(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、保護部材の外形状に応じた下型面及び上型面を有する上型及び下型を準備する必要がある。このため、保護部材の経路長が異なると、別のホットプレス用成形型を準備する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、保護部材の経路長の違いに容易に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法は、保護対象部分の経路長が異なる複数種類の保護部材付ワイヤーハーネスを製造するための保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型を配設する工程と、(b)ワイヤーハーネスを不織部材で覆う工程と、(c)
ワイヤーハーネスを覆う一連の前記不織部材を前記複数の下型に配設する工程と、(d)前記複数の下型のそれぞれに複数の上型を配設する工程と、(e)前記複数の下型と前記複数の上型との間で前記不織部材を圧縮及び加熱する工程と、を備える。
第2の態様では、第1の態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(a)において、前記ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型をそれらの間に間隔を設けて配設する。
第3の態様では、第1又は第2の態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(e)において、前記複数の下型と前記複数の上型との間で前記不織部材を圧縮及び加熱し、ワイヤーハーネスを覆う一連の前記不織部材においてその長手方向に部分的に圧縮及び加熱する部分としない部分とを形成する。
【0007】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(a)において、前記ワイヤーハーネスのうち前記保護対象部分の経路長に合わせて、前記複数の下型の間隔を設定するものである。
【0008】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(a)において、前記ワイヤーハーネスのうち前記保護対象部分の経路長に合わせて、前記複数の下型の数を設定するものである。
【0009】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法であって、前記複数の下型として、長さが異なる複数種のものが準備され、前記工程(a)において、前記ワイヤーハーネスのうち前記保護対象部分の経路長に合わせて、前記複数種類の下型の組合わせを設定するものである。
【0010】
第7の態様に係るホットプレス用成形金型装置は、ワイヤーハーネスを覆う不織部材をホットプレスするためのホットプレス用成形金型装置であって、複数の下型と、長尺状の装着用開口が形成され、前記複数の下型を、前記装着用開口の延在方向に沿って、間隔、数及び組合わせの少なくとも一つを変えて配設可能な下型支持部材と、前記複数の下型に対応する複数の上型と、を備える。
【0011】
第8の態様は、第7の態様に係るホットプレス用成形金型装置であって、前記下型支持部材は、前記装着用開口が形成された板状部材であり、前記複数の下型は、前記装着用開口に嵌め込み可能な下型本体部と、前記下型本体部の両側部に突設され、前記下型本体部が前記装着用開口に嵌め込まれた状態で、前記下型本体部の下部を前記下型支持部材の下方に突出させた位置で、前記装着用開
口の両側部に載置状に当接可能な位置決め凸部とを備える可動下型を少なくとも1つ含み、前記下型支持部材の下方に突出する前記少なくとも1つの可動下型の下部を介して前記下型を加熱する下側加熱機構をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法によると、ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型を配設するため、保護部材の経路長の違いに容易に対応することができる。
【0013】
第4の態様によると、複数の下型間の間隔を調整することで、ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長違いに容易に対応することができる。
【0014】
第5の態様によると、下型の数を調整することで、ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長違いに容易に対応することができる。
【0015】
第6の態様によると、長さが異なる複数種類の下型の組合わせを調整することで、ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長違いに容易に対応することができる。
【0016】
第7の態様によると、前記複数の下型を、下型支持部材に対して、間隔、数及び組合わせの少なくとも一つを変えて配設することで、ワイヤーハーネスのうち保護対象部分の経路長違いに容易に対応することができる。また、複数の下型が装着用開口の延在方向に沿って配設されるため、複数の下型を安定した位置で支持することができる。
【0017】
第8の態様によると、装着用開口に配設された可動下型を、下型支持部材の下方から下側加熱機構によって容易に加熱できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係る保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法及びホットプレス用成形金型装置について説明する。
【0020】
<ホットプレス用成形金型装置>
まず、本保護部材付ワイヤーハーネスの製造方法を実施するのに適したホットプレス用成形金型装置について説明する。
図1はホットプレス用成形金型装置30を示す概略図であり、
図2は保護部材付ワイヤーハーネス10を示す概略図である。
【0021】
ここで、保護部材付ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネスWHの外周に保護部材20が装着された構成とされている。
【0022】
ワイヤーハーネスWHは、少なくとも1本の電線を含んでいる。ここでは、ワイヤーハーネスWHは、複数の電線が束ねられることにより構成されている。ワイヤーハーネスWHは、途中で分岐していてもよい。ワイヤーハーネスWHには、光ケーブル等が含まれていてもよい。本ワイヤーハーネスWHは、車両等に組込まれることで、当該車両等における各種電気部品同士を電気的に接続する配線材として用いられる。
【0023】
保護部材20は、ワイヤーハーネスWHを覆う不織部材22がホットプレスされることにより形成される。保護部材20は、ワイヤーハーネスWHの長手方向の一部を覆うものであってもよいし、ワイヤーハーネスWHの長手方向全体を覆うものであってもよい。ここでは、保護部材20は、ワイヤーハーネスWHの長手方向の一部を覆う。
【0024】
上記不織部材22としては、通常状態では、ワイヤーハーネスWHを覆うように変形可能な程度に柔軟であり、加熱及び加圧工程を経ることにより硬くなることが可能なものを用いることができる。このような不織部材22として、基本繊維と、これと絡み合う接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。不織部材22を基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱すると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染込む。その後、不織部材22が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織部材22が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持される。また、不織部材22同士が接触している部分では、当該接触部分にも溶融した接着樹脂が染込んで固化する。これにより、不織部材22同士の接触部分が接合される。このようにして、不織部材22がワイヤーハーネスWHを覆った状態で硬化及び相互接合されることで、当該ワイヤーハーネスWHを保護する保護部材20が構成される。
【0025】
ただし、基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得る繊維であればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。また、芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0026】
基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織部材22を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織部材22が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、上記成形形状の維持及び不織部材22同士の接合を行う。
【0027】
また、ホットプレスとは、不織部材22に対する加熱処理及び不織部材を型に押付けて所定形状に形成する処理を施すことをいう。この実施形態に係る保護部材20を製造するのに適したホットプレス加工の例については別途詳述する。
【0028】
本ホットプレス用成形金型装置30は、保護対象部分の経路長が異なる複数種類の保護部材付ワイヤーハーネス10を製造するためのものである。
【0029】
図2に示す例では、ワイヤーハーネスWHに装着された保護部材20は、保護部材20の延在方向において硬化部24、26、28と、柔軟部25、27とを、交互に備えている。ここでは、保護部材20の一端(
図2の左端)から他端(
図2の右端)に向けて、硬化部24,柔軟部25、硬化部26、柔軟部27、硬化部28がこの順で形成されている。保護部材20の長さ寸法は、ワイヤーハーネスWHを車体等に組込んだ状態で、保護が望ましいとされる領域に応じて設定される。また、硬化部24、26、28は保護性能及び経路維持に優れ、柔軟部25、27は打音抑制性能に優れる。そこで、ワイヤーハーネスWHを車体等に組込んだ状態で、比較的高い保護性能又は経路維持性能が要請される部分に対しては硬化部24、26、28が形成され、比較的高い打音抑制性能が要請される部分に対しては、柔軟部25、27が形成されることが好ましい。なお、これらの要請に拘らず、硬化部及び柔軟部の位置設定は任意である。もっとも、硬化部は、不織部材がワイヤーハーネスWHを覆った状態を維持する役割を持つので、保護部材において少なくとも1箇所に設けられていることが必要であり、保護部材の両端部に設けられていることが好ましい。
【0030】
保護部材20の全長L(つまり、保護対象部分の経路長)は、例えば、250mmであり、そのうち硬化部24の長さL(24)は30mm、柔軟部25の長さL(25)は30mm、硬化部26の長さL(26)は60mm、柔軟部27の長さL(27)は30mm、硬化部28の長さL(28)は100mmである。保護部材の長さを変えた例については後に説明する。
【0031】
ホットプレス用成形金型装置30は、下型支持部材32と、複数の下型44、46、48と、複数の上型54、56、58と、下側加熱機構60と、上側加熱機構64とを備える。
【0032】
下型支持部材32は、板状部材に形成されており、その中間部に装着用開口34が形成されている。装着用開口34は、細長い長方形状の開口形状に形成されている。装着用開口34の長さ寸法は、加工が想定される保護部材20のうち最も長い寸法と同じかそれ以上の長さ寸法に設定されている。また、装着用開口34の幅は、装着用開口34の延在方向に沿って同一に設定されており、従って、装着用開口34の両側縁部は互いに並行な状態で延在している。上記装着用開口34には、その延在方向に沿って、複数の下型44、46、46を配設可能に構成されている。複数の下型44、46、48を装着用開口34に装着する際には、複数の下型44、46、48の間隔、数及び組合わせの少なくとも1つを変えて配設できるようになっている。
【0033】
本下型支持部材32は、ワイヤーハーネスWHの結束作業等を行うための作業図板の一部に組込まれたものであってもよいし、装着用開口34が形成された単独の部材として設けられるものであってもよい。
【0034】
下型44は、熱伝導性に優れた金属等により形成された部材であり、下型本体部44aと、位置決め凸部44pとを備える。
【0035】
下型本体部44aの一主面(上面)には下型面44fが形成されている。下型面44fは、概略的には、底部が半円筒表面形状を呈しかつ上方に開口する溝形状に形成されている。下型面44fの軸方向における、下型本体部44a及び下型面44fの長さは、上記硬化部24の長さL(24)と同一に形成されている。
【0036】
また、下型本体部44aの幅は、上記装着用開口34の両側部間にがたつき無く配設可能な寸法、即ち、装着用開口34の幅と同じか当該幅よりも僅かに小さく設定されている。これにより、本下型本体部44aを装着用開口に嵌め込むことができ、かつ、その嵌め込み状態で、下型本体部44aの下部を下型支持部材32の下方に突出させることができる。
【0037】
また、下型本体部44aの両側部には、位置決め凸部44pが突設されている。位置決め凸部44pは、下型本体部44aに対して、下型面44fの軸方向全体に亘って設けられてもよいし、部分的に設けられてもよい。位置決め凸部44pは、下型本体部44aの両側面から外向きに突出する板状に形成されている。位置決め凸部44pの延在方向は、下型本体部44aの側面に対して垂直でかつ下型面44fの軸に沿って平行な方向である。位置決め凸部44pの下面は、下型本体部44aの底部に対して、下型支持部材32の厚み寸法以上離れて位置している。そして、下型本体部44aを装着用開口34に嵌め込むと、下型本体部44aの両側部の位置決め凸部44pが装着用開口34の両側部上に載置状に当接する。この状態では、下型本体部44aの下部は、下型支持部材32の下方に突出した状態となる。
【0038】
下型46は、下型本体部46aと、位置決め凸部46pとを備える。
【0039】
下型本体部46aには下型面46fが形成されている。この下型本体部46aは、下型面46fの軸方向における長さ寸法が異なる点を除いて、上記下型本体部44aと同じ構成である。下型面46fの軸方向における、下型本体部46a及び下型面46fの長さは、上記硬化部26の長さL(26)と同一に形成されている。また、位置決め凸部46pは、下型面46fの軸方向において部分的に形成されている点を除いて、上記位置決め凸部44pと同じ構成である。
【0040】
下型48は、下型本体部48aと、位置決め凸部48pとを備える。
【0041】
下型本体部48aには下型面48fが形成されている。この下型本体部48aは、下型面48fの軸方向における長さ寸法が異なる点を除いて、上記下型本体部44aと同じ構成である。下型面48fの軸方向における、下型本体部48a及び下型面48fの長さは、上記硬化部28の長さL(28)と同一に形成されている。また、位置決め凸部48pは、下型面48fの軸方向において部分的に形成されている点を除いて、上記位置決め凸部44pと同じ構成である。
【0042】
このように下型44、46、48として、長さが異なる複数種のものが準備さされている。また、各下型44、46、48は、装着用開口34に対して着脱可能であり、また、当該装着用開口34に対してその延在方向の任意の位置に嵌め込むことができる。この点において、各下型44、46、48は、可動金型でもある。もっとも、下型44、46、48のうちのいずれかが下型支持部材32に対して一定位置に固定されていてもよい。すなわち、複数の下型のうちの少なくとも1つが可動金型であればよい。
【0043】
上型54、56、58は、それぞれ下型44、46、48に対応して設けられている。
【0044】
より具体的には、上型54は、熱伝導性に優れた金属等により形成された部材であり、その一主面(下面)に上部が半円筒表面形状を呈しかつした方に開口する溝形状の上型面54fが形成されている。上型面54f、上記下型面44fの上方開口を塞ぎつつ当該下型面44f内に配設可能な幅に形成されている。そして、この上型面54fが下型面44f内に配置されることにより、上型面54fと下型面44fとの間で、保護部材20の硬化部24を形成可能なスペースが形成される。
【0045】
また、上型56の一主面(下面)には、上部が半円筒表面形状を呈しかつした方に開口する溝形状の上型面56fが形成されている。この上型56は、上型面56fの軸方向における長さ寸法が異なる点を除いて、上記上型54と同じ構成である。そして、この上型面56fが下型面46f内に配置されることにより、上型面56fと下型面46fとの間で、保護部材20の硬化部26を形成可能なスペースが形成される。
【0046】
また、上型58の一主面(下面)には、上部が半円筒表面形状を呈しかつした方に開口する溝形状の上型面58fが形成されている。この上型58は、上型面58fの軸方向における長さ寸法が異なる点を除いて、上記上型54と同じ構成である。そして、この上型面58fが下型面48f内に配置されることにより、上型面58fと下型面48fとの間で、保護部材20の硬化部28を形成可能なスペースが形成される。
【0047】
下側加熱機構60は、ヒーターが組込まれると共に、上面が平坦な形状を呈する形状に形成された構成とされている。上面は、上記装着用開口34と同じかそれ以上の広がりを持つ大きさに設定されている。そして、下側加熱機構60の上面を、下型支持部材32の下方に突出する複数の下型44、46、48の下面に面接触させることで、複数の下型44、46、48を加熱できるようになっている。
【0048】
また、上側加熱機構64は、ヒーターが組込まれると共に、下面が平坦な形状を呈する形状に形成された構成とされている。下面は、上記装着用開口34と同じかそれ以上の広がりを持つ大きさに設定されている。そして、上側加熱機構64の下面を、下型44、46、48上に配設された上型54、56、58の上面に面接触させることで、複数の上型54、56、58を加熱できるようになっている。
【0049】
なお、上側加熱機構64は、加圧機構によって昇降可能に支持されており、上側加熱機構64の下面を、上型54、56、58の上面に面接触させる際に、各上型54、56、58を下方に押込む力を加えることができるようになっていることが好ましい。
【0050】
<製造方法>
上記ホットプレス用成形金型装置30を用いて、保護対象部分の経路長が異なる複数種類の保護部材付ワイヤーハーネスを製造する方法について説明する。
【0051】
まず、
図2に示す保護部材付ワイヤーハーネス10を製造する方法について説明する。
【0052】
この場合、
図3に示すように、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、下型支持部材32上に複数の下型44、46、48を配設する。ここでは、各硬化部24、26、28の長さL(24)、L(26)、L(28)に応じた下型44、46、48を選択し、保護部材20の長さLに合せて、各下型44、46、48間に隙間をあけて、各下型44、46、48を装着用開口34にセットする。下型44、46の間には、柔軟部25の長さL(25)に応じた隙間が設けられ、下型46、48の間には、柔軟部27の長さL(27)に応じた隙間が設けられる。このため、各下型44、46、48の長さL(24)、L(26)、L(28)に、各隙間の長さL(25)、L(27)を加算すると、保護部材20の長さLと同じになる。
【0053】
そして、ワイヤーハーネスWHを不織部材22で覆う。ワイヤーハーネスWHに対する不織部材22の巻付構成は、一枚の方形シート状の不織部材22をワイヤーハーネスWHに巻付ける構成であってもよいし、帯状の不織部材22をワイヤーハーネスWHに螺旋状に巻付ける構成であってもよいし、2枚のシート状の不織部材22によってワイヤーハーネスWHを挟込む構成であってもよい。なお、ワイヤーハーネスWHを覆う不織部材22の長さ寸法は、保護部材20の長さLと同じにするとよい。
【0054】
そして、ワイヤーハーネスWHを覆う不織部材22を、複数の下型44、46、48の下型面44f、46f、48f内に配設する。
【0055】
この後、複数の下型44、46、48のそれぞれに、複数の上型54、56、58を配設し、下型面44f、46f、48fと上型面54f、56f、58fとの間で、ワイヤーハーネスWHを覆う不織部材22を挟む。
【0056】
この状態で、下側加熱機構60によって下型44、46、48を加熱すると共に、上側加熱機構64によって上型54、56、58を加熱し、下型44、46、48と上型54、56、58間に圧縮力を加える。これにより、複数の下型44、46、48と複数の上型54、56、58との間で、ワイヤーハーネスWHを覆う不織部材22を、圧縮及び加熱する。すると、不織部材22のうち下型44、46、48と上型54、56、58とで挟込まれた部分は、圧縮状態で加熱される。
【0057】
この後、不織部材22が冷却されると、不織部材22のうち下型面44f、46f、48f又は上型面54f、56f、58fに押付けられた部分は、それらの形状に応じた形状でかつワイヤーハーネスWHを覆った状態で硬化し、これにより、硬化部24、26、28が形成される。また、不織部材22のうち各下型44、46、48間の部分は、加熱及び圧縮されず、不織部材22が当初有していた柔軟な状態で維持され、これにより、柔軟部25、27が形成される。なお、硬化部24、26、28において不織部材22の巻付状態が維持されているため、その隣の柔軟部25、27においても不織部材22の巻付状態が維持される。
【0058】
上記を前提として、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型44、46、48の間隔を設定する例について説明する。
【0059】
まず、
図4に示す保護部材付ワイヤーハーネス10Bでは、上記保護部材付ワイヤーハーネス10に対して、保護部材20Bの長さLbが小さい。例えば、保護部材20Bの全長Lb(つまり、保護対象部分の経路長)は、210mmであり、そのうち硬化部24Bの長さLb(24)は30mm、柔軟部25Bの長さLb(25)は10mm、硬化部26Bの長さLb(26)は60mm、柔軟部27Bの長さLb(27)は10mm、硬化部28Bの長さLb(28)は100mmである。
【0060】
この場合、
図5に示すように、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、下型支持部材32上に複数の下型44、46、48を配設する。ここでは、各硬化部24B、26B、28Bの長さLb(24)、Lb(26)、Lb(28)に応じた下型44、46、48を選択し、保護部材20Bの長さLbに合せて、各下型44、46、48間に隙間をあけて、各下型44、46、48を装着用開口34にセットする。ここでは、下型44、46の間には、柔軟部25Bの長さLb(25)に応じた隙間が設けられ、下型46、48の間には、柔軟部27Bの長さLb(27)に応じた隙間が設けられる。このため、各下型44、46、48の長さLb(24)、Lb(26)、Lb(28)に、各隙間の長さLb(25)、Lb(27)を加算すると、保護部材20Bの長さLbと同じになる。
【0061】
そして、上記と同様に、ワイヤーハーネスWHに巻付けられた不織部材22Bを、下型44、46、48と上型54、56、58との間でホットプレスすることで、上記保護部材20とは長さが異なる保護部材20Bを製造することができる。
【0062】
また、
図6に示す保護部材付ワイヤーハーネス10Cでは、上記保護部材付ワイヤーハーネス10に対して、保護部材20Cの長さLcが大きい。例えば、保護部材20Cの全長Lc(つまり、保護対象部分の経路長)は280mmであり、そのうち硬化部24Cの長さLc(24)は30mm、柔軟部25Cの長さLc(25)は40mm、硬化部26Cの長さLc(26)は60mm、柔軟部27Cの長さLc(27)は50mm、硬化部28Cの長さLc(28)は100mmである。
【0063】
この場合、
図7に示すように、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、下型支持部材32上に複数の下型44、46、48を配設する。ここでは、各硬化部24C、26C、28Cの長さLc(24)、Lc(26)、Lc(28)に応じた下型44、46、48を選択し、保護部材20Cの長さLcに合せて、各下型44、46、48間に隙間をあけて、各下型44、46、48を装着用開口34にセットする。ここでは、下型44、46の間には、柔軟部25Cの長さLc(25)に応じた隙間が設けられ、下型46、48の間には、柔軟部27Cの長さLc(27)に応じた隙間が設けられる。このため、各下型44、46、48の長さLc(24)、Lc(26)、Lc(28)に、各隙間の長さLc(25)、Lc(27)を加算すると、保護部材20Cの長さLcと同じになる。
【0064】
そして、上記と同様に、ワイヤーハーネスWHに巻付けられた不織部材22Cを、下型44、46、48と上型54、56、58との間でホットプレスすることで、上記保護部材20とは長さが異なる保護部材20Cを製造することができる。
【0065】
このように、下型44、46、48の間隔を、保護部材20、20B、20Cの長さに応じて適宜調整することで、種々の長さの保護部材20、20B、20Cを形成することができる。
【0066】
次に、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型44、46、48の数を設定する例について説明する。
【0067】
図8に示す保護部材付ワイヤーハーネス10Dでは、上記保護部材付ワイヤーハーネス10に対して、保護部材20Dの長さLdが小さい。例えば、保護部材20Dの全長Ld(つまり、保護対象部分の経路長)は、190mmである。また、保護部材20Dは、上記硬化部26、28に対応する硬化部26D、28Dと、柔軟部27に対応する柔軟部27Dを含む。例えば、硬化部26Dの長さLd(26)は60mm、柔軟部27Dの長さLd(27)は30mm、硬化部28Dの長さLd(28)は100mmである。
【0068】
この場合、
図9に示すように、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、下型支持部材32上に複数の下型46、48を配設する。ここでは、各硬化部26D、28Dの長さLd(26)、Ld(28)に応じた下型46、48を選択し、保護部材20Dの長さLdに合せて、各下型46、48間に隙間をあけて、各下型46、48を装着用開口34にセットする。ここでは、下型46、48の間には、柔軟部27Dの長さLd(27)に応じた隙間が設けられる。このため、各下型46、48の長さLd(26)、Ld(28)に、隙間の長さLd(27)を加算すると、保護部材20Dの長さLdと同じになる。
【0069】
そして、上記と同様に、ワイヤーハーネスWHに巻付けられた不織部材22Dを、下型46、48と上型56、58との間でホットプレスすることで、上記保護部材20とは長さが異なる保護部材20Dを製造することができる。
【0070】
このように、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型44、46、48の数を調整すること、ここでは、3つの下型44、46、48のうち2つの下型46、48を用いることで、上記保護部材20とは長さが異なる保護部材20Dを製造することができる。
【0071】
次に、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型44、46、48の組合わせを設定する例について説明する。
【0072】
まず、
図10に示す保護部材付ワイヤーハーネス10Eでは、上記保護部材付ワイヤーハーネス10に対して、保護部材20Eの長さLeが小さい。例えば、保護部材20Eの全長Le(つまり、保護対象部分の経路長)は210mmであり、そのうち硬化部24Eの長さLe(24)は30mm、柔軟部25Eの長さLe(25)は30mm、硬化部26Eの長さLe(26)は60mm、柔軟部27Eの長さLe(27)は30mm、硬化部28Eの長さLe(28)は60mmである。
【0073】
この場合、
図11に示すように、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、下型支持部材32上に複数の下型44、46、46を配設する。ここでは、各硬化部24E、26E、28Eの長さLe(24)、Le(26)、Le(28)に応じた下型44、46、46を選択し、保護部材20Eの長さLeに合せて、各下型44、46、46間に隙間をあけて、各下型44、46、46を装着用開口34にセットする。ここでは、下型44、46の間には、柔軟部25Eの長さLe(25)に応じた隙間が設けられ、下型46、46の間には、柔軟部27Eの長さLe(27)に応じた隙間が設けられる。このため、各下型44、46、46の長さLe(24)、Le(26)、Le(28)に、各隙間の長さLe(25)、Le(27)を加算すると、保護部材20Eの長さLeと同じになる。
【0074】
そして、上記と同様に、ワイヤーハーネスWHに巻付けられた不織部材22Eを、下型44、46、46と上型54、56、56との間でホットプレスすることで、上記保護部材20とは長さが異なる保護部材20Eを製造することができる。
【0075】
このように、長さが異なる複数種類の下型44、46、48を準備しておき、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数種類の下型44、46、48の組合わせを調整することで、上記保護部材20とは長さが異なる保護部材20Eを製造することができる。
【0076】
以上のように構成された保護部材付ワイヤーハーネス10の製造方法及びホットプレス用成形金型装置30によると、ワイヤーハーネスWHのうち保護対象部分の経路長に合せて、複数の下型44、46、48を配設するため、保護部材20、20B、20C、20D、20Eの経路長L、Lb、Lc、Ld、Le違いに容易に対応することができる。これにより、下型44、46、48及び上型54、56、58の種類を少なくすることができ、製造コストを下げることができる。また、車両の各種仕様及び設計変更等にも容易に対応することが可能となる。
【0077】
具体的には、複数の下型44、46、48の間隔を変更することで、保護部材20、20B、20Cの経路長L、Lb、Lc違いに容易に対応することができる。
【0078】
また、複数の下型44、46、48の数を調整することによっても、保護部材20、20Dの経路長L、Ld違いに容易に対応することができる。
【0079】
さらに、複数種類の下型44、46、48の組合わせを調整することによっても、保護部材20、20Eの経路長L、Le違いに容易に対応することができる。
【0080】
また、上記製造方法を実施する際に上記ホットプレス用成形金型装置30を用いると、複数の下型44、46、48を装着用開口34に沿って一定位置に支持することができ、所定経路に沿う形状であって長さが異なる保護部材20、20B、20C、20D、20Eを安定した品質で容易に製造することができる。
【0081】
また、下型支持部材32は板状に形成されており、下型44、46、48が装着用開口34に嵌め込まれた状態で、下型44、46、48の下部が下型支持部材32の下方に突出している。このため、下型支持部材32の下方から下側加熱機構60によって下型44、46、48を容易に加熱することができる。特に、単一の下側加熱機構60によって複数の下型44、46、48を同時に加熱でき、装置構成の簡易化を図ることができる。
【0082】
{変形例}
なお、上記実施形態において、保護対象部分の経路長に応じて、複数の下型44、46、48の間隔、数及び組合わせのうちの複数を調整してもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、複数の下型及び複数の上型の少なくとも1つの組合わせに、保護部材のうち曲る部分を形成する型面、又は、保護部材のうち分岐する部分を形成する型面が形成されていてもよい。複数の下型及び複数の上型の1つの組合わせに、保護部材のうち曲る部分を形成する型面が形成されている場合、その下型については一定位置に固定し、その両側の下型を可動下型として、前記保護部材のうち曲る部分を形成する型面が形成された下型との距離又は組合わせ等を変更するとよい。
【0084】
また、本実施形態では、装着用開口34は真っ直延びる開口形状に形成されているが、途中で曲る形状に形成されていてもよい。
【0085】
なお、上記実施形態で説明した各事項は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0086】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。