S24)。ここで、離型の終わりは、第2の下側の中間型33Dが加工後の下段位置のワーク8Cから離れたときとして判断する。
また、6段階目の加速動作Y6として上昇速度を速くして加圧ベース22を上昇させる際に、第2の中間型用変位センサ5Cによる距離の測定値が所定値c4以上になったときには(S25)、制御装置は、加圧ベース22が上死点H1に到達すると判断して、7段階目の減速動作X7として加圧ベース22の上昇速度を減速させる(S26)。
【0062】
このように、加圧ベース22の下降速度を1段階目〜3段階目の加速動作Y1〜Y3として速くし、また、加圧ベース22の上昇速度を4段階目〜6段階目の加速動作Y4〜Y6として速くしたことにより、多段プレス装置1によるワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。また、加圧ベース22の下降速度を1段階目〜3段階目の減速動作X1〜X3として遅くしたことにより、第2の下側の中間型33Dが固定型31に閉じられる際、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33Cに閉じられる際、可動型32が第1の上側の中間型33Aに閉じられる際にそれぞれ発生する衝撃音を緩和することができる。
【0063】
また、加圧ベース22の上昇速度を4段階目〜7段階目の減速動作X4〜X7として遅くしたことにより、可動型32が第1の上側の中間型33Aから離型される際、第1の下側の中間型33Bが第2の上側の中間型33Cから離型される際、第2の下側の中間型33Dが固定型31から離型される際、加圧ベース22が上死点H1に到達する際にそれぞれ発生する衝撃音を緩和することができる。
また、可動型用変位センサ5Aを用いることにより、加圧機構42による加圧力を加圧ベース22に付与するタイミングを適切に調整することができる。これによっても、多段プレス装置1によるワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。
【0064】
また、本例の多段プレス装置1の制御装置によれば、モーション制御等の複雑な電気的制御を伴わずに、簡単な方法によって、加圧ベース22の下降速度及び上昇速度を制御することができる。そして、衝撃音の発生を緩和して、ワークの加工サイクルタイムを短縮することができる。
また、各変位センサ5A,5B,5Cを用いて加圧ベース22の下降速度及び上昇速度を制御することにより、機械的に接触するスイッチに必要であった初期設定位置の調整をなくすことができる。そして、各変位センサ5A,5B,5Cの初期設定を極めて簡単に行うことができる。
【0065】
それ故、本例の多段プレス装置1によれば、簡単な方法によって、衝撃音の発生の緩和、及びワークの加工サイクルタイムの短縮を図ることができ、かつ、初期設定にかかる時間の短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 多段プレス装置
2 ベッド
22 加圧ベース
23A 第1のスライドベース
23B 第2のスライドベース
26A 第1の連結部材
26B 第2の連結部材
31 固定型
32 可動型
33A 第1の上側の中間型
33B 第1の下側の中間型
33C 第2の上側の中間型
33D 第2の下側の中間型
41 昇降機構
42 加圧機構
5A 可動型用変位センサ
5B 第1の中間型用変位センサ
5C 第2の中間型用変位センサ
8A 上段位置のワーク
8B 中段位置のワーク
8C 下段位置のワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10