(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015560
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】スライドシート用のワイヤハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20161013BHJP
H02G 11/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
B60R16/02 620A
H02G11/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-112261(P2013-112261)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-231269(P2014-231269A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】岡野 洋輔
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−244609(JP,A)
【文献】
実開昭60−073316(JP,U)
【文献】
特開2010−149807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在する弾性及び可撓性を有する帯状カーペットの下面と弾性及び可撓性を有するシート状保持材の上面との間にスライドシート用の電線を固定した弾性及び可撓性を有する帯状電線保持材を前後一対設け、
一方の前帯状電線保持材と他方の後帯状電線保持材を1つの滑車部品に形成した前後一対の円弧状貫通路に挿通して折り返し、前記前帯状電線保持材の長さ方向の一端をスライドシートの前方に固定すると共に、後帯状電線保持材の長さ方向の一端をスライドシートの後方に固定する一方、前記前帯状電線保持材の長さ方向の他端を車室の床材の前方に固定すると共に後帯状電線保持材の長さ方向の他端を前記床材の後方に固定し、該床材上に前記前帯状電線保持材と後帯状電線保持材を前記滑車部品を介して前後に連続させて配置し、
前記前帯状電線保持材と後帯状電線保持材のいずれか一方がスライドシートの移動に応じてスライドシート側に車室の床材から捲れるように引き出されると、いずれか他方がスライドシート側から前記床材に沿う位置に引き戻される構成としているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項2】
前記前後帯状電線保持材を配置する部分の前記車室の床材は、該前後帯状電線保持材の厚さ寸法だけ周囲のカーペット材より窪ませ、該窪ませた部分に前記前後帯状電線保持材を充填して配置し、前記周囲のカーペット材の表面と連続した平面を形成している請求項1に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項3】
前記前後帯状電線保持材の帯状カーペットの下面に固定する電線は、丸電線をフラットに並設してフラット状としたフラットハーネス、あるいは芯線をフラットにしたフラットハーネスからなる請求項1または請求項2に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【請求項4】
前記前後帯状電線保持材を貫通させる1つの前記滑車部品は、前後一対の円弧状貫通路を設けた本体に、上下一対の滑車を回転自在に軸着し、該滑車に前記円弧状貫通路を挿通する前記前後帯状電線保持材が上下位置で当接し、該前後帯状電線保持材の移動に応じて前記滑車を回転させる構成としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドシート用のワイヤハーネス配索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートには電動リクライニング装置やシートヒータなど種々の電装品が装備されており、これらの電装品に給電するために、車体フロアからシートに給電用のワイヤハーネスが配索されている。スライドシートの場合には、ワイヤハーネスをシートのスライド動作に追従させる必要があり、そのためワイヤハーネスに余長部を持たせて配索している。
【0003】
この種の車体フロアとロングスライドシートとの間に配索するハーネス配索装置として、例えば、特開2010−193599号公報(特許文献1)に
図11(A)(B)および
図12(A)(B)に示す装置が提供されている。該装置では、スライドシート100用のシートレール101の側方に隣接して平行にワイヤハーネス用レール102がフロアに敷設されていると共に、該ワイヤハーネス用レール102の側方に隣接して平行に電線余長収容ケース110が設置されている。即ち、スライドシート100の移動領域であるシートレール101の側方に別体のワイヤハーネス用レール102と電線余長収容ケース110とが平行配置されている。スライドシート100に配線されるワイヤハーネスW/Hは、フロアハーネスから分岐し、コルゲートチューブで外装された状態で電線余長収容ケース110内に挿通され、該電線余長収容ケース110からワイヤハーネス用レール102へ挿通され、該ワイヤハーネス用レール102内で、スライドシート100と連動するスライダ105内を通されてスライドシート100に配線されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、シートレール101と隣接した側方にワイヤハーネス用レール102と電線余長収容ケース110とを並列配置するスペースが必要となり、既存の設置機器と干渉する恐れがある。また、これらのワイヤハーネス用レール102および電線余長収容ケース110は車室床下に配置されるが、シートレール101の側方は荷物がフロア上に置かれやすく、かつ、乗員に足踏みされやすい。よって、強度アップをする必要があり、製造コストがかかる問題がある。
【0006】
特に、略長円形状の浅底の樹脂ケース内に電線を挿通する電線余長収容ケース110を車室床材のカーペット下方に水平配置すると、フロア置き荷物や足踏みによる負荷で破損が生じる恐れがある。そのため、該電線余長収容ケース110にリブを設けて剛性を高める必要があるが、電線余長収容ケース内部に突出するリブにより余長吸収量が低下し、その分、電線余長収容ケースが大型化する。電線余長収容ケースが大型化すると、シートレールの側方に配管されるエアダクト等の既存設置物と干渉しやすくなる。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、前記電線余長収容ケースおよびワイヤハーネス用レール等の大型部品を不要とし、周辺の既存設置機器と干渉せず、かつ、外観上も見栄えのよいスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、
前後方向に延在する
弾性及び可撓性を有する帯状カーペットの下面
と弾性及び可撓性を有するシート状保持材の上面との間にスライドシート用の電線を固定した
弾性及び可撓性を有する帯状電線保持材を前後一対設け、
一方の前帯状電線保持材と他方の後帯状電線保持材を1つの滑車部品に形成した前後一対の円弧状貫通路に挿通して折り返し、前記前帯状電線保持材の長さ方向の一端をスライドシートの前方に固定すると共に、後帯状電線保持材の長さ方向の一端をスライドシートの後方に固定する一方、前記前帯状電線保持材の長さ方向の他端を車室の床材の前方に固定すると共に後帯状電線保持材の長さ方向の他端を前記床材の後方に固定し、該床材上に前記前帯状電線保持材と後帯状電線保持材を前記滑車部品を介して前後に連続させて配置し、
前記前帯状電線保持材と後帯状電線保持材のいずれか一方がスライドシートの移動に応じてスライドシート側に
車室の床材から捲れるように引き出されると、いずれか他方がスライドシート側から
前記床材に沿う位置に引き戻される構成としているスライドシート用のワイヤハーネス配索装置を提供している。
【0009】
前記本発明のワイヤハーネス配索装置では、帯状カーペットの下面
とシート状保持材の上面の間に電線を固定し、スライドシートと連動する前記前帯状電線保持材と後帯状電線保持材(以下、まとめて前後帯状電線保持材と略称する)は、スライドシートのシート下部で左右両側のシートレールの間に配置することが好ましいが、一方のシートレールの外側面に沿って配置してもよい。
【0010】
前後帯状電線保持材を配置する部分の車室の床材は、該前後帯状電線保持材の厚さ寸法だけ周囲のカーペット材より窪ませ、該窪ませた部分に該前後帯状電線保持材を充填して配置し、周囲のカーペット材の表面と連続した平面を形成している。
即ち、前後帯状電線保持材を配置する部分には、車室床材として敷設されているカーペット積層材の最上面のカーペットを配置せずに、該カーペットの厚さ分だけ窪ませ、この窪ませた部分に前後帯状電線保持材を充填して配置し、周囲のカーペットの表面と段差を無くし、連続した平面としている。
【0011】
前後帯状電線保持材の帯状カーペットの下面に固定する電線は、丸電線をフラットに並設し
てフラット状のフラットハーネスでもよいし、芯線をフラットにしたフラットハーネスとしてもよく、カーペットの下面にフラットに配線していればよい。このフラットに配線する電線の下面には上面の帯状カーペットと同様の可撓性を有するシート状保持材を配置し、上面のカーペットと下面のシート状保持材の間でフラット状に配線したハーネスを挟持して一体化することが好ましい。このように、スライドシートに配線する電線を並列に配線するため、電線本数が増加すると帯状電線保持材の幅は広くなる。
【0012】
前後帯状電線保持材で保持した電線は、スライドシート固定部から引き出されてスライドシート内部に配線しているワイヤハーネス(シートハーネス)電線とコネクタ接続している一方、床材固定部から引き出す電線はフロアハーネスにコネクタ接続している。
【0014】
前後帯状電線保持材を貫通させる1つの滑車部品は、前後一対の円弧状貫通路を設けた本体に、上下一対の滑車を回転自在に軸着している。この上下一対の該滑車に円弧状貫通路を挿通する前記前後帯状電線保持材が上下位置で当接し、該前後帯状電線保持材の移動に応じて前記滑車が回転する構成としている。
前記円弧状貫通路の曲率(R)は前後帯状電線保持材を湾曲させて移動できる最小の曲率とし、スライドシートの移動に追従して横向きU字状、J字状に変形する前後帯状電線保持材の高さの増大を抑制している。
【発明の効果】
【0015】
前記のように、本発明のスライドシート用のワイヤハーネス配索装置は、前後一対の可撓性を有する前後帯状電線保持材と、これら前後帯状電線保持材を貫通する1つの滑車部品との3点からなり、前後帯状電線保持材の各長さ方向の両端をスライドシートと車室の床材に固定すればよいだけである。よって、特許文献1で提示された従来装置で必要となる電線余長収容ケースおよびワイヤハーネス用レール等の大型の樹脂部品を不要とでき、自動車への設置作業が簡単となる。かつ、車室床材上に設置するだけであるため、床材下方の既存の設置機器と干渉せず、かつ、車室床材のカーペットと段差も発生させず、外観上の見栄えを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のワイヤハーネス配索装置の実施形態を示す全体斜視図である。
【
図4】(A)は前帯状電線保持材の斜視図、(B)は(A)のI−I断面図、(C)は後帯状電線保持材の斜視図である。
【
図5】(A)は前後帯状電線保持材を車室の床材に配置した状態を示す概略平面図、(B)は(A)のII−II線断面図である。
【
図6】(A)(B)は前後帯状電線保持材の作動を示す斜視図である。
【
図7】滑車部品を示し、(A)は構成を示す図面、(B)は(A)のIII−III線断面図である。
【
図8】前後帯状電線保持材および滑車部品とスライドシートのスライド量の関係を示す説明図である。
【
図9】(A)(B)(C)はスライドシートの移動と前後帯状電線保持材の作動の関係を説明する図面である。
【
図10】前記装置の梱包時の状態を説明する図面である。
【
図11】従来例を示し、(A)は全体斜視図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【
図12】(A)(B)は前記従来例の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至
図10に本発明の実施形態を示す。
図1に示すように、自動車に搭載する助手席側のスライドシート1のフレーム下方で、左右のシートレール6,6の間の車室の床材上に、スライドシート1に装着した電装品(図示せず)に給電するワイヤハーネス5(シートハーネス)の配索装置2を設置している。該ワイヤハーネス5はフロアパネル3に沿って配索するフロアハーネス4に接続してスライドシート1へ配線する電線群からなる。該電線群を電線群W1、W2に分割し、
図4に示すように、前帯状電線保持材10Aに電線群W1を、後帯状電線保持材10Bに電線群W2を固定している。
【0018】
前帯状電線保持材10Aと後帯状電線保持材10Bは同一形状とし、前後方向に延在する弾性および可撓性を有する帯状カーペット11の下面に電線群W1、W2をそれぞれ構成する電線を並列に配線してフラット状のハーネスとしている。電線群W1、W2を構成する各電線は芯線の外周を絶縁被覆層で被覆した丸電線としている。なお、芯線を偏平な角状とし、該芯線を並列に平行配線し、絶縁樹脂からなるラミネート層で被覆したフラットハーネスとして一体化してもよい。
【0019】
前記電線群W1,W2の下面に、上面側の帯状カーペット11と同様の形状とした弾性および可撓性を有するシート状保持材12を配置し、帯状カーペット11とシート状保持材12の間でフラット状に配線した電線群W1、W2を挟持している。前記電線群W1,W2はそれぞれ上下の帯状カーペット11とシート状保持材12に接着して一体化している。
【0020】
前後一対の前後帯状電線保持材10Aと10Bとは車室の床材20上に前後方向に連続して配置している。詳細には、
図3に示すように、前帯状電線保持材10Aの長さ方向の一端をスライドシート1の前方に固定してスライド側前固定点P1とすると共に、後帯状電線保持材10Bの長さ方向の一端をスライドシート1の後方に固定してスライド側後固定点P2としている。また、前帯状電線保持材10Aの長さ方向の他端を床材20の前方に固定して床側前固定点P3とする共に、後帯状電線保持材10Bの長さ方向の他端を床材20の後方に固定して床側後固定点P4としている。
【0021】
このように、前後帯状電線保持部材10Aと10Bのスライド側前後固定点P1、P2を車室の床材20より上方に位置し、床側前後固定点P3、P4は下方に位置するため、前帯状電線保持部材10Aの両端のスライド側前固定点P1と床側前固定点P3、後帯状電線保持部材10Bの両端のスライド側後固定点P2と床側後固定点P4は上下に位相する。よって、
図3および
図6に示すように、床材20に沿った前後帯状電線保持材10A、10Bは中間の接触位置でそれぞれ捲れるように立ち上がり、前帯状電線保持部材10Aは前向きに湾曲し、後帯状電線保持部材10Bは後向きに湾曲してライドシート1に連結している。
【0022】
車室の床材20は吸音材や振動減衰材を積層した積層材からなり、該積層材の表面にカーペット材21が敷設されている。
図5(B)に示すように、前後帯状電線保持部材10A、10Bを配置する部分の床材20は周囲の最上面のカーペット材21の表面より前後帯状電線保持部材10A、10Bの厚さ(t)だけ窪ませ、前後帯状電線保持部材10A、10Bが床材20に沿った状態で、周囲のカーペット材21の表面faと前後帯状電線保持部材10A、10Bの表面fbが段差なく平坦面を形成するようにしている。
【0023】
前後帯状電線保持部材10A、10Bのスライド側前後固定点P1、P2は前後移動するスライドシート1のシートフレームの底板に固定するため、該スライド側前後固定点P1、P2はスライドシート1の移動と対応して移動する移動点となる。一方、前後帯状電線保持部材10A、10Bの床側前後固定点P3、P4は床材20に固定するため、移動せず定位置にある。よって、スライドシート1の前後移動に応じて、
図9(A)〜(C)に示すように、前後帯状電線保持部材10A、10Bは下向きJ形状、U形状、上向きJ形状に変形して追従する。
【0024】
J形状およびU形状に変形して湾曲する前後帯状電線保持部材10Aと10Bは、
図7に示すように、中間の湾曲部を背中合わせの状態として1つの滑車部品15に形成した前後一対の円弧状貫通路16A、16Bに摺動自在に挿通している。詳しくは、本体となる左右一対のフレーム17の間の上下に滑車18A、18Bをそれぞれ回転支軸19を介して回転自在に取り付けている。上下の滑車18Aと18Bの間の前後両側にフレーム17から略半円弧ガイド突起19A、19Bを設け、前記円弧状貫通路16A、16Bを形成している。
【0025】
一方の前向きの円弧状貫通路16Aに前帯状電線保持材10Aを上下滑車18A、18Bに摺接させながら貫通させている。他方の後向きの円弧状貫通路16Bに後帯状電線保持材10Bを上下滑車18A、18Bに摺接させながら貫通させている。該滑車部品15は前後帯状電線保持部材10Aと10Bを貫通させることで、言わば、宙づり状態で支持され、同時に、前後帯状電線保持部材10Aと10Bを背中合わせのJ形状およびU形状に変形自在に保持している。該円弧状貫通路16A、16Bの曲率Rは、前後帯状電線保持部材10A、10Bが最小の曲率で湾曲できるように設定し、横向きU字形状やJ形状に変形した時に高さの増大を押さえている。
【0026】
図3に示すように、前後帯状電線保持材10A、10Bにそれぞれ固定する電線群W1、W2は、該前後帯状電線保持材10A、10Bの固定点P1とP3、P2とP4からそれぞれ外方に引き出している。スライドシート1側で引き出した電線群W1、W2はスライドシート1内に配線するハーネスW4とコネクタC1で接続し、床材20側で引き出した電線群W1、W2はフロアパネル3に沿って配索するフロアハーネス4とコネクタC2で接続している。
【0027】
図8に示すように、前帯状電線保持材10Aと後帯状電線保持材10Bの前後長さ(L)は同一としている。該前後帯状電線保持材10A、10Bの長さ(L)は、その合計長さ(2L)から滑車部品15の前後長さ(a)を差し引いた長さS(2L−a=S)がスライドシート1の前後スライド長さとなるように設定している。
【0028】
次に、スライドシート1の前後移動に追従するワイヤハーネス5の動きについて、
図9を参照して説明する。
図9中、(A)はスライドシート1が前端位置の状態で、前帯状電線保持材10Aはスライドシート1の前進に応じて上方のスライドシート1側に引き出され、言わば下横向きJ字形状となり、滑車部品15の下方に床側固定点P3位置する。後帯状電線保持材10Bは上横向きJ字状となり、のスライド側固定点P3が滑車部品15の上方に位置し、後帯状電線保持材10Bの大半が床材20上に沿って位置する。
【0029】
図9(A)の前端位置からスライドシート1を後退させ、前後中間位置に移動させた状態が
図9(B)の状態であり、前帯状電線保持材10Aと後帯状電線保持材10Bはいずれも横向きU字形状となり、滑車部品15が背中合わせてなる前後帯状電線保持材10A、10Bの間に位置する。この状態時には、前後帯状電線保持材10A、10Bの長さ方向の一半部がスライドシート1に沿うと共に他半部が床材20に沿う状態となる。
【0030】
図9(B)の中間位置からスライドシート1を後退させて後端に移動させると
図9(C)の状態となる。前帯状電線保持材10Aはスライドシート1の後進に応じて下方の床材20側に引き戻され、言わば上横向きJ字形状となり、後帯状電線保持材10Bはスライドシート側に捲れて引き出され、下横向きJ字状となる。
【0031】
このように、スライドシート1の前後移動に追従して、前後帯状電線保持材10Aと10Bの一方がスライドシート1側へと捲れる状態で引き出され、他方が床側20に沿うように引き戻される。このスライドシート1の移動時に、前後帯状電線保持材10A、10Bの床側前後固定点P3とP4の間は、前後帯状電線保持材10Aと10Bで覆われる。よって、周囲のカーペット材21より窪ませた床材20上に前後帯状電線保持材10Aと10Bを充填でき、周囲のカーペット材21と連続した平面を形成し、段差を生じさせない。
【0032】
前記のように、本発明のワイヤハーネス配索装置は、前後帯状電線保持材10A、10Bと、これら貫通した滑車部品15の3点からなり、これら3点を組みつけた状態で自動車の組立工場に搬送される。この搬送時に、
図10に示すように、滑車部品15に前後帯状電線保持材10Aと10Bを貫通させると共に、貫通部分から外方へ引き出される両側部分を滑車部品15の外周に巻き付けて、外形を小型して梱包することができる。このように、自動車に装着する状態よりコンパクトに梱包して搬送できるため、運搬コストを低減できる利点を有する。
【0033】
本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を越えない範囲で種々に変更することができる。例えば、スライドシートのフレーム側面の下部に前後帯状電線保持材10A、10Bのスライド側前後固定点P1、P2を固定し、シートレールの側方に沿った位置の床材に床側前後固定点P3、P4を固定してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 スライドシート
3 フロアパネル
4 フロアハーネス
5 ワイヤハーネス
6 シートレール
10A 前帯状電線保持材
10B 後帯状電線保持材
11 帯状カーペット
15 滑車部品
18A、18B 滑車
20 車室床材
W1、W2 電線群