特許第6015559号(P6015559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6015559レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法
<>
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000002
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000003
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000004
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000005
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000006
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000007
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000008
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000009
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000010
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000011
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000012
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000013
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000014
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000015
  • 6015559-レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015559
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 35/00 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G03B35/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-110947(P2013-110947)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228836(P2014-228836A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115129
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬司
(72)【発明者】
【氏名】安田 晋
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−083698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0063009(US,A1)
【文献】 特開2001−100150(JP,A)
【文献】 特開2007−310142(JP,A)
【文献】 特開2002−090919(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043015(WO,A1)
【文献】 特開2001−255606(JP,A)
【文献】 特開2003−011350(JP,A)
【文献】 特開2009−116011(JP,A)
【文献】 特開2008−051855(JP,A)
【文献】 特開2010−211082(JP,A)
【文献】 特開2011−002489(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0147367(US,A1)
【文献】 特開2012−155082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視差画像が形成された樹脂基板に対して隔壁を形成する刃と樹脂を吐出するノズルをそれぞれ複数備え、レンズを形成するレンズ形成手段と、
形成された前記視差画像の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記視差画像の位置にしたがって、走査開始位置を調整し、視差画像が形成された前記樹脂基板の表面で、前記レンズ形成手段を走査させ、前記刃によって隔壁を形成し、前記ノズルによって該隔壁間に樹脂を吐出させるように制御する制御手段
を具備することを特徴とするレンズアレイ製造装置。
【請求項2】
前記検出手段によって検出された視差画像の間隔にしたがって、走査方向に対する前記レンズ形成手段の角度を調整する角度調整手段
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイ製造装置。
【請求項3】
前記刃によって形成される隔壁の間隔に基づいて、前記ノズルによって吐出される樹脂量を制御する吐出量制御手段
をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズアレイ製造装置。
【請求項4】
前記レンズ形成手段の少なくとも一つの端部のノズルは、他のノズルとは独立して、樹脂の吐出を行う
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置。
【請求項5】
前記視差画像の位置に対応して、前記検出手段が検出可能な位置検出用の図形を印刷する印刷手段
をさらに具備し、
前記検出手段は、前記印刷手段によって印刷された位置検出用の図形を検出することによって、視差画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置。
【請求項6】
隔壁形成用の刃と樹脂を吐出するノズルを備えた第2のレンズ形成手段
をさらに具備し、
前記制御手段は、生成する溝の数に基づいて、前記レンズ形成手段の走査回数を決定し、該レンズ形成手段の走査回数では、該生成する溝の数に不足する溝の数を、前記第2のレンズ形成手段の走査回数とする
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置。
【請求項7】
前記制御手段は、生成する溝の数に基づいて、前記レンズ形成手段の走査回数を決定し、該レンズ形成手段の走査回数では、該生成する溝の数に対して余分となる溝の数だけ前記刃が既に生成された溝を走査させる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置。
【請求項8】
隔壁形成用の刃と樹脂を吐出するノズルを複数備えたレンズ形成手段と、印刷された視差画像の位置を検出する検出手段と制御手段を具備するレンズアレイ製造装置が行うレンズアレイ製造方法であって、
前記制御手段は、前記検出手段によって検出された視差画像の位置にしたがって、走査開始位置を調整し、視差画像上の樹脂基板の表面で、前記レンズ形成手段を走査させ、前記刃によって隔壁を形成し、前記ノズルによって該隔壁間に樹脂を吐出させるように制御する
ことを特徴とするレンズアレイ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズと視差画像とを精度よく位置合わせすることができ、高精細な立体画像シートが作製できるとともに、立体画像シートの大型化に対応し得る立体画像形成装置及び立体画像形成方法を提供することを課題とし、主走査方向に移動しながら、被記録部材における所定の位置にインクを吐出することにより視差画像を記録する記録ヘッド、記録ヘッド移動手段と、主走査方向に移動しながら、被記録部材における視差画像に対応する位置に樹脂を吐出することにより複数のレンズを形成する樹脂吐出ヘッドと、樹脂吐出ヘッド移動手段と、被記録部材を副走査方向に移動させるシート移動手段とを備えたものとすることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、レンズアレイを使用しないでも、表面にレンズ機能を保持し、且つ、優れた立体品質を有すると共に生産効率もよいステレオ印刷物を提供することを課題とし、紙基材層に所定幅のストライプ状の撥液性樹脂層と、所定幅のストライプ状の右目用原画と左目用原画からなるステレオ画像原画層とを交互に幅方向に多数列積層し、前記ステレオ画像原画層の上に上方に円弧状に突出するストライプ状のレンズ用透明樹脂層を積層した積層体からなり、前記レンズ用透明樹脂層が紙基材層に撥液性樹脂層とステレオ画像原画層を積層した後にその上全面に紫外線硬化性塗布液を塗布し、撥液性樹脂層上の塗布液をはじかせてステレオ画像原画層上の塗布液を盛り上がらせた状態で紫外線を照射し硬化させることにより形成されてなることが開示されている。
【0004】
特許文献3には、媒体上に樹脂を塗布してレンズ部を形成するために樹脂と媒体との濡れ性や硬化時間などの関係でレンズ形状が不均一になることを課題とし、メディアに光硬化型の着色樹脂からなる画像を形成する工程と、メディア上に光硬化型の透明樹脂からなるシート層を硬化形成する工程と、シート層に形成する複数のレンズ部のうちの一部のレンズ部に対応する領域を改質する工程と、改質された領域に光硬化型の透明樹脂からなる一部のレンズ部を形成する工程と、シート層に形成する複数のレンズのうちの残部のレンズに対応する領域を改質する工程と、改質された領域に光硬化型の透明樹脂からなる残部のレンズを形成する工程を順次行うことが開示されている。
【0005】
特許文献4には、レンチキュラーレンズを用いた画像を高い精度で形成することが可能な画像形成システムを提供することを課題とし、画像形成システムは、画像を印刷媒体上に形成するイメージングユニットと、印刷媒体上にレンチキュラーレンズを形成するレンズ形成部と、イメージングユニットの画像形成動作とレンズ形成部のレンズ形成動作とを制御するコントローラとを備え、コントローラは、画像の画像データに基づいて画像形成動作の制御用データを生成するとともに、当該制御用データに基づいて印刷媒体上におけるレンチキュラーレンズの形成位置を制御することが開示されている。
【0006】
特許文献5には、レンチキュラーレンズ又はマイクロレンズアレイを高精度に形成できる立体画像形成方法を提供することを課題とし、画像が形成された記録媒体上に光硬化型の透明樹脂を用いてシート層を形成する第一工程と、シート層に透明樹脂を完全に硬化させるには不十分な光を照射する第二工程と、シート層上に透明樹脂を用いてレンズを形成する第三工程と、レンズを完全に硬化させる光を照射する第四工程と、を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−011350号公報
【特許文献2】特開2008−051855号公報
【特許文献3】特開2010−211082号公報
【特許文献4】特開2009−116011号公報
【特許文献5】特開2011−002489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂基板上に形成された視差画像に対するレンズの位置ずれを低減するようにしたレンズアレイ製造装置及びレンズアレイ製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
請求項1の発明は、視差画像が形成された樹脂基板に対して隔壁を形成する刃と樹脂を吐出するノズルをそれぞれ複数備え、レンズを形成するレンズ形成手段と、形成された前記視差画像の位置を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記視差画像の位置にしたがって、走査開始位置を調整し、視差画像が形成された前記樹脂基板の表面で、前記レンズ形成手段を走査させ、前記刃によって隔壁を形成し、前記ノズルによって該隔壁間に樹脂を吐出させるように制御する制御手段を具備することを特徴とするレンズアレイ製造装置である。
【0010】
請求項2の発明は、前記検出手段によって検出された視差画像の間隔にしたがって、走査方向に対する前記レンズ形成手段の角度を調整する角度調整手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイ製造装置である。
【0011】
請求項3の発明は、前記刃によって形成される隔壁の間隔に基づいて、前記ノズルによって吐出される樹脂量を制御する吐出量制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズアレイ製造装置である。
【0012】
請求項4の発明は、前記レンズ形成手段の少なくとも一つの端部のノズルは、他のノズルとは独立して、樹脂の吐出を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置である。
【0013】
請求項5の発明は、前記視差画像の位置に対応して、前記検出手段が検出可能な位置検出用の図形を印刷する印刷手段をさらに具備し、前記検出手段は、前記印刷手段によって印刷された位置検出用の図形を検出することによって、視差画像の位置を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置である。
【0014】
請求項6の発明は、隔壁形成用の刃と樹脂を吐出するノズルを備えた第2のレンズ形成手段をさらに具備し、前記制御手段は、生成する溝の数に基づいて、前記レンズ形成手段の走査回数を決定し、該レンズ形成手段の走査回数では、該生成する溝の数に不足する溝の数を、前記第2のレンズ形成手段の走査回数とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置である。
【0015】
請求項7の発明は、前記制御手段は、生成する溝の数に基づいて、前記レンズ形成手段の走査回数を決定し、該レンズ形成手段の走査回数では、該生成する溝の数に対して余分となる溝の数だけ前記刃が既に生成された溝を走査させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズアレイ製造装置である。
【0016】
請求項8の発明は、隔壁形成用の刃と樹脂を吐出するノズルを複数備えたレンズ形成手段と、印刷された視差画像の位置を検出する検出手段と制御手段を具備するレンズアレイ製造装置が行うレンズアレイ製造方法であって、前記制御手段は、前記検出手段によって検出された視差画像の位置にしたがって、走査開始位置を調整し、視差画像上の樹脂基板の表面で、前記レンズ形成手段を走査させ、前記刃によって隔壁を形成し、前記ノズルによって該隔壁間に樹脂を吐出させるように制御することを特徴とするレンズアレイ製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1のレンズアレイ製造装置によれば、本構成を有していない場合に比較して、樹脂基板上に形成された視差画像に対するレンズの位置ずれを低減することができる。
【0018】
請求項2のレンズアレイ製造装置によれば、本構成を有していない場合に比較して、視差画像の間隔に合わせて隔壁を形成することができる。
【0019】
請求項3のレンズアレイ製造装置によれば、隔壁の間隔に合わせた樹脂量を吐出することができる。
【0020】
請求項4のレンズアレイ製造装置によれば、レンズアレイの端部において余分に樹脂を吐出することを防止することができる。
【0021】
請求項5のレンズアレイ製造装置によれば、本構成を有していない場合に比較して、正確な位置検出が可能となる。
【0022】
請求項6のレンズアレイ製造装置によれば、レンズアレイのいかなる溝の数にも対応できることになる。
【0023】
請求項7のレンズアレイ製造装置によれば、レンズアレイのいかなる溝の数にも対応できることになる。
【0024】
請求項8のレンズアレイ製造方法によれば、本構成を有していない場合に比較して、樹脂基板上に形成された視差画像に対するレンズの位置ずれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施の形態の構成例についての概念的なモジュール構成図である。
図2】隔壁を形成して、レンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。
図3】曲率制御の例を示す説明図である。
図4】印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。
図5】印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示すフローチャートである。
図6】隔壁等の例を示す説明図である。
図7】マルチヘッドを用いたレンズアレイの形成の例を示す説明図である。
図8】第1の実施の形態のマルチヘッドを用いたレンズアレイの形成の例を示す説明図である。
図9】第1の実施の形態によって、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。
図10】第1の実施の形態によって、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示すフローチャートである。
図11】印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。
図12】第1の実施の形態によって、印刷物にレンズアレイを製造する方法(隔壁間隔の調整)の一例を示す説明図である。
図13】第2の実施の形態の構成例についての概念的なモジュール構成図である。
図14】第2の実施の形態によって、レンズアレイを形成する方法の一例を示す説明図である。
図15】第2の実施の形態によって、レンズアレイを形成する方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明を実現するにあたっての好適な各種の実施の形態の例を説明する。
図1は、第1の実施の形態の構成例についての概念的なモジュール構成図を示している。
なお、本実施の形態におけるモジュールは、ハードウェア構成におけるモジュールだけでなく、コンピュータ・プログラムによって制御されるモジュールを含んでいてもよい。「予め定められた」とは、対象としている処理の前に定まっていることをいい、本実施の形態による処理が始まる前はもちろんのこと、本実施の形態による処理が始まった後であっても、対象としている処理の前であれば、そのときの状況・状態に応じて、又はそれまでの状況・状態に応じて定まることの意を含めて用いる。「予め定められた値」が複数ある場合は、それぞれ異なった値であってもよいし、2以上の値(もちろんのことながら、全ての値も含む)が同じであってもよい。また、「Aである場合、Bをする」という意味を有する記載は、「Aであるか否かを判断し、Aであると判断した場合はBをする」の意味で用いる。ただし、Aであるか否かの判断が不要である場合を除く。
【0027】
本実施の形態であるレンズアレイ製造装置は、レンズアレイを製造する装置であって、図1の例に示すように、レンズアレイ製造装置100は、マルチヘッドモジュール110、位置検出モジュール120、走査制御モジュール130、角度制御モジュール140、吐出量制御モジュール150、位置決定マーク印刷モジュール160、視差画像印刷モジュール170を有している。
レンズアレイとは、正立像を形成する要素レンズ(レンズエレメント)を複数並列的に配列し、像を重ね合せて全体で1個の連続像を形成する光学系であり、レンチキュラーレンズ等を含む。例えば、3次元画像(3Dともいう)を表現すること、視線を換えることによって複数の画像を表示すること(チェンジングともいう)ができる。配列としては、後述する図14(d)の例のように1次元的に配列したもの(例えば、シリンドリカルレンズアレイ等)、図15(a)の例のように2次元的に配列したもの(例えば、正方形レンズアレイ等の2次元レンズアレイ)がある。
本実施の形態は、原稿に視差画像(立体画像ともいう)を含む印刷物を出力する装置において、レンズアレイを形成する技術に関する。特に、原稿の一部に視差画像を含む印刷物をオンデマンド(少量又は注文があった後に製造を開始する場合)で出力する装置において、レンズアレイを視差画像上のみに形成する場合に適している。ここでいう視差画像とは、立体視又はチェンジングの対象となる画像である。シリンドリカルレンズを用いる場合の視差画像では、2つ以上の画像を短冊状に切り、切った画像を交互に順番に並べて1枚の画像としている。2次元レンズアレイを用いる場合の視差画像では、縦方向で変化させる画像群と、横方向で変化させる画像群をそれぞれ切り、切った画像をそれぞれの方向で交互に順番になるよう並べて1枚の画像としている。
そのために、細い刃による切削加工によってオンデマンドに隔壁を形成し、そこに液状高分子樹脂を吐出して、要素レンズ曲率部を形成する技術がある。そして、高速に要素レンズを形成するために、隔壁形成用の刃と液状高分子樹脂を吐出するノズルを複数備えたマルチヘッドを走査する技術が用いられる。
しかし、視差画像が大きくなればなるほどアライメント調整(視差画像を要素レンズとの位置調整)が難しくなる。
本実施の形態は、走査型マルチヘッドを用いた技術において、視差画像上に形成する要素レンズのアライメント調整を行うものである。
なお、「形成」という用語には「印刷」の意を含み、以下、印刷を例として示す。
【0028】
マルチヘッドモジュール110は、視差画像が形成された樹脂基板に対して隔壁を形成する刃と樹脂を吐出するノズルをそれぞれ複数備え、レンズを形成するものである。また、マルチヘッドモジュール110の少なくとも一つの端部のノズルは、他のノズルとは独立して、樹脂の吐出を行うようにしてもよい。
位置検出モジュール120は、印刷された視差画像の位置を検出する。例えば、CCDカメラ等を用いて印刷紙上の視差画像又はアライメントマーク等を撮影し、パターンマッチング等を用いて、本来の位置からの位置ずれを検出する。
走査制御モジュール130は、位置検出モジュール120によって検出された視差画像の位置にしたがって、走査開始位置を調整し、視差画像が印刷された樹脂基板の表面で、マルチヘッドモジュール110を走査させ、その刃によって隔壁を形成し、そのノズルによってその隔壁間に樹脂を吐出させるように制御する。
樹脂としては液状高分子樹脂が適している。液状高分子樹脂の表面張力により各要素レンズを形成する。レンズ形状は凸形状である。ここで、液状高分子樹脂は、UV(UltraViolet)硬化樹脂であってもよいし、熱溶融させた高分子樹脂であってもよい。なお、UV硬化樹脂とは、紫外線の光エネルギーに反応して液体から固体に化学的に変化する合成樹脂である。以下、UV硬化樹脂を主に例示して説明するが、熱溶融させた高分子樹脂の場合は、硬化させるのにUV照射は不要であり、冷却することにより硬化させる。
【0029】
角度制御モジュール140は、位置検出モジュール120によって検出された視差画像の間隔にしたがって、走査方向に対するマルチヘッドモジュール110の角度を調整する
吐出量制御モジュール150は、マルチヘッドモジュール110の刃によって形成される隔壁の間隔に基づいて、マルチヘッドモジュール110のノズルによって吐出される樹脂量を制御する。
位置決定マーク印刷モジュール160は、視差画像の位置に対応して(例えば、近傍に)、位置検出モジュール120が検出可能な位置検出用の図形を印刷する。
視差画像印刷モジュール170は、印刷用紙に視差画像を印刷する。そして、印刷された視差画像の領域にレンズアレイが形成される。視差画像は、レンズアレイを通して、3次元画像又はチェンジング用の複数の画像となるものである。
【0030】
図2は、隔壁を形成して、レンズアレイを製造する方法(隔壁ピン止め方式の原理)の一例を示す説明図である。ここでは、説明を簡単にするために、1つの刃210で隔壁を形成し、1つの樹脂滴下装置240で樹脂を滴下している。
図2(a1)に例示するように、溝220に対して、刃210で切削させる走査を行い(樹脂基板200に溝220の切り込みを入れ)、溝220の両端に隔壁220a、隔壁220bを形成する。図2(a2)の例は、刃210が樹脂基板200に切り込みを入れた場面の断面を示したものである。
次に、図2(b)に例示するように、刃210をピッチ230の距離だけ移動させ、切り込みを入れ(溝222、溝224)、隔壁222a、222b、224a、224b等を形成する。ピッチ230は、隔壁間の距離であり、レンズ幅となる。つまり、ピッチ230を制御することによって、レンズ幅を制御する。
【0031】
図2(c)に例示するように、隔壁間(例えば、隔壁220bと隔壁222aの間)に、樹脂滴下装置240によってUV硬化樹脂(UV硬化樹脂250等)を吐出する。吐出量により曲率制御する。
図3は、曲率制御(屈曲面によるピン止め効果)の例を示す説明図である。図3(a)の例に示すように、板状の平らな表面(樹脂基板200)にある液体(UV硬化樹脂250等)の液体界面の接触角をθとする。図3(b)の例に示すように、板状の角(平面となす角の角度α)に液体がある場合は、ピッチ制御によって「接触角>θ+α」を満たすまで移動できない。したがって、樹脂基板200の隔壁頂点部の役割として、接触角はθからθ+αまでの任意の角度をとれることとなり、液滴の量により曲率制御を行うことができる。(例えば、「J.F.Oliver et al, J.Colloids and interface Sci,59,568(1977)」を参照。)
次に、図2(d)の例に示すように、UV光源290のUV光照射により、UV硬化樹脂250等を硬化させ、レンズアレイが完成する。
【0032】
図4は、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。つまり、平面画像(2D画像)と視差画像が混在した印刷紙400上で、その視差画像の領域にレンズアレイを形成するものである。図4(a)の例に示す樹脂滴下装置410は、樹脂滴下装置410を下から見た場合の形状である。UV硬化樹脂を塗布するための複数のノズルが並んでいる。図4(b)の例に示す刃430は、刃430を下から見た場合の形状である。溝によって隔壁を形成するための複数の刃が並んでいる。図4(c)の例に示す樹脂滴下装置440は、樹脂滴下装置440を下から見た場合の形状である。UV硬化樹脂を吐出するための複数のノズルが並んでいる。
【0033】
図4に例示の装置を用いて、製造方法例を説明する。図5は、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS502では、印刷紙400をセットする。ここでは、印刷紙400は、紙送り方向402(図では左から右)に移動する。
ステップS504では、樹脂滴下装置410によって、印刷紙400の必要領域にUV硬化樹脂を塗布する。これによって、印刷紙400上に樹脂基板460(pedestal)を形成する。なお、視差画像の領域にのみUV硬化樹脂を塗布する。その他の領域(平面画像)には、UV硬化樹脂は塗布しないように制御する。例えば、予め視差画像の領域(また視差画像以外の領域)の座標情報が与えられており、その座標情報にしたがって樹脂滴下装置410によってUV硬化樹脂の塗布(滴下する/しない)を制御すればよい。
ステップS506では、UV光源420が、UV光を照射してUV硬化樹脂を硬化する。
ステップS508では、刃430が、樹脂基板460に隔壁462を形成する。前述したように、樹脂基板460に溝を作ることによって、隔壁を形成する。
ステップS510では、樹脂滴下装置440が、隔壁間の領域にUV硬化樹脂を吐出する。
ステップS512では、UV光源450が、UV光を照射してUV硬化樹脂(レンズ材)を硬化する。
【0034】
図6は、図4、5の例のように製造されたレンズアレイの隔壁等の例を示す説明図である。図6(a)の例は印刷紙とレンズアレイの断面図を示しており、図6(b)の例は領域650の拡大図を示しており、図6(c)の例は印刷紙400の視差画像領域620上にレンズアレイが形成されており、平面画像領域610上にはレンズアレイは形成されていないことを示している。例えば、印刷紙400の厚さは約100μm、樹脂基板460の厚さは約300μm、シリンダーレンズ464の厚さは約50μm、シリンダーレンズ464の幅(隔壁間の幅)は約250μm程度である。
【0035】
図7は、マルチヘッドを用いたレンズアレイの形成の例を示す説明図である。ただし、位置検出モジュール120がないものとする。つまり、マルチヘッド710は、単に隔壁形成用の刃(刃712a、712b、712c)と樹脂を吐出するノズル(ノズル722a、722b、722c)を複数(ここでは3つずつの同数)備えたものである。より具体的には、隔壁形成用の刃の間にノズルを設けている。ただし、端(図7では右端であるが、マルチヘッド710の副走査方向が左から右の場合は左端)に、ノズルが設けられている。これによって、図7(a)〜(c)の例に示すように、複数本の溝(隔壁)を形成するとともに、UV硬化樹脂を滴下させる。もちろんのことながら、マルチヘッド710を移動させてもよいし、印刷紙400を搬送してもよい。
ここで、視差画像790とレンズの位置は、一致している必要がある。しかし、視差画像の印刷倍率に誤差が生じることがある。図7に例示のマルチヘッド710では、その誤差に対応できないため、視差画像が大きくなる(図7(c)の例に示すように、複数回のマルチヘッド710の移動がある)と、視差画像の端部でのレンズと視差画像の位置誤差が大きくなり、クロストークが生じやすい。
【0036】
図8は、第1の実施の形態のマルチヘッドを用いたレンズアレイの形成の例を示す説明図である。この例は、図7の例に示したマルチヘッド710に視差画像位置検出機構850(位置検出モジュール120)を付加し、その検出によって走査制御モジュール130が制御するものである。具体的には、視差画像位置検出機構850により視差画像の位置を検出し、その視差画像の位置にしたがってマルチヘッド810の移動量(走査開始位置)を調整して(視差画像上のどの位置に刃で切り込むかを特定する)、アライメントを補正する。調整が不要ならば、マルチヘッド810の有効幅ずつ開始位置を移動すればよい。これによって、視差画像と要素レンズとの位置誤差が減少し、クロストークが減少し、立体画像等の画質が向上する。なお、マルチヘッド810のノズル822aは、他のノズル(ノズル822b、ノズル822c)に対して独立制御可能である。ここで独立制御とは、樹脂を滴下する/しないを制御することが含まれる。最初の走査(つまり、図8(a)の状態)では、ノズル822aによる樹脂の滴下は行われないように制御することが含まれる。最初の走査では、片方の隔壁のみがあり、樹脂を滴下するには適さないからである。
さらに、独立制御可能として、吐出量制御モジュール150は、調整した移動量による隔壁幅の変化に対応して樹脂吐出量を制御して、曲率を一定に保つようにしてもよい。つまり、マルチヘッド810の移動量(走査開始位置)を調整するので、ノズル822aが滴下する樹脂によって形成される要素レンズの大きさが異なることになる。刃812aと刃812b、刃812bと刃812cによって形成される隔壁間の距離は、調整が行われたとしても変更はないが、マルチヘッド810の移動(副走査方向への移動、図8(a)の例に示す第1回目の走査から図8(b)の例に示す第2回目の走査への移動)の間に生じる隔壁間の距離は、他の隔壁間の距離とは異なることになるからである。例えば、隔壁間の距離が、他の隔壁間の距離よりも長くなる場合は、吐出する樹脂の量を多くし、他の隔壁間の距離よりも短くなる場合は、吐出する樹脂の量を少なくして、各要素レンズの曲率を一定に保つような量とする。図8(b)の例に示す補正個所880では、他の間隔よりも狭くしており、樹脂の吐出量も少なくしている。また、図8(c)の例に示すようにマルチヘッド810の移動が複数回あったとしても、図7(c)の例と比べて、要素レンズと視差画像のアライメント誤差は大きくならない。
【0037】
視差画像位置検出機構850は、例えば、視差画像を検出し、予め定められた画像情報(本来の視差画像情報)とのパターンマッチングによって、誤差を検出するようにしてもよい。また、位置決定マーク印刷モジュール160が印刷したアライメントマーク(トンボ、位置検出用の図形)を検出してもよい。そのトンボの位置に合わせるように、マルチヘッド810を移動させればよい。また、位置決定マーク印刷モジュール160は、人間の視覚では知覚しにくい印刷材料(例えば、可視領域においてはほぼ透明であり、赤外線で検知可能なトナー等)を用いてそのアライメントマークを印刷してもよい。例えば、視差画像の近傍にマルチヘッド810の有効幅に対応した複数のアライメントマークを視差画像と同時に印刷するようにしてもよい。
【0038】
図9は、第1の実施の形態によって、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。図4の例に示した製造方法とは、マルチヘッド810を用いたことが異なっている。
図10は、第1の実施の形態によって、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS1002では、印刷紙400をセットする。ここでは、印刷紙400は、紙送り方向402(図では左から右)に移動する。
ステップS1004では、樹脂滴下装置410によって、印刷紙400の必要領域にUV硬化樹脂を塗布する。これによって、印刷紙400上に樹脂基板460(pedestal)を形成する。なお、視差画像の領域にのみUV硬化樹脂を塗布する。その他の領域(平面画像)には、UV硬化樹脂は塗布しないように制御する。例えば、予め視差画像の領域(また視差画像以外の領域)の座標情報が与えられており、その座標情報にしたがって樹脂滴下装置410によってUV硬化樹脂の塗布(滴下する/しない)を制御すればよい。
ステップS1006では、UV光源420が、UV光を照射してUV硬化樹脂を硬化する。
ステップS1008では、視差画像位置検出機構850が、アライメントマークを検出する。
ステップS1010では、走査制御モジュール130が、本来の位置であるか否かを判断し、本来の位置である場合はステップS1014へ進み、それ以外の場合はステップS1012へ進む。
ステップS1012では、走査制御モジュール130が、マルチヘッド810の走査開始位置を調整する。
ステップS1014では、マルチヘッド810内の刃930が樹脂基板460に隔壁を形成しつつ、樹脂滴下装置940が隔壁間の領域にUV硬化樹脂を吐出する。
ステップS1016では、UV光源450が、UV光を照射してUV硬化樹脂(レンズ材)を硬化する。
【0039】
角度制御モジュール140の処理内容について、図11、12を用いて説明する。
図11は、印刷物にレンズアレイを製造する方法の一例を示す説明図である。
図11(a)の例は、マルチヘッド710を下から見た場合の形状を示している。つまり、複数の刃(刃712a、712b、712c)と、その間に複数のノズル(ノズル722a、722b、722c)を配置している。図11(b)の例に示すように、マルチヘッド710で一度に形成される複数本のレンズピッチが、視差画像790のピッチと異なっている場合にクロストークが生じる。
【0040】
図12は、第1の実施の形態によって、印刷物にレンズアレイを製造する方法(隔壁間隔の調整)の一例を示す説明図である。
図12(a)の例は、マルチヘッド810を下から見た場合の形状を示している。つまり、複数の刃(刃812a、812b、812c)と、その間に複数のノズル(ノズル822a、822b、822c)を配置しており、視差画像位置検出機構850をアライメントマークが検出できる位置に配置している。そして、角度制御モジュール140がマルチヘッド810を傾けた状態を示している。マルチヘッド810の角度の調整は、隔壁間の幅(要素レンズの幅)を視差画像の間隔に合わせるためのものである。
図12(b)の例に示すように、位置検出モジュール120により誤差を検出した場合、つまりマルチヘッド810で一度に形成される複数本のレンズピッチが視差画像のピッチと微妙に異なっている場合に、マルチヘッド810自体を斜めにして刃のピッチを調整する。またこれに伴って、吐出量制御モジュール150は樹脂吐出量を変化させて曲率を一定に保つ。もちろんのことながら、さらに走査制御モジュール130が、走査開始位置を調整した場合は、吐出量制御モジュール150は、傾き角度による隔壁間の距離及び走査開始位置に基づいてノズル822aの樹脂の吐出量を計算し、他のノズルとは独立して調整する。
【0041】
図13は、第2の実施の形態の構成例についての概念的なモジュール構成図を示している。第2の実施の形態は、第1の実施の形態にシングルヘッドモジュール1310を付加したものである。なお、第1の実施の形態と同種の部位には同一符号を付し重複した説明を省略する。
第2の実施の形態のレンズアレイ製造装置100は、マルチヘッドモジュール110、位置検出モジュール120、走査制御モジュール130、角度制御モジュール140、吐出量制御モジュール150、位置決定マーク印刷モジュール160、視差画像印刷モジュール170、シングルヘッドモジュール1310を有している。
シングルヘッドモジュール1310は、隔壁形成用の刃と樹脂を吐出するノズルを1組備えている。
走査制御モジュール130は、生成する溝の数(A)に基づいて、マルチヘッドモジュール110の走査回数を決定し、マルチヘッドモジュール110のその走査回数では、その生成する溝の数(A)に不足する溝の数を、シングルヘッドモジュール1310の走査回数とする。マルチヘッドモジュール110の走査回数は、その走査回数によって生成される溝の数(B)が、必要とする溝の数(A)よりも少なくなるように、その走査回数を決定する。不足する溝の数は、(A)−(B)となる。なお、(B)は、(走査回数)×(マルチヘッドモジュール110の刃の数)である。
【0042】
また、第2の実施の形態は、シングルヘッドモジュール1310を有していなくてもよい。つまり、マルチヘッドモジュール110だけで、あらゆる溝の数に対処する。走査制御モジュール130は、生成する溝の数(A)に基づいて、マルチヘッドモジュール110の走査回数を決定し、マルチヘッドモジュール110の走査回数では、その生成する溝の数(A)に対して余分となる溝の数だけ刃が既に生成された溝を走査させるようにすればよい。ここでのマルチヘッドモジュール110の走査回数は、その走査回数によって生成される溝の数(C)が、必要とする溝の数(A)よりも多くなるように、その走査回数を決定する。つまり、余分となる溝の数は、(C)−(A)となる。この余分となる溝の数((走査回数)×(マルチヘッドモジュール110の刃の数)−(A))だけ、刃が既に生成された溝を走査させる。もちろんのことながら、(A)−(走査回数−1)×(マルチヘッドモジュール110の刃の数)の値は、既に生成された溝を刃が走査したときに、他の刃で新たに生成される溝の数である。なお、既に生成された溝を刃が走査するのは、最終の走査だけでなく、2回目以降の走査であればよい。
【0043】
レンズアレイの製造方法としての隔壁ピン止め方式は、樹脂基板を鋭利な刃で引っ掻くことで隔壁を形成し、その隔壁のピン止め効果により流動性樹脂である液状高分子樹脂の流動を抑制する。したがって、必要とするレンズピッチで隔壁を形成し、その隔壁間に液状高分子樹脂を吐出することで、レンズを形成する。レンズの曲率(焦点距離)は吐出する液状高分子樹脂の体積で制御する。このレンズアレイ製造方法では、樹脂基板を引っ掻く刃及び液状高分子樹脂を吐出するノズルが1つのときに、レンズサイズを柔軟に変更できるという利点を有する。
しかしながら、刃やノズルが1つだけだと、製造時間が長くなるため、製造時間を短縮する手段として、マルチヘッドモジュールを使用した。
しかし、マルチヘッドモジュールを用いた方法では、レンズサイズ(要素レンズの数)を変更する自由度が減ってしまう。すなわち、レンズサイズは「ノズル数×ピッチ」の整数倍に限定されてしまう。
第2の実施の形態では、マルチヘッドとシングルヘッドの両方を用いる。又は、マルチヘッドだけを用いる。
【0044】
シリンドリカルレンズアレイの例について説明する。
(A)隔壁(溝)を形成する。
(A1)製造するシリンドリカルレンズアレイのピッチをp、レンズ総数をnとすると、レンズ全幅はnpとなる。
(A2)n本のシリンドリカルレンズを作製するために必要は溝の本数は(n+1)本である。
(A3)また、マルチブレード(ピッチ=p)のブレード総数をbとする。
(A4)このとき、溝総数との比(n+1)/b以下の最大整数をNとすると、マルチヘッドモジュール110ではN回の走査を実施し、残りの{(n+1)−Nb}本の溝は、シングルヘッドモジュール1310で形成する。
(B)シリンドリカルレンズアレイ形成
(B1)上記と同様に、製造するシリンドリカルレンズアレイのピッチをp、レンズ総数をnとすると、レンズ全幅はnpとなる。
(B2)また、マルチノズル(ピッチ=p)のノズル総数をmとする。
(B3)このとき、レンズ総数との比(n/m)以下の最大整数をNとすると、マルチヘッドモジュール110ではN回の走査を実施し、残りの(n−Nm)本のシリンドリカルレンズは、シングルヘッドモジュール1310で形成する。
なお、マルチヘッドモジュール110又はシングルヘッドモジュール1310は、刃(ブレード)とノズルとの一体型であってもよいし、分離型であってもよい。
また、この説明では、「隔壁の数」とせずに「溝の数」(刃で引っ掻く数)と記載する。隔壁は溝の両側にできるため、隔壁の数は溝の数の2倍となる。したがって、溝の数とは、隔壁ペア数と同義である。
【0045】
図14は、第2の実施の形態によって、レンズアレイ(シリンドリカルレンズ)を形成する方法の一例を示す説明図である。
16本のシリンドリカルレンズを5アレイ(刃、ノズル)のマルチヘッド(刃)1410(5ブレードアレイ)、マルチヘッド(ノズル)1430(5ノズルアレイ)と、シングルヘッド(刃)1420(シングルブレード)、シングルヘッド(ノズル)1440(シングルノズル)で製造する例を示している。
(1)図14(a1)、(b)の例に示すように、マルチヘッド(刃)1410を3回、シングルヘッド(刃)1420を2回、樹脂基板460上で走査する。これによって、計17本の隔壁を形成する。なお、図14(a1)の例は、1つの刃によって形成される1つの溝、隔壁を示したものである。バッチ1491、1492、1492のそれぞれは、マルチヘッド(刃)1410の1回の走査でできる
(2)その後、図14(c)、(d)の例に示すように、マルチヘッド(ノズル)1430を3回、シングルヘッド(ノズル)1440を1回走査する。これによって、計16本のシリンドリカルレンズを形成する。
5つの刃と5つのノズルの組を有するマルチヘッド、1つの刃と1つのノズルの組を有するシングルヘッドを用いた場合は、(1)の処理を行いつつ、(2)の処理を行う。
【0046】
また、(2)において、マルチヘッドモジュール110で同じ場所(2ライン分の溝)に、再度切り込みを入れればシングルヘッドは不要である。つまり、マルチヘッド(刃)1410で新しく3つの溝を生成する。ただし、刃とノズルが一体となっているマルチヘッドモジュールの場合は、同じ場所に該当するノズルでは、樹脂を吐出させないように制御する。
【0047】
正方形レンズアレイの例について説明する。
(A)隔壁(溝)を形成する。
(A1)製造する正方形レンズアレイのピッチをp(行)、q(列)とし、行数及び列数をそれぞれn、nとすると、レンズ総数n=(n×n)となる。
(A2)また、レンズサイズは(np×nq)となる。
シリンドリカルレンズでの説明と同様に考えて、行及び列方向に形成する溝の本数はそれぞれ(n+1)本、(n+1)本である。
(A3)また、マルチブレード(ピッチ=p(行)あるいはq(列))のブレード総数をbとする。簡単のため、行及び列方向のブレード総数を同じbとする。
このとき、行方向の溝総数との比(n+1)/b以下の最大整数をNbpとすると、マルチブレードではNbp回の走査を実施し、残りの{(n+1)−Nbpb}本の溝は、シングルブレードで形成する。
(A4)同様に、列方向の溝総数との比(n+1)/b以下の最大整数をNbqとすると、マルチブレードではNbq回の走査を実施し、残りの{(n+1)−Nbqb}本の溝は、シングルブレードで形成する。
(B)正方形レンズアレイ形成
(B1)上記と同様に、作製する正方形レンズアレイのピッチをp(行)、q(列)とし、行数及び列数をそれぞれn、nとすると、レンズ総数n=(n×n)となる。
(B2)また、レンズサイズは(np×nq)となる。
(B3)また、マルチノズル(ピッチ=p(行)又はq(列))のノズル総数を(m(行)×m(列))とする。
(B4)このとき、行方向におけるレンズ総数とノズル数との比(n/m)以下の最大整数をNnpとし、列方向におけるレンズ総数とノズル数との比(n/m)以下の最大整数をNnqとすると、(Nnp×Nnq)個のブロックにマルチノズルを移動させ、レンズを形成する。
(B5)このときに製造されるレンズの数は、(mnp×mnq)である。
(B6)残りのレンズ数{n−(mnp×mnq)}={(n×n)−(mnp×mnq)}は、シングルヘッドで形成する。
【0048】
図15は、第2の実施の形態によって、レンズアレイ(正方形レンズアレイ)を形成する方法の一例を示す説明図である。
16×16個の正方形レンズアレイを5×5アレイのマルチヘッドモジュール110及びシングルヘッドモジュール1310で製造する例である。5アレイ(刃、ノズル)の5ブレードアレイ、5ノズルアレイ(5×5ノズルアレイ1510)と、シングルブレード、シングルノズル(シングルノズル1520)で製造する例を示している。
(1)縦方向及び横方向に17本の溝を形成する。なお、形成方法は図14の例に示したシリンドリカルレンズの場合と同様に縦及び横方向に5ブレードアレイ(マルチヘッドモジュール110)、シングルブレード(シングルヘッドモジュール1310)を走査させて形成する。これによって、図15(a)の例に示すように、16×16個の正方形開口アレイ(正方形開口アレイ1500内の斜線部分)が形成される。
(2)5×5ノズルアレイ(マルチヘッドモジュール110、図15(b)に例示する5×5ノズルアレイ1510)によって、9ブロック(正方形開口アレイ1500内の斜線部分)にレンズを形成する。
(3)シングルノズル(シングルヘッドモジュール1310、図15(c)に例示するシングルノズル1520)によって、残りの31個の開口にレンズを形成する。
【0049】
5つの刃と5つのノズルの組を有するマルチヘッドモジュール、1つの刃と1つのノズルの組を有するシングルヘッドモジュールを用いた場合は、(1)の処理を行いつつ、(2)の処理を行う。ただし、ここで1つの刃(マルチヘッドモジュール内のそれぞれの刃、シングルヘッドモジュール内の刃)とは、図14等で示したような直線の溝を形成するための刃ではなく、正方形の刃である。ヘッドモジュールを樹脂基板に押しつけることによって、正方形開口を構成する溝(隔壁)を形成できる。
【0050】
また、(2)において、マルチヘッドモジュール110で同じ場所(5×4又は4×4の開口の溝)に、再度切り込みを入れればシングルヘッドは不要である。つまり、マルチヘッドモジュールで新しく(4×1)の開口の溝を生成する。ただし、刃とノズルが一体となっているマルチヘッドモジュールの場合は、同じ場所に該当するノズルでは、樹脂を吐出させないように制御する。
また、5×5ノズルアレイ1510の代わりに、図15(d)に例示する5×1ノズルアレイ1530を用いるようにしてもよい。この場合は、5×1ノズルアレイ1530を5ライン分走査させればよい。
なお、正方形のレンズの例を述べたが、長方形等の四角形、正六角形などの正多角形、円、楕円等であってもよい。
【0051】
上述した実施の形態は、本発明の実施の形態の一部である。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0052】
100…レンズアレイ製造装置
110…マルチヘッドモジュール
120…位置検出モジュール
130…走査制御モジュール
140…角度制御モジュール
150…吐出量制御モジュール
160…位置決定マーク印刷モジュール
170…視差画像印刷モジュール
1310…シングルヘッドモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15